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特開2023-9286歯科用グラスアイオノマーセメント液及び歯科用グラスアイオノマーセメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009286
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】歯科用グラスアイオノマーセメント液及び歯科用グラスアイオノマーセメント
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/889 20200101AFI20230112BHJP
   A61K 6/16 20200101ALI20230112BHJP
   A61K 6/836 20200101ALI20230112BHJP
【FI】
A61K6/889
A61K6/16
A61K6/836
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184612
(22)【出願日】2022-11-18
(62)【分割の表示】P 2020569372の分割
【原出願日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019013735
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森 大三郎
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA01
4C089BA12
4C089BE02
4C089BE03
4C089CA03
4C089CA07
(57)【要約】
【課題】臨床使用上適切な操作余裕時間を確保しながら、物理的強度の高いセメント硬化体が得られる歯科用グラスアイオノマーセメント液を提供する。
【解決手段】ポリカルボン酸系重合体、水、及び減水剤を含有する歯科用グラスアイオノマーセメント液とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系重合体、水、及び減水剤を含有する歯科用グラスアイオノマーセメント液。
【請求項2】
ポリカルボン酸系重合体、水、減水剤、及びアルミノシリケートガラスを含有する歯科用グラスアイオノマーセメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミノシリケートガラスを主成分とする歯科用グラスアイオノマーセメント粉末成分と混合して用いる歯科用グラスアイオノマーセメント液、及び歯科用グラスアイオノマーセメントに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用グラスアイオノマーセメントはポリカルボン酸等の酸を主成分としたポリマー酸と、グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末とを水の存在下で反応させ硬化させることで使用される。グラスアイオノマーセメントは生体に対する親和性が極めて良好であり、硬化体が半透明で審美性に優れている。また、グラスアイオノマーセメントはエナメル質や象牙質等の歯質に対して優れた接着力を有しており、更にはガラス粉末中にフッ素が含まれている場合にはそのフッ素による抗齲蝕作用があること等の優れた特性を有している。よって、グラスアイオノマーセメントは、歯科分野では齲蝕窩洞の充填,クラウン・インレー・ブリッジや矯正用バンドの合着,窩洞の裏層,根管充填用シーラー,支台築造や予防填塞等に広く使用されている材料である。
【0003】
歯科用グラスアイオノマーセメントの形態としては、フルオロアルミノシリケートガラスを含む粉末成分とポリカルボン酸系重合体を含む液体成分とから構成されるものが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。このセメントは、粉末成分と液体成分とを混合練和して練和物とし治療部位に適用した後硬化させて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-91689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、物理的強度の高い歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化体を得るためには、アルミノシリケートガラスを含む粉末成分とポリカルボン酸系重合体を含む液体成分とを混合練和する際に粉末成分の比率を高くすることが考えられる。しかしながら、粉末成分の比率を高くするとセメントの硬化が速くなりすぎて、臨床で使用する際の時間的な余裕がなくなるという問題があった。すなわち、臨床使用上適切な操作余裕時間を確保しながら、物理的強度の高いセメント硬化体を得ることは困難であった。
