(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092777
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】薬品類収納装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230627BHJP
B65G 1/14 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61J3/00 310Z
A61J3/00 310K
B65G1/14 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207986
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【テーマコード(参考)】
3F022
4C047
【Fターム(参考)】
3F022AA10
3F022FF10
3F022MM35
3F022QQ01
4C047JJ05
4C047JJ11
4C047JJ31
4C047KK25
(57)【要約】
【課題】手動の開閉シャッターに対する収納容器の前進衝突を抑止する。また、載置受部材の使用態様を選択できるようにもする。
【解決手段】庫部14の前面が全解放されるところまで開閉シャッター12が筐体11に収納されているか否かを検出する開閉検出機構30を庫部14の側端部のうちシャッター収納部13の近傍に内蔵するとともに、開閉シャッター12の筐体内収納が開閉検出機構30の検出にて確認できないときには収納容器20の前方押出が抑止されるようにする。また、前方への引き出しや後方への押し戻しの可能な横板状の載置受部材50を庫部14の中段位置に組み込むとともに、載置受部材50の前後移動が前方への引き出し位置と後方への押し戻し位置とそれらの中間位置とで抑制されるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品類を収容する多数の収納容器と、前記収納容器を個々に前方へ引出可能な状態で保持する庫部と、前記収納容器それぞれの後方に配設された多数の開駆動機構と、それらを収めた筐体と、前記庫部の端部方向への押し込み操作にて前記筐体の内部へ収納可能であって収納時には前記庫部の前面を解放するが引き出されると前記庫部の前面を閉じる開閉シャッターとを備えた装置であって、前記開駆動機構が、電動モータを具備した駆動部と、前記駆動部によって駆動されると配設先の収納容器を後押して前進させる押出機構と、前記駆動部によって駆動されると前記押出機構の後押しに先立って該収納容器から外れて該収納容器の前方引出を許容するが該収納容器が後へ押し込まれたときには該収納容器に係わって該収納容器の前方引出を阻止するロック機構とを具備している薬品類収納装置において、
前記庫部の前面が全解放されるところまで前記開閉シャッターが前記筐体に収納されているか否かを検出する開閉検出機構が、前記筐体の側端部に内蔵されており、
前記開閉シャッターが前記筐体に収納されていることを前記開閉検出機構の検出に基づいて確認することができないときには、前記駆動部による前記押出機構の駆動が抑止されるようになっている、ことを特徴とする薬品類収納装置。
【請求項2】
前記開閉検出機構が、前記筐体のうち前記開閉シャッターを収納するシャッター収納部の近傍に配設されていて、前記開閉シャッターの引出時先頭側の端部が前記シャッター収納部と前記庫部との中間に位置しているときに検出状態の切り替えが行われるようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の薬品類収納装置。
【請求項3】
前記開閉検出機構が、検出信号の切替を行うメカニカルスイッチと、前記シャッター収納部から出入りする前記開閉シャッターとの接離に応じて揺動する応動部材と、前記応動部材の揺動運動を前記メカニカルスイッチに伝達する伝動機構と、前記応動部材を前記開閉シャッターと当接する方へ付勢する応動部付勢部材と、前記メカニカルスイッチの切替状態が前記開閉シャッターの不検出側になる向きに前記伝動機構を付勢する伝動部付勢部材と、前記伝動機構に組み込まれていて伝動状態を弾性的変形にて緩和する緩衝部材とを具備している、ことを特徴とする請求項2記載の薬品類収納装置。
【請求項4】
前記応動部材と前記伝動機構と前記メカニカルスイッチとが上下方向に配設されていることを特徴とする請求項3記載の薬品類収納装置。
【請求項5】
前方への引き出しや後方への押し戻しの可能な横板状の載置受部材が前記庫部の中段位置に組み込まれており、前記載置受部材の前後移動が前方への引き出し位置と後方への押し戻し位置とそれらの中間位置とで抑制されるようになっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された薬品類収納装置。
【請求項6】
前方への引き出しや後方への押し戻しの可能な横板状の載置受部材が前記庫部の中段位置に組み込まれており、前記載置受部材の後部には後輪が付設されるとともに前記後輪より前だが中央より後方には前輪が付設されており、前記後輪の前後移動を上から案内する上部案内部材と前記前輪の前後移動を下から案内する下部案内部材とが上下対向配置で前記庫部における前記載置受部材の組み込み部位に装備されており、
前記上部案内部材と前記下部案内部材とのうち何れか一方または双方に、前記前輪と前記後輪とのうち案内対象の車輪の一部が嵌まって該車輪の円滑な転動を妨げる切欠が、前後に分散して三個以上形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された薬品類収納装置。
【請求項7】
前記載置受部材の上面上を滑って後方へ移動する滑動物に当接して前記滑動物の後方移動を抑止する後方移動抑止部が前記載置受部材の上面の後方部位に設けられていることを特徴とする請求項6記載の薬品類収納装置。
【請求項8】
