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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092878
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】空気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
A61L9/20
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208146
(22)【出願日】2021-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】592141765
【氏名又は名称】株式会社久保製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 真由巳
(72)【発明者】
【氏名】中村 守
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH19
4C180LL20
4C180MM10
(57)【要約】
【課題】フィルタを設けなくても細菌やウイルスなどを空気から除去する効率を高くすることができる空気浄化装置を提供する。
【解決手段】気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置1であって、気体を吸引する吸引部20と、吸引部20と外部との間を連通する連通通路11を有し、連通通路11を通過する空気に紫外線を照射する紫外線照射部15を備えた浄化部10と、浄化部10によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、浄化部10の連通通路11内には、連通通路11内を空気が流れる方向において複数の空間に仕切る、多数の貫通孔が形成された複数の分離プレート12が設けられており、紫外線照射部15は、分離プレート12の表面に紫外線を照射する位置に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、
気体を吸引する吸引部と、
該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路を通過する空気に紫外線を照射する紫外線照射部を備えた浄化部と、
該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、
前記浄化部の連通通路内には、
該連通通路内を空気が流れる方向において複数の空間に仕切る、多数の貫通孔が形成された複数の分離プレートが設けられており、
前記紫外線照射部は、
前記分離プレートの表面に紫外線を照射する位置に設けられている
ことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
前記複数の分離プレートは、
前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向に対して傾斜して設置されており、
隣接する分離プレート同士は傾斜が逆になっており、
前記紫外線照射部は、
前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向において、隣接する分離プレートの対向する面間に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記複数の分離プレートは、
隣接する分離プレートの傾斜方向における端縁同士が連結されており、
該連結された端縁と対向する位置に前記紫外線照射部が配置されている
ことを特徴とする請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記複数の分離プレートが連続する一枚のシートを折り曲げて形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記複数の分離プレートは、
貫通孔の開口径が0.1~0.2mm、空隙率が30~50%となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の空気浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引した空気を浄化して排出することができる空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌やウイルスなどが浮遊する空気を吸引して空気を浄化する装置が種々開発されている。かかる空気浄化装置では、吸引した空気をフィルタに通過させることによって空気中の細菌やウイルスなど捕捉することによって空気を浄化するものや空気に紫外線を照射して細菌やウイルスなどを死滅させるものなどがある(例えば、特許文献1~4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5258930号公報
【特許文献2】特開平7-124238号公報
