(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092900
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】陣笠付き煙突
(51)【国際特許分類】
F23L 17/02 20060101AFI20230627BHJP
E04H 12/28 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F23L17/02 602E
F23L17/02 602J
E04H12/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208199
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 元宏
(72)【発明者】
【氏名】江水 友弘
(72)【発明者】
【氏名】栃下 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳宣
(57)【要約】
【課題】陣笠付き煙突において、雨水などの水が、陣笠の支柱と煙突本体との連結手段を伝って煙突本体の断熱壁材の内部へ浸み込むのを防止する。
【解決手段】陣笠付き煙突3の煙突本体10の先端面には環状の先端カバー30が設けられ、先端カバー30上に陣笠20の屋根部21を支持する支柱22が立設され、支柱22の下端部と先端カバー30とが連結手段40によって連結されている。先端カバー30が煙突本体10から外方へ延び出て、該外方への延出部分33eに連結手段40が配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱壁材を含む煙突本体の先端に排煙部を構成する陣笠が設けられた陣笠付き煙突であって、
前記煙突本体の先端面には環状の先端カバーが被せられ、前記先端カバー上に前記陣笠の屋根部を支持する支柱が立設され、前記支柱の下端部と前記先端カバーとが連結手段によって連結されており、
前記先端カバーが前記断熱壁材から外方へ延び出て、該外方への延出部分に前記連結手段が配置されていることを特徴とする陣笠付き煙突。
【請求項2】
前記先端カバーにおける煙突内側の端部には上方へ突出するカバー堰板部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の陣笠付き煙突。
【請求項3】
前記陣笠の側面部には、板状のルーバーが設けられ、前記ルーバーにおける陣笠内側の端部には上方へ突出するルーバー堰板部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の陣笠付き煙突。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突に関し、特に先端に陣笠が設けられた陣笠付き煙突に関する。
【背景技術】
【0002】
陣笠を有する煙突は公知である(特許文献1等参照)。一般に、この種の陣笠は、煙突本体の先端開口の上方を覆う屋根部と、これを支持する複数の支柱を含む。先端開口から出た煙(排ガス)は、隣接する支柱どうし間の陣笠側面部から排出される。支柱は、煙突本体の先端面に立設されている。煙突本体の先端面には、ステンレス等の金属製の先端カバーが被せられている。先端カバーひいては煙突本体と、支柱の下端部とは、ボルト及びナットからなる連結手段によって連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の陣笠付き煙突においては、支柱及び連結手段のボルトとナットが、煙突本体の断熱壁材の先端面と平面視で重なる位置に配置されている。このため、雨水などの水が、先端カバーのボルト挿通孔やボルトとナットのネジ山どうし間を通って断熱壁材内に浸み込むおそれがあった。また、断熱壁材の先端面に連結手段のボルト頭部又はナットのための逃げ凹部を形成する必要があった。
本発明は、かかる事情に鑑み、陣笠付き煙突において、雨水などの水が、陣笠の支柱と煙突本体との連結手段を伝って煙突本体の断熱壁材の内部へ浸み込むのを防止するとともに、断熱壁材の先端面に連結手段のボルト頭部又はナットのための逃げ凹部を形成する必要が無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、断熱壁材を含む煙突本体の先端に排煙部を構成する陣笠が設けられた陣笠付き煙突であって、
前記煙突本体の先端面には環状の先端カバーが被せられ、前記先端カバー上に前記陣笠の屋根部を支持する支柱が立設され、前記支柱の下端部と前記先端カバーとが連結手段によって連結されており、
前記先端カバーが前記断熱壁材から外方へ延び出て、該外方への延出部分に前記連結手段が配置されていることを特徴とする。
当該陣笠付き煙突によれば、平面投影視において、連結手段が煙突本体の断熱壁材の外側に配置されている。したがって、雨水などの水が連結手段を伝って先端カバーの下方へ通り抜けたとしても、その水が断熱壁材の内部に浸み込むことはない。また、断熱壁材の先端面に連結手段のボルト頭部又はナットのための逃げ凹部を形成する必要が無い。
【0006】
好ましくは、前記先端カバーにおける煙突内側の端部には上方へ突出するカバー堰板部が形成されている。
