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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092783
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】人工乳房およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/52 20060101AFI20230627BHJP
   A44B 99/00 20100101ALI20230627BHJP
【FI】
A61F2/52
A44B99/00 611K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207996
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】516049445
【氏名又は名称】株式会社マエダモールド
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】前田 一美
(72)【発明者】
【氏名】末永 泰士
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA19
4C097BB02
4C097CC03
4C097CC06
4C097MM03
(57)【要約】
【課題】人工乳房の使い勝手を向上する。
【解決手段】人工乳房10は、例えば、本体部12と、本体部12の根元から延びる装着部14とを備えている。人工乳房10は、装着部14の裏面が両面テープ16を貼り付ける貼り付け部位になっている。人工乳房10は、装着部14の裏面に、表面粗さが調整された粗面18を有している。人工乳房10は、粗面18を含む装着部14の裏面に両面テープ16の一面を貼り付けて、両面テープ16の他面を胸に貼り付けて装着される。
【選択図】図4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面テープにより装着可能な人工乳房であって、
前記人工乳房における前記両面テープを貼り付ける貼付部位に、粗面を有している
ことを特徴とする人工乳房。
【請求項2】
前記粗面の表面粗さ(Sa)が、0.3μm以上である請求項1記載の人工乳房。
【請求項3】
前記粗面の表面粗さ(Sa)が、19μm以下である請求項1または2記載の人工乳房。
【請求項4】
乳房を象った本体部と、
前記本体部の根元から延びる装着部と、を有し、
前記装着部の裏面に、前記粗面が設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の人工乳房。
【請求項5】
前記両面テープが、リングの一部を切り欠いた平面形状で形成され、
前記両面テープが、前記リングの切り欠き端同士を近づけた状態で前記貼付部位に貼り付けられている請求項1~4の何れか一項に記載の人工乳房。
【請求項6】
樹脂で構成され、両面テープにより装着可能な人工乳房の製造方法であって、
前記樹脂を所定形状に成形する成形型の型面を転写して、前記人工乳房における前記両面テープを貼り付ける貼付部位に、粗面を形成する
ことを特徴とする人工乳房の製造方法。
【請求項7】
表面粗さ(Sa)が0.3μm以上の前記粗面を形成する請求項6記載の人工乳房の製造方法。
【請求項8】
表面粗さ(Sa)が19μm以下の前記粗面を形成する請求項6または7記載の人工乳房の製造方法。
【請求項9】
前記成形型が石膏型である請求項6~8の何れか一項に記載の人工乳房の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工乳房およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳がんなどによって乳房を切除した後に、胸の形を整える手段として、人工乳房が用いられている。人工乳房は、接着剤や粘着テープによって、肌に貼り付けて装着することが一般的である。接着剤よりも接着力が弱い粘着テープであると、人工乳房が剥がれてしまうおそれがあることから、接着剤によって人工乳房を装着することが一般的である。しかしながら、接着剤を用いて人工乳房を装着すると、人工乳房や肌に残った接着剤を除去する手間がかかり、使用者の負担が重い。
【0003】
そこで、特許文献1のように、乳頭部、皮膚面部および乳房内部の本体部分をシリコーン樹脂で構成し、皮膚接着部を医療用粘着シートで形成した人工乳房が提案されている。特許文献1の人工乳房では、粘着シートが本体部分から剥がれないようにするため、粘着シートを本体部分に糸で縫合して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-276306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着シートは、粘着力が低下していくことから取り替える必要がある。このため、特許文献1のように粘着シートを本体部分に縫合すると、使い勝手が非常に悪くなる。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、使い勝手のよい人工乳房およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る人工乳房は、
両面テープにより装着可能な人工乳房であって、
前記人工乳房における前記両面テープを貼り付ける貼付部位に、粗面を有していることを要旨とする。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る人工乳房の製造方法は、