【特許文献3】特開2004-108685号公報
【特許文献4】特許第5258930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、フィルタによってウイルスや細菌を捕捉する装置の場合、フィルタの目つまりなどが生じるため一定期間使用するとフィルタの交換が必要になる。かかるフィルタ交換の際には、捕捉したウイルスや細菌などに交換作業を行う人が触れる可能性もあるためフィルタの交換作業が作業者の負担になる。
一方、空気に紫外線を照射して細菌やウイルスなどを死滅させるものの場合、細菌やウイルスなどに十分な紫外線を照射できない可能性があり、細菌やウイルスなどを死滅させる効率が低くなる可能性が高い。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、フィルタを設けなくても細菌やウイルスなどを空気から除去する効率を高くすることができる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の空気浄化装置は、気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、気体を吸引する吸引部と、該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路を通過する空気に紫外線を照射する紫外線照射部を備えた浄化部と、該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、前記浄化部の連通通路内には、該連通通路内を空気が流れる方向において複数の空間に仕切る、多数の貫通孔が形成された複数の分離プレートが設けられており、前記紫外線照射部は、前記分離プレートの表面に紫外線を照射する位置に設けられていることを特徴とする。
第2発明の空気浄化装置は、第1発明において、前記複数の分離プレートは、前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向に対して傾斜して設置されており、隣接する分離プレート同士は傾斜が逆になっており、前記紫外線照射部は、前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向において、隣接する分離プレートの対向する面間に配置されていることを特徴とする。
第3発明の空気浄化装置は、第2発明において、前記複数の分離プレートは、隣接する分離プレートの傾斜方向における端縁同士が連結されており、該連結された端縁と対向する位置に前記紫外線照射部が配置されていることを特徴とする。
第4発明の空気浄化装置は、第3発明において、前記複数の分離プレートが連続する一枚のシートを折り曲げて形成されていることを特徴とする。
第5発明の空気浄化装置は、第1、第2、第3または第4発明において、前記複数の分離プレートは、貫通孔の開口径が0.1~0.2mm、空隙率が30~50%となるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、分離プレートによって連通通路内に空気をある程度の期間滞留させることができるので、連通通路内の空気に対して紫外線照射部から紫外線を十分に照射できる。したがって、フィルタを設けなくても空気を浄化する効率を高くできる。しかも、フィルタのように定期的な交換が不要であるので、メンテナンス性も向上できる。
第2、第3発明によれば、空気を浄化する効率を高くできる。
第4発明によれば、分離プレートの設置が容易になる。
第5発明によれば、空気の滞留期間を適切にでき、しかも、空気抵抗が大きくなりすぎることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の空気浄化装置1の概略断面図である。
図2】(A)は図1のIIA-IIA線断面図であり、(B)は図1のIIB-IIB線断面図であり(C)は図1のIIC-IIC線断面図である。
図3】他の実施形態の空気浄化装置1の概略断面図である。
図4】(A)は図3のIIA-IIA線断面図であり、(B)は図3のIIB-IIB線断面図であり(C)は図3のIIC-IIC線断面図である。
図5】本実施形態の空気浄化装置1の使用例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の空気浄化装置は、フィルタを使用せずに細菌やウイルスなどを含む気体を浄化する装置であって、細菌やウイルスなどを空気から除去する効率を高くできるようにしたことに特徴を有している。
【0010】
本実施形態の空気浄化装置によって浄化する気体は空気に限られないが、以下では、空気を浄化する場合を説明する。
【0011】
まず、本実施形態の空気浄化装置の詳細を説明する前に、本実施形態の空気浄化装置を使用する状況を説明する。
【0012】
