(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092786
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20230627BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208001
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 直也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC15
3D131BC18
3D131BC20
3D131BC44
3D131CA03
3D131CB06
3D131EA08U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB20V
3D131EB20X
3D131EB22W
3D131EB23W
3D131EB24V
3D131EB24W
3D131EB24X
3D131EB46X
3D131EB82V
3D131EB82W
3D131EB82X
3D131EB86W
3D131EB91W
3D131EB94W
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
3D131EC07V
3D131EC07W
(57)【要約】
【課題】コーナーリングフォースの最大値の低下とタイヤノイズの低減との両立を図れる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の一例であるタイヤ1は、タイヤ幅方向中央を含むセンター陸部40と、センター陸部40のタイヤ幅方向両側に第1周方向主溝20を介して設けられたメディエイト陸部44と、各メディエイト陸部44のタイヤ幅方向外側に、第2周方向主溝21を介して設けられたショルダー陸部50とを有するトレッド10を含む。メディエイト陸部44には、各周方向主溝20,21の幅より小さく、タイヤ周方向に延びる周方向副溝46が形成される。メディエイト陸部44において、第1周方向主溝20及び第2周方向主溝21の少なくとも一方を形成する壁面の開口端には、テーパ形状の面取り47が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向中央を含むセンター陸部と、前記センター陸部の前記タイヤ幅方向両側に第1周方向主溝を介して設けられたメディエイト陸部と、2つの前記メディエイト陸部のそれぞれの前記タイヤ幅方向外側に、第2周方向主溝を介して設けられたショルダー陸部とを含むトレッドを備え、
前記メディエイト陸部には、前記第1周方向主溝及び前記第2周方向主溝の幅より小さく、タイヤ周方向に延びる周方向副溝が形成され、
前記メディエイト陸部において、前記第1周方向主溝及び前記第2周方向主溝の少なくとも一方を形成する壁面の開口端には、テーパ形状の面取りが形成されている、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記周方向副溝のタイヤ径方向の深さは、前記第1周方向主溝及び前記第2周方向主溝の前記タイヤ径方向の深さより小さい、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記面取りのタイヤ径方向の深さは、前記周方向副溝の前記タイヤ径方向の深さより小さい、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター陸部、2つの前記メディエイト陸部、及び2つの前記ショルダー陸部のそれぞれは前記タイヤ周方向の全周に連続するリブ状である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、複数の陸部を含むトレッドを備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミドル陸部(メディエイト陸部)のタイヤ幅方向の長さ(幅)をセンター陸部の幅より大きくして、走行時のスリップアングルの上限を増大することにより、コーナーリングパワーを大きくする空気入りタイヤが記載されている(特許文献1参照)。特許文献1には、ミドル陸部に、他の周方向溝より幅が小さく周方向に延びるミドル細溝を形成することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤにおいて、ミドル陸部に対しタイヤ幅方向に隣り合う周方向主溝のタイヤ幅方向長さ(幅)を大きくすることにより、ミドル陸部のタイヤ幅方向長さを小さくして、コーナーリングフォースの最大値であるCFmaxの低下を図ることが考えられる。