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特開2023-92970表刷り用グラビア印刷インキ、それを用いた印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092970
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】表刷り用グラビア印刷インキ、それを用いた印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20230627BHJP
【FI】
C09D11/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208310
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 大樹
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英絵
(72)【発明者】
【氏名】野村 雄史
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AE08
4J039BB01
4J039BC33
4J039BE12
4J039EA36
4J039EA37
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、インキの保存安定性、基材への耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性および印刷適正が良好であり、特にコロナ未処理基材に対する接着性、印刷して巻き取られた時にヒートシール層と接触しても、ヒートシール層と接着しない耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することを課題とする。
【解決手段】バインダー樹脂、脂肪酸アミドおよび有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキであって、バインダー樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、前記ポリアミド樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶部分の質量分率における分子量分布において、分子量分布曲線の全ピーク面積のうち分子量3,000以下の面積百分率が、10~45%であり、全ピーク面積のうち分子量50,000以上の面積百分率が、1~30%である、表刷り用グラビア印刷インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、脂肪酸アミドおよび有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキであって、
前記バインダー樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、
前記ポリアミド樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶部分の質量分率における分子量分布において、分子量分布曲線の全ピーク面積のうち分子量3,000以下の面積百分率が、10~45%であり、全ピーク面積のうち分子量50,000以上の面積百分率が、1~30%である、表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項2】
さらに、セルロース系樹脂を含む請求項1記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項3】
ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の関係(Mw/Mn)が、2以上9以下である、請求項1または2に記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項4】
ポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂(A)と、前記ポリアミド樹脂(A)よりも重量平均分子量の大きいポリアミド樹脂(B)と、を含有する、請求項1~3いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項5】
ポリアミド樹脂(A)の重量平均分子量が、2,000~8,000であり、ポリアミド樹脂(B)重量平均分子量が、10,000~70,000である、請求項1~4いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項6】
印刷インキが、脂肪酸アミドを、印刷インキ総質量中に0.1~5質量%含有する、請求項1~5いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項7】
脂肪酸アミドの重量平均分子量が、500以上、1,500以下である、請求項1~6いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項8】
脂肪酸アミドが、ビスアミドを含有する、請求項1~7いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項9】
ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂との固形分の質量比(ポリアミド樹脂/セルロース系樹脂)が、95/5~50/50である、請求項1~8いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項10】
更に、炭化水素ワックス粒子を含有する、請求項1~9いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項11】