本実施形態の空気浄化装置は、ウイルス等が蔓延している地域やその他の有害な物質が存在する領域で作業を行う場合に、作業者が外気を直接吸わないように、または、作業者が外気と直接接触しないようにするための空気浄化装置として使用することができる。例えば、図5に示すように、作業者が全身を覆う防護服Wを着用したり頭部を覆うマスクを着用したりした場合に、防護服W内やマスク内に空気を供給する装置として使用することができる。逆に、ウイルスなどに感染した人が全身を覆う防護服Wを着用したり頭部を覆うマスクを着用したりした場合には、防護服W内やマスク内からウイルスなどを含む空気を浄化して排出する装置として使用することができる。
【0013】
本実施形態の空気浄化装置の大きさなどはとくに限定されないが、上述した用途で使用する場合には、本実施形態の空気浄化装置1は、作業者等が背負える大きさや、人が引っ張るなどして移動させることができる大きさに形成される。例えば、本実施形態の空気浄化装置1の大きさを、縦200~300mm程度、横150~200mm程度、奥行き80~120mm程度、となるように形成すれば、人が背負って使用することも可能になる。また、本実施形態の空気浄化装置1の大きさを、幅200~300mm程度、奥行き300~500mm程度、高さ400~900mm程度とすれば、一般的なキャリーケース程度の大きさとなるので、人が引っ張るなどして移動させることが可能になる。また、人が背負う場合に比べて人が引っ張るようにすれば、本実施形態の空気浄化装置1に大型の吸引部20を使用できるし、電源も大型化できる。すると、大型の吸引部20を使用すれば後述する分離プレートの圧力損失が大きくても十分な流量を維持できるし、電源を大型化すれば大型の吸引部20であっても長時間の使用が可能となる。
【0014】
なお、本実施形態の空気浄化装置1を背負える状態にする場合、空気浄化装置1をポリウレタンなどで形成されたカバー内に密封した状態で収容しておくことが好ましい。そして、防水性を有するファスナーなどによって、空気浄化装置1を入れるための開口を閉じることができるようにしておけば、作業後に防護服Wなどとともにカバーも消毒液等で殺菌することが可能となる。
【0015】
<本実施形態の空気浄化装置>
つぎに、本実施形態の空気浄化装置1を説明する。
本実施形態の空気浄化装置1は、ケース2と、このケース2内に収容された浄化部10および吸引部20を備えている。
【0016】
<ケース2>
図1に示すように、本実施形態の空気浄化装置1はケース2を備えている。このケース2は、一端部に開口3hが形成された中空な本体部3と、この本体部3の開口3hを塞ぐ蓋部4とを備えている。本体部3は、開口3hと連通された浄化部10が収容される空間3aと、空間3aと仕切り板d1によって分離された吸引部20が収容される空間3bと、を備えている。この空間3bは、仕切り板d1と底板bとの間に形成されており、仕切り板d1に形成された貫通孔h1を通して空間3aに連通されている。また、本体部3は、分離壁d2によって空間3aおよび空間3bと気密に分離された空間3cを備えている。この空間3cは、分離壁d2の底板b近傍に設けられた貫通孔h2を介して空間3cに連通されている。つまり、空間3cを介して、空間3bは開口3hと連通されている。この空間3cが特許請求の範囲にいう排気部に相当する。なお、空間3c内の内面、例えば、分離壁d2側の側面以外の内面に消音材(図示せず)を配置してもよい。消音材を配置すれば、静音効果を得ることができる。
【0017】
また、蓋部4には、貫通孔4a,4bが設けられている。蓋部4の貫通孔4aは本体部3の空間3aに連通されている。言い換えれば、本体部3の空間3aは、蓋部4の吸引口4aを通して外部に連通されている。また、蓋部4の貫通孔4bは本体部3の空間3cに連通されている。言い換えれば、本体部3の空間3cは、蓋部4に設けられた吸引口4bを通して外部に連通されている。
【0018】
なお、空間3cの側方には、分離壁d2および分離壁d3によって空間3a~3cと気密に分離された空間3dが設けられている。この空間3dは、吸引部20や後述する紫外線照射部15を制御する制御機器や電源などが収容される空間(制御機器収納空間)である。なお、制御機器収納空間は、空間3a~3cと気密に分離されていればよく、制御機器収納空間を設ける位置はとくに限定されない。例えば、制御機器収納空間を空間3bの外方、つまり、本体部2の底板bの外方に制御機器収納空間を設けてもよい。
【0019】
なお、空間3cの内面には消音材を配置してもよい。消音材を空間3cの内面に設ければ、静音効果を得ることができる。
【0020】
また、蓋部4の貫通孔4a,4bには、ホースや配管などを取り付けることができる取付管PA,PBを設けてもよい(図1図3参照)。すると、ホースや配管などを空気浄化装置1に着脱することが容易になる。かかる取付管PA,PBを蓋部4の貫通孔4a,4bに取り付ける方法はとくに限定されない。例えば、取付管PA,PBの一端に雄ネジを形成し、蓋部4の貫通孔4a,4bに雌ネジを形成しておく。すると、取付管PA,PBの雄ネジを蓋部4の貫通孔4a,4bの雌ネジに螺合させるだけで、取付管PA,PBを蓋部4に確実に取り付けておくことができるし、取付管PA,PBを蓋部4から簡単に着脱することができる。
【0021】
<浄化部10>
図1に示すように、本体部3の空間3b内には、浄化部10が設けられている。この浄化部10は、空気が流れる連通通路11と、この連通通路11内に設置された分離プレート12と、紫外線を照射する紫外線照射部15と、を備えている。
