(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092744
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】充電装置及び電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20230627BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H02M3/07
H02J1/00 306L
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207936
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 良之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章伸
【テーマコード(参考)】
5G165
5H730
【Fターム(参考)】
5G165AA08
5G165DA04
5G165EA01
5G165HA03
5G165NA01
5G165NA06
5G165NA08
5H730AS04
5H730BB02
5H730DD05
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】充電対象のコンデンサを短時間で高電圧まで充電可能な小型の充電装置を提供する。
【解決手段】マルクスジェネレータ10は、コンデンサC1~CNを並列接続して充電する第1のサイクルと、充電されたコンデンサC1~CNを直列に接続して出力コンデンサC
OUTを充電する第2のサイクルと、を繰り返して出力コンデンサC
OUTを充電する。起動用半導体スイッチSWは、コンデンサC1~CNを充電するときにオンとなり、出力コンデンサC
OUTが充電されるときにオフとなる。電圧検出器11は、出力コンデンサC
OUTの電圧を検出する。制御回路20は、出力コンデンサC
OUTが目標電圧まで充電されるように、マルクスジェネレータ10の充電動作及び起動用半導体スイッチSWの動作を制御する。第1のサイクルで直列接続されたコンデンサC1~CNが出力する電圧は、出力コンデンサC
OUTの目標電圧よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間で複数のコンデンサを並列接続して充電する第1のサイクルと、充電された前記複数のコンデンサを前記出力端子とグランドとの間で直列に接続して前記出力端子と前記グランドとの間に接続される出力コンデンサを充電する第2のサイクルと、を繰り返し行うことで、前記出力コンデンサを充電するマルクスジェネレータと、
前記マルクスジェネレータの前記入力端子と直流電源との間に挿入され、前記複数のコンデンサを充電するときにオンとなり、前記出力コンデンサを充電するときにオフとなる起動用半導体スイッチと、
前記出力コンデンサの電圧を検出する電圧検出器と、
前記出力コンデンサが目標電圧まで充電されるように、前記マルクスジェネレータの充電動作及び起動用半導体スイッチの動作を制御する制御回路と、を備え、
前記第1のサイクルで直列接続された前記複数のコンデンサが出力する電圧は、前記出力コンデンサの前記目標電圧よりも高い、
充電装置。
【請求項2】
前記マルクスジェネレータの前記出力端子と前記出力コンデンサとの間に挿入され、前記直列接続された複数のコンデンサが前記出力コンデンサを充電する場合に流れる電流とは逆方向に流れる電流を阻止する逆流防止手段が挿入される、
請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記逆流防止手段は、前記直列接続された複数のコンデンサが前記出力コンデンサを充電する場合に流れる電流に対して順方向に挿入されたダイオードである、
請求項2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記マルクスジェネレータは、複数の半導体スイッチをさらに備え、
前記出力端子と前記グランドとの間で、1つの前記コンデンサと1つの前記半導体スイッチとからなる組が複数個、前記入力端子と前記グランドとの間で直列に接続され、
各組の前記1つのコンデンサと前記1つの半導体スイッチとの間のノードである中間ノードが前記入力端子と接続され、
前記複数のコンデンサを充電するときに前記複数の半導体スイッチはオフとなり、前記出力コンデンサを充電するときに前記半導体スイッチがオンとなる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項5】
前記起動用半導体スイッチ及び前記複数の半導体スイッチは、サイリスタで構成される、
請求項4に記載の充電装置。
【請求項6】
前記複数の半導体スイッチを構成するサイリスタの、前記複数のコンデンサを充電するときに電流が流れる方向の耐圧の合計は、前記出力コンデンサの目標充電電圧よりも高い、
請求項5に記載の充電装置。
【請求項7】
前記複数のコンデンサを充電するときに電流が流れる方向の前記起動用半導体スイッチの耐圧は、前記出力コンデンサの目標充電電圧よりも高い、
請求項4から6のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項8】
前記起動用半導体スイッチは、前記複数の半導体スイッチを構成するサイリスタと同じサイリスタを複数個、直列接続して構成される、
請求項7に記載の充電装置。
【請求項9】
前記入力端子と各中間ノードとの間には1つ以上のダイオードが順方向で挿入され、隣接する2つの前記組の間のノードのそれぞれと前記グランドとの間には1つ以上のダイオードが順方向で挿入され、
前記複数の半導体スイッチは、前記複数のコンデンサの充電が完了してから、前記ダイオードのターンオフ時間よりも長い時間だけ後のタイミングでオフからオンに切り替わる、
請求項4から8のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項10】
前記起動用半導体スイッチは、前記制御回路が出力する開始信号に応じてオンとなり、
