(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092982
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】冷凍米飯用改良剤、冷凍米飯、冷凍米飯が自然解凍された米飯、及び冷凍米飯を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230627BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L7/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208329
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 直樹
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE02
4B023LE13
4B023LG01
4B023LK04
4B023LK06
4B023LK07
4B023LK08
4B023LK17
4B023LK18
4B023LP11
4B023LP15
4B023LP20
(57)【要約】
【課題】冷凍後に自然解凍しても、やわらかさ、粘り、粒感が良好な米飯を得ることができる冷凍米飯、及びそのために使用する冷凍米飯用改良剤を提供すること。
【解決手段】冷凍米飯用改良剤であって、前記冷凍米飯の原料米は、アミロース含量[X]及び水分含量[Y]が特定の条件を満たす米であり、前記冷凍米飯用改良剤全体中、担子菌由来の特定の抽出物を0.003~0.1重量%(固形分換算)、及び前記改良剤100gに対して、α-グリコシルトランスフェラーゼ5000~166500単位、α-アミラーゼ150~5000単位を含有し、前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500である、自然解凍して食するための冷凍米飯用改良剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍米飯用改良剤であって、
前記冷凍米飯の原料米は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が下記条件(A)又は(B)を満たす米であり、
前記冷凍米飯用改良剤全体中、担子菌由来の抽出物を0.003~0.1重量%(固形分換算)、及び
前記改良剤100gに対して、α-グリコシルトランスフェラーゼ5000~166500単位、α-アミラーゼ150~5000単位を含有し、
前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500であり、
前記抽出物は、担子菌量(湿重量)/水、アルカリ水及びエタノールの合計量(重量比)が0.05~10である混合物が、40~160℃で、0.1~12時間抽出処理された後、担子菌由来の抽出物残渣が除去された抽出物である、自然解凍して食するための冷凍米飯用改良剤。
[条件(A)]11.5≦X<19且つ11≦Y<7.0+8.5×{1-[(X-19.0)/8.5]2}1/2
[条件(B)]19≦X≦25且つ11≦Y≦15.5
【請求項2】
前記冷凍米飯用改良剤全体中、HMペクチンを0.1~3.3重量%含有する、請求項1に記載の自然解凍して食するための冷凍米飯用改良剤。
【請求項3】
炊飯用原料が炊飯され、その後冷凍された冷凍米飯であって、
前記炊飯用原料は、原料米、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分、水、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを含有し、
前記原料米100重量部に対し、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分が0.00003~0.003重量部、及び水が150~190重量部、
並びに前記原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼが50~5000単位、及びα-アミラーゼが1.5~150単位であり、
前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500であり、
前記原料米は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が下記条件(A)又は(B)を満たす米である、自然解凍して食するための冷凍米飯。
[条件(A)]11.5≦X<19且つ11≦Y<7.0+8.5×{1-[(X-19.0)/8.5]2}1/2
[条件(B)]19≦X≦25且つ11≦Y≦15.5
【請求項4】
前記炊飯用原料は、前記原料米100重量部に対して、HMペクチン0.001~0.1重量部を含有する、請求項3に記載の自然解凍して食するための冷凍米飯。
【請求項5】
前記炊飯用原料は、前記原料米100重量部に対して、請求項1又は2に記載の冷凍米飯用改良剤を1~3重量部含有する、請求項3又は4に記載の自然解凍して食するための冷凍米飯。