CFmaxの低下により、スリップアングルが増大する車両の旋回状態で、グリップ力の増大を抑制できるので、例えばミニバンや、ワンボックスタイプの乗用車、バスのような箱型車両等の車両高さが大きい車両に使用しても、旋回時の外側への車両のロールを抑制できる。しかしながら、単純に周方向主溝の幅を大きくすると、周方向主溝の容積が大きくなるので、タイヤノイズである気中管共鳴音が増大する。このため、CFmaxの低下とタイヤノイズの低減との両立を図ることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、コーナーリングフォースの最大値の低下とタイヤノイズの低減との両立を図れる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ幅方向中央を含むセンター陸部と、センター陸部のタイヤ幅方向両側に第1周方向主溝を介して設けられたメディエイト陸部と、2つのメディエイト陸部のそれぞれのタイヤ幅方向外側に、第2周方向主溝を介して設けられたショルダー陸部とを含むトレッドを備え、メディエイト陸部には、第1周方向主溝及び第2周方向主溝の幅より小さく、タイヤ周方向に延びる周方向副溝が形成され、メディエイト陸部において、第1周方向主溝及び第2周方向主溝の少なくとも一方を形成する壁面の開口端には、テーパ形状の面取りが形成されている、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、タイヤの接地面積を減らしながら、第1周方向主溝及び第2周方向主溝の少なくとも一方である、メディエイト陸部と隣り合う他の陸部との間の周方向主溝の容積を小さくできる。このため、コーナーリングフォースの最大値の低下と、タイヤノイズである気中管共鳴音の低減との両立を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの断面図である。
【
図2】
図1に示すトレッドの周方向一部の平面図である。
【
図5】
図2において、車両の旋回時における接地部を示すイメージ図である。
【
図6】コーナーリングフォース(CF)とスリップアングル(SA)との関係を、タイヤ上方から見て示す図である。
【
図7】コーナーリングフォース(CF)とスリップアングル(SA)との関係の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。
【0010】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の断面図である。
図2は、
図1に示すトレッド10の周方向一部の平面図である。
図3は、
図1のA部拡大図であり、
図4は、
図3のB部拡大図である。
図1、
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10を備える。以下、「空気入りタイヤ1」は、「タイヤ1」と記載する。トレッド10は、複数の陸部を含むトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。
【0011】
以下、タイヤ1の構成として、タイヤ幅方向中央CLを中心として車両への取付状態で車両内側(IN側)となる部分を中心に説明する。タイヤ1の外形の形状は、タイヤ幅方向中央CLを中心として車両内側の部分と車両外側(OUT側)の部分とで、後述のラグ溝及びサイプを除いて対称としている。
【0012】
トレッド10は、例えば4本の周方向主溝20,21により区画される陸部40,44,50を備える。陸部40,44,50は、トレッド10の基準面からタイヤ径方向外側に向かって突出した突出部である。「基準面」とは、最も深い周方向主溝20,21の底面に沿った仮想面であって、陸部が存在しない場合のトレッド10の外周面を意味する。トレッド10には、4本の周方向主溝20,21によって、上記陸部として、タイヤ幅方向中央CLを含むセンター陸部40と、センター陸部40のタイヤ幅方向両側に、第1周方向主溝20を介して設けられたメディエイト陸部44と、2つのメディエイト陸部44のそれぞれのタイヤ幅方向外側に、第2周方向主溝21を介して設けられたショルダー陸部50とを有する。
【0013】
センター陸部40、2つのメディエイト陸部44、及び2つのショルダー陸部50のそれぞれはタイヤ周方向の全周に連続するリブ状である、
【0014】
タイヤ1は、トレッド10よりタイヤ幅方向外側に設けられ、最もタイヤ幅方向外側に膨らんだサイドウォール12と、ホイールのリムに固定されるビード(図示せず)とを備える。サイドウォール12とビードは、タイヤ周方向に沿って環状に形成され、タイヤ側面13を構成している。サイドウォール12は、トレッド10の幅方向両端からタイヤ径方向内側に延びている。
【0015】
タイヤ1は、所定圧の空気が充填される空気入りタイヤである。トレッド10とサイドウォール12は、例えば、異なる種類のゴムで構成されている。