前記複数の半導体スイッチは、前記制御回路が出力するトリガ信号に応じてオンとなる、
請求項9に記載の充電装置。
【請求項11】
前記トリガ信号は、前記複数のコンデンサの充電が完了してから少なくとも前記ダイオードのターンオフ時間が経過した後のタイミングで出力される、
請求項10に記載の充電装置。
【請求項12】
前記制御回路は、出力する前記第1のサイクルで前記複数のコンデンサの充電電流がゼロとなったときから、少なくとも前記ダイオードのターンオフ時間よりも後のタイミングで前記トリガ信号を出力するトリガ信号生成部を備える、
請求項10に記載の充電装置。
【請求項13】
前記制御回路は、前記第2のサイクルにおいて、前記出力コンデンサの充電電流がゼロとなった場合、前記開始信号を出力する開始信号生成部をさらに備える、
請求項10から12のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項14】
前記起動用半導体スイッチと前記マルクスジェネレータの前記入力端子との間に挿入される入力インダクタと、
前記出力コンデンサと前記マルクスジェネレータの前記出力端子との間に挿入される出力インダクタと、を備える、
請求項1から13のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項15】
充電装置と、
出力コンデンサと、
直流電源と、を備え、
前記充電装置は、
入力端子と出力端子との間で複数のコンデンサを並列接続して充電する第1のサイクルと、充電された前記複数のコンデンサを前記出力端子とグランドとの間で直列に接続して前記出力端子と前記グランドとの間に接続される前記出力コンデンサを充電する第2のサイクルと、を繰り返し行うことで、前記出力コンデンサを充電するマルクスジェネレータと、
前記マルクスジェネレータの前記入力端子と前記直流電源との間に挿入され、前記複数のコンデンサを充電するときにオンとなり、前記出力コンデンサを充電するときにオフとなる起動用半導体スイッチと、
前記出力コンデンサの電圧を検出する電圧検出器と、
前記出力コンデンサが目標電圧まで充電されるように、前記マルクスジェネレータの充電動作及び起動用半導体スイッチの動作を制御する制御回路と、を備え、
前記第1のサイクルで直列接続された前記複数のコンデンサが出力する電圧は、前記出力コンデンサの前記目標電圧よりも高い、
電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電装置及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁力を用いて飛翔体を加速させる電磁加速装置として、電磁レールガンが知られている(特許文献1)。一般に、レールガンでは、2本の導電レールの間に挿入された、導電性材料からなる電機子に電流を流し、このときに作用する電磁力(ローレンツ力)によって電機子が加速される。射出対象物である飛翔体は、電機子によって保持されており、電機子が加速されることで、電磁加速装置から射出される。
【0003】
このような電磁加速装置で射出対象物に十分な速度を与えるには、導電レール及び電機子に、瞬間的に大きな電流を流さなければならない。そのため、出力電圧が高い電源装置を用いることとなる。こうした電源装置では、コンデンサを高電圧まで充電し(例えば、特許文献2)、コンデンサから射出装置へ電流を供給することで、供給する電流の増大を図っている。
【0004】
特許文献2にかかるコンデンサ充電装置は、まず、初期充電用インバータが発振することで昇圧用トランスの1次巻き線に交流が出力され、その後、2次巻き線に接続された整流器で直流に変換された電圧が負荷コンデンサに印加される。これにより、負荷コンデンサが充電される。次いで、微調整インバータが発振することで昇圧用トランスの1次巻き線に交流が出力され、その後、2次巻き線に接続された整流器で直流に変換された電圧が負荷コンデンサにさらに印加される。これにより、負荷コンデンサは、目標電圧まで充電される。
【0005】
また、コンデンサを高電圧まで充電可能な回路として、いわゆるマルクスジェネレータが知られている。近年では、半導体素子を用いて構成されたマルクスジェネレータが登場している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-206090号公報
【特許文献2】特開平10-52039号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】前山 光明、「サイリスタを用いた高繰り返しマルクスジェネレータ」、2005年、プラズマ・核融合学会誌(J. Plasma Fusion Res.)、Vol.81、No.5、pp.363-366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の構成によれば、負荷コンデンサを充電できるものの、直流電源からインバータで交流を発生させ、トランスで昇圧し、その後再び直流に変換する構成となっており、構成が複雑である。また、昇圧トランスを用いるため、コンデンサ充電装置が大型かつ大重量となってしまう。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態にかかる充電装置は、入力端子と出力端子との間で複数のコンデンサを並列接続して充電する第1のサイクルと、充電された前記複数のコンデンサを前記出力端子とグランドとの間で直列に接続して前記出力端子と前記グランドとの間に接続される出力コンデンサを充電する第2のサイクルと、を繰り返し行うことで、前記出力コンデンサを充電するマルクスジェネレータと、前記マルクスジェネレータの前記入力端子と直流電源との間に挿入され、前記複数のコンデンサを充電するときにオンとなり、前記出力コンデンサを充電するときにオフとなる起動用半導体スイッチと、前記出力コンデンサの電圧を検出する電圧検出器と、前記出力コンデンサが目標電圧まで充電されるように、前記マルクスジェネレータの充電動作及び起動用半導体スイッチの動作を制御する制御回路と、を備え、前記第1のサイクルで直列接続された前記複数のコンデンサが出力する電圧は、前記出力コンデンサの前記目標電圧よりも高いものである。
