(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092959
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】フェンス用門扉の忍び返し部材
(51)【国際特許分類】
E04H 17/24 20060101AFI20230627BHJP
E04H 17/20 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
E04H17/24
E04H17/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208281
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】米山 貴浩
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142AA01
2E142BB02
2E142CC12
2E142CC19
2E142HH01
2E142JJ03
2E142MM02
(57)【要約】
【課題】門扉の開閉の際にフェンスに設けた忍び返しに干渉することがなく、既設のフェンスや門扉に容易に取り付け可能な忍び返し部材を提供する。
【解決手段】フェンスの出入り口として取り付けられる門扉の上方に幅方向に沿って架設される嵩上げ手段を取り付ける忍び返し部材であって、前記門扉の枠体の幅方向の両端にそれぞれ取り付けられると共に、前記門扉の上方に突出する基体と、前記基体に対して揺動自在に取り付けられる忍び返し本体とを備え、前記忍び返し本体は、基本位置と門扉開閉位置とを選択可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンスの出入り口として取り付けられる門扉の上方に幅方向に沿って架設される嵩上げ手段を取り付ける忍び返し部材であって、
前記門扉の枠体の幅方向の両端にそれぞれ取り付けられると共に、前記門扉の上方に突出する基体と、前記基体に対して揺動自在に取り付けられる忍び返し本体とを備え、
前記忍び返し本体は、基本位置と門扉開閉位置とを選択可能であることを特徴とする忍び返し部材。
【請求項2】
請求項1に記載の忍び返し部材において、
前記基体は、前記忍び返し本体を揺動自在に取り付ける軸支部と、前記忍び返し本体を基本位置に固定する第1の固定手段とを備えることを特徴とする忍び返し部材。
【請求項3】
請求項2に記載の忍び返し部材において、
前記忍び返し本体は、前記第1の固定手段に係合する第1の係合部を備えることを特徴とする忍び返し部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載の忍び返し部材において、
前記基体は、前記忍び返し本体を門扉開閉位置に固定する第2の固定手段を備えることを特徴とする忍び返し部材。
【請求項5】
請求項4に記載の忍び返し部材において、
前記忍び返し本体は、前記第2の固定手段に係合する第2の係合部を備えることを特徴とする忍び返し部材。
【請求項6】
請求項5に記載の忍び返し部材において、
前記基体は、前記枠体に取り付けられる取付部と前記取付部の一端から延びる扇状部とを有し、
前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段が前記扇状部の側縁部のうち互いに高さが異なる位置に形成され、
前記忍び返し本体は、前記軸支部に係合する長孔部が形成され、
前記第1の係合部及び前記第2の係合部は、前記忍び返し本体の前記第1の固定手段又は前記第2の固定手段に対向する位置に形成された開口部と、前記開口部から略直角に延びる保持部を有することを特徴とする忍び返し部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の忍び返し部材において、
前記忍び返し本体は、前記基体と、カバー部材によって挟持されることを特徴とする忍び返し部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンス用門扉に取り付けられる忍び返し部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建住宅や集合住宅及び公共施設等の所定の区画の内外を区分けするフェンスは、外部からの侵入者の乗り越えや小動物の侵入を阻止するためにフェンスの上方に忍び返しが設けられることがある。
【0003】
このような忍び返しは、種々の形態が知られており、例えば、特許文献1及び2に記載された忍び返しが知られている。特許文献1に記載された忍び返しは、地表に適宜間隔で立設された第1支柱とこの第1支柱間に架設された第1フェンスパネルと、この第1支柱上端に着脱自在に設けられた第2支柱と、この第2支柱間に架設された第2フェンスパネルとからなり、第2フェンスパネルは、敷地境界の外側又は内側に向かって傾斜している。
【0004】