【0006】
そこで本発明は、臨床使用上適切な操作余裕時間を確保しながら、物理的強度の高いセメント硬化体が得られる歯科用グラスアイオノマーセメント液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ポリカルボン酸系重合体、水、及び減水剤を含有する歯科用グラスアイオノマーセメント液である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る歯科用グラスアイオノマーセメント液によれば、臨床使用上適切な操作余裕時間を確保しながら、物理的強度の高いセメント硬化体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
<歯科用グラスアイオノマーセメント液>
本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメント液は、ポリカルボン酸系重合体、水、及び減水剤を有する。
【0010】
ポリカルボン酸系重合体は、後述する粉末成分に含まれるアルミノシリケートガラス粉末との反応のために必要な成分である。歯科用グラスアイオノマーセメント液と粉末成分とを混合し練和することにより、アルミノシリケートガラス粉末から溶出したアルミニウムイオンとポリカルボン酸系重合体の共役塩基がイオン架橋する酸塩基反応が起こり、硬化する。
【0011】
ポリカルボン酸系重合体は、α-β不飽和モノカルボン酸又はα-β不飽和ジカルボン酸の重合体である。例えば、アクリル酸,メタクリル酸,2-クロロアクリル酸,3-クロロアクリル酸,アコニット酸,メサコン酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸,グルタコン酸,シトラコン酸の中から選ばれた1種以上を含む共重合体又は単独重合体がポリカルボン酸系重合体の例として挙げられる。これらは2種類以上用いてもよい。
【0012】
ポリカルボン酸系重合体は、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を含まないものであることが好ましい。
【0013】
ポリカルボン酸系重合体は、質量平均分子量が5,000~40,000であるものが好ましい。質量平均分子量が5,000以上であると、硬化体の物理的強度が高くなり、また歯質への接着力も向上する。質量平均分子量が40,000以下であると、歯科用グラスアイオノマーセメント液が適度な粘度となり練和しやすくなる。
【0014】
ポリカルボン酸系重合体の配合量は、歯科用グラスアイオノマーセメント液中に5~60質量%であることが好ましい。ポリカルボン酸系重合体の配合量が5質量%以上であると、歯科用グラスアイオノマーセメントとしての特徴である歯質接着性が向上する。ポリカルボン酸系重合体の配合量が60質量%以下であると硬化体の耐久性が向上する。より好ましくは、20~50質量%である。
【0015】
水は、アルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸系重合体との酸塩基反応のために必要な成分である。
【0016】
水の配合量は、他の成分の残部であればよいが、歯科用グラスアイオノマーセメント液中に30~80質量%であることが好ましい。水の配合量が30質量%以上であると、練和性が向上する。水の配合量が80質量%以下であると、硬化体の物理的強度が高くなる。より好ましくは、40~70質量%である。
【0017】
減水剤は、歯科用グラスアイオノマーセメント液及び粉末成分との混合練和による酸塩基反応において、粉末成分の比率を高くしても、セメントの硬化が速くなりすぎることを抑制する効果をもたらす。
【0018】
減水剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩系,オキシカルボン酸塩系,ナフタレンスルホン酸塩系,メラミンスルホン酸塩系,ポリスチレンスルホン酸塩系,ポリカルボン酸塩系等の減水剤が挙げられる。
【0019】
より具体的には、例えば、リグニンスルホン酸塩,オキシカルボン酸塩,ナフタレンスルホン酸塩,メラミンスルホン酸塩,ポリスチレンスルホン酸塩,ポリカルボン酸塩等の減水剤が挙げられる。
【0020】
ポリカルボン酸塩系の減水剤としては、α-β不飽和モノカルボン酸の重合体からなる構造単位、若しくはα-β不飽和ジカルボン酸の重合体からなる構造単位を含む重合体又は共重合体であることが好ましく、これらは水溶性塩であってもよい。
【0021】