【0011】
一実施の形態にかかる電源装置は、充電装置と、出力コンデンサと、直流電源と、を備え、前記充電装置は、入力端子と出力端子との間で複数のコンデンサを並列接続して充電する第1のサイクルと、充電された前記複数のコンデンサを前記出力端子とグランドとの間で直列に接続して前記出力端子と前記グランドとの間に接続される前記出力コンデンサを充電する第2のサイクルと、を繰り返し行うことで、前記出力コンデンサを充電するマルクスジェネレータと、前記マルクスジェネレータの前記入力端子と前記直流電源との間に挿入され、前記複数のコンデンサを充電するときにオンとなり、前記出力コンデンサを充電するときにオフとなる起動用半導体スイッチと、前記出力コンデンサの電圧を検出する電圧検出器と、前記出力コンデンサが目標電圧まで充電されるように、前記マルクスジェネレータの充電動作及び起動用半導体スイッチの動作を制御する制御回路と、を備え、前記第1のサイクルで直列接続された前記複数のコンデンサが出力する電圧は、前記出力コンデンサの前記目標電圧よりも高いものである。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、充電対象のコンデンサを短時間で高電圧まで充電可能な小型の充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1にかかる飛翔体を射出する射出システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる電源装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】マルクスジェネレータの回路構成を示す図である。
【
図4】実施の形態1にかかる充電装置の充電動作のフローチャートである。
【
図5】起動用半導体スイッチがオンとなったときの充電装置の等価回路を示す図である。
【
図6】実施の形態1におけるマルクスジェネレータのコンデンサの充電電流と待機時間との関係を示す図である。
【
図7】マルクスジェネレータの半導体スイッチがオンとなったときの充電装置の等価回路を示す図である。
【
図8】実施の形態1における出力コンデンサの充電電流と待機時間との関係を示す図である。
【
図9】実施の形態2にかかる電源装置の構成を模式的に示す図である。
【
図10】実施の形態2にかかる充電装置の充電動作のフローチャートである。
【
図11】実施の形態2におけるマルクスジェネレータのコンデンサの充電電流と待機時間との関係を示す図である。
【
図12】実施の形態3にかかる電源装置の構成を模式的に示す図である。
【
図13】実施の形態3にかかる充電装置の充電動作のフローチャートである。
【
図14】実施の形態2における出力コンデンサの充電電流と待機時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
実施の形態1
本実施の形態にかかる射出装置について説明する。
図1に、実施の形態1にかかる飛翔体を射出する射出システム1000の構成を模式的に示す。射出システム1000は、電源装置100、射出装置101、スイッチ102及び制御装置103を有する。
【0016】
射出装置101は、導電レール101Aと導電レール101Bとに挟まれた導体からなる電機子105にパルス電流Idを流すことで生じる磁場による電磁力(ローレンツ力)によって電機子105を加速する、いわゆるレールガンとして構成される。射出対象物である飛翔体104は、電機子105に押されることで加速され、その結果、射出口から射出される。
【0017】
電源装置100は、射出装置101と接続される射出用電源装置であり、射出装置101にパルス電流Idを供給可能に構成される。
【0018】
スイッチ102は、電源装置100から射出装置101への電源供給経路の開閉を行うものとして構成される。スイッチ102は、射出装置101へ供給される比較的大電流が流れる経路を安全に開閉できる限り、各種のスイッチ、リレーなどを用いることが可能である。
【0019】
制御装置103は、例えばコンピュータなどで構成され、制御信号CONを与えることで電源装置から射出装置101への電源供給を制御することができる。例えば、制御装置103は、スイッチ102を制御することで、電源装置100が射出装置101へパルス電流Idを供給するタイミングや期間、パルス電流Idの電流値などを制御することができる。これにより、制御装置103は、射出装置101から飛翔体104が射出されるタイミングや飛翔体104の射出速度を制御することができる。また、制御装置103は、電源装置100に対して、後述する電源装置100へ開始指令COMを出力してもよい。
【0020】
以下、電源装置100及び電源装置100に含まれる充電装置1について説明する。
図2に、電源装置100の構成を模式的に示す。電源装置100は、充電装置1、直流電源VDD、及び、充電装置1によって充電される出力コンデンサC
OUTを有する。
【0021】
充電装置1は、マルクスジェネレータ10、電圧検出器11、制御回路20、起動用半導体スイッチSW、入力インダクタLIN、逆流防止ダイオードDBF及び出力インダクタLOUTを有する。
【0022】
図3に、マルクスジェネレータ10の回路構成を示す。マルクスジェネレータ10は、N段(Nは、2以上の整数)のマルクスジェネレータとして構成され、コンデンサC1~CN、半導体スイッチSW1~SWN、抵抗RA_1~RA_N-1、RB_1~RB_N-1、RC_1~RC_N及びRD_1~RD_N、ダイオードDA_1~DA_N-1、DB_1~DB_N-1、DC_1~DC_N及びDD_1~DD_N-1で構成される。
【0023】
マルクスジェネレータ10の出力端子10Bとグランドとの間には、コンデンサC1~CNがこの順で直列に接続される。Nを1以上の整数、iを1以上N-1以下の整数とすると、コンデンサCiとコンデンサCi+1との間では、サイリスタとして構成される半導体スイッチSWiのアノードがコンデンサCiと接続され、カソードがコンデンサCi+1と接続される。サイリスタとして構成される半導体スイッチSWNのアノードはコンデンサCNと接続され、カソードはグランドと接続される。