【請求項6】
請求項3~5の何れかに記載の冷凍米飯が自然解凍された米飯。
【請求項7】
自然解凍して食するための冷凍米飯の製造方法であって、
炊飯用原料を炊飯し、その後冷凍するものであり、
前記炊飯用原料は、原料米、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分、水、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを含み、
前記原料米100重量部に対し、前記担子菌由来の抽出物に含まれる固形分が0.00003~0.003重量部、前記水が150~190重量部であり、
前記原料米100gに対して前記α-グリコシルトランスフェラーゼが50~5000単位、及び前記α-アミラーゼが1.5~150単位となるように、且つ前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500となるように夫々混合するものであり、
前記原料米は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が下記条件(A)又は(B)を満たす米であり、
前記抽出物は、担子菌量(湿重量)/水、アルカリ水及びエタノールの合計量(重量比)が0.05~10である混合物が、40~160℃で、0.1~12時間抽出処理された後、担子菌由来の抽出物残渣が除去された抽出物である、自然解凍して食するための冷凍米飯を製造する方法。
[条件(A)]11.5≦X<19且つ11≦Y<7.0+8.5×{1-[(X-19.0)/8.5]2}1/2
[条件(B)]19≦X≦25且つ11≦Y≦15.5
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍後に自然解凍し、そのまま食するのに適した冷凍米飯に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍米飯は、電子レンジによる加熱解凍、自然解凍、加えてピラフのような加熱調理済み米飯については直火による加熱解凍などの方法により解凍して喫食される。温かいことが好まれる米飯食品においては、電子レンジや直火による加熱解凍が望ましいものの、米飯食品の中には、すし、おにぎり等のように、必ずしも温かい状態で喫食する必要が無いか、むしろ温かくしない方が良いとされる食品もあり、近年は、器具を使用することなく、自然解凍するだけで手軽に美味しく食することができる冷凍米飯食品が望まれるようになってきた。
【0003】
しかしながら、冷凍米飯の原料米中の水分量が少なかったり、アミロース含量が比較的多い原料米を使用して作製した冷凍米飯は、自然解凍すると、硬く、粘りの無い食感になる。そのため、このような原料米を使用する場合は、通常の炊飯条件よりも加水量を多くすることが行われているが、加水量を増やすと米飯はやわらかくなり、粘りも出るものの、粒感が著しく低下してしまう。
【0004】
そこで特許文献1には、トレハロースと、担子菌由来のキシロマンナンから成る氷結晶化阻害剤とを含み、澱粉の冷凍期間中の老化と解凍後の老化をともに抑制することができる、澱粉含有冷凍食品向けの品質改良剤が開示されている。そして、実施例1には該品質改良剤を使用し凍結保管1週間後に常温にて自然解凍した米飯が記載されているが、自然解凍した米飯は、硬く、粘りも不足していて、満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷凍後に自然解凍しても、やわらかさ、粘り、粒感が良好な米飯を得ることができる冷凍米飯、及びそのために使用する冷凍米飯用改良剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、原料米に対して、担子菌由来の抽出物、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを夫々特定量含有する冷凍米飯用改良剤、並びに特定量の水を添加して炊飯した米飯は、冷凍後に自然解凍しても、やわらかさ、粘り、粒感が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、冷凍米飯用改良剤であって、前記冷凍米飯の原料米は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が下記条件(A)又は(B)を満たす米であり、前記冷凍米飯用改良剤全体中、担子菌由来の抽出物を0.003~0.1重量%(固形分換算)、及び前記改良剤100gに対して、α-グリコシルトランスフェラーゼ5000~166500単位、α-アミラーゼ150~5000単位を含有し、前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500であり、前記抽出物は、担子菌量(湿重量)/水、アルカリ水及びエタノールの合計量(重量比)が0.05~10である混合物が、40~160℃で、0.1~12時間抽出処理された後、担子菌由来の抽出物残渣が除去された抽出物である、自然解凍して食するための冷凍米飯用改良剤に関する。
[条件(A)]11.5≦X<19且つ11≦Y<7.0+8.5×{1-[(X-19.0)/8.5]2}1/2
