(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092753
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】間仕切パネル装置
(51)【国際特許分類】
E04B 2/72 20060101AFI20230627BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20230627BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
E04B2/72 A
E04B2/82 501G
E04B2/82 511H
E04B2/82 511F
E04B2/74 551G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207951
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】中村 渚佐
(72)【発明者】
【氏名】安立 直也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 寛人
(57)【要約】
【課題】ガラスパネルを有し、防音性能を高めた間仕切パネル装置を提供する。
【解決手段】前後に対向して配置される一対のガラスパネル4,4を左右に連設して形成される間仕切パネル装置1であって、左右に連設される前記ガラスパネル4,4は、当該ガラスパネル4,4を囲むように配置された複数のパネル支持体2,3によって支持されており、少なくとも一のパネル支持体3には、一対のガラスパネル4,4間に形成されるパネル間空間S1に臨む開口32aを通じて連通する閉塞空間S3が設けられており、該閉塞空間S3は、下部支持部材31および開口32aを有する板部材32により囲まれた空間であり、当該空間内の空気を共鳴(共振)させることで、共鳴している周波数を中心に音のエネルギーを吸収するヘルムホルツ共鳴器として機能するものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に対向して配置される一対のガラスパネルを左右に連設して形成される間仕切パネル装置であって、
左右に連設される前記ガラスパネルは、当該ガラスパネルを囲むように配置された複数のパネル支持体によって支持されており、
少なくとも一の前記パネル支持体には、前記一対のガラスパネル間に形成されるパネル間空間に臨む開口を通じて連通する閉塞空間が設けられていることを特徴とする間仕切パネル装置。
【請求項2】
前記閉塞空間は、前記パネル支持体内部に区画部材により区画されて複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の間仕切パネル装置。
【請求項3】
一の前記パネル支持体は、床面に固定される下部パネル支持体または天井に固定される上部パネル支持体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の間仕切パネル装置。
【請求項4】
一の前記パネル支持体は、前記下部パネル支持体であることを特徴とする請求項3に記載の間仕切パネル装置。
【請求項5】
前記複数の閉塞空間は、左右方向に複数設けられていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の間仕切パネル装置。
【請求項6】
前記複数の閉塞空間は、前後方向に複数設けられていることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の間仕切パネル装置。
【請求項7】
前記閉塞空間の中心部に前記開口が設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の間仕切パネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル支持体にガラスパネルが支持された間仕切パネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内の空間を仕切って分割して使用するために、天井から床面に亘る複数のガラスパネルを取付けられた間仕切パネル装置が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される間仕切りパネル装置は、天井に固定される上部パネル支持体と、床面に固定される下部パネル支持体との間に亘って前後に離間して平行にガラスパネルが取付けられて構成されている。
【0004】
