(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092885
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】頭皮および毛髪の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20230627BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208177
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】514222857
【氏名又は名称】株式会社アトラスプランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】土居内 隆弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB032
4C083BB43
4C083CC31
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE12
4C083EE21
(57)【要約】
【課題】安定した強アルカリ状態が維持され、人体安全性も確保されたアルカリイオン水を用いた頭皮および毛髪の洗浄方法を提供する。
【解決手段】アルカリイオン水を用いた頭皮および毛髪の洗浄方法であって、水酸化カリウムを含有し、pHが12.5から13.1であるアルカリイオン水を用いて、頭皮および毛髪を洗浄する工程と、前記洗浄後の頭皮および毛髪に対してシャンプーおよびリンスをする工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。さらに、前記アルカリイオン水は、人体に対して、非刺激性、非アレルギー性、非眼刺激性および非光毒性を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリイオン水を用いた頭皮および毛髪の洗浄方法であって、
水酸化カリウムを含有し、pHが12.5から13.1であるアルカリイオン水を用いて、頭皮および毛髪を洗浄する工程と、
前記洗浄後の頭皮および毛髪に対してシャンプーおよびリンスをする工程と、を少なくとも含むことを特徴とする頭皮および毛髪の洗浄方法。
【請求項2】
前記アルカリイオン水を用いて、皮膚を洗浄する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の頭皮および毛髪の洗浄方法。
【請求項3】
前記アルカリイオン水は、人体に対して、非刺激性、非アレルギー性、非眼刺激性および非光毒性を有することを特徴とする請求項1記載の頭皮および毛髪の洗浄方法。
【請求項4】
前記アルカリイオン水は、水酸化カリウムを0.17%含有し、pHが12.5であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の頭皮および毛髪の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリイオン水を用いた頭皮および毛髪の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルカリイオン水を用いた洗浄が、皮脂汚れなどを除去するのに有効であることが知られている。例えば、特許文献1には、電解アルカリイオン水と電解酸性イオン水を備えた化粧用材を用い、電解アルカリイオン水を皮膚又は頭髪に付着させた後、当該皮膚又は頭髪に電解酸性イオン水を付着させる技術が開示されている。この技術では、電解アルカリイオン水を含む第1のジェルと、電解酸性イオン水を含む第2のジェルを備えた化粧用材を用い、第1のジェルを皮膚又は頭髪に付着させた後、当該皮膚又は頭髪に第2のジェルを付着させる。これにより、皮膚のすべすべ感、しっとり感、髪のサラサラ感を得ることができ、また、肌がツルツルになる、ふっくらと張りが出る、キメが整う、といった効果も得られる、とされている。
【0003】
また、特許文献2には、少なくとも還元剤を含有するパーマネントウェーブ第1剤と、少なくとも酸化剤を含有するパーマネントウェーブ第2剤とからなる毛髪処理剤であって、還元剤が、毛髪中に存在する-SS-結合のコンホメーション変化を生じさせる還元剤である毛髪処理剤を用いて、相対湿度が80~100%の範囲であり、温度が20~60℃の水蒸気下で毛髪を処理する技術が開示されている。この技術では、毛髪内に存在するイオン結合を切断し、卵白加水分解物などの有効成分の浸透性をより効果的に促進させるという観点から、強アルカリイオン水として、水素イオン濃度がpH11以上で、酸化還元電位が0mV以下の電解水で、更に浸透圧が100(mOsM)以下の値を示すイオン水を挙げることができる。また、超還元水としては、S-100(商品名、株式会社エー・アイ・システムプロダクト製)が挙げられる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-107304号公報
【特許文献2】特開2015-078143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルカリイオン水は、皮脂などの除去に有効であるが、頭皮および毛髪の洗浄効果を高めるためには、アルカリの度合い、つまり「pH」が高い方が望ましい。しかし、従来、pHが12.5である高いアルカリイオン水は、安定性が低く、強アルカリの特性を維持することが難しかった。また、人体に対しては、pHが12.0を超えると、素手で触れることは難しく、pHが12.5のアルカリイオン水について、人体安全性が確保されているとは言えない状況であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、安定した強アルカリ状態が維持され、人体安全性も確保されたアルカリイオン水を用いた頭皮および毛髪の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の頭皮および毛髪の洗浄方法は、アルカリイオン水を用いた頭皮および毛髪の洗浄方法であって、水酸化カリウムを含有し、pHが12.5から13.1であるアルカリイオン水を用いて、頭皮および毛髪を洗浄する工程と、前記洗浄後の頭皮および毛髪に対してシャンプーおよびリンスをする工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0008】
