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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092913
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】発信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20230627BHJP
   H01H 13/14 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
G08B17/00 H
H01H13/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208218
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山納 正人
【テーマコード(参考)】
5G206
5G405
【Fターム(参考)】
5G206AS32H
5G206FS03H
5G206FS03N
5G206GS17
5G206HS16
5G206HW14
5G206HW19
5G206QS02
5G405AA02
5G405CA09
5G405CA51
5G405FA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誤って通行人の体の一部や荷物が保護板に当たったとしても誤報を発するおそれがない発信機を提供する。
【解決手段】押しボタン式スイッチを内蔵し該押しボタン式スイッチの前方に凹部(凹状を成す収納部)21を有する収納ケース(筐体)23と、収納部に収納可能であり前面が平板状をなす頭部を有し押しボタン式スイッチの前方を覆う保護板10とを備えた発信機であって、保護板は、収納部へ向かって頭部の前面と直交する方向へ突出する円筒状の移動ガイド11を頭部の裏面に有する。収納部は、頭部を押しボタン式スイッチの作動方向に向かって誘導して移動ガイドに嵌合可能な誘導ガイド24Aを有する。移動ガイド又は誘導ガイドの嵌合面に突起或いは移動ガイド又は誘導ガイドに突起が係合する溝又は切れ込みがそれぞれ設けられる。溝又は切れ込みは、移動ガイド又は誘導ガイドの外周面の稜線と平行でない部位を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタン式スイッチを内蔵し前記押しボタン式スイッチの前方に凹状を成す収納部を有する筐体と、
前記収納部に収納可能であり、平板状をなし操作者によって押下される頭部を有し前記押しボタン式スイッチの前方を覆う保護板と、
を備えた発信機であって、
前記保護板は、前記収納部へ向かって前記頭部の前面と直交する方向へ突出する円筒状の移動ガイドを前記頭部の裏面に有し、
前記収納部は、前記頭部を前記押しボタン式スイッチの作動方向に向かって誘導し、前記移動ガイドに嵌合可能な誘導ガイドを有し、
前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの嵌合面に突起が、また前記誘導ガイドまたは前記移動ガイドに前記突起が係合する溝または切れ込みがそれぞれ設けられ、
前記溝または切れ込みは、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの外周面の稜線と平行でない部位を有するように形成されていることを特徴とした発信機。
【請求項2】
前記溝または切れ込みは、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの中心軸を軸心として螺旋状をなす部位を有することを特徴とした請求項1に記載の発信機。
【請求項3】
前記溝または切れ込みは、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの外周面の稜線と直交した部位を有することを特徴とした請求項1または2に記載の発信機。
【請求項4】
前記保護板の頭部の表面には凹凸が形成されていることを特徴とした請求項3に記載の発信機。
【請求項5】
前記移動ガイドおよび前記誘導ガイドは、一方の外径が他方の内径より小さく設定されており、