また、間仕切りパネル装置には、左右方向に連設される複数のガラスパネルのうち、側端に位置する前後一対のガラスパネルの側方が側部パネル支持体によって連結して支持されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-88745号公報(第5頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような間仕切パネル装置においては、一対のガラスパネルを採用しているため、高い視認性を有し、美観に優れているばかりでなく、前後のガラスパネルの間のパネル間空間内の空気の層による断熱性能にも優れている。しかしながら、間仕切りパネル装置の前後方向一方側にて生じた音で一方のガラスパネルが振動すると、その振動がパネル間空間内の空気を振動させ、その振動が他方のガラスパネルを振動させることで前後方向他方側にまで音が届くことがある。このような音漏れを防ぐにあたって、パネル間空間にガラスウールのような種々の防音材を配置するという手法があるが、防音材により視認性が削がれるとともに、美観が損なわれてしまうため、ガラスパネルの利点が失われるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、防音性能を高めた間仕切パネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の間仕切パネル装置は、
前後に対向して配置される一対のガラスパネルを左右に連設して形成される間仕切パネル装置であって、
左右に連設される前記ガラスパネルは、当該ガラスパネルを囲むように配置された複数のパネル支持体によって支持されており、
少なくとも一の前記パネル支持体には、前記一対のガラスパネル間に形成されるパネル間空間に臨む開口を通じて連通する閉塞空間が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、少なくとも一方のガラスパネル外で生じた音が、一方のガラスパネルを通じてパネル間空間内の空気を振動させても、ヘルムホルツ共鳴器として機能する閉塞空間により対応する周波数帯の音を吸音することができる。そのため、美観を損ねることなく防音性能を高めることができる。
【0009】
前記閉塞空間は、前記パネル支持体内部に区画部材により区画されて複数形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、各閉塞空間と開口とにより複数の個所で適切に音を吸音できる。
【0010】
一の前記パネル支持体は、床面に固定される下部パネル支持体または天井に固定される上部パネル支持体であることを特徴としている。
この特徴によれば、縦方向のフレームを目立たなく薄くして、ガラス面を左右方向に広く確保して美観にすぐれかつ十分な防音効果を発揮する間仕切りパネルを提供できる。
【0011】
一の前記パネル支持体は、床面に固定される下部パネル支持体であることを特徴としている。
この特徴によれば、利用者に近く作業量の多い床側の音を吸音することができる。
【0012】
前記複数の閉塞空間は、左右方向に複数設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右方向のいずれの場所で生じた小さな音であっても吸音することができる。
【0013】
前記複数の閉塞空間は、前後方向に複数設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、一対のガラスパネルの一方側から他方側に向かって伝わる音を、複数段階に吸音することができる。
【0014】
前記閉塞空間の中心部に前記開口が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、ヘルムホルツ共鳴器として機能する閉塞空間による周波数帯の音の吸音効果を効率よく発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例における間仕切パネル装置の正面図である。
【
図3】両面にガラスパネルが取付けられた間仕切パネル装置の要部を拡大した横断面図である。
【
図4】間仕切パネル装置の要部を拡大して示す分解斜視図である。
【
図5】間仕切パネル装置の要部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る間仕切パネル装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例に係る間仕切パネル装置につき、
図1から
図5を参照して説明する。以下、
図3の画面左側を間仕切パネル装置の正面側(前方側)とし、
図3の画面右側を間仕切パネル装置の背面側(後方側)として説明する。
【0018】
間仕切パネル装置1は、例えば、学校やオフィス等の建物内の部屋や空間を複数の区画に仕切って分割するために、天井から床面に亘って複数のパネルを取付けてなるものであり、区画空間の開放感を演出するために透明なガラスパネル4(パネル体)が使用され、強度や遮音性に優れる。
【0019】
図1および
図2に示されるように、実施例における間仕切パネル装置1は、天井Rに固定される上部パネル支持体2と、床面Fに固定される下部パネル支持体3と、の間に複数のガラスパネル4,4,…が前後に離間させて取付けられた二重ガラスパネル構造になっている。また、左右両端に位置する前後一対のガラスパネル4,4の左側端,右側端には、左側部パネル支持体5,右側部パネル支持体6が設けられており、前後の一対のガラスパネル4,4,…の間のパネル内空間S1(