【0016】
トレッド10の幅方向両端に配置されるショルダー陸部50では、接地面のタイヤ幅方向外側の端である接地端T(
図2)を含んでいる。各ショルダー陸部50のタイヤ幅方向端部は、接地端Tよりタイヤ幅方向外側にはみ出して、外周面が外側に向かって凸となるようにタイヤ径方向内側に緩やかに湾曲している。各ショルダー陸部50の接地端Tよりタイヤ幅方向外側にはみ出した部分は、バットレスと呼ばれる。
【0017】
「接地端T」とは、未使用のタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規内圧における正規荷重の70%の負荷を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ幅方向両端を意味する。
【0018】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0019】
タイヤ1は、図示を省略するが、カーカス、ベルト、及びインナーライナーを備える。カーカスは、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ1の骨格を形成する。ベルトは、トレッド10を構成するゴムとカーカスの間に配置される補強帯である。ベルトは、カーカスを強く締めつけてタイヤ1の剛性を高める。インナーライナーは、カーカスの内周面に設けられたゴム層であって、タイヤ1の空気圧を保持する。また、ビードは、ビードコアとビードフィラーを有する。
【0020】
各ショルダー陸部50のタイヤ周方向複数位置には、複数のラグ溝60が略タイヤ幅方向に延びるように形成される。各ラグ溝60のタイヤ幅方向内端は、ショルダー陸部50内で終端し、ショルダー陸部50の壁面には開口しない。このようなラグ溝60の形成によって、タイヤ幅方向外側への排水性の向上を図れる。
【0021】
各陸部40,44,50の接地面には、略タイヤ幅方向、またはタイヤ幅方向に対し傾斜した方向に延びる複数の細線状のサイプ91,80,81が形成される。
図2では、各サイプ91,80,81の位置を一点鎖線で模式的に示している。各サイプ91,80,81は、各周方向主溝20,21、後述の周方向副溝46及びラグ溝60より幅が細い細線状の溝であって、雪や氷をひっかくエッジ効果を高め、雪氷路面での良好な制駆動性、操縦安定性を実現する効果を有する。
【0022】
図2に示す場合には、各ショルダー陸部50に形成されたサイプ80,81が、タイヤ幅方向外側に設けられ略タイヤ幅方向に延びる第1直線部82,84と、第1直線部82,84のタイヤ幅方向内端に連結され、タイヤ幅方向に対し傾斜した方向に延びる第2直線部83,85とを有する。第2直線部83,85の一端は、第2周方向主溝21に開口する。各メディエイト陸部44及びセンター陸部40には、タイヤ幅方向一方側に向かってほぼタイヤ周方向の同じ側に傾斜した方向に延びる略直線状のサイプ91が形成される。
【0023】
さらに、各メディエイト陸部44には、各第1周方向主溝20及び各第2周方向主溝21の幅より小さく、タイヤ周方向に延びる周方向副溝46が形成される。周方向副溝46は、例えば、各メディエイト陸部44の接地面において、タイヤ幅方向の略中央にタイヤ径方向に窪むように形成される。各周方向副溝46のタイヤ幅方向中央でのタイヤ径方向の深さd1(
図3)は、各第1周方向主溝20及び各第2周方向主溝21のタイヤ幅方向中央でのタイヤ径方向の深さd2、d3(
図3)より小さい。このようにメディエイト陸部44に周方向副溝46が形成されることにより、メディエイト陸部44の接地面積を、周方向副溝46の分、小さくできる。これにより、後述のように、コーナーリングフォースCFの最大値CFmaxを低下させることができる。
【0024】
さらに、各メディエイト陸部44において、第1周方向主溝20及び第2周方向主溝21の少なくとも一方を形成する壁面45のタイヤ径方向外側の開口端には、テーパ形状の面取り47が形成されている。面取り47は、各メディエイト陸部44の壁面45の外側にタイヤ周方向全長にわたって形成される。面取り47のタイヤ径方向に対し傾斜する角度は、面取り47を形成した壁面45の面取り47より溝底側の部分のタイヤ径方向に対し傾斜する角度より大きい。面取り47のタイヤ径方向の深さd4(
図4)は、各周方向副溝46のタイヤ径方向の深さd1より小さい。これにより、後述のように、周方向副溝46の形成による効果と相まって、CFmaxの低下とタイヤノイズの低減との両立を図れる。
【0025】
図3では、各周方向主溝20,21の面取り47を除く壁面も、タイヤ径方向に対し傾斜しているが、各周方向主溝20,21の少なくとも一方の面取りを除く壁面は、タイヤ径方向に沿った形状としてもよい。
