(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092738
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】植毛ばね
(51)【国際特許分類】
F16F 1/12 20060101AFI20230627BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230627BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230627BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F16F1/12 C
B32B27/20 A
C09J201/00
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207926
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】國田 靖彦
【テーマコード(参考)】
3J059
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
3J059AD04
3J059BA01
3J059BB01
3J059DA46
3J059DA47
3J059EA13
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA30C
4F100CB00C
4F100DG00D
4F100EH46B
4F100GB32
4F100GB51
4F100JK12C
4J040HA306
4J040KA25
4J040MA02
4J040MB02
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】 相手部材へのダメージが少ない植毛ばねを提供する。
【解決手段】 植毛ばね30は、ばね本体31と、ばね本体31の表面に配置される塗装層32と、塗装層32の表面に配置される接着剤層33と、接着剤層33に固定される植毛用フィラーからなる植毛層34と、を有する。接着剤層33は、接着剤とチキソ性付与剤とを有する接着剤組成物から形成される。植毛ばね30においては、接着剤層33の厚さを大きくすることができ、植毛層34を構成する植毛用フィラーの本数を増やすことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね本体と、
該ばね本体の表面に配置される塗装層と、
該塗装層の表面に配置される接着剤層と、
該接着剤層に固定される植毛用フィラーからなる植毛層と、
を有し、
該接着剤層は、接着剤とチキソ性付与剤とを有する接着剤組成物から形成されることを特徴とする植毛ばね。
【請求項2】
前記チキソ性付与剤は、非晶質シリカを有する請求項1に記載の植毛ばね。
【請求項3】
前記接着剤層の表面における1.2mm2の範囲を測定領域とした場合に、該測定領域に固定される前記植毛用フィラーの本数は32本以上である請求項1または請求項2に記載の植毛ばね。
【請求項4】
前記接着剤層の表面における1.2mm2の範囲を測定領域とした場合に、該測定領域に固定される前記植毛用フィラーのうち、該接着剤層の表面に対して略直立した状態で固定される直立フィラーの本数は11本以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の植毛ばね。
【請求項5】
前記接着剤層の表面における1.2mm2の範囲を測定領域とした場合に、該測定領域における前記植毛用フィラーの傾斜率は、66%以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の植毛ばね。
【請求項6】
前記接着剤層の厚さは、25μm以上90μm以下である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の植毛ばね。
【請求項7】
前記接着剤層の表面の鉛筆硬度は、3H以上である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の植毛ばね。
【請求項8】
