IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-交流電動機の切替装置 図1
  • 特開-交流電動機の切替装置 図2
  • 特開-交流電動機の切替装置 図3
  • 特開-交流電動機の切替装置 図4
  • 特開-交流電動機の切替装置 図5
  • 特開-交流電動機の切替装置 図6
  • 特開-交流電動機の切替装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092793
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】交流電動機の切替装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/18 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
H02P25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208011
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 幹三
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC01
5H505DD03
5H505EE35
5H505EE55
5H505HA06
5H505HA10
5H505HB01
5H505LL01
(57)【要約】
【課題】交流電動機の動作パターンを増やす。
【解決手段】交流電動機の切替装置10は、交流電動機4の切り替えを制御する装置であり、複数相の巻線71,72,73の接続状態を切り替える切替部20を有する。切替部20は、第1状態と第2状態と第3状態とに切り替わる。第1状態は、各相の第1巻線71A,72A,73Aの各々に対する通電制御を許容し第2巻線71B,72B,73Bの各々に対する通電制御を遮断する状態である。第2状態は、各相の第2巻線71B,72B,73Bの各々に対する通電制御を許容し第1巻線71A,72A,73Aの各々に対する通電制御を遮断する状態である。第3状態は、第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bに対する通電制御を許容する状態である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の巻線を有し各相の巻線がそれぞれ第1巻線と第2巻線とを有する交流電動機の前記巻線の接続状態を切り替える切替装置であって、
前記複数相の巻線の接続状態を切り替える切替部を有し、
前記切替部は、前記各相の巻線の各々の前記第1巻線に対する通電制御を許容し各々の前記第2巻線に対する通電制御を遮断する第1状態と、前記各相の巻線の各々の前記第2巻線に対する通電制御を許容し各々の前記第1巻線に対する通電制御を遮断する第2状態と、前記各相の巻線の各々の前記第1巻線及び前記第2巻線に対する通電制御を許容する第3状態と、に切り替わる
交流電動機の切替装置。
【請求項2】
前記切替部を制御する制御部を有し、
前記複数相の巻線は、第一相の巻線と第二相の巻線と第三相の巻線とを備え、
前記切替部は、第1短絡状態と第1解除状態とに切り替わる第1切替部と、第2短絡状態と第2解除状態とに切り替わる第2切替部と、第3短絡状態と第3解除状態とに切り替わる第3切替部と、を備え、
前記第1短絡状態は、前記第一相の巻線における前記第1巻線の一端である第1端部と第1導電路とを短絡させ、前記第二相の巻線における前記第1巻線の一端である第2端部と第2導電路とを短絡させ、前記第三相の巻線における前記第1巻線の一端である第3端部と第3導電路とを短絡させた状態であり、
前記第1解除状態は、前記第1端部と前記第1導電路の短絡を解除し、前記第2端部と前記第2導電路の短絡を解除し、前記第3端部と前記第3導電路の短絡を解除した状態であり、
前記第2短絡状態は、前記第一相の巻線における前記第2巻線の一端である第4端部と前記第1導電路とを短絡させ、前記第二相の巻線における前記第2巻線の一端である第5端部と前記第2導電路とを短絡させ、前記第三相の巻線における前記第2巻線の一端である第6端部と前記第3導電路とを短絡させた状態であり、
前記第2解除状態は、前記第4端部と前記第1導電路の短絡を解除し、前記第5端部と前記第2導電路の短絡を解除し、前記第6端部と前記第3導電路の短絡を解除した状態であり、
前記第3短絡状態は、前記第一相の巻線の前記第1巻線の他端と前記第二相の巻線の前記第1巻線の他端と前記第三相の巻線の前記第1巻線の他端とを含む他端群を互いに短絡させる状態であり、
前記第3解除状態は、前記他端群の互いの短絡を解除した状態であり、
前記制御部は、前記第1切替部を前記第1短絡状態とし前記第2切替部を前記第2解除状態とし前記第3切替部を前記第3短絡状態とすることで前記切替部を前記第1状態とし、前記第1切替部を前記第1解除状態とし前記第2切替部を前記第2短絡状態とし前記第3切替部を前記第3解除状態とすることで前記切替部を前記第2状態とし、前記第1切替部を前記第1短絡状態とし前記第2切替部を前記第2解除状態とし前記第3切替部を前記第3解除状態とすることで前記切替部を前記第3状態とする
請求項1に記載の交流電動機の切替装置。
【請求項3】
前記第一相の巻線の前記第1巻線は、前記第一相の巻線の前記第2巻線よりも巻き数が大きく、
