(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092975
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電池用容器及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/107 20210101AFI20230627BHJP
H01M 10/30 20060101ALI20230627BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20230627BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01M50/107
H01M10/30 Z
H01M50/152
H01M50/184 D
H01M10/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208318
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 永成
(72)【発明者】
【氏名】大浦 真
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC06
5H011FF03
5H011GG02
5H011KK00
5H028AA07
5H028BB03
5H028BB17
5H028CC04
5H028CC08
5H028HH09
(57)【要約】
【課題】高圧の水素ガスを容易に充填できる電池用容器及び電池を提供する。
【解決手段】水素ガスが封入され、負極活物質を水素とする電池に使用される電池用容器であって、容器内に前記水素ガスを封入するための開閉バルブを備え、前記開閉バルブは、前記水素ガスを外部から前記容器内に充填可能で内部からの流出を阻止する構成となっていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスが封入され、負極活物質を水素とする電池に使用される電池用容器であって、
容器内に前記水素ガスを封入するための開閉バルブを備え、
前記開閉バルブは、前記水素ガスを外部から前記容器内に充填可能で内部からの流出を阻止する構成となっていることを特徴とする電池用容器。
【請求項2】
前記開閉バルブは、外部からの押圧によって開き、押圧を解除すると閉じる構成となっている請求項1に記載の電池用容器。
【請求項3】
電極体が挿入可能な開口部を有する容器本体と、該容器本体の前記開口部を閉塞する蓋体と、を備え、該蓋体に前記開閉バルブが設けられている請求項1または2に記載の電池用容器。
【請求項4】
前記開閉バルブは、前記蓋体外部へ突出する方向及び前記蓋体内へ没入する方向に移動可能なステムと、該ステムを突出方向に付勢するスプリングと、前記蓋体に装着されるガスケットと、を備え、前記ステムには、外部と容器内部とを連通する通路が設けられ、前記通路の容器内部側の通路出口が、前記ステムの突出位置では前記ガスケットによって閉塞され、前記ステムの没入位置側への移動によって前記ステムの容器内部側の通路出口が開く構成となっている請求項3に記載の電池用容器。
【請求項5】
耐圧強度が1MPa以上に設定されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池用容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電池用容器に、電極体が収納され、電解液と水素とが充填された電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、水素を負極活物質とするニッケル水素電池等に利用可能な電池用容器およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の水素を負極活物質とする電池としては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。この電池は、水素が封入されているので、正極に含まれるカーボンから成る導電剤は酸化されることがなく、負極の水素吸蔵合金も酸化劣化せず、優れた寿命特性を有する。その構成は、外装体(容器)と、集電棒と、外装体内部に収納される電極体とを主な構成要素とし、外装体は、有底の円筒缶(容器本体)と、円筒缶の開口部に取付けられた蓋部材とから構成されている。蓋部材は、電極体を収納後に、円筒缶の開口部において密に嵌合される。蓋部材には、電解液および水素ガスの供給を行うための供給口が設けられていて、この供給口には水素ガスタンクが接続され、外装体内部に水素ガスが充填される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電池においては、蓋部材に水素を充填する供給口があるというのみで、具体的な構成が記載されていない。