前記ばね本体は、コイルばねである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の植毛ばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ばねの表面に植毛が施された植毛ばねに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のパワーバックドアなどには、バックドアと車体との間に、バックドアを自動開閉させるためのスプリングアセンブリが配置される。スプリングアセンブリは、伸縮可能な円筒形状を有し、外側のカバー部材と内側の軸部材との間に圧縮コイルばねを備える。圧縮コイルばねが圧縮されると、コイル軸が波形や螺旋状に湾曲する「座屈」が生じる場合がある。座屈によりコイル軸が径方向に変位した部分が、圧縮コイルばねの外側に配置されるカバー部材や内側に配置される軸部材に当接すると、打音が発生する。したがって、スプリングアセンブリに用いられる圧縮コイルばねには、防錆性を付与するための塗装に加えて、打音対策として植毛加工が施される。植毛加工とは、被加工物の表面に予め接着剤を塗布しておき、そこに静電力などを利用して短繊維を付着させる加工である(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-224612号公報
【特許文献2】特開平5-138813号公報
【特許文献3】特開昭61-164682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプリングアセンブリにおいては、圧縮コイルばねに要求される耐久回数が増したことにより、圧縮コイルばねに関係する部材への影響を検討する必要がある。例えば、内側の軸部材の端部をプレス抜き加工した場合などに、外側にわずかに突出する部分が形成される場合がある。軸部材の表面には、電着塗装などが施されるが、圧縮コイルばねが軸部材に摺接することにより、当該突出部分の塗装が剥がれ、素地が露出してしまうおそれがある。このため、圧縮コイルばねには、相手部材へのダメージが極力少なくなるような構成が要求される。例えば、植毛加工において、植毛される短繊維(フィラー)の本数を増やすことにより、相手部材との摩擦を低減し、ダメージを小さくすることが可能になる。フィラーの本数を多くするためには、多くのフィラーを固定することができる接着剤層が必要になる。例えば、接着剤層を厚くすれば、固定されるフィラーの本数を増やすことができると考えられる。しかしながら、接着剤層を厚く形成しようとすると、接着剤を塗布する際に液だれなどが生じてしまう。よって、接着剤層の厚膜化は容易ではない。
【0005】
本開示は、このような実情に鑑みてなされたものであり、相手部材へのダメージが少ない植毛ばねを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の植毛ばねは、ばね本体と、該ばね本体の表面に配置される塗装層と、該塗装層の表面に配置される接着剤層と、該接着剤層に固定される植毛用フィラーからなる植毛層と、を有し、該接着剤層は、接着剤とチキソ性付与剤とを有する接着剤組成物から形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の植毛ばねを構成する接着剤層は、接着剤とチキソ性付与剤とを有する接着剤組成物から形成される。チキソ性付与剤は、接着剤組成物にチキソトロピー性を付与する材料である。接着剤組成物にチキソトロピー性が付与されると、接着剤組成物の調製、塗布時には、撹拌などのせん断力により接着剤組成物の流動性が発現する一方、塗布された後には粘度が高くなり流動性が低下して、液だれが抑制される。これにより、形成される接着剤層の厚さを大きくすることができ、接着剤層に固定される植毛用フィラーの本数、すなわち植毛層を構成する植毛用フィラーの本数を増やすことができる。さらには、本発明者の検討によると、接着剤層の表面に対して直立に近い状態で固定される植毛用フィラーの本数が増加することも確認されている。このように、本開示の植毛ばねによると、接着剤層の厚さを大きくして所望の植毛状態を実現することができるため、相手部材との摩擦を低減することができ、相手部材に対するダメージを小さくすることができる。
【0008】
ちなみに、特許文献3には、自動車車体内部の美装仕上げ方法として、車体内部に電着塗装を施し、これを焼付けて電着塗膜を形成した後、合成樹脂接着剤を塗布し、これを対電極として短繊維を静電植毛する方法が記載されている。また、静電植毛に用いる接着剤は、接着性合成樹脂成分に加えてタレ防止剤を含んでもよいことが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載されている静電植毛は、車体内部を美装するためのものであり、植毛層が相手部材に接することは想定されていない。よって、特許文献3においては、接着剤層の厚さや植毛用フィラーの植え付け状態の検討はされておらず、接着剤層の厚さを大きくすることについての記載も示唆もない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の植毛ばねの一実施形態である圧縮コイルばねを備えるスプリングアセンブリの部分概要図である。
【
図2】同圧縮コイルばねの素線径方向断面図である。
【