(2)また、本発明の頭皮および毛髪の洗浄方法は、前記アルカリイオン水を用いて、皮膚を洗浄する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
(3)また、本発明の頭皮および毛髪の洗浄方法において、前記アルカリイオン水は、人体に対して、非刺激性、非アレルギー性、非眼刺激性および非光毒性を有することを特徴とする。
【0010】
(4)また、本発明の頭皮および毛髪の洗浄方法において、前記アルカリイオン水は、水酸化カリウムを0.17%含有し、pHが12.5であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、頭皮や毛髪の汚れを効果的に除去することができ、頭皮や毛髪を良好な状態に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る本発明の頭皮および毛髪の洗浄方法の流れを示すフローチャートである。
【
図2】第1の実施形態に係る電解イオン水生成装置の説明図である。
【
図3】第2の実施形態に係る電解イオン水生成装置の説明図である。
【
図4】第3の実施形態に係る電解イオン水生成装置の説明図である。
【
図5】第4の実施形態に係る電解イオン水生成装置の説明図である。
【
図9】96ウェルプレートへの添加位置を示す図である。
【
図10】スティンギング試験の個人データを示す図である。
【
図11】微生物を用いた変異原生試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、頭皮および毛髪の洗浄効果を高めるためには、「pH」が高いアルカリイオン水を用いる必要があることに着目し、安定した強アルカリ状態が維持され、人体安全性も確保されたアルカリイオン水で頭皮および毛髪を洗浄することによって、汚れを有効に除去することができることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明の頭皮および毛髪の洗浄方法は、アルカリイオン水を用いた頭皮および毛髪の洗浄方法であって、水酸化カリウムを含有し、pHが12.5から13.1であるアルカリイオン水を用いて、頭皮および毛髪を洗浄する工程と、前記洗浄後の頭皮および毛髪に対してシャンプーおよびリンスをする工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0015】
これにより、本発明者は、頭皮や毛髪の汚れを効果的に除去することを可能とし、頭皮や毛髪を良好な状態に保持することを可能とした、以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
【0016】
[頭皮および毛髪の洗浄方法]
図1は、本実施形態に係る頭皮および毛髪の洗浄方法の流れを示すフローチャートである。まず、水酸化カリウムを含有し、pHが12.5から13.1であるアルカリイオン水を、後述するアルカリイオン水製造装置で製造する(ステップS1)。次に、このアルカリイオン水を用いて、頭皮、毛髪、または皮膚を洗浄する(ステップS2)。頭皮および毛髪の場合は、最後にシャンプーおよびリンスを行なう(ステップS3)。
【0017】
[アルカリイオン水の製造装置について]
アルカリイオン水の製造については、特許第6448043号明細書に開示された装置を用いることができる。すなわち、この電解イオン水生成装置は、以下の第1の実施形態から第4の実施形態として説明される。
【0018】
(電解イオン水生成装置の第1の実施形態)
第1の実施形態に係る電解イオン水生成装置について、図面を参照して説明する。この実施形態の電解イオン水生成装置は、いわゆる流動式の生成装置である。
図2において、1は原水供給源Aから供給される原水を貯留する生成タンク、2は溶媒にイオン性物質が溶け込んだ電解液(電解質水溶液)を貯留するための電解液タンク、3は電解液タンク2内の電解液を撹拌する撹拌手段、4は電気分解によって電解イオン水を生成する電解槽、5は原水が通過する陰極室、6は電解液が通過する陽極室、7は電気分解によって陽極室6内に生じる陽イオンを陰極室5側に通過させるイオン交換膜、8は直流電源である。本願において「撹拌」とは、その手段を問わず、電解液中の炭酸カリウムを電解液(溶媒)中に分散させて、電解液の濃度のばらつきを解消することを意味する。
【0019】
一例として
図2に示す生成タンク1は有底の円筒状容器である。生成タンク1の周壁には、原水供給源Aから供給される原水を生成タンク1内に取り込む原水供給口1aが設けられている。原水供給口1aには一端側が原水供給源Aに接続された原水供給路R1の他端側が接続され、原水供給源Aから供給される原水が原水供給路R1を通って生成タンク1内に取り込まれるようにしてある。原水には、純水や水道水、地下水等を用いることができる。
【0020】
生成タンク1の底面には生成タンク1内の原水を外部に排出する排出口1bが設けられている。排出口1bには一端側が陰極室5の入口5aに接続された原水流路R2の他端側が接続されている。原水流路R2には原水循環ポンプP1が接続され、当該原水循環ポンプP1の動力によって、生成タンク1内の原水が陰極室5に供給されるようにしてある。
【0021】
生成タンク1の周壁には、陰極室5を通過して生成された電解イオン水を生成タンク1内に取り込むための取込み口1cが設けられている。取込み口1cには陰極室5の出口5bに接続された帰還流路R3が接続されている。陰極室5を通過して生成された電解イオ
ン水は、帰還流路R3を通って生成タンク1内に取り込まれるようにしてある。この実施形態では、原水流路R2、原水循環ポンプP1及び帰還流路R3によって、原水循環手段が構成されている。