上位装置と交信する手段を具備しており、前記開閉シャッターが前記筐体に収納されていることを前記開閉検出機構の検出に基づいて確認することができないときに前記上位装置から調剤指示を受信すると前記調剤指示に従えない旨の返信を前記上位装置へ送るようになっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載された薬品類収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品収納装置や,薬品棚,調剤台,医療具保管庫などの薬品類収納装置に関し、詳しくは、医薬品や医療材料などの薬品類を人手で出し入れしうる引出可能な収納容器を複数・多数具えていて、そこからの薬品類取出を薬品類払出情報に基づいて選択的に可能とする薬品類収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収納対象を薬品類に限らなければ、分別保管機能の付いた収納庫の典型例として、収納部が多数の区画室に区切られて各々の区画室に扉が着いている汎用のロッカーや設備用物品台などが挙げられる。
これに対し、収納対象が薬品類の場合、アンプル剤等の薬品類を多数のカセット(収納容器)に収納して分別保管することに加えて、その中の薬品類の選択に加えて開動作まで自動で行うようになった薬品類収納装置が開発されている。
【0003】
この薬品類収納装置は(例えば特許文献1~3参照)、薬品類を収容する多数の収納容器と、それらを前方へ引出可能な状態で縦横に並べて保持する庫部と、前記収納容器それぞれの後方に配設されたモータとその回転軸に取着された偏心カムやリンク機構などを具えた押出機構からなりそれぞれが配設先の収納容器を対応する押出機構で後押して前進させる多数の開駆動機構とを備えている。
【0004】
それらのなかには、不使用時の保安や保全といった観点などから、筐体の最上部に収納可能なシャッター(庫部前面開閉用シャッター、以下、単に開閉シャッターと呼ぶ。)を装備して、装置の前面を開閉できるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
また、利便性向上に資する開駆動機構について、押出機構に偏心カムを採用してコストダウンを図ったり(例えば特許文献2参照)、押出機構にリンク機構を採用して収納容器の押出距離を大きくしたり(例えば特許文献3参照)、種々の改良もなされている。
【0005】
さらに、多数の薬剤を並べて保持しうる区分棚を複数と、それらの区分棚を前方へ個別引出可能な状態で内部に収めた棚枠と、その棚枠の下に配設されて棚部を下から支える台部とを備えた薬品棚も開発されている(例えば特許文献4参照)。
その薬品棚には、横板状の載置受部材が、前方への引き出しや後方への押し込みによる出し入れ可能状態・進退可能状態で台部の上端部に組み込まれており、その載置受部材には、不使用時状態を継続させるために、所謂マグネットキャッチやラッチ機構といった押し込み状態安定化手段が付設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-007093号公報
【特許文献2】特開2013-255724号公報
【特許文献3】特開2020-195494号公報
【特許文献4】特開2021-154008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の薬品類収納装置のうち、偏心カム等で収納容器を前進させるタイプの薬品類収納装置では(既述の特許文献1,2参照)、収納容器の前進距離が短いため、開閉シャッターが閉まっているとき不用意に収納容器を前進駆動させたとしても、収納容器が開閉シャッターにぶつかる可能性が小さいうえ、収納容器や押出機構が割と剛堅なことから例え収納容器が開閉シャッターにぶつかったしても収納容器や押出機構の部材破損といった不所望な事態に至る恐れや心配は不要であった。
【0008】
これに対し、押出機構にリンク機構を採用して収納容器の前進距離を大きく伸ばしたタイプの薬品類収納装置では(既述の特許文献3参照)、収納容器の前進距離が長いうえ押出機構の部材が相対的に複雑化・脆弱化しているため、開閉シャッターが閉まっているとき不用意に収納容器を前進駆動させると、確実に収納容器が開閉シャッターにぶつかって、その反力が収納容器を介して押出機構に掛かり、そこのリンク機構が損なわれてしまう可能性がかなり高い。そのため、このタイプの薬品類収納装置では、開閉シャッターの装備を回避していた。
【0009】
ところが、前進距離の大きな後者の薬品類収納装置(既述の特許文献3参照)が普及してくると、前者の開閉シャッター付き薬品類収納装置(既述の特許文献1,2参照)を使用したことのある利用者等から、後者の薬品類収納装置(既述の特許文献3参照)についても開閉シャッターを付けて欲しいという要請が届くようになった。
しかしながら、押出機構の剛堅さを犠牲にして収納容器の前進距離を伸ばした後者の薬品類収納装置(既述の特許文献3参照)については、現行機に対して単純に開閉シャッターを付設するという対応だけでは、上述のように押出機構のリンク機構を損なうおそれがあり、収納容器の前端部等を傷めるおそれもあるので、対処が足りない。
【0010】
また、シャッター付設に加えて筐体の前後長を伸ばすことも行って開閉シャッターの後面と収納容器の前端との距離を拡大するという対策も思い浮かぶが、装置の占有面積が増えるのに対し薬品類の収納数量は増えないため、収納効率の低下を招くので、好ましくない。一方、コスト面や耐久性などの観点から、付設する開閉シャッターは開閉を電動等で行うものでなく手動で行うものにとどめることが望まれる。
そこで、手動の開閉シャッターを付設しても該シャッターに対する収納容器の前進衝突が抑止される薬品類収納装置を実現することが第1技術課題となる。
【0011】
さらに、薬剤保持用の区分棚を引出可能に収めた棚枠とその下の台部とを備えた薬品棚のように(既述の特許文献4参照)、前方への引き出しや後方への押し戻しの可能な横板状の載置受部材を薬品類収納装置にも付設して欲しい、との要請も届くようになった。
しかしながら、薬品類収納装置は、載置受部材より上方の区分棚と載置受部材より下方の台部とで薬剤等の取出頻度が大きく異なる台部付き薬品棚と異なり、載置受部材より下方の収納容器の中の薬品類についても載置受部材より上方の収納容器の中の薬品類に負けない頻度で取り出し等が行われることがある。
【0012】
そのため、載置受部材の引き出し態様が出すのか入れるのかという二者択一の単純な態様のままでは、引き出した載置受部材より下方の収納容器について取出対象か否かの目視確認等が遣り辛くて、載置受部材を活用できない状況や載置受部材を使いずらい状況が多発しかねないという懸念が払拭できない。
そこで、載置受部材を薬品類収納装置に付設するに際して、載置受部材の使用態様を調剤作業者等が選択できるようにすることが第2技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の薬品類収納装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