これによって、先端カバーの上面に付いた水滴や、先端カバー上を煙突内へ吹き込まれようとする雨水をカバー堰板部によって堰き止めて、これら水が煙突本体の煙道内に入り込むのを防止又は低減することができる。
【0007】
好ましくは、前記陣笠の側面部には、板状のルーバーが設けられ、前記ルーバーにおける陣笠内側の端部には上方へ突出するルーバー堰板部が形成されている。
これによって、ルーバーの上面に付いた水滴や、ルーバー上を陣笠内へ吹き込まれようとする雨水をルーバー堰板部によって堰き止めて、これらの水が煙道内に入り込むのを防止又は低減することができる。
好ましくは、前記陣笠の側面部には、複数のルーバーが上下に間隔を置いて設けられている。煙突本体の先端開口から出た煙(排ガス)は、陣笠の内部を経て、上下に隣接するルーバーどうし間の隙間を通って排出される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る陣笠付き煙突によれば、雨水などの水が連結手段を伝って煙突本体の断熱壁材の内部へ浸み込むのを防止することができる。また、断熱壁材の先端面に連結手段のボルト頭部又はナットのための逃げ凹部を形成する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る陣笠付き煙突の上端部分を示し、
図2のI-I線に沿う正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、例えば商業用ビルや工場などの建物1には、陣笠付き煙突3が付属されている。建物1内におけるボイラーや発電機等の設備(図示せず)から出た排ガスが、陣笠付き煙突3内の煙道3aを通って排出される。
【0011】
図2に示すように、陣笠付き煙突3の平面断面形状は、四角形(長方形)であるが、本発明はこれに限らず、円形であってもよく、四角形以外の多角形であってもよい。
【0012】
図1に示すように、陣笠付き煙突3は、煙突本体10と、陣笠20を備えている。煙突本体10は、断熱壁材13と、外壁14と、内壁15を含む。断熱壁材13は、珪酸カルシウム等の硬質の断熱材料にて構成されている。断熱壁13の外面に外壁14が設けられている。断熱壁13の内面に内壁15が設けられている。外壁14及び内壁15は、ステンレス鋼板等の金属板によって構成されている。
【0013】
図1に示すように、煙突本体10の上側部分(先端側部分)は、建物1の屋上床2から突出されている。煙突本体10の先端面には、先端カバー30が被せられている。
図2に示すように、先端カバー30は、煙突本体10の平面断面形状に合わせて、四角形(長方形)の環状ないしは枠形状に形成されている。
【0014】
図3に示すように、先端カバー30は、カバー部材31と、受け板32を備えている。カバー部材31は、カバー板33と、内側板34と、外側板35を含む。カバー板33は、ステンレス鋼板等の金属板によって、煙突本体10の先端部の平面形状に合わせた四角形の枠板状に形成され、煙突本体10に被さっている。カバー板33と煙突本体10との間には受け板32が介在されている。受け板32は、カバー板33より厚肉のステンレス鋼板等の金属板によって構成されている。受け板32が、煙突本体10の先端面に直接被さっている。受け板32によってカバー板33が水平に支えられている。カバー板33と受け板32との間には、パッキン36が介在されている。
【0015】
図2に示すように、カバー板33における煙突内側の端部は、煙突本体10の内面と平面投影視でほぼ重なる位置に配置されている。
図3に示すように、カバー板33の煙突内側(
図3において左側)の端部に内側板34の中間部が接合されている。内側板34は、カバー板33との接合部より上側のカバー堰板部34aと、接合部より下側の垂下部34bとを含む。カバー堰板部34aは、カバー板33から上方へ突出されている。垂下部34bは、カバー板33から下方へ垂れて、内壁15に宛がわれている。
【0016】
図3に示すように、受け板32及びカバー板33は、それぞれ平面視で煙突本体10の外壁14よりも外方へ延び出る延出部分32e,33eを有している。
図2に示すように、延出部分32e,33eは、煙突本体10の全周から外方へ延び出ている。
図2及び
図3に示すように、受け板32の延出部分32eは、煙突本体10の外周に間隔を置いて設けられた複数の補強リブ37によって下から支持されている。
【0017】
図3に示すように、カバー板33の延出部分33eは、受け板32の延出部分32eよりも少し外方へ突出されている。カバー板33の延出部分33eにおける煙突外側の端部から外側板35が垂下されている。外側板35の下端部には、煙突内側へ向かう返し部35bが形成されている。
【0018】
図1に示すように、煙突本体10の上側に陣笠20が設けられている。陣笠20によって、煙突3の排煙部が構成されている。陣笠20は、屋根部21と、複数の支柱22を備えている。屋根部21が、煙突本体10の先端開口(煙道3aの上端部)の上方へ離れて、これを覆っている。支柱22によって屋根部21が支持されている。
【0019】