前記第二相の巻線の前記第1巻線は、前記第二相の巻線の前記第2巻線よりも巻き数が大きく、
前記第三相の巻線の前記第1巻線は、前記第三相の巻線の前記第2巻線よりも巻き数が大きい
請求項2に記載の交流電動機の切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流電動機の切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される交流電動機は、各相巻線が複数の巻線からなり、複数の巻線を互いに連結した連結端子と各相巻線の両端子とがモータ外部に設けられる。そして、巻線切替装置は、連結端子を適宜切り替える巻線切替手段と、交流電動機に可変周波の可変電圧を供給する可変周波数電源とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-111492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、交流電動機の各相の巻線が複数の領域に分割されており、各相の巻線の各々の一部領域のみを使用する使用状態と、各々の一部領域とともに他の領域も使用する使用状態とに切り替え可能とされている。しかし、特許文献1に開示される技術は、各相の巻線の接続状態を切り替える上で、各相の上記一部領域を使用することが必須であるため、この点で、動作パターンが制限されてしまう。
【0005】
本開示は、交流電動機の動作パターンを増やしやすい技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである交流電動機の切替装置は、
複数相の巻線を有し各相の巻線がそれぞれ第1巻線と第2巻線とを有する交流電動機の前記巻線の接続状態を切り替える切替装置であって、
前記複数相の巻線の接続状態を切り替える切替部を有し、
前記切替部は、前記各相の巻線の各々の前記第1巻線に対する通電制御を許容し各々の前記第2巻線に対する通電制御を遮断する第1状態と、前記各相の巻線の各々の前記第2巻線に対する通電制御を許容し各々の前記第1巻線に対する通電制御を遮断する第2状態と、前記各相の巻線の各々の前記第1巻線及び前記第2巻線に対する通電制御を許容する第3状態と、に切り替わる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、交流電動機の動作パターンを増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る交流電動機の切替装置を含む車載システムを概略的に例示する回路図である。
図2図2は、第1実施形態に係る交流電動機の切替装置における各切替部の状態と通電対象巻線との対応関係等を説明する説明図である。
図3図3は、図1に示される交流電動機の切替装置の第1状態を説明する説明図である。
図4図4は、図1に示される交流電動機の切替装置の第2状態を説明する説明図である。
図5図5は、図1に示される交流電動機の切替装置の第3状態を説明する説明図である。
図6図6は、図1の車載システムに用いられる交流電動機に関して、各状態での回転数とトルクの関係を示すグラフである。
図7図7は、他の実施形態に係る交流電動機の切替装置を含む車載システムを概略的に例示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔4〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕複数相の巻線を有し各相の巻線がそれぞれ第1巻線と第2巻線とを有する交流電動機の前記巻線の接続状態を切り替える切替装置であって、
前記複数相の巻線の接続状態を切り替える切替部を有し、
前記切替部は、前記各相の巻線の各々の前記第1巻線に対する通電制御を許容し各々の前記第2巻線に対する通電制御を遮断する第1状態と、前記各相の巻線の各々の前記第2巻線に対する通電制御を許容し各々の前記第1巻線に対する通電制御を遮断する第2状態と、前記各相の巻線の各々の前記第1巻線及び前記第2巻線に対する通電制御を許容する第3状態と、に切り替わる
交流電動機の切替装置。
【0011】
上記の〔1〕の切替装置おいて、第1状態は、各相の巻線の各第1巻線を選択的に使用し各第2巻線を選択的に使用しない動作パターンであり、第2状態は、各相の巻線の各第2巻線を選択的に使用し各第1巻線を選択的に使用しない動作パターンであるため、この切替装置は、第2巻線の影響を抑えて第1巻線を使用する動作パターンと第1巻線の影響を抑えて第2巻線を使用する動作パターンを生じさせることができる。更に、この切替装置は、各第1巻線及び各第2巻線をいずれも使用する動作パターンも生じさせることができるため、交流電動機の動作パターンをより増やすことができる。
【0012】
〔2〕前記切替部を制御する制御部を有し、
前記複数相の巻線は、第一相の巻線と第二相の巻線と第三相の巻線とを備え、
前記切替部は、第1短絡状態と第1解除状態とに切り替わる第1切替部と、第2短絡状態と第2解除状態とに切り替わる第2切替部と、第3短絡状態と第3解除状態とに切り替わる第3切替部と、を備え、
前記第1短絡状態は、前記第一相の巻線における前記第1巻線の一端である第1端部と第1導電路とを短絡させ、前記第二相の巻線における前記第1巻線の一端である第2端部と第2導電路とを短絡させ、前記第三相の巻線における前記第1巻線の一端である第3端部と第3導電路とを短絡させた状態であり、
