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  • 特開-煙突の補強方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092880
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】煙突の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230627BHJP
   E04H 12/28 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04H12/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208153
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】奥 伸之
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】爰野 将児
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176AA07
2E176AA13
2E176BB29
2E176BB36
(57)【要約】
【課題】既存の建物に備えられた煙突の外観を変えることなく、地震などに起因した煙突の崩壊を防止する。
【解決手段】既存の建物1に備えられた煙突4の崩壊を防止する煙突の補強方法において、補強鉄骨5を、煙突4の上方から煙突4内に挿入して煙突4内に配置するとともに、補強鉄骨5を建物1に固定して、補強鉄骨5を建物1に支持させる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の建物に備えられた煙突の崩壊を防止する煙突の補強方法であって、
補強鉄骨を、前記煙突の上方から前記煙突内に挿入して前記煙突内に配置するとともに、前記補強鉄骨を前記建物に固定して、前記補強鉄骨を前記建物に支持させる煙突の補強方法。
【請求項2】
前記補強鉄骨を、前記煙突の略全長にわたる長さに形成して、当該補強鉄骨の下端部を前記煙突の支持部に受け止め支持させるとともに、前記補強鉄骨の上下中間部を前記建物に固定する請求項1に記載の煙突の補強方法。
【請求項3】
前記支持部は前記煙突の支持基盤部であり、
前記補強鉄骨の下端部を前記支持基盤部に受け止め支持させた後、当該支持基盤部上にコンクリートを打設して前記補強鉄骨の下端部を固定する請求項2に記載の煙突の補強方法。
【請求項4】
前記補強鉄骨の上下中間部を前記建物に固定するにあたり、タップ加工が施された鋼板を前記補強鉄骨に溶接し、前記鋼板に対向する前記建物の壁部に開口を形成し、前記建物の室内側から前記開口を通って前記鋼板にわたるアンカーボルトの鋼板側端部を前記鋼板のネジ穴にねじ込み連結し、前記開口を硬化性充填材で塞いだ後、前記アンカーボルトの室内側端部を抜け止め固定する請求項2又は3に記載の煙突の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の建物に備えられた煙突の崩壊を防止する煙突の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術としては、煙突の上部を除去することで、地震時応力を小さくして耐震強度を増大させる既設煙突の改造工法がある(例えば特許文献1参照)。
又、既存の煉瓦煙突の上方から既存の煉瓦煙突内に煙道となる不燃性筒体を配置し、煉瓦煙突と不燃性筒体との隙間に無機自硬性発泡組成物を充填し硬化させて、煉瓦煙突を補強するとともに不燃性筒体を固定することで、煉瓦煙突の外観を変えることなく既存の煉瓦煙突を改修する煉瓦煙突の改修施工法がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平08-003291号公報
【特許文献2】特開平04-189976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の既設煙突の改造工法では、煙突の上部を除去することで煙突の外観が大幅に変わることから、外観の変更が厳しく制限される既存の建物に備えられた煙突に適用するには問題がある。
【0005】