ポリカルボン酸塩系の減水剤としてより具体的には、例えば、炭素数が5~6の鎖状オレフィンとエチレン性不飽和カルボン酸無水物との共重合体の水溶性塩、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の水溶性塩、末端にスルホン基を有する(メタ)アクリル酸アミドとアクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の水溶性塩、スルホン基を有する単量体と(メタ)アクリル酸とその他の単量体の共重合体の水溶性塩、スルホン基で置換された芳香族環を有する単量体とマレイン酸との共重合体の水溶性塩、末端にスルホン基を有する単量体とポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルとポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エーテルと(メタ)アクリル酸との共重合体の水溶性塩、及びポリオキシエチレン鎖を有する単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体の水溶性塩等が挙げられる。これらは2種以上用いてもよい。
【0022】
上記において、ポリオキシエチレン鎖は(-(OC-H))と表すことができる。ここでnはポリオキシエチレン単位構造の繰り返し数であり、50~200の範囲であることが好ましく、nが80~190であることがより好ましく、nが120~180であることがさらに好ましい。
【0023】
ポリカルボン酸塩系の減水剤の市販品としては、例えば、Melflux(登録商標。以下同様。) AP 101F、Melflux 2641F、Melflux 2651F、Melflux 5581F、Melflux 4930F、Melflux 6681F、Melflux BF 11F、Melflux BF 11F(FM)(以上、SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
【0024】
メラミンスルホン酸塩系の減水剤の市販品としては、例えば、MELMENT F10M、MELMENT F4000(以上、SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
【0025】
ナフタレンスルホン酸塩系の減水剤の市販品としては、例えば、POWERCON-100(SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
【0026】
リグニンスルホン酸塩系の減水剤の市販品としては、例えば、SODIUM LIGNOSULFNATE ARBO N18、NORLIG SA(以上、SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
【0027】
減水剤の配合量は、歯科用グラスアイオノマーセメント液中に0.01~10質量%であることが好ましい。減水剤の配合量が0.01質量%以上であるとセメントの硬化が速くなりすぎることが抑制されて操作余裕時間が長くなる。減水剤の配合量が10質量%以下であると臨床使用上の操作性を確保しやすくなる。減水剤の配合量はより好ましくは0.1~5質量%であり、さらに好ましくは0.5~3.5質量%である。
【0028】
本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメント液は、さらにpH緩衝成分を含んでもよい。歯科用グラスアイオノマーセメント液がpH緩衝成分を含むことにより、低いpH(酸性条件)を維持しやすくなり、硬化反応が円滑に進行しやすくなる。
【0029】
pH緩衝成分としては、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、乳酸、酪酸、バルビツール酸、リン酸、酢酸、及びシュウ酸、並びにこれらの水溶性塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。
【0030】
pH緩衝成分を含有する場合の配合量は、歯科用グラスアイオノマーセメント液中に0.1~10質量%であることが好ましい。pH緩衝成分の配合量が0.1質量%以上であると臨床使用上の操作余裕時間を確保しやすいという利点がある。pH緩衝成分の配合量が15質量%以下であるとシャープに硬化するという利点がある。pH緩衝成分の配合量はより好ましくは1~10質量%である。
【0031】
本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメント液には、さらにシリカ等の充填材、(メタ)アクリレート、増粘剤等を配合することも可能である。これにより性状をペーストにすることが可能であり、操作性を向上させることができる。
【0032】