図3参照)を閉塞している。
【0020】
なお、本実施例では、左側部パネル支持体5は、上部パネル支持体2および下部パネル支持体3ばかりでなく壁面Wにも固定されているが、これに限られず、右側部パネル支持体6のように、上部パネル支持体2および下部パネル支持体3によってのみ支持されていてもよく、パネル内空間S1を閉塞可能な構成であれば適宜変更されてもよい。これは、右側部パネル支持体6についても同様であり、右側部パネル支持体6は、上部パネル支持体2および下部パネル支持体3によって支持されているが、これに限られず、左側部パネル支持体5のように、上部パネル支持体2および下部パネル支持体3ばかりでなく壁面Wに固定されてもよい。
【0021】
また、前後に離間させて取付けられるガラスパネル4,4は、同一構成であるため、間仕切パネル装置1の前方側に取付けられるガラスパネル4について説明し、後方側に取付けられるガラスパネル4についての説明を省略する。これは、ガラスパネル4が上部パネル支持体2,下部パネル支持体3,左側部パネル支持体5,右側部パネル支持体6に立設支持される説明についても同様である。
【0022】
左右に隣接するガラスパネル4,4,…の対向端部同士は、透明度の高い樹脂製のジョイント材(図示省略)が充填されることにより上下方向の枠を使用しなくとも左右方向の連結が可能になっている。
【0023】
図2および
図3に示されるように、各ガラスパネル4は、2枚の透明な板ガラスを重合して強化した合わせガラスとなっている。なお、ガラスパネル4は、板ガラスに限定されるものではなく、例えば透明なアクリル製の板材が使用されてもよい。
【0024】
次いで、下部パネル支持体3について詳しく説明する。
図2~
図4に示されるように、下部パネル支持体3は、巾木30と、下部支持部材31と、板部材32と、仕切具33と、カバー10bから主に構成されている。
【0025】
図2および
図4に示されるように、巾木30は、アルミ合金の押出成形により、側面視上向きコ字状に形成されている。
【0026】
巾木30は、その底板30a上に上下方向に重ねられた複数の支持金具37,37,…と共にアンカーボルト(図示略)によって床面Fに固定されている。支持金具37は、重ねられる数が適宜変更可能となっている。これにより、支持金具37上に載置される下部支持部材31の高さを調整可能となっている。
【0027】
下部支持部材31は、アルミ合金の押出成形により、側面視M字状に形成されて形成されている。
【0028】
下部支持部材31は、巾木30を上方から覆うように外嵌される基部31aと、巾木30の前後の側板30b,30bの外面側にそれぞれ配置される前後の支持部31b,31bと、から構成されている。なお、前後の支持部31b,31bの構造は、同一構成であるため、前方の支持部31bの構造について説明し、後方の支持部31bの構造についての説明を省略する。
【0029】
基部31aは、巾木30の前後の側板30b,30bに沿って延びる前後の側板311,311と、側板311,311の上端に略直交して前後方向中央側に向かって延びる前後の天板312,312と、前後の天板312,312の中央側より下方側に延びるクランク状の前後の側壁313,313と、前後の側壁313,313それぞれの下方側に略直交している底板314と、前後の側壁313,313の下端に形成された前後の脚315,315を備えている。これら側壁313,313および底板314により、基部31aは、上方側に開口する溝形状を成している。
【0030】
前方の側壁313を参照して説明すると、側壁313は、前方の天板312に略直交して下方側に直線状に延びる上方板313aと、上方板313aの下端より中央側に傾斜して下方側に直線状に延びる傾斜板313bと、傾斜板313bの下端より上方板313aに対して略平行に下方側に直線状に延びる下方板313cを有している。
【0031】
下部支持部材31は、前後の側板311,311が巾木30の前後の側板30b,30bに外嵌された状態で、前後の脚315,315が最上部の支持金具37上に載置される。
【0032】
前方の側板311から延設される前方の支持部31bは、上端面が平面状に形成されており、ガラスパネル4が載置される。また、ガラスパネル4が載置された状態で、前方の支持部31bにカバー10bが係合されることにより、ガラスパネル4を立設支持可能となっている。
【0033】
図2および
図4に示されるように、板部材32は、アルミ合金の押出成形により、側面視Π字状に形成されている。
【0034】
板部材32は、厚み方向、すなわち上下方向に貫通する複数の貫通孔32aが形成されている平板状の板状部320と、板状部320の前端,後端の下方側に形成された前後の脚321,321と、板状部320の下端左右方向中央より下方側に突出する前後の係止片322,322を備えている。
【0035】
複数の貫通孔32aについて詳しくは、板状部320の前後方向中央において前後方向に離間して2つの貫通孔32a,32aが形成されている。さらにこれら2つの貫通孔32a,32aは、板状部320の左右方向において所定間隔置きに形成されている。