薬品類を収容する多数の収納容器と、前記収納容器を個々に前方へ引出可能な状態で保持する庫部と、前記収納容器それぞれの後方に配設された多数の開駆動機構と、それらを収めた筐体と、前記庫部の端部方向への押し込み操作にて前記筐体の内部へ収納可能であって収納時には前記庫部の前面を解放するが引き出されると前記庫部の前面を閉じる開閉シャッターとを備えた装置であって、前記開駆動機構が、電動モータを具備した駆動部と、前記駆動部によって駆動されると配設先の収納容器を後押して前進させる押出機構と、前記駆動部によって駆動されると前記押出機構の後押しに先立って該収納容器から外れて該収納容器の前方引出を許容するが該収納容器が後へ押し込まれたときには該収納容器に係わって該収納容器の前方引出を阻止するロック機構とを具備している薬品類収納装置において、
前記庫部の前面が全解放されるところまで前記開閉シャッターが前記筐体に収納されているか否かを検出する開閉検出機構が、前記筐体の側端部に内蔵されており、
前記開閉シャッターが前記筐体に収納されていることを前記開閉検出機構の検出に基づいて確認することができないときには、前記駆動部による前記押出機構の駆動が抑止されるようになっている、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段2)、上記解決手段1の薬品類収納装置であって、前記開閉検出機構が、前記筐体のうち前記開閉シャッターを収納するシャッター収納部の近傍に配設されていて、前記開閉シャッターの引出時先頭側の端部が前記シャッター収納部と前記庫部との中間に位置しているときに検出状態の切り替えが行われるようになっている、ことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の薬品類収納装置は(解決手段3)、上記解決手段2の薬品類収納装置であって、前記開閉検出機構が、検出信号の切替を行うメカニカルスイッチと、前記シャッター収納部から出入りする前記開閉シャッターとの接離に応じて揺動する応動部材と、前記応動部材の揺動運動を前記メカニカルスイッチに伝達する伝動機構と、前記応動部材を前記開閉シャッターと当接する方へ付勢する応動部付勢部材と、前記メカニカルスイッチの切替状態が前記開閉シャッターの不検出側になる向きに前記伝動機構を付勢する伝動部付勢部材と、前記伝動機構に組み込まれていて伝動状態を弾性的変形にて緩和する緩衝部材とを具備していることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段4)、上記解決手段3の薬品類収納装置であって、前記応動部材と前記伝動機構と前記メカニカルスイッチとが上下方向に配設されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段5)、上記解決手段1~4の薬品類収納装置であって、前方への引き出しや後方への押し戻しの可能な横板状の載置受部材が前記庫部の中段位置に組み込まれており、前記載置受部材の前後移動が前方への引き出し位置と後方への押し戻し位置とそれらの中間位置とで抑制されるようになっていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段6)、上記解決手段1~4の薬品類収納装置であって、前方への引き出しや後方への押し戻しの可能な横板状の載置受部材が前記庫部の中段位置に組み込まれており、前記載置受部材の後部には後輪が付設されるとともに前記後輪より前だが中央より後方には前輪が付設されており、前記後輪の前後移動を上から案内する上部案内部材と前記前輪の前後移動を下から案内する下部案内部材とが上下対向配置で前記庫部における前記載置受部材の組み込み部位に装備されており、
前記上部案内部材と前記下部案内部材とのうち何れか一方または双方に、前記前輪と前記後輪とのうち案内対象の車輪の一部が嵌まって該車輪の円滑な転動を妨げる切欠が、前後に分散して三個以上形成されている、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段7)、上記解決手段6の薬品類収納装置であって、前記載置受部材の上面上を滑って後方へ移動する滑動物に当接して前記滑動物の後方移動を抑止する後方移動抑止部が前記載置受部材の上面の後方部位に設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の薬品類収納装置は(解決手段8)、上記解決手段1~7の薬品類収納装置であって、上位装置と交信する手段を具備しており、前記開閉シャッターが前記筐体に収納されていることを前記開閉検出機構の検出に基づいて確認することができないときに前記上位装置から調剤指示を受信すると前記調剤指示に従えない旨の返信を前記上位装置へ送るようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段1)、開閉シャッターの実装に際して開閉検出機構も装備して、庫部の前面が解放されるところまで開閉シャッターが筐体に収納されているか否かが検出されるとともに、それにて開閉シャッターの筐体内収納ひいては庫部前面の解放を確認することができないときには押出機構の駆動が抑止されるようにもしたことにより、収納容器の前進距離の大小にかかわらず確実に収納容器と開閉シャッターとの衝突が回避されることになる。
【0022】
また、多種の薬品類を個別取出可能に収納する装置は一般に前後幅・奥行きが横幅・左右幅より狭いことから、開閉検出機構を筐体の側端部に内蔵したことにより、例え開閉検出手段の搭載によって装置サイズが拡大されることになったとしても占有面積の増加は小さめに抑制される。更に開閉検出手段を側板の内側等に収めることができれば、装置サイズの拡大は完全に回避することができる。
したがって、この発明によれば、手動の開閉シャッターを付設しても該シャッターに対する収納容器の前進衝突が抑止される薬品類収納装置を実現することができて第1技術課題が解決されるのに加え、収納効率の低下を回避や抑制することもできる。
【0023】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段2)、開閉検出機構の設置箇所を開閉シャッター収納部の近くにしたことにより、開閉シャッターを閉じるときに行われる開閉検出機構の応動が初動段階に済ませられるので、開閉シャッターが手動式で移動速度等がバラツキ易いものであっても、閉操作時の検出が迅速に而も安定して行われる。