なお本願明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各種モノマー、オリゴマーあるいはプレポリマーを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する。また、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、メタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基を意味する。
<粉末成分>
粉末成分は、本実施形態に係る歯科用グラスアイオノマーセメント液と混合して用いられ、歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化体を与える。
【0033】
粉末成分は、アルミノシリケートガラス粉末を含む。
【0034】
アルミノシリケートガラス粉末は、ガラスを構成する成分としてアルミニウム及びケイ素を含む。このため、歯科用グラスアイオノマーセメント液と粉末成分を混合すると、アルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸系重合体の酸塩基反応が発生する。この酸塩基反応により、アルミノシリケートガラス粉末から溶出したアルミニウムイオンとポリカルボン酸系重合体の共役塩基がイオン架橋し、硬化する。
【0035】
アルミノシリケートガラス粉末は、ガラスを構成する成分としてさらにフッ素を含む、フルオロアルミノシリケートガラスであることが好ましい。フッ素を含むことにより歯科用グラスアイオノマーセメントのう蝕防止効果が向上する。
【0036】
アルミノシリケートガラス粉末は、ガラスを構成する成分としてさらにカルシウム、リン、ストロンチウム、ランタン、ナトリウム、カリウム、窒素、マグネシウムバリウム、リン、ホウ素、ジルコニウム、タンタル等を含んでもよい。
【0037】
アルミノシリケートガラス粉末の粒径は、平均粒径が0.02~20μmであることが好ましい。平均粒径が20μmを越えると充填用セメントとして使用する際の舌触りが悪くなったり、耐摩耗性が低下したりする傾向がある。一方、平均粒径が0.02μm未満の微粉では練和が極端に困難となり操作性が低下する傾向がある。なお、この平均粒径とは、長径と短径の平均値(長短平均径)である。
【0038】
アルミノシリケートガラス粉末の屈折率ndは、1.42~1.47の範囲にあることが好ましい。屈折率ndがこの範囲内であれば、実使用上有用な歯科用グラスアイオノマーセメントのマトリックス成分の屈折率nd(約1.42)との差が小さくなり、得られる歯科用グラスアイオノマーセメント硬化体の透明性が高くなる。
【0039】
粉末成分は、歯科用グラスアイオノマーセメント液と同様に、さらにポリカルボン酸粉末を含んでもよい。粉末成分もポリカルボン酸粉末を含むことにより、操作性が向上する。
【0040】
粉末成分中にポリカルボン酸粉末が含有される場合のポリカルボン酸粉末の配合量は0.1~10質量%であることが好ましい。
【0041】
本実施形態の粉末成分に、さらに水や(メタ)アクリレート等を配合させてもよい。これにより性状をペーストにすることが可能であり、操作性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメント液、及び粉末成分の少なくとも一方が(メタ)アクリレートを含む場合、さらに歯科用グラスアイオノマーセメント液、及び粉末成分の少なくとも一方に重合開始剤や光重合開始剤を配合させてもよい。これにより、光照射等により(メタ)アクリレートを重合させることが可能なレジン強化型グラスアイオノマーセメントとすることができ、さらに物理的強度の高いセメント硬化体を得ることができる。
【0043】
本実施形態の歯科用グラスアイオノマーセメント液、及び粉末成分の少なくとも一方には、必要に応じて、さらに造影剤、抗菌剤、蛍光剤、香料、顔料等を適宜配合することができる。
【0044】
<歯科用グラスアイオノマーセメントの練和物の調製>
歯科用グラスアイオノマーセメントの練和物を調製する際の、歯科用グラスアイオノマーセメント液に対する粉末成分の質量比(粉液比)は、1~5であることが好ましい。粉液比が1以上であると、歯科用セメントの硬化体の物理的強度が向上する。粉液比が5以下であると、歯科用セメントの操作性が向上する。より好ましい粉液比は3~4.5であり、さらに好ましい粉液比は3.2~4である。
【0045】
歯科用グラスアイオノマーセメントは、粉末成分と液体成分とを混合練和して練和物とし治療部位に適用した後硬化させて使用する。ここで、練和物が硬化体となるまでに、スパチュラ等で練和物を治療部位まで移動させ、さらに形態を整える必要がある。
【0046】
本発明においては、練和物の形態を整えることができなくなるまでの練和開始からの時間を「操作余裕時間」と定義する。
【0047】
臨床使用上適切な操作余裕時間としては、例えば、75秒以上600秒(10分)以下であり、より好ましくは90秒以上360秒(6分)以下である。