【0024】
マルクスジェネレータ10の入力端子10Aと、半導体スイッチSWNのアノードとの間には、順方向で直列接続されたダイオードDA_1~DA_N-1からなるダイオード列、直列接続された抵抗RA_1~RA_N-1からなる抵抗列、及び、直列接続された抵抗RB_1~RB_N-1からなる抵抗列がこの順で並列に接続される。抵抗RA_1~RA_N-1からなる抵抗列と、抵抗RB_1~RB_N-1からなる抵抗列との間には、ダイオードDB_1~DB_N-1が挿入される。ダイオードDA_i、抵抗RA_i及び抵抗RB_iは、半導体スイッチSWiのアノードと半導体スイッチSWi+1のアノードとの間で並列に接続される。ダイオードDA_iのアノードは、抵抗RA_iと抵抗RB_iとの間に順方向で挿入されたダイオードDB_iを介して、半導体スイッチSWiのアノードと接続される。
【0025】
マルクスジェネレータ10の出力端子10Bとグランドとの間には、直列接続された抵抗RD_1~RD_Nからなる抵抗列、順方向で直列接続されたダイオードDC_1~DC_Nからなるダイオード列、及び、直列接続された抵抗RC_1~RC_Nからなる抵抗列がこの順で並列に接続される。ダイオードDC_1~DC_Nからなるダイオード列と、抵抗RC_1~RC_Nからなる抵抗列との間には、ダイオードDD_1~DD_N-1が挿入される。抵抗RD_i、ダイオードDC_i及び抵抗RC_iは、コンデンサCiの端子のうちで半導体スイッチSWiのアノードと接続されていない方の端子と半導体スイッチSWiのカソードとの間で並列に接続される。ダイオードDD_iのアノードは抵抗RC_iと抵抗RC_i+1との間のノードと接続され、ダイオードDD_iのカソードはダイオードDC_iのカソードとダイオードDC_i+1のアノードとの間のノードと接続される。
【0026】
マルクスジェネレータ10の入力端子10Aと、直流電源VDDの正極との間には、入力インダクタLINと起動用半導体スイッチSWとがこの順で接続されている。起動用半導体スイッチSWはサイリスタとして構成され、アノードは直流電源VDDの正極と接続され、カソードは入力インダクタLINと接続される。起動用半導体スイッチSWは、開始信号INIが入力されることでオンとなり、これにより、直流電源VDDによるマルクスジェネレータ10のコンデンサC1~CNの充電が開始する。充電が進行して充電電流ISがゼロとなると、サイリスタである起動用半導体スイッチSWは自発的にオフとなる。
【0027】
制御回路20は、半導体スイッチSW1~SWNにトリガ信号T1~TN、起動用半導体スイッチSWに開始信号INIを出力することで、それぞれのサイリスタをオンにする。
【0028】
マルクスジェネレータ10の出力端子10Bとグランドとの間には、逆流防止ダイオードDBF、出力インダクタLOUT、充電対象である出力コンデンサCOUTがこの順で接続される。
【0029】
逆流防止ダイオードDBFのアノードは出力インダクタLOUTと接続され、カソードはマルクスジェネレータ10の出力端子10Bと接続される。
【0030】
出力コンデンサCOUTの両端の間には電圧検出器11が挿入される。電圧検出器11は、出力コンデンサCOUTの充電電圧VCを検出し、検出した充電電圧VCを制御回路20へ出力する。
【0031】
次に、充電装置1の充電動作について順に説明する。
図4に、充電装置1の充電動作のフローチャートを示す。充電装置1の充電動作は、コンデンサC1~CNを充電する第1のサイクル(ステップS11~S14)と、コンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTへ電荷を移すことで出力コンデンサC
OUTを充電する第2のサイクル(ステップS15~S17)と、で構成される。
【0032】
ステップS11
制御回路20は、電圧検出器11が検出した出力コンデンサCOUTの充電電圧VCが目標電圧VTに到達しているかを判定する。電圧検出器11が検出した出力コンデンサCOUTの充電電圧VCが目標電圧VTに到達している場合、出力コンデンサCOUTは十分に充電されているので、制御回路20は、開始信号INIの出力を中止して充電動作を終了する。
【0033】
ステップS12
出力コンデンサCOUTの充電電圧VCが目標電圧VTよりも小さい場合、制御回路20は、開始信号INIを起動用半導体スイッチSWへ出力する。なお、最初にコンデンサC1~CNを充電するために初めて起動用半導体スイッチSWをオンにする場合には、制御回路20は、外部から与えられる開始指令COMに応じて、開始信号INIを出力してもよい。
【0034】
ステップS13
開始信号INIが入力されたことで起動用半導体スイッチSWがオンとなり、コンデンサC1~CNの充電が開始される。
図5に、起動用半導体スイッチSWがオンとなったときの充電装置1の等価回路を示す。この場合、コンデンサC1~CNが直流電源VDDとグランドとの間で並列に接続されて充電電流I
Sが流れ、図示していないが、マルクスジェネレータ10のダイオードに電流が流れることで、低インピーダンスにてコンデンサC1~CNが充電される。
【0035】
この場合、入力インダクタLINとマルクスジェネレータ10のコンデンサC1~CNが接続される。よって、入力インダクタLINの値(LINとする)とマルクスジェネレータ10のコンデンサC1~CNの合成容量(N×Cとする)で決定される立上り時間τ=π(LINNC)0.5/2で充電電流ISが流れる。このときの充電電流ISの最大値は、直流電源VDDの出力電圧をV0とすると、((NC/LIN)0.5×V0)となるので、大きな突入電流が流れることなく、安全にコンデンサC1~CNを2τの時間で充電することができる。
【0036】
ステップS14
コンデンサC1~CNが十分に充電されるように、充電の開始から予め定められた待機時間だけ待機する(第1の待機状態)。
図6に、実施の形態1におけるコンデンサC1~CNの充電電流と待機時間との関係を示す。このときの待機時間は、コンデンサC1~CNに充電電流I