[条件(B)]19≦X≦25且つ11≦Y≦15.5
【0009】
前記冷凍米飯用改良剤において、前記冷凍米飯用改良剤全体中、HMペクチンを0.1~3.3重量%含有することが好ましい。
【0010】
本発明の第二は、炊飯用原料が炊飯され、その後冷凍された冷凍米飯であって、前記炊飯用原料は、原料米、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分、水、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを含有し、前記原料米100重量部に対し、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分が0.00003~0.003重量部、及び水が150~190重量部、並びに前記原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼが50~5000単位、及びα-アミラーゼが1.5~150単位であり、前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500であり、前記原料米は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が前記条件(A)又は(B)を満たす米である、自然解凍して食するための冷凍米飯に関する。
【0011】
前記冷凍米飯において、前記炊飯用原料は、前記原料米100重量部に対して、HMペクチン0.001~0.1重量部を含有することが好ましい。
【0012】
前記冷凍米飯において、前記炊飯用原料は、前記原料米100重量部に対して、前記冷凍米飯用改良剤を1~3重量部含有することが好ましい。
【0013】
本発明の第三は、前記冷凍米飯が自然解凍された米飯に関する。
【0014】
本発明の第四は、自然解凍して食するための冷凍米飯の製造方法であって、炊飯用原料を炊飯し、その後冷凍するものであり、前記炊飯用原料は、原料米、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分、水、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを含み、前記原料米100重量部に対し、前記担子菌由来の抽出物に含まれる固形分が0.00003~0.003重量部、前記水が150~190重量部であり、前記原料米100gに対して前記α-グリコシルトランスフェラーゼが50~5000単位、及び前記α-アミラーゼが1.5~150単位となるように、且つ前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500となるように夫々混合するものであり、前記原料米は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が前記条件(A)又は(B)を満たす米であり、前記抽出物は、担子菌量(湿重量)/水、アルカリ水及びエタノールの合計量(重量比)が0.05~10である混合物が、40~160℃で、0.1~12時間抽出処理された後、担子菌由来の抽出物残渣が除去された抽出物である、自然解凍して食するための冷凍米飯を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従えば、冷凍後に自然解凍しても、やわらかさ、粘り、粒感が良好な米飯を得ることができる冷凍米飯、及びそのために使用する冷凍米飯用改良剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る原料米におけるアミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)に関する条件(A)又は(B)を領域(A)又は領域(B)として示すグラフである。(X,Y)とし、点A(11.5,11)、点B(19,11)[=点G]、点C(25,11)、点D(25,15.5)、及び点E(19,15.5)をグラフ上に示す。領域(A)は点A、B及びEで囲まれる領域、領域(B)は点B、C、D及びEで囲まれる領域である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る原料米におけるアミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)による条件(C)又は(D)を領域(C)又は領域(D)として示すグラフである。(X,Y)とし、点F(13,11)、点G(19,11)[=点B]、点H(21,11)、点I(21,15)、及び点J(19,15)をグラフ上に示す。領域(C)は点F、G及びJで囲まれる領域、領域(D)は点G、H、I及びJで囲まれる領域である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の冷凍米飯用改良剤は、特定の米を原料とする冷凍米飯に用いる改良剤であり、特定条件で抽出された担子菌由来の抽出物を特定量、並びにα-グリコシルトランスフェラーゼ及びα-アミラーゼを夫々特定量含有する。
【0018】