本発明の目的は、高圧の水素ガスを容易に充填できる電池用容器及び電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、
水素ガスが封入され、負極活物質を水素とする電池に使用される電池用容器であって、
容器内に前記水素ガスを封入するための開閉バルブを備え、
前記開閉バルブは、前記水素ガスを外部から前記容器内に充填可能で内部からの流出を阻止する構成となっていることを特徴とする。
本発明は、開閉バルブを用いることで、水素ガスを容易に容器内に充填することができ、また、充填した水素ガスは、開閉バルブによって流出を確実に阻止することができる。
【0006】
本発明は、次のように構成することができる。
1.開閉バルブは、外部からの押圧によって開き、押圧を解除すると閉じる構成となっている。
このようにすれば、バルブの開閉操作が容易となる。
2.電極体が挿入可能な開口部を有する容器本体と、容器本体の前記開口部を閉塞する蓋体と、を備え、蓋体に前記開閉バルブが設けられている構成とする。
このようにすれば、開閉バルブの容器への装着が容易となる。
3.開閉バルブは、蓋体外部へ突出する方向及び蓋体内へ没入する方向に移動可能なステムと、ステムを突出方向に付勢するスプリングと、蓋体に装着されるガスケットと、を備え、前記ステムには、外部と容器内部とを連通する通路が設けられ、前記通路の容器内部側の通路出口が、前記ステムの突出位置ではガスケットによって閉塞され、ステムの没入位置側への移動によって前記ステムの容器内部側の通路出口が開く構成とする。
このようにすれば、ステムの移動によって、確実に開閉することが可能となる。
4.前記容器の耐圧強度が1MPa以上に設定されている。
1MPa以上の耐圧強度があれば、十分な水素を充填可能である。
【0007】
また、本発明の電池は、上記した電池用容器に、電極体が収納され、電解液と水素とが充填された構成となっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高圧の水素ガスを容易に充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(A)は、本発明の実施形態1に係る電池用容器が使用された電池を示す概略断面図、(B)は(A)の容器本体と蓋体とを分解して示す部分断面図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1の蓋体の第1接合部の部分拡大断面図、(B)接合前の状態を示す部分拡大断面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図1の開閉バルブの閉状態の拡大断面図、(B)は開状態の部分拡大断面図である。
【
図4】
図4(A)~(D)は、
図1の電池の組み立て工程を示す図である。
【
図5】
図5(A)は脱気工程、
図5(B)は電解液の充填工程の説明図である。
【
図7】
図7(A)は、第1接合部の内周に嵌合するアダプタキャップ、
図7(B)は、第1接合部の外周に嵌合するアダプタキャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
以下の説明では、本発明の電池用容器をニッケル水素・水素電池に適用した例について説明する。ニッケル水素・水素電池は、従来技術に説明したような、ニッケル水素電池に水素ガスを封入した構成の電池である。
【0011】
まず、
図1を参照して、電池用容器が使用された電池の全体構成について説明する。
図1(A)は、本発明の実施形態1に係る電池用容器が使用された電池の概略断面図、(B)は(A)の容器本体と蓋体とを分解して示す部分断面図である。
電池用容器100は、電極体50が収納される導電性で有底筒状の容器本体10と、容器本体10の開口部12に第1接合部41を介して接合される導電性の蓋体20と、蓋体20に設けられる開閉バルブ30と、を有している。容器本体10及び蓋体20の材料としては、アルミニウムあるいはスチール等、導電性の金属が用いられる。
【0012】