Sが流れ始めてから充電が完了して充電電流I
Sがゼロになるまでの充電待機時間TAに、各コンデンサのターンオフ時間Trrよりも長い付加待機時間ΔTAを加算した時間(TA+ΔTA)として設定される。
【0037】
ステップS15
待機時間が経過した後、制御回路20は、半導体スイッチSW1~SWNにトリガ信号T1~TNを出力する。本構成では、第1のサイクルにおいては、起動用半導体スイッチSWとマルクスジェネレータ10の各コンデンサの間に挿入される1つ以上のダイオード、各コンデンサ、及び、各コンデンサとグランドとの間に挿入される1つ以上のダイオードの経路に電流が流れることで各コンデンサが充電される。この場合、各コンデンサの充電電流がゼロになってから各ダイオードのターンオフ時間Trrが経過する前に半導体スイッチSW1~SWNをオンにすると、ダイオードを介して再び電流が流れてしまう。そのため、上述したように、付加待機時間ΔTAは、各コンデンサのターンオフ時間Trrよりも長い時間として設定されている。
【0038】
また、このとき、充電電流ISがゼロになると起動用半導体スイッチSWは自発的にオフとなるので、トリガ信号T1~TNは起動用半導体スイッチSWがオフとなった後に出力されることとなる。
【0039】
ステップS16
半導体スイッチSW1~SWNがトリガ信号T1~TNを受け取ることで、半導体スイッチSW1~SWNがオンとなる。これにより、コンデンサC1~CNが直列接続され、出力コンデンサC
OUTの充電が開始される。
図7に、半導体スイッチSW1~SWNがオンとなったときの充電装置1の等価回路を示す。この場合、コンデンサC1~CNがマルクスジェネレータ10の出力端子10Bとグランドとの間で直列に接続されて、出力コンデンサC
OUTが充電される。
【0040】
この場合、直列接続されたコンデンサC1~CNの出力電圧は、出力インダクタLOUTを介して出力コンデンサCOUTに印加される。よって、出力インダクタLOUTの値(LOUTとする)と、直列接続されたコンデンサC1~CNの合成容量(C/N)及び出力コンデンサCOUTの容量(COUTとする)の合成容量(C×COUT/(C+NCOUT))と、で決定される電流の立上り時間と、電流値が規定された共振電流で、出力コンデンサCOUTが充電される。
【0041】
ステップS17
コンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTへ十分に電荷が移動することで、今回の第2のサイクルにおける出力コンデンサC
OUTの充電が完了するまでの間、予め定められた待機時間だけ待機する(第2の待機状態)。
図8に、実施の形態1における出力コンデンサC
OUTの充電電流と待機時間との関係を示す。ここでの待機時間は、出力コンデンサC
OUTに充電電流I
Cが流れ初めてから充電が完了して充電電量がゼロになるまでの充電待機時間TBに、付加待機時間ΔTBを加算した時間(TB+ΔTB)として設定される。
【0042】
その後、ステップS11に戻って、制御回路20は、電圧検出器11が検出した出力コンデンサCOUTの充電電圧VCが目標電圧VTに到達するかを判定する。なお、出力コンデンサCOUTを充電する充電電流ICがゼロなったことで、マルクスジェネレータ10の半導体スイッチSW1~SWNは自発的にオフとなる。よって、以降においては、出力コンデンサCOUTの充電が完了してから開始信号INIが出力される(ステップS12)までの間に、半導体スイッチSW1~SWNはオフとなる。したがって、放電待機時間の後に出力される開始信号INIは、半導体スイッチSW1~SWNがオフとなった後に出力されることとなる。
【0043】
なお、本構成では、
図6に示すように、第1のサイクルを繰り返すごとに、出力コンデンサC
OUTの充電が進んで充電電圧V
Cが上昇するので、それに伴い、一定の出力電圧(VDD×N)の直列接続されたコンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTに移動する電荷は減ってゆく。その結果、第1のサイクルを繰り返すごとに、コンデンサC1~CNの充電時間は短くなってゆく(
図6の下段のk回目の第1のサイクル)。これに対し、充電待機時間TAはコンデンサC1~CNをいかなる状態でも充電できる固定の時間として設定される。よって、充電待機時間TAは、繰り返されるコンデンサC1~CNの充電に要する最長の充電時間、すなわち、最初に行う第1のサイクルでコンデンサC1~CNのそれぞれを0[V]からVDD[V]までに充電するために必要な充電時間、又は、当該充電時間よりも長い時間として設定される。
【0044】
また、本構成では、
図8に示す様に、第2のサイクルを繰り返すごとに、出力コンデンサC
OUTの充電が進んで充電電圧V
Cが上昇するので、それに伴い、一定の出力電圧(VDD×N)の直列接続されたコンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTに移動する電荷は減ってゆく。その結果、第2のサイクルを繰り返すごとに、出力コンデンサC
OUTの充電開始から完了するまでの時間は短くなってゆく(
図8の下段のk回目の第2のサイクル)。これに対し、充電待機時間TBは、出力コンデンサC
OUTをいかなる状態でも充電できる固定の時間として設定される。よって、充電待機時間TBは、繰り返される出力コンデンサC
OUTの充電に要する最長の充電時間、すなわち、最初に行う第2のサイクルで出力コンデンサC
OUTを充電するために必要な充電時間、又は、当該充電時間よりも長い時間として設定される。
【0045】
なお、
図7を参照して説明したように、本構成では、第2のサイクルにおいては、直列接続されたコンデンサC1~CNの出力電圧(VDD×N)によって出力コンデンサC
OUTが充電される。よって、電流を逆流させることなく出力コンデンサC
OUTを目標電圧V
Tまで充電するには、出力電圧(VDD×N)は目標電圧V
Tよりも高い電圧としなければならない。よって、直列接続されたときの出力電圧(VDD×N)が目標電圧V
Tよりも十分に高い電圧となるように、コンデンサC1~CNの数が設定される。目標電圧V