【0026】
図2、
図3では、各メディエイト陸部44において、第2周方向主溝21を形成する壁面45の外側に面取り47が形成されているが、第2周方向主溝21を形成する壁面の代わりに、または第2周方向主溝21を形成する壁面と共に、各メディエイト陸部44において、第1周方向主溝20を形成する壁面の開口端にテーパ形状の面取りが形成されてもよい。
【0027】
上記のタイヤ1によれば、メディエイト陸部44に周方向副溝46が形成され、メディエイト陸部44において、第1周方向主溝20及び第2周方向主溝21の少なくとも一方を形成する壁面の開口端に、テーパ形状の面取り47が形成される。これにより、タイヤ1の接地面積を減らしながら、第1周方向主溝20及び第2周方向主溝21の少なくとも一方である、メディエイト陸部44と隣り合う他の陸部との間の周方向主溝、例えば、第2周方向主溝21の容積を小さくできる。
【0028】
例えば、
図3に二点鎖線αで示すように、メディエイト陸部44の第2周方向主溝21側端に面取りを形成せず、面取りのタイヤ径方向外側端と一致する位置で開口するように、メディエイト陸部44を形成する第2周方向主溝21の壁面48をタイヤ幅方向中央側(
図3の右側)に移動させることが考えられる。この場合には、第2周方向主溝21のタイヤ幅方向両側の壁面49,48同士の間隔が大きくなる。この場合にも、実施形態でメディエイト陸部44の第2周方向主溝21側に面取り47を形成した場合と同様に、メディエイト陸部44の接地面積を小さくできる。これにより、CFmaxの低下できる可能性はある。しかしながら、この場合には、第2周方向主溝21の壁面49,48同士の間隔が大きくなるので、第2周方向主溝21の容積が大きくなってしまう。これにより、タイヤノイズである気中管共鳴音が増大する。
【0029】
実施形態では、メディエイト陸部44の第2周方向主溝21側にテーパ形状の面取り47が形成されるので、第2周方向主溝21のタイヤ幅方向両側の壁面49,45同士の間隔を大きくすることなく、メディエイト陸部44の接地面積を小さくして、CFmaxを低下できる。すなわち、第2周方向主溝21の容積を大きくすることなく、CFmaxを低下できるので、CFmaxの低下とタイヤノイズの低減との両立を図れる。また、面取り47がテーパ形状であるので、面取り47を断面円弧形の曲面状とする場合に比べて、タイヤ1の接地圧が大きくなる場合に、面取り部の潰れによってメディエイト陸部44の接地部が大きく広がることを抑制できる。これにより、タイヤ1の接地圧に関わらず、CFmaxを低下できる。このため、実施形態のタイヤを、ミニバン、箱型車両等の車両高さが大きい車両に使用する場合でも、グリップ力が過度に高くなることを防止できるので、旋回時の外側への車両のロールを抑制できる。一般的に、車両の縦横比、すなわち車幅(カタログ値)Wに対する車高(カタログ値)Hの割合(H/W)が1以上である車両では、縦横比が1未満の車両に比べて旋回時に車両が旋回外側にロールしやすい。このため、実施形態のように、メディエイト陸部に周方向副溝が形成される構成によって、CFmax低減により車両のロールを抑制できる効果は、縦横比が1以上の場合に顕著になる。
【0030】
図3で、メディエイト陸部44において、第2周方向主溝21を形成する壁面の代わりに、第1周方向主溝20を形成する壁面の外側に面取りを形成した場合も、第2周方向主溝21を形成する壁面の外側に面取り47を形成した場合と同様に、CFmaxの低下とタイヤノイズの低減との両立を図れる。
【0031】
さらに、メディエイト陸部44において、第2周方向主溝21を形成する壁面と共に、第1周方向主溝20を形成する壁面にも面取りを形成した場合には、第1、第2周方向主溝21の両方の容積を小さくできるので、CFmaxの低下とタイヤノイズの低減とを、より高いレベルで両立できる。
【0032】
タイヤ1が例えばタイヤ断面幅が225mmであり、タイヤ断面幅に対するタイヤ断面高さの割合が60%であり、ホイールのリム外径が18inchである場合に、周方向副溝46のタイヤ幅方向における寸法(幅)は、1~3mmが好ましく、約1.5mmがより好ましい。周方向副溝46の幅が1mm未満では、メディエイト陸部44の接地面積の低減によるCFmax低下の効果が小さくなる。一方、周方向副溝46の幅が3mmを超えると、タイヤノイズの低減効果が小さくなる。
【0033】
上記のタイヤ条件において、周方向副溝46のタイヤ径方向における深さd1は、約3mmが好ましい。上記のタイヤ条件において、面取り47のタイヤ幅方向における寸法は約1mmが好ましく、タイヤ径方向における深さは約1mmが好ましい。
【0034】
実施形態によりCFmaxを低減できたことによる効果を説明する。
図5は、
図2において、車両の旋回時における接地部86~90の1例を示すイメージ図である。