本発明において冷凍米飯とは、特定の原料米を特定量含む炊飯用原料が炊飯された後に冷凍された状態の米飯を意味する。そして、炊飯時に前記冷凍米飯用改良剤を特定量添加しておくと、冷凍後に自然解凍しても、良好なやわらかさ、粘り、粒感を有する。なお、本発明において自然解凍とは、0~30℃において解凍することを意味し、冷蔵庫内などで行う冷蔵解凍、レンジ解凍も含む。ここで、「やわらかさ」とは、米粒がべたついて軟らかいのとは異なり、米粒一粒ずつに適度な軟らかさと弾力があり、且つ適度に脆い食感を意味する。また「粘り」とは、米粒にパサパサ感やボソボソ感がなく、適度のネバネバとした食感を意味する。「粒感」とは、米粒同士が結着することなく即ち塊状にならず、食べた時に米粒一粒ずつを感覚することのできる食感を意味する。
【0019】
前記原料米は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が、条件(A):11.5≦X<19、11≦Y<7.0+8.5×{1-[(X-19.0)/8.5]
2}
1/2、又は条件(B):19≦X≦25、11≦Y≦15.5を満たすことが好ましく(
図1参照)、条件(C):13≦X<19、11≦Y<11.0+4×{1-[(X-19.0)/6]
2}
1/2、又は条件(D):19≦X≦21、11≦Y≦15を満たすことがより好ましい(
図2参照)。ここで、前記Xは、前記原料米中のアミロース含量(重量%)であり、前記Yは、前記原料米中の水分含量(重量%)である。前記条件(A)又は前記条件(B)の範囲にある原料米を使用することで、容易に本発明の効果を享受することができる。
【0020】
前記担子菌由来の抽出物は、担子菌量(湿重量)/水、アルカリ水及びエタノールの合計量が特定の重量比である混合物が、特定温度で、特定時間抽出処理された後、抽出残渣が除去された抽出物である。
【0021】
前記担子菌としては、特に限定されるものではないが、ヌメリガサ科に属する担子菌、キシメジ科に属する担子菌、テングタケ科に属する担子菌、ハラタケ科に属する担子菌、ヒトヨタケ科に属する担子菌、モエギタケ科に属する担子菌、フウセンタケ科に属する担子菌、イグチ科に属する担子菌、ベニタケ科に属する担子菌、サルノコシカケ科に属する担子菌、及びヒラタケ科に属する担子菌等が挙げられ、具体例としては以下の通りである。
【0022】
ヌメリガサ科に属する担子菌:ヤギタケ等、キシメジ科に属する担子菌:キシメジ、ムラサキシメジ、オシロイシメジ、カクミノシメジ、シャカシメジ、ハルシメジ、ハタケシメジ、ブナシメジ、ホンシメジ、オオホウライタケ、スギヒラタケ、ハリガネオチバタケ、キツネタケ、ナラタケ、ムキタケ、マツタケ、シロマツタケモドキ、シイタケ、エノキタケ等、テングタケ科に属する担子菌:タマゴタケ、カバイロツルタケ等、ハラタケ科に属する担子菌:ハラタケ、シロオオハラタケ等、ヒトヨタケ科に属する担子菌:ヒトヨタケ等が;モエギタケ科に属する担子菌:ナメコ等、フウセンタケ科に属する担子菌:ショウゲンジ等、イグチ科に属する担子菌:ヤマドリタケ等、ベニタケ科に属する担子菌:アイタケ等、サルノコシカケ科に属する担子菌:マイタケ等、ヒラタケ科に属する担子菌:エリンギ等が挙げられる。
【0023】
前記担子菌の中でも、入手のし易さなどの観点から、エノキタケ(Flammulina velutipes種)、ハタケシメジ(Lyophyllum decastes種)、エリンギ(Pleurotus eryngii種)、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji種)、ナメコ(Pholiota nameko種)が好ましく、より好ましくはエノキタケである。
【0024】
前記担子菌からの抽出に使用する溶媒は、水、アルカリ水及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。自然解凍後の米飯の風味及び食感の観点からは、水又はアルカリ水のみがより好ましく、アルカリ水のみが更に好ましい。
【0025】
溶媒として、水、アルカリ水又はエタノールのいずれかが含まれるか含まれないかにかかわらず、前記水、前記アルカリ水及び前記エタノールの含有量については、前記担子菌(湿重量)/前記水、前記アルカリ水及び前記エタノールの合計量(重量比)が0.05~10を満たすことが好ましく、0.1~5がより好ましく、0.2~1が更に好ましい。前記重量比が0.05より小さいと、自然解凍後の米飯の粘りや粒感が劣る場合がある。また、前記重量比が10を超えると、抽出効率が悪くなって前記冷凍米飯用改良剤の製造コストが上がる場合がある。
【0026】
前記抽出処理温度は、40~160℃が好ましく、60~140℃がより好ましく、70~120℃が更に好ましい。抽出処理温度が40℃より低いと、抽出効率が悪くなったり、自然解凍後の米飯の粘りや粒感が劣る場合がある。また、抽出処理温度が160℃を超えると、特殊な加圧設備が必要となるため、抽出方法が複雑になる場合がある。
【0027】