Tが10kVであると仮定すると、出力電圧(VDD×N)は、例えば19kV程度に設定されてもよい。
【0046】
また、第2のサイクルにおいては、出力コンデンサCOUTの充電電圧VCが、直列接続された半導体スイッチSW1~SWN(サイリスタ)に順方向に印加される。よって、電流の逆流を防止する観点から、半導体スイッチSW1~SWN(サイリスタ)の順方向の耐圧の合計は、出力コンデンサCOUTの目標電圧VTよりも高い値に設定される。また、出力コンデンサCOUTの充電電圧VCは、起動用半導体スイッチSWに順方向にも印加される。よって、起動用半導体スイッチSWの順方向の耐圧は、電流の逆流を防止する観点から、出力コンデンサCOUTの目標電圧VTよりも高い値に設定される。このため、例えば、起動用半導体スイッチSWは、半導体スイッチSW1~SWNを構成するサイリスタを直列接続したものとして構成してもよい。
【0047】
さらに、同様に、逆流防止ダイオードDBFの逆方向耐圧も、電流が逆流しないように、例えば目標電圧VTよりも高く設定されることが望ましい。
【0048】
以上説明したように、本構成によれば、充電回路に設けるスイッチとして半導体スイッチ、特にサイリスタを用いた半導体スイッチを用いることで、マルクスジェネレータのコンデンサ及び出力コンデンサの充電電流に応じた信号を生成して半導体スイッチに与えるので、半導体スイッチのオン/オフを高速かつ自動的に行うことができる。
【0049】
これにより、本構成では、1回目の充電を行うときに開始指令を与えるだけで、電源装置100のコンデンサC1~CNに2回目の以降の充電を開始するための開始信号INIと半導体スイッチSW1~SWNをオンにするためのトリガ信号を与えて、出力コンデンサCOUTの繰り返し充電を行うことができる。繰り返し充電によって出力コンデンサCOUTの充電電圧は増大してゆき、目標電圧VTに到達したならば、出力コンデンサCOUTの繰り返し充電を終了することができる。
【0050】
なお、出力コンデンサCOUTの充電電圧が高くなると、出力コンデンサCOUTとマルクスジェネレータ10の出力端のコンデンサC1とをそのまま直列に接続すると、高電圧がコンデンサC1に印加され、電流が逆流するおそれがある。このような事態を防止するため、本構成では、出力コンデンサCOUTとマルクスジェネレータ10の出力端子10Bとの間に逆流防止ダイオードDBFを挿入することで、出力コンデンサCOUTとコンデンサC1との間の電流の逆流を防止して、コンデンサC1を保護している。
【0051】
また、半導体スイッチを自動的に切り替えることで、マルクスジェネレータのコンデンサの充電と出力コンデンサの充電とを、高速かつ自動的に切り替えるので、出力コンデンサの目標電圧まで高速に充電することが可能である。
【0052】
なお、上述したように、コンデンサC1~CNの充電時間は入力インダクタLINの値で決定されるので、入力インダクタLINの値を調整することで、コンデンサC1~CNの充電時間を調整することが可能である。また、出力コンデンサCOUTの充電時間は出力インダクタLOUTの値で決定されるので、出力インダクタLOUTの値を調整することで、出力コンデンサCOUTの充電時間を調整することも可能である。このように、本構成では、インダクタの値を調整することで、出力コンデンサCOUTが目標電圧に到達するまでの時間を調整可能であることが理解できる。
【0053】
本構成では、トランスを用いずに、半導体基板上に形成可能な素子によって充電装置を構成できるので、充電装置を容易に小型化できる。また、半導体スイッチは電流がゼロになると自動的にオフとなり、半導体スイッチをオンにするときにのみ半導体スイッチに信号を与えればよいので、スイッチング損失を低減することもできる。さらに、交流と直流との間の変換を行わないので、変換損失が生じない充電装置を実現できる。
【0054】
実施の形態2
次に、実施の形態2にかかる充電装置について説明する。実施の形態2にかかる充電装置2は、充電装置1の変形例であり、トリガ信号の出力タイミングを自動的に制御する点が充電装置1と異なる。
図9に、実施の形態2にかかる電源装置200の構成を模式的に示す。電源装置200は、電源装置100の充電装置1を充電装置2に置換した構成を有する。充電装置2は、充電装置1の制御回路20を、制御回路30に置換した構成を有する。
【0055】
制御回路30は、判定部31、開始信号生成部32及びトリガ信号生成部33を有する。
【0056】
判定部31は、電圧検出器11で検出された充電電圧VCを継続的に監視し、充電電圧VCが目標電圧VTに到達したかを判定する。
【0057】
開始信号生成部32は、充電開始から一定の時間ごとに、開始信号INIを出力する。
【0058】
トリガ信号生成部33は、直流電源VDDの負極とグランドとの間に挿入される。トリガ信号生成部33は、マルクスジェネレータ10のコンデンサC1~CNが直流電源VDDによって充電されるときの充電電流ISを監視し、充電電流ISが立ち上がった後にゼロになるタイミング検出する。そして、トリガ信号生成部33は、充電電流ISがゼロになってから所定時間経過後に、マルクスジェネレータ10の半導体スイッチSW1~SWNにトリガ信号T1~TNを出力することで、半導体スイッチSW1~SWNをオンにする。
【0059】
トリガ信号生成部33の構成について説明する。トリガ信号生成部33は、可飽和トランス331、検出信号生成器332、遅延回路333及びトリガ信号出力器334を有する。
【0060】
可飽和トランス331は、1次巻き線が直流電源VDDとグランドとの間に接続される。可飽和トランス331の1次側巻き線に充電電流ISが流れると、2次側巻き線には充電電流ISの流れ初めから磁心が飽和するまでの短時間に、パルス的に電圧(第1のパルス)が発生する。その後、充電電流ISが減少してゼロになる直前の、磁心の磁束が飽和状態からゼロになるまでの間に、充電電流ISの流れ初めの場合とは逆極性のパルス電圧(第2のパルス)が発生する。
【0061】
検出信号生成器332は、可飽和トランス331から出力される第1のパルスを検出し、その後、第2のパルスを検出したならば、第2のパルスを検出信号DETとして遅延回路333へ出力する。