また、特許文献2に記載の忍び返しは、複数の鉛直部格子を有する鉛直パネルと、前記鉛直部格子の上端から前記鉛直パネルの正面又は背面側へ傾斜する複数の傾斜部格子を有する傾斜パネルと、前記鉛直部格子の上端と前記傾斜部格子の下端とをそれぞれ連結する複数の連結金具と、を備え、前記連結金具は、押出し方向が前記鉛直パネルの側面方向であるアルミニウムの押出し形材で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-301629号公報
【特許文献2】特開2019-152073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、戸建住宅や集合住宅及び公共施設等の所定の区画の内外を区分けするフェンスは、出入口としてフェンスに対して開閉自在に取り付けられた門扉を設ける場合があるが、フェンスに取り付けられた忍び返しは、上述したように、敷地境界の外側又は内側に向かって傾斜しており、門扉に同様の忍び返しを設けると、門扉の開閉の方向によっては忍び返し同士が干渉して門扉の開閉を行うことができなくなる。このため、
図8に示すように、門扉には、鉛直方向に延びる直忍び返し100を設けていた。
【0007】
このような門扉の部分の直忍び返し100は、フェンスの部分の傾斜した門柱用忍び返し部材21との間に隙間Sが形成されてしまい、見栄えが悪いばかりか、当該隙間Sから侵入者の侵入などを可能としてしまうといった問題があった。また、既設のフェンスや門扉に対して容易に取り付け可能な忍び返しについても市場からの要望が高い。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、門扉の開閉の際にフェンスに設けた忍び返しに干渉することがなく、既設のフェンスや門扉に容易に取り付け可能な忍び返し部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る忍び返し部材は、フェンスの出入り口として取り付けられる門扉の上方に幅方向に沿って架設される嵩上げ手段を取り付ける忍び返し部材であって、前記門扉の枠体の幅方向の両端にそれぞれ取り付けられると共に、前記門扉の上方に突出する基体と、前記基体に対して揺動自在に取り付けられる忍び返し本体とを備え、前記忍び返し本体は、基本位置と門扉開閉位置とを選択可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る忍び返し部材において、前記基体は、前記忍び返し本体を揺動自在に取り付ける軸支部と、前記忍び返し本体を基本位置に固定する第1の固定手段とを備えると好適である。
【0011】
また、本発明に係る忍び返し部材において、前記忍び返し本体は、前記第1の固定手段に係合する第1の係合部を備えると好適である。
【0012】
また、本発明に係る忍び返し部材において、前記基体は、前記忍び返し本体を門扉開閉位置に固定する第2の固定手段を備えると好適である。
【0013】
また、本発明に係る忍び返し部材において、前記忍び返し本体は、前記第2の固定手段に係合する第2の係合部を備えると好適である。
【0014】
また、本発明に係る忍び返し部材において、前記基体は、前記枠体に取り付けられる取付部と前記取付部の一端から延びる扇状部とを有し、前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段が前記扇状部の側縁部のうち互いに高さが異なる位置に形成され、前記忍び返し本体は、前記軸支部に係合する長孔部が形成され、前記第1の係合部及び前記第2の係合部は、前記忍び返し本体の前記第1の固定手段又は前記第2の固定手段に対向する位置に形成された開口部と、前記開口部から略直角に延びる保持部を有すると好適である。
【0015】
また、本発明に係る忍び返し部材において、前記忍び返し本体は、前記基体と、カバー部材によって挟持されると好適である。
【0016】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る忍び部材は、門扉の上方に突出する基体と、基体に対して揺動自在に取り付けられる忍び返し本体とを備え、忍び返し本体は、基本位置と門扉開閉位置とを選択可能であるので、基本状態では、門扉に取り付けた忍び返し部材の忍び返し本体をフェンスに設けた忍び返しと同一の方向に傾斜させ、門扉の開閉の際には、忍び返し本体を門扉の開閉に際してフェンスに設けた忍び返しと干渉しないように門扉開閉位置まで退避させることで、門扉の開閉を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る忍び返し部材を設けたフェンス及び門扉の正面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る忍び返し部材の斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係る忍び返し部材の分解図。
【