特許文献2に記載の煉瓦煙突の改修施工法では、煙突の外観を変えることなく既存の煉瓦煙突を補強することができるが、この補強は、既存の煉瓦煙突と不燃性筒体との隙間に充填した無機自硬性発泡組成物を硬化させるものであることから、地震などが発生した場合に、既存の煉瓦煙突が無機自硬性発泡組成物とともに倒壊する虞があり、地震などに起因した煙突の崩壊を防止する上において改善の余地がある。
【0006】
上記の実情に鑑み、本発明の主たる課題は、既存の建物に備えられた煙突の外観を変えることなく、地震などに起因した煙突の崩壊を防止する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、既存の建物に備えられた煙突の崩壊を防止する煙突の補強方法であって、
補強鉄骨を、前記煙突の上方から前記煙突内に挿入して前記煙突内に配置するとともに、前記補強鉄骨を前記建物に固定して、前記補強鉄骨を前記建物に支持させる点にある。
【0008】
本構成によると、補強鉄骨をクレーンなどの揚重機で揚重して煙突の上方から煙突内に挿入した後、既存の建物を利用して、補強鉄骨を既存の建物に固定するだけで、煙突内の補強鉄骨を既存の建物に支持させることができ、既存の建物に備えられた煙突を、既存の建物に支持された補強鉄骨にて補強することができる。そして、この補強により、地震などに起因して煙突が倒壊するなどの煙突の崩壊を防止することができる。
その結果、施工性の向上などを図りながら、既存の建物に備えられた煙突の外観を変えることなく、地震などに起因した煙突の崩壊を防止することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記補強鉄骨を、前記煙突の略全長にわたる長さに形成して、当該補強鉄骨の下端部を前記煙突の支持部に受け止め支持させるとともに、前記補強鉄骨の上下中間部を前記建物に固定する点にある。
【0010】
本構成によると、補強鉄骨が煙突の略全長にわたることで、煙突の略全体を補強鉄骨にて補強することができる。そして、補強鉄骨が煙突の略全長にわたることで重くなる補強鉄骨の重量は、補強鉄骨の下端部を受け止め支持する煙突の支持部に負担させることができる。更に、補強鉄骨の上下中間部が建物に固定されることにより、補強鉄骨の下部側が建物に固定される場合に比較して、煙突の略全長にわたる補強鉄骨を、地震による揺れなどが抑制されたより安定した状態で建物に支持させることができる。
その結果、既存の建物に備えられた煙突の外観を変えることなく、地震などに起因した煙突の崩壊をより好適に防止することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記支持部は前記煙突の支持基盤部であり、
前記補強鉄骨の下端部を前記支持基盤部に受け止め支持させた後、当該支持基盤部上にコンクリートを打設して前記補強鉄骨の下端部を固定する点にある。
【0012】
本構成によると、煙突の上方から煙突内に挿入した補強鉄骨の下端部を建物の基礎部や支持地盤などの煙突の支持基盤部に到達させた後、暖炉などの煙突と室内との連通箇所や建物の壁部に形成した開口などから煙突の支持基盤部にコンクリートを打設することにより、作業者が煙突内に立ち入ることなく、補強鉄骨の下端部を煙突の支持基盤部に固定することができ、補強鉄骨を煙突内で安定性良く自立させることができる。
これにより、補強鉄骨の重量を煙突の支持基盤部に負担させることができ、既存の建物にかかる負担を軽減しながら、補強鉄骨をより安定性良く既存の建物に支持させることができ、このように安定性良く支持された補強鉄骨にて煙突をより好適に補強することができる。
その結果、既存の建物にかかる負担を軽減しながら、既存の建物に備えられた煙突の外観を変えることなく、地震などに起因した煙突の崩壊をより確実に防止することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記補強鉄骨の上下中間部を前記建物に固定するにあたり、タップ加工が施された鋼板を前記補強鉄骨に溶接し、前記鋼板に対向する前記建物の壁部に開口を形成し、前記建物の室内側から前記開口を通って前記鋼板にわたるアンカーボルトの鋼板側端部を前記鋼板のネジ穴にねじ込み連結し、前記開口を硬化性充填材で塞いだ後、前記アンカーボルトの室内側端部を抜け止め固定する点にある。
【0014】
本構成によると、既存の建物の室内側に大幅な改良を施すことなく、又、作業者が煙突内に立ち入ることなく、補強鉄骨の上下中間部を既存の建物に固定して支持させることができる。