図5では、タイヤ1のスリップアングル(SA)が約8~10度となっている。
【0035】
ここで、SAとは、
図6に示すように、車両のハンドルを操作した場合に、車両の進行方向と一致するタイヤ進行方向(矢印P)と、タイヤ幅方向中央を通るタイヤ前後方向(一点鎖線Q)とのなす角度である。このとき、タイヤ1を上から見て、タイヤ1の接地点中央CからニューマチックトレールdN分、後方に移動した位置に、コーナーリングフォース(CF)の作用点がある。タイヤ1には、CFと直交する後方向に、ドラッグフォース(DF)が作用する。CFとDFとの合力Fは、横力であるサイドフォースSFと、タイヤ1と地面との間での転がり抵抗Rとの直交する2成分に分離できる。車両は、CFと近似する横力が遠心力と釣り合うことで旋回できる。
【0036】
図7は、CFとSAとの関係の1例を示している。
図7に示すように、CFは、SAの増大によって上昇し、通常、
図5に示したようにSAが8~10度付近で、CFは最大値のCFmaxとなる。
【0037】
実施形態では、上記のように周方向副溝46が形成されることにより、メディエイト陸部44の接地面積が減少するので、接地面での平均接地圧が上昇する。一方、CFmaxは、タイヤ1と地面との間で作用する横方向の摩擦係数をμとし、タイヤ1の接地部に作用する垂直荷重をNとして、次式により算出される。
CFmax=μ×N ・・・(1)
【0038】
また、ゴムの摩擦係数μには圧力依存性があり、接地圧が高くなると摩擦係数μが低くなる。このため、実施形態のようにタイヤ1の接地圧が上昇する場合には、タイヤ1に作用する垂直荷重Nが同じ場合にCFmaxが低下する。
【0039】
また、
図5に示したように、CFmaxが最大となるSAが8~10度付近では、旋回内側(
図5の左側)のショルダー陸部50における接地部86の面積がかなり小さくなる。このため、ショルダー陸部50に周方向副溝を形成する場合に比べて、実施形態のようにメディエイト陸部44に周方向副溝46を形成する場合の方が、タイヤの旋回方向にかかわらず所望の効果を得やすいことが分かる。また、旋回両側の2つのメディエイト陸部44のうち、旋回外側(
図5の右側)のメディエイト陸部44の方が、周方向副溝46の形成による接地面積の低減によるCFmax低減の効果が高くなる。
【0040】
次に、本発明者が本発明の効果を確認するために行ったシミュレーション結果を説明する。シミュレーションでは、実施形態と同様の構成を有する実施例のタイヤと、比較例1及び比較例2のタイヤとを用いて、CFmaxとタイヤノイズとの計算を行った。比較例1は、各陸部40,44,50に周方向副溝を形成せず、各陸部40,44,50のタイヤ幅方向の端にはテーパ形状の面取りを形成しない。それ以外の構成は、実施例と同様である。比較例2は、比較例1に比べて、各メディエイト陸部44に実施例と同様に周方向副溝46を形成している。
【0041】
表1は、実施例、比較例1及び比較例2における、CFmaxとタイヤノイズとのシミュレーション結果を示している。表1のシミュレーション結果では、比較例1の場合のCFmaxとタイヤノイズとをそれぞれ基準値の100とした場合の、比較例2及び実施例の値を、相対値で示している。
【0042】
【0043】
表1のシミュレーション結果から、比較例2のようにメディエイト陸部44に周方向副溝46を形成した場合には、メディエイト陸部44の接地面積を低減できることにより、CFmaxを比較例1よりも低減できた。一方、比較例2では、周方向副溝46を形成した分、タイヤノイズが若干増大している。
【0044】
一方、実施例の場合には、メディエイト陸部44に周方向副溝46が形成されることに加えて、メディエイト陸部44の第2周方向主溝21側端にテーパ形状の面取りが形成される。これにより、CFmaxを比較例1と同様に低減させながら、第2周方向主溝21の容積を小さくできるので、タイヤノイズを低減できる。
【0045】
上記の実施形態では、センター陸部40、メディエイト陸部44、ショルダー陸部50のそれぞれが、ラグ溝でタイヤ周方向に分断されず、タイヤ周方向の全周に連続するリブ状である場合を説明した。一方、各陸部は、タイヤ幅方向の第1側から第2側に延びる複数のラグ溝によって、タイヤ周方向に分断された複数のブロック状である構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 タイヤ、10 トレッド、12 サイドウォール、13 タイヤ側面、20 第1周方向主溝、21 第2周方向主溝、40 センター陸部、44 メディエイト陸部、45 壁面、46 周方向副溝、47 面取り、48,49 壁面、50 ショルダー陸部、60 ラグ溝、80、81 サイプ、82 第1直線部、83 第2直線部、84 第1直線部、85 第2直線部、86~90 接地部、91 サイプ。