図4】本発明の実施形態に係る忍び返し部材に用いる基体の正面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る忍び返し部材に用いる忍び返し本体の正面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る忍び返し部材に用いるカバー部材の正面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る忍び返し部材の忍び返し本体の動作を示す図であって、(a)は基本位置、(b)は、門扉開閉位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る忍び返し部材を設けたフェンス及び門扉の正面図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る忍び返し部材の斜視図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る忍び返し部材の分解図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る忍び返し部材に用いる基体の正面図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る忍び返し部材に用いる忍び返し本体の正面図であり、
図6は、本発明の実施形態に係る忍び返し部材に用いるカバー部材の正面図であり、
図7は、本発明の実施形態に係る忍び返し部材の忍び返し本体の動作を示す図であって、(a)は基本位置、(b)は、門扉開閉位置を示す図であり、
図8は、従来の忍び返しを示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る門扉10は、地面Gに打設された基礎2に固定された支柱1が所定の間隔で配置され、該支柱1の間に開閉自在に取付けられている。なお、門扉10は、戸建住宅や集合住宅及び公共施設等の所定の区画の内外を区分けするフェンス3の出入口に取り付けられている。
【0022】
門扉10は、支柱1の軸方向に沿って取付けられたヒンジ13を介して開閉自在に取付けられている。また、門扉10は、水平方向に移動可能に組み付けられたカンヌキ14を備えており、当該カンヌキ14を支柱1に形成された図示しない施錠金具に係止することで、門扉10が開閉することを防止して門扉10を閉じた状態に固定することができる。
【0023】
門扉10は、一対の横枠11a及び一対の縦枠11bからなる枠体11と、縦枠11b同士を連結するように地面と略平行に配置される中央プレート11cと、枠体11の対角線上に配置されるブレース部材11dとを有している。ブレース部材11dは、棒材などが好適に用いられ、門扉10の剛性を確保している。縦枠11bおよび横枠11aは、断面形状が略L字形の山形鋼材や中空の四角柱材で形成されると好適であり、例えば、アルミ押出形材によってそれぞれ形成されていると好適である。
【0024】
また、枠体11の正面にはネット12が取り付けられている。ネット12は、例えば、鉄線からなり、当該鉄線を山が連なるように加工し、編み合わせて菱形の網目を形成した金網であると好適である。このように構成したネット12は、網目の接合点には溶接等による固定がないため、衝撃吸収性を備えている。ネット12は、枠体に形成された図示しないネット用爪部に鉄線を係止することで取り付けられる。
【0025】
フェンス3及び門扉10の上方には、嵩上げ手段20が取り付けられている。フェンス3上に架設された嵩上げ手段20は、
図8に示すように従来と同様に支柱1に取り付けられた門柱用忍び返し部材21に架設され、有刺鉄線、ネット及び柵体などで構成される。門柱用忍び返し部材21は、フェンス3の外側に向かって鉛直方向から傾斜している。また、門柱用忍び返し部材21は、支柱1にボルトなどで締結されているので、既設のフェンス3についても容易に嵩上げ手段20を取り付けることが可能となっている。
【0026】
次に、門扉10の上方に架設された嵩上げ手段20について説明を行う。嵩上げ手段20は、門扉10の上方に架設された嵩上げ手段20は、門扉10の枠体11の幅方向の両端に取り付けられた忍び返し部材30に架設され、フェンス3の上方に架設した嵩上げ手段20と同様の部材を用いている。本実施形態では、嵩上げ手段20に有刺鉄線を適用した場合について説明を行う。
【0027】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る忍び返し部材30は、門扉10の枠体11に取り付けられる取付部46を有する基体31と、基体31に対して揺動自在に取り付けられる長尺板状の忍び返し本体32と、基体31とによって忍び返し本体32を挟持するカバー部材33とを備えている。後述するように、忍び返し本体32は、基本位置と門扉開閉位置とに固定位置を選択可能に取り付けられている。
【0028】