【0022】
<連通通路11>
この浄化部10は、蓋部4の貫通孔4aと仕切り板d1の貫通孔h1とを連通する連通通路11を備えている。この連通通路11は、連通通路11の蓋部4の貫通孔4a側に設けられた導入部11aと、第一端部が導入部11aに連結された浄化流路11bと、を備えている。
【0023】
図2(A)に示すように、導入部11aは、空間3bの断面と相似形であって、その外面が空間3bの内面と面接触するような大きさに形成されている。つまり、導入部11aによって空間3bは蓋部4の貫通孔4a側の空間(言い換えれば開口3h側の空間)と、仕切り板d1側の空間(言い換えれば空間3b側の空間)と、に分離されている。そして、導入部11aの底部sには、導入部11a内と浄化流路11b内部とを連通する貫通孔gが形成されている。したがって、蓋部4の貫通孔4aから導入された空気は全て浄化流路11bに流入する。
【0024】
図1に示すように、浄化流路11bは、導入部11aの貫通孔gと仕切り板d1の貫通孔h1とを連通するように設けられている。具体的には、浄化流路11bは、第二端部が仕切り板d1の貫通孔h1を覆うように、または、第二端部が仕切り板d1の貫通孔h1と気密に連結されるように設けられている。つまり、導入部11aから浄化流路11b内に流入した空気が、全て、仕切り板d1の貫通孔h1を通って空間11b内に流入するように浄化流路11bは設けられている。
【0025】
<分離プレート12>
この浄化流路11bの内部には、浄化流路11b内部を浄化流路11bの軸方向に沿って複数の空間に仕切る複数の分離プレート12が設けられている。この複数の分離プレート12は、目開きの小さい金網や、開口径が小さい貫通孔が複数形成された金属板等であり、空気を通過させることができるものである。例えば、貫通孔の開口径(目開きや開口の直径)が0.1~0.2mm、空隙率(分離プレート12全面積に対する開口の割合)が30~50%となるように形成されたものが複数の分離プレート12として使用することができる。例えば、金網であれば、線径が0.14~0.18mmのものを使用すれば、目開き0.17~0.33mm、空隙率30~45%程度とすることができる。
【0026】
複数の分離プレート12は、その外縁が浄化流路11bの内面と接触するように設けられており、連通通路10hを通過する空気の全て(または大部分)が各分離プレート12をそれぞれ通過するように設けられている。例えば、図2(B)に示すように、浄化流路11bの断面が矩形(正方形や長方形)に形成されていれば、分離プレート12も断面が矩形に形成され、その外端縁が浄化流路11bの内面と接触するように設けられている。
【0027】
なお、複数の分離プレート12は、浄化流路11bの内面に固定されていてもよいし浄化流路11bの内面に固定されていなくてもよい。複数の分離プレート12を通過する空気が少ないように設置されていればよい。
【0028】
また、図1に示すように、複数の分離プレート12は、その表面が浄化流路11bの軸方向に対して傾斜するように設けられている。具体的には、隣接する分離プレート12の表面の傾きが逆方向になるように複数の分離プレート12は浄化流路11b内に設けられている。しかも、隣接する分離プレート12の傾斜方向の端縁同士が連結されている。例えば、上流側の分離プレート12(図1であれば上側に位置する分離プレート12)における傾斜の下流側(下側)の端縁と下流側の分離プレート12(図1であれば下側に位置する分離プレート12)における傾斜の上流側(上側)の端縁とが連結されている。つまり、図1であれば、浄化流路11bの軸方向に沿って、ジグザグに並ぶように複数の分離プレート12が配設されている。なお、隣接する分離プレート12の対向する表面間のなす角度はとくに限定されないが、例えば、20~60度が好ましく、30~45度がより好ましい。
【0029】
なお、複数の分離プレート12は、連続する一枚のシート(例えば一枚の金網)で形成してもよい。この場合には、複数の分離プレート12を連結する位置でシートを折り曲げれば、一枚のシートでも複数の分離プレート12と同様の構成とすることができる。連続する一枚のシートで複数の分離プレート12を構成すれば、複数の分離プレート12をそれぞれ設置する場合に比べて分離プレートの設置が容易になる。
【0030】
また、分離プレート12は、浄化流路11bの軸方向において複数枚のプレートを重ねて形成してもよい。この場合、分離プレート12を構成する複数枚のプレート同士が接触していてもよいし、隣接するプレート間に若干の隙間ができるように設置してもよい。複数の分離プレート12が連続する一枚のシートで形成されている場合には、複数枚のシートを重ねた状態でシートを折り曲げて設置すればよい。
【0031】
また、複数の分離プレート12の素材はとくに限定されないが、抗菌性が高い銅や銀、亜鉛、ニッケルなどの金属を使用することが望ましい。また、これらの金属の層を他の金属の表面にメッキなどの方法で形成したものを分離プレート12として使用してもよい。
【0032】
<紫外線照射部15>