容器本体10は、この例では有底円筒形状で、円筒状の胴部11と、胴部11の一端に設けられる底部13と、胴部11の他端から前記開口部12に向かって延びる肩部15と、を有している。容器本体10は、胴部11と、底部13と、肩部15とに三分割され、胴部11と肩部15は、第2接合部42を介して接合され、胴部11と底部13は、第3接合部43を介して接合されている。開口部12は胴部11より小径で、肩部15を介して胴部径から開口部12に向かって徐々に縮径されている(
図1(B)参照)。胴部11と肩部15とが接合される第2接合部42、胴部11と底部13が接合される第3接合部43は、それぞれ、二重巻締によって巻締固定されている。第2接合部42と第3接合部43は、金属接触しており、胴部11と肩部15、胴部11と底部13は、導通状態である。
なお、胴部11と肩部15が一体となっていてもよいし(第2接合部42が無い構成)、胴部11と底部13が一体となっていてもよい(第3接合部43が無い構成)。また、胴部11、肩部15および底部13がすべて一体となっていてもよい(第2接合部42も第3接合部43も無い構成)。また、開口部12を縮径する必要が無ければ肩部15は不要である。
【0013】
蓋体20は、断面ハット形状の本体部21と、本体部21の外周縁から立ち上がる接合筒部24と、を備え、第1接合部41において、接合筒部24が容器本体10の肩部15に接合されている。本体部21は、円筒状の中央突出部22と、中央突出部22の付け根側の端部から外向きに張り出すつば部23と、を備えている。つば部23は、図示例では斜め下向きに円錐台状に傾斜しているが、水平に張り出す構成でもよい。
また、容器本体10及び蓋体20の内面には、容器内に収容される電解液に対する耐性を有する表面処理が施されている。表面処理は、導電性を有する処理であり、この例では、容器本体10及び蓋体20の内面はニッケルメッキが施されている。
【0014】
次に、第1接合部41について、
図2を参照して説明する。
図2(A)は、第1接合部の部分拡大断面図、(B)接合前の状態を示す部分拡大断面図である。
図2に示すように、第1接合部41は、容器本体10の開口部12の開口縁に設けられるビード部12aと、蓋体20の周縁に設けられビード部12aに嵌り合ってかしめ固定されるカール部25と、ビード部12aとカール部25の間に挟まれてビード部12aとカール部25の間を電気的に絶縁する絶縁体60とを備えている。
【0015】
ビード部12aは、肩部15の内径端から容器外方に立ち上がり、外側に断面円形状に曲げ返された構成となっている。蓋体20のカール部25は、接合筒部24の先端部から、外側に向けて断面円弧状に曲げ返された構成で、このカール部25が、断面円形状のビード部12aの上半部に係合している。接合筒部24は、その上端部外周がビード部12aの内周と対向しており、ビード部12aの下縁に対応する位置の直下に、径方向外向きに拡径する方向にかしめられたクリンチ部27を有し、このクリンチ部27とカール部25との間で、絶縁体60を介してビード部12aの外周を上下から包むように把持している。
【0016】
絶縁体60は電気を通さない絶縁性を有するゴム状弾性を備えた樹脂材であり、第1接合部41のクリンチ部27の上半部から容器本体10のビード部12aとカール部25との隙間に介装され、容器本体10と蓋体20とを電気的に絶縁するとともに、流体の漏洩を防止するように密封している。シール性を有することで、電解液および充填される水素等のガスを確実に封止することができる。また、絶縁体60は、容器内に収容される電解液に対する耐性を有する樹脂材によって構成される。また、絶縁体60の表面に、腐食抑制剤(インヒビター)が塗布されていてもよい。腐食抑制剤を塗布することにより、金属の接合面の腐食による漏洩を防止することができる。
【0017】
次に、
図3を参照して、開閉バルブ30について説明する。
図3(A)は、
図1の開閉バルブの閉状態の拡大断面図、(B)は開状態の拡大断面図である。
開閉バルブ30は、常時閉弁状態で、外部からの操作によって開弁して、電解液や水素ガスの充填を可能とする。開閉バルブ30の構成は、蓋体20の中央突出部22の内周に嵌合されるバルブハウジング31と、中央突出部22の天板部22bに設けられた挿通孔からバルブハウジング31内に出没可能に挿通されるステム32と、ステム32の側面に設けられた弁孔33と、ステム32の移動によって開閉される弁孔33を封止するガスケット34と、ステム32を突出方向に付勢するスプリング35と、を備えている。