支柱22は、鉛直に伸びる支柱本体22aと、下端部の底板22bとを有している。支柱本体22aは、L字断面のアングル材によって構成されている。底板22bは平鋼板によって構成されている。底板22bの上面に支柱本体22aの下端面が突き当てられて溶接されている。支柱本体22aの上端部に屋根部21が固定されている。
【0020】
複数の支柱22が、煙突本体10の環状の先端面の周方向に間隔をおいて配置されている。各支柱22は、先端カバー30の延出部分32e,33e上に立設されている。したがって、支柱22は、平面視において煙突本体10の外側に配置されている。
【0021】
延出部分32e,33eには、支柱22との連結手段40が設けられている。連結手段40は、ボルト41及びナット42を含む。ボルト41が、支柱22の底板22bと延出部分32e,33eを貫通して、ナット42で止められている。底板22b及び延出部分32e,33e並びにパッキン36には、ボルト41を通すボルト挿通孔38が形成されている。
【0022】
図1に示すように、陣笠20の4つの側面部には、複数のルーバー23が上下に間隔を置いて設けられている。各ルーバー23は、隣接する複数の支柱22に跨って水平に架け渡されている。
【0023】
支柱22にはL字状の受け材24が取り付けられている。受け材24の水平片にルーバー23が設置されている。これによって、ルーバー23が、受け材24を介して、支柱22に支持されている。
【0024】
上下に隣接するルーバー23どうしの間には、水平スリット状の隙間25が形成されている。隙間25は排煙口となる。
【0025】
図3に示すように、ルーバー23は、水平なルーバー板部23aと、垂直なルーバー堰板部23bを有する断面L字状の板状に形成されている。ルーバー板部23aが、支柱22から外方へ突出されるようにして、受け材24上に載せられて固定されている。
【0026】
図3に示すように、ルーバー堰板部23bは、ルーバー板部23aにおける陣笠内側(
図3において左端)の端部から上方へ突出されている。
【0027】
陣笠付き煙突3において、煙道3a内を上昇した煙(排ガス)は、煙突本体10の先端開口から陣笠20の内部を経て、隙間25を通って排出される。
陣笠付き煙突3によれば、平面投影視において、連結手段40が煙突本体10の外側に配置されているから、雨水などの水がボルト挿通孔38やボルト41とナット42のネジ山どうし間を通って先端カバー30の下面へ通り抜けたとしても、その水が煙突本体10の断熱壁材13の内部に浸み込むことはない。また、断熱壁材13の先端面に連結手段のボルト頭部又はナットのための逃げ凹部を形成する必要が無い。
【0028】
カバー板33の上面に付いた水滴が、煙突内側へ流れようとしたときは、カバー堰板部34aによって堰き止めることができる。また、カバー板33の上方を煙突内へ吹き込まれようとする雨水をカバー堰板部34aによって堰き止めることができる。したがって、これらの水が煙道3a内に入り込むのを防止又は低減することができる。
たとえ、水が、カバー堰板部34aの上端部を回り込んだとしても、その水は、内側板34の煙道3a内を向く面を伝って下降し、垂下部34bから内壁15の煙道3a内を向く面へ移行される。したがって、水が、カバー板33の下面に回り込むのを防止でき、煙突本体10の断熱壁材13に浸み込むのを確実に防止できる。
また、カバー板33の外端部には外側板35が垂下されているため、カバー板33の上面の水滴や雨水が、カバー板33の外端部を回り込んで煙突本体10の内部に浸み込むのを防止できる。
【0029】
さらに、ルーバー板部23aの上面に付いた水滴や、隙間25を通って陣笠20内へ吹き込まれようとする雨水は、ルーバー堰板部23bによって堰き止めることができる。したがって、これらの水が、陣笠20の内部から煙道3a内に入り込むのを防止又は低減することができる。
【0030】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、支柱22の下端部と先端カバー30との連結手段は、ボルト41及びナット42に限らず、リベット等であってもよい。
連結手段が先端カバー30の延出部分33eに配置されていればよく、支柱本体22aは平面視で煙突本体10と重なる位置に配置されていてもよく、底板22bが前記重なる位置から延出部分33eへ延び出ていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば商業ビル、工場等の建物に付属の陣笠付き煙突に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 建物
2 屋上床
3 陣笠付き煙突
3a 煙道
10 煙突本体
13 断熱壁材
14 外壁
15 内壁
20 陣笠
21 屋根部
22 支柱
22a 支柱本体
22b 底板(支柱の下端部)
23 ルーバー
23a ルーバー板部
23b ルーバー堰板部
24 受け材
25 隙間
30 先端カバー
31 カバー部材
32 受け板
32e 延出部分(外方への延出部分)
33 カバー板
33e 延出部分(外方への延出部分)
34 内側板
34a カバー堰板部
34b 垂下部
35 外側板
35b 返し部
36 パッキン
37 補強リブ
38 ボルト挿通孔
40 連結手段
41 ボルト
42 ナット