前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドのうち内径が他方の外径より大きいものの内周面に前記突起が設けられ、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドのうち外径が他方の内径より小さいものの外周面に前記溝が設けられていることを特徴とした請求項1に記載の発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタン式スイッチを内蔵した発信機に関し、例えば建物の壁部に設けられ火災発生時に操作されることで警報を発するための発信機に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内部には火災の発生を知らせるために、火災報知システムが設けられている。火災報知システムは、火災感知器や押しボタン式スイッチを備えた手動の火災報知用の発信機、受信機、火災報知用のベル、表示灯などから構成され、このうち火災報知用の発信機は建物の廊下等の壁面に適切な高さで設置されている。火災発生時には、発見者が火災報知用の発信機の押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより、火災発生を知らせる信号が受信機に伝送されると共に、発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し火災発生を知らせることができる。
【0003】
従来の火災報知用発信機は、室内露出部分を覆う円盤状の前面パネル部を発信機本体の前面に備えたものが一般的であり、発信機本体は上記押しボタン式スイッチを内蔵しており、建物の壁面に埋め込むように設置される。また、離れたところからでもまた暗がりであっても発見し易いように、火災報知用発信機の近傍に砲弾状をなす表示灯が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-142051号公報
【特許文献2】特開平04-85699号公報
【特許文献3】特開2014-153993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の火災報知用発信機においては、図8に示すように、発信機の前面の中央に配設されている押しボタンBが一端(図では下端)に設けられた支点部Fを中心として傾動して内部のスイッチSをオンさせる構成であったため、押しボタンを指で押圧した際に押しボタンの前面が傾いて指を滑らせてしまい、前面パネルの開口の隙間に指先が入り込んで不快感を与えるおそれがあった。また、従来の発信機は、押しボタンの径が小さいため操作性が悪いという課題もあった。
【0006】
そこで、押しボタンの径を大きくすることを考えたが、図8に示すような傾動方式の押しボタンの場合、径を大きくすると構造上スイッチをオンさせるほどの移動を許容する空間を確保するのが難しいとともに、スイッチをオンさせるため移動量を大きくすると、指を滑らせて前面パネルの開口の隙間に指先が入り込み易くなるという課題があることが分かった。なお、図8に示すような構成を備えた発信機としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
一方、発信機の押しボタンの前面における指の滑りを回避する構成として、例えば特許文献2や3に記載されているように、指で押圧した際に押しボタン(押圧保護板)を平行移動させるようにする構成が考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献2や3に記載されている押しボタンを平行移動で押し込む構成の発信機にあっては、発信機の存在感を高めるとともに操作性を良くするために、保護板(押しボタン)の大口径化を図るようにすると、意図的ではない通報(誤報)の懸念が高まってしまうという課題がある。具体的には、例えば発信機が配設されている通路を歩行している人が発信機の傍でバランスを崩してよろめき、肩や肘など体の一部が押しボタンに当たって押し込んだり、大きな荷物を抱えた人が対向する人とすれ違うときに体勢を変えた拍子に荷物の角で押しボタンを押し込んだりして誤報を発してしまうことが、押しボタンのサイズの小さな従来の発信機に比べると高まってしまう。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、誤って通行人の体の一部や荷物が保護板に当たったとしても誤報を発するおそれがない発信機を提供することにある。
本出願の他の目的は、押しボタン式スイッチの操作性向上のため押しボタン(保護板)を大口径化したとしても、押圧した際に傾かず安定して平行移動させて確実にスイッチをオンさせることができる発信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
押しボタン式スイッチを内蔵し前記押しボタン式スイッチの前方に凹状を成す収納部を有する筐体と、
前記収納部に収納可能であり、平板状をなし操作者によって押下される頭部を有し前記押しボタン式スイッチの前方を覆う保護板と、
を備えた発信機であって、
前記保護板は、前記収納部へ向かって前記頭部の前面と直交する方向へ突出する円筒状の移動ガイドを前記頭部の裏面に有し、