バルブハウジング31は、底部31dにノズル36を備えた有底円筒形状で、開口端側が中央突出部22の内周に嵌合され、開口端31aと中央突出部22の天板部22bとの間がガスケット34によって密封されている。ノズル36については、無くてもよく、底部31dに通孔が開口しているだけでもよい。また、バルブハウジング31の開口端近傍の外周には外側に張り出す環状凸部31cが設けられている。また、中央突出部22には、環状凸部31cの底部側の縁部に係合するかしめ凹部22aが局部的に設けられ、環状凸部31cとガスケット34とが、かしめ凹部22aと天板部22bとの間で軸方向に挟むように固定されている。
【0018】
ステム32は、バルブハウジング31内に収納される大径のステム基部32aと、中央突出部22の天板部22bの穴からガスケット34を介して外部に突出するステム基部32aよりも小径のステム軸部32bと、を備えている。ステム軸部32bには、先端開口部から軸方向に所定寸法延びる流路32cが設けられ、ステム基部32aとの境界付近の側面に容器内部側の通路出口である弁孔33が開口している。弁孔33は、流路32cとバルブハウジング31内部とを連通し、流路32cと共に、外部空間と容器内部とを連通する通路を構成する。
ステム32は、通常は、スプリング35の付勢力で突出方向に付勢され、弁孔33がガスケット34の内周によって閉塞される閉弁位置にあり、常時閉弁状態に維持されている。
ステム32が相対的に容器内方に向かって押し込まれると、
図3(B)に示すように、ガスケット34の内縁が容器の内方に向けて撓み、ガスケット34の内周面が弁孔33の孔縁から離れて開弁する。
なお、蓋体20には、内圧が異常に過大になると圧力を解放する防爆弁85が設けられている。防爆弁85は、たとえば、薄肉部や、スコア等の脆弱部を局部的に設けることによって構成され、図示例では、圧力によって膨らむつば部23に設けられている。
【0019】
次に、
図1を参照して、電極体50について説明する。
本実施形態の電池は、ニッケル水素・水素電池(ニッケル水素電池に水素ガスを充填した電池)であり、電極体50として、負極に水素吸蔵合金を含む電極が用いられ、正極には、水酸化ニッケル、電解液としては、たとえば水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の水溶液が用いられる。
電極体50は、積層タイプを例示している。すなわち、複数の正極51と、負極52が、セパレータ53を挟んで、容器本体10の内部に積層された状態で収納されている。正極51は、正極集電体54を介して容器本体10と電気的に接続され、負極52は、負極集電体55を介して蓋体20と電気的に接続されている。電解液はセパレータ53に含浸されている。
【0020】
正極集電体54は、筒状部54aと底板部54bとを有する有底円筒形状で、筒状部54aの内周に各正極51の外縁部が接触し、筒状部54aの外周が容器本体10の胴部11内周に接しており、正極51は、正極集電体54の筒状部54aを介して容器本体10の胴部11と電気的に接続され、底板部54bを介して、容器本体10の底部13と電気的に接続される。
【0021】
負極集電体55は、正極集電体54よりも小径の有底円筒状部材である。負極集電体55は、ワッシャ状の正極51、セパレータ53および負極52の穴を貫通し、負極集電体55の外周に、負極52の内縁部が密着している。負極集電体55の蓋体側(開放側)の端部は、蓋体20のつば部23に接触し電気的に接続されている。負極集電体55は、たとえば、連続気泡の多孔質金属によって構成され、負極集電体55の内部空間と、正極51、負極52およびセパレータ53が配置される空間とが連通している。多孔質金属で無くても、負極集電体55に、負極集電体55の内部空間と、正極51、負極52およびセ
パレータ53が配置される空間とを連通する連通路が設けられていればよい。
正極集電体54の底板部54bと負極集電体55の底部55bは、図示しないが、絶縁部材によって絶縁されている。
なお、上記電極体50の構成は一例であって、たとえば、負極集電体55を開閉バルブ30に接触させてもよく、種々の構成を採用することができる。
【0022】
この実施形態では、容器本体10の開口部12を構成する肩部15と蓋体20との第1接合部41が、絶縁体60を介して電気的に絶縁され、胴部11と肩部15の第2接合部42、および胴部11と底部13の第3接合部43は導通状態となっている。
負極52は、負極集電体55を介して蓋体20に電気的に接続され、正極51は正極集電体54を介して、胴部11および底部13に電気的に接続されている。
