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特開2023-92834評価方法、評価装置、およびプログラム
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  • 特開-評価方法、評価装置、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092834
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】評価方法、評価装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20230627BHJP
   G06Q 30/0201 20230101ALI20230627BHJP
【FI】
A61B5/16 120
G06Q30/02 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208073
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 恵子
(72)【発明者】
【氏名】町田 明子
(72)【発明者】
【氏名】新井 智大
(72)【発明者】
【氏名】宗像 大朗
(72)【発明者】
【氏名】守谷 大樹
【テーマコード(参考)】
4C038
5L049
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PR01
4C038PS03
5L049BB02
5L049BB03
(57)【要約】
【課題】情緒価値を容易に評価する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る評価方法は、対象物を二肢弁別するときの対象者の脳波を取得することと、前記対象者の脳波から、前記対象物が前記対象者に提供する情緒価値を評価することと、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を二肢弁別するときの対象者の脳波を取得することと、
前記対象者の脳波から、前記対象物が前記対象者に提供する情緒価値を評価することと
を含む評価方法。
【請求項2】
前記対象物が前記対象者に提供する情緒価値は、前記対象物が高価であると感じること、あるいは、前記対象物が安価であると感じることである、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記対象物は、化粧品のパッケージである、請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記二肢弁別は、前記対象物の外観をもとに、前記対象物が2つのカテゴリのうちのいずれのカテゴリに属するかを判定することである、請求項1から3のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記評価は、単一試行解析によって行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記評価が単一試行解析によって行われる場合には、前記脳波によって計測されるERPの成分である、初期成分のN150、N2、P300、LPP潜時の反応に基づいて評価し、
前記評価が複数の脳波を加算平均することによって行われる場合には、前記脳波によって計測されるERPの成分である、中心-頭頂部のN2、後頭部のP300-LPP区間の反応に基づいて評価する、請求項1から5のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項7】
前記評価は、MVPAによって行われる、請求項5または6に記載の評価方法。
【請求項8】
前記対象者の脳波から、前記対象者が前記対象物を使用したことがあるか否かを評価すること、をさらに含む請求項1に記載の評価方法。
【請求項9】
対象物を二肢弁別するときの対象者の脳波を取得する脳波取得部と、
前記対象者の脳波から、前記対象物が前記対象者に提供する情緒価値を評価する評価部と
を備えた評価装置。
【請求項10】
コンピュータを
対象物を二肢弁別するときの対象者の脳波を取得する脳波取得部、
前記対象者の脳波から、前記対象物が前記対象者に提供する情緒価値を評価する評価部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価方法、評価装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品等の商品では、その商品の機能、性能、品質等の機能価値(なお、機能的価値とも呼ばれる)だけでなく、高級感等の情緒価値(なお、情緒的価値とも呼ばれる)が顧客の購買意欲を左右する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-18492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、情緒価値は顧客の主観的なものであるため、情緒価値を評価することは、機能価値を評価することに比べ容易ではなかった。そのため、化粧品等の商品が顧客に提供している情緒価値を容易に評価できることが望まれていた。