前記第1解除状態は、前記第1端部と前記第1導電路の短絡を解除し、前記第2端部と前記第2導電路の短絡を解除し、前記第3端部と前記第3導電路の短絡を解除した状態であり、
前記第2短絡状態は、前記第一相の巻線における前記第2巻線の一端である第4端部と前記第1導電路とを短絡させ、前記第二相の巻線における前記第2巻線の一端である第5端部と前記第2導電路とを短絡させ、前記第三相の巻線における前記第2巻線の一端である第6端部と前記第3導電路とを短絡させた状態であり、
前記第2解除状態は、前記第4端部と前記第1導電路の短絡を解除し、前記第5端部と前記第2導電路の短絡を解除し、前記第6端部と前記第3導電路の短絡を解除した状態であり、
前記第3短絡状態は、前記第一相の巻線の前記第1巻線の他端と前記第二相の巻線の前記第1巻線の他端と前記第三相の巻線の前記第1巻線の他端とを含む他端群を互いに短絡させる状態であり、
前記第3解除状態は、前記他端群の互いの短絡を解除した状態であり、
前記制御部は、前記第1切替部を前記第1短絡状態とし前記第2切替部を前記第2解除状態とし前記第3切替部を前記第3短絡状態とすることで前記切替部を前記第1状態とし、前記第1切替部を前記第1解除状態とし前記第2切替部を前記第2短絡状態とし前記第3切替部を前記第3解除状態とすることで前記切替部を前記第2状態とし、前記第1切替部を前記第1短絡状態とし前記第2切替部を前記第2解除状態とし前記第3切替部を前記第3解除状態とすることで前記切替部を前記第3状態とする
〔1〕に記載の交流電動機の切替装置。
【0013】
上記の〔2〕の切替装置は、三相交流電動機を対象とし、各切替部の短絡状態と解除状態の組み合わせを変更するという簡易な方法で、少なくとも3つの状態(第1状態、第2状態、第3状態)に切り替えることができる。
【0014】
〔3〕前記第一相の巻線の前記第1巻線は、前記第一相の巻線の前記第2巻線よりも巻き数が大きく、
前記第二相の巻線の前記第1巻線は、前記第二相の巻線の前記第2巻線よりも巻き数が大きく、
前記第三相の巻線の前記第1巻線は、前記第三相の巻線の前記第2巻線よりも巻き数が大きい
〔2〕に記載の交流電動機の切替装置。
【0015】
上記の〔3〕の切替装置は、第1状態のときには巻き数が相対的に大きい各第1巻線を選択的に使用することができるため、インピーダンスを高くすることができ、より大きなトルクを発生させやすい。一方、第2状態のときには巻き数が相対的に小さい各第2巻線を選択的に使用することができるため、インピーダンスを抑えることができ、高速運転に対する適性を高めやすい。第3状態のときには、巻き数が相対的に大きい各第1巻線だけでなく、各第2巻線も使用することができるため、より一層トルクを増大させやすい。
【0016】
〔4〕前記制御部は、前記交流電動機の切替装置及び前記交流電動機が搭載された車両の回転数が第1の回転数範囲内である場合に、前記切替部を前記第3状態とし、前記車両の回転数が前記第1の回転数範囲よりも回転数が大きい範囲である第2の回転数範囲内である場合に、前記切替部を前記第1状態とし、前記車両の回転数が前記第2の回転数範囲よりも回転数が大きい範囲である第3の回転数範囲内である場合に、前記切替部を前記第1状態とする
〔3〕に記載の交流電動機の切替装置。
【0017】
上記の〔4〕の切替装置は、車両の回転数が相対的に大きい第3回転数範囲内のときには、高速走行に適用させやすい第1状態に切り替えることができ、相対的に小さい第1回転数範囲内のときには、トルクを増大させやすい第3状態に切り替えることができる。そして、この切替装置は、車両の回転数が中程度の第2回転数範囲内のときには、トルクと高速走行のバランスをとりやすい第2状態に切り替えることができる。
【0018】
<第1実施形態>
1.車載システムの概要
図1に示される車載システム1は、車両に搭載される交流電動機4に適用されるシステムであり、交流電動機4を駆動及び制御し得る電動機システムである。車載システム1は、交流電動機4と電動機駆動装置2とを備える。
【0019】
交流電動機4は、三相交流電動機である。交流電動機4は、例えば、車載システム1が搭載される車両に設けられた車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる駆動用三相モータである。交流電動機4は、複数相(具体的には三相)の巻線71,72,73を内蔵している。複数相の巻線71,72,73は、ステータに設けられるステータ巻線として機能する。巻線71は、U相の巻線71とも称される。巻線72は、V相の巻線72とも称される。巻線73は、W相の巻線73とも称される。U相は、第一相の一例に相当する。V相は、第二相の一例に相当する。W相は、第三相の一例に相当する。交流電動機4は、いわゆるY結線の三相モータである。U相(第一相)の巻線71、V相(第二相)の巻線72及びW相(第三相)の巻線73は、中性点となりうる第3切替部23又は中性点となり得る短絡部90のいずれかにて結線され得る。
【0020】
交流電動機4を構成する複数相の巻線71,72,73は、各相の巻線がそれぞれ第1巻線及び第2巻線を有し、各相において第1巻線と第2巻線とが直列に接続される。U相(第一相)の巻線71は、第1巻線71Aと第2巻線71Bとを備え、第1巻線71Aと第2巻線71Bとが直列に接続される。V相(第二相)の巻線72は、第1巻線72Aと第2巻線72Bとを備え、第1巻線72Aと第2巻線72Bとが直列に接続される。W相(第三相)の巻線73は、第1巻線73Aと第2巻線73Bとを備え、第1巻線73Aと第2巻線73Bとが直列に接続される。