その結果、施工性の向上などを更に図りながら、既存の建物に備えられた煙突の外観を変えることなく、地震などに起因した煙突の崩壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】煙突を補強鉄骨にて補強する前の状態を示す要部の垂直断面図
図2】煙突を補強鉄骨にて補強した状態を示す要部の垂直断面図
図3図2のIII-III矢視断面図
図4図3のIV-IV矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る煙突の補強方法を、建物外壁の一部を利用して建物の横側部から上方に延びる形態で建物に備えられた煙突に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明に係る煙突の補強方法は、建物外壁の一部を利用して建物の横側部から上方に延びる煙突に限らず、建物に近接して自立する煙突などに適用することができる。
【0017】
図1~2に示すように、既存の建物1は、地下1階B1Fと地上1階1Fと地上2階2Fと屋上階RLとを有する鉄筋コンクリート造で、この建物1には、建物1の地下基礎部を支持基盤部(支持部)2として、この支持基盤部2から外壁3の一部を利用して建物1の上方に延びる煙突4が備えられている。図3に示すように、煙突4は、外壁3の一部を利用することで水平断面形状が矩形に形成されている。
尚、建物1に備えられる煙突4としては、外壁3の一部を利用せずに建物1に近接して備えられたものであってもよく、又、水平断面形状が正方形や円形などに形成されたものであってもよい。
【0018】
図1~2に示すように、煙突4には、地下階の外壁3Aを利用して形成された下部側の煙突基部4Aと、地上階の外壁3Bを利用して形成された上部側の煙突本体部4Bとが備えられている。煙突基部4Aは、その内部空間4aの水平断面での面積が、煙突本体部4Bにおける内部空間4bの水平断面での面積よりも狭くなるように形成されている。煙突本体部4Bには、地上階の外壁3Bに沿う下側本体部分4Baと、屋上階RLから上方に突出する上側本体部分4Bbとが備えられている。
【0019】
図1~4に示すように、煙突4は、その内部に配置されて建物1に支持された補強鉄骨5にて補強され、この補強により、地震などに起因した煙突4の崩壊が防止されている。
【0020】
煙突4の補強方法について説明すると、煙突4の補強方法には、補強鉄骨5を製作する補強鉄骨製作工程と、製作した補強鉄骨5を煙突4の上方から煙突4内に挿入して煙突4内に配置する補強鉄骨配置工程と、煙突4内に配置した補強鉄骨5の下端部を煙突4の支持部となる支持基盤部2に固定する補強鉄骨下端部固定工程と、煙突4内に配置した補強鉄骨5の上下中間部を建物1に支持させる補強鉄骨中間部支持工程とが含まれている。
【0021】
補強鉄骨製作工程では、図1に示すように、補強鉄骨5を構成する複数(本実施形態では5本)の鉄骨材5A~5Eを一列に突き合わせ溶接して、煙突4の略全長にわたる長さを有する補強鉄骨5を製作する。複数の鉄骨材5A~5Eのうち、煙突4の煙突基部4Aと煙突本体部4Bとにわたる最下部の鉄骨材5Aは、煙突基部4Aと煙突本体部4Bとの各内部空間4a,4bの水平断面での面積が異なることから、煙突基部4Aの内部空間4aに応じた外径サイズの小さい第1角鋼管5Aaと、煙突本体部4Bの内部空間4bに応じた外径サイズの大きい第2角鋼管5Abとを、それらの外径サイズに応じた角錐台鋼管5Acと上下一対のダイアフラム5Ad,5Aeとを介して溶接接合することで構成される。そして、最下部の鉄骨材5Aにおける上部の第2角鋼管5Abには、補強鉄骨5の上下中間部を建物1に支持させるためのタップ加工が施された鋼板6(図3~4参照)が溶接される。他の各鉄骨材5B~5Eは、第2角鋼管5Abと同じ外径サイズの角鋼管で構成され、最上部の鉄骨材5Eの上端部には、クレーンなどの揚重機(図示せず)を使用して補強鉄骨5を揚重する際に、玉掛用のワイヤーロープ7(図1参照)などを介して揚重機のフック(図示せず)に玉掛けされる左右一対の玉掛け部5Ea(図1~2参照)が溶接接合される。
【0022】
補強鉄骨配置工程では、図1~2に示すように、揚重機のフックを、玉掛用のワイヤーロープ7などを介して、補強鉄骨5の玉掛け部5Eaに玉掛けした後、揚重機にて補強鉄骨5を煙突4の上方まで揚重し、揚重した補強鉄骨5を煙突4の上方から煙突4内に挿入して、補強鉄骨5の下端部が支持基盤部2の煙突内部分に受け止め支持されるように煙突4内に配置する。
