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  • 特開-乳化組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092875
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】乳化組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20230627BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230627BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20230627BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230627BHJP
   A23L 2/62 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 39/06 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
A61K31/122
A61K9/10
A61K47/14
A23L29/10
A23L2/00 F
A23L2/00 L
A61P39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208142
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】小林 悦子
【テーマコード(参考)】
4B035
4B117
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B035LC06
4B035LC16
4B035LE03
4B035LG04
4B035LG07
4B035LG54
4B035LK13
4B035LP21
4B117LC04
4B117LK06
4B117LL06
4B117LP20
4C076AA17
4C076BB01
4C076CC50
4C076DD09F
4C076DD46F
4C076FF16
4C076FF36
4C076GG41
4C206AA02
4C206CB25
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA42
4C206NA03
4C206ZC37
(57)【要約】
【課題】容易に乳化することができ、かつ乳化安定性にも優れたアスタキサンチンを含有する乳化組成物を得ることができる乳化組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】撹拌下で、アスタキサンチン及び乳化剤を含む油相と、水相とを混合し、乳化させることを含み、前記乳化剤が、モノラウリン酸デカグリセリン及びモノミリスチン酸デカグリセリンの少なくともいずれかであり、前記乳化剤を乳化組成物全量に対して1.5質量%以上配合する乳化組成物の製造方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌下で、アスタキサンチン及び乳化剤を含む油相と、水相とを混合し、乳化させることを含み、
前記乳化剤が、モノラウリン酸デカグリセリン及びモノミリスチン酸デカグリセリンの少なくともいずれかであり、
前記乳化剤を乳化組成物全量に対して1.5質量%以上配合することを特徴とする乳化組成物の製造方法。
【請求項2】
前記乳化を70℃超の温度で行う請求項1に記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項3】
前記乳化組成物が液体である請求項1から2のいずれかに記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項4】
前記乳化組成物が飲料である請求項1から3のいずれかに記載の乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチンを含有する乳化組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンは、活性酸素を消去する「抗酸化作用」を有する成分として注目されており、近年では健康食品の原料としても広く流通している。アスタキサンチンは、天然のカロテノイド色素の一種であり、自然界においても広く分布しており、例えば、サケ、マダイ等の魚類、カニ、エビ、オキアミなどの甲殻類、藻類等に多く含まれている。
【0003】
前記アスタキサンチンを含む組成物として、様々な乳化組成物が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
前記提案では、乳化組成物を製造する際に、ホモミキサーやホモジナイザーなどの乳化装置が用いられており、乳化工程が煩雑であるという問題がある。
【0004】
したがって、容易に乳化することができ、かつ乳化安定性にも優れたアスタキサンチンを含有する乳化組成物を得ることができる製造方法の速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/066068号
【特許文献2】特開2020-138943号公報
【特許文献3】特開2009-27958号公報
【特許文献4】特開2011-92083号公報
【特許文献5】特開2008-13751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、容易に乳化することができ、かつ乳化安定性にも優れたアスタキサンチンを含有する乳化組成物を得ることができる乳化組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、アスタキサンチンと、特定の乳化剤を特定量含む油相と、水相とを用いることで、簡単な撹拌により乳化させることができ、かつ得られた乳化組成物の乳化安定性も優れることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 撹拌下で、アスタキサンチン及び乳化剤を含む油相と、水相とを混合し、乳化させることを含み、
前記乳化剤が、モノラウリン酸デカグリセリン及びモノミリスチン酸デカグリセリンの少なくともいずれかであり、
前記乳化剤を乳化組成物全量に対して1.5質量%以上配合することを特徴とする乳化組成物の製造方法である。