【0021】
端部81Aは、第1端部の一例に相当する。端部81Aは、第1巻線71Aの一端である。端部81Aは、U相の導電路61のうちの導電路61Bに電気的に接続され、導電路61Bに短絡している。端部82Aは、第2端部の一例に相当する。端部82Aは、第1巻線72Aの一端である。端部82Aは、V相の導電路62のうちの導電路62Bに電気的に接続され、導電路62Bに短絡している。端部83Aは、第3端部の一例である。端部83Aは、第1巻線73Aの一端である。端部83Aは、W相の導電路63のうちの導電路63Bに電気的に接続され、導電路63Bに短絡している。
【0022】
端部81Bは、第1巻線71Aの他端である。端部81Bは、第2巻線71Bの一端である端部81Cに電気的に接続され、端部81Cに短絡している。端部82Bは、第1巻線72Aの他端である。端部82Bは、第2巻線72Bの一端である端部82Cに電気的に接続され、端部82Cに短絡している。端部83Bは、第1巻線73Aの他端である。端部83Bは、第2巻線73Bの一端である端部83Cに電気的に接続され、端部83Cに短絡している。端部81Dは、第2巻線71Bの他端である。端部82Dは、第2巻線72Bの他端である。端部83Dは、第2巻線73Bの他端である。端部81Dと端部82Dと端部83Dは短絡部90に電気的に接続され、短絡部90を介して互いに短絡している。
【0023】
一対の電力路81,82は、図示しないバッテリ(例えば、高圧バッテリ)からの電力に基づく直流電力が伝送される導電路である。電力路81は、高電位側の電力路である。電力路82は、低電位側の電力路である。例えば、一対の電力路81,82の間には、一定電圧の直流電圧が印加され得る。
【0024】
2.電動機駆動装置の概要
電動機駆動装置2は、一対の電力路81,82から供給される電力に基づいて交流電動機4を駆動する装置である。電動機駆動装置2は、交流電動機4の動作を制御する装置でもある。電動機駆動装置2は、インバータ6と、3つの導電路(U相の導電路61、V相の導電路62、W相の導電路63)と、切替装置10とを有する。
【0025】
インバータ6は、U相、V相、W相の三相交流電力を出力するインバータ回路である。インバータ6から出力される三相交流電力は、3つの導電路(U相の導電路61、V相の導電路62、W相の導電路63)を介して交流電動機4に供給され、交流電動機4の回転駆動に用いられる。インバータ6は、上アーム素子として機能するスイッチング素子6A,6C,6Eと下アーム素子として機能するスイッチング素子6B,6D,6Fとを備える。スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの各々は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)及び還流ダイオードにより構成されている。
【0026】
インバータ6では、例えば、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fがオンオフ信号(例えば、PWM(パルス幅変調)信号)を受けることによってオン動作及びオフ動作を繰り返し、三相交流電力を発生させる。スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fのオンオフ制御は、例えば、図示されていない電子制御装置(例えば、車載ECU(Electronic Control Unit)等)によって行われる。電子制御装置がインバータ6を制御する方式は、例えば、PWM信号を用いた三相変調方式である。なお、上記電子制御装置がインバータ6を制御する方式は、交流電動機4を駆動可能な方式であればよく、例えば、公知のV/f制御や公知のベクトル制御などの様々な方式が採用され得る。
【0027】
インバータ6において、U相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Aと下アーム素子であるスイッチング素子6Bとによって構成される。V相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Cと下アーム素子であるスイッチング素子6Dとによって構成される。W相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Eと下アーム素子であるスイッチング素子6Fとによって構成される。
【0028】
U相の導電路61は、スイッチング素子6A,6BとU相の巻線71との間の導電路である。U相の導電路61は、導電路61Aと導電路61Bとを備える。導電路61Aは、第1導電路の一例に相当する。導電路61Aは、スイッチング素子6A,6Bとスイッチ21Aとの間の導電路である。導電路61Aの一端は、スイッチング素子6A,6Bの両素子間の導電路に電気的に接続される。導電路61Aの他端は、スイッチ21Aの一端に電気的に接続される。導電路61Bは、スイッチ21Aの他端とU相の巻線71の一端とに電気的に接続される。スイッチ21Aがオン状態のときにスイッチング素子6A,6Bの両素子間とU相の巻線71とが短絡して導通し得る。
【0029】