図1にしめすように、浄化部10には、浄化流路11b内に紫外線を照射する紫外線照射部15が設けられている。より詳しくは、紫外線照射部15は、浄化流路11b内の隣接する分離プレート12の対向する面間の空間12aおよび分離プレート12の対向する面に紫外線を照射するものである。この紫外線照射部15は、紫外線LED17を有する複数のLED部16を備えており、各LED部16は浄化流路11bの内面における隣接する分離プレート12間の部分に設けられている。具体的には、浄化流路11bの内面における分離プレート12の傾斜方向の端縁間に位置する部分に各LED部16は設けられている。したがって、紫外線照射部15は複数のLED部16から紫外線を照射すれば、空間12a内に存在するウイルスや細菌等、また、分離プレート12の表面に付着したウイルスや細菌等を死滅させることができる。つまり、浄化流路11b内を通過する間に、浄化流路11b内を通過する空気に含まれるウイルスや細菌等を死滅させて空気を浄化することができる。
【0033】
なお、浄化流路11bの内面において紫外線照射部15の複数のLED部16を設ける位置はとくに限定されない。しかし、上記のように、浄化流路11bの内面における分離プレート12の傾斜方向の端縁間に位置する部分に設ければ、分離プレート12の表面に紫外線を効率よく照射することができる。
【0034】
また、紫外線照射部15の複数のLED部16を浄化流路11bの内面に取り付ける方法はとくに限定されない。複数のLED部16を浄化流路11bの内面に直接設置してもよいし、図3および図4に示すように、基板18の表面に複数のLED部16を取り付けておき、この基板18を浄化流路11bの外面に取り付ければ、複数のLED部16が上述した位置に配置される構成としてもよい。基板18を設ける構成とする場合には、浄化流路11bの内面においてLED部16を設置する位置にLED部16が通過できる(配置できる)貫通孔を設けてもおく。例えば、浄化流路11bの軸方向に沿って等間隔で貫通孔を設けておく。そして、基板18の表面に、一列に並ぶように、かつ、貫通孔と同じ間隔でLED部16を設けておく。すると、基板18の表面が浄化流路11bの外面に面接触するように基板18を設けるだけで、複数のLED部16をそれぞれ所定の位置に設置することができる。とくに、かかる構成とした場合には、基板18を取り外せばLED部16を交換する作業ができるので、浄化流路11bの内面に直接LED部16を取り付けた場合に比べて、LED部16を交換する作業が容易になる。
【0035】
<吸引部20>
図1に示すように、本体部3の空間3b内には、吸引部20が設けられている。この吸引部20は、蓋部4の貫通孔4aと、浄化部10の連通通路11、仕切り板d1の貫通孔h1、を通して外気を吸引する機能を有するものである。また、吸引部20は、吸引した空気を吸引した空気を分離壁d2の貫通孔h2を通して空間3cに供給できるように設けられている。つまり、吸引部20は、蓋部4の貫通孔4aを通して外気が浄化部10を通過するように吸引し、浄化部10を通過してウイルスや細菌などが殺菌されて浄化された空気を、空間3cと蓋部4の貫通孔4bとを通して外部に排気する機能を有している。この吸引部20は、上記機能を有するものであればとくに限定されないが、例えば、ブロアやポンプ等を採用することができる。
【0036】
本実施形態の空気浄化装置1は、以上のような構成を有しているので、紫外線照射部15のLED部16から紫外線を照射した状態で、吸引部20を作動すれば、吸引した空気を浄化して外部に排出することができる。
【0037】
しかも、本実施形態の空気浄化装置1は、複数の分離プレート12を連通流路11の浄化流路11bに設けており、浄化流路11b内に分離プレート12によって分離された複数の空間12aを設けている。このため、複数の空間12a内に一定の時間空気を滞留させることができるので、複数の空間12a内の空気に紫外線照射部15のLED部16から紫外線を照射すれば、連通流路11の浄化流路11b内を流れる空気に含まれるウイルスや細菌等を殺菌して空気を浄化することができる。また、LED部16から照射される紫外線は分離プレート12の表面にも照射されるので、分離プレート12の表面にウイルスや細菌等が付着しても、そのウイルスや細菌等を死滅させることができる。
【0038】
そして、分離プレート12はウイルスや細菌等を捕捉するヘパフィルタ等の緻密なフィルタに比べて貫通孔の開口径が大きいので目詰り等が生じにくく、長期間使用することが可能である。また、分離プレート12は洗浄すれば元の状態に復帰させて再利用することが可能であるので、ランニングコストも安くなる。
【0039】
<複数のLED部16の点灯制御>