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態では、情緒価値を容易に評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る評価方法は、対象物を二肢弁別するときの対象者の脳波を取得することと、前記対象者の脳波から、前記対象物が前記対象者に提供する情緒価値を評価することと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、情緒価値を容易に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る全体の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る評価装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る対象物の二肢弁別について説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係る情緒価値および使用・不使用の評価に用いられるERPの成分について説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態に係る情緒価値を評価する処理のフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<用語の説明>
・本明細書において「対象物」とは、任意の商品である。例えば、対象物は、化粧品(例えば、スキンケア用の化粧品、メイクアップ用の化粧品、ヘアケア用商品、ボディケア用商品、日焼け止め、香水等)のパッケージである。なお、対象物は、サプリメント等の飲食料品のパッケージ、化粧用具、美容機器等であってもよい。
・本明細書において「二肢弁別」とは、2つの選択肢からどちらか1つを選ばせる方法である。
・本明細書において「情緒価値」とは、対象物が対象者の心理や精神(例えば、感性等)に与える価値(例えば、対象物が対象者に与える印象)である。つまり、情緒価値は、対象物の機能、性能、品質等の機能価値とは異なり、それぞれの対象者が感じる主観的なものである。例えば、情緒価値は、対象物が高価であると感じること、あるいは、対象物が安価であると感じることである。
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
<全体の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る全体の構成図である。評価装置10は、脳波測定装置20が測定した対象者30の脳波から、対象物が対象者30に提供する情緒価値を評価する。以下、それぞれについて説明する。
【0012】
評価装置10は、対象物が対象者30に提供する情緒価値を評価する。具体的には、評価装置10は、対象物を二肢弁別するときの対象者30の脳波を取得して、対象者30の脳波から、対象物が対象者30に提供する情緒価値を評価する。評価装置10は、1つまたは複数のコンピュータからなる。後段で、図2を参照しながら、評価装置10について詳細に説明する。
【0013】
脳波測定装置20は、対象者30の脳波を測定する装置である。
【0014】
<機能ブロック>
図2は、本発明の一実施形態に係る評価装置10の機能ブロック図である。評価装置10は、脳波取得部101と、評価部102と、提示部103と、を備えることができる。また、評価装置10は、プログラムを実行することで、脳波取得部101、評価部102、提示部103として機能することができる。
【0015】
脳波取得部101は、対象物を二肢弁別するときの対象者30の脳波を取得する。具体的には、対象者30は、評価装置10の表示装置に表示される対象物の外観をもとに、対象物が2つのカテゴリのうちのいずれのカテゴリに属するかを判定することによって、対象物を二肢弁別する。
【0016】
評価部102は、脳波取得部101が取得した対象者30の脳波から、対象者30が二肢弁別した対象物が対象者30に提供する情緒価値を評価する。なお、評価部102は、脳波取得部101が取得した対象者30の脳波から、対象者30が対象物を使用したことがあるか否かを評価することもできる。
【0017】
提示部103は、評価部102が評価した結果(つまり、各対象物が対象者30に提供する情緒価値)を提示(例えば、評価装置10の表示装置に表示)する。
【0018】
<<対象物の二肢弁別>>
ここで、対象物の二肢弁別について説明する。対象者30は、評価装置10の表示装置に表示される対象物の外観をもとに、対象物が2つのカテゴリのうちのいずれのカテゴリに属するかを判定することによって、対象物を二肢弁別する。評価装置10は、2つのカテゴリのうちのいずれかのカテゴリに属する1つまたは複数の対象物を表示する。なお、評価装置10は、同一の対象物を複数回表示してもよい。以下、図3を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態に係る対象物の二肢弁別について説明するための図である。評価装置10の表示装置には、あるカテゴリ(例えば、スキンケア用の化粧品のパッケージ)に属する対象物(図3の<A>)、あるいは、別のカテゴリ(例えば、リップスティックのパッケージ)に属する対象物(図3の<B>)のいずれかが表示される。対象者30は、評価装置10の操作装置等を用いて、対象物が2つのカテゴリ(この例であれば、スキンケア用の化粧品のパッケージとリップスティックのパッケージ)のうちのいずれのカテゴリに属するかを入力する。
【0020】
上記はカテゴリの一例に過ぎず、以下のように、上位概念のカテゴリと上位概念のカテゴリであってもよいし(例1)、下位概念のカテゴリと下位概念のカテゴリであってもよいし(例2)、上位概念のカテゴリと下位概念のカテゴリであってもよい(例3)。
【0021】
(例1)
・スキンケア用の化粧品(例えば、化粧水、乳液等の複数の種類の化粧品)のパッケージとメイクアップ用の化粧品(例えば、リップスティック、アイシャドウ等の複数の種類の化粧品)のパッケージが用いられる。
【0022】
(例2)
・特定のスキンケア用の化粧品(例えば、化粧水のみ)のパッケージと特定のメイクアップ用の化粧品(例えば、リップスティックのみ)のパッケージが用いられる。
【0023】
(例3)