V相の導電路62は、スイッチング素子6C,6DとV相の巻線72との間の導電路である。V相の導電路62は、導電路62Aと導電路62Bとを備える。導電路62Aは、第2導電路の一例に相当する。導電路62Aは、スイッチング素子6C,6Dとスイッチ21Bとの間の導電路である。導電路62Aの一端は、スイッチング素子6C,6Dの両素子間の導電路に電気的に接続される。導電路62Aの他端は、スイッチ21Bの一端に電気的に接続される。導電路62Bは、スイッチ21Bの他端とV相の巻線72の一端とに電気的に接続される。スイッチ21Bがオン状態のときにスイッチング素子6C,6Dの両素子間とV相の巻線72とが短絡して導通し得る。
【0030】
W相の導電路63は、スイッチング素子6E,6FとW相の巻線73との間の導電路である。W相の導電路63は、導電路63Aと導電路63Bとを備える。導電路63Aは、第3導電路の一例に相当する。導電路63Aは、スイッチング素子6E,6Fとスイッチ21Cとの間の導電路である。導電路63Aの一端は、スイッチング素子6E,6Fの両素子間の導電路に電気的に接続される。導電路63Aの他端は、スイッチ21Cの一端に電気的に接続される。導電路63Bは、スイッチ21Cの他端とW相の巻線73の一端とに電気的に接続される。スイッチ21Cがオン状態のときにスイッチング素子6E,6Fの両素子間とW相の巻線73とが短絡して導通し得る。
【0031】
3.切替装置の構成
切替装置10は、交流電動機4の巻線の状態を切り替える装置である。切替装置10は、切替部20と制御部30とを備える。
【0032】
制御部30は、切替部20を制御する装置である。制御部30は、例えば、車載ECUなどの電子制御装置であってもよく、MPU(Micro-Processing Unit)などを有する情報処理装置であってもよい。制御部30は、切替部20を構成する各スイッチのオンオフを制御する。具体的には、制御部30は、スイッチ21A,21B,21C,22A,22B,22C,23A,23B,23Cの各々に対してオン信号及びオフ信号を出力し得る。
【0033】
切替部20は、複数相の巻線71,72,73の接続状態を切り替える装置である。切替部20は、第1切替部21と第2切替部22と第3切替部23とを有する。第1切替部21は、第1短絡状態と第1解除状態とに切り替わる。第2切替部22は、第2短絡状態と第2解除状態とに切り替わる。第3切替部23は、第3短絡状態と第3解除状態とに切り替わる。
【0034】
第1切替部21は、スイッチ21A,21B,21Cを備える。スイッチ21A,21B,21Cの各々は、1以上の半導体スイッチ素子(例えば、FET(Field Effect Transistor)やIGBTなど)によって構成されていてもよく、1以上の機械式リレーによって構成されていてもよい。
【0035】
第1短絡状態は、スイッチ21A,21B,21Cをいずれもオンにした状態である。スイッチ21Aがオン状態のときには、スイッチ21Aを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ21Bがオン状態のときには、スイッチ21Bを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ21Cがオン状態のときには、スイッチ21Cを通って双方向に電流が流れ得る。つまり、第1短絡状態は、U相の第1巻線71Aの一端である端部81Aと導電路61A(第1導電路)とを短絡させ、V相の第1巻線72Aの一端である端部82Aと導電路62A(第2導電路)とを短絡させ、W相の第1巻線73Aの一端である端部83Aと導電路63A(第3導電路)とを短絡させる状態である。
【0036】
第1解除状態は、スイッチ21A,21B,21Cをいずれもオフにした状態である。スイッチ21Aがオフ状態のときには、スイッチ21Aにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ21Bがオフ状態のときには、スイッチ21Bにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ21Cがオフ状態のときには、スイッチ21Cにおいて双方向の通電が遮断される。つまり、第1解除状態は、端部81A(第1端部)と導電路61A(第1導電路)の短絡を解除し、端部82A(第2端部)と導電路62A(第2導電路)の短絡を解除し、端部83A(第3端部)と導電路63A(第3導電路)の短絡を解除した状態である。第1解除状態のときには、導電路61Aと導電路61Bの間で電流が流れず、導電路62Aと導電路62Bの間で電流が流れず、導電路63Aと導電路63Bの間で電流が流れない。第1解除状態では、第1巻線71A,72A,73Aに駆動のための電流が供給されない。
【0037】
第2切替部22は、スイッチ22A,22B,22Cを備える。スイッチ22A,22B,22Cの各々は、1以上の半導体スイッチ素子(例えば、FETやIGBTなど)によって構成されていてもよく、1以上の機械式リレーによって構成されていてもよい。
【0038】
第2短絡状態は、スイッチ22A,22B,22Cをいずれもオンにした状態である。スイッチ22Aがオン状態のときには、スイッチ22Aを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ22Bがオン状態のときには、スイッチ22Bを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ22Cがオン状態のときには、スイッチ22Cを通って双方向に電流が流れ得る。つまり、第2短絡状態は、端部81C(第4端部)と導電路61A(第1導電路)とを短絡させ、端部82C(第5端部)と導電路62A(第2導電路)とを短絡させ、端部83C(第6端部)と導電路63A(第3導電路)とを短絡させる状態である。