前記抽出処理時間は、0.1~12時間が好ましく、0.5~6時間がより好ましく、1~3時間が更に好ましい。抽出処理時間が0.1時間より短いと、抽出効率が悪くなったり、自然解凍後の米飯の粘りや粒感が劣る場合がある。また、抽出処理時間が12時間を超えると、抽出に時間を要するにも関わらず自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘り、粒感への効果が頭打ちになってしまい、結果的に抽出効率が悪くなる場合がある。
【0028】
前記冷凍米飯用改良剤における前記担子菌由来の抽出物の含有量は、固形分換算で冷凍米飯用改良剤全体中0.003~0.1重量%が好ましく、0.0044~0.05重量%がより好ましく、0.008~0.03重量%が更に好ましい。担子菌由来の抽出物の含有量が0.003重量%より少ないと、自然解凍後の米飯の粘りや粒感が劣る場合がある。また、0.1重量%より多いと、自然解凍後の米飯がやわらか過ぎたり、担子菌由来の抽出物の異味が付与される場合がある。
【0029】
前記α-グリコシルトランスフェラーゼは、1,4-α-グルカンの一部分を切断し、分子内及び/又は分子間に新たなα-1,6結合を形成する転移酵素である。前記α-グリコシルトランスフェラーゼとしては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ市販品を適宜使用すればよい。市販品としては、例えば、製品名「Sensea foam」(ノボザイムズジャパン社製)が挙げられる。
【0030】
前記冷凍米飯用改良剤における前記α-グリコシルトランスフェラーゼの含有量は、前記改良剤100gに対して、5000~166500単位が好ましく、5800~36000単位がより好ましく、6630~19680単位が更に好ましい。含有量が5000単位より少なかったり、166500単位より多いと、自然解凍後の米飯の粒感が低下する場合がある。
【0031】
前記α-グリコシルトランスフェラーゼの活性は、ヨウ素-アミロース複合体の660nmの吸光度を標準条件(pH7.2、60℃)において、1分間に1%減少させる酵素量(α-グリコシルトランスフェラーゼの量)を1単位とする。該α-グリコシルトランスフェラーゼの活性は、以下のようにして測定する。
【0032】
まず、アミロース・タイプIII(シグマ(Sigma)社):10mgを2M NaOH:0.5mlに添加し、ついで純水:1mlを添加し、更に2M HCl:0.5mlとリン酸バッファ(pH7.2):7.8mlを添加して基質溶液の調製を行う。また、ヨウ素:0.26gとヨウ化カリウム:2.6gを純水:10mlに溶解したヨウ素/ヨウ化物ストック溶液:100μlに2M塩酸:50μlを添加し、更に純水:26mlを添加して停止試薬の調製を行う。
【0033】
そして、吸光度が0.15~0.3になるように希釈した酵素液(α-グリコシルトランスフェラーゼ水溶液):50μlを、前記基質溶液:50μlに混合し、該混合物を60℃で30分間インキュベーションした後、前記停止試薬:2mlを添加し、よく混合した後、660nmにおける吸光度(X1)を測定する。そして、前記基質溶液をリン酸バッファ(pH7.2)に変更する以外は、同様にして660nmにおける吸光度(X0)を測定する。
【0034】
一方、前記吸光度(X1)の測定において、酵素液(α-グリコシルトランスフェラーゼ水溶液)を純水に変更する以外は、同様にして660nmにおける吸光度(Y1)を測定する。そして、前記吸光度(Y1)の測定において、前記基質溶液をリン酸バッファ(pH7.2)に変更する以外は、同様にして660nmにおける吸光度(Y0)を測定する。前記α-グリコシルトランスフェラーゼの活性(U/ml)は、前記測定値及び次式を用いて計算する。
α-グリコシルトランスフェラーゼの活性(U/ml)={(X0-X1)/(Y0-Y1)}×100×希釈率×(1/30)×(1/0.05)
【0035】
前記α-アミラーゼは、デンプン分子の直鎖構造(アミロース)、分岐構造(アミロペクチン)を切断してデキストリンとマルトースとに分解する活性を有する酵素をいう。前記α-アミラーゼは市販品であってもよく、例えば、製品名「ビオザイムA」(天野エンザイム社製)、製品名「ノバミル10000BG」、製品名「ノバミル3DBG」(いずれもノボザイムズジャパン社製)、製品名「スミチームL」、製品名「スミチームAS」(いずれも新日本化学工業社製)等が挙げられる。
【0036】
前記α-アミラーゼの含有量は、前記改良剤100gに対して、150~5000単位が好ましく、430~3360単位がより好ましく、750~1730単位が更に好ましい。含有量が150単位より少ないと、自然解凍後の米飯の粘りや粒感が低下する場合がある。5000単位より多いと、自然解凍後の米飯のやわらかさが低下する場合がある。
【0037】
前記α-アミラーゼの活性は、可溶性デンプンを基質として、pH5.0、40℃において、30分間反応させたときに分解される1%可溶性デンプンの量(ml)として定義され、1%可溶性デンプンを1ml分解する酵素量(α-アミラーゼの量)を1単位とする。該α-アミラーゼの活性は、独立行政法人酒類総合研究所標準分析法により測定する。具体的には以下のとおりである。
【0038】