図3】本開示における直立フィラーを説明するための、植毛用フィラーの植え付け状態の模式図であり、(a)は垂直状態を示し、(b)は傾斜状態を示す。
【
図4】チキソ性付与剤の有無が異なる接着剤組成物を使用して形成された接着剤層の厚さを示すグラフである。
【
図5】摩耗試験における摩耗量の測定結果を示すグラフである。
【
図6】接着剤層の厚さに対してフィラーの本数をプロットしたグラフである。
【
図7】接着剤層の厚さに対して直立フィラーの本数をプロットしたグラフである。
【
図8】接着剤層の厚さに対してフィラーの傾斜率をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<植毛ばね>
本開示の植毛ばねの一実施形態として、スプリングアセンブリを構成する圧縮コイルばねとして用いられる形態を説明する。まず、本実施形態のスプリングアセンブリおよび圧縮コイルばねの構成を説明する。
図1に、スプリングアセンブリの部分概要図を示す。
図2に、同スプリングアセンブリに収容されている圧縮コイルばねの素線径方向断面図を示す。
図1に示すように、スプリングアセンブリ1は、カバー部材10と、ガイド部材20と、圧縮コイルばね30と、を有している。スプリングアセンブリ1は、車両の跳ね上げ式のパワーバックドアに用いられる。
【0011】
カバー部材10は、ポリアミド樹脂製であり、上向きに開口する有底円筒状を呈している。カバー部材10の底壁の上面には、ばね座100が配置されている。カバー部材10の下端は、車両のバックドア(図略)に揺動可能に取り付けられている。ガイド部材20は、円筒状を呈しており、カバー部材10の底壁の上面から上向きに突設されている。ガイド部材20は、ばね座100の内側に配置されている。ガイド部材20は、鉄製であり、表面はカチオン電着塗装されている。圧縮コイルばね30は、カバー部材10内に収容されている。圧縮コイルばね30は、ガイド部材20を軸にして配置され、下側の座巻部は、ばね座100に環装されている。圧縮コイルばね30は、バックドアの開閉操作に応じて、上下方向に伸縮を繰り返す。
【0012】
図2に示すように、圧縮コイルばね30は、拡径方向に、ばね本体31と、塗装層32と、接着剤層33と、植毛層34と、を有している。ばね本体31は、ばね鋼であり、表面にはリン酸亜鉛皮膜が形成されている。塗装層32は、ばね本体31の表面に配置されている。塗装層32は、塗膜形成成分の樹脂として、変性エポキシエステル樹脂およびメラミン樹脂を有している。塗装層32の厚さは、25μmである。接着剤層33は、塗装層32の表面に配置されている。接着剤層33は、変性エポキシ樹脂および防錆顔料を有する接着剤と、非晶質シリカを有するチキソ性付与剤と、を有する接着剤組成物から形成されている。接着剤層33の厚さは、41μm程度である。接着剤層33には植毛用フィラーが固定されるため、接着剤層33の厚さは、植毛用フィラーの影響を受けて一定ではない。接着剤層33の表面330の鉛筆硬度は3Hである。
【0013】
植毛層34は、接着剤層33の表面330に配置されている。植毛層34は、ナイロン66繊維製の植毛用フィラーからなる。植毛用フィラーの長さは800μmであり、一部は接着剤層33に埋設され、それ以外の他部は接着剤層33から外側に突出している。植毛層34は、接着剤層33から突出した植毛用フィラーの他部により形成されている。接着剤層33の表面330において、任意の1.2mm2の範囲に固定される植毛用フィラーの本数は76本であり、そのうち、略直立した状態(接着剤層33の表面330に対して垂直な状態から傾斜角度が45°までの状態)で固定されている直立フィラーの本数は60本、それ以外の傾斜フィラーの本数は16本である。この場合、植毛層34における植毛用フィラーの傾斜率(傾斜フィラーの割合)は、21%である。圧縮コイルばね30は、本開示の植毛ばねの概念に含まれる。
【0014】
次に、本実施形態の圧縮コイルばねの作用効果を説明する。本実施形態によると、接着剤層33は、接着剤とチキソ性付与剤とを有する接着剤組成物から形成される。チキソ性付与剤の作用により、接着剤組成物を塗布する際に粘度が高くなり流動性が低下するため、液だれが抑制される。これにより、形成される接着剤層33の厚さを大きくすることができ、接着剤層33に多くの植毛用フィラーを固定することができる。また、植毛層34においては、直立フィラーの本数が多い。したがって、圧縮コイルばね30によると、ガイド部材20との摩擦を低減することができ、ガイド部材20に対して塗装の剥がれなどのダメージを与えにくい。
【0015】
以上、本開示の植毛ばねの一実施形態を説明したが、本開示の植毛ばねは、当該形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
【0016】
[ばね本体]