【0036】
板部材32は、前後の脚321,321を下部支持部材31における前後の天板312,312に載置することで、前後の係止片322,322が下部支持部材31における前後の天板312,312に係止され、下部支持部材31に組付けられている。これにより、下部支持部材31および板部材32によって支持体内部空間S2が形成されている。
【0037】
また、支持体内部空間S2は、仕切具33によって複数の閉塞空間である区画室S3に区画されている。ここで、閉塞空間とは、下部支持部材31、板部材32および仕切具33により囲まれた、ヘルムホルツ共鳴器として機能する空間のことを指し、後述するように、ヘルムホルツ共鳴器として機能する空間あれば、厳密には密閉された空間でなくてもよい。つまり、支持体内部空間S2は下部支持部材31および板部材32によって囲まれて空間が形成されており、該支持体内部空間S2を仕切る仕切具33同士や仕切具33と下部支持部材31および板部材32との間に隙間があり、隣接する区画室S3,S3が連通するものであったとしても、区画室S3,S3間において、空間内の空気はそれほど流動しないので、区画室S3は、下部支持部材31、板部材32および仕切具33により囲まれた容器として機能し、すなわち、ヘルムホルツ共鳴器として機能する閉塞空間となり得る。
【0038】
仕切具33は、
図4に示すように、板状の底板330と、底板330に立設支持される長手方向仕切板331と、底板330および長手方向仕切板331に支持される短手方向仕切板332から構成されている。
【0039】
底板330は、樹脂の型抜き成型によって形成されており、下部支持部材31の底板314に沿って長手方向、すなわち左右方向に延びている。また、底板330の幅、すなわち前後方向の寸法は、下部支持部材31の下方板313c,313c間の寸法と略同一となっている。これにより、底板330は、底板314上に安定して載置されるようになっている。
【0040】
また、底板330には、上下方向に貫通し前後方向中心に左右方向に長尺な長孔330aが所定間隔置きに形成されている。さらに、底板330には、上下方向に貫通し前方側または後方側に開放されているスリット330bが所定間隔置きに形成されている。
【0041】
長手方向仕切板331は、樹脂の型抜き成型によって形成されており、下部支持部材31の底板314に沿って長手方向、すなわち左右方向に延びている。また、長手方向仕切板331の高さ、すなわち上下方向の寸法は、支持体内部空間S2の上下方向の寸法と略同一となっている。
【0042】
長手方向仕切板331は、その下端部に下方側に突出する係止片331aが形成されており、係止片331が底板330の長孔330aに挿嵌されることで立設される。
【0043】
また、長手方向仕切板331には、前後方向に貫通し上方側に開放されているスリット331bが所定間隔置きに形成されている。
【0044】
短手方向仕切板332は、樹脂の型抜き成型によって下向きコ字状に形成されている。また、短手方向仕切板332の幅寸法は、下部支持部材31の下方板313c,313c間の寸法と略同一となっている。さらに、短手方向仕切板332の高さ寸法は、支持体内部空間S2の上下方向の寸法と略同一となっている。ここで、底板330と、長手方向仕切板331と、短手方向仕切板332は、樹脂以外の材料で形成されるものであってもよい。
【0045】
短手方向仕切板332には、左右方向に貫通し下方側に開放されているスリット332aが形成されている。また、短手方向仕切板332には、その前後それぞれの下端部に下方側に突出する係止片332bが形成されている。
【0046】
これらを組み立てるには、先ず、底板330に長手方向仕切板331を立設し、その後、
短手方向仕切板332を長手方向仕切板331に対して直交方向から挿入し、詳細には、それぞれのスリット331b,332aを通じて咬合させ、さらに前後の係止片322bを底板330における前後のスリット330bに挿嵌する。このように、仕切具33は、下部支持部材31の長手方向に沿って配置される板状の底板330および長手方向仕切板331と、下部支持部材31の短手方向に沿って配置される短手方向仕切板332とからなるものであり、仕切具33だけで自立させることが可能とである。また、仕切具33は、下部支持部材31とは別体となっているので、下部支持部材31の底板314上に仕切具33を載置するだけで、閉塞空間である複数の区画室S3を形成することができ、構造が簡単であるとともに、区画室S3の区画の変更も容易に行うことができる。
【0047】
このようにして支持体内部空間S2は、長手方向仕切板331によって前後方向に略等分に区画され、さらに短手方向仕切板332によって左右方向に略等分に区画されて、閉塞空間である複数の区画室S3を形成する。そして、これら複数の区画室S3は、前後にも左右にも略等配されている。なお、