樹脂で構成され、両面テープにより装着可能な人工乳房の製造方法であって、
前記樹脂を所定形状に成形する成形型の型面を転写して、前記人工乳房における前記両面テープを貼り付ける貼付部位に、粗面を形成することを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る人工乳房によれば、使い勝手がよい。
本発明に係る人工乳房の製造方法によれば、使い勝手がよい人工乳房を簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明の実施例に係る人工乳房を示す正面図であり、(b)は背面図である。なお、両面テープは貼り付けられていない。
図2】実施例の人工乳房を示す断面図である。
図3】実施例の人工乳房の背面図であって、両面テープを取り付けた状態を示す。
図4】実施例の人工乳房の装着状態を示す断面図である。
図5】実施例の製造工程を示す説明図である。
図6】(a)は実施例の両面テープを示す背面図であり、(b)は両面テープの貼り付け状態を説明する説明図である。
図7】実施例の人工乳房への両面テープの取り付けを示す説明図である。
図8】試験に用いる両面テープを示す平面図である。
図9】試験を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る人工乳房および人工乳房の製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、人工乳房において、人体に向く面を裏といい、その反対を表という。
【実施例0012】
(人工乳房)
図1および図2に示すように、実施例に係る人工乳房10は、乳房の膨らみを象った本体部12と、本体部12から延びる装着部14とを備えている。図4に示すように、人工乳房10は、両面テープ16によって、人体の胸Bに装着可能である。人工乳房10は、樹脂の成形品である。人工乳房10を構成する樹脂としては、シリコーンゴムやウレタンゴムなどの柔軟性を有する軟質なものを用いることが可能である。実施例の人工乳房10は、本体部12と装着部14とが、同じ材料で一体的に形成されている。
【0013】
図2および図4に示すように、実施例の本体部12は、内部が空洞12aになっており、軽量化が図られている。また、本体部12の裏面が、外周縁から中央部に向かうにつれて凹むように形成されている。
【0014】
図1および図2に示すように、装着部14は、本体部12における根元の外周縁から外方へ延出している。装着部14は、本体部12における根元の全周に亘って設けられている。装着部14は、薄い膜状に形成されている。そして、装着部14は、可撓性を有している。実施例の装着部14は、本体部12の空洞12aを囲う壁の肉厚よりも薄く形成されており、本体部12よりも柔軟である。
【0015】
図4に示すように、人工乳房10は、裏面に両面テープ16が貼り付けられる。実施例の人工乳房10では、装着部14の裏面全体が、両面テープ16の貼り付け部位になっている。実施例の装着部14は、本体部12の上側部分が下側部分よりも本体部12からの延出寸法が大きく設定されている(図1参照)。実施例の装着部14は、本体部12の脇側部分が内側部分よりも本体部12からの延出寸法が大きく設定されている(図1参照)。すなわち、実施例の人工乳房10は、本体部12の上側および脇側に両面テープ16の貼り付け部位を広くとることができる。
【0016】
図2および図3に示すように、人工乳房10は、両面テープ16の貼り付け部位に、粗面18を有している。粗面18は、両面テープ16の貼り付けに適するように、表面粗さが調整されている。実施例では、装着部14の裏面全体(貼り付け部位全体)が、粗面18である。
【0017】
粗面18の表面粗さ(算術平均高さSa)が、0.3μm以上であると好ましく、0.6μm以上であるとより好ましく、3.6μm以上であると更に好ましい。粗面18の表面粗さ(算術平均高さSa)の下限が前記範囲であると、両面テープ16で人工乳房10を人体の胸Bに適切に装着できる。粗面18の表面粗さ(算術平均高さSa)が、19μm以下であると好ましく、10μm以下であるとより好ましく、7.6μm以下であると更に好ましい。粗面18の表面粗さ(算術平均高さSa)の上限が前記範囲であると、両面テープ16で人工乳房10を胸Bに適切に装着できる。
【0018】
人工乳房10は、コーティングや着色などの表面処理が施されていてもよい。実施例の人工乳房10は、本体部12の裏面がコーティングされている。コーティングとしては、例えばシリコーン系やウレタン系のコーティングを用いることができる。このとき、人工乳房10がシリコーンであれば、シリコーン系のコーティングを用いるように、人工乳房10を構成する樹脂と同じ系統のコーティングであることが好ましい。また、人工乳房10は、本体部12および装着部14の表面が着色されている。実施例の人工乳房10は、コーティングされた本体部12の裏面よりも、粗面18の表面粗さSaが粗くなっている。また、実施例の人工乳房10は、着色された表面よりも、粗面18の表面粗さSaが粗くなっている。
【0019】
(人工乳房の製造方法)
次に、実施例に係る人工乳房10の製造方法について説明する。図5に示すように、人工乳房10は、成形型20で成形して得られる。具体的には、成形型20における第1型22の型面に樹脂を塗布し、成形型20における第2型24の型面に樹脂と塗布し、第1型22および第2型24を閉じることで、第1型22に塗布した樹脂と第2型24に塗布した樹脂とを接合する。これにより、空洞12aを有する本体部12と本体部12から延びる装着部14を備えた人工乳房10が得られる。成形型20から取り出した人工乳房10に、コーティングや着色などの処理を行う。このとき、両面テープ16の貼り付け部位における粗面18としたい部分(実施例では装着部の裏面)に、コーティングや着色等の表面状態を変える処理を行わない。これにより、人工乳房10における両面テープ16の貼り付け部位に、第1型22の型面を転写して形成された粗面18を設けている。成形型20としては、石膏型であることが好ましい。石膏型の型面は、微細な細孔が存在しているので、この細孔による凹凸を転写して、粗面18を簡単に形成できる。