・スキンケア用の化粧品(例えば、化粧水、乳液等の複数の種類の化粧品)のパッケージと特定のメイクアップ用の化粧品(例えば、リップスティックのみ)のパッケージが用いられる。特定のスキンケア用の化粧品(例えば、化粧水のみ)のパッケージとメイクアップ用の化粧品(例えば、リップスティック、アイシャドウ等の複数の種類の化粧品)のパッケージが用いられる。
【0024】
<<評価>>
本発明の一実施形態では、後述する実験の結果から、脳波によって計測される事象関連電位(以下、ERP(event-related potential)という)の成分に基づいて、対象物の情緒価値および使用・不使用を評価することができる。以下、図4を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態に係る情緒価値および使用・不使用の評価に用いられるERPの成分について説明するための図である。
【0026】
<<情緒価値の評価>>
まず、情緒価値の評価について説明する。
【0027】
[単一の試行]
本発明の一実施形態では、評価部102は、単一の試行による解析で、情緒価値を評価することができる。つまり、少人数(1名)の対象者による少数回分(1回分)の脳波が用いられる。
【0028】
例えば、評価部102は、MVPA(Multivariate Pattern Analysis)の手法を用いて、情緒価値を評価することができる。MVPAの手法を用いることによって、個人ごとに脳波の反応のモデルを生成して評価することができる。そのため、対象者が少人数(1名)の場合、個人ごとに好みが異なる場合などに適している。また、対象者が複数人(2名以上)である場合、または、対象者が少人数(1名)であっても対象物の複数回の刺激提示である場合、ERPの成分の区間の平均を活用することができる。
【0029】
MVPAの場合、評価部102は、脳波によって計測されるERPの成分である、初期成分のN150(150ms前後の陰性成分)、N2(200ms前後の陰性成分)、P300(300ms前後の陽性成分)、LPP(後期陽性成分,late positive potential)潜時の反応に基づいて評価することができる。
【0030】
例えば、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波において初期成分のN150(150ms前後の陰性成分)、N2(200ms前後の陰性成分)で反応があると、対象者30はその対象物が高価または安価であると判別していると判断することができる。
【0031】
例えば、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波においてP300(300ms前後の陽性成分)、LPP(後期陽性成分,late positive potential)潜時で反応があると、対象者30はその対象物が高価または安価であると判別していると判断することができる。
【0032】
[加算平均]
本発明の一実施形態では、評価部102は、対象物の複数回の刺激提示によって得られた複数の脳波を加算平均することによって情緒価値を評価することができる。つまり、1人の対象者による複数回分の脳波、あるいは、複数人の対象者による対象物の1回分の刺激提示によって得られた脳波(なお、計算上可能だが、脳波の個人差を考慮すると現実的ではない)または対象物の複数回分の刺激提示によって得られた脳波が用いられる。
【0033】
加算平均の場合、評価部102は、脳波によって計測されるERPの成分である、中心-頭頂部のN2(200ms前後の陰性成分)、後頭部のP300(300ms前後の陽性成分)-LPP(後期陽性成分,late positive potential)区間の反応に基づいて評価することができる。
【0034】
例えば、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波において中心-頭頂部のN2(200ms前後の陰性成分)の反応が大きいと、対象者30はその対象物が高価であると感じていると判断することができる。逆に、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波において中心-頭頂部のN2(200前後の陰性成分)の反応が小さいと、対象者30はその対象物が安価であると感じていると判断することができる。
【0035】
例えば、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波において後頭部のP300(300ms前後の陽性成分)-LPP(後期陽性成分,late positive potential)区間の反応が大きいと、対象者30はその対象物が高価であると感じていると判断することができる。逆に、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波において後頭部のP300(300ms前後の陽性成分)-LPP(後期陽性成分,late positive potential)区間の反応が小さいと、対象者30はその対象物が安価であると感じていると判断することができる。
【0036】
このように、本発明の一実施形態では、対象者30が、対象物の外観をもとに、対象物が2つのカテゴリのうちのいずれのカテゴリに属するかを判定するだけで、対象物が対象者に提供する情緒価値(例えば、対象者30が対象物を高価または安価であると感じていること)を客観的に評価することができる。
【0037】
<<使用・不使用の評価>>
[加算平均]
次に、使用・不使用の評価について説明する。本発明の一実施形態では、評価部102は、対象物の複数回の刺激提示によって得られた複数の脳波を加算平均することによって、対象者30が対象物を使用したことがあるか否かを評価することができる。つまり、1人の対象者による複数回分の脳波、あるいは、複数人の対象者による対象物の1回分の刺激提示によって得られた脳波(なお、計算上可能だが、脳波の個人差を考慮すると現実的ではない)または対象物の複数回分の刺激提示によって得られた脳波が用いられる。