図3に示されるように、区画室S3を構成する短手方向仕切板332と下部支持部材31の側壁313との間には隙間Gが生じており、左右に隣接する区画室S3,S3は連通している。このように、隣接する区画室S3,S3が連通するものであったとしても、区画室S3,S3間において、空間内の空気はそれほど流動せず、また、
図4~5に示すように、隙間Gが形成されている短手方向仕切板332近傍の位置は、貫通孔32aから離れているので、区画室S3が、下部支持部材31、板部材32および仕切具33により囲まれた容器として機能することに対する影響は小さく、区画室S3はヘルムホルツ共鳴器として十分機能する閉塞空間となり得る。
【0048】
また、
図5に示されるように、板部材32の貫通孔32aは、長手方向仕切板331と下部支持部材31の下方板313c,313c間における前後方向略中心、かつ隣り合う一対の短手方向仕切板332,332間における左右方向略中心に配置される。このように、閉塞空間である各区画室S3の板部材32の中心部に貫通孔32a開口が設けられているので、ヘルムホルツ共鳴器による周波数帯の音の吸音効果を効率よく発揮することができる。
【0049】
次いで、上部パネル支持体2について説明する。
図2に示されるように、上部パネル支持体2は、笠木20と、上部支持部材21と、板部材22と、カバー10bから主に構成されている。
【0050】
笠木20は、側面視下向きコ字状をなし、天井Rに複数のボルト(図示省略)により固定されている。笠木20の内側には、複数の吊支金具27がボルトによって笠木20と共締めされて固定されている。各吊支金具には、高さ調整用のアジャスタボルトを用いて上部支持部材21が吊支されている。また、上部支持部材21には、板部材22が係止されている。
【0051】
上部支持部材21の支持部21bの下方にガラスパネル4が配置された状態で、支持部21bにカバー10bが係合されることにより、ガラスパネル4は立設支持されている。
【0052】
次いで、左側部パネル支持体5および右側部パネル支持体6について説明する。
【0053】
図1に示されるように、左側部パネル支持体5の柱体50は、壁面Wに固定されるとともに、上端部が上部パネル支持体2に図示しない連結金具によって連結され、下端部が下部パネル支持体3に図示しない連結金具によって連結されている。また、柱体50の支持部(図示略)にガラスパネル4の左側端部が配置された状態で、該支持部にカバー10aが係合されることにより、ガラスパネル4は立設支持されている。
【0054】
右側部パネル支持体6の柱体60は、左側部パネル支持体5と同様に、連結金具によって上端部が上部パネル支持体2に、下端部が下部パネル支持体3に連結されている。また、柱体60の支持部(図示略)にガラスパネル4の右側端部が配置された状態で、該支持部にカバー10aが係合されることにより、ガラスパネル4は立設支持されている。
【0055】
なお、直接の図示は省略するが、柱体60には、紙面後方側に延びる上部パネル支持体2、下部パネル支持体3、左右方向に離間配置されているガラスパネル4,4が連結されている。
【0056】
ここで、ヘルツホルム共鳴を応用した吸音性能について説明する。下部パネル支持体3において区画された閉塞空間である複数の区画室S3を用いたヘルツホルム共鳴器について説明するが、上部パネル支持体2,左側部パネル支持体5、右側部パネル支持体6にも同様に、区画された閉塞空間である複数の区画室S3を用いたヘルツホルム共鳴器を形成することができる。特に、下部パネル支持体3における区画された閉塞空間である複数の区画室S3を用いたヘルツホルム共鳴器では、利用者に近く作業量の多い床側の音、例えば、歩くときの音や台車を移動させる音等を吸音することができ、利用者に対する吸音効果を高めることができる。
【0057】
「ヘルツホルム共鳴器」とは、開口部を持った容器の内部にある空気がばねとしての役割を果たし、容器の内部にある空気が共鳴(共振)することで、共鳴している周波数を中心に音のエネルギーを吸収する働きをするものである。「ヘルムホルツ共鳴器」の共振周波数(固有振動数)(f)は、容器の内容積(V)、開口部の面積(S)、開口部の首の長さ(L)などによって決まり、次の式で表される。
f=(c/2π)√(S/VL)
【0058】
実施例において、支持体内部空間S2を形成する板部材32には、上記のように、厚み方向、すなわち上下方向に貫通する複数の貫通孔32aが設けられているが、下部パネル支持体3における区画された閉塞空間である複数の区画室S3において、各々の区画室S3が有する貫通孔32aの面積(区画室S3が複数の貫通孔32aを有するものであれば貫通孔32aの面積の総和)が「開口部の面積(S)」となり、板部材32の厚さが「開口部の首の長さ(L)」となり、各々の区画室S3の容積が「容器の内容積(V)」となる。これら貫通孔32aの面積、板部材32の厚さ、閉塞室S3の容積を適宜選択することにより、各々の区画室S3において所望の周波数帯(例えば、500Hz)の音エネルギーを吸収させることができ、防音性能を高めることができる。
【0059】
これらの実施例によれば、一方のガラスパネル外で生じた音が、当該ガラスパネルを通じてパネル間空間内の空気を振動させても、ヘルムホルツ共鳴器により対応する周波数帯の音を吸音することができる。そのため、美観を損ねることなく吸音効果を高め、防音性能を高めることができる。