【0020】
粗面18を形成する型面の表面粗さ(算術平均高さSa)が、0.3μm以上であると好ましく、0.6μm以上であるとより好ましく、3.6μm以上であると更に好ましい。粗面18を形成する型面の表面粗さ(算術平均高さSa)の下限が前記範囲であると、型面の転写により前述した適当な表面粗さSaの粗面18を形成できることから、両面テープ16で人工乳房10を胸Bに適切に装着できる。粗面18を形成する型面の表面粗さ(算術平均高さSa)が、19μm以下であると好ましく、10μm以下であるとより好ましく、7.6μm以下であると更に好ましい。粗面18を形成する型面の表面粗さ(算術平均高さSa)の上限が前記範囲であると、型面の転写により前述した適当な表面粗さSaの粗面18を形成できることから、両面テープ16で人工乳房10を胸Bに適切に装着できる。
【0021】
(人工乳房の装着)
前述した人工乳房10は、両面テープ16で胸に取り付けることができる。このとき、図7に示すように、補助具30を用いて、両面テープ16を人工乳房10に貼り付けることが好ましい。補助具30は、人工乳房10の本体部12を収容可能な収容部32と、人工乳房10の装着部14を支持する支持部34とを備えている。収容部32は、上方へ開口する凹状に形成されている。支持部34は、収容部32の上縁から外方へ張り出している。支持部34は、外から内に向かうにつれて下方傾斜する形状を基本として、使用者の胸Bの形状に合わせた三次元的な形状で形成されている。
【0022】
図6(a)に示すように、両面テープ16は、リングの一部を切り欠いた平面形状で形成されたものを用意することが好ましい。前記平面形状の両面テープ16は、切り欠き端16a,16a同士を近づけると、両面テープ16の内周縁が外周縁からずれるように出っ張り、両面テープ16が外から内へ向かうにつれて傾斜する形状に変形する(図6(b)参照)。実施例の両面テープ16は、前記リングが装着部14の周長よりも一回り大きく設定されて、切り欠き部分の切り欠き端16aを突き合わせた際に、装着部14の周長に合致するようになっている。このように、実施例の人工乳房10は、装着部14の周方向全周に亘って両面テープ16が貼り付けられる。
【0023】
両面テープ16は、例えば、人工乳房10側および人体側の両面をアクリル系粘着剤で構成されたものや、人工乳房10側を合成ゴム系粘着剤で構成すると共に人体側をアクリル系粘着剤で構成したものなどを使用できる。人工乳房10は、粗面18を有しているので、両面テープ16として、特別なものでなく、医療用の汎用品を使用できる。
【0024】
実施例の人工乳房10の装着について、図7を参照して説明する。本体部12を収容部32に入れて、装着部14を支持部34に載置して、人工乳房10を補助具30にセットする(図7(a)および(b)参照)。これにより、装着部14が、支持部34に支持されて、使用者の胸Bに合わせて、内側から外側へ向けて上方傾斜する形になる。次に、両面テープ16における一面の保護紙を剥がし、上側に向く裏面(粗面18)に両面テープ16を貼り付ける(図7(c)参照)。このとき、両面テープ16の切り欠き端16a,16a同士を近づけることで、両面テープ16の内周縁が下方へ出っ張るように変形し、両面テープ16自体も内側から外側へ向けて上方傾斜する形になる。これにより、両面テープ16を装着部14に貼り付けるときにシワが形成され難くなる。そして、両面テープ16における他面の保護紙を剥がして、人工乳房10を両面テープ16で胸に貼り付ける。人工乳房10は、装着部14が両面テープ16の貼り付けにより胸Bに合わせた形状になるので、胸Bに貼り付けた際に装着部14にシワが形成され難い。
【0025】
前述した人工乳房10は、両面テープ16の貼り付け部位に粗面18を有しているので、両面テープ16から剥がれ難くすることができる。両面テープ16は、接着剤と比べて人工乳房10への貼り付けや人工乳房10からの除去が簡単であることから、人工乳房10を両面テープ16で装着可能であると、人工乳房10の使い勝手を各段に向上できる。また、人工乳房10自体に粘着面を設ける場合と異なり、両面テープ16の張り替えによって常に適切な粘着力を保つことができるので、使い勝手がよい。しかも、接着剤と比べて人体への残留を抑えることができる。このように、前述した人工乳房10によれば、シャワーや入浴などの水濡れ場面での使用のハードルが低くなる。そして、人工乳房10は、粗面18の表面粗さを調節することで、シャワーや入浴などの水濡れや負荷が加わる場面でも、両面テープ16から剥がれ難くなり、使用場面の制約を小さくすることができる。
【0026】
前述した人工乳房10の製造方法によれば、成形型20の型面を転写して、粗面18を形成するので、粗面18を有する人工乳房10を簡単に得ることができる。しかも、成形型20として石膏型を用いることで、石膏型が有する細孔によって粗面18を簡単に形成できる。
【0027】