ばね本体の種類は、コイルばね、板ばね、渦巻きばね、トーションバーなど特に限定されない。ばね本体の材質としては、一般にばね用として用いられるばね鋼が好適であり、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼などが挙げられる。ばね本体においては、例えば、ばね鋼などを熱間または冷間成形した後、ショットピーニングなどを施して、表面粗さを調整しておくとよい。また、ばね本体の素地表面に、リン酸亜鉛、リン酸鉄などのリン酸塩の皮膜を形成しておくことが望ましい。リン酸塩皮膜の上に塗装層を形成することにより、耐食性が向上し、塗装層の密着性も向上する。特に、リン酸塩がリン酸亜鉛の場合には、耐食性がより向上する。リン酸塩皮膜は、既に公知の方法により形成すればよい。例えば、リン酸塩の溶液槽にばね本体を浸漬する浸漬法、リン酸塩の溶液をスプレーガンなどでばね本体に吹き付けるスプレー法などが挙げられる。
【0017】
[塗装層]
塗装層は、ばね本体の表面に配置される。塗装層を形成する塗料の種類は限定されない。例えば、溶剤系塗料、水系塗料、粉体塗料などが挙げられる。溶剤系塗料および水系塗料(液体塗料)の場合は、薄い塗膜(塗装層)を形成しやすいという利点がある。また、平滑な塗膜を形成しやすく、膜厚管理が容易である。例えば、溶剤系塗料によると、設備を小型化できる。水系塗料にばね本体を浸漬し、ばね本体を陽極または陰極として電圧を印加する電着塗装によると、化学的に安定で機械的強度が大きい塗膜を形成できる。粉体塗料の場合は、有機溶剤を使用しないため、環境への負荷が小さい。また、液体塗料と比較して、塗料の飛散が少なく回収が容易であり、厚膜化も容易である。
【0018】
いずれの塗料も、塗膜形成のベース材料である樹脂、顔料、添加剤、溶剤などから構成すればよい。樹脂としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の中から選択すればよい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、メタクリル樹脂、ナイロン樹脂などが挙げられる。防錆性を高めるという観点においては、エポキシ樹脂を選択することが望ましい。なかでも、変性エポキシ樹脂が好適である。また、耐摩耗性、耐熱性、耐候性を高めるという観点においては、メラミン樹脂を選択することが望ましい。例えば、変性エポキシ樹脂とメラミン樹脂との両方を有するエポキシ・メラミン系塗料が好適である。
【0019】
顔料としては、着色顔料、体質顔料、防錆顔料などがある。着色顔料としては、カーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラ、黄土などの無機系顔料、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、ベンジジンエローなどの有機系顔料が挙げられる。体質顔料としては、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、シリカ、硫酸バリウムなどが挙げられる。防錆顔料としては、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウムなどが挙げられる。添加剤としては、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電抑制剤、難燃剤などが挙げられる。
【0020】
塗装層の厚さは、機械的強度、防錆性能、植毛ばねの要求寸法などを考慮して適宜決定すればよい。所望の性能を充分に発揮させるためには、10μm以上、さらには15μm以上の厚さが好適である。他方、設計ロバスト性の観点から、35μm以下、さらには25μm以下の厚さが好適である。
【0021】
[接着剤層]
接着剤層は、塗装層の表面に配置される。接着剤層は、接着剤とチキソ性付与剤とを有する接着剤組成物から形成される。接着剤は、溶剤型でもエマルジョン型でもよい。例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを主成分とする接着剤が挙げられる。接着剤は、塗装層の樹脂との接着性を考慮して適宜選択すればよい。なかでも、変性エポキシ樹脂を主成分とする溶剤型の接着剤は、防錆性が高く、一液型のラッカーとして使用できるため好適である。接着剤は、樹脂成分に加えて、顔料、溶剤、添加剤を含んでいてもよい。顔料としては、前述した塗装層の塗料と同様に、着色顔料、体質顔料、防錆顔料などがある。添加剤としては、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電抑制剤、難燃剤などが挙げられる。
【0022】