また、開閉検出機構が機械式のものであっても、当接が速度の遅い初動段階でなされるので、開閉検出機構に加わる衝撃が小さくて済むという利点もある。
【0024】
さらに、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段3)、開閉検出機構を具現化するに際して、粉塵汚れ等に弱いとされる光学式検出よりも安定した動作を期待できるメカニカルスイッチを採用したうえで、メカニカルスイッチを開閉シャッターで直に作動させるのでなく、開閉シャッターと直に接触・離脱する応動部材を介在させてメカニカルスイッチへの直接的な衝撃を緩和するとともに、応動部材からメカニカルスイッチに至る伝動経路には適宜な付勢部材に加えて緩衝部材をも設けることで間接的な衝撃までも緩和されるようにしたことにより、開閉シャッターが手動式であって開閉検出機構が種々の衝撃に曝されたとしてもメカニカルスイッチに掛かる衝撃が十分に低減・緩和されるので、開閉検出機構が長期に及んで安定動作することになる。
【0025】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段4)、開閉検出機構を構成する応動部材と伝動機構とメカニカルスイッチとを縦に配置したことにより、開閉検出機構が平面視では小さなものになることから、開閉シャッターの移動経路に沿った細い隙間といった狭い空間に開閉検出機構を組み込むことが可能になるので、不所望な装置占有面積の増加を回避・抑制することができる。
【0026】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段5)、載置受部材の前後移動が前方への引き出し位置と後方への押し戻し位置とそれらの中間位置とで抑制されるようにしたことにより、載置受部材に係る固定状態と移動自由状態との中間状態に相当する謂わば安定的な停止位置には、最後方の押し戻し位置と、最前方の引き出し位置とに加えて、それら両位置の間に位置する途中位置も存在することになる。
したがって、この発明によれば、薬品類収納装置に付設された載置受部材載置受部材を使用するに際して該部材を庫部に押し込んでおくのか該部材を庫部から大きく引き出しておくのか該部材を庫部から途中まで引き出しておくのか気軽に安定的な停止位置を選択できるので、第1技術課題に加えて第2技術課題も解決される。
【0027】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段6)、載置受部材の後方寄り部位に前輪が付設されていることから、前輪を下部案内部材に乗せると載置受部材の後部が上がろうとするが後輪の上昇が上部案内部材によって抑えられるので、載置受部材は横向きの姿勢を維持する。そして、載置受部材を前後に移動させて複数の切欠のうち何れかに車輪の一部が嵌まると、そこで載置受部材は安定するため、載置受部材の安定的な停止位置には最後方の押し戻し位置と最前方の引き出し位置とに加えて途中位置も存在することになる。
【0028】
そのような途中位置に在る載置受部材は収納容器から取り出した薬品類を一時的に保持する機能を或る程度は維持しつつ下方の収納容器等を見やすくするものである。そして、そのような引き出し態様の多様化によって載置受部材の活用の幅が広がる。なお、載置受部材の前端部を少し持ち上げると切欠への車輪の嵌合が解消されるため、載置受部材の停止は固定でなく安定的な停止にとどまるので、載置受部材の前後移動に不都合は無い。
したがって、この発明によれば、薬品類収納装置に付設された載置受部材載置受部材を使用するに際して該部材を庫部に押し込んでおくのか該部材を庫部から大きく引き出しておくのか該部材を庫部から途中まで引き出しておくのか気軽に選択できるので、第1技術課題に加えて第2技術課題も解決される。
【0029】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段7)、切欠への車輪の嵌合によって安定的に停止している載置受部材を移動させるのに先だって載置受部材の前端部を少し持ち上げたり、更にその載置受部材を前方へ引いたりしたときに、既に載置受部材の上に載せ置かれていた薬剤や用紙といった載置物が後方へ滑り易くなったり転がり易くなったりするが、例えそのような滑動や転動が発生したとしても、載置物の後方移動は後方移動抑止部との当接によって抑止されるので、載置物が載置受部材の後方から庫内に落下するという不所望な事態の発生を防止することができる。
【0030】
また、本発明の薬品類収納装置にあっては(解決手段8)、開閉シャッターが閉まっているときには、調剤指示が上位装置から送られてきても、その調剤指示に従う動作が直ちには行えないので、その旨の返信を上位装置へ送り返すようにもしたことにより、該当する薬品類収納装置のシャッターを開ける必要性を広く知らせることができるうえ、使用する薬品類収納装置として他の装置を選択し直すといった判断にも資することになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施例1について、薬品類収納装置の構造を示し、(a)が開閉シャッターを閉めたところの斜視図、(b)が開閉シャッターを開けたところの斜視図、(c)が幾つかの収納容器が押し出されるとともに載置受部材を引き出したところの斜視図、(d)が下方の収納容器も押し出されるとともに載置受部材の引き出し具合を抑えたところの斜視図である。
【
図2】収納容器とその引出枠や開駆動機構などとに係る平面図であり、(a)が収納容器を押し込んだ状態を示し、(b)が収納容器を押し出した状態を示している。
【
図3】開閉シャッターと開閉検出機構との関係を示す背面図であり、(a)が開状態を示し、(b)がメカニカルスイッチの拡大図、(c)が開状態の要部拡大図、(d)が閉め始めの要部拡大図である。
【
図5】載置機構の外観を示す斜視図であり、(a)は載置受部材が押し込まれた状態を示し、(b)は載置受部材が半分ほど引き出された状態を示し、(c)は載置受部材が大きく引き出された状態を示している。
【
図6】載置機構の内部構造を示し、(a)は載置受部材の縦断右側面図、(b)は案内機構の縦断右側面図、(c)は案内機構のA-A断面拡大図、(d)~(f)は載置機構の縦断右側面図であり、(d)は載置受部材が押し込まれた状態を示し、(e)は載置受部材が半分ほど引き出された状態を示し、(f)は載置受部材が大きく引き出された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
