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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092743
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20230627BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230627BHJP
【FI】
B60R16/04 D
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207933
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河口 明世
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA01
5H040AS07
5H040AY03
5H040CC33
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】車室内にバッテリーを配置する場合における車室内の荷物収納空間の利用効率を向上させる。
【解決手段】車両用電源であるバッテリー24を車室内に備える車両であって、バッテリー24が車室内の壁状部材30の内側に収納されており、壁状部材30は、起立位置と車室の床面に沿う倒伏位置との間で上下回動可能、あるいは起立位置と車室の側壁に沿う格納位置との間で水平回動可能に構成されている。ここで、車室とは、乗員が乗車するスペースと一体の荷室の他にトランクルーム等の荷室も含むものとする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電源であるバッテリーを車室内に備える車両であって、
前記バッテリーが前記車室内の壁状部材の内側に収納されており、
前記壁状部材は、起立位置と前記車室の床面に沿う倒伏位置との間で上下回動可能、あるいは前記起立位置と前記車室の側壁に沿う格納位置との間で水平回動可能に構成されている車両。
【請求項2】
請求項1に記載された車両であって、
前記壁状部材は、前記起立位置にある状態で、前記車室を構成する運転室と荷室とを仕切るセパレーターとして機能する車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両であって、
前記壁状部材を前記起立位置と前記倒伏位置間で上下回動可能に支持する支持機構を備えており、
前記支持機構には、前記壁状部材を前記起立位置、あるいは前記倒伏位置に保持するロック機構と、前記ロック機構のロック状態を解除するロック解除機構とが設けられている車両。
【請求項4】
請求項3に記載された車両であって、
前記壁状部材が前記倒伏位置にある状態で、前記壁状部材と前記車室の床面との間には、荷物の収納空間が形成される車両。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載された車両であって、
前記壁状部材が前記倒伏位置にある状態で、前記壁状部材の上に荷物を載置可能となる車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源であるバッテリーを車室内に備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車では、モータ駆動用に大容量のバッテリーが必要とされるため、前記バッテリーを車両の床下に設置するのが一般的である。この場合、車両の衝突安全性を考慮すると、バッテリーを安全に設置できる場所は、車両の床下骨格に囲われた範囲に限られる。このため、必要なバッテリーを全て車両の床下に設置できない場合がある。この場合、一部のバッテリーを車室内に設置することがある。
【0003】
車室内にバッテリーを設置する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両100では、図7に示すように、リヤシート102の後側のトランクルーム103内における所定位置にバッテリー105が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-252467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したように、バッテリー105をトランクルーム103内の所定位置に固定して設置する構造では、バッテリー105によってトランクルーム103内の荷物収納空間の利用効率が低下する。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車室内にバッテリーを配置する場合における車室内の荷物収納空間の利用効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両用電源であるバッテリーを車室内に備える車両であって、前記バッテリーが前記車室内の壁状部材の内側に収納されており、前記壁状部材は、起立位置と前記車室の床面に沿う倒伏位置との間で上下回動可能、あるいは前記起立位置と前記車室の側壁に沿う格納位置との間で水平回動可能に構成されている。ここで、車室とは、乗員が乗車するスペースと一体の荷室の他にトランクルーム等の荷室も含むものとする。