【0022】
生成タンク1内には、原水量を制御する原水量制御手段9が設けられている。この実施形態では、原水量制御手段9として、上下方向に間隔をあけて設けられた二つのフロートスイッチ(下段のフロートスイッチ9a及び上段のフロートスイッチ9b)を用いている。両フロートスイッチ9a、9bの水位は、所望のpH値の電解イオン水を生成するのに必要な原水量に合わせて適宜設定することができる。一例として、この実施形態では、下段のフロートスイッチ9aを、pH13.1の電解イオン水の生成に必要な原水量の水位に設定してあり、上段のフロートスイッチ9bを、pH12.5の電解イオン水の生成に必要な原水量の水位に設定してある。
【0023】
この実施形態では、pH12.5の電解イオン水を生成する場合には、上段のフロートスイッチ9bだけが動作し、下段のフロートスイッチ9aは動作しないようにしてある。生成タンク1内の原水が上段のフロートスイッチ9bに到達すると、生成タンク1への原水の供給が自動的に停止するようにしてある。他方、pH13.1の電解イオン水を生成する場合には、下段のフロートスイッチ9aが動作するようにしてある。生成タンク1内の原水が下段のフロートスイッチ9aに到達すると、生成タンク1への原水の供給が自動的に停止するようにしてある。
【0024】
一例として
図2に示す電解液タンク2は、生成タンク1よりも小径の有底の円筒状容器であり、生成タンク1の内側であって生成タンク1の同心円状に配置されている。電解液タンク2の底面には、電解液タンク2内の電解室水溶液を外部に排出する電解液排出口2aが設けられている。電解液排出口2aには前記電解槽4の陽極室6の入口6aに接続された電解液流路Q1が接続されている。電解液流路Q1には電解液循環ポンプP2が接続され、電解液タンク2内の電解液が当該電解液循環ポンプP2の動力によって電解槽4の陽極室6に供給されるようにしてある。
【0025】
電解液タンク2の周壁には、陽極室6を通過した電解液を電解液タンク2に帰還させるための電解液帰還口2bが設けられている。電解液帰還口2bには一端側が陽極室6の出口6bに接続された電解液帰還流路Q2の他端側が接続されている。陽極室6を通過した電解液は、電解液帰還流路Q2を通って電解液タンク2内に帰還するようにしてある。この実施形態では、電解液流路Q1、電解液循環ポンプP2及び電解液帰還流路Q2によって、電解液循環手段が構成されている。
【0026】
一例として
図2に示す撹拌手段3は、エアポンプ3aとエア供給パイプ3bを備えている。エア供給パイプ3bは、一端側がエアポンプ3aに接続され、他端側が電解液タンク2内に導入されている。エア供給パイプ3bの先端側(出口側)は、電解液タンク2の底面近くに位置するようにしてある。エア供給パイプ3bの先端側(出口側)を電解液タンク2の底面近くに位置するようにすることで、上昇するエアによって電解液を撹拌しやすくなり、炭酸カリウムの沈殿を防止しやすくなる。
【0027】
一例として
図2に示す電解槽4はイオン交換膜7によって区画された陰極室5と陽極室6を備えている。イオン交換膜7は原水及び電解液は通さず、陽イオンのみを通す性質を有する交換膜(陽イオン交換膜)である。イオン交換膜7には、旭硝子株式会社製の「セレミオン」(登録商標)や、デュポン株式会社製の交換膜等の既存のもののほか、新規のものを用いることもできる。イオン交換膜7の両外側には、絶縁性材料からなるメッシュ状のスペーサ10が配置され、その外側に陰極板5xと陽極板6xが設けられている。スペーサ10には、例えば、ナイロン製の5mm角のネット等を用いることができる。
【0028】
前記陰極板5xには陰極ターミナル5yが、陽極板6xには陽極ターミナル6yが設けられている。陰極ターミナル5yには直流電源8のマイナス側が、陽極ターミナル6yには直流電源8のプラス側が接続され、直流電源8から直流電圧を印加できるようにしてある。
【0029】
この実施形態の電解槽4は、その一部を構成する陰極板5x及び陽極板6xの表面に空気だまりが発生しないよう、空気が抜けやすい向き、言い換えれば、気泡が浮上する向き(鉛直向き)に設置してある。電解槽4をこのような向きに設置すると、電気分解に際して発生する水素や二酸化炭素が上方に浮上し、陰極板5xや陽極板6xの表面に空気層が形成されることがない。その結果、陰極板5xや陽極板6xの表面に空気層が形成されることによって生じる弊害、具体的には、電気が流れずに電気分解が阻害されるという弊害が生じない。一方で、陰極板5xや陽極板6xを鉛直向き(縦向き)とした場合、炭酸カリウムが陽極板6xの下方側に沈殿し、炭酸カリウムの沈殿部分よりも上方側では電気分解が効率的に行われないという不都合が生じやすくなるが、本願では、電解液タンク2内の電解液を撹拌手段3で撹拌することで、このような不都合が生じないようにしてある。
【0030】
この実施形態の電解イオン水生成装置では、生成タンク1内の原水は、原水流路R2-陰極室5-帰還流路R3-生成タンク1の経路を循環し、電解液タンク2内の電解液は、電解液流路Q1-陽極室6-電解液帰還流路Q2-電解液タンク2の経路を循環する。原水及び電解液の循環時に、両電極板(陰極板5x及び陽極板6x)間に直流電圧が印加されると電解液が電気分解され、その電気分解によって電解液タンク2内に生じる陽イオンがイオン交換膜7を透過して生成タンク1内の原水に還元して電解イオン水が生成される。この実施形態の電解イオン水生成装置内では、電解液タンク2内の電解液が撹拌手段3で撹拌され、濃度のばらつきが解消された電解液が循環するため、電極板(陰極板5x及び陽極板6x)の全面で電気分解が行われ、効率的かつ安定的に電解イオン水を生成することができる。
【0031】