【0038】
例えば、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波において中心部のN2(200ms前後の陰性成分)の反応が大きいと、対象者30がその対象物を使用したことがないと判断することができる。逆に、評価部102は、対象者30が対象物を二肢弁別中の脳波において中心部のN2(200ms前後の陰性成分)の反応が小さいと、対象者30がその対象物を使用したことがあると判断することができる。
【0039】
例えば、評価部102は、対象者30が対象物(例えば、安価な商品(スキンケア用の化粧品等)を二肢弁別中の脳波において中心-頭頂部のP300(300ms前後の陽性成分)-LPP(後期陽性成分,late positive potential)区間の反応が大きいと、対象者30がその対象物を使用したことがないと判断することができる。逆に、評価部102は、対象者30が対象物(例えば、安価な商品(スキンケア用の化粧品等))を二肢弁別中の脳波において中心-頭頂部のP300(300ms前後の陽性成分)-LPP(後期陽性成分,late positive potential)区間の反応が小さいと、対象者30がその対象物を使用したことがあると判断することができる。
【0040】
このように、本発明の一実施形態では、対象者30が対象物を使用したことがあるか否かを評価することもできるので、対象物の情緒価値が対象者30の使用に依拠するものであるか否かを判断することができる。
【0041】
例えば、対象者30が対象物を使用したことがないと評価され、かつ、対象者30はその対象物が高価であると感じていると評価された場合には、その対象物の情緒価値(この場合、高価・安価)は対象者30の使用に依拠していないと想定することができる。このような対象物は、新規の顧客にアピールできる商品であると考えられる。
【0042】
例えば、対象者30が対象物を使用したことがあると評価され、かつ、対象者30はその対象物が高価であると感じていると評価された場合には、その対象物の情緒価値(この場合、高価・安価)は対象者30の使用に依拠していると想定することができる。このような対象物は、既存の顧客(つまり、既に商品を使用した経験がある顧客)にアピールできる商品であると考えられる。
【0043】
<方法>
図5は、本発明の一実施形態に係る情緒価値を評価する処理のフローチャートである。
【0044】
ステップ101(S101)において、脳波取得部101は、対象物を二肢弁別するときの対象者30の脳波を取得する。
【0045】
ステップ102(S102)において、評価部102は、S101で取得された対象者30の脳波から、対象物が対象者30に提供する情緒価値を評価する。なお、評価部102は、S101で取得された対象者30の脳波から、対象者30が対象物を使用したことがあるか否かを評価することもできる。
【0046】
<効果>
このように、本発明の一実施形態では、対象者が、対象物の外観をもとに、対象物が2つのカテゴリのうちのいずれのカテゴリに属するかを判定するだけで、二肢弁別中の脳波から、対象物が対象者に提供する情緒価値や使用・不使用を評価することができる。脳の反応は潜在的なものであるので、対象者が感じていることを客観的に評価することができる。
【0047】
例えば、対象者は二肢弁別のために対象物を注意深く見るので、高い精度で評価することができる。また、対象物を見て二肢弁別するという行動は、普段の商品の選択の行動に近いので、自然な状況下において評価することができる。
【0048】
例えば、対象者は、対象物を二肢弁別するだけであるので(つまり、対象者は、高価であると思うか安価であると思うか等を直接的に尋ねられるわけではない)、対象者が潜在的に感じていることを得ることができる。
【0049】
例えば、同一のカテゴリに属する種々の商品を対比することによって、脳の情報処理過程を反映する活動の信号雑音比が向上し、対象者は対象物のわずかな差異を見い出すことができるようになるので、高い精度で評価することができる。対象者は、種々の商品を対比することによって、覚醒水準を維持し、眠くなりにくく飽きにくいため、高い精度で評価することができる。
【0050】
<実験>
ここで、対象者30の脳波によって計測されるERPの成分と、対象物が対象者30に提供する情緒価値と、の関係が見い出された実験について説明する。
【0051】
被験者は、以下の(1)~(8)の対象物を二肢弁別した。本実験では、(1)~(8)の対象物のそれぞれが40回ずつ表示された(つまり、320回の二肢弁別がなされた)。(1)~(8)の対象物の画像は、無作為の順序で表示された。各画像は1秒間表示され、次の画像が表示されるまでの間隔は1秒間であった。
【0052】
(1)スキンケア用の化粧品のカテゴリに属し、かつ、高価であり、かつ、被験者が使用したことがあるもの。
(2)スキンケア用の化粧品のカテゴリに属し、かつ、一般的な価格であり(高価ではなく)、かつ、被験者が使用したことがあるもの。
(3)スキンケア用の化粧品のカテゴリに属し、かつ、高価であり、かつ、被験者が使用したことがないもの。
(4)スキンケア用の化粧品のカテゴリに属し、かつ、一般的な価格であり(高価ではなく)、かつ、被験者が使用したことがないもの。
(5)リップスティックのカテゴリに属し、かつ、高価であり、かつ、被験者が使用したことがあるもの。
(6)リップスティックのカテゴリに属し、かつ、一般的な価格であり(高価ではなく)、かつ、被験者が使用したことがあるもの。
(7)リップスティックのカテゴリに属し、かつ、高価であり、かつ、被験者が使用したことがないもの。
(8)リップスティックのカテゴリに属し、かつ、一般的な価格であり(高価ではなく)、かつ、被験者が使用したことがないもの。