【0062】
遅延回路333は、検出信号DETに所定の時間(例えば、マルクスジェネレータ10の各ダイオードのターンオフ時間Trrよりも長い時間)だけ遅らせて、トリガ信号出力器334へ出力する。
【0063】
トリガ信号出力器334は、遅延回路333から受け取った検出信号DETを増幅して、トリガ信号T1~TNとして半導体スイッチSW1~SWNのそれぞれへ出力する。
【0064】
次いで、充電装置2の充電動作について順に説明する。
図10に、充電装置2の充電動作のフローチャートを示す。充電装置2の充電動作は、コンデンサC1~CNを充電する第1のサイクル(ステップS21~S25)と、コンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTへ電荷を移すことで出力コンデンサC
OUTを充電する第2のサイクル(ステップS26~S28)と、で構成される。
【0065】
ステップS21~S23
ステップS21~S23は、制御回路20が制御回路30に置換される他は、実施の形態1で説明したステップS11~S13(
図4)と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
ステップS24
制御回路30は、コンデンサC1~CNの充電電流ISを継続的に監視する。
【0067】
ステップS25
コンデンサC1~CNの充電電流ISがゼロになったことを検出したならば、予め定められた待機時間ΔTAだけ待機する(第1の待機状態)。なお、待機時間ΔTAは実施の形態1における付加待機時間ΔTAと同じであり、この場合においても、マルクスジェネレータ10の各ダイオードに再度電流が流れることを防止するため、待機時間ΔTAは、各ダイオードのターンオフ時間Trrよりも長い時間が設定される。
【0068】
ステップS26~S28
ステップS26~S28は、制御回路20が制御回路30に置換される他は、実施の形態1で説明したステップS15~S17(
図4)と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
上述の動作によって、実施の形態1における場合と同様に、出力コンデンサCOUTを目標電圧VTまで充電することができる。
【0070】
本構成では、ステップS25において、コンデンサC1~CNの充電が完了してから一定の待機時間ΔTAだけ待機している。
図11に、実施の形態2におけるコンデンサC1~CNの充電電流と待機時間との関係を示す。第1のサイクルを繰り返し行うことで出力コンデンサC
OUTの充電が進んで充電電圧V
Cが上昇すると、一定の出力電圧(VDD×N)の直列接続されたコンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTに移動する電荷は減ってゆくので、コンデンサC1~CNの充電開始から完了するまでの充電時間TCは短くなってゆく。
図11では、1回目の第1のサイクルでのコンデンサC1~CNの充電時間をTC(1)、k回目(kは、2以上の整数)の第1のサイクルでのコンデンサC1~CNの充電時間をTC(k)としている。
【0071】
これに対し、実施の形態1においては、第1のサイクルを繰り返すごとに、コンデンサC1~CNの充電時には固定の充電待機時間TAに固定の付加待機時間ΔTAを加算した待機時間だけ待機していた。
【0072】
そのため、実施の形態1における待機時間TA+ΔTAは不変であるのに対し、実施の形態2における待機時間TC+ΔTAは、初めに第1のサイクルを行う場合には実施の形態1における待機時間と同等であるものの、第1のサイクルが繰り返されて出力コンデンサの充電が進むにつれて、短くなる。よって、本構成によれば、実施の形態1と比べて、出力コンデンサCOUTをより短時間で充電することが可能となる。
【0073】
実施の形態3
次に、実施の形態3にかかる充電装置について説明する。実施の形態3にかかる充電装置3は、充電装置2の変形例であり、開始信号の出力タイミングを自動的に制御する点が充電装置2と異なる。
図12に、実施の形態3にかかる電源装置300の構成を模式的に示す。電源装置300は、電源装置200の充電装置2を充電装置3に置換した構成を有する。充電装置3は、充電装置2の制御回路30を、制御回路40に置換した構成を有する。
【0074】
制御回路40は、制御回路30の開始信号生成部32を、開始信号生成部42に置換した構成を有する。制御回路40のその他の構成は、制御回路30と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
開始信号生成部42は、出力コンデンサCOUTとグランドとの間に挿入される。開始信号生成部42は、出力コンデンサCOUTの充電電流ICを監視し、充電電流ICが立ち上がった後にゼロになるタイミングを検出する。
【0076】
そして、判定部31が充電電圧VCが目標電圧VTよりも小さいと判定している場合には、開始信号生成部42は、充電電流ICがゼロになってから所定時間経過後に、起動用半導体スイッチSWに開始信号INIを出力して、起動用半導体スイッチSWをオンにする。
【0077】
なお、上述した開始信号生成部42の動作は、充電電流Icを検出して、次回の出力コンデンサCOUTの充電を開始するための開始信号INIを出力するためのものである。そのため、出力コンデンサCOUTの1回目の充電を開始するには、例えば、外部から開始指令COMを開始信号生成部42に与えることで、開始信号生成部42から開始信号INIを出力させることができる。
【0078】
また、開始信号生成部42は、判定部31が出力コンデンサCOUTの充電電圧VCが目標電圧VTに到達したと判定している場合には、開始信号INIの出力を停止する。充電電流ICの検出結果にかかわりなく、開始信号INIの出力動作を停止する。これにより、出力コンデンサCOUTの充電が完了する。
【0079】
開始信号生成部42の構成について説明する。開始信号生成部42は、可飽和トランス421、検出信号生成器422、遅延回路423及びトリガ信号出力器424を有する。このうち、可飽和トランス421、検出信号生成器422及び遅延回路423は、可飽和トランス331、検出信号生成器332及び遅延回路333と同様の構成を有する。