(電解イオン水生成装置の第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電解イオン水生成装置について、図面を参照して説明する。第1の実施形態と同様、この実施形態の電解イオン水生成装置も流動式の生成装置である。この実施形態の基本的な構成は、前記第1の実施形態と同様である。異なるのは、生成タンク1と電解液タンク2を別々に設けたこと及び生成タンク1に供給する原水量制御手段9を原水供給源Aと生成タンク1の間に設けたことである。以下では、第1の実施形態と共通する事項については適宜説明を省略し、それ以外の事項を中心に説明する。
【0032】
この実施形態の生成タンク1は、原水を外部に排出する排出口1b及び電解イオン水を生成タンク1内に取り込むための取込み口1cに加えて、生成された所望pHの電解イオン水を外部に取り出す取出し口1dが設けられている。取出し口1dには、所望pHの電解イオン水を外部に送り出す取出し流路R4が接続されている。この実施形態では、生成タンク1内に仕切り板11が設けられている。仕切り板11の下端は生成タンク1の底面に到達しないようにしてある。
【0033】
この実施形態の原水量制御手段9は、原水供給源Aに接続された第一主流路9vと、第一主流路9vに接続された第一分岐路9w及び第二分岐路9xと、第一分岐路9wに設けられた第一電磁バルブ9y及び第二分岐路9xに設けられた第二電磁バルブ9zと、第一分岐路9w及び第二分岐路9xが合流する原水供給路R1を備えている。第一分岐路9wと第二分岐路9xの時間当たりの供給量は異なる量に設定してある。一例として、第一分岐路9wは時間当たり5L(pH13.1の電解イオン水を生成するのに必要な量)の原水を供給でき、第二分岐路9xは時間当たり20L(pH12.5の電解イオン水を
生成するのに必要な量)の原水を供給できるようにしてある。第一分岐路9wは第一電磁バルブ9yによって、第二分岐路9xは第二電磁バルブ9zによって電気的に開閉されるようにしてある。
【0034】
(電解イオン水生成装置の第3の実施形態)
第3の実施形態に係る電解イオン水生成装置について、図面を参照して説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態と同様、この実施形態の電解イオン水生成装置も流動式の生成装置である。この実施形態の基本的な構成は、前記第2の実施形態と同様である。異なるのは、電解槽4が電解液タンク2の下側の開口部に連結されてユニット化されていることである。以下では、第1の実施形態及び第2の実施形態と共通する事項については適宜説明を省略し、それ以外の事項を中心に説明する。
【0035】
この実施形態の電解液タンク2は上下に開口を備えた円筒状容器である。電解液タンク2の下方側の開口側には電解槽4が接続されてユニット化されている。電解液タンク2内の電解液は陽極室6に流入するようにしてある。この実施形態の電解液タンク2には、第1の実施形態及び第2の実施形態における電解液循環手段は設けられていない。
【0036】
(電解イオン水生成装置の第4の実施形態)
第4の実施形態に係る電解イオン水生成装置について、図面を参照して説明する。この実施形態の電解イオン水生成装置は、いわゆる貯留式の生成装置である。この実施形態の基本的な構成は、前記第3の実施形態と同様である。異なるのは、ユニット化された電解液タンク2及び電解槽4が生成タンク1内に設けられていることである。以下では、第3の実施形態と共通する事項については適宜説明を省略し、それ以外の事項を中心に説明する。
【0037】
この実施形態では、ユニット化された電解液タンク2及び電解槽4が生成タンク1内に配置されている。電解液タンク2及び電解槽4は、当該電解槽4の全体が生成タンク1の原水に浸るようにしてある。このとき、電解液タンク2の上方側は生成タンク1の原水の液面よりも上側に出るようにしてある。電解液タンク2内の電解液は、その液面が生成タンク1内の原水の液面よりも高い位置になるようにしてある。
【0038】
この実施形態の電解イオン水生成装置は貯留式であり、第1の実施形態及び第2の実施形態における原水循環手段や電解液循環手段は設けられていない。
【0039】
(電解イオン水生成装置のその他の実施形態)
前記第1の実施形態から第4の実施形態では、撹拌手段3としてエアポンプ3a及びエア供給パイプ3bを用いる場合を一例としているが、撹拌手段3には、エアによって電解液を撹拌するもののほか、撹拌羽根の回転力によって電解液を撹拌するものやポンプでの吸排力によって電解液を撹拌するものなど、エアポンプ3a及びエア供給パイプ3b以外の各種のものを用いることができる。
【0040】
前記第1の実施形態から第4の実施形態では、説明を省略しているが、原水供給路R1の上流側には、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどを除去する濾過装置を設けることができる。濾過装置には、例えば、5μmメッシュのフィルタ、活性炭フィルタ(ACフィルタ)、逆浸透膜(RO膜)フィルタ(ROフィルタ)等を用いることができる。
【0041】
以上の方法により、pHが12.5から13.1であるアルカリイオン水を製造することが可能となる。
【0042】
[本実施形態に係るアルカリイオン水の人体に対する非刺激性試験]
本発明者は、試験機関(株式会社きれいテストラボ)において、本実施形態に係るアルカリイオン水の「24時間閉塞パッチテスト」を実施した。
【0043】
[試験目的]
pH12.5(水酸化カリウムが0.17%)である被験品のヒト皮膚に対する皮膚一次刺激性を評価する。
【0044】
[試験概要]
外来性物質(刺激物)と表皮細胞が接触して細胞傷害が誘導される。これが一次刺激性接触皮膚炎の原因と考えられている。そこで、被験品と皮膚との接触によって生じる紅斑・浮腫・丘疹などの皮膚症状を指標としたパッチテストを実施し、被験品の皮膚一次刺激性を評価する。本試験では、皮膚に被験品を24時間接触させた後、1時間後および24時間後の皮膚状態を目視判定し、被験品の皮膚一次刺激性を評価した。また、本試験は皮膚科医管理下で実施し、本邦基準に沿って被験品の皮膚一次刺激性を判定した。
【0045】
より具体的には、人体の被験部位は、