チキソ性付与剤は、接着剤組成物にチキソトロピー性を付与できるものであればよい。チキソ性付与剤は、非晶質シリカなどの顔料、アミノ樹脂などの樹脂、溶剤、添加剤などから構成すればよい。接着剤組成物の液だれを抑制し、接着剤層の厚さを大きくするという観点から、チキソ性付与剤の配合量は、接着剤の100質量部に対して5質量部以上にすることが望ましい。10質量部以上が好適である。反対に、接着剤組成物における接着剤の樹脂成分の割合が相対的に低下することによる密着性などの低下を抑制するという観点から、チキソ性付与剤の配合量は、接着剤の100質量部に対して15質量部以下にすることが望ましい。
【0023】
接着剤組成物は、接着剤およびチキソ性付与剤に加えて、粗面化溶剤、リターダー(乾燥遅延剤)などを含んでいてもよい。粗面化溶剤は、接着剤組成物を塗布する対象(塗装面)の表面粗さを大きくする作用を有する溶剤である。塗装面の表面粗さが大きいと、アンカー効果により、塗装層と接着剤層との密着力が大きくなり、接着剤層の剥離が抑制される。結果、植毛用フィラーが脱落しにくくなり、相手部材との摩擦低減効果が持続する。例えば、塗装層がカチオン電着塗装により形成される場合には、表面が平滑であるため、接着剤層との密着力が低下しやすい。このような場合に、粗面化溶剤を使用して表面粗さを大きくすると効果的である。また、リターダーを配合すると、接着剤組成物を塗布してから植毛するまでに、接着剤組成物が乾燥してしまうのを抑制することができる。
【0024】
接着剤層には植毛用フィラーが固定される。接着剤層の厚さは、植毛用フィラーの影響を受けて一定ではなく、例えば植毛後に、植毛前の1.5倍程度の厚さになる部分がある。接着剤層の厚さを大きくして多くの植毛用フィラーを固定するという観点から、接着剤層の厚さは、植毛前において20μm以上、22μm以上、さらには25μm以上、植毛後において25μm以上、26μm以上、さらには29μm以上であることが望ましい。他方、液だれを抑制するという観点から、接着剤層の厚さは、植毛前において65μm以下、植毛後において90μm以下、88μm以下、さらには75μm以下の厚さが好適である。
【0025】
本発明者の検討によると、チキソ性付与剤を配合した接着剤層の表面は、配合しない場合と比較して硬くなる。接着剤層の表面の硬さが大きくなると、使用時に摩耗しにくくなり、植毛用フィラーの保持性が向上する。接着剤層の表面の硬さは、例えば、JIS K5600-5-4:1999「引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して測定される鉛筆硬度で、3H以上であることが望ましい。
【0026】
[植毛層]
植毛層は、接着剤層に固定される植毛用フィラーからなる。植毛用フィラーの一部は接着剤層に埋設され、それ以外の他部は接着剤層から外側に突出している。植毛層は、接着剤層から突出した植毛用フィラーの他部により形成される。
【0027】
植毛用フィラー(以下、単に「フィラー」と称す場合がある)の種類は、特に限定されず、有機フィラーでも無機フィラーでもよい。有機フィラーは、無機フィラーと比較して、柔軟である。このため、付着時に折れにくく植毛状態を維持しやすい。有機フィラーとしては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、綿繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、フッ素繊維などが挙げられる。なかでも、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、綿繊維、およびポリエチレン繊維から選ばれる一種以上を含むことが望ましい。無機フィラーとしては、ガラスファイバーなどが挙げられる。
【0028】
植毛用フィラーの表面抵抗値は、1×105Ω以上1×1018Ω未満であるとよい。本明細書においては、表面抵抗値として、日置電機(株)製の超絶縁計「SM-8220」により測定された値を採用する。植毛用フィラーの表面抵抗値が1×105Ω未満の場合には、導電性が高く放電しやすくなるためフィラーの飛翔性が悪くなる。このため、静電力による植毛が難しくなる。より好適な表面抵抗値は、1×106Ω以上である。反対に、表面抵抗値が1×1018Ω以上になると、帯電しすぎてフィラーの飛翔性が悪くなる。このため、静電力による植毛が難しくなる。より好適な表面抵抗値は、1×1013Ω以下、さらには1×1010Ω以下である。なお、植毛工程において植毛用フィラーが循環して使用され乾燥すると、表面抵抗値は大きくなる。
【0029】
植毛用フィラーとしては、分散性の向上や過剰な帯電を抑制することを目的として、電着処理、吸水処理、撥水処理、プライマー処理などの種々の表面処理が施された繊維を使用することができる。例えば、植毛用フィラーは、表面に電着処理膜を有することが望ましい。電着処理膜を有することにより、フィラーの表面抵抗値が所望の値に調整される。これにより、フィラーの過剰な帯電が抑制され植毛時の飛翔力が向上する。また、繊維は凝集しやすいため、そのままでは絡まりやすく塊状になりやすい。この点、表面に電着処理膜を有すると、繊維(植毛用フィラー)の分散性が向上する。これにより、フィラーの凝集が抑制され、ほぼ均一な植毛状態を実現することができる。