基材上に請求項1~10いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキからなる印刷層を具備した印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表刷り用グラビア印刷インキおよびその印刷物に関するものである。
【0002】
より詳しくは、インキの長期保存が可能であり、基材に対する接着性、基材と印刷物が接着しないための耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性や印刷適正が良好で、さらに環境衛生にも優れた表刷り用グラビア印刷インキに関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感などの印刷品質のでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上での価値は大きい。
【0004】
一方、食品メーカーや印刷加工会社などからは包装物の多様化、包装技術の高度化に伴い、表刷り用の印刷インキに対して高度の品質、性能が要求されるようになってきている。表刷り用印刷インキは例えばフレキソインキ、オフセットインキ、グラビア印刷インキその他が挙げられるが、中でも印刷速度が良好であるため、生産性の観点でグラビア印刷インキが多く使用されている。
【0005】
表刷り用グラビア印刷インキの性能としては、印刷性能の品質はもちろんのこと、基材に対する接着性、印刷して巻き取られた時にインキが基材の裏面に裏移り・接着しないための耐ブロッキング性、印刷層同士が接着しないための耐ブロッキング性、印刷面が傷つかないための耐摩擦性、製袋時の耐熱性、油脂に対する耐油性、などといった各種耐性が要求されている。
【0006】
接着性および各種耐性に優れた表刷り用グラビア印刷インキとして、例えば、米ぬか脂肪酸を反応原料としたポリアミド樹脂、繊維素系樹脂、有機溶剤および可塑剤を含有するリキッドインキ組成物(特許文献1)、トール油脂肪酸よび米ぬか脂肪酸のうちいずれか一方を反応原料としたポリアミド樹脂とセルロース誘導体の含有比率、インキ各組成物の含有量を規定した表刷り用グラビア印刷インキ組成物(特許文献2および3)、ポリアミド樹脂、セルロース誘導体、キレート架橋剤および有機溶剤を含有する表刷り用オーバープリントニス組成物(特許文献4)が提案されている。しかしながら、キレート架橋剤を含有しない場合や、コロナ未処理基材に印刷する場合や、オーバープリント層(OP層)/インキ層/紙基材/ヒートシール層、OP層/紙基材/ヒートシール層などの印刷構成においてOP層とヒートシール層が接触する場合で、密着性および耐ブロッキング性を満たすことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6255123号公報
【特許文献2】特許第6707680号公報
【特許文献3】特許第6779328号公報
【特許文献4】特開2016‐79306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、インキの保存安定性、基材への耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性および印刷適正が良好であり、特にコロナ未処理基材に対する接着性、印刷して巻き取られた時にヒートシール層と接触しても、ヒートシール層と接着しない耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の表刷り用グラビア印刷インキを用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち本発明は、バインダー樹脂、脂肪酸アミドおよび有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキであって、
前記バインダー樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、
前記ポリアミド樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶部分の質量分率における分子量分布において、分子量分布曲線の全ピーク面積のうち分子量3,000以下の面積百分率が、10~45%であり、全ピーク面積のうち分子量50,000以上の面積百分率が、1~30%である、表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0011】
また、本発明は、さらに、セルロース系樹脂を含む上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0012】
また、本発明は、ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の関係(Mw/Mn)が、2以上9以下である、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0013】
また、本発明は、ポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂(A)と、前記ポリアミド樹脂(A)よりも重量平均分子量の大きいポリアミド樹脂(B)と、を含有する、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0014】
また、本発明は、ポリアミド樹脂(A)の重量平均分子量が、2,000~8,000であり、ポリアミド樹脂(B)重量平均分子量が、10,000~70,000である、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0015】
また、本発明は、印刷インキが、脂肪酸アミドを、印刷インキ総質量中に0.1~5質量%含有する、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0016】
また、本発明は、脂肪酸アミドの重量平均分子量が、500以上、1,500以下である、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0017】