図6に示すように、脊柱部を避けた背部とし、被験部位に被験品および陰性対象品を適用した皮膚テスト用テープ(パッチテスター「トリイ」、日本標準商品分類番号/8699、鳥居薬品)に被験品または陰性対照品を適用し、被験部位に皮膚テスト用テープを24時間貼付した。24時間後に皮膚テストテープを剥離し、剥離1時間後、24時間後の皮膚反応を医師が目視判定し、判定基準(表1)に従いスコア化した。スコアをもとに被験品の皮膚刺激指数を算出し、刺激性の分類(表2)を行った。
【0046】
この皮膚刺激指数とは、「(被験品剥離1時間後または24時間後の反応の強い方の評点総和)/(被験者数)×100」で求められる。なお、表2において、「5.0から15.0」とは、「5.0<、≦15.0」の意味であり、「15.0~30.0」とは、「15.0<、<30.0」の意味である。
【表1】
【表2】
【0047】
[試験結果]
試験期間を通じて、有害事象は認められなかった。被験者の男女構成および年齢構成を表3に示し、被験品の皮膚刺激指数および表2に基づく分類を表4に示し、判定集計表を表5に示し、個人データを表6に示す。本実施形態に係るアルカリイオン水は、本試験により、皮膚刺激指数は「0.0」を示し、「安全品」であると分類された。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0048】
[本実施形態に係るアルカリイオン水の眼刺激性試験]
本発明者は、試験機関(株式会社きれいテストラボ)において、本実施形態に係るアルカリイオン水の「眼刺激性試験」を実施した。
【0049】
[試験目的]
pH12.5(水酸化カリウムが0.17%)である被験品の眼刺激性作用を評価するため、ヒト三次元培養角膜上皮を用いた再構築ヒト角膜上皮モデル試験法による眼刺激性試験代替法を実施した。
【0050】
[試験概要]
眼に異物が入った場合、眼への刺激性は最表面の角膜上皮細胞に対する細胞傷害から始まる。そこで、本試験では、角膜上皮細胞に対する細胞毒性を指標として眼刺激性を評価する「in vitro再構築ヒト角膜上皮モデル試験法」に基づき、「LabCyte CORNEA-MODEL(Cat No.411324、 J-TEC、 Japan)」を用いて眼刺激性を評価した。RhCEモデルに被験品を一定時間暴露した後、WST-8(CAS No. 193149-74-5、 Dojin、 Japan)の取り込み量をもとにしたMTT還元法によって細胞生存率を測定し、被験品の眼刺激性を評価する。本試験条件下でのヒト三次元培養角膜上皮の刺激反応性を確認するため、眼刺激性を示すことが知られているエタノール(99%、 CAS No. 64-17-5、 Japan Alcohol、 Japan)を陽性対照物質として用いた。CO2インキュベータ(CO2濃度 5%、37℃)で、アッセイ培地(Cat No. 401351、 J-TEC、 Japan)を用いてヒト三次元培養角膜上皮 (LabCyte CORNEA-MODEL、 Cat No. 401351、 J-TEC、 Japan)を培養した。細胞生存率の算出には1つの処理群につきn=3の平均値を用いた。また、1試験につき陰性対照、陽性対照および被験物質をそれぞれ1群設けて試験を実施した。試験に関わる操作は別途記載のないかぎり室温で行った。
【0051】
24穴プレート(Cat No. 353047、 Corning、 USA)に500μL/wellのアッセイ培地を加え、ヒト三次元培養角膜上皮を移した。また、1プレートにつき6ウェルのヒト三次元培養角膜上皮を使用し、CO2インキュベータ内で15~30時間培養した。ヒト三次元培養角膜上皮の表皮組織表面に被験物質、陽性対照および陰性対照を50μL適用し、60秒間曝露した。陰性対照にはPhosphate buffer saline (PBS (-)、 Lot. 198601、 Nissui、 Japan)を用いた。洗浄用ポリ洗浄瓶に充填した「PBS (-)」にてヒト三次元培養角膜上皮を10回以上洗浄した。24穴プレートに500μL/wellの培地を加えて、洗浄したヒト三次元培養角膜上皮を、培地を加えたウェルに移して24時間CO2インキュベータ内で培養した。培養カップに付着した培地を「PBS (-)」で洗浄し、ペーパータオルで培養カップ周囲の「PBS (-)」を拭き取った。24穴プレートに300L/wellのWST-8反応液を加え、ヒト三次元培養角膜上皮を移して4時間CO2インキュベータ内で培養した。WST-8反応液はCell Counting kit-8(Cat No. CK04、 Dojin、 Japan)をEBSS(Earle balanced salt solution(Cat No. E3024、 Sigma-Aldrich、 USA))にて10倍希釈して調製した。反応液を撹拌したのち96穴プレート(Cat No. 9107、 Corning、 USA)に200μL加えた。マイクロプレートリーダー(SPARK(登録商標) 10M、 TECAN、 Switzerland)を用いて450nmの吸光度(OD450)および650nmの吸光度(OD650)を測定した。ブランクには200μLのWST-8反応液を用いた。
【0052】
[細胞生存率の計算]
各ウェルのOD450から、それぞれのOD650を差し引いた。さらに算出した被験物質群、陽性対照群、陰性対照群の吸光度(OD450-OD650)から、ブランクの値を差し引いた。それらの値を用いて、陰性対照群に対する被験物質群、陽性対照群の細胞生存率を求め、本試験における眼刺激性の判定に用いた。以下に各処理群の吸光度および細胞生存率の計算式を示す。
【0053】
測定値=(A-B)-(C-D)
A:被験物質群、陽性対照群および陰性対照群の450nmでの吸光度
B:被験物質群、陽性対照群および陰性対照群の650nmでの吸光度
C:ブランクの450nmでの吸光度
D:ブランクの650nmでの吸光度
細胞生存率(%)=(被験物質群の測定値/陰性対照群の測定値平均)×100
【0054】
[判定]