【0008】
本発明によると、バッテリーを収納する壁状部材は、起立位置と車室の床面に沿う倒伏位置との間で上下回動可能、あるいは前記車室の所定位置と側壁に沿う格納位置との間で水平回動可能に構成されている。このため、車室内に荷物を搭載する場合に、前記荷物の大きさに応じて、前記壁状部材を起立位置と倒伏位置間で上下回動させたり、あるいは所定位置と格納位置間で水平回動させたりすることができる。即ち、長尺物の荷物等を車室内に搭載する場合に壁状部材を邪魔にならない位置まで回動させて、車室の長さスペースを確保することが可能になる。この結果、車室内の荷物収納空間の利用効率が向上する。
【0009】
第2の発明は、壁状部材は、起立位置にある状態で、車室を構成する運転室と荷室とを仕切るセパレーターとして機能する。このため、バッテリーを収納する壁状部材が荷室内に荷物を搭載する際に邪魔にならない。
【0010】
第3の発明によると、壁状部材を起立位置と倒伏位置間で上下回動可能に支持する支持機構を備えており、前記支持機構には、前記壁状部材を前記起立位置、あるいは前記倒伏位置に保持するロック機構と、前記ロック機構のロック状態を解除するロック解除機構とが設けられている。
【0011】
第4の発明によると、壁状部材が倒伏位置にある状態で、前記壁状部材と車室の床面との間には、荷物の収納空間が形成される。このため、壁状部材が起立位置にある状態では搭載できなかった長尺物の荷物も搭載可能になる。
【0012】
第5の発明によると、壁状部材が倒伏位置にある状態で、前記壁状部材の上に荷物を載置可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、車室内にバッテリーを配置する場合における車室内の荷物収納空間の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係る車両の模式縦断面図(壁状部材が起立位置)である。
図2】前記車両の模式縦断面図(壁状部材が倒伏位置)である。
図3】壁状部材の起立状態(セパレーター状態)を表す斜視図である。
図4】壁状部材の起立状態(セパレーター状態)を表す側面図である。
図5】壁状部材の倒伏状態を表す側面図である。
図6】壁状部材の変更例を表す斜視図である。
図7】従来の車両の模式縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施形態1に係る車両について説明する。本実施形態に係る車両は、例えば、ワンボックスタイプの電気自動車である。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、前記車両の前後左右及び上下に対応している。
【0016】
<車両10の概要について>
車両10は、図1図2に示すように、前列シート11(運転席、及び助手席)が設けられた前部の運転室Pと、運転室Pの後側の荷室Nとを備えている。そして、運転室Pと荷室Nとの間は、仕切りボード13によって仕切られている。また、前列シート11が設置される運転室Pの床面15fは、荷室Nの水平な床面15bよりも一定寸法だけ高く設定されており、運転室Pの床面15fと荷室Nの床面15bとの間に段差15dが形成されている。
【0017】
車両10の床下には、図1図2に示すように、前輪12fと後輪12bとの間で、床下骨格(図示省略)に囲われた範囲内に床下バッテリユニット20が設置されている。また、荷室N内には、仕切りボード13と共に運転室Pと荷室N間のセパレーターとして使用できる壁状部材30が設置されている。そして、壁状部材30内には、室内用バッテリユニット24が収納されている。
【0018】
床下バッテリユニット20は、図1等に示すように、第1バッテリー21、第2バッテリー22、第3バッテリー23を備えており、これらのバッテリー21,22,23が直列に接続されることで車両走行用の電動モータ(図示省略)を駆動させる電源として使用される。また、室内用バッテリユニット24は、前記電動モータ等を制御する制御装置、計器類、照明、空調、及び荷室Nの冷凍庫等の電源として使用される。