【0053】
本実験において、MVPA(Multivariate Pattern Analysis)の手法を用いることによって、高価な対象物と一般的な価格(高価ではない)対象物では、被験者が対象物を二肢弁別中の脳波の初期成分のN150(150ms前後の陰性成分)、N2(200ms前後の陰性成分)において違いが見られた。また、MVPA(Multivariate Pattern Analysis)の手法を用いることによって、高価な対象物と一般的な価格(高価ではない)対象物では、被験者が対象物を二肢弁別中の脳波のP300(300ms前後の陽性成分)、LPP(後期陽性成分,late positive potential)潜時において違いが見られた。
【0054】
本実験において、複数の脳波を加算平均することによって、被験者が高価なリップスティックを二肢弁別中の脳波において、中心-頭頂部のN2(200ms前後の陰性成分)が大きく反応することが見い出された。また、複数の脳波を加算平均することによって、被験者が高価なリップスティックを二肢弁別中の脳波において、後頭部のP300(300ms前後の陽性成分)-LPP(後期陽性成分,late positive potential)区間が大きく反応することが見い出された。
【0055】
さらに、本実験では、対象者30の脳波によって計測されるERPの成分と、対象者30が対象物を使用したことがあるか否かと、の関係が見い出された。
【0056】
本実験において、複数の脳波を加算平均することによって、被験者が使用したことがないスキンケア用の化粧品を二肢弁別中の脳波において、中心部のN2(200ms前後の陰性成分)が大きく反応することが見い出された。また、複数の脳波を加算平均することによって、被験者が使用したことがない一般的な価格である(高価ではない)スキンケア用の化粧品を二肢弁別中の脳波において、中心-頭頂部のP300(300ms前後の陽性成分)-LPP(後期陽性成分,late positive potential)区間が大きく反応することが見い出された。
【0057】
このような実験の結果を用いて、評価装置10は、対象物が対象者30に提供する情緒価値を評価したり、対象者30が対象物を使用したことがあるか否かを評価したりすることができる。
【0058】
<ハードウェア構成>
図6は、本発明の一実施形態に係る評価装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。評価装置10は、CPU(Central Processing Unit)1、ROM(Read Only Memory)2、RAM(Random Access Memory)3を有する。CPU1、ROM2、RAM3は、いわゆるコンピュータを形成する。また、評価装置10は、補助記憶装置4、表示装置5、操作装置6、I/F(Interface)装置7、ドライブ装置8を有することができる。なお、評価装置10の各ハードウェアは、バスBを介して相互に接続されている。
【0059】
CPU1は、補助記憶装置4にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。
【0060】
ROM2は、不揮発性メモリである。ROM2は、補助記憶装置4にインストールされている各種プログラムをCPU1が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM2はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0061】
RAM3は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM3は、補助記憶装置4にインストールされている各種プログラムがCPU1によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0062】
補助記憶装置4は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0063】
表示装置5は、評価装置10の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0064】
操作装置6は、対象者30が評価装置10に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0065】
I/F装置7は、ネットワークに接続し、他の装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0066】
ドライブ装置8は記憶媒体9をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体9には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体9には、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0067】
なお、補助記憶装置4にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体9がドライブ装置8にセットされ、該記憶媒体9に記録された各種プログラムがドライブ装置8により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置4にインストールされる各種プログラムは、I/F装置7を介して、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 評価装置
20 脳波測定装置
30 対象者
101 脳波取得部
102 評価部
103 提示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6