本実施形態に係る忍び返し部材30は、忍び返し本体32を揺動自在に保持する軸支部34と、忍び返し本体32を基本位置に固定する第1の固定手段35と、忍び返し本体32を門扉開閉位置に固定する第2の固定手段36とを備えている。
図3に示すように、これらの軸支部34、第1の固定手段35及び第2の固定手段36は、それぞれボルト・ナットで構成されると好適であり、これらのボルト・ナットによって忍び返し本体32は、基体31とカバー部材33とに挟持されて揺動自在に取り付けられている。
【0029】
図4に示すように、基体31は、概略平板状の部材であり、取付孔44を有する取付部46と、取付部46の上端から上方に延びる略扇状の扇状部45とを備える。このように、取付部46の上端から扇状部45が上方に向かって形成されているので、基体31は、門扉10に本実施形態に係る忍び返し部材30が取り付けられた際に、門扉10の上方に突出して取り付けられる。なお、取付孔44は、本実施形態に係る忍び返し部材30を門扉10に固定することができれば、いくつ形成しても構わないが、例えば、高さ方向に沿って同一線上に複数(本実施形態に係る忍び返し部材30では2つ)形成されていると好適である。
【0030】
扇状部45は、取付部46から幅方向に徐々に広がるように傾斜する一対の側縁部45aと、一対の側縁部45aの上端を円弧状に連絡する円弧部45bとを有している。取付部46と扇状部45の連絡部分には、取付孔44と同一直線上に形成された軸支部用孔41が形成されている。また、扇状部45の側縁部45aに沿って其々、第1の固定手段用孔42及び第2の固定手段用孔43が形成されている。第1の固定手段用孔42と第2の固定手段用孔43は側縁部45aに沿って互いに高さが異なる位置に一対形成されており、後述するように第1の固定手段35及び第2の固定手段36の取り付け位置が互いに高さが異なる位置に選択的に取り付け可能となっている。
【0031】
図5に示すように、忍び返し本体32は、平板状の長尺部材であって、忍び返し本体32の略中央部から上方に向かって、所定の間隔で嵩上げ手段取付部51が複数形成されている。この嵩上げ手段取付部51には、門扉10の両端に取り付けられた本実施形態に係る忍び返し部材30間に嵩上げ手段20が架設される。また、忍び返し本体32の下方には、長手方向に長さを有する長孔部52、第1の係合部55及び第2の係合部56が所定の間隔で形成されている。なお、長孔部52、第1の係合部55及び第2の係合部56は、基体31の軸支部用孔41、第1の固定手段用孔42及び第2の固定手段用孔43の上段及び、第1の固定手段用孔42及び第2の固定手段用孔43の下段と対応する位置に形成されている。
【0032】
さらに、第1の固定手段用孔42及び第2の固定手段用孔43は、其々、長孔状の保持部54a、53bと、第1の固定手段35及び、第2の固定手段36と対向する位置に形成された開口部53a、53bを有している。開口部53a、53bは、忍び返し本体32の幅方向に向けて互いに異なる方向に開口しており、保持部54a、54bは、それぞれの開口部53a、53bから略直角に延設している。
【0033】
図6に示すように、カバー部材33は、概略平板状の部材であり、基体31の扇状部45と概ね同一の形状を有している。また、カバー部材33には、基体31の軸支部用孔41、第1の固定手段用孔42及び第2の固定手段用孔43と対応する位置に軸支部孔63、第1の固定手段孔61及び第2の固定手段孔62が形成されている。
【0034】
このように構成された本実施形態に係る忍び返し部材30は、
図3に示すように、忍び返し本体32を基体31とカバー部材33とで挟持するように配置し、軸支部34となるボルト・ナットを軸支部用孔41、長孔部52及び軸支部孔63に挿通し、第1の固定手段35となるボルト・ナットを第1の固定手段用孔42の上段、第1の係合部55及び第1の固定手段孔61の上段に挿通し、第2の固定手段となるボルト・ナットを第2の固定手段用孔43の下段、第2の係合部56及び第2の固定手段孔63の下段に挿通して固定する。このとき、忍び返し本体32は、第1の係合部55の開口部53aが第1の固定手段35と対向する向きに組み付ける。なお、軸支部34、第1の固定手段35及び第2の固定手段36を構成するボルト・ナットは、忍び返し本体32が軸支部34を中心に基体31とカバー部材33間で揺動することができるように所定の隙間を有するように締結される。また、このような所定の隙間を形成するために、基体31とカバー部材33との間に軸支部34、第1の固定手段35及び第2の固定手段36が挿通されるスペーサを介在させ、当該スペーサを長孔部52に挿入し、第1の係合部55及び第2の係合部56と係合させても構わない。
【0035】