複数のLED部16が複数の紫外線LED17を備えている場合には、複数の紫外線LED17を全て点灯させてもよいが、複数の紫外線LED17を順次点灯させるようにすることが望ましい。例えば、3つの紫外線LED17を設けた場合には、3つの紫外線LED17を順次点灯させれば、フィルタ12に対して常時紫外線が照射された状態を維持しつつ、LED部16の発熱量を抑制することができる。具体的には、1つ目の紫外線LED17を約20秒間点灯し、1つ目の紫外線を消灯する前に2つ目の紫外線LED17を点灯させる。ついで、2つ目の紫外線LED17を約20秒間点灯し、2つ目の紫外線を消灯する前に3つ目の紫外線を点灯させる。そして、3つ目の紫外線を約20秒間点灯し、3つ目の紫外線を消灯する前に再び1つ目の紫外線を点灯させる。そして、1つ目の紫外線LED17を約20秒間点灯した後、1つ目の紫外線を消灯する前に再び2つ目の紫外線LED17を点灯させる。そして、2つ目の紫外線LED17を約20秒間点灯した後、2つ目の紫外線を消灯する前に再び3つ目の紫外線LED17を点灯させる。
【0040】
上記のように順次3つの紫外線LED17の点灯と消灯を繰り返せば、浄化流路11b内の隣接する分離プレート12の対向する面間の空間12aおよび分離プレート12の対向する面に対して常時紫外線が照射された状態を維持しつつ、LED部16の発熱量を抑制することができる。
【0041】
上記例では、LED部16に紫外線LED17を3つ設けた場合を説明したが、LED部16に紫外線LED17を設ける数はとくに限定されず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。LED部16に紫外線LED17を2つや4つ以上設ける場合でも、浄化流路11b内の隣接する分離プレート12の対向する面間の空間12aおよび分離プレート12の対向する面に対して常時紫外線が照射された状態を維持されるように、複数の紫外線LED17を順次点灯させるようにすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の空気浄化装置は、例えば老人福祉施設や病院、企業や大学などの研究施設や養鶏場・養豚場・牛の飼育場等において、室内の空気を浄化する装置や、ウイルス等が蔓延している場所で作業を行う作業者が使用する空気浄化装置に適している。また、大規模地震が大都会で発生した場合など、劣悪な環境で作業する人々を危険な粉じんから守ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 空気浄化装置
10 浄化部
11 連通通路
12 フィルタ
15 紫外線照射部
20 吸引部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、
一端部に開口が形成された、仕切り板によって開口側の空間と底部側の空間に分離されかつ前記仕切り板に形成された貫通孔によって分離された空間が連通されている中空な本体部と、本体部の開口を塞ぐ蓋部と、を有するケースと、
前記本体部の底部側の空間に収容された気体を吸引する吸引部と、
前記本体部の開口側の空間に収容された、該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路を通過する空気に紫外線を照射する紫外線照射部を備えた浄化部と、
該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、
前記浄化部の連通通路は、
前記本体部の開口側の空間の断面と相似形であってその外面が該空間の内面と面接触するような大きさに形成され、前記本体部の開口側の空間を開口側の空間と前記仕切り板側の空間に分離する導入部と、
第一端部が前記導入部に形成された貫通孔を覆いかつ第二端部が仕切り板に形成された貫通孔を覆うように設けられた、前記導入部の貫通孔と前記仕切り板の貫通孔とを連通する浄化流路と、を備えており、
前記浄化部の浄化流路内には、
浄化流路内を空気が流れる方向において複数の空間に仕切る、多数の貫通孔が形成された複数の分離プレートが設けられており、
前記複数の分離プレートは、
前記浄化流路内を空気が流れる方向に対して傾斜して設置されており、
隣接する分離プレート同士は傾斜が逆になっており、
前記浄化流路において前記複数の分離プレートの一方の面と対向する側面と該一方の面と逆側の面と対向する側面には、該浄化流路内を空気が流れる方向に沿って間隔を空けてかつ隣接する分離プレート間に位置するように貫通孔が形成されており、
前記紫外線照射部は、
基板と、
該基板上に間隔を空けて設けられた複数のLED部と、を備えており、
該複数のLED部は、
前記基板を前記浄化流路の側面に設置すると、前記浄化流路の側面において該浄化流路内を空気が流れる方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の貫通孔に各LED部がそれぞれ挿入された状態で配置されるように設けられている
ことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
前記複数の分離プレートは、
前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向に対して傾斜して設置されており、
隣接する分離プレート同士は傾斜が逆になっており、
前記浄化流路の貫通孔は、
前記基板を前記浄化流路の側面に設置すると、前記紫外線照射部の複数のLED部が、前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向において、隣接する分離プレートの対向する面間に位置するように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記複数の分離プレートは、