このような本発明の薬品類収納装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1~6に示した実施例1は、上述した解決手段1~8(出願当初の請求項1~8)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ベースや,フレーム,ボルト等の締結具,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例0033】
本発明の薬品類収納装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、薬品類収納装置10の外観と概要構成を示した斜視図であり、(a)が開閉シャッター12を閉めた状態を示し、(b)が開閉シャッター12を開けた状態を示し、(c)が、載置受部材50より上に位置していて調剤対象になった収納容器20a,20bが前方へ押し出されるとともに載置受部材50を最大まで引き出した状態を示し、(d)が、載置受部材50より下方の収納容器20a,20bも前方へ押し出されるとともに載置受部材50の引き出し具合を抑えた状態を示している。
【0034】
図2は、収納容器20とその引出枠25や開駆動機構21などとに係る平面図であり、(a)は収納容器20が手作業にて引出枠25に押し込まれた状態を示し、(b)は開駆動機構21にて収納容器20が押し出された状態を示している。
図3は、開閉シャッター12と開閉検出機構30との配置状態を示す部分に係る背面図であり、(a)が開閉シャッター12を開けたときの状態を示し、(b)がメカニカルスイッチ31の拡大図、(c)がシャッター開時の要部状態を示す部分拡大図、(d)がシャッター閉め始め又はシャッター開け終わり直前の要部状態を示す部分拡大図である。
【0035】
図4は、薬品類収納装置10の制御部40と上位の群管理装置200や調剤サーバ100とに係る制御系の概要ブロック図である。
図5は、載置機構50&60の外観を示す斜視図であり、(a)は載置受部材50が案内機構60に押し込まれたときの状態を示し、(b)は載置受部材50が案内機構60から半分ほど引き出されたときの状態を示し、(c)は載置受部材50が案内機構60から大きく引き出されたときの状態を示している。
【0036】
図6は、載置機構50&60の詳細構造を示し、(a)は載置受部材50の縦断右側面図であり、(b)は案内機構60の縦断右側面図であり、(c)は、案内機構60のA-A断面拡大図であり(A矢視は(b)を参照)、(d)~(f)は、何れも、載置機構50&60の縦断右側面図である。それらのうち、(d)は、載置受部材50が案内機構60に押し込まれたときの状態を示し、(e)は、載置受部材50が案内機構60から半分ほど引き出された状態を示し、(f)は、載置受部材50が案内機構60から大きく引き出されたときの状態を示している。
【0037】
薬品類収納装置10は(
図1(a)~(d)参照)、背の丈に近い縦長の直方体状の筐体11を具備したものであり、その筐体11の上部にシャッター収納部13が内装され(
図1(b)参照)、筐体11の下部に図示しない電装部などが内装されているが、手を掛けやすい大部分には即ち筐体11の中間部には庫部14が割り当てられており(
図1(b)~(d)参照)、開閉シャッター12をシャッター収納部13から引き下ろすと庫部14の前面が閉じられるようになっている(
図1(a)参照)。庫部14の開閉状態検出用の開閉検出機構30も、後で詳述するが、シャッター収納部13のシャッター出入口の近傍で筐体11に内装されている(
図1(a),(b)では庫部14の直ぐ左上)。
【0038】
庫部14には、縦横に配置された多数の収納容器20が個々に前方へ引出可能な状態で保持されており、開閉シャッター12を開けると収納容器20の前端部が現れるようになっている(
図1(b)参照)。収納容器20は、前後に長い箱体からなり、上面が開放されていて、開放上面から医薬品や医療材料などの薬品類を人手で出し入れすることができるようになっている。庫部14の中段の少し下寄りの部位には、前方へ引出可能な載置受部材50も組み込まれている(
図1(b)~(d)参照)。載置受部材50は、上面が概ね平坦な横板状のものであり、やはり後ほど詳述するが、庫部14に押し込まれた状態と(
図1(b)参照)、庫部14から大きく引き出された状態と(
図1(c)参照)、それらの中間の状態とで(
図1(d)参照)、安定するようになっている。
【0039】
開閉シャッター12は(
図1(a)参照)、横に長い長方形の部材を蛇腹状に連ねた一般的なもので足り、露出している前端(
図1(a)では下端)に手を掛けてシャッター収納部13に向けて(
図1(a)では上へ)押せばガイドレールに案内されてシャッター収納部13に押し込まれて収納されるようになっている(
図1(b)参照)。また、(
図1(b)~(d)では庫部14の前面の直ぐ上に隠れている)前端に手を掛けて引っ張ればシャッター収納部13(シャッターケース)から引き出されて筐体11の前部の左右両端のガイドレールの案内に従って展開して筐体11の前面を覆うようになっている(
図1(a)参照)。なお、必須でないので図示は割愛したが、施錠も可能である。
【0040】
収納容器20は、公知品で良いので簡潔に述べると(例えば特許文献3参照)、大小いずれの物も(
図1(b)~(d)参照)、サイズ等の対応した引出枠25に収められていて(
図2(a)参照)、前方へ開駆動機構21にて押し出したり(
図2(b)参照)、更に前方へ人手で引き出したり、後方へ人手で押し戻したり、できるようになっている。引出枠25の前端のうち左方部分には(
図2参照)、例えばカラーのLEDを主体とした点灯部26が付設されていて、制御部40(
図4参照)の制御下で点灯や消灯を行うようにもなっている。引出枠25のうち収納容器20より後方の部位には、収納容器20の後押しを担う開駆動機構21が内装されている(
図2参照)。
【0041】
開駆動機構21も、やはり公知品で良いので簡潔に述べると(例えば特許文献3参照)、制御部40(
図4参照)の制御下で動作する電動モータ等を具備した図示しない駆動部と、リンク機構からなり上記の駆動部によって駆動されると配設先の収納容器20を後押して前進させる押出機構22と、この押出機構22と一緒に上記の駆動部によって駆動されると押出機構22の後押し動作に先立って駆動対象の収納容器20から外れて収納容器20の前方引出を許容するが収納容器20が後へ押し込まれたときには収納容器20に係わって収納容器20の前方引出を阻止するロック機構23とを具備している。