【0060】
また、区画された閉塞空間である複数の区画室S3が、左右方向に複数設けられているものであれば、左右方向のいずれの場所で生じた小さな音であっても吸音することができる。
【0061】
さらに、区画された閉塞空間である複数の区画室S3が、前後方向に複数設けられているものであれば、一対のガラスパネルの一方側から他方側に向かって伝わる音を、複数段階に吸音することができる。
【0062】
また、区画された閉塞空間である複数の区画室S3は、容積が略同一であり、複数の区画室S3のうち一つの区画室S3に連通する貫通孔32aの開口面積の総和は略同一であれば、ヘルムホルツ共鳴器として機能する閉塞空間である各区画室S3において吸音可能な周波数帯を略一定にすることができるため、吸音効率を高めることができる。
【0063】
さらに、複数の区画室S3のうち一つの区画室S3には、一つの貫通孔32aが連通しているものであってもよい。これによれば、貫通孔32aを加工するための工数を少なくすることができる。
【0064】
また、実施例では、貫通孔32aは、区画された閉塞空間である複数の区画室S3を含む支持体内部空間S2とパネル間空間S1とを区分けする板部材32に形成された貫通孔であり、板部材32を振動板として機能させることができる。つまり、板部材32を振動板として機能させることで、ガラスパネルの一方側から他方側に向かって伝わる音に共振させ、さらに防音効果を高めることができる。板部材32を振動板として機能させるには、板部材32の下面は、仕切具33具体的には長手方向仕切板331、短手方向仕切板332と僅かに離間していることが好ましい。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、実施例では、下部パネル支持体3にヘルムホルツ共鳴器を設けるものについて説明したが、上部パネル支持体2、左側部パネル支持体5、右側部パネル支持体6のいずれかに設けるものであってもよいし、これらのパネル支持体のうちの複数あるいはすべてのパネル支持体に設けてもよい。
【0067】
また、実施例では、ヘルムホルツ共鳴器について、複数の区画室S3の容積が略同一として特定の周波数帯の音エネルギーを吸収させるものについて説明したが、複数の区画室S3の容積(V)や貫通孔32aの開口面積(S)を異ならせ、複数種類の周波数帯の音エネルギーを吸収させるものであってもよい。
【0068】
また、実施例では、ガラスパネルを支持するパネル支持体について、該ガラスパネルの四方を囲むように、上部パネル支持体2、下部パネル支持体3、左側部パネル支持体5、右側部パネル支持体6で支持するものについて説明したが、パネル支持体によるガラスパネルの支持が、上下などの二方を支持するものであっても、また上左右、下左右などの三方を支持するものであってもよい。
【0069】
また、実施例では、下部パネル支持体3における区画された閉塞空間である複数の区画室S3は、前後に複数個、左右に複数個からなるものについて説明したが、複数の区画室S3は、前後に1個(左右は複数個)または左右に1個(前後は複数個)からなるものであってもよい。
【0070】
また、実施例では、仕切具33が、下部支持部材31とは別体となっているものについて説明したが、仕切具33は、下部パネル支持部材31や板部材32とは別体ではなくても、下部パネル支持部材31や板部材32に仕切板からなる仕切具33が形成されているものであってもよい。
【0071】
また、実施例では、ヘルムホルツ共鳴器として機能する閉塞空間である区画室S3について、「ヘルムホルツ共鳴器」の共振周波数(固有振動数)(f)の値に関連する「開口部の首の長さ(L)」を「板部材32の厚さ」として説明したが、これに限らず、貫通孔32aに連なり上下方向に延びる筒部を設けて、「開口部の首の長さ(L)」を「板部材32の厚さ+筒部の上下方向の長さ」としてもよい。これによれば、閉塞空間である区画室S3を狭くしても、すなわち「容器の内容積(V)」を小さくしても、筒部の上下方向の長さ、すなわち「開口部の首の長さ(L)」を調整することで同等の共鳴効果を得ることができる。特に、筒部を閉塞空間である区画室S3内に設ければ、筒部が外から見えないので、美観を損なうことがなく、防音効果を高めることができる。
【0072】
また、実施例では、ヘルムホルツ共鳴器として機能する閉塞空間を、支持体内部空間S2を仕切具33により区画された複数の区画室S3であるとして説明したが、仕切具33を設けない下部支持部材31と板部材32により形成される支持体内部空間S2全体を閉塞空間としてもよい。
【0073】
また、実施例では、ヘルムホルツ共鳴器として機能する閉塞空間である複数の区画室S3について、密閉空間でなくてもよいとの説明をしたが、もちろん複数の区画室S3を密閉空間として構成してもよい。
【0074】
また、実施例では、閉塞空間にそれぞれ一つの貫通孔が設けられる例について説明したが、一つの閉塞空間に設けられる貫通孔の個数は一つに限らず複数であってもよい。