したがって、開閉バルブ30および蓋体20が負極領域N1となり、肩部15、胴部11および底部13で構成される容器本体10全体が正極領域P1となる。負極領域N1および正極領域P1は、負極、正極の電源端子として利用することができる。電源端子としては、負極領域N1、正極領域P1の任意の位置を端子として利用することもできるし、一部を絶縁フィルム等で被覆することにより、特定の領域を端子として利用することもできる。
また、電極体50で発生した熱は、正極集電体54の筒状部54aに接触する胴部11、底板部54bに接触する底部13を通じて効率的に放熱される。
【0023】
次に、
図4を参照して、電池の組み立て工程の一例について説明する。
まず、容器本体10の胴部11と底部13を接合して第1の予備成形体10Aを成形する(
図4(A)、(B)参照)。胴部11と底部13の第3接合部43は、二重巻締である。
次いで、第1の予備成形体10Aの胴部11の開口部から、電極体50を収納し、胴部11の開口部に肩部15を接合して、電極体50が収納された状態の容器本体10を成形する(
図4(B)、(C)参照)。胴部11と肩部15との第2接合部42も二重巻締である。
次に、容器本体10の肩部15の開口部12に、予め開閉バルブ30が組付けられた蓋体20を接合し、電池の組み立てが完了する(
図4(C),(D)参照)。肩部15と蓋体20との第1接合部41の接合は、クリンチ加工によってなされる。
【0024】
電池の組立完了後、容器内部に電解液が充填され、次いで、水素ガスが充填される。
図5及び
図6は、電解液および水素ガスの充填工程を模式的に示すもので、
図5(A)は脱気工程、
図5(B)は電解液の充填工程、
図6は水素ガスの充填工程を示している。
まず、電解液の充填前に、電池内部が脱気(バキューム)される。
この脱気工程では、
図5(A)に示すように、開閉バルブ30を開き、不図示の吸引ポンプによって電池内部の空気が吸引される。すなわち、電池の内部空間の空気は、図中破線矢印で示すように、負極集電体55の内部に吸引され、開閉バルブ30のノズル36、バルブハウジング31とステム基部32aとの隙間、弁孔33、ステム軸部32bの流路32cを通じて、外部に流出する。
なお、バキューム時の容器本体10に作用する陰圧は、
図1に示す電極体50の正極集電体54によって保持され、容器本体10の変形は阻止される。
【0025】
バキュームが終了すると、電解液が充填される。
電解液の充填は、
図5(B)に示すように、開閉バルブ30が開いた状態で、不図示の電解液供給ラインから所定量の電解液が供給される。電解液の供給は、不図示の供給ポンプによって供給される。電解液は、脱気とは逆に、図中実線矢印で示すように、ステム軸部32bの流路32c、弁孔33、バルブハウジング31とステム基部32aとの隙間、バルブハウジング31の底部のノズル36を通じて負極集電体55内部に流入する。負極
集電体55内部に流入した電解液は、負極集電体55の壁面を通過して容器の内部空間に流入し、
図1に示すセパレータ53に含浸された状態で保持される。
【0026】
電解液の充填が終了すると、水素ガス充填前の脱気工程に進む。
脱気工程は、
図5(A)に示したように、開閉バルブ30が開いた状態で、再度、電池内部の空気、すなわち、酸素、窒素が脱気される。この実施形態では電解液はセパレータ53に含浸されているが、電解液が滞留している場合には、電解液を除くヘッドスペースの空気である。
【0027】
脱気工程が終了すると、水素ガスが充填される。
水素ガスの充填工程は、
図6に示すように、開閉バルブ30が開いた状態で、不図示の水素ガス供給源から水素ガスが供給される。水素ガスは、図中破線矢印で示すように、ステム軸部32bの流路32c、弁孔33、バルブハウジング31とステム32のステム基部32aとの隙間、バルブハウジング31の底部のノズル36を通じて、負極集電体55の内部空間に流入する。負極集電体55内に流入した水素ガスは、負極集電体55の壁面を通じて容器の内部空間に流入し、容器内が水素で満たされる。
【0028】
封入される水素ガスの圧力は、最低1MPa、1MPa以上とすることが好ましい。容器の耐圧強度は、水素ガスのガス圧以上の1MPa以上に設定される。容器の耐圧強度は、容器の内圧によってバックリングが生じない圧力である。バックリングは、たとえば、
図3(A)に、二点鎖線で示すように、蓋体20の、つば部23と接合筒部34の角部が外向きに反転する変形である。防爆弁85の作動圧は耐圧強度より大きく、内圧が耐圧強度より増大すると蓋体20にバックリングが生じ、さらに内圧が増大し所定圧以上となると防爆弁85が作動し、容器の破壊による内容物の漏洩が防止される。水素ガスの圧力が1MPa程度であれば、防爆弁85の作動する圧力は、1.2~1.5MPa程度に設定される。