【0019】
<室内用バッテリユニット24を収納する壁状部材30について>
壁状部材30は、図3に示すように、壁状部材本体部32と、荷室Nの床面15b上で壁状部材本体部32を上下回動可能な状態で支持する支持機構35とを備えている。また、壁状部材本体部32と支持機構35との連結部分には、所定位置で壁状部材本体部32の上下回動を禁止するロック機構40が設けられている。即ち、前記ロック機構40は、図3図4に示すように、壁状部材本体部32がセパレーターとなる起立位置と、図5に示すように、壁状部材本体部32が床面15bと平行になる倒伏位置とで回動を禁止し、壁状部材本体部32をその位置に保持できるように構成されている。なお、ロック機構40には、ロック状態を解除するためのロック解除機構(図示省略)が設けられている。
【0020】
<壁状部材本体部32について>
壁状部材本体部32は、運転室Pと荷室Nとを仕切れるサイスで形成された角形の浅い箱状に形成されており、その内部が室内用バッテリユニット24を収納可能な空間となっている。なお、壁状部材本体部32の厚み寸法は、約200mm程度に設定されている。壁状部材本体部32の回動自由端側(図3では上端)には、壁状部材本体部32を上下回動させる際に使用される取っ手32hが設けられている。また、壁状部材本体部32の回動自由端側の近傍には、壁状部材本体部32が起立位置に保持された際に、運転者が後方確認をするための窓部32wが形成されている。壁状部材本体部32は、一般的に、アルミ板、鋼板により成形されるが、プラスチック板等を使用することも可能である。
【0021】
<支持機構35について>
支持機構35は、図3に示すように、壁状部材本体部32の回転中心側で床面15bに平行に通された回転中心軸35jと、壁状部材本体部32の左右両側で回転中心軸35jを支える左右の軸受けブラケット35xとを備えている。そして、左右の軸受けブラケット35xが固定フランジ35fを介して荷室Nの床面15bにボルト止めされている。
【0022】
ここで、回転中心軸35jの高さ位置は、図5に示すように、壁状部材本体部32が倒伏位置にある状態で、その壁状部材本体部32の下面が運転室Pの床面15fとほぼ等しい高さ位置となるように設定されている。このため、壁状部材本体部32が倒伏位置にある状態では、壁状部材本体部32の下側で段差15dより後側の空間が全て荷物収納空間として使用できる。また、左右の軸受けブラケット35xの固定フランジ35fの位置は、壁状部材本体部32が起立位置から倒伏位置まで回動する際に、壁状部材本体部32の回動中心側の端縁(図4における下端縁)が段差15dと干渉しない位置に設定されている。
【0023】
支持機構35の回転中心軸35jと軸受けブラケット35x間には、上記したロック機構40が設けられている。ロック機構40としては、例えば、軸受けブラケット35x側に設けられたフックと回転中心軸35j側に設けられたラチェット歯車との係合構造等が好適に使用される。
【0024】
<室内用バッテリユニット24について>
室内用バッテリユニット24は、上記したように、車両10の制御装置、計器類、照明、空調、及び荷室Nの冷凍庫等の電源として使用されるバッテリーである。室内用バッテリユニット24は、例えば、ウレタン等の緩衝材を介して壁状部材本体部32の窓部32wと回転中心軸35jとの間に形成された空間に収納される。また、室内用バッテリユニット24の電源ケーブル(図示省略)は、支持機構35の軸受けブラケット35xに沿って床下バッテリユニット20の位置まで配線されている。
【0025】
<室内用バッテリユニット24を設ける利点について>
床下バッテリユニット20によって、仮に、車両走行用の電動モータ(図示省略)、制御装置、計器類、照明、空調、及び荷室Nの冷凍庫等の全てを駆動させる場合、例えば、冷凍庫等の使用状況によっては車両10の走行距離が短くなる等の問題が生じることがある。この点を改善するため、床下バッテリユニット20と室内用バッテリユニット24とを設け、床下バッテリユニット20で車両走行に必要な電動モータ(図示省略)を駆動させ、室内用バッテリユニット24で制御装置、計器類、照明、冷凍庫等を駆動させるようにしている。これにより、例えば、冷凍庫等の使用状況が変化しても、必要な走行距離を確保できるようになる。なお、車両10の床下に室内用バッテリユニット24を格納するスペースがある場合には、そのバッテリユニット24を床下に設置しても良い。
【0026】
<室内用バッテリユニット24を収納する壁状部材30の取り扱いについて>