氷酢酸:11.55mlを純水で1000mlとしたA液:5.9mlと、酢酸ナトリウム:27.21gを純水に溶解して1000mlとしたB液:14.1mlとを混合し、pHが正確に5.0にならない場合はA液又はB液を用いてpHを5.0に調整し、0.2mM酢酸緩衝液の調製を行う。可溶性デンプン:1gに少量の熱水を加えて良く攪拌し1~2分間沸騰させた後、0.01M酢酸緩衝液(pH5.0):20mlを添加してpHを5.0に調整した後、純水を加えて100mlに定容し、デンプン溶液の調製を行う。ヨウ素:0.0317gにヨウ化カリウム:0.1gと10%塩酸:50mlを添加し、これを純水1000mlに溶解してヨウ素溶液の調製を行う。酢酸カルシウム:0.176g、酢酸ナトリウム:2.722g、塩化ナトリウム:5.844gを純水に溶かして1000mlとし、更に10%酢酸:10mlを添加し、塩類溶液の調製を行う。該塩類溶液を用いて適宜酵素(α-アミラーゼ)を希釈し、酵素液(α-アミラーゼ溶液)の調製を行う。
【0039】
前記デンプン溶液:2mlを試験管にとり、40℃で5分間予備加熱する。前記酵素液(α-アミラーゼ溶液):0.1mlを添加して反応を開始し、その反応液中より0.1mlずつピペットで採取した反応液を、あらかじめ前記ヨウ素溶液:10mlを入れた試験管にとり、よく混合し、25℃に保ちながら、光路長10mmの吸光セルを通して670nmで比色により、透過率(T%)を測定する。透過率(T%)の測定は経時的(0.5分或いは1分おき)に行う。
【0040】
比色の際の対照液には、純水:2mlに酵素液(α-アミラーゼ溶液):0.1mlを混合したものから0.1mlを採取し、前記ヨウ素溶液10mlを添加したものを用いる。これら一連のT%の値の中から66%に相当する反応時間(t分)を見出す。
【0041】
前記α-アミラーゼの活性(U/ml)は、前記反応時間及び次式を用いて計算する。
α-アミラーゼの活性(U/ml)=2×(1/0.1)×(30/t)×希釈率
【0042】
冷凍米飯用改良剤において、前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)は、0.5~500が好ましく、1~100がより好ましく、5~50が更に好ましい。前記酵素活性比が0.5より小さいと、自然解凍後の米飯の粒感が低下する場合がある。500より大きいと、自然解凍後の米飯の粘りが低下する場合がある。
【0043】
前記冷凍米飯の自然解凍後のやわらかさや粘りの観点から、前記冷凍米飯用改良剤には、更にHMペクチンを添加することが好ましい。前記HMペクチンの含有量は、前記冷凍米飯用改良剤全体中、0.1~3.3重量%が好ましく、0.17~1.05重量%がより好ましく、0.23~0.56重量%が更に好ましい。前記HMペクチンの含有量が前記の範囲を外れると、期待した程の自然解凍後の米飯のやわらかさや粘りを向上させる効果が得られない場合がある。
【0044】
ここで前記HMペクチンは、主にメチル化ガラクチュロン酸及び/又はガラクチュロン酸によって構成される多糖類であり、全ガラクチュロン酸のうちメチル化ガラクチュロン酸の占める割合が50重量%以上のペクチンをいう。前記HMペクチンは市販品であってもよく、例えば、製品名「GENU YM115-LJ」、製品名「GENU JM-150-J」(いずれもCPケルコ社製)、製品名「SM-478」、製品名「SM-666」(いずれも三栄源エフ・エフ・アイ社製)、製品名「AYD5110SB」(ユニテックフーズ社製)等が挙げられる。
【0045】
本発明の冷凍米飯用改良剤の形状は、特に限定されず、液状、ペースト状、粉末状、及び固形状などが挙げられるが、好ましくは液状である。冷凍米飯用改良剤の製剤化に際しては、賦形剤として、例えば、ブドウ糖、果糖などの単糖類;ショ糖、乳糖、麦芽糖などのオリゴ糖類;デキストリン、粉末水飴などの澱粉分解物;マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオースなどのマルトオリゴ糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、粉末還元水飴などの糖アルコール類;並びに乳清蛋白質などを用いることができる。
【0046】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、前記冷凍米飯用改良剤は任意成分を含有できる。このような任意成分としては、例えば、ゼラチン;キサンタンガム,プルランなどの多糖類;グリセリン脂肪酸エステル,ポリグリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステル,レシチンなどの食品用乳化剤;小麦,とうもろしこし,糯種とうもろこし(ワキシーコーン),馬鈴薯,糯種馬鈴薯,タピオカ,米,餅米などの穀物を原料とした澱粉;それらの澱粉に化学的処理を加えたヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉などの加工澱粉;酢酸,乳酸,クエン酸などの有機酸;米,小麦,トウモロコシなどの穀物を原料とした穀物酢;りんご,ブドウ等の果汁を原料とした果実酢;アルコール,酢酸を原料とした合成酢;それらの食酢類に香料や他の併用成分を加えた加工酢;梅干製造時の副生成物として生じる梅酢;並びにその梅酢を脱塩又は濃縮したものなどが挙げられる。