【0042】
開閉検出機構30は(
図3参照)、庫部14の前面が全解放されるところまで開閉シャッター12が筐体11に収納されているか否かを検出するためのものなので、シャッター収納部13における開閉シャッター12の出入口の近くであって開閉シャッター12の出入を阻害しない箇所に装備される。本例では(
図1(b)参照)、開閉検出機構30が、筐体11の左側板の直ぐ内方に当たる所に取り付けられて、シャッター収納部13の左側面の手前寄り且つ下寄りの部位を臨む所に位置しており、後で詳述するように開閉シャッター12の前端部(引出時先頭側の端部)がシャッター収納部13と庫部14との中間に位置しているときに開閉検出機構30の検出状態が切り替えられるようになっている。
【0043】
この開閉検出機構30は(
図3参照)、スイッチ本体31bに信号出力端子31aや操作部31cが組み込まれた一般的なメカニカルスイッチ31を利用したものであるが(
図3(b)参照)、メカニカルスイッチ31の操作部31cを開閉シャッター12にて直に操作すると操作部31c等が損傷しやすいので、開閉シャッター12の開閉状態を示す検出信号の切替を行うメカニカルスイッチ31が縦長の保持枠32の上端近傍に取り付けられるとともに、開閉シャッター12に対する接触・離脱を代行する応動部材34に加えて、応動部材34の揺動運動をメカニカルスイッチ31に伝達する伝動機構36~38も保持枠32に取り付けられている(
図3(c),(d)参照)。
【0044】
伝動機構36~38は、揺動部材36と緩衝部材37と板バネ38とを組み合わせたものであり、メカニカルスイッチ31寄りの上方には板バネ38が配置され、応動部付勢部材35寄りの下方には揺動部材36が配置されて、板バネ38とメカニカルスイッチ31の操作部31cとが当接・離脱にて伝動を行い、板バネ38と揺動部材36とが直に当接することで伝動を行い、揺動部材36と応動部材34とが緩衝部材37を介して伝動を行うようになっている。なお、板バネ38は伝動部付勢部材を兼ねている。また、それらのうち応動部付勢部材35と緩衝部材37にはコイルスプリングが採用されている。このような開閉検出機構30は、その主要部材であるメカニカルスイッチ31と伝動機構36~38と応動部材34とが上下方向に配設されていて、縦に細長いことから、側板の前端部の折り曲げ部位の内側に収まるので、筐体11の拡幅を要しないものとなっている。
【0045】
応動部材34は、シャッター収納部13から出入りする開閉シャッター12との接離に応じて揺動する縦長の板状部材からなり、下寄りの部位からは先端の丸い接離部34aが庫部14の方へ突き出ている。また、応動部材34は、中央より少し上部寄りの部位が支軸33によって支持されていて揺動可能になっているのに加え、下端部が応動部付勢部材35よって開閉シャッター12の方へ揺動する向きに付勢されている。すなわち、応動部材34の接離部34aが開閉シャッター12に対して当接する向きに、応動部付勢部材35が応動部付勢部材35に対する付勢を行うようになっている。
【0046】
そのため、開閉シャッター12がシャッター収納部13に収まっているときには(
図3(c)参照)、接離部34aが開閉シャッター12と干渉することなく開閉シャッター12の下方へ突き出ている。これに対し、開閉シャッター12がシャッター収納部13から引き出されて開閉シャッター12の先端が接離部34aの所まで下がると(
図3(d)参照)、接離部34aが開閉シャッター12の引出時先頭側端部12aに押されるので、応動部付勢部材35の付勢に抗って応動部材34が支軸33を中心に揺動するようになっている。
【0047】
また、開閉検出機構30は、上述のように応動部材34が揺動すると(
図3(c),(d)参照)、応動部材34に一端部37aが取り付けられている緩衝部材37が伸びるため、緩衝部材37の他端部37bが取り付けられている揺動部材36も支軸33を中心に揺動するが、応動部材34から揺動部材36への運動伝達が伸縮性の緩衝部材37を介してなされることから、開閉シャッター12の引出時先頭側端部12aと応動部材34の接離部34aとの当接が穏やかであればもちろんのこと例え急激なものであったとしても揺動部材36の揺動運動はかなり穏やかに行われるようになっている。そして、そのような緩衝部材37は、伝動状態を弾性的変形にて緩和するものとなっている。
【0048】
さらに、開閉検出機構30は、上述のように揺動部材36が揺動すると(
図3(c),(d)参照)、板バネ38は、その非固定端・自由端でもある下端部が揺動部材36の上端部によって押されてメカニカルスイッチ31の方へ移動し、それに伴い、保持枠32に当接していた板バネ38の中間部が、保持枠32から離れてメカニカルスイッチ31の操作部31cに近づき、更には操作部31cに達して、最終的には操作部31cをスイッチ本体31bに押し込んで、メカニカルスイッチ31を作動させるようになっている(
図3(d)参照)。
【0049】
なお、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、開閉シャッター12を庫部14の前面からシャッター収納部13へ押し戻したときには、開閉検出機構30が上述したのと逆順で動作するので、開閉検出機構30は庫部14の前面の開放状態も安定して的確に検出することができるものとなっている。その際、応動部材34は応動部付勢部材35によって付勢されるが、揺動部材36は主に板バネ38の反発力によって付勢されるので、板バネ38は、メカニカルスイッチ31の切替状態が開閉シャッター12の不検出側になる向きに伝動機構36~38を付勢する伝動部付勢部材を兼ねていると言える。
【0050】
さらに、薬品類収納装置10は、マイクロコンピュータを主体とした制御部40も筐体11の内底などに具備しており(
図4参照)、制御部40が開駆動機構21や点灯部26の動作制御に加えてメカニカルスイッチ31の開閉状態の検出信号の入力などを行うようになっている。
制御部40は、薬品類収納装置10とは別体である上位の群管理装置200とLAN(Local Area Network)等の交信手段で種々のデータを送受信することができるようになっており、それで受信した調剤指示データに基づいて多数の収納容器20のうち調剤対象の収納容器20a,20bだけを開駆動機構21に押し出させるようになっている。
【0051】