【0039】
第2解除状態は、スイッチ22A,22B,22Cをいずれもオフにした状態である。スイッチ22Aがオフ状態のときには、スイッチ22Aにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ22Bがオフ状態のときには、スイッチ22Bにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ22Cがオフ状態のときには、スイッチ22Cにおいて双方向の通電が遮断される。つまり、第2解除状態は、端部81C(第4端部)と導電路61A(第1導電路)の短絡を解除し、端部82C(第5端部)と導電路62A(第2導電路)の短絡を解除し、端部83C(第6端部)と導電路63A(第3導電路)の短絡を解除した状態である。
【0040】
第3短絡状態は、スイッチ23A,23B,23Cをいずれもオンにした状態である。スイッチ23A,23B,23Cがいずれもオン状態のときには、第1巻線71A,72A,73Aの各他端が互いに短絡する。スイッチ23Aがオン状態のときには、スイッチ23Aを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ23Bがオン状態のときには、スイッチ23Bを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ23Cがオン状態のときには、スイッチ23Cを通って双方向に電流が流れ得る。第3短絡状態は、U相の第1巻線71Aの他端である端部81Bと、V相の第1巻線72Aの他端である端部82Bと、W相の第1巻線73Aの他端である端部83Bが互いに短絡し、同電位になる状態である。端部81B,82B,83Bによって構成される複数の端部が他端群であり、第3短絡状態は、この他端群が互いに短絡して同電位になる状態である。
【0041】
第3解除状態は、スイッチ23A,23B,23Cをいずれもオフにした状態である。スイッチ23Aがオフ状態のときには、スイッチ23Aにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ23Bがオフ状態のときには、スイッチ23Bにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ23Cがオフ状態のときには、スイッチ23Cにおいて双方向の通電が遮断される。第3解除状態は、上記他端群の互いの短絡を解除した状態であり、具体的には、端部81Bと端部82Bとの間、端部82Bと端部83Bとの間、端部81Bと端部83Bとの間のいずれでも、スイッチ23A,23B,23Cを介して電流が流れない状態である。
【0042】
4.切替装置の動作
以下で説明される本実施形態の代表例では、U相(第一相)の巻線71の第1巻線71Aは第2巻線71Bよりも巻き数が大きい。V相(第二相)の巻線72の第1巻線72Aは、第2巻線72Bよりも巻き数が大きい。W相(第三相)の巻線73の第1巻線73Aは第2巻線73Bよりも巻き数が大きい。つまり、いずれの相でも、第1巻線の巻き数が第2巻線の巻き数よりも大きい。
【0043】
切替部20は、第1状態と第2状態と第3状態と第4状態とに切り替わる。制御部30は、切替部20を第1状態、第2状態、第3状態、第4状態のいずれかに切り替えるように切替部20を制御する。
【0044】
図2のように、第1状態は、第1切替部21を短絡状態(第1短絡状態)とし第2切替部22を解除状態(第2解除状態)とし第3切替部23を短絡状態(第3短絡状態)とする状態である。第1状態では、通電対象の巻線は第1巻線71A,72A,73Aである。つまり、第1状態は、複数相の巻線71,72,73のうちの第1巻線71A,72A,73Aに対する通電制御を許容し第2巻線71B,72B,73Bに対する通電制御を遮断する状態である。図3のように、第1状態では、スイッチ21A,21B,21Cの各々がオン状態となり、スイッチ22A,22B,22Cの各々がオフ状態となり、スイッチ23A,23B,23Cの各々がオン状態となり、第3切替部23が中性点となる。従って、第1巻線71A,72A,73Aの各々に駆動用の電流が流れ、第2巻線71B,72B,73Bの各々には駆動用の電流が流れない。
【0045】
図2のように、第2状態は、第1切替部21を解除状態(第1解除状態)とし第2切替部22を短絡状態(第2短絡状態)とし第3切替部23を解除状態(第3解除状態)とする状態である。第2状態では、通電対象の巻線は第2巻線71B,72B,73Bである。つまり、第2状態は、複数相の巻線71,72,73のうちの第2巻線71B,72B,73Bに対する通電制御を許容し第1巻線71A,72A,73Aに対する通電制御を遮断する状態である。図4のように、第2状態では、スイッチ22A,22B,22Cの各々がオン状態となり、スイッチ21A,21B,21Cの各々がオフ状態となり、スイッチ23A,23B,23Cの各々がオフ状態となり、短絡部90が中性点となる。従って、第2巻線71B,72B,73Bの各々には駆動用の電流が流れ、第1巻線71A,72A,73Aの各々には駆動用の電流が流れない。
【0046】