【0030】
電着処理膜は、植毛用フィラーとして使用する繊維の表面を電着処理して形成される。電着処理としては、繊維をタンニン、吐酒石などで処理して、繊維の表面にタンニン化合物などを生成させる方法がある。また、塩化バリウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸ソーダ、硫酸ナトリウムなどの無機塩類、第四級アンモニウム塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ベタイン型などの界面活性剤、および有機珪素化合物(コロイダルシリカ)を適宜混合した溶液で繊維を処理して、繊維の表面にシリコン系化合物を付着させる方法がある。
【0031】
植毛用フィラーは、繊維状を呈している。フィラーの長手方向の長さは特に限定されないが、フィラーが短すぎると、フィラーが接着剤層に埋もれてしまい所望の植毛状態を実現できなくなる。例えば、フィラーの長さは50μm以上であることが望ましい。200μm以上、さらには500μm以上であるとより好適である。一方、フィラーが長すぎると、フィラーが倒れて所望の植毛状態を実現できなくなる。例えば、フィラーの長さは2000μm以下であることが望ましい。1000μm以下、さらには600μm以下であるとより好適である。フィラーの短手方向の最大長さ(太さ)は、特に限定されないが、フィラーが細すぎると、自重でカールしてしまい所望の植毛状態を実現できなくなる。例えば、フィラーの太さは5μm以上であることが望ましい。10μm以上、さらには20μm以上であるとより好適である。一方、フィラーが太すぎると、触感が悪くなる。例えば、フィラーの太さは50μm以下であることが望ましい。40μm以下、さらには30μm以下であるとより好適である。
【0032】
植毛用フィラーの植え付け状態は、植毛ばねの全体において必ずしも一定である必要はない。例えば、相手部材と接触する可能性がある部位についてはフィラーの本数を多くし、接触する可能性がない部位についてはフィラーの本数を減らしてもよい。相手部材との摩擦を低減するという観点においては、植毛用フィラーの本数は多い方が望ましい。例えば、接着剤層の表面において、1.2mm2の範囲を測定領域とした場合に、当該測定領域に固定される植毛用フィラーの本数は、32本以上であることが望ましい。35本以上、さらには40本以上であるとより好適である。
【0033】
植毛用フィラーは、ばね本体の表面に対して直立した状態だけでなく傾斜した状態でも植え付けられる。植え付けられたフィラー同士が互いに交差すると、植毛層によるエネルギー吸収量が多くなり、消音性が向上すると考えられる。他方、直立した状態のフィラーを多くすると、相手部材との摩擦低減効果が高くなり、相手部材に対するダメージを小さくするのに有効である。したがって、相手部材との摩擦を低減するという観点においては、測定領域に固定される植毛用フィラーのうち、接着剤層の表面に対して略直立した状態で固定される直立フィラーの本数は、11本以上であることが望ましい。12本以上、さらには16本以上であるとより好適である。
【0034】
本開示において、「略直立した状態で固定される直立フィラー」とは、接着剤層の表面に対して垂直な状態から傾斜角度が45°までの状態で固定されるフィラーを意味する。以下に、直立フィラーの認定方法を説明する。
図3に、植毛用フィラーの植え付け状態の模式図を示す。
図3中、(a)は垂直状態を示し、(b)は傾斜状態を示す。断面が円形状の植毛用フィラーを、
図3に点線で示すように接着剤層の表面に添って切断すると、傾斜している場合には断面が楕円形状になる。
図3(b)に示すように、傾斜しているフィラーの接着剤層からの角度をθとすると、傾斜しているフィラーの断面の長軸の長さd’と、傾斜していないフィラーの直径dと、の関係は、次式(I)で表すことができる。
d’=d/sinθ ・・・(I)
本開示においては、植毛ばねの表面に医療用メスを添わせてフィラーを切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。そして、フィラー断面の長軸の長さが、植毛に使用されているフィラーの直径(太さ)の1.41倍以下(前出式(I)中、45°≦θ≦90°に相当)のフィラーを、直立フィラーとみなす。
【0035】
接着剤層の表面の測定領域に固定される植毛用フィラーのうち、直立フィラー以外のフィラーを傾斜フィラーとした場合、フィラー全体における傾斜フィラーの割合を、植毛用フィラーの傾斜率として示すことができる。すなわち、測定領域における植毛用フィラーの傾斜率は、次式(II)により算出される。