本実施形態に係る忍び返し部材30は、上述したように基体31、忍び返し本体32およびカバー部材33を組み付けることで、門扉10の左側に取り付ける忍び返し部材30を構成することができる。なお、門扉10の右側に取り付ける忍び返し部材30は、第1の固定手段35を第1の固定手段用孔42の下段に挿通し、第2の固定手段36を第2の固定手段用孔43の上段に挿通し、忍び返し本体32の第2の係合部56の開口53bが第2の固定手段用孔43と対向する向きに組み付けることで構成することができる。このように本実施形態に係る忍び返し部材30は、第1の固定手段35及び第2の固定手段36の取り付け位置や忍び返し本体32の向きを組み替えることで、門扉10の左右に取り付ける忍び返し部材30を構成することができるので、部品点数の削減を図ることができる。
【0036】
次に、本実施形態に係る忍び返し部材30の動作について説明を行う。
図7(a)に示すように、門扉10がフェンス3に対して閉じられた状態のときは、忍び返し本体32を基本位置に固定して忍び返し本体32が門扉10に対して外側に傾斜した状態とする。具体的には、忍び返し本体32を軸支部34に挿通された長孔部52を中心として第1の固定手段35側に傾斜させる。このとき、第1の固定手段35を第1の係合部55の開口部53aに挿入した後、忍び返し本体32を長手方向下方に移動させて第1の固定手段35を第1の係合部55の保持部54aに係合させる。このとき、軸支部34は、長孔部52内を長さ方向に沿って移動する。
【0037】
このように忍び返し本体32を門扉10に対して外側に傾斜した状態とすることで、忍び返し本体32に取り付けた嵩上げ手段20がフェンス3に取り付けた嵩上げ手段と略平行に配置されるので、フェンス3に取り付けた嵩上げ手段と門扉10に取り付けた嵩上げ手段20との間に隙間が生じることがなく、侵入者の侵入を効果的に防止することができる。
【0038】
また、門扉10を開ける際は、フェンス3と門扉10が鉛直方向を中心として回動するので、フェンス3に取り付けた嵩上げ手段と門扉10に取り付けた嵩上げ手段20とが傾斜方向が向き合う方向に回動することで互いに干渉して門扉10の開閉に支障を生じる場合がある。したがって、門扉10を開ける際には、
図7(b)に示すように、忍び返し本体32を門扉開閉位置に固定して忍び返し本体32が門扉10に対して内側に傾斜した状態とする。具体的には、門扉10を開く際には、忍び返し本体32を長手方向上方に持ち上げて、第1の固定手段35を第1の係合部55の保持部54aの下端まで移動したのち開口部53aを介して第1の固定手段35と第1の係合部55の係合を解除して、第2の固定手段36側に傾斜させる。このとき、第2の係合部56の開口部53bは、第2の固定手段36に対向するように形成されているため、第2の固定手段36を第2の係合部56の開口部53bに挿入した後、忍び返し本体32を長手方向下方に移動させて第2の固定手段36を第2の係合部56の保持部54bに係合させる。このとき、軸支部34は、長孔部52内を長さ方向に沿って移動する。
【0039】
このように忍び返し本体32をフェンス3に取り付けた嵩上げ手段の傾斜方向と反対側に傾斜した状態とすることで、門扉10を開く際に、忍び返し本体32に取り付けた嵩上げ手段20がフェンス3に取り付けた嵩上げ手段と干渉することなく、門扉10の開閉を行うことができる。
【0040】
なお、以上の実施の形態では、門扉10を片開きに構成した場合について説明を行ったが、門扉10を一対用意し、両開きに構成しても構わない。また、本実施形態に係る忍び返し部材30を基本位置から門扉開閉位置または門扉開閉位置から基本位置に位置を変更する際には、忍び返し本体32を操作する場合について説明を行ったが、忍び返し本体32に操作腕などを設けて門扉10のカンヌキ14の近傍に配置し、操作腕を操作することで忍び返し本体32を操作しても構わない。また、門扉10の開閉の際には、門扉10の両端に取り付けた忍び返し部材30の両方を操作する必要はなく、門扉10の開閉の際に、フェンス3に取り付けた嵩上げ手段と干渉する忍び返し部材30のみを門扉開閉位置に移動しても構わない。
【0041】
また、門扉10の枠体11の正面にネット12を取り付けた場合について説明を行ったが、ネットに限らず、メッシュを取り付けても構わない。さらに、枠体11は、断面L字状の山形鋼材や中空の四角柱材を用いた場合について説明を行ったが、丸パイプを用いても構わない。この場合、基体31の形状を枠体の丸パイプ形状に合わせて湾曲させることで、美観を損なうことなく、基体31を丸パイプに取り付けることが可能となる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1 支柱
2 基礎
3 フェンス
10 門扉
11 枠体
12 ネット
13 ヒンジ
14 カンヌキ
20 嵩上げ手段
21 門柱用忍び返し部材
30 忍び返し部材
31 基体
32 忍び返し本体
33 カバー部材
34 軸支部
35 第1の固定手段
36 第2の固定手段
41 軸支部用孔
42 第1の固定手段用孔
43 第2の固定手段用孔
44 取付孔
45 扇状部
46 取付部
51 嵩上げ手段取付部
52 長孔部
53a、53b 開口部
54a、54b 保持部
55 第1の係合部
56 第2の係合部
61 第1の固定手段孔
62 第2の固定手段孔
63 軸支部孔
G 地面。