前記収納部は、前記頭部を前記押しボタン式スイッチの作動方向に向かって誘導し、前記移動ガイドに嵌合可能な誘導ガイドを有し、
前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの嵌合面に突起が、また前記誘導ガイドまたは前記移動ガイドの嵌合面に前記突起が係合する溝または切れ込みがそれぞれ設けられ、
前記溝または切れ込みは、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの外周面の稜線と平行でない部位を有するように形成したものである。
【0010】
上記構成によれば、頭部裏面の円筒状の移動ガイドと筐体側の誘導ガイドとの嵌合構造にて保護板が移動する構成であるため、押しボタン式スイッチの操作性向上のため保護板(押しボタン)を大口径化したとしても、押圧した際に保護板が傾かず安定して平行移動させてスイッチをオンさせることができる。また、ガイドの外周面の稜線と平行でない部位を有するように形成された溝または切れ込みに突起が係合して誘導する構成であるため、押圧力の一部がトルクに変換され保護板が回転しながら移動することとなるので、誤って通行人の体の一部や荷物が保護板に当たったとしても保護板が奥部まで移動することが困難となり、スイッチがオンされて誤報を発するおそれがない。
【0011】
ここで、望ましくは、前記溝または切れ込みは、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの中心軸を軸心として螺旋状をなす部位を有するように構成する。
かかる構成によれば、ガイドに形成された溝または切れ込みが螺旋状をなす部分が押圧力の一部を効率よくトルクに変換させることができる。
【0012】
また、望ましくは、前記溝または切れ込みは、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドの外周面の稜線と直交した部位を有するように構成する。
かかる構成によれば、ガイドに形成された溝または切れ込みの稜線と直交した部位によって保護板の押し込みを一旦停止させ、回転させることで奥部まで押し込んでスイッチをオンさせることが可能になるため、誤って通行人の体の一部や荷物が保護板に当たったとしても保護板が奥部まで移動することが不能となり、スイッチがオンされて誤報を発するのを確実に防止することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記保護板の頭部の表面には凹凸が形成されているようにする。
かかる構成によれば、スイッチをオンさせるために保護板を押圧しつつ回転させる際に手の平や指先が滑って回転させるのが困難になるのを防止することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記移動ガイドおよび前記誘導ガイドは、一方の外径が他方の内径より小さく設定されており、
前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドのうち内径が他方の外径より大きいものの内周面に前記突起が設けられ、前記移動ガイドまたは前記誘導ガイドのうち外径が他方の内径より小さいものの外周面に前記溝が設けられているようにする。
かかる構成によれば、内径より小さいガイドの外周面に突起を誘導する溝が設けられるため、製造工程で溝の形成が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、誤って通行人の体の一部や荷物が保護板に当たったとしても誤報を発するおそれがない。また、押しボタン式スイッチの操作性向上のため保護板を大口径化したとしても、押圧した際に傾かず安定して平行移動させて確実にスイッチをオンさせることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を火災報知用発信機に適用した場合の一実施例を示すもので、(A)は発信機の全体斜視図、(B)は一部分解斜視図ある。
図2】実施例の発信機における移動ガイドの動作を示す説明図ある。
図3】実施例の発信機の動作を示すもので、(A)は保護板を押し込む前の状態を示す断面側面図、(B)は押し込んだ後の状態を示す断面側面図である。
図4】(A)、(B)は発信機の移動ガイドの変形例を示す側面図である。
図5】実施例の発信機の移動ガイドまたは誘導ガイドに設けられる溝または切れ込みの例を示す図である。
図6図5(C)に示す形状の溝を有する移動ガイドと誘導ガイドとの関係を示す斜視図である。
図7図6に示す移動ガイドの動作を示す説明図である。
図8】従来の火災報知用発信機の内部構造の具体例を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を火災報知用発信機に適用した場合の実施形態について説明する。