被験品の眼刺激性は、表7に示すOECDテストガイドライン492の判定基準に沿って判定した。被験品暴露条件下の細胞生存率が40%を超える場合を眼に対する一定期間において非可逆的もしくは可逆的な眼損傷/刺激作用を有する「区分1」・「区分2」ではなく「区分外」とした。平均細胞生存率が40%以下の場合は、「区分1もしくは区分2」とした。
【表7】
【0055】
[試験結果]
被験品に係る被験物質群のOD
450とOD
650を表8に示し、細胞生存率を表9に示し、被験品の眼刺激性GHS分類を表10に示した。被験物質群の陰性対象群に対する細胞生存率は、122.4±7.4%を示し、40%を超えた。従って、OECDテストガイドライン492に沿った判定基準により、UN GHSが規定する危険有害性区分において眼に対する一定期間において非可逆的もしくは可逆的な眼損傷/刺激作用を有する「区分1」・「区分2」ではない、すなわち、眼損傷/刺激作用を有する物質とは分類されない「区分外」に分類された。
【表8】
【表9】
【表10】
【0056】
[本実施形態に係るアルカリイオン水の非アレルギー性試験]
本発明者は、試験機関(BioScreen社)において、本実施形態に係るアルカリイオン水の「非アレルギー性試験」を実施した。
【0057】
[試験目的]
pH12.5(水酸化カリウムが0.17%)である被験品について、ヒト被験者の皮膚に対して繰り返し被験物質を塗布し、被験物質の刺激性及び感作(接触アレルギー)性を評価する。
【0058】
[試験概要]
「Scanpor(登録商標) Tape(Norgesplaster A/S、 Kristiansand、 Norway)」で貼り付けた8mmアルミニウムFinnChamber(登録商標)(Epitest Ltd. Oy、 Tuusula、 Finland)、または、最新低刺激性サージカルテープに使用される医薬品用アクリル接着剤を片面にコートした薄く柔軟な長方形透明ポリウレタンフィルムに貼り付けたアルミニウムFinn Chamber(登録商標)AQUAで支持された8mmろ紙または、ろ紙が組み込まれた粘着剤フリーのポリエチレン樹脂からなる7mm IQ-ULTRA(登録商標)クローズドセルシステム(幅52mm長さ118mmの低アレルギーの非線維性粘着テープに10チャンバーずつ装備)または、他の同等物に被験物質を置き、閉塞環境下で試験した。
【0059】
半閉塞環境下で試験する被験物質は、レーヨン/ポリプロピレンパッドに適用するか、まはた低アレルギー性のテープ(Johnson&Johnson 1 inch First Aid Cloth Tape)で固定した7.5mmのろ紙に適用して試験を実施した。開放環境下で試験する被験物質は、被験者の背部に直接塗布した。
【0060】
約0.02-0.05mL(液体の場合)また約0.02-0.05gm(固体の場合)の被験物質を試験で使用した。液体の被験物質は、Finn Chamberに合う7.5mmろ紙に浸透させて試験に使用した。
【0061】
被験者は、試験施設への到着前に普段どおりに入浴もしくは洗浄をすることを求められた。被験物質を含有したパッチを被験者の背部正中線の左右いずれかの肩甲骨の下部分の皮膚に直接あてて固定した。その後、被験者は試験部位を水で濡らさず、日光に直接暴露しないように指示を受けて帰宅した。初回は48時間パッチした。被験者は48時間後の来所以前にパッチを除去しないよう指示された。その後の試験においては、適用24時間後にパッチを取り除くように指示された。24時間パッチは週に3回、連続3週間、合計9回繰り返された。繰り返しパッチの直前に、トレーニングを受けた試験専門員により被検部位を評価された。
【0062】
10日から14日間の休薬期間後に、以前の試験部位以外の皮膚部位に被験品を適用(惹起あるいは再適用)し、48時間後および96時間後に、トレーニングを受けた試験専門員によって被検部位が評価された。有害反応がみられる場合は、その部位の紅斑および浮腫を評価した。浮腫は、浮腫周辺部位と比較して評価した。最終判定後に遅延型の皮膚反応が生じた場合、被験者はそれを報告するように指示された。有害反応がみられた場合にはただちに試験委託者にその旨を連絡し、必要に応じて対応方法が決定された。
【0063】
[スコアリング]
図7および
図8で使用した評点基準および下記に使用した記号の定義は、国際接触皮膚炎研究グループ評価基準(Rietschel、 R. L.、 Fowler、 J. F.、 Ed.、 Fisher’s Contact Dermatitis 4版. Baltimore、 Williams &Wilkins、 1995)に準じた。
0 何ら影響は認められなかった。
1 パッチ適用部位の4分の3以上にわたって紅斑がみられる。
2 パッチ適用部位の4分の3以上にわたって紅斑やしこり(炎症による組織硬化)がみられる。
3 紅斑やしこり(炎症による組織硬化)、浮腫がみられる。
4 紅斑やしこり(炎症による組織硬化)、水疱がみられる。
D 反応のためにパッチが剥離された。
Dc 試験日時に被験者が出頭しなかったため、試験は中止した。
Dcl 試験者の判断により試験を中止した。
【0064】
[試験結果]
本試験条件において被験物質(pH12.5(純粋99.83%、 水酸化カリウム0.17%))は、皮膚刺激性および感作(接触アレルギー)性を惹起する可能性を示さなかった。
【0065】
[本実施形態に係るアルカリイオン水の光毒性試験]
本発明者は、試験機関(株式会社きれいテストラボ)において、本実施形態に係るアルカリイオン水の「光毒性試験」を実施した。
【0066】
[試験目的]
被験品の光毒性作用を評価するため、ROSアッセイ試験を実施した。
【0067】
[試験概要]
光毒性とは、日光を介して発症する化学物質誘発性の毒性反応である。光毒性を示す物質は、光刺激性・光アレルギー性・光遺伝毒性・光がん原性などを誘導する可能性がある。そのため、日光にさらされる可能性のある化粧品などの製品には、光毒性を示す物質が配合されていない事が重要である。化学物質の太陽光の吸収に伴う物質の励起によって生成される「1O2」や「・O2
-」などの活性酸素種(ROS)が、光毒性の主因である事が知られている。そこで、本試験では、ソーラーシミュレーター照射下において発生する「1O2」、および「・O2