<2> 前記乳化を70℃超の温度で行う前記<1>に記載の乳化組成物の製造方法である。
<3> 前記乳化組成物が液体である前記<1>から<2>のいずれかに記載の乳化組成物の製造方法である。
<4> 前記乳化組成物が飲料である前記<1>から<3>のいずれかに記載の乳化組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、容易に乳化することができ、かつ乳化安定性にも優れたアスタキサンチンを含有する乳化組成物を得ることができる乳化組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、組成物が乳化している状態(A)又は乳化していない状態(B、C)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(乳化組成物の製造方法)
本発明の乳化組成物の製造方法は、乳化工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0012】
<乳化工程>
前記乳化工程は、撹拌下で、アスタキサンチン及び乳化剤を含む油相と、水相とを混合し、乳化させる工程である。
【0013】
-油相-
前記油相は、アスタキサンチンと、乳化剤とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0014】
--アスタキサンチン--
本明細書において、アスタキサンチンとは、アスタキサンチン及びその誘導体を総称したものをいう。すなわち、前記乳化組成物は、アスタキサンチンとして、アスタキサンチン及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
前記アスタキサンチンの誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスタキサンキチンのエステルなどが挙げられる。
【0015】
前記アスタキサンチンとしては、植物類、藻類、甲殻類、バクテリア等の天然物に由来するアスタキサンチンの他、常法に従って得られるアスタキサンチンの合成品を用いることもできる。
前記アスタキサンチンは、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌、オキアミなどの培養物から抽出することができる。これらの中でも、品質及び生産性の観点で、ヘマトコッカス藻からの抽出物又はオキアミからの抽出物に由来するアスタキサンチンが好ましく、ヘマトコッカス藻抽出物に由来するアスタキサンチンが特に好ましい。
【0016】
前記ヘマトコッカス藻の具体例としては、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)などが挙げられる。
【0017】
前記ヘマトコッカス藻からの抽出物は、上記のヘマトコッカス藻を、必要に応じて、特開平5-68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム、アルコール(エタノール、メタノール等)などの有機溶剤、又は超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えることによって得ることができる。
【0018】
前記ヘマトコッカス藻からの抽出物におけるアスタキサンチンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記アスタキサンチンは、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0020】
前記アスタキサンチンの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記乳化組成物全量に対して、0.001質量%~0.1質量%が好ましく、0.005質量%~0.05質量%がより好ましく、0.01質量%~0.02質量%が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、より容易に乳化することができ、かつ乳化安定性がより優れる点で、有利である。
【0021】
--乳化剤--
前記乳化剤は、モノラウリン酸デカグリセリン及びモノミリスチン酸デカグリセリンの少なくともいずれかである。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記乳化剤のHLBとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、12~17などが挙げられる。
前記乳化剤は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0022】
前記乳化剤の合計配合量としては、前記乳化組成物全量に対して1.5質量%以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記乳化組成物全量に対して、1.5質量%~3.5質量%が好ましく、1.5質量%~3.0質量%がより好ましく、1.8質量%~2.5質量%が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、より容易に乳化することができ、かつ乳化安定性がより優れる点で、有利である。
【0023】
前記乳化剤として、モノラウリン酸デカグリセリンと、モノミリスチン酸デカグリセリンとを併用する場合の両者の配合比(質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記アスタキサンチンと、前記乳化剤との配合比(質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
--その他の成分--
前記油相におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、飲食品に用いることができる成分を適宜選択することができる。前記油相におけるその他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飲食品に用いることができる成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した乳化剤以外の乳化剤、酸化防止剤、植物油脂、食用油脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記油相におけるその他の成分の前記乳化組成物における配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記油相の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記油相に配合する成分を混合し、加熱して溶解させ、油相とする方法などが挙げられる。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する乳化の際の温度と同様とすることができる。