図2のように、第3状態は、第1切替部21を短絡状態(第1短絡状態)とし第2切替部22を解除状態(第2解除状態)とし第3切替部23を解除状態(第3解除状態)とする状態である。第3状態では、通電対象の巻線は第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bである。つまり、第3状態は、複数相の巻線71,72,73において第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bのいずれに対しても通電制御を許容する状態である。図5のように、第3状態では、スイッチ21A,21B,21Cの各々がオン状態となり、スイッチ22A,22B,22Cの各々がオフ状態となり、スイッチ23A,23B,23Cの各々がオフ状態となり、短絡部90が中性点となる。従って、直列に接続された第1巻線71A及び第2巻線71Bの全体がU相の巻線として機能しこれら全体に駆動用の電流が流れ、直列に接続された第1巻線72A及び第2巻線72Bの全体がV相の巻線として機能しこれら全体に駆動用の電流が流れ、直列に接続された第1巻線73A及び第2巻線73Bの全体がW相の巻線として機能しこれら全体に駆動用の電流が流れる。
【0047】
図2のように、第4状態は、第1切替部21を解除状態(第1解除状態)とし第2切替部22を解除状態(第2解除状態)とし第3切替部23を解除状態(第3解除状態)とする状態である。第4状態のときには、第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bのいずれにも駆動用の電流は流れない。
【0048】
制御部30は、切替部20を上記いずれかの状態に切り替えるように制御する。制御部30は、第1条件の成立時に、第1切替部21を第1短絡状態とし第2切替部22を第2解除状態とし第3切替部23を第3短絡状態とすることで切替部20を第1状態とする。この場合、車載システム1は、各相において相対的に巻き数が大きい第1巻線のみに選択的に電力を供給するように使用することができる。一方、制御部30は、第1条件と異なる第2条件の成立時に、第1切替部21を第1解除状態とし第2切替部22を第2短絡状態とし第3切替部23を第3解除状態とすることで切替部20を第2状態とする。この場合、車載システム1は、各相において相対的に巻き数が小さい第2巻線のみに選択的に電力を供給するように使用することができる。また、制御部30は、第1条件及び第2条件とは異なる第3条件の成立時に第1切替部21を第1短絡状態とし第2切替部22を第2解除状態とし第3切替部23を第3解除状態とすることで切替部20を第3状態とする。この場合、車載システム1は、各相において第1巻線及び第2巻線の両方に電力を供給して使用することができる。制御部30は、第1、第2、第3条件とは異なる第4条件の成立時に第1切替部21を第1解除状態とし第2切替部22を第2解除状態とし第3切替部23を第3解除状態とすることで切替部20を第4状態とする。この場合、車載システム1は、各相において第1巻線及び第2巻線への電力供給を停止することができる。第1条件、第2条件、第3条件、第4条件は、互いに異なる条件であればよい。
【0049】
5.効果の例
切替装置10おいて、第1状態は、複数相の巻線71,72,73のうちの第1巻線71A,72A,73Aを選択的に使用し、第2巻線71B,72B,73Bを選択的に使用しない動作パターンである。第2状態は、複数相の巻線のうちの第2巻線71B,72B,73Bを選択的に使用し第1巻線71A,72A,73Aを選択的に使用しない動作パターンである。切替装置10は、このように状態が切り替わるため、第2巻線71B,72B,73Bの影響を抑えて第1巻線71A,72A,73Aを使用する動作パターンと第1巻線71A,72A,73Aの影響を抑えて第2巻線71B,72B,73Bを使用する動作パターンとを生じさせることができる。更に、切替装置10は、第3状態への切り替えにより、各相において第1巻線及び第2巻線をいずれも使用する動作パターンも生じさせることができるため、交流電動機4の動作パターンをより増やすことができる。
【0050】
切替装置10は、第1切替部21、第2切替部22、第3切替部23の短絡状態と解除状態の組み合わせを変更するという簡易な方法で、少なくとも3つの状態(第1状態、第2状態、第3状態)に切り替えることができる。
【0051】
切替装置10は、第1状態のときには巻き数が相対的に大きい第1巻線71A,72A,73Aを選択的に使用することができるため、インピーダンスを高くすることができ、より大きなトルクを発生させやすい。一方、第2状態のときには巻き数が相対的に小さい第2巻線71B,72B,73Bを選択的に使用することができるため、インピーダンスを抑えることができ、高速運転に対する適性を高めやすい。第3状態のときには、巻き数が相対的に大きい第1巻線71A,72A,73Aに加えて、第2巻線71B,72B,73Bも使用することができるため、より一層トルクを増大させやすい。
【0052】
本明細書において、上記第1条件を「車載システム1が搭載された車両の回転数が第2の回転数範囲内であること」としてもよい。そして、上記第2条件を「車載システム1が搭載された車両の回転数が第3の回転数範囲内であること」としてもよい。更に、上記第3条件を「車載システム1が搭載された車両の回転数が第1の回転数範囲内であること」としてもよい。この場合、第3条件に対応する第1の回転数範囲は、上記車両の回転数がX1未満の範囲とすることができ、第1条件に対応する第2の回転数範囲は、上記車両の回転数がX1以上且つX2未満の範囲とすることができ、第2条件に対応する第3の回転数範囲は、上記車両の回転数がX2以上の範囲とすることができる。この例では、第2の回転数範囲は、第1の回転数範囲よりも回転数が大きい範囲であり、第3の回転数範囲は、第2の回転数範囲よりも回転数が大きい範囲である。