本実施形態の火災報知用発信機(以下、単に発信機と記す)10は、火災等の異常が発生した際に、前面に設けられている押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより異常の発生を知らせる信号を火災受信機に伝送する機能を備え、建造物の壁面あるいは消火栓箱の扉などに設置されて使用されるように構成されている。
【0018】
図1図3は、第1実施例の発信機を示す。このうち、図1(A)は発信機の全体斜視図、(B)は発信機の本体側から保護板を外した状態を示す分解斜視図、図2は動作説明図、図3は発信機の押しボタン部分の構造を示す断面側面図である。
第1実施例の発信機は、図1(A)に示すように、押しボタン式スイッチを保護する円板状をなす保護板10と発信機本体部20とから構成されており、発信機本体部20には、図1(B)に示すように、保護板10を収納する凹部21および円環状をなす前面パネル部22を前部に有している。
【0019】
保護板10は、発信機本体部20の前面パネル部22の径のおよそ1/3~1/2の大きさの径を有している。また、発信機は回路基板等を内蔵した箱状の収納ケース23を備えており、内部に回路基板等を内蔵している。その回路基板等には、押しボタン式スイッチやスイッチのオン状態を検出して信号を生成し図示しない火災受信機へ信号を送信する回路が構成されている。なお、従来の一般的な発信機は、押しボタンの径が前面パネル部22の径のおよそ1/4の大きさであり、本実施形態の発信機の押しボタンに相当する保護板10の径は従来に比べて相対的に大きくなるように設定されている。
【0020】
また、保護板10の裏面には、円筒状をなす移動ガイド11が、保護板10の前面と直交する方向に後方すなわち発信機本体部20の凹部21の底部へ向かって突出するように設けられている。ここで、筒状をなす移動ガイド11の「高さ」は「内径」よりも大きくなるように設定されている。
なお、図1に示す保護板10の移動ガイド11は1つであるが、移動ガイド11の内側にこれよりも径の小さな円筒状の内側移動ガイドを設けて、2重円筒構造となるように形成しても良い。その場合、2つの移動ガイドの高さは同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0021】
一方、発信機本体部20は、前面側の凹部21の中央部に、前面中央に同心円の2重円筒状をなすように、外側誘導ガイド24Aと内側誘導ガイド24Bが、保護板10の前面と直交するように前方すなわち保護板10の裏面へ向かって突出するように設けられている。
また、外側誘導ガイド24Aの内径は、保護板10裏面の移動ガイド11の外径よりも僅かに大きくなるように設定されており、これにより誘導ガイド24Aと移動ガイド11は互いに嵌合可能に構成されている。
【0022】
さらに、保護板10の移動ガイド11には、例えば緩やかなS字状ないしは螺旋状のような、当該移動ガイド11の中心軸と平行な円筒外周面の直線すなわち円筒の稜線に対して傾斜した部位を有する形状をなす一対の切れ込み(スリット)11aが形成され、発信機本体部20の外側誘導ガイド24Aの内周面には上記切れ込み11aに係合し相対移動可能な一対の円柱状突起25が設けられている。
これにより、保護板10を前方より後方へ押し込むと、図2(A)~(C)に示すように、保護板10および移動ガイド11が回転しながら移動する。そのため、押し込み力の一部がトルクに変換されることで、抵抗力が発生し小さな押し込み力では内部のスイッチがオンされにくくなり、通行人の体の一部が触れたり荷物が当たったりしただけではスイッチがオンされず、誤報が発せられるのを防止することができる。
【0023】
なお、切れ込み11aは内周面から外周面まで貫通するスリットに限定されず、底部を有する溝であっても良いし、2本でなく1本あるいは3本以上設けても良い。また、切込みもしくは溝を外側誘導ガイド24Aに設け、円柱状突起25を移動ガイド11の外周面に設けても良い。ただし、図1に示すような嵌合構造であって切込みでなく溝を設ける場合には、ガイドの外周面に溝を設ける方が製造上有利である。
また、切れ込み11aが図1のように緩やかなS字状のような場合には、バネの反発力を強めに設定して体や荷物の一部が当たっただけでは簡単に保護板10を押し込めないようにするとともに、保護板10の表面を滑らかにして手の平や指が滑り易いようにして、保護板10を押し込んだ際に移動ガイド11の回転を阻害しないようにしても良い。
【0024】
さらに、保護板10を透光材で形成するとともに、発信機本体部20の凹部21の底部にLED(発光素子)を配設して、LEDが点灯されると、その光が保護板10の裏面側より入射して内部で乱反射し、保護板10の表面全体がぼんやりと光るように構成しても良い。また、保護板10の前面には、「強く押す」あるいは「少し回転させながら強く押す」なる文字が印字されていても良い。