-」の量を測定するROSアッセイを用いて、被験品の光毒性を評価した。
【0068】
試薬および被検試料の秤量は、電子天秤(GF-4000、 A&D)または微量電子天秤(ML104T/00、 MettlerToledo)を用いた。試薬および被検試料は、「室温:株式会社きれいテストラボ 試験センター 分析室薬品保管庫」にて保管した。
【0069】
被検試料は、被験品(液体、透明)をジメチルスルホキシド(CAS No. 67-68-5、Lot. DLN2070、室温、和光純薬工業)によって2.5mg/mL(分子量未知の試料)に用時調製して試験に供した。
【0070】
陰性対照試料は、スリソベンゾン(CAS No. 4065-45-6、Lot. 0000008288、室温、Sigma-Aldrich)をジメチルスルホキシドによって10mMに調製し、陰性対照として試験に供した。
【0071】
陽性対照試料は、キニーネ塩酸塩二水和物(CAS No. 6119-47-7、Lot. CAN5766、室温、和光純薬工業)をジメチルスルホキシドにより10mMに調製し、陽性対照として試験に供した。
【0072】
「20mMリン酸緩衝液」は、リン酸二水素ナトリウム二水和物(Na2HPO4・2H2O、CAS No. 13472-35-0、Lot. WDQ2895、室温、和光純薬工業)0.593 gとリン酸水素二ナトリウム・十二水和物(Na2HPO4・12H2O、CAS No. 10039-32-4、Lot.CAG5515、室温、和光純薬工業)5.8gを900mLの精製水で溶解し、塩酸(CAS No. 7647-01-0、Lot.008H1011、室温、和光純薬工業)でpH7.4に調整後、精製水を加えて1000 mLとし、混合した。
【0073】
「0.2mMp-ニトロソジメチルアニリン」は、p-ニトロソジメチルアニリン(CAS No. 138-89-6、Lot. D2191501、室温、Alfa Aesar)15mgを500mLの20mMリン酸緩衝液で溶解し、使用時まで遮光した。
【0074】
「0.2mMイミダゾール」は、イミダゾール(CAS No. 288-32-4、Lot. SLBS6105、室温、Sigma-Aldrich)27.2mgを10mLの20mMリン酸緩衝液で溶解し、20mMリン酸緩衝液で100倍希釈し、使用時まで遮光した。
【0075】
「0.4mMニトロブルーテトラゾリウムクロリド」は、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(CAS No. 298-83-9、Lot. SE146、室温、同仁化学研究所)32.7mgを100mLの20mMリン酸緩衝液で溶解し、使用時まで遮光した。
【0076】
[試験操作]
一重項酸素「
1O
2」発生量の検出については、表11に従い、20mMリン酸緩衝液、0.2mMイミダゾール、0.2mMp-ニトロソジメチルアニリン、被検試料をジメチルスルホキシドによって2.5mg/mLに調製した溶液、陰性対照(10mMスリソベンゾン溶液)および陽性対照(10mMキニーネ塩酸塩二水和物溶液)を調製し、「
1O
2」測定用の反応液を作成した.操作対照には被検試料および対照物質と同量のジメチルスルホキシドを用いた.調製した「
1O
2」反応液を96ウェルプレートに各群200μL、3ウェルずつ添加した。
【表11】
【0077】
スーパーオキシドアニオン「・O
2
-」発生量の検出については、表12に従い、20mMリン酸緩衝液、0.4mMニトロブルーテトラゾリウムクロリド、被検試料をジメチルスルホキシドによって2.5mg/mLに調製した溶液、陰性対照(10mMスリソベンゾン溶液)および陽性対照(10mMキニーネ塩酸塩二水和物溶液)を用いて「・O
2
-」測定用の反応液を調製した。また、操作対照には被検試料および対照物質と同量のジメチルスルホキシドを用いた.調製した「・O
2
-」反応液を96ウェルプレートに各群200μL、3ウェルずつ添加した。
【表12】
【0078】
被検試料1-1、操作対照(B)、陽性対照(P)および陰性対照(N)の添加は
図9に従った。各物質の添加後、目視によって着色や色調の変化の確認、顕微鏡によって反応液の溶解性を確認した。また、「
1O
2」と「・O
2
-」は、同一プレート上で測定した。なお、被験品は、
図9の試験試料1に相当するウェルに添加した。
【0079】
光照射前に、マイクロプレートリーダー(SPARK(登録商標) 10M、 TECAN)を用いて440nm(A440)および560nm(A560)の吸光度を測定した。「Quartz reaction container(オザワ科学)」に93ウェルマイクロプレートを装着し、ソーラーシミュレーター(Suntest CPS+、 Atlas)を用いて60分間照射した。また、96ウェルプレートへの照射前にあらかじめ15分以上照射し、ソーラーシミュレーターの照射光と温度を安定させた。ソーラーシミュレーターの温度は25℃に設定した。照射後に96ウェルプレートを270rpmで1分間振り混ぜて、反応液を十分に攪拌した後、目視によって着色や色調の変化を確認、顕微鏡によって反応液の溶解性を確認した。マイクロプレートリーダーによって「A440」および「A560」を測定し、これらを生データとした。
【0080】
「ROS生成の計算」は、次のように行った。「1O2生成量」については、被検試料、陽性対照および陰性対照の「1O2」生成量(arbitrary unit; a.u.)を以下の式に従い算出した。
「1O2」の生成量 = [A440(-) - A440 (+) - (a - b)] × 1000
A440 (-):光照射前の440 nmでの吸光度
A440 (+):光照射後の440 nmでの吸光度
a:光照射前の440 nmでの操作対照の吸光度(平均)
b:光照射後の440 nmでの操作対照の吸光度(平均)
「・O2
-」生成量については、被検試料、陽性対照および陰性対照の・O2
-生成量(a.u.)を以下の式に従い算出した.