モデルケースとして、人工乳房は、例えば、Aカップ、Bカップ、Cカップ、Dカップおよび最大サイズの人工乳房を設定した。各サイズの重さ(g)や体積(cm)は、表1に示す通りである。また、各サイズの人工乳房は、表1に示す大きさの両面テープ(引っ張り試験と同じもの)により装着するものとする。そして、人工乳房に対して加わる力(N)を重さから算出し、単位装着面積当たりに加わる力である通常負荷(N/cm)を算出する。同様に、人工乳房に対して入浴時に加わる浮力(N)を体積から算出し、単位装着面積当たりに加わる力である入浴負荷(N/cm)を算出する。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
(試験)
人工乳房の貼り付け部位を模した様々な表面粗さの試験片40を作成し、引っ張り試験を行った(図9参照)。引っ張り試験の条件は以下の通りである。
試験片40は、シリコーンにより、縦50mm×横50mm×厚み1mmの平板形状に形成し、一面に表2に示す表面粗さ(Sa)の試験面42を形成してある。
両面テープ16は、アクリル系粘着剤で粘着面が形成されたもの(ニチバンメディカル(株)製 品番80825)であり、図8に示す大きさの短冊形状にしている。
図9に示すように、引っ張り試験は、試験面42を上に向けた試験片40を台座44に固定し、試験面42に対して20mm×40mmの範囲で両面テープ16における長手方向の一端部を貼り合わせて、両面テープ16における長手方向の他端部を垂直に引っ張る。試験片40から両面テープ16が剥がれるまでに要する力を測定し、これを接合力(N)とした(表2および表3参照)。引っ張り試験は、各試験片40について3回ずつ接合力を測定し、3回の測定値の中から最も小さい接合力を採用して、試験単位面積当たり接合力(N/cm)を求めた(表2および表3参照)。
【0030】
各試験片40は、以下のように作成されている。
・比較例1:コーティングに用いるシリコーンで試験片40を形成している。なお、比較例1の試験片40は、両面テープ16の貼り付け部位がコーティング処理された従来品の表面状態と同じである。
・比較例2:アクリル板の上にシリコーンを流して試験片40を形成している。試験片40におけるアクリル板の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例1:コーティングに用いるシリコーンで試験片40を形成している。ショットブラストにより荒らした面の表面粗さを測定している。
・実施例2:アクリル板の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例3:定盤の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例4および5:アクリル板の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例6および7:定盤の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例8および9:サンドペーパー#1500の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例10および11:サンドペーパー#1500の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例12:サンドペーパー#1200の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例13:サンドペーパー#1200の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例14:サンドペーパー#1000の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例15:サンドペーパー#1000の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例16:サンドペーパー#800の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例17:サンドペーパー#800の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例18:サンドペーパー#600の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例19:サンドペーパー#600の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例20:サンドペーパー#400の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例21:アクリル板の上に青石膏を流して石膏型を形成し、この石膏型の型面をショットブラストにより荒らした。石膏型の荒らした型面を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例22:サンドペーパー#400の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例23:サンドペーパー#400の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例24:定盤の上に青石膏を流して仮型を形成し、この仮型の型面をショットブラストにより荒らした。仮型の荒らした型面に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例25:定盤の上に青石膏を流して石膏型を形成し、この石膏型の型面をショットブラストにより荒らした。石膏型の荒らした型面を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例26:アクリル板の上に青石膏を流して仮型を形成し、この仮型の型面をショットブラストにより荒らした。仮型の荒らした型面に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定している。