【0047】
本発明の冷凍米飯は、特定の原料米を特定量含む炊飯用原料が炊飯され、その後冷凍されたものであり、アミロース含量[X]及び水分含量[Y]が条件(A)又は条件(B)を満たす原料米を特定量、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分を特定量、並びにα-グリコシルトランスフェラーゼ及びα-アミラーゼを夫々特定量含有する。
【0048】
前記炊飯用原料は、アミロース含量[X](重量%)及び水分含量[Y](重量%)が、条件(A):11.5≦X<19、11≦Y<7.0+8.5×{1-[(X-19.0)/8.5]2}1/2、又は条件(B):19≦X≦25、11≦Y≦15.5を満たす原料米を含むことが好ましく、条件(C):13≦X<19、11≦Y<11.0+4×{1-[(X-19.0)/6]2}1/2、又は条件(D):19≦X≦21、11≦Y≦15を満たす原料米を含むことがより好ましい。ここで、前記Xは、前記原料米中のアミロース含量(重量%)であり、前記Yは、前記原料米中の水分含量(重量%)である。前記条件(A)又は前記条件(B)の範囲にすることで、容易に本発明の効果を享受することができる。
【0049】
前記炊飯用原料において、前記条件(A)又は条件(B)内にある原料米の含有量は、炊飯用原料全体中70~100重量%が好ましく、80~100重量%がより好ましく、90~100重量%が更に好ましい。70重量%より少ないと、本発明の効果である自然解凍後の米飯の良好なやわらかさ、粘り、粒感を享受できない場合がある。
【0050】
前記炊飯用原料において、水の含有量は、前記炊飯用原料中の原料米100重量部に対して、150~190重量部が好ましく、160~185重量部がより好ましく、170~180重量部が更に好ましい。水の含有量が150重量部より少ないと、自然解凍後の米飯のやわらかさや粘りが不足する場合がある。190重量部より多いと、自然解凍後の米飯がやわらか過ぎたり、粒感が不足する場合がある。なお、前記水の含有量は、原料米の洗米時の吸水量も含む。
【0051】
前記担子菌由来の抽出物の含有量は、前記炊飯用原料中の原料米100重量部に対して、固形分換算で0.00003~0.003重量部が好ましく、0.0001~0.0015重量部がより好ましく、0.0002~0.00075重量部が更に好ましい。含有量が0.00003重量部より少ないと、自然解凍後の米飯の粘りや粒感が劣る場合がある。また、0.003重量部より多いと、自然解凍後の米飯がやわらか過ぎたり、担子菌由来の抽出物の異味が付与される場合がある。なお、前記炊飯用原料が含有する前記担子菌由来の抽出物は、前記冷凍米飯用改良剤が含有する担子菌由来の抽出物と同じものをいう。
【0052】
前記α-グリコシルトランスフェラーゼの含有量は、前記炊飯用原料中の原料米100gに対して、50~5000単位が好ましく、75~1000単位がより好ましく、100~500単位が更に好ましい。含有量が50単位より少なかったり、5000単位より多いと、自然解凍後の米飯の粒感が低下する場合がある。なお、前記炊飯用原料が含有するα-グリコシルトランスフェラーゼは、前記冷凍米飯用改良剤が含有するα-グリコシルトランスフェラーゼと同じものをいう。
【0053】
前記α-アミラーゼの含有量は、前記炊飯用原料中の原料米100gに対して、1.5~150単位が好ましく、10~100単位がより好ましく、20~50単位が更に好ましい。含有量が1.5単位より少ないと、自然解凍後の米飯の粘りや粒感が低下する場合がある。150単位より多いと、自然解凍後の米飯のやわらかさや粒感が低下する場合がある。なお、前記炊飯用原料が含有するα-アミラーゼは、前記冷凍米飯用改良剤が含有するα-アミラーゼと同じものをいう。
【0054】
炊飯用原料において、前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)は、0.5~500が好ましく、1~100がより好ましく、5~50が更に好ましい。前記酵素活性比が0.5より小さいと、自然解凍後の米飯の粒感が低下する場合がある。500より大きいと、自然解凍後の米飯の粘りが低下する場合がある。
【0055】
自然解凍後の米飯のやわらかさや粘りの観点からは、更に前記炊飯用原料中にHMペクチンを含有することが好ましい。前記HMペクチンの含有量は、前記炊飯用原料中の原料米100重量部に対して、0.001~0.1重量部が好ましく、0.003~0.03重量部がより好ましく、0.005~0.015重量部が更に好ましい。含有量が前記の範囲を外れると、期待した程の自然解凍後の米飯のやわらかさや粘りを向上させる効果が得られない場合がある。なお、前記炊飯用原料が含有する場合のHMペクチンは、前記冷凍米飯用改良剤が含有する場合のHMペクチンと同じものである。
【0056】
前記炊飯用原料に含有する前記担子菌由来の抽出物に含まれる固形分、水、前記α-グリコシルトランスフェラーゼ、前記α-アミラーゼ、及び前記HMペクチンは、これらを別々に添加しても、或いはこれらをブレンドしたものを添加しても良く、前記冷凍米飯用改良剤として添加することで、必要量を容易に添加することができる。