【0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0049】
<アルミノシリケートガラス粉末の作製>
シリカ27.5g、アルミナ12.7g、フッ化アルミニウム16.7g、フッ化ストロンチウム18.6g、リン酸アルミニウム8.8g、フッ化ナトリウム4.2g、フッ化カリウム5.6g、フッ化ランタン5.9gを乳鉢で十分に混合した。得られた混合物
を磁性坩堝に入れて電気炉内に静置した。電気炉を昇温し1300℃で溶解して十分均質化した後、水中に流し出し塊状のアルミノシリケートガラスとした。得られた塊状のガラスをボールミルで20時間粉砕した後、120メッシュの篩を通過させ、アルミノシリケートガラス粉末を得た。
<粉末成分の調製>
前記アルミノシリケートガラス粉末100質量部に対して、1%リン酸アルミニウム水溶液100質量部を混合しスラリーを作製し120℃で乾燥させた。得られた粉末に対して、ポリアクリル酸粉末(平均分子量:30,000)を3質量%となるように混合し、粉末成分を得た。
<歯科用グラスアイオノマーセメント液の調製>
表1に示した配合にて各成分を混合し、実施例1~13、比較例1,2の歯科用グラスアイオノマーセメント液を調製した。なお、配合量の単位は質量%である。
【0050】
なお、表1中の成分の詳細は以下のとおりである。
ポリアクリル酸粉末: 平均分子量25,000のポリアクリル酸粉末(富士フイルム和光純薬製)
Melflux 5581F: SKWイーストアジア製のポリオキシエチレン鎖を有するメタクリル酸とアクリル酸との共重合体の水溶性塩
Melflux 4930F: SKWイーストアジア製のポリオキシエチレン鎖を有するメタクリル酸とアクリル酸との共重合体の水溶性塩
Melment F4000: SKWイーストアジア製のポリオキシエチレン鎖を有するメタクリル酸とアクリル酸との共重合体の水溶性塩
<操作余裕時間>
23℃、50%RHに調整した恒温室内にて、実施例1~13、比較例1,2の歯科用グラスアイオノマーセメント液、及び粉末成分を表1に示した粉液比にて、スパチュラを用いて混合し、30秒間練和した。
【0051】
練和物を一塊に集め、練和開始から75秒後にスパチュラを付着させて引っ張り上げた際の付着具合を確認した。以後7.5秒毎にスパチュラへの付着具合を確認し、練和物がスパチュラに付着しなくなるか、付着しても練和物の形態を整えることができなくなった練和開始からの時間を操作余裕時間とした。
【0052】
操作余裕時間の判定基準は以下の通りである。
【0053】
優:操作余裕時間が90秒以上360秒(6分)以下である場合
良:操作余裕時間が75秒以上90秒未満である場合、又は、360秒を超え、600秒(10分)以下である場合
不可:操作余裕時間が75秒未満である場合、又は、600秒を超える場合
<三点曲げ強度試験>
実施例1~13、比較例1,2の歯科用グラスアイオノマーセメント液、及び粉末成分を表1に示した粉液比にて混合し練和した。練和物を2mm×2mm×25mmの空洞が作られたステンレス型内に填入し、セロファンを介してガラス板にて圧接し、1時間後に取り出して角柱型の硬化体を得た。得られた硬化体を37℃の蒸留水に24時間浸漬した後、#320の耐水研磨紙で研磨して試験体とした。
【0054】
得られた試験体について、万能試験機(商品名:オートグラフ,島津製作所社製)を使用してクロスヘッドスピード1mm/min.にて三点曲げ強度試験を行った。
【0055】
三点曲げ強度の判定基準は、以下の通りである。
【0056】
優:三点曲げ強度が40MPa以上である場合
良:三点曲げ強度が35MPa以上40MPa未満である場合
不可:三点曲げ強度が35MPa未満である場合
表1に、操作余裕時間及び三点曲げ強度試験の評価結果を示す。
【0057】
【表1】
表1より、実施例1~13の歯科用グラスアイオノマーセメント液を用いた場合には、操作余裕時間、三点曲げ強度の何れの評価結果も優又は良となった。この結果より、臨床使用上適切な操作余裕時間を確保しながら、物理的強度の高いセメント硬化体が得られることがわかる。
【0058】
一方、比較例の歯科用グラスアイオノマーセメント液を用いた場合について、粉液比が3.4の場合には、三点曲げ強度が低い結果となった(比較例1)。また、粉液比が3.8の場合には、硬化が速すぎて練和すること自体出来ず、操作余裕時間及び三点曲げ強度の測定もできなかった(比較例2)。
【0059】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
【0060】
本願は、日本特許庁に2019年1月30日に出願された基礎出願2019-013735号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。