【0025】
また、図3に示すように、内側誘導ガイド24Bの内側にアクチュエータ(ノブ)31が突出するように、収納ケース23内に押しボタン式スイッチ30が配設されている。
本実施例では、上記アクチュエータ31が内側誘導ガイド24Bの前端より突出しない長さであるため、保護板10の裏面の移動ガイド11の内側に、発信機本体部20の内側誘導ガイド24Bの開口に進入して押しボタン式スイッチのアクチュエータ31に当接してこれを押圧するための押圧用突出部12が設けられている。
【0026】
さらに、本実施形態の発信機においては、図3(A)に示すように、移動ガイド11と誘導ガイド24A,24B内に、コイルバネ13が嵌挿されており、保護板10を発信機本体部20の凹部21内へ押し込むように押圧すると、図3(B)に示すように、コイルバネ13が圧縮されて、保護板10の裏面中央の押圧用突出部12の先端が押しボタン式スイッチ30のアクチュエータ(ノブ)31に当接してこれを押し込んでスイッチをオンさせる。そして、保護板10への押し込み力を解除するとコイルバネ13の復元力で保護板10が元の位置へ復帰するように構成されている。
【0027】
また、図示しないが、常態において、保護板10の前面が発信機本体部20の前面よりも突出せず、同一平面をなすようにするためのストッパ機構が設けられている。このようなストッパ機構は、例えば保護板10の移動ガイド11に軸方向に延び弾性変形可能なストッパ片を設け、該ストッパ片の先端に外向きの爪を形成するとともに、発信機本体部20の誘導ガイド24Aに、上記ストッパ片の幅よりも少し広い幅を有する軸方向のスリットを設け、ストッパ片の爪をスリットに係合させて移動可能に構成することで実現することができる。
【0028】
また、切れ込み11aを移動ガイド11の開口側端部まで形成せずに途中で終わらせることで、移動ガイド11の移動範囲を規制して抜け止めをするようにしても良い。
あるいは、保護板10の周縁の裏面側に鍔部を形成するとともに、発信機本体部20の前面開口の縁部を内側へ突出させて庇部を設け、その開口の径を保護板10の上記鍔部の径よりも小さくしかつ保護板10前面の凸部(押圧部)の径よりも僅かに大きく設定して、保護板10の鍔部が発信機本体部20の前面開口の縁部(庇)の裏面に当接するように構成することで、保護板10の前方への飛び出しを防止するようにしても良い。
【0029】
上述したように、本実施形態の発信機は、保護板10に移動ガイド11が、また発信機本体部20に上記移動ガイド11と嵌合する誘導ガイド24Aが設けられているため、保護板10を押し込む際に保護板10の前面が傾斜することなく平行移動するようになる。これにより、保護板10の径を大きくすることで中心からずれた位置が押圧されたとしても、押圧した際に傾かず安定した姿勢で平行移動させて確実にスイッチをオンさせることができる。また、保護板10が傾かないため、指が滑って発信機本体部20の開口の縁部に指先に触れたり隙間に入り込んだりするのを回避することができる。
さらに、移動ガイド11に円筒の稜線に対して傾斜した切込み11aが形成され、外側誘導ガイド24Aの内周面には上記切込み11aに係合可能な円柱状突起25が設けられているため、通行人の体の一部や荷物が保護板10に当たったりしただけではスイッチがオンされず、誤報が発せられるのを防止することができる。
【0030】
(変形例)
図4および図5は、本発明の発信機の変形例を示す。
このうち、図4は移動ガイド11に設けられる切れ込み11aをクランク形状に形成したもの、図5は切れ込み11aの他の形状の例を示したものである。
図4の変形例の移動ガイド11を用いた場合には、保護板10を途中まで押し込んだ後、時計回り方向へ若干回動させ、その後再び保護板10を押し込むことで内部のスイッチ30をオンさせることができる。そのため、オンさせるための操作が前記実施例の発信機に比べて若干面倒となるが、誤って通行人の体や荷物の一部が保護板10に当たったとしてもスイッチ30がオンされるのを確実に防止することができるという利点がある。
【0031】
なお、切れ込み11aは、図4(A)のように角張ったクランク形状でなく、図4(B)のように角部を丸めたクランク形状としてもよい。角部を丸めることで、保護板10を押し込む際に保護板10を回転させる方向へ加える力が図4(A)のものよりも小さくても、内部のスイッチ30をオンさせることが可能となる。図4には明示されていないが、図1において破線で示されているのと同様に、移動ガイド11の反対側にも、切れ込み11aと同じ形状の切れ込み11bが設けられている。
【0032】