傾斜率(%)=測定領域における傾斜フィラーの本数/測定領域におけるフィラーの本数 ・・・(II)
相手部材との摩擦を低減するという観点においては、植毛用フィラーの傾斜率は、66%以下であることが望ましい。65%以下、さらには50%以下であるとより好適である。
【0036】
<植毛ばねの製造方法>
本開示の植毛ばねは、例えば以下のようにして製造することができる。まず、ばね本体に対して、必要に応じて、ショットピーニングなどによる表面粗さの調整、リン酸塩の皮膜形成などを行う。次に、塗装層を形成するための塗料をばね本体に付着させる。塗料を付着させる方法としては、塗料の種類に応じて、刷毛塗り、スプレー法、浸漬法など、既に公知の方法を採用すればよい。続いて、塗膜の表面に接着剤組成物を塗布する。接着剤組成物の塗布は、刷毛塗り、スプレー法などで行えばよい。例えば、スプレー法を採用する場合、接着剤層が所望の厚さになるように、スプレーガンの吐出圧、吐出量、移動速度、吹き付け時間、ワーク間距離などを適宜調整すればよい。それから、接着剤組成物の塗布面に、植毛用フィラーを付着させる。植毛は、静電塗装ガン、静電流動浸漬槽などを用いればよい。最後に、植毛されたばね本体を加熱する。加熱は、通常使用される電気炉、熱風乾燥機などを用いて行えばよい。加熱により、塗膜および塗布された組成物が乾燥し、固化されて、塗装層および接着剤層が形成される。加熱温度、加熱時間などは、塗料、接着剤の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、加熱温度は130~170℃、加熱時間は10~40分にするとよい。
【実施例0037】
次に、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明する。
(1)チキソ性付与剤の有無による接着剤層の厚さの違い
チキソ性付与剤の有無が異なる接着剤組成物を使用して、形成される接着剤層の厚さを調べた。接着剤層を形成する基材としては、長方形状の鋼板(縦70mm×横150mm、厚さ0.8mm)の表面に、リン酸亜鉛皮膜を形成し、その表面にエポラミン塗装を施したものを使用した。エポラミン塗装は、変性エポキシエステル樹脂およびメラミン樹脂を有するエポキシ・メラミン系塗料を用いた塗装であり、当該塗料をスプレーガンにより厚さ25μm狙いで吹き付けて行った。表1に、エポキシ・メラミン系塗料の成分を示す。
【表1】
【0038】
接着剤組成物としては、チキソ性付与剤の有無が異なる二種類を準備した。表2に、使用した接着剤組成物の成分を示す。表3に、接着剤組成物における接着剤およびチキソ性付与剤の成分を示す。
【表2】
【表3】
【0039】
各々の接着剤組成物を、10℃、35℃の二種類の液温で、基材のエポラミン塗装面にスプレーガンで吹き付けた。その後、熱風乾燥機に入れ、150℃で20分間加熱して、塗装層および接着剤層を形成した。サンプルは、接着剤組成物および液温が同じものを6個ずつ製造した(サンプルNo.1~6)。
図4に、形成された接着剤層の厚さを示す。
図4に示すように、チキソ性付与剤を含む接着剤組成物を使用した場合、チキソ性付与剤を含まない接着剤組成物を使用した場合と比較して、いずれの液温においても、接着剤層の厚さが2倍以上大きくなった。また、接着剤組成物の液温が高い方が、厚さがやや大きくなる傾向が見られた。
【0040】
(2)チキソ性付与剤の有無による摩耗量の違い
チキソ性付与剤の有無が異なる接着剤層を形成し、植毛後の試験片の耐摩耗性を調べた。
【0041】
<試験片の製造>
まず、先の(1)の基材と同様に、鋼板の表面にリン酸亜鉛皮膜を形成し、エポラミン塗装を施した。次に、チキソ性付与剤の有無が異なる二種類の接着剤組成物を、いずれも35℃の液温でエポラミン塗装面にスプレーガンで吹き付けた。エポラミン塗装の塗料および接着剤組成物の成分については、前出の表1~表3に示したとおりである。次に、接着剤組成物を塗布した表面に、植毛用フィラーを静電塗装ガンを用いて吹き付けた。植毛用フィラーとしては、ナイロン66繊維製の有機フィラー(太さ20μm、長さ800μm、電着処理膜あり、表面抵抗値106~107Ω)を使用した。その後、熱風乾燥機に入れ、150℃で10分間加熱して、塗装層および接着剤層を形成した。このようにして、鋼板の表面に、下から順にリン酸亜鉛皮膜、塗装層、接着剤層、植毛層が形成された試験片を製造した。試験片における塗装層の厚さは25μmである。接着剤層は、厚さを変えて二種類形成した。チキソ性付与剤を含まない接着剤組成物を使用した場合の厚さは27μm、28μmであり、チキソ性付与剤を含む接着剤組成物を使用した場合の厚さは53μm、60μmであった。試験片は、接着剤層の厚さごとに3個ずつ製造した。
【0042】