また、本発明は、脂肪酸アミドが、ビスアミドを含有する、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0018】
また、本発明は、ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂との固形分の質量比(ポリアミド樹脂/セルロース系樹脂)が、95/5~50/50である、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0019】
また、本発明は、更に、炭化水素ワックス粒子を含有する、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0020】
また、本発明は、基材上に上記表刷り用グラビア印刷インキからなる印刷層を具備した印刷物に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、インキの保存安定性、基材への耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性および印刷適性が良好であり、特にコロナ未処理基材に対する接着性、印刷して巻き取られた時にヒートシール層と接触しても、ヒートシール層と接着しない耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0023】
なお、以下の説明において「表刷り用グラビア印刷インキ」は単に「グラビア印刷インキ」、「インキ組成物」、「インキ」と略記する場合がある。また「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0024】
本発明において「表刷り」とはプラスチック基材あるいは紙基材へ印刷した場合、印刷層側から見て印刷模様や絵柄を確認できる印刷方法をいう。なお、積層体あるいは包装袋とした場合に最外面が印刷層となる。表刷り用グラビア印刷インキを印刷して得られる層は「印刷層」、「インキ層」または「インキ被膜」と表記する場合があるが同義である。
【0025】
<ポリアミド樹脂>
本発明において使用するポリアミド樹脂は以下に限定されるものではないが、好ましくは多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、更には一級および二級モノアミンを一部含有するものが好ましい。
【0026】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、あるいは、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸などが挙げられ、その中でも、重合脂肪酸に由来する構造を主成分(ポリアミド樹脂中に50質量%以上)含有するポリアミド樹脂が好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸を構成する脂肪酸は大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来など天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸およびリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0027】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多価アミンは、一級または二級モノアミンを併用できる。
多価アミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン
シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン、
キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ポリアミン、
フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンを挙げることができる。
さらに、一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどを挙げることができる。
【0028】
本発明の表刷り用グラビア印刷インキに含有されるポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂のテトラヒドロフラン可溶部分をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した質量分率における分子量分布において、分子量分布曲線の全ピーク面積のうち、分子量3,000以下の面積比率(面積百分率)が10~45%、分子量50,000以上の面積百分率が1~30%であることが好ましく、より好ましくは3,000以下の面積百分率が20~40%、分子量50,000以上の面積百分率が5~20%である。
分子量が3,000以下の低分子領域のポリアミド樹脂は、低温で溶融して、基材に濡れ広がりやすくなり、基材に対する密着性が良好となる。一方、分子量が50,000以上の高分子領域のポリアミド樹脂は、耐ブロッキング性が良好となる。
分子量3,000以下の面積百分率が10~45%、分子量50,000以上の面積百分率が1~30%で密着性および耐ブロッキング性が両立する。
面積比率%は、縦軸に分子量Mの面積百分率%、横軸に分子量Mの常用対数LogMとした分子量分布図において、Log(3,000)以下およびLog(50,000)以上の範囲にある面積百分率%である。
【0029】
上記GPCの測定条件としては、ポリスチレン換算の測定法を採用でき、検出としてはRI反射、流出速度としては0.1~0.5ml/分、カラム温度としては30~50℃、測定器としては昭和電工社製Shodex GPC-104などを採用することができる。
【0030】