また、図4のように切れ込み11aをクランク形状とした場合には、回す方向への力を加え易くするため、保護板10の表面に放射状をなす浅いギザギサの凹凸あるいは小さな四角錐をぎっしり敷き詰めたような凹凸などを形成して、摩擦力を高める加工を施すようにすると良い。また、保護板10の前面に、「少し回転させながら強く押す」なる文字が印字されていても良いし、「強く押す」なる文字と共に回転方向を示す矢印を印字しておくようにしても良い。さらに、保護板10の表面に、ガスコンロのダイヤルノブのような突起を設けるようにしても良い。
【0033】
図5(A)~(C)に示す切れ込み11aの形状の例は、保護板10が時計回りまたは反時計回りのいずれの方向へも回転できるようにするため、切れ込み11aを対称形状にしたものである。保護板10を押し込む力が中心に加えられれば、保護板10の回り易さは左右どちらの方向も同じ程度であるが、実際には保護板10を押し込む力は中心からずれた位置に加えられることが多く、その場合には左右の回り易さに差が生じる。そのため、切れ込み11aを対称形状にすることで、回り易い方向へ自動的に回転することで、スイッチをオンさせるのに必要な押し込み力を低減することができる。
【0034】
図5(A)~(C)のうち、図5(A)は図1の実施例に示されている切れ込み11aを対称形状にしたもの、図5(B)は図4に示されている切れ込み11aを対称形状にしたもの、図5(C)は、(A)の切れ込みと(B)の切れ込みを合成した上で若干の変更を加えた形状にしたものである。
また、図5(C)においては、最初に保護板10を押し込む際に突起25が引っ掛からないようにするため、中央の経路の入り口Aの箇所がハの字状に広がるように形成されているとともに、押し込み過程の回転途中で押し込みを止めた際に自動的に復帰できるようにするため、経路の途中にテーパS1,S2が設けられている。なお、図5(C)に示す形状の場合、切れ込み(スリット)として形成すると抜け落ちてしまう部位が生じるので、図6に示すように、切れ込みでなく溝11bとして形成する必要がある。
【0035】
図7には、図5(C)に示す形状の溝を適用した場合における保護板10の押込み開始から復旧までの移動ガイド11の動作の詳細が示されている。
図7(A)の初期状態で保護板10を押し込むと、図7(B)のように、誘導ガイド24A側の突起が軸と平行に移動して経路途中の段差部に接したところで停止し、そのタイミングで図7(C)に示すように保護板10を回転させると、再び軸と平行に移動可能になる。そこで、さらに保護板10を押し込むと、図7(D)のように、誘導ガイド24A側の突起が軸と平行に移動してスイッチをオンさせる位置に到達し、発報が行われる。
【0036】
その後、保護板10から手の平または指を離すと、内部のバネの復元力で保護板10が図7(E)、(F)のように、逆方向へ移動して元の状態に復旧する。なお、保護板10の復旧の際には、図7(E)に示すように、突起は緩やかなカーブのある溝を通過することで、途中で停止したり引っ掛かったりすることなく元の位置に復帰することができる。
なお、切れ込み11aもしくは溝の形状は、図1図4図5に示されているものに限定されず、全体が傾斜していても良いし、少なくとも一部に移動ガイド11の中心軸と平行な円筒外周面の直線すなわち円筒の稜線と平行でない部位を有するものであればどのような形状であっても良い。
【0037】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、押しボタン式スイッチ30のアクチュエータ31を誘導ガイド24Aの内側に配置し、これを作動させる押圧用突出部12を移動ガイド11の内側に設けているが、アクチュエータ31と押圧用突出部12をそれぞれ誘導ガイド24Aと移動ガイド11の外側に配置するようにしても良い。
また、前記実施形態においては、保護板10を押し込む力を解除すると保護板10が元の位置に戻るように構成しているが、保護板10が押し込まれた状態を保持する機構と解除する手段を設けるようにしても良い。
【0038】
さらに、上記実施形態では、本発明を、火災報知システムを構成する火災報知用発信機に適用したものを説明したが、本発明は火災報知用発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急停止用の発信機やエスカレーターその他の機器の緊急停止ボタンなどにも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 保護板(押しボタン)
11 移動ガイド
11a 切れ込み
12 押圧用突出部
13 圧縮コイルバネ
20 発信機本体部
21 凹部
22 前面パネル部
23 収納ケース(筐体)
24A,24B 誘導ガイド
25 円柱状突起
30 押しボタン式スイッチ
31 アクチュエータ(ノブ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8