【0027】
前記油相と後述する水相との合計量を100質量%とした場合における前記油相の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1質量%~10質量%などが挙げられる。
【0028】
-水相-
前記水相は、水を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0029】
--水--
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水(Milli-Q水等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
--その他の成分--
前記水相におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、飲食品に用いることができる成分を適宜選択することができる。前記水相におけるその他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飲食品に用いることができる成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、甘味料、pH調整剤、香料、着色料、消泡剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水相におけるその他の成分の前記乳化組成物における配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
前記水相の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、必要に応じて上記した水相におけるその他の成分を水に投入、混合し、加熱して溶解させ、水相とする方法などが挙げられる。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する乳化の際の温度と同様とすることができる。
【0032】
上述した油相と前記水相との合計量を100質量%とした場合における前記水相の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90質量%~99質量%などが挙げられる。
【0033】
-乳化-
前記乳化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撹拌下で、必要に応じて加温した水相に、必要に応じて加温した油相を投入し、混合する方法などが挙げられる。前記水相は、1回の乳化処理で前記乳化組成物に用いる全量を使用してもよいし、一部を使用し、段階的に乳化処理を行ってもよい。
【0034】
前記乳化の際の温度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃超が好ましく、75℃~90℃がより好ましく、75℃~85℃が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、より容易に乳化することができ、かつ乳化安定性がより優れる点で、有利である。
【0035】
前記撹拌の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マグネティックスターラーを用いる方法、プロペラ撹拌機を用いる方法、パドル撹拌機を用いる方法、パルセーターを用いる方法などが挙げられる。前記撹拌は、上記した方法に用いる手段を備えた製造用タンクにて行うこともできる。
前記撹拌の回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10r.p.m.~800r.p.m.が好ましく、10r.p.m.~500r.p.m.がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、撹拌をより容易に行うことができる点で、有利である。
前記撹拌の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5分間~20分間などが挙げられる。
【0036】
本発明によれば、乳化装置を使用しなくても、簡単な撹拌で乳化させることができる。
本明細書において、前記乳化装置とは、ホモミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、薄膜旋回型高速ミキサーなどのことをいう。
本発明では、前記乳化は、前記乳化装置を用いずに行うことが好ましい。
【0037】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記乳化組成物に任意成分を配合する工程、冷却工程、充填工程などが挙げられる。
【0038】
前記乳化組成物に任意成分を配合する工程における任意成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、飲食品に用いることができる成分を適宜選択することができ、例えば、コラーゲンペプチド、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、乳酸菌、ユビキノン、食物繊維、デキストリン、難消化性デキストリン、中鎖脂肪酸、コメ油、菜種油、大豆油、糖アルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、植物性エキス類、甘味料、酸味料、L-アスコルビン酸及び誘導体とその塩、リボフラビン、シアノコバラミン、チアミン及びその塩、ピリドキシン及びその塩、レチノール及び誘導体、カロテノイド類、トコフェロール及び誘導体、パントテン酸及びその塩、葉酸、ナイアシン及び誘導体、アミノ酸、香料、pH調整剤、着色料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記任意成分の前記乳化組成物における配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