本発明で用いるポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の関係(Mw/Mn)は、2以上9以下の範囲であることが好ましく、4以上8以下の範囲であることがより好ましく、6以上7以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂のMw/Mnが2以上の場合は、分子量3,000以下および分子量50,000以上の領域が広くなる傾向になり、密着性および耐ブロッキング性が向上する。一方、Mw/Mnが9以下の場合は、インキの溶解性が向上して、印刷適性が向上する。
【0031】
上記分子量分布の規定を満たすためには、例えば、分子量分布の広いポリアミド樹脂を使用する、あるいは重量平均分子量の異なるポリアミド樹脂を数種併用するなどの方法が用いられ、例えば、分子量分布の広いポリアミド樹脂を製造するためには、ポリアミド樹脂の原料である多塩基酸、多価アミンを数種併用する、反応温度を調整する、段階的に構成原料を反応させる、などの手法を取りうる。一方で、数種類のポリアミドを混合して使用しても当該分子量の規定を満たす。対応するポリアミド単独での重量平均分子量をあらかじめ把握しておき、当該分子量分布の規定に該当するように混合比率のシミュレーションなどを行い、当該ポリアミド樹脂を調整するなどの方法が考えられる。
【0032】
上記の様に、ポリアミド樹脂のテトラヒドロフラン可溶部分をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した質量分率における分子量分布において、分子量分布曲線の全ピーク面積に対する分子量3,000以下の面積百分率が10~45%、全ピーク面積に対する分子量50,000以上の面積百分率が1~30%、とするためには、例えば、重量平均分子量が2,000~8,000である低分子量のポリアミド樹脂(A)と、重量平均分子量が10,000~70,000である高分量ポリアミド樹脂(B)を用いることで可能となる。
【0033】
ポリアミド樹脂は、表刷り用グラビア印刷インキ組成物中の固形分全体に対して10~30質量%含有することが好ましく、より好ましくは15~25質量%である。10質量%以上の場合は印刷インキの乾燥性が向上し、30質量%以下の場合は印刷インキの流動性およびレベリング性が向上して、保存安定性および印刷適性が良好となる。
【0034】
また、本発明の表刷り用グラビア印刷インキは、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の固形分の質量比(ポリアミド樹脂(A)/ポリアミド樹脂(B))が、80/20~20/80であることが好ましく、より好ましくは70/30~30/70である。ポリアミド樹脂(A)の質量比が20以上で基材に対する密着性が向上し、質量比80以下で耐ブロッキング性が向上する。
【0035】
更に、ポリアミド樹脂は軟化点が80~140℃であることが好ましく、より好ましくは90~130℃である。上記実施形態においてインキ被膜が強くなる。軟化点が80℃以上の場合は、印刷物のインキ被膜の表面タック切れが良好となり、ブロッキングを防ぐ。軟化点が140℃以下の場合はインキ被膜が柔軟となり基材に対する接着性が向上する。なお、軟化点はJISK2207(環球法)で測定された値を表す。
好ましいポリアミド樹脂としては、レオマイドシリーズ(花王社製)、ポリマイドシリーズ(三洋化成工業社製)等が挙げられる。
【0036】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、およびニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。ポリアミド樹脂との併用で耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のインキ被膜物性が更に向上するためである。
【0037】
(ニトロセルロース)
上記ニトロセルロースは、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましく、平均重合度20~200、更には30~150の範囲のものが好ましい。平均重合度が20以上の場合、インキ層の強度が向上し、耐摩擦性が向上するため好ましい。また、平均重合度が200以下の場合、溶剤への溶解性、インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上するため好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましく、窒素分は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
好ましいニトロセルロース樹脂としては、TRシリーズ(TNC INDUSTRIAL社製)、DLXシリーズ(Nobel Enterprises社製)等が挙げられる。
【0038】
上記ポリアミド樹脂と上記ニトロセルロース樹脂との組み合わせにより、バインダー樹脂として機能する。上記ポリアミド樹脂と上記ニトロセルロース樹脂の固形分質量比が、95/5~50/50であることが好ましい。この組み合わせおよび配合比のとき、基材に対する密着性や、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性など、印刷インキ層の各種耐性が良好となるためである。
【0039】
<脂肪酸アミド>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキには、脂肪酸アミドをインキ組成物中に0.1~5質量%含有することが好ましく、より好ましくは、0.2~3質量%である。含有量が0.1質量%以上の場合は耐ブロッキング性が向上し、5質量%の以下の場合は印刷適性が向上する。
また、上記脂肪酸アミドの重量平均分子量は500以上1,500以下であることが好ましく、550以上1,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が500以上の場合は各種基材に対する耐ブロッキング性が向上する。分子量が1,500以下の場合は印刷後にインキ皮膜の表面に配向しやすくなり、滑り性を発現させて耐ブロッキング性および耐摩擦性が良好となる。前記バインダー樹脂と上記の重量平均分子量範囲である脂肪酸アミドを併用することにより、耐ブロッキング性が更に向上する。