車両10の荷室Nに長尺物ではない通常の箱型の荷物Rs(図2参照)を積載する場合には、図1等に示すように、壁状部材30の壁状部材本体部32を起立位置まで回動させてロックし、運転室Pと荷室N間のセパレーターとして使用する。この状態で、セパレーターとしての壁状部材本体部32は、荷室Nに荷物Rsの搭載する際の妨げにはならない。
【0027】
しかし、壁状部材30の壁状部材本体部32をセパレーターとして使用している場合、図4に示すように、長尺物の荷物Ry、例えば、パイプや巻かれたカーペット等を搭載する際に、その荷物Ryの先端が壁状部材本体部32の下端部に当接して搭載不能になる場合がある。このようなときに、壁状部材30の壁状部材本体部32を、図5に示すように、倒伏位置まで下回動させてロックし、その壁状部材本体部32の下側に荷物収納空間を形成する。これにより、壁状部材本体部32の下端部が長尺物の荷物Ryの先端部分と干渉しなくなり、壁状部材本体部32の下側の荷物収納空間に長尺物の荷物Ryを挿入できるようになる(図2参照)。
【0028】
<本実施形態における用語と本発明の用語との対応>
本実施形態における運転室Pと荷室Nとが本発明における車室に相当する。本実施形態における室内用バッテリユニット24が本発明のバッテリーに相当し、壁状部材30の壁状部材本体部32が本発明の壁状部材に相当する。
【0029】
<本実施形態に係る車両10の長所について>
本実施形態に係る車両10によると、室内用バッテリユニット24(バッテリー)を収納する壁状部材本体部32(壁状部材)は、起立位置と荷室N(車室)の床面15bに沿う倒伏位置との間で上下回動可能に構成されている。このため、荷室N内に荷物Rs,Ryを搭載する場合に、荷物Rs,Ryの種類に応じて、壁状部材本体部32を起立位置と倒伏位置間で上下回動させることができる。即ち、長尺物の荷物Ryを荷室N内に搭載する場合に壁状部材本体部32(壁状部材)を邪魔にならない位置まで回動させて長さスペースを確保することが可能になる。この結果、荷室N内の荷物収納空間の利用効率が向上する。
【0030】
また、壁状部材本体部32(壁状部材)は、起立位置にある状態で、運転室Pと荷室Nとを仕切るセパレーターとして機能する。このため、室内用バッテリユニット24を収納する壁状部材本体部32は、通常の箱型の荷物Rsの搭載時に邪魔にならない。さらに、壁状部材本体部32(壁状部材)が倒伏位置にある状態で、壁状部材本体部32と荷室N(車室)の床面15bとの間には、荷物Ryの収納空間が形成される。このため、壁状部材本体部32が起立位置にある状態では搭載できなかった長尺物の荷物Ryも搭載可能になる。
【0031】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、室内用バッテリユニット24を収納する壁状部材30の壁状部材本体部32が起立位置と倒伏位置間で上下回動可能な構成であることを例示した。しかし、図6に示すように、壁状部材30hの壁状部材本体部32x,32yを扉状に水平回動可能なように構成することも可能である。即ち、室内用バッテリユニット24を収納する右側の壁状部材本体部32yと左側の壁状部材本体部32xとをそれぞれ右回転中心軸、左回転中心軸を中心に回動させるような構成でも可能である。これにより、左右の壁状部材本体部32x,32yをセパレーターとして使用し、あるいは車両の側壁に沿う格納位置に格納することが可能になる。
【0032】
また、本実施形態では、運転室Pの床面15fと荷室Nの床面15bとの間に段差15dを備える車両10について例示した。しかし、運転室Pの床面15fと荷室Nの床面15bとが連続している車両に本発明を適用することも可能である。また、本実施形態では、図3に示すように、支持機構35を回転中心軸35jと、その回転中心軸35jを支える左右の軸受けブラケット35xとから構成する例を示した。しかし、支持機構35を左右の四節リンク機構から構成し、四節リンク機構によって壁状部材本体部32を起立位置と倒伏位置間で上下回動可能に支持する構成でも可能である。また、壁状部材本体部32が起立位置まで上方に回動する際に押し上げ力を付与するバネ材を支持機構35に付加する構成でも可能である。
【0033】
さらに、本実施形態では、手動で壁状部材本体部32を起立位置と倒伏位置間で回動させる例を示したが、電動モータの回転力を利用して壁状部材本体部32を上下回動させる構成でも可能である。
【符号の説明】
【0034】
P・・・・運転室(車室)
N・・・・荷室(車室)
15b・・床面(車室の床面)
20・・・床下バッテリユニット
24・・・室内用バッテリユニット(バッテリー)
30・・・壁状部材
32・・・壁状部材本体部(壁状部材)
35・・・支持機構
40・・・ロック機構
Rs・・・荷物
Ry・・・荷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7