・実施例27:サンドペーパー#100の上に青石膏を流して仮型を形成し、仮型に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
・実施例28:サンドペーパー#100の上に青石膏を流して形成した石膏型を用いて試験片40を形成している。試験片40における石膏型の転写面の表面粗さを測定し、転写面で引っ張り試験を行っている。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
判定は、試験単位面積当たり接合力が、入浴負荷以上であるときに「◎」とし、試験単位面積当たり接合力が、入浴負荷よりも低いが通常負荷以上であるときに「○」とする。試験単位面積当たり接合力が、通常負荷よりも低いときは「×」とする。判定結果を表2および表3に示す。
【0034】
サンドペーパーは、番手の数字が小さくなるほど砥粒が粗くなることから、実施例13が、実施例10および11よりも表面粗さが粗くなり、実施例14が実施例13よりも表面粗さが粗くなる関係にある。また、実施例16が実施例14よりも表面粗さが粗くなり、実施例18が実施例16よりも表面粗さが粗いものの、実施例22よりも表面粗さが滑らかである関係にある。
【0035】
表2および表3に示すように、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが低く(表面が滑らかに)なると、人工乳房と両面テープとが剥がれ易くなる傾向がある。両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが高く(表面が粗く)なると、人工乳房と両面テープとが剥がれ難くなる傾向がある。
【0036】
比較例1のように人工乳房におけるコーティング処理された部位に両面テープを貼り付けると、両面テープが人体から剥がれるのではなく、人工乳房が両面テープから剥がれることが判っている。このことから、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが0.1μmよりも低いと、人工乳房と両面テープとの接合面積を大きく確保する必要があり、使い勝手が悪くなる。石膏型の型面を転写した貼り付け面であると、表1の条件(Aカップ)の人工乳房を胸に装着して、人工乳房を40℃の湯につけるように実際に入浴を行った場合、人工乳房が外れないことが判っている。すなわち、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが0.1μm以上である実施例1や実施例2であると、装着部の裏面に両面テープを貼り付けるような比較的小さい接合面積で、人工乳房を適切に取り付けることができる。特に、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが0.3μm以上であると、人工乳房をより適切に装着できる。
【0037】
実施例3が示すように、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが0.6μm以上となると、比較的重い最大サイズの人工乳房も装着可能となり、シャワーによる水濡れ程度が許容される。実施例12および13は、サンドペーパー#1500を用いた実施例10および11よりも粗いサンドペーパー#1200を用いていることから、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが3.568μmより大きいと考えられる。このことから、実施例12が示すように、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが3.6μm以上となると、比較的重い最大サイズの人工乳房であっても、湯船につかる入浴が許容されることが判る。
【0038】
実施例27および28は、表面粗さSaが大きく接合力が強いことにより、試験片40が台座44から剥がれて、測定不能になっている。このことから、表面粗さSaが大きくなって接合力が強くなり過ぎると、使用後に両面テープを人工乳房から取り外し難くなり、使い勝手が悪化することが判る。このことから、両面テープの貼り付け部位の表面粗さSaが、19μm以下であると好ましく、10μm以下(実施例22)であるとより好ましく、7.6μm以下(実施例20)であると更に好ましいことが判る。
【0039】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例および以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)実施例では、人工乳房の本体部の根元にひだ状の装着部を形成したが、装着部を省略してもよい。この場合、本体部に粗面を設ければよい。
(2)両面テープの貼り付け部位を装着部だけに設定することに限らず、装着部の裏面から本体部の裏面にかけて設定しても、本体部の裏面だけに設定しても、何れであってもよい。
(3)実施例では、型面の粗さを転写して粗面を形成したが、人工乳房を成形した後に、ショットブラスト等によって、粗面の粗さを調整する処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 人工乳房,12 本体部,14 装着部,16 両面テープ,18 粗面,
20 成形型
図1
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