「・O2
-」の生成量 = [A560 (+) - A560 (-) - (b - a)] × 1000
A560 (-):光照射前の560 nmでの吸光度
A560 (+):光照射後の560 nmでの吸光度
a:光照射前の560 nmでの操作対照の吸光度(平均)
b:光照射後の560 nmでの操作対照の吸光度(平均)
【0081】
[判定]
被検試料の光毒性は、「ROS assay protocol (Version 3.2、 28 November 2014)」の基準に沿って判定し、表13に示した。被検試料の「
1O
2」が25未満、「・O
2
-」が20未満の場合を、陰性とした。また、「
1O
2」が25未満、「・O
2
-」が20以上70未満の場合を、弱陽性とした。さらに、「
1O
2」が25以上または「・O
2
-」が7以上の場合を陽性とした。
【表13】
【0082】
[試験結果]
陰性対照、陽性対照および被検試料の測定値、ROS生成量の平均および標準偏差、被検試料の判定結果を表14~表17に記載した。被検試料共存下での「1O2」生成量平均値±標準偏差は1±3、「・O2
-」生成平均値±標準偏差は-3±1を示し、「1O2」生成量が25未満、「・O2
-」生成量が20未満であった。したがって被検試料は、OECDテストガイドライン495等に沿った判定基準により、被検試料の光毒性は「陰性」と判定された。
【0083】
[本実施形態に係るアルカリイオン水のスティンギング試験]
本発明者は、試験機関(株式会社きれいテストラボ)において、本実施形態に係るアルカリイオン水の「スティンギング試験」を実施した。
【0084】
[試験目的]
被験品の塗布による感覚刺激を評価するため、スティンギングテストを乳酸スティンガーに対して実施した。
【0085】
[試験概要]
スティンギングとは、皮膚外用剤を塗布した際に感じる「ピリピリ」「ヒリヒリ」「かゆみ」「つっぱり感」などの感覚刺激のことをいう。スティンギングテストは、これら紅斑や浮腫といった皮膚炎症性症状を伴わない一過性の反応である感覚刺激を評価する。本試験では、乳酸に対して感覚刺激を呈する被験者の頬部に被験品を塗布した。続く30秒後、2分後および5分後に生じた感覚刺激を評価基準に従って被験者に評価させ、平均値を被験品の感覚刺激として評価した。
【0086】
陽性対照品として、精製水によって5%に調製した乳酸(ムサシノ乳酸90F、CAS No. 79-33-4、武蔵野化学研究所)を用いた。
【0087】
試験方法は、次の通りである。まず、スティンギングテストによって敏感肌の被験者を選定した。スティンギングテストは「Frosch(1997)」の方法を参考に以下の通り実施した。
(1)クレンジング剤と石鹸で洗顔をした。
(2)洗顔後5分間待機し、精製水によって調製した5%乳酸溶液を一方の頬部に塗布した。
(3)5%乳酸塗布30秒後、2分後および塗布5分後に感じた刺激を被験者が評価し、感覚刺激をスコア化した(表14)。
(4)5%乳酸塗布30秒後、2分後および5分後の感覚刺激スコアの累計を算出し、累計スコアが6.0以上の被験者を敏感肌の被験者とした。
【表14】
【0088】
被験部位は顔面(5%乳酸溶液を塗布していない)頬部を用いた。評価方法としては、被験品を被験者の頬部に塗布し、30秒後、2分後および5分経過時に感じた感覚刺激を評価基準(表14)に従って、評価記録した。評価後、温水により被験者が塗布部位を洗浄した。
【0089】
スティンギングの判定としては、評価基準(表14)に従って感覚刺激をスコア化し、各被験者の被験品塗布30秒後、2分後および5分後のスコアから平均を算出し、個人スコアとした。本試験において個人スコアの平均値が2未満の場合には、「非刺激性」、2以上4未満の場合には「中程度の刺激性」、4以上の場合には「強い刺激性」と判定した。
【表15】
【0090】
[試験結果]
試験期間を通じて、有害事象は認められなかった。被験者の男女構成および年齢構成を表16に示す。被験品のスコア平均値および表15に基づく判定を表17、個別データを
図10に示し、累計スコア平均値を表18、個人スコアの平均値を表19,判定結果を表20に示した。5%乳酸を用いたスクリーニング試験によって敏感肌と判定した被験者(表16)を対象としたスティンギングテストにより、被験品の感覚刺激を評価した。評価基準に従った判定により、本試験において被験品のスコア平均値は1.30を示し、「非刺激性」と判定された。また、スクリーニング試験において5%乳酸の累計スコア平均値は8.18を示した。さらに5%乳酸の累計スコアと被験品の累計スコアとの差の平均値は4.27を示した。
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0091】
[本実施形態に係るアルカリイオン水の変異原生試験]
本発明者は、試験機関(株式会社ビー・エム・エル)において、本実施形態に係るアルカリイオン水の「変異原生試験」を実施した。
【0092】
本試験は、微生物を用いる変異原生試験である。使用菌株を、「Salmonella typhimurium TA100, TA1535, TA98, TAI537, Escherichia coli WP2 uvrA」とした。培養および陰性対象を「注射用水」とした。被験物質用量は、「1/729希釈液、1/243希釈液、1/81希釈液、1/27希釈液、1/9希釈液、1/3希釈液、原液」とした。
【0093】
試験結果を、
図11に示す。代謝活性化の有無にかかわらず、いずれも菌株においても陰性対象の2倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかった。このため、陰性と判定された。
【0094】
以上説明したように、本実施形態に係るアルカリイオン水は、人体に対して、非刺激性、非アレルギー性、非眼刺激性および非光毒性を有する。さらに、発がん性についても陰性であるといえる。本実施形態によれば、頭皮や毛髪の汚れを効果的に除去することができ、頭皮や毛髪を良好な状態に保持することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1 生成タンク
1a 原水供給口
1b 排出口
1c 取込み口
1d 取出し口
2 電解液タンク
2a 電解液排出口
2b電解液帰還口
3 撹拌手段
3a エアポンプ
3b エア供給パイプ
4 電解槽
5 陰極室
5a (陰極室の)入口
5b (陰極室の)出口
5x 陰極板
5y 陰極ターミナル
6 陽極室
6a (陽極室の)入口
6b (陽極室の)出口
6x 陽極板
6y 陽極ターミナル
7 イオン交換膜
8 直流電源
9 原水量制御手段
9a 下段のフロートスイッチ
9b 上段のフロートスイッチ
9v 第一主流路
9w 第一分岐路
9x 第二分岐路
9y 第一電磁バルブ
9z 第二電磁バルブ
10 スペーサ
11 仕切り板
A 原水供給源
P1 原水循環ポンプ
P2 電解液循環ポンプ
Q1 電解液流路
Q2 電解液帰還流路
R1 原水供給路
R2 原水流路
R3 帰還流路
R4 取出し流路