これとは別に、植毛を施す前の状態、すなわちエポラミン塗装面に接着剤組成物を吹き付けた状態の鋼板を熱風乾燥機に入れ、150℃で10分間加熱して、塗装層および接着剤層を形成した。そして、形成された接着剤層の表面の硬さを、JIS K5600-5-4:1999「引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して測定した。結果、チキソ性付与剤を含まない接着剤層の鉛筆硬度はH、チキソ性付与剤を含む接着剤層の鉛筆硬度は3Hであった。
【0043】
<試験方法>
JIS K7204:1999「プラスチック-摩耗輪による摩耗試験方法」に準拠したテーバー摩耗試験を行い、試験片の摩耗量を測定した。試験片は直径100mmの円板状、摩耗輪はCS10、摩耗輪の回転速度は72rpmとした。
【0044】
<試験結果>
図5に、試験片の摩耗量の測定結果を示す。
図5に示すように、チキソ性付与剤を含む接着剤組成物を使用した方が、摩耗量は少なかった。この理由は、接着剤層の厚さが大きいため、フィラーの数が多くその保持力が高いこと、直立フィラーが多くなる(フィラーの傾斜率が小さくなる)ことにより、相手部材(本摩耗試験においては摩耗輪)との摩擦が小さくなったこと、などが考えられる。
【0045】
(3)植毛状態の評価
コイルばねに、チキソ性付与剤の有無が異なる種々の厚さの接着剤層を形成し、植毛を施した場合のフィラーの植え付け状態を調べた。
【0046】
<植毛ばねの製造>
コイルばねの表面に、先の(2)と同様にして、下から順にリン酸亜鉛皮膜、塗装層、接着剤層、植毛層を形成して植毛ばねを製造した。具体的には、まず、ばね鋼製のコイルばねに、リン酸亜鉛皮膜を形成し、エポラミン塗装を施した。次に、チキソ性付与剤の有無が異なる二種類の接着剤組成物を、いずれも35℃の液温でエポラミン塗装面にスプレーガンで吹き付けた。エポラミン塗装の塗料および接着剤組成物の成分については、前出の表1~表3に示したとおりである。次に、接着剤組成物を塗布した表面に、ナイロン66繊維製の有機フィラー(同上)を静電塗装ガンを用いて吹き付けた。その後、熱風乾燥機に入れ、150℃で10分間加熱して、塗装層および接着剤層を形成した。使用したコイルばねの寸法は、線径3.6mm、外径27.5mm、自由長さ724mm、総巻数は57である。植毛ばねにおける塗装層の厚さは25μmである。
【0047】
<評価方法>
フィラーの植え付け状態については、以下のように、所定の測定領域におけるフィラーの本数を数えることにより評価した。まず、植毛ばねの表面に医療用メスを添わせて表層を切断し、切断面をSEMで観察した。そして、1.2mm2の範囲の測定領域におけるフィラーの本数を数えた。次に、フィラーの断面における長軸の長さが、使用したフィラーの太さの1.41倍以下の直立フィラーの本数を数えた。それから、前出式(II)により、フィラーの傾斜率を算出した。
【0048】
<評価結果>
一例として、植毛ばねのコイル内側の植え付け状態の評価結果を示す。
図6に、接着剤層の厚さに対してフィラーの本数をプロットしたグラフを示す。
図7に、接着剤層の厚さに対して直立フィラーの本数をプロットしたグラフを示す。
図8に、接着剤層の厚さに対してフィラーの傾斜率をプロットしたグラフを示す。
図6に示すように、チキソ性付与剤を含む接着剤層に植毛した場合、固定されるフィラーの本数が増加した。この場合、接着剤層の厚さが20~40μmと比較的薄い場合にも、フィラーの本数が多くなった。また、
図7、
図8に示すように、チキソ性付与剤を含む接着剤層の方が、直立フィラーの本数が多くなり、フィラーの傾斜率が低下した。
【0049】
(4)耐久性の評価
先の(3)で製造した接着剤層の厚さが異なる7個の植毛ばねを、各々、スプリングアセンブリ(前出
図1参照)に装着して、植毛ばねを上下方向に3万回伸縮させる耐久試験を行った。その後、ガイド部材(内筒)の状態を調べることにより、耐久性を評価した。ガイド部材は、鉄製で円筒状を呈し、表面はカチオン電着塗装されている。植毛ばねの接着剤層は、全てチキソ性付与剤を含む接着剤組成物から形成されている。耐久性については、ガイド部材の塗装の剥がれの程度により評価し、剥がれが見られない場合を耐久性に優れる(後出の表4中、○印で示す)、一部に剥がれが見られる場合を耐久性やや不良(同表中、△印で示す)、と評価した。表4に、耐久性の評価結果を示す。
【表4】
【0050】
表4に示すように、植毛ばねのコイル内側の接着剤層の厚さが29μm以上の場合、ガイド部材の塗装に剥がれはなく、高い耐久性を示した。しかしながら、接着剤層の厚さが26μmの場合には、ガイド部材の塗装の一部に剥がれが生じた。
1:スプリングアセンブリ、10:カバー部材、100:ばね座、20:ガイド部材、30:圧縮コイルばね(植毛ばね)、31:ばね本体、32:塗装層、33:接着剤層、330:接着剤層の表面、34:植毛層。