【0053】
交流電動機4において、第1状態、第2状態、第3状態の各々のときの回転数とトルクとの関係は、例えば図6のようになっている。図6の例では、車載システム1が搭載された車両の回転数がX1未満の第1の回転数範囲では、第3状態のときのトルクが最も大きい。また、上記車両の回転数がX1以上且つX2未満の第2の回転数範囲では、第1状態のときのトルクが最も大きい。更に、上記車両の回転数がX2以上の第3の回転数範囲では、第2状態のときのトルクが最も大きい。このような例では、上記車両の回転数が相対的に小さい第1回転数範囲内のときに制御部30が切替部20を第3状態に切り替えるように制御すれば、発進時や登坂時など、回転数が小さい状況で高トルクが要求される場面で有利である。また、上記車両の回転数が相対的に大きい第3回転数範囲内のときに制御部30が切替部20を第2状態に切り替えるように動作すれば、高速道路走行時など、加減速の頻度が少ないが高速を維持するような場面で有利である。また、上記車両の回転数が中程度の第2回転数範囲内のときに制御部30が切替部20を第1状態に切り替えるように動作すれば、市街地走行時など、中速域で加減速や進路変更がある場面において有利である。
【0054】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0055】
上述の実施形態では、切替装置10が制御部30を有していたが、切替装置が制御部30を有していなくてもよい。例えば、切替装置が、上述の切替部20のみによって構成され、この切替装置(具体的には切替部20)が外部装置(例えば、上述の制御部30と同様の機能を有する装置)から指示を受けて切替動作を行うような構成であってもよい。
【0056】
上述された実施形態では、各相の巻線がそれぞれ2つに分けられたが、各相の巻線がそれぞれ3つ以上に分けられてもよい。図7には、図1の電動機駆動装置2に代えて電動機駆動装置202が採用された車載システム101が示される。図7の電動機駆動装置202では、図1の交流電動機4に代えて交流電動機104が用いられる。交流電動機104は、図1のように第2巻線71B,72B,73Bの各々の他端と短絡部90とが短絡している構成に代えて、第2巻線71B,72B,73Bの各々の他端と短絡部190との間に第3巻線71C,72C,73Cがそれぞれ設けられた点が図1と異なり、その他の構成は図1の交流電動機4と同様である。図7の交流電動機104におけるU相の巻線171、V相の巻線172、W相の巻線173のように、第2巻線71B,72B,73Bの各々と短絡部190との間に第3巻線71C,72C,73Cが設けられていてもよい。この例では、図7のように、スイッチ122A,122B,122Cをオン状態とオフ状態とに切り替える第4切替部122とスイッチ123A,123B,123Cをオン状態とオフ状態とに切り替える第5切替部123とが設けられていればよい。図7の例では、上述の第1状態にするには、第1実施形態での第1状態の制御に加え、スイッチ122A,122B,122C,123A,123B,123Cを全てオフ状態とすればよく、第2状態とするには第1実施形態での第2状態の制御に加え、スイッチ122A,122B,122Cを全てオフ状態とし、スイッチ123A,123B,123Cを全てオン状態とすればよく、第3状態とするには第1実施形態での第3状態の制御に加え、スイッチ122A,122B,122Cを全てオフ状態とし、スイッチ123A,123B,123Cを全てオン状態とすればよく、第4状態とするには第1実施形態での第4状態の制御に加え、スイッチ122A,122B,122C,123A,123B,123Cを全てオフ状態とすればよい。更に、切替部21,22,23,123を全てオフ状態とし、切替部122をオン状態とすれば、各第1巻線及び各第2巻線を用いずに、第3巻線71C,72C,73Cを選択的に用いるような第4状態が可能であり、切替部22,23,122,123を全てオフ状態とし、切替部21をオン状態とすれば、各第1巻線、各第2巻線、各第3巻線を全て用いるような第5状態が可能である。更に、これら以外の状態も生じさせることができる。この電動機駆動装置2では、各相の巻線がそれぞれ3つ以上に分けられた構成において、各相の巻線のうちのいずれか1種類(図7の構成では、第1巻線、第2巻線、第3巻線のうちの1種類)のみを選択する使用が可能であり、いずれか2種類のみを選択する使用も可能であり、全種類を選択する使用も可能である。
【0057】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1,101 :車載システム
4,104 :交流電動機
10:切替装置(交流電動機の切替装置)
20:切替部
21:第1切替部
22:第2切替部
23:第3切替部
30:制御部
61:第1導電路
62:第2導電路
63:第3導電路
71:U相の巻線
72:V相の巻線
73:W相の巻線
71A,72A,73A:第1巻線
71B,72B,73B:第2巻線
81A:第1端部
81B:他端
81C:第4端部
82A:第2端部
82B:他端
82C:第5端部
83A:第3端部
83B:他端
83C:第6端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7