【0080】
可飽和トランス421は、1次巻き線が出力コンデンサCOUTとグランドとの間に接続される。可飽和トランス421の1次側巻き線に充電電流ICが流れると、2次側巻き線には充電電流ICの流れ初めから磁心が飽和するまでの短時間に、パルス的に電圧が発生(第3のパルス)する。その後、充電電流ICが減少してゼロになる直前の、磁心の磁束が飽和状態からゼロになるまでの間に、充電電流ICの流れ初めの場合とは逆極性のパルス電圧が発生(第4のパルス)する。
【0081】
検出信号生成器422は、可飽和トランス421から出力される第3のパルスを検出し、その後、第4のパルスを検出したならば、第4のパルスを検出信号DETとして遅延回路423へ出力する。
【0082】
遅延回路423は、検出信号DETに所定の時間だけ遅らせて、開始信号出力器424へ出力する。
【0083】
開始信号出力器424は、遅延回路423から受け取った検出信号DETを増幅して、開始信号INIとして起動用半導体スイッチSWへ出力する。但し、外部から開始指令COMを受け取った場合には、開始信号出力器424は、検出信号DETにかかわらず、開始信号INIとして起動用半導体スイッチSWへ出力する。また、判定部31が、出力コンデンサCOUTの充電電圧VCが目標電圧VTに到達したと判定した場合には、開始信号出力器424は、検出信号DETにかかわらず、開始信号INIを出力しない。
【0084】
次いで、充電装置3の充電動作について順に説明する。
図13に、充電装置3の充電動作のフローチャートを示す。充電装置3の充電動作は、コンデンサC1~CNを充電する第1のサイクル(ステップS31~S35)と、コンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTへ電荷を移すことで出力コンデンサC
OUTを充電する第2のサイクル(ステップS36~S39)と、で構成される。
【0085】
ステップS31~S37
ステップS31~S37は、制御回路30が制御回路40に置換される他は、実施の形態2で説明したステップS21~S27(
図10)と同様であるので、説明を省略する。
【0086】
ステップS38
制御回路40は、出力コンデンサCOUTの充電電流ICを継続的に監視する。
【0087】
ステップS39
出力コンデンサCOUTの充電電流ICがゼロになったことを検出したならば、予め定められた待機時間ΔTBだけ待機する(第2の待機状態)。なお、待機時間ΔTBは実施の形態1における付加待機時間ΔTBと同じである。その後は、実施の形態1及び2と同様に、ステップS31に戻って、以降の動作を継続する。
【0088】
本構成では、ステップS39において、出力コンデンサC
OUTの充電が完了してから一定の待機時間ΔTBを加算した時間だけ待機している。
図14に、実施の形態3における出力コンデンサC
OUTの充電電流と待機時間との関係を示す。第2のサイクルを繰り返し行うことで出力コンデンサC
OUTの充電が進んで充電電圧V
Cが上昇すると、一定の出力電圧(VDD×N)の直列接続されたコンデンサC1~CNから出力コンデンサC
OUTに移動する電荷は減ってゆくので、出力コンデンサC
OUTの充電開始から完了するまでの充電時間TDは短くなってゆく。
図14では、1回目の第2のサイクルでの出力コンデンサC
OUTの充電時間をTD(1)、k回目(kは、2以上の整数)の第2のサイクルでの出力コンデンサC
OUTの充電時間をTD(k)としている。
【0089】
これに対し、実施の形態1においては、第2のサイクルを繰り返すごとに、固定の充電待機時間TBに固定の付加待機時間ΔTBを加算した待機時間だけ待機していた。
【0090】
そのため、実施の形態1における待機時間TB+ΔTBは不変であるのに対し、実施の形態2における待機時間TD+ΔTBは、初めに第2のサイクルを行う場合には実施の形態1における待機時間と同等であるものの、第2のサイクルが繰り返されて出力コンデンサCOUTの充電が進むにつれて、短くなる。よって、本構成によれば、実施の形態1と比べて、出力コンデンサCOUTをさらに短時間で充電することが可能となる。
【0091】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、半導体スイッチとしてサイリスタを用いる構成について説明したが、同様の機能を発揮できる限り、他の種類の半導体スイッチを用いてもよい。
【0092】
トリガ信号生成回路及び開始信号生成回路の構成は例示に過ぎず、同様に機能を発揮できる限り、他の構成とすることができる。また、トリガ信号生成回路及び開始信号生成回路は、用いられる半導体スイッチの種類に応じて、適宜他の構成をとってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1~3 充電装置
10 マルクスジェネレータ
10A 入力
10B 出力
11 電圧検出器
20、30、40 制御回路
31 判定部
32、42 開始信号生成部
33 トリガ信号生成部
42 開始信号生成部
1000 射出システム
100、200、300 電源装置
101 射出装置
101A、101B 導電レール
102 スイッチ
103 制御装置
105 電機子
104 飛翔体
331、421 可飽和トランス
332、422 検出信号生成器
333、423 遅延回路
334 トリガ信号出力器
424 開始信号出力器
C1~CN コンデンサ
COM 開始指令
CON 制御信号
COUT 出力コンデンサ
DA_1~DA_N-1、DB_1~DB_N-1、DC_1~DC_N、DD_1~DD_N-1 ダイオード
DFB 逆流防止ダイオード
IC 充電電流
INI 開始信号
IS 充電電流
LIN 入力インダクタ
LOUT 出力インダクタ
RA_1~RA_N-1、RB_1~RB_N-1、RC_1~RC_N、RD_1~RD_N 抵抗
SW 起動用半導体スイッチ
SW1~SWN 半導体スイッチ
T1~TN トリガ信号
VDD 直流電源