【0057】
前記冷凍米飯用改良剤を用いて冷凍米飯を作製する場合、前記炊飯用原料中に前記冷凍米飯用改良剤を含有してよく、その含有量は前記炊飯用原料中の原料米100重量部に対して、1~3重量部が好ましく、2~2.9重量部がより好ましく、2.5~2.8重量部が更に好ましい。含有量が1重量部より少なかったり、3重量部より多いと自然解凍後の米飯のやわらかさや、粘り、粒感が低下する場合がある。
【0058】
本発明の冷凍米飯の製造方法の一実施形態を以下に例示する。
原料米100重量部に対し、前記担子菌由来の抽出物に含まれる固形分0.00003~0.003重量部、及び洗米時の吸水量も含めた水150~190重量部と、前記炊飯用原料中の原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼ50~5000単位及びα-アミラーゼ1.5~150単位となるように、且つ前記α-グリコシルトランスフェラーゼ/前記α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500となるように混合して得られる炊飯用原料を炊飯する。
【0059】
炊飯方法に特に制限はない。炊飯した米飯は、そのまま、或いは、トレー、レトルトパック、その他のフイルムパック等の小分け包装容器に包装した後、常法により、急速冷凍を施す。また、寿司のシャリとして使用する場合には、炊飯直後に常法により、酢等の調味料を添加して寿司飯を調製し、にぎり寿司のシャリの形に成型して、或いは、寿司ネタと併せた後に急速冷凍することもできる。
【0060】
本発明の冷凍米飯用改良剤及び冷凍米飯は、冷凍後に自然解凍して、そのまま食する寿司飯、おにぎり等の米飯類に好適であるが、電子レンジで加熱したり、直火加熱して食することが多いピラフ、チャーハン、ドライカレー、玄米ご飯、白飯、赤飯、おこわ、炊き込み御飯などの米飯類にも使用することもできる。
【実施例0061】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0062】
実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)あきたこまち(無洗米、アミロース含量[X]:16.4重量%、水分含量[Y]:12.0重量%)
2)ノボザイムズジャパン(株)製「Sensea foam」(25000単位(U))
3)新日本化学工業(株)製「スミチームAS(1500単位(U))
4)ノボザイムズジャパン(株)製「Novamyl 10000BG」
5)(株)林原製「トレハ」
6)CPケルコ社製「GENU pectin type JM-150-J」
7)CPケルコ社製「エコーゲル K-OB」
8)理研ビタミン(株)製「エマルジーMS」
9)理研ビタミン(株)製「ポエムK30」
10)三菱ケミカルフーズ(株)製「リョートーシュガーエステルS-1170」
11)上野製薬(株)製「ソルビトールウエノ」
12)コシヒカリ(無洗米、アミロース含量[X]:16.5重量%、水分含量[Y]:14.5重量%)
13)キヨニシキ(アミロース含量[X]:18.0重量%、水分含量[Y]:12.5重量%)
14)日本晴(アミロース含量[X]:21.5重量%、水分含量[Y]:15.0重量%)
15)ホシユタカ(アミロース含量[X]:25.5重量%、水分含量[Y]:13.6重量%)
【0063】
<冷凍米飯の評価>
実施例及び比較例で得られた各冷凍米飯を、25℃で4時間保存することにより自然解凍した米飯について熟練した10人のパネラーが各評価を行い、その評価点の平均値を官能評価とした。その際の評価基準は以下の通りであった。
【0064】
(やわらかさ) 原料米として、あきたこまちを使用し、冷凍米飯用改良剤が無添加で、作製直後に25℃まで冷却した冷凍していない米飯(参考例1)との比較
5点:参考例1と同等で、非常に好ましいやわらかさが感じられる
4点:参考例1よりも若干劣るが、適度なやわらかさが感じられる
3点:参考例1よりも劣り、若干硬い、又は、若干やわらかいが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例1よりも悪く、硬い、又は、やわらかすぎる
1点:参考例1よりも非常に悪く、明らかに硬い、又は、明らかにやわらかすぎる
【0065】
(粘り) 原料米として、あきたこまちを使用し、冷凍米飯用改良剤が無添加で、作製直後に25℃まで冷却した冷凍していない米飯(参考例1)との比較
5点:参考例1と同等で、非常に好ましい粘りが感じられる
4点:参考例1よりも若干劣るが、適度な粘りが感じられる
3点:参考例1よりも劣り、若干粘りが少ないが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例1よりも悪く、粘りが少なく、ややパサつきを感じる
1点:参考例1よりも非常に悪く、明らかに粘りがなく、パサつきを感じる
【0066】
(粒感) 原料米として、あきたこまちを使用し、冷凍米飯用改良剤が無添加で、作製直後に25℃まで冷却した冷凍していない米飯(参考例1)との比較
5点:参考例1と同等で、粒感がしっかりと感じられる
4点:参考例1よりも若干