【0023】
補強鉄骨下端部固定工程では、図2に示すように、地下階の外壁3Aにおける煙突基部4Aの形成箇所に、煙突基部4Aの内部空間4aに連通する開口(図示せず)を形成し、この開口から、煙突基部4Aの内部空間4aに位置する支持基盤部2の煙突内部分上にコンクリート8を打設して補強鉄骨5の下端部を固定する。そして、開口に無収縮モルタルなどの硬化性充填材(図示せず)を充填して開口を塞ぐ。
尚、煙突4が例えば建物1の室内に備えられた暖炉(図示せず)などからの煙を屋外に導くものである場合には、煙突4と室内との連通箇所となる暖炉を利用して、煙突基部4Aの内部空間4aに位置する支持基盤部2の煙突内部分上にコンクリート8を打設するようにすれば、地下階の外壁3Aなどにコンクリート打設用の開口を形成する手間や、コンクリートの打設後に開口を塞ぐ手間を省くことができる。
【0024】
補強鉄骨中間部支持工程では、図2~4に示すように、建物1における地上階の外壁3Bのうち、補強鉄骨5に溶接された鋼板6に対向する地上1階1Fの壁部3Baに矩形の開口9を形成し、この開口9に内接する矩形の型枠10を、建物1の室内側から開口9を通って補強鉄骨5にわたるように挿入する。又、建物1の室内側から開口9を通って鋼板6にわたる4本のアンカーボルト11(図3~4参照)の鋼板側端部を鋼板6の4つのネジ穴6A(図3~4参照)にねじ込み連結する。そして、開口9に無収縮モルタルなどの硬化性充填材12(図3参照)を充填して開口9を硬化性充填材12で塞いだ後、アンカーボルト11挿通用の4つの貫通孔が形成された鋼板13を、各貫通孔に各アンカーボルト11の室内側端部を通した状態で硬化性充填材12の室内側端面に面接触させ、各貫通孔から突出する各アンカーボルト11の室内側端部にナット14(図3参照)をねじ込み連結して、各アンカーボルト11の室内側端部を抜け止め固定する。このようにして、補強鉄骨5の上下中間部を、建物1における地上階の外壁3Bのうちの地上1階1Fの壁部3Baに固定して支持させる。
【0025】
以上の通り、前述した煙突4の補強方法では、補強鉄骨5を、クレーンなどの揚重機で揚重し、煙突4の上方から煙突4内に挿入して煙突4内に配置した後、既存の建物1を利用して、補強鉄骨5を既存の建物1に固定するだけで、煙突4内の補強鉄骨5を既存の建物1に支持させることができ、既存の建物1に備えられた煙突4を、既存の建物1に支持された補強鉄骨5にて補強することができる。そして、補強鉄骨5が、煙突4の略全長にわたる長さに形成されることにより、煙突4の略全体を補強鉄骨5にて好適に補強することができる。
【0026】
又、前述した煙突4の補強方法では、煙突4の略全長にわたる補強鉄骨5を、煙突4の上方から煙突4内に挿入して補強鉄骨5の下端部を煙突4の支持基盤部2に受け止め支持させた後、補強鉄骨5の下端部を支持基盤部2の煙突内部分に固定し、かつ、補強鉄骨5の上下中間部を建物1に固定することにより、補強鉄骨5を煙突4内で自立させて補強鉄骨5の重量を煙突4の支持基盤部2に負担させるようにしながら、自立させた補強鉄骨5の上下中間部を建物1に安定性良く支持させることができる。これにより、例えば、補強鉄骨5を自立させずに、その上下中間部を建物1に支持させる場合に比較して、既存の建物1にかかる負担を軽減することができ、又、補強鉄骨5の下端部のみを固定する場合に比較して、地震による補強鉄骨5の揺れなどを効果的に抑制することができる。
【0027】
そして、補強鉄骨5における下端部の固定は、建物1における地下階の外壁3Aに形成した開口から支持基盤部2の煙突内部分上にコンクリート8を打設することで行われることから、作業者が煙突4内に立ち入ることなく、補強鉄骨5の下端部を煙突4の支持基盤部2に固定することができる。
【0028】
又、補強鉄骨5における上下中間部の固定は、補強鉄骨5に溶接された鋼板6に対向する外壁3の壁部3Baに開口9を形成し、建物1の室内側から開口9を通って鋼板6にわたる各アンカーボルト11の鋼板側端部を鋼板6の各ネジ穴6Aにねじ込み連結し、開口9を硬化性充填材12で塞いだ後、各アンカーボルト11の室内側端部を抜け止め固定することなどで行われることから、既存の建物1の室内側に大幅な改良を施すことなく、又、作業者が煙突4内に立ち入ることなく、補強鉄骨5の上下中間部を既存の建物1に固定することができる。