隣接する分離プレートの傾斜方向における端縁同士が連結されており、
該連結された端縁と対向する位置に前記浄化流路の貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記複数の分離プレートが連続する一枚のシートを折り曲げて形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記複数の分離プレートは、
貫通孔の開口径が0.1~0.2mm、空隙率が30~50%となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の空気浄化装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
第1発明の空気浄化装置は、気体を吸引し浄化して排出する空気浄化装置であって、一端部に開口が形成された、仕切り板によって開口側の空間と底部側の空間に分離されかつ前記仕切り板に形成された貫通孔によって分離された空間が連通されている中空な本体部と、本体部の開口を塞ぐ蓋部と、を有するケースと、前記本体部の底部側の空間に収容された気体を吸引する吸引部と、前記本体部の開口側の空間に収容された、該吸引部と外部との間を連通する連通通路を有し、該連通通路を通過する空気に紫外線を照射する紫外線照射部を備えた浄化部と、該浄化部によって浄化された気体を排出する排気部と、を備えており、前記浄化部の連通通路は、前記本体部の開口側の空間の断面と相似形であってその外面が該空間の内面と面接触するような大きさに形成され、前記本体部の開口側の空間を開口側の空間と前記仕切り板側の空間に分離する導入部と、第一端部が前記導入部に形成された貫通孔を覆いかつ第二端部が仕切り板に形成された貫通孔を覆うように設けられた、前記導入部の貫通孔と前記仕切り板の貫通孔とを連通する浄化流路と、を備えており、前記浄化部の浄化流路内には、浄化流路内を空気が流れる方向において複数の空間に仕切る、多数の貫通孔が形成された複数の分離プレートが設けられており、前記複数の分離プレートは、前記浄化流路内を空気が流れる方向に対して傾斜して設置されており、隣接する分離プレート同士は傾斜が逆になっており、前記浄化流路において前記複数の分離プレートの一方の面と対向する側面と該一方の面と逆側の面と対向する側面には、該浄化流路内を空気が流れる方向に沿って間隔を空けてかつ隣接する分離プレート間に位置するように貫通孔が形成されており、前記紫外線照射部は、基板と、該基板上に間隔を空けて設けられた複数のLED部と、を備えており、該複数のLED部は、前記基板を前記浄化流路の側面に設置すると、前記浄化流路の側面において該浄化流路内を空気が流れる方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の貫通孔に各LED部がそれぞれ挿入された状態で配置されるように設けられていることを特徴とする。
第2発明の空気浄化装置は、第1発明において、前記複数の分離プレートは、前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向に対して傾斜して設置されており、隣接する分離プレート同士は傾斜が逆になっており、前記浄化流路の貫通孔は、前記基板を前記浄化流路の側面に設置すると、前記紫外線照射部の複数のLED部が、前記浄化部の連通通路内を空気が流れる方向において、隣接する分離プレートの対向する面間に位置するように形成されていることを特徴とする。
第3発明の空気浄化装置は、第2発明において、前記複数の分離プレートは、隣接する分離プレートの傾斜方向における端縁同士が連結されており、該連結された端縁と対向する位置に前記紫外線照射部が配置されていることを特徴とする。
第4発明の空気浄化装置は、第3発明において、前記複数の分離プレートが連続する一枚のシートを折り曲げて形成されていることを特徴とする。
第5発明の空気浄化装置は、第1、第2、第3または第4発明において、前記複数の分離プレートは、貫通孔の開口径が0.1~0.2mm、空隙率が30~50%となるように形成されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
第1発明によれば、分離プレートによって連通通路内に空気をある程度の期間滞留させることができるので、連通通路内の空気に対して紫外線照射部から紫外線を十分に照射できる。したがって、フィルタを設けなくても空気を浄化する効率を高くできる。しかも、フィルタのように定期的な交換が不要であるので、メンテナンス性も向上できる。また、基板を取り外せばLED部を交換する作業ができるので、浄化流路の内面に直接LED部を取り付けた場合に比べて、LED部を交換する作業が容易になる。
第2、第3発明によれば、空気を浄化する効率を高くできる。
第4発明によれば、分離プレートの設置が容易になる。
第5発明によれば、空気の滞留期間を適切にでき、しかも、空気抵抗が大きくなりすぎることを防止できる。