もっとも、制御部40による上述のような押し出し動作の実行制御は、開閉シャッター12が筐体11のシャッター収納部13に収納されていることを開閉検出機構30の検出に基づいて制御部40が確認することができたときに限られる。制御部40は、開閉シャッター12が筐体11のシャッター収納部13に収納されていることを開閉検出機構30の検出に基づいて確認することができないときには、開駆動機構21の押出機構22による収納容器20の押し出しに係る制御を実行しないことで押出機構22の収納容器20に対する駆動を抑止するようになっており、更に、上位装置200から受信した調剤指示に対応して、開閉シャッター12によって庫部14が閉じられているため調剤指示に従えない旨の返信を上位装置200へ送るようにもなっている。
【0052】
群管理装置200は、パネルディスプレイ等の表示器201を装備したコンピュータからなり、調剤指示に従えない旨の返信を薬品類収納装置10から受信すると、該当する薬品類収納装置10の開閉シャッター12を開けさせる旨の作業者向け指示を表示器201に表示するようになっている。また、この調剤システムには、外部の処方オーダリングシステム等から処方箋に基づく処方データを受け付けて収集する調剤サーバ100も設けられており、調剤サーバ100には管理下の群管理装置200や薬品類収納装置10を含む多数の調剤装置に係る機器の情報がデータ保持されるとともに、取り扱い対象となる多数の薬品に係る情報を纏めた薬品マスタなどもデータ保持されている。
【0053】
この調剤サーバ100も、パネルディスプレイ等の表示器101を装備しており、調剤指示に従えない旨の返信が群管理装置200から転送されて来ると、該当する薬品類収納装置10の開閉シャッター12を開けさせる旨の作業者向け指示を表示器101に表示するようになっている。なお、
図4に示した群管理装置200は一台だけであるが、一般に大規模なシステムでは、群管理装置200は複数台が設置され、薬品類収納装置10や図示しない薬剤分包機といった各種の調剤装置は多数台が設置される。小規模のシステムでは、調剤装置の設置台数が少なく、群管理装置200等が省かれることもある。
【0054】
薬品類収納装置10そのものの構成説明に戻ると、概説済みの載置受部材50は(
図1参照)、具体的には(
図5,
図6(a)参照)、庫部14の中段に組み込まれた載置機構50&60に属する可動部材であり、上面が平坦な略長方形状の横板体51と、その上面の後方部位に立設されて全幅近く左右へ伸びた細長い後方移動抑止部52と、横板体51の左右両側部の端後端寄り下端部位に装備された後輪54と、この後輪54よりは前方だが中央よりは後方の位置で横板体51の左右両側部に装備された前輪53とを具備している。なお、この前輪53は後輪54より少しだけ低い部位に設けられている。
【0055】
そのような載置受部材50のうち後方移動抑止部52は、横板体51の上面上を滑って後方へ移動する滑動物に当接して該滑動物の後方移動を抑止するためのものであるが、後方移動抑止部52の上端部が前方に曲げられて前向きになっているので(
図6(a)参照)、調剤指示箋といった薄い用紙類などが浮き上がりぎみに後方へ移動した場合でも、用紙類の後端が後方移動抑止部52の上端部の下に潜り込んで後方移動抑止部52の立ち上がり部位に衝突するとともに後方移動抑止部52の上端部によって上方移動を抑制されるので、薬品類ばかりか用紙類など薄いものでも高い確度で載置受部材50の上にとどめることができるようになっている。
【0056】
載置機構50&60のうち載置受部材50を前後移動可能に保持する案内機構60は(
図5,
図6(b),(c)参照)、断面がコの字状の真っ直ぐな長尺部材からなり、コの字の上側の横線に該当する長板状の上部案内部材61と、コの字の下側の横線に該当する長板状の下部案内部材62とが、平行な対向状態で前後に真っ直ぐ伸びている。下部案内部材62には、前端寄り部位に形成された転動抑制用切欠65と、その後方部位に形成された転動抑制用切欠64と、更にその後方だが後端部よりは前方の部位に形成された転動抑制用切欠63とが、下部案内部材62を貫通しているが、そのような切欠等は上部案内部材61には無い。転動抑制用切欠63~65は、載置受部材50の前輪53の最下部分が少しだけ嵌まる程度の小さなもので良く、貫通しない凹みなどでも良い。
【0057】
載置機構50&60は(
図5,
図6(d)~(f)参照)、載置受部材50と案内機構60とを組み合わせたものであり、筐体11の両側面の内側に対向配置で取り付けられた一対の案内機構60,60の間に載置受部材50を差し込んで組み上げたものである。
その差込に際して案内機構60の後輪54も前輪53も案内機構60の上部案内部材61と下部案内部材62との間に遊挿しながら載置受部材50を案内機構60に奥まで押し込むことで簡便に、載置機構50&60が組み上がるようになっている(
図5(a),
図6(d)参照)。
【0058】
そして、載置機構50&60は(
図5(a)~(c),
図6(d)~(f)参照)、前輪53が載置受部材50の重心より後方の部位に組み込まれているため、前輪53が案内機構60の下部案内部材62に乗って前後移動を下から案内されるとともに、後輪54が案内機構60の上部案内部材61に下から当接して前後移動を上から案内されるものとなる。また、上述のように載置受部材50の前輪53が転動抑制用切欠63~65に少し嵌まりうるため、案内機構60を軽く前後移動させると、前輪53が転動抑制用切欠63~65の所に来たときに、前輪53の円滑な転動が妨げられて、停止するが、載置受部材50を強く押し引きしたときや、押し引きの力が弱くても載置受部材50の前端を少し持ち上げながら押し引きしたときには、再び移動する。
このような載置機構50&60は、載置受部材50の前後移動が前方への引き出し位置と後方への押し戻し位置とそれらの中間位置とで抑制されるものとなっている。
【0059】
この実施例1の薬品類収納装置について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
薬品類収納装置10の全体的な使い方や動作は、公知のものと同様なので、それらの詳細な説明は割愛して、ここでは、開閉シャッター12と載置受部材50とに係る使い方や動作について詳述する。
【0060】
調剤作業の時間外や時間内であっても作業完了時などで薬品類収納装置10が調剤に使用されないことが判明しているときや、保安や運用などの観点から必要なときには、できるだけ薬品類収納装置10への動作電力の供給を止める前に、或いは給電を継続したまま、開閉シャッター12を手動でシャッター収納部13から引き出して庫部14の前面に降ろしておく(