【0029】
その結果、施工性の向上などを図りながら、既存の建物1に備えられた煙突4の外観を変えることなく、煙突4の補強を好適に行うことができ、これにより、地震などに起因して、屋上階RLから上方に突出する煙突4の上側本体部分4Bbが倒壊するなどの煙突4の崩壊を防止することができる。
【0030】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、上記の実施形態や他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0031】
(1)上記の実施形態においては、煙突4の補強方法として、補強鉄骨製作工程にて製作した補強鉄骨5を、補強鉄骨配置工程にて煙突4の上方から煙突4内に挿入して煙突4内に配置するものを例示したが、これに限らず、例えば、補強鉄骨5を構成する複数の鉄骨材5A~5Eうち、先ず、補強鉄骨5の下部側を構成する鉄骨材5Aを揚重機で揚重して煙突4の上端部にて仮置きした後、次の鉄骨材5Bを揚重機で揚重して仮置きした鉄骨材5Aの上端に積み重ねて、上下の鉄骨材5A,5Bを突き合わせ溶接し、この溶接後に、下側の鉄骨材5Aの仮置きを解除して上下の鉄骨材5A,5Bを煙突4内に挿入して上側の鉄骨材5Bを煙突4の上端部にて仮置きする、といった作業を、補強鉄骨5の下部側を構成するものから順に繰り返して行うことで、補強鉄骨5を製作しながら煙突4の上方から煙突4内に挿入して煙突4内に配置するようにしてもよい。
【0032】
(2)上記の実施形態においては、煙突4の補強方法として、補強鉄骨中間部支持工程にて、補強鉄骨5の上下中間部を地上1階1Fの壁部3Baに固定して支持させるものを例示したが、これに限らず、例えば、補強鉄骨5の上下中間部を地上2階2Fの壁部に固定して支持させるものであってもよい。
【0033】
(3)上記の実施形態においては、煙突4の補強方法として、煙突4の略全長にわたる長さの補強鉄骨5を、煙突4の上方から煙突4内に挿入して補強鉄骨5の下端部を煙突4の支持基盤部(支持部)2に受け止め支持させた後、補強鉄骨5の下端部を固定し、かつ、補強鉄骨5の上部側を建物1に固定することにより、煙突4の略全長を補強鉄骨5にて補強するものを例示したが、これに限らず、例えば、煙突4の煙突本体部4Bにおける下側本体部分4Baの上部から上側本体部分4Bbの上部にわたる長さの補強鉄骨5を、煙突4の上方から煙突4内に挿入して、補強鉄骨5の下端部を建物1における地上階の外壁3Bに固定することにより、建物1の屋上階RLから上方に突出する煙突4の上側本体部分4Bbのみを補強するものであってもよい。
【0034】
(4)上記の実施形態においては、煙突4の補強方法として、煙突4内に配置した補強鉄骨5の下端部を煙突4の支持基盤部2(支持部)に受け止め支持させた後、支持基盤部2の煙突内部分上にコンクリート8を打設することで補強鉄骨5の下端部を支持基盤部2の煙突内部分に固定するものを例示したが、これに限らず、例えば、補強鉄骨5の下端部を支持基盤部2に受け止め支持させた後、アンカーボルトなどを使用して補強鉄骨5の下端部を支持基盤部2の煙突内部分に固定するものであってもよい。
【0035】
(5)上記の実施形態においては、煙突4の補強方法として、煙突4内に配置した補強鉄骨5の下端部を支持基盤部2(支持部)に固定するものを例示したが、これに限らず、例えば、補強鉄骨5の下端部を支持基盤部2に固定せずに受け止め支持させるだけのものであってもよい。
【0036】
(6)上記の実施形態においては、煙突4の補強方法として、煙突4内に配置した補強鉄骨5の下端部を煙突4の支持基盤部(支持部)2で受け止め支持するものを例示したが、これに限らず、例えば、図1~2に示す煙突4において、煙突基部4Aの内部空間4aと煙突本体部4Bの内部空間4bとの境界に形成されている段差部を利用して、この段差部に支持される鋼板又はコンクリートブロックなどを煙突4内に備え、この鋼板又はコンクリートブロックなどで補強鉄骨5の下端部を受け止め支持するものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 既存の建物
2 支持基盤部(支持部)
3Ba 壁部
4 煙突
5 補強鉄骨
6 鋼板
6A ネジ穴
8 コンクリート
9 開口
11 アンカーボルト
12 硬化性充填材
図1
図2
図3
図4