ガス圧が作用しても、蓋体20と容器本体10との第1接合部41は、ビード部12aに嵌り合ってかしめ固定されるカール部25を備えた構成であり、接合強度が高く、高い耐圧性を保持できる。さらに、このビード部12aとカール部25に絶縁体60を挟むことにより、絶縁体60を確実に固定でき、絶縁の信頼性を高めることができる。
【0029】
容器内に充填した水素ガスは、負極52の水素吸蔵合金に吸蔵され、負極52は満充電状態になるとともに、水素ガスは、容器の内部空間、たとえば、電極体50と肩部15および蓋体20とのスペース、正極51、負極52、セパレータ53間の隙間、負極集電体55とセパレータ53、正極51との隙間、正極集電体54とセパレータ53、負極52との隙間等に入り込んだ状態となる。
この状態で、充電を行うと、負極52から水素ガスが発生する。開閉バルブ30は閉弁状態となっているので、充電が進むにつれて、電池内部の水素ガス濃度は上昇し、負極52の電位が低下し、その結果、端子電圧が上昇する。このとき、容器内の隙間に保持されている水素ガスによって、正極で発生する酸素は、水素と結合して水となり、正極51の導電剤の酸化、負極52の水素吸蔵合金の酸化が防止される。
【0030】
アダプタキャップについて
図7には、上記実施形態の電池用容器の第1接合部41に適用されるアダプタキャップ
が示されている。
図7(A)は、第1接合部41の内周に嵌合する第1例のアダプタキャ
ップ、
図7(B)は、第1接合部の外周に嵌合する第2例のアダプタキャップである。
まず、
図7(A)を参照して、第1例のアダプタキャップ81について説明する。
このアダプタキャップ81は、断面ハット形状に成形された金属製で、ステム32を覆う中央凸部81aと、中央凸部81aの下縁から円板状に張り出すつば部81bと、つば部81bの外縁から直角に垂下する係止筒部81cと、を備えている。係止筒部81cの
下縁には、外向きに突出する係合突部81dが設けられている。係止筒部81cの外周は第1接合部41の内周に嵌合し、係合突部81dは、つば部81bが蓋体20の中央突出
部22の端面に当接した状態で、クリンチ部27内周に係合し、上下方向に固定される。
【0031】
次に、
図7(B)を参照して、第2例のアダプタキャップ82について説明する。
このアダプタキャップ82も、断面ハット形状に成形された金属製で、ステム32を覆う中央凸部82aと、中央凸部82aの下縁から円板状に張り出すつば部82bと、つば部82bの外縁から直角に垂下する係止筒部82cと、を備えている。係止筒部82cの下縁には、内向きに突出する係合突部82dが設けられている。係止筒部82cの内周は第1接合部41の外周に嵌合し、係合突部82dは、つば部82bが第1接合部41のカール部25上端に当接した状態で、第1接合部41のカール部25の下端に係合し、上下方向に固定されている。
これらのアダプタキャップ81、82によって、ステム32が保護され、ステム32が不用意に押し込まれることを防止する。また、アダプタキャップ81、82は、蓋体20と接触しているので、蓋体20と電気的に接続され、電池の端子としても機能する。
【0032】
なお、上記実施形態では、ニッケル水素電池について説明したが、正極は二酸化マンガン等の酸化金属であればよく、ニッケル水素電池には限定されない。本発明は、負極活物質が水素で、水素ガスを封入した二次電池について適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 容器本体、10A 第1の予備成形体
11 胴部、12 開口部、12a ビード部、13 底部、15 肩部
20 蓋体
21 本体部、22 中央突出部、22a 凹部、22b 天板部
23 つば部、24 接合筒部、25 カール部、27 クリンチ部
30 開閉バルブ
31 バルブハウジング
31a 開口端、31c 環状凸部、31d 底部、36 ノズル
32 ステム
32a ステム基部、32b ステム軸部、32c 流路
33 弁孔、
34 ガスケット
35 スプリング
41 第1接合部、42 第2接合部、43 第3接合部
50 電極体
51 正極、52 負極、53 セパレータ
54 正極集電体、54a 筒状部、54b 底板部
55 負極集電体、55a 小径筒状部、55b 底部
60 絶縁体
81 アダプタキャップ
81a 中央凸部、81b つば部、81c 係止筒部、81d 係合突部
82 アダプタキャップ
82a 中央凸部、82b つば部、82c 係止筒部、82d 係合突部
85 防爆弁
100 電池用容器
N1 負極領域、P1 正極領域