図1(a)参照)。そうすると、薬品類収納装置10では、開閉シャッター12の先端部が開閉検出機構30から出て庫部14の上端に接近したところで早々に、開閉シャッター12と干渉した開閉検出機構30によって開閉シャッター12の引き出しが検出され(
図3(d)参照)、そのことが制御部40によって把握される。
【0061】
もっとも、庫部14の前面が開閉シャッター12によって閉じられかけたり閉じられたときに、薬品類収納装置10の制御部40が動作を停止している場合には、そもそも群管理装置200から薬品類収納装置10へのデータ送信が不能なため、調剤指示が薬品類収納装置10に届かないので、制御部40による開駆動機構21の駆動制御が行われない。そのため、収納容器20が自動で前進して開閉シャッター12に衝突するという不所望な事態は生じない。
また、群管理装置200や調剤サーバ100は薬品類収納装置10との通信不能状態の検出に基づいて薬品類収納装置10の動作停止状態を把握することができる。
【0062】
これに対し、薬品類収納装置10の制御部40が動作を継続しているときには、開閉シャッター12が全開させられない限り、制御部40が開駆動機構21に対する動作制御を抑制するので、収納容器20が前進して開閉シャッター12に衝突するという不所望な事態は発生しない。しかも、調剤指示データが群管理装置200から薬品類収納装置10へデータ送信されたときには、調剤指示に従えない旨の返信が薬品類収納装置10から群管理装置200へデータ送信されるとともに群管理装置200から調剤サーバ100へ転送もなされる。それから、薬品類収納装置10の庫部14が閉じていることが、上位装置200,100によって表示器201,101に表示される。
そのため、調剤作業者は、状況を速やかに把握することができる。
【0063】
薬品類収納装置10の制御部40が動作しているときに開閉シャッター12が開けられたり、開閉シャッター12が開いている状態で制御部40が動作したときなど、要するに薬品類収納装置10が正常に稼働していて開閉シャッター12が開いているときには(
図1(b)参照)、薬品類収納装置10が群管理装置200から調剤指示を受信すると、その調剤指示に応じて、薬品類収納装置10では、調剤対象の薬剤を収容している収納容器20a,20bが開駆動機構21に押されて収納容器20a,20bが前進し、収納容器20a,20bの前端部が庫部14から前方へ突き出て来る(
図1(c),(d),
図2(b)参照)。その収納容器20a,20bは、ロック機構23のロックが解除されているので、手動で更に引くと、その収納容器20bは庫部14から前方へ大きく突き出て容器内が奥まで見えるので、薬品類を楽に取り出すことができる。
【0064】
そうして取り出した薬品類や,それを収容する小箱などの容器類,さらには調剤指示箋などの紙類といった持ち運び物品を一時的に置きたいが、机や作業台など適当な置き場が近くに無いときには、筐体11に収納されている載置受部材50の前端に手をかけて(
図1(b)参照)、前端を少し持ち上げつつ前方へ引き出してから載置受部材50の前輪53が案内機構60の最前の転動抑制用切欠65に届いたところで載置受部材50から手を離すと、そこで載置受部材50が安定し(
図1(c),
図6(f)参照)、載置受部材50の広い上面を調剤作業中の一時的な置き場として利用することができる。載置受部材50の上面の後部には後方移動抑止部52が設けられているので、薬品類だけでなく調剤指示箋や筆記具などを載置しても、後方へ落下する心配が無く、安心して使用できる。
【0065】
もっとも、そのような載置受部材50の大幅な引き出し行為は、載置受部材50より下方に位置する収納容器20が薬剤取出対象に含まれている場合など、その下方の載置受部材50に対する調剤作業中の目視や取出などの行為が遣り辛くなることも多々あるので、載置受部材50の引き出し時に或いは引き出し過ぎと感じて押し戻すときに、載置受部材50の前輪53が案内機構60の中間位置の転動抑制用切欠64に届いたところで載置受部材50から手を離すと、そこでも載置受部材50が安定する(
図1(d),
図6(e)参照)。そのため、下方の収納容器20a,20bの目視が載置受部材50によって邪魔される程度が小さくて済むとともに、置き場として利用される載置受部材50の上面も狭くはなるがそれなりに確保されるので、両機構の効用を適度に享受することができる。
【0066】
[その他]
上記実施例では、薬品類収納装置10として床置式・固定式のものを図示したが、薬品類収納装置10は、キャスターの付いた手押カートや、レールに載った搬送式・移動式のものであっても良い。
上記実施例では、
図1に示した収納容器20のサイズが下方の二段のものとそれより上方のものとで異なっていたが、収納容器20は総てが同じサイズであっても良い。
【0067】
上記実施例では、案内機構60について、転動抑制用切欠63~65の個数が三個であったが、転動抑制用切欠の個数は三個に限られる訳でなく四個以上であっても良い。載置機構50&60も一組に限られる訳でなく複数装備されていても良い。
上記実施例では、転動抑制用切欠63~65が下部案内部材62に形成されていたが、転動抑制用切欠63~65は上部案内部材61に形成されていても良く、その場合、転動抑制用切欠63~65の形成位置は前輪53と後輪54との離隔距離に相当する分だけ後方にすると良い。
【0068】
上記実施例では、収納容器20毎に配設される点灯部26の設置箇所が収納容器20の左方になっていたが、点灯部26の設置箇所は、視認しやすければ、収納容器20の左方に限らず、右方や上下であっても良い。点灯部26の送光方向も、前向きに限らず、上向きや,横向き,さらには斜めであっても良い。点灯部26の個数や発色も、単一に限られる訳でなく、複数であっても良く、例えば色違いで調剤対象を切り分けるといったことで複数の調剤作業を同じ薬品類収納装置10で並行処理できるようにしても良い。
本発明の薬品類収納装置は、手動の開閉シャッターに対する収納容器の自動前進時の衝突を抑止することを主目的として開発されたものであるが、本発明は、収納容器の自動前進時に開閉シャッターとの衝突が発生しないタイプの装置についても、コストとの兼ね合いもあるが、無益ではない。例えば、自動前進した収納容器はロックが解除されるため、地震などの揺れで収納容器が更に前進して開閉シャッターに当接し、開閉シャッターを開けたときに収納容器が損傷する、といった事態も起こりうるところ、本発明の薬品類収納装置は、そのような不所望な事態をも回避することもできるので、有益である。