前記冷却工程は、例えば、前記乳化工程を加熱条件下で行った後、前記任意成分を配合する前に行うことができる。前記冷却工程を行うことで、熱により悪影響を受けやすい任意成分がある場合には、その影響を低減することができる。
【0040】
前記充填工程は、前記乳化組成物を容器に充填する工程である。
前記充填の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
前記容器の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
前記乳化組成物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液体が好ましい。
【0042】
前記乳化組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、清涼飲料水、乳飲料、アルコール飲料などの飲料が好ましい。なお、前記飲料には、特定保健用飲料、機能性表示飲料も含まれ、また、液体の医薬品、医薬部外品なども含む。
【0043】
本発明の乳化組成物の製造方法によれば、乳化装置を用いなくても、簡単な撹拌により、アスタキサンチンを含有する乳化組成物を製造することができ、また、乳化安定性にも優れた乳化組成物を製造することができる。
【実施例0044】
以下に試験例、製造例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例、製造例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(試験例1)
表1-1~1-2に記載の乳化剤と、アスタキサンチン製剤(FUJIFILMアスタキサンチン S(アスタキサンチンの含有量20質量%、富士フイルム株式会社製)とを混合し、80℃に加熱し、乳化剤とアスタキサンチンとの混合物とした。なお、前記乳化剤及び前記アスタキサンチンの量は、組成物全体における量を表1-1~1-2に示した。
80℃に加温した水(190mL)を、マグネティックスターラーを用いて200r.p.m.で回転させながら、前記乳化剤とアスタキサンチンとの混合物を投入した。なお、前記乳化剤とアスタキサンチンとの混合物を入れていた容器は、80℃の水5mLで2回共洗いした。
前記乳化剤とアスタキサンチンとの混合物を投入後、80℃を維持し、200r.p.m.で1分間撹拌した。前記撹拌後、25℃で、1分間(以下、「直後」と称することがある。)又は1日間(以下、「翌日」と称することがある。)静置したときの組成物の状態を目視にて確認し、下記の評価基準で評価した。結果を下記の表1-1~1-2に示す。
<評価基準>
○ : 組成物が乳化している状態である。
× : 組成物が乳化していない状態である。
なお、組成物が乳化している状態の一例は、図1中のAであり、組成物が乳化していない状態の一例は、図1中のB及びCである。
【0046】
【表1-1】
【0047】
【表1-2】
【0048】
(試験例2)
試験例1において、乳化剤を表2-1~2-2に記載の乳化剤とし、アスタキサンチン製剤をFUJIFILMアスタキサンチン 10OC(アスタキサンチンの含有量10質量%、富士フイルム株式会社製)とした以外は、試験例1と同様にして組成物を作製し、その状態を評価した。結果を下記の表2-1~2-2に示す。
【0049】
【表2-1】
【0050】
【表2-2】
【0051】
(製造例1)
乳化組成物の一例として、飲料を以下のようにして製造した。
モノミリスチン酸デカグリセリン(DECAGLYN 1-MVEXF)と、アスタキサンチン製剤(FUJIFILMアスタキサンチン S)と、酸化防止剤とを混合し、80℃に加熱し、混合物とした。80℃に加温した水(乳化組成物に用いる水の0.5質量%分)に、前記混合物を加え、撹拌し(撹拌条件:200r.p.m.)、乳化物を得た。なお、前記混合物を入れていた容器は、80℃の水で2回共洗いした。
80℃に加温した水を撹拌しながら、(1)消泡剤と水、(2)前記乳化物、(3)コラーゲンペプチド、糖アルコール、及び甘味料を(1)~(3)の順で投入し、混合した。冷却後、酸味料、L-アスコルビン酸、及び香料を加え、その後容器に充填し、飲料とした。得られた飲料は、製造直後のみならず、翌日においても乳化状態が維持されており、乳化安定性に優れるものであった。
前記飲料における各成分の組成は、以下のとおりである。
・ モノミリスチン酸デカグリセリン 1.85質量%
・ アスタキサンチン製剤 0.069質量%
・ 酸化防止剤 0.1質量%
・ コラーゲンペプチド 6.0質量%
・ 糖アルコール 6.0質量%
・ 甘味料 0.05質量%
・ 酸味料 0.5質量%
・ L-アスコルビン酸 0.1質量%
・ 香料 0.75質量%
・ 消泡剤 0.01質量%
・ 水 84.571質量%
【0052】
上記した試験例及び製造例で用いた乳化剤の詳細は、下記のとおりである。
・ モノラウリン酸デカグリセリン
・ DECAGLYN 1-LVEXF(日本サーファクタント工業社製)
・ SYグリスター ML-750(阪本薬品工業社製)
・ サンソフトQ-12S(太陽化学社製)
・ モノミリスチン酸デカグリセリン
・ DECAGLYN 1-MVEXF(日本サーファクタント工業社製)
・ SYグリスター MM-750(阪本薬品工業社製)
・ モノオレイン酸デカグリセリン
・ DECAGLYN 1-OVEXF(日本サーファクタント工業社製)
・ サンソフトQ-17S(太陽化学社製)
・ モノラウリン酸ペンタグリセリン
・ サンソフトA-121E(太陽化学社製)
・ モノミリスチン酸ペンタグリセリン
・ サンソフトA-141E(太陽化学社製)
・ モノステアリン酸デカグリセリン
・ サンソフトQ-18S(太陽化学社製)
・ モノカプリン酸デカグリセリン
・ SYグリスター MCA-750(阪本薬品工業社製)
・ ショ糖ミリスチン酸エステル
・ リョートーシュガーエステル M-1695(三菱ケミカル社製)
・ ショ糖ステアリン酸エステル
・ リョートーシュガーエステル S-1670(三菱ケミカル社製)
・ レシチン(リン脂質30%)
・ 卵黄レシチン PL-30S(キユーピー社製)
【0053】
以上に示したように、本発明の方法によれば、乳化装置を用いなくても、簡単な撹拌により、アスタキサンチンを含有する乳化組成物を製造することができ、更に得られた乳化組成物は、乳化安定性が優れることが示された。

図1