脂肪酸アミドとしては、モノアミド、置換アミド、メチロールアミド、エステルアミド、ビスアミドなどが挙げられるが、ビスアミドを含有することが好ましい。理由は明らかでないが、ビスアミド構造と基材(あるいはヒートシール層)の相互作用により、耐ブロッキング性がより向上すると考えられる。
【0040】
(ビスアミド)
ビスアミドは下記一般式(1)または一般式(2)で表される。
一般式(1)
-CONH-R-HNCO-R
一般式(2)
-NHCO-R-CONH-R
(式中、R、R、R、およびRは、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を表し、同一でも異なっていても良く、RおよびRは、アルキレン基またはアリーレン基を表す。)
ビスアミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0041】
ビスアミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。該当するものとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド(融点142℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(融点140℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点135℃)、エチレンビスオレイン酸アミド(融点119℃)、エチレンビスエルカ酸アミド(融点120℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(融点110℃)、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド(融点141℃)、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド(融点136℃)、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド(融点118℃)、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド(融点113℃)等が挙げられる。
【0042】
ビスアミドを構成する脂肪酸としては、炭素数10~22の飽和脂肪酸および/または炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数12~18の飽和脂肪酸および/または炭素数18~22の不飽和脂肪酸を含有することがより好ましい。
飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、不飽和脂肪酸としてくは、オレイン酸、エルカ酸である。ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸からなるビスアミドが特に好ましい。
また、不飽和脂肪酸を含有することが、有機溶剤への溶解性および印刷適性の点から好ましい。
【0043】
<有機溶剤>
本発明のインキ組成物で利用する溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、および、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤が挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、混合して利用することが好ましい。これらの有機溶剤の使用量としては、インキ総量中に30質量%以上含有することが好ましい。なお、印刷時の臭気や環境対応のため、有機溶剤はエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤を主成分とすることが好ましく、その質量比(エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤)が、50:50~90:10であることが好ましい。
【0044】
<炭化水素ワックス粒子>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキには、炭化水素ワックス粒子を用いることが好ましい。炭化水素ワックスとしてはポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられ、インキ組成物中に0.1~3質量%含有することが好ましく、より好ましくは、0.3~2.5質量%である。本発明のバインダー樹脂と併用することで耐摩擦性がさらに向上する。
【0045】
<着色剤、顔料>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキには、着色剤を含んでもよい。着色剤としては顔料が挙げられる。本発明で利用可能な顔料は特に限定されず、一般に印刷インキや塗料で使用できる各種の無機顔料や有機顔料を好適に使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。また有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などが好適である。体質顔料は、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるためにも用いられる。
なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用可能である。これらの顔料の含有量としては、インキ総量中に0.5~50質量%が好ましい。
【0046】
<添加剤>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキには、必要に応じて各種添加剤を使用することができる。例えば、顔料分散剤、無機系微粒子、レベリング剤、消泡剤、接着補助剤等を挙げることができる。具体的には、顔料の分散性を向上させるための顔料分散剤、防滑性を付与するために無機系微粒子、レベリング性を向上させるためのレベリング剤、消泡性を付与するための消泡剤、基材に対する密着性を向上させるための接着補助剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0047】
<表刷り用グラビア印刷インキの製造>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキを製造する方法として、まず、顔料、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、脂肪酸アミド、有機溶剤、および必要に応じて顔料分散剤、消泡剤などを含む組成物を、羽根つき攪拌装置を用いて均一に撹拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して分散し、さらに、他の樹脂や添加等を混合する方法がある。中でもビーズミルを用いて顔料を含む組成物を混錬・分散することが好ましい。
【0048】
<基材>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキは、基材上に印刷されて印刷物となる。当該基材は特に限定されなく、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル基材、ナイロン等のポリアミド基材に挙げられるようなプラスチックフィルム、紙基材、アルミニウム箔等、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム、シート等が挙げられる。
中でもポリオレフィン基材および紙基材であることが好ましい。当該ポリオレフィン基材はコロナ放電処理その他の表面処理をされていてもよいし、されていなくてもよい。紙基材としては、クラフト紙、アート紙、コート紙、上質紙等から選ばれる紙基材であることが好ましい。
【0049】
<印刷物>
印刷物は基材上に表刷り用グラビア印刷インキを印刷することで形成される。基材上に、本発明の表刷り用グラビア印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによってインキ層を形成し、印刷物を得ることができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給され、印刷される。その後、オーブンによる乾燥によってインキ層を定着することで得ることができる。
また、顔料など着色剤を含有しないインキはオーバープリントワニス(OPワニス)とも呼ばれており、OP層を形成させるために使用することができる。具体的には、着色剤を含有する上記インキ層を形成した後に、インキ層を被覆するように印刷を行い、オーブンによる乾燥によってOP層を形成させる。
【実施例0050】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
【0051】
<重量平均分子量および数平均分子量>
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めた。昭和電工社製「Shodex GPC-104」を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量、面積百分率を求めた。以下に測定条件を示す。
カラム:下記の複数のカラムを直列に連結して使用。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)、
カラム温度:40℃、
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0052】
<ポリアミド樹脂溶液の調製>
特許第6255123号公報の実施例を参考にして、以下のスペックの脂肪族系のポリアミド樹脂を合成した。
ポリアミド樹脂(A1):(Mw)6,363、(Mn)1,663
ポリアミド樹脂(A2):(Mw)4,104、(Mn)1,168
ポリアミド樹脂(A3):(Mw)5,214、(Mn)1,637
ポリアミド樹脂(B1):(Mw)20,847、(Mn)3,571
ポリアミド樹脂(B2):(Mw)50,533、(Mn)9,972
ポリアミド樹脂(B3):(Mw)36,186、(Mn)8,937
各ポリアミド樹脂40部を、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤60部に混合溶解させて、固形分40%のポリアミド樹脂溶液PA(A1)~PA(B3)をそれぞれ得た。
ポリアミド樹脂(A1)~(B3)はいずれも重合脂肪酸および/またはダイマー酸に由来する構成単位をポリアミド樹脂中に有し、軟化点100~130℃のポリアミド樹脂である。
【0053】
<セルロース系樹脂溶液の調製>
ニトロセルロース イソプロピルアルコール湿潤品(1):TNC INDUSTRIAL社製、製品名NC TR2
ニトロセルロース イソプロピルアルコール湿潤品(2):TNC INDUSTRIAL社製、製品名NC TR5-6
各ニトロセルロース イソプロピルアルコール湿潤品22部を、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤78部に混合溶解させて、固形分15%のセルロース系樹脂溶液NC(1)、NC(2)をそれぞれ得た。
【0054】
<脂肪酸アミド>
ビスアミド(1):ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(Mw)650
ビスアミド(2):エチレンビスオレイン酸アミド(Mw)590
ビスアミド(3):ヘキサメチレンジアミンにC6~C18の分布を持った脂肪酸をアミド結合させたビスアミド、アゼライン酸をアミド結合させたトリアミドの混合物(Mw)1,500
モノアミド:パルミチン酸アミド(Mw)250
【0055】
<炭化水素ワックス>
ポリエチレンワックス(三井化学社製 製品名ハイワックス320MP)
パラフィンワックス(Micro Powders社製 製品名MP-22XF)
【0056】
<実施例1>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ポリアミド樹脂溶液PA(A1)19部、ポリアミド樹脂溶液PA(B1)19部、セルロース系樹脂溶液NC(1)22部、ビスアミド(1)1.7部、ポリエチレンワックス2部、シリコーン系消泡剤0.3部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤26部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、表刷り用グラビア印刷インキ(インキS1)を得た。インキS1中のポリアミド樹脂の分子量分布曲線の全ピーク面積のうち、分子量3,000以下の面積百分率が27.9%、分子量50,000以上の面積百分率が5.3%であった。
【0057】
<実施例2~11>
表1に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例1と同様の方法で表刷り用グラビア印刷インキ組成物(インキS2~S11)を得た。
【0058】
<実施例12>
ポリアミド樹脂溶液PA(A1)12部、ポリアミド樹脂溶液PA(B1)28部、セルロース系樹脂溶液NC(1)22部、ビスアミド(1)3部、パラフィンワックス1部、シリコーン系消泡剤0.3部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤33.7部を撹拌混合し、表刷り用グラビア印刷オーバープリントワニス(OPワニスS12)を得た。OPワニスS12中のポリアミド樹脂の分子量分布曲線の全ピーク面積のうち、分子量3,000以下の面積百分率が23.5%、分子量50,000以上の面積百分率が7.4%であった。
【0059】
<実施例13~22>
表1に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例12と同様の方法で表刷り用グラビア印刷OPワニス組成物(OPワニスS13~S22)を得た。
【0060】
<比較例1~6>
表2に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例1と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキT1~T6)を得た。
【0061】
<比較例7~12>
表2に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例12と同様の方法でグラビア印刷OPワニス組成物(OPワニスT7~T12)を得た。
【0062】
<表刷りグラビア印刷物の製造(印刷)>
実施例1で得られたグラビア印刷インキを希釈溶剤(酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比))で希釈し、ザーンカップNo.3で16秒に調整し、印刷用の希釈インキとした。
次に、コロナ放電未処理ポリエチレンフィルム(30μm)にグラビア校正印刷機を利用して、版深30ミクロンの腐蝕版で印刷(乾燥温度50℃、印刷速度50m/分)を行い、印刷物を得た。
【0063】
実施例2~11で得られたグラビア印刷インキを使用した以外は、実施例1と同様の方法でポリエチレンフィルム印刷物を得た。
【0064】
実施例12で得られたグラビア印刷OPワニスを希釈溶剤(酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比))で希釈し、ザーンカップNo.3で16秒(25℃)に調整し、印刷用の希釈OPワニスとした。
次に、片艶晒クラフト紙(王子製紙株式会社製)の艶を有しない面に、グラビア校正印刷機を利用して、水で希釈したアクリル系水性ヒートシール剤を、版深35ミクロンの腐蝕版を用いて2度重ね印刷(乾燥温度100℃、印刷速度40m/分)を行い、ヒートシール層を形成した。
次に、片艶晒クラフト紙の艶面に、インキ層として、溶剤で希釈したエコカラーHG39S藍(東洋インキ社製)を版深20ミクロンの腐蝕版で印刷(乾燥温度100℃、印刷速度40m/分)を行い、さらにインキ層に重ねるように、OP層として、希釈OPワニスを版深20ミクロンの腐蝕版で印刷(乾燥温度100℃、印刷速度40m/分)を行い、印刷物を得た。
【0065】
実施例13~22で得られたグラビア印刷OPワニスを使用した以外は、実施例12と同様の方法でクラフト紙印刷物を得た。
【0066】
比較例1~6で得られたグラビア印刷インキを使用した以外は、実施例1と同様の方法でポリエチレンフィルム印刷物を得た。
【0067】
比較例7~12で得られたグラビア印刷OPワニスを使用した以外は、実施例12と同様の方法でクラフト紙印刷物を得た。
【0068】
実施例1~22および比較例1~12で得られたグラビア印刷インキ(またはグラビア印刷OPワニス)およびその印刷物を用いて以下に記載の評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0069】
<接着性>
実施例1~11、比較例1~6のコロナ放電未処理ポリエチレンフィルムに印刷した印刷物のインキ層面に粘着テープ(製品名セロハンテープ)を貼り付け、これを急速に剥がしたときのインキ層がフィルムから剥離する度合いから、接着性を評価した。なお、評価は印刷後に25℃で24時間静置後に行った。
A.インキ層がフィルムから取られない
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0070】
実施例12~22、比較例7~12の片艶晒クラフト紙に印刷した印刷物のOP層面に粘着テープ(製品名セロハンテープ)を貼り付け、これを急速に剥がしたときのOP層がクラフト紙から剥離する度合いから、接着性を評価した。なお、評価は印刷後に25℃で24時間静置後に行った。
A.OP層がクラフト紙から取られない
B.OP層のクラフト紙から剥離した面積が5%未満であるもの
C.OP層のクラフト紙から剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
D.OP層のクラフト紙から剥離した面積が15%以上50%未満であるもの
E.OP層のクラフト紙から剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0071】
<耐ブロッキング性>
実施例1~11、比較例1~6のコロナ放電未処理ポリエチレンフィルムに印刷した印刷物を4cm角に切り、各インキ層面と非印刷面とを圧着し、10kg/cmの荷重をかけ、50℃の雰囲気で24時間放置後、圧着面を剥離した際の剥離面の状態から、耐ブロッキング性を評価した。
A.インキ層がフィルムから取られない
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0072】
実施例12~22、比較例7~12の片艶晒クラフト紙に印刷した印刷物を4cm角に切り、各OP層面とヒートシール層面を合わせて、10kg/cmの荷重をかけ、50℃の雰囲気で24時間放置後、圧着面を剥離した際の剥離抵抗および剥離面の状態から、耐ブロッキング性を評価した。
A.剥離抵抗がない。
B.剥離抵抗はわずかにあるが、OP層またはヒートシール層の取られは見られない。
C.剥離抵抗はあるが、OP層またはヒートシール層の取られは見られない。
D.剥離抵抗があり、点状から50%未満でOP層またはヒートシール層が取られる。
E.剥離抵抗が強く、印刷面積の50%以上でOP層またはヒートシール層が取られる。
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0073】
<耐摩擦性>
実施例1~11、比較例1~6のコロナ放電未処理ポリエチレンフィルムに印刷した印刷物のインキ層面に上質紙を当て、学振型摩擦堅牢試験機を用いて評価した。評価条件は荷重200g×往復100回の摩擦で、摩擦後にインキ層がフィルムから剥離する度合いから、耐摩擦性を評価した。
A.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上25%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が25%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0074】
実施例12~22、比較例7~12の片艶晒クラフト紙に印刷した印刷物のOP層面に上質紙を当て、学振型摩擦堅牢試験機を用いて評価した。評価条件は荷重200g×往復100回の摩擦で、摩擦後にOP層がクラフト紙から剥離する度合いから、耐摩擦性を評価した。
A.OP層のクラフト紙から剥離した面積が5%未満であるもの
B.OP層のクラフト紙から剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
C.OP層のクラフト紙から剥離した面積が15%以上25%未満であるもの
D.OP層のクラフト紙から剥離した面積が25%以上50%未満であるもの
E.OP層のクラフト紙から剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0075】
<耐熱性>
実施例1~11、比較例1~6のコロナ放電未処理ポリエチレンフィルムに印刷した印刷物のインキ層面にアルミ箔艶面を当て、ヒートシール試験機を用いて評価した。評価条件は温度170℃、荷重2kg、1秒の圧着で、圧着後にインキ層がアルミ箔に付着する度合いから、耐熱性を評価した。
A.インキ層のアルミ箔に付着した面積が5%未満であるもの
B.インキ層のアルミ箔に付着した面積が5%以上15%未満であるもの
C.インキ層のアルミ箔に付着した面積が15%以上25%未満であるもの
D.インキ層のアルミ箔に付着した面積が25%以上50%未満であるもの
E.インキ層のアルミ箔に付着した面積が50%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0076】
実施例12~22、比較例7~12の片艶晒クラフト紙に印刷した印刷物のOP層面にアルミ箔艶面を当て、ヒートシール試験機を用いて評価した。評価条件は温度170℃、荷重2kg、1秒の圧着で、圧着後にOP層がアルミ箔に付着する度合いから、耐熱性を評価した。
A.OP層のアルミ箔に付着した面積が5%未満であるもの
B.OP層のアルミ箔に付着した面積が5%以上15%未満であるもの
C.OP層のアルミ箔に付着した面積が15%以上25%未満であるもの
D.OP層のアルミ箔に付着した面積が25%以上50%未満であるもの
E.OP層のアルミ箔に付着した面積が50%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0077】
<印刷適性>
実施例1~22および比較例1~12で得られたグラビア印刷インキ(またはグラビア印刷OPワニス)について希釈溶剤((酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比))にて、粘度をザーンカップNo.3で16秒(25℃)に調整し、印刷機における版の空転90分後の、版かぶり部分の面積を目視判定し、評価を行った。
A.版かぶり面積が目視で確認できない
B.版かぶり面積が0%以上5%未満であるもの
C.版かぶり面積が5%以上10%未満であるもの
D.版かぶり面積が10%以上20%未満であるもの
E.版かぶり面積が20%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
本発明は、インキの保存安定性、基材への耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性および印刷適性が良好であり、特にコロナ未処理基材に対する接着性、印刷して巻き取られた時にヒートシール層と接触しても、ヒートシール層と接着しない耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することができた。
ポリアミド樹脂、または脂肪酸アミドを含まない比較例1~2、比較例7~8、インキ中のポリアミド樹脂の分子量分布曲線の全ピーク面積のうち、分子量3,000以下、および分子量50,000以上の面積百分率が範囲外の比較例3~6、比較例9~12では、特に密着性および耐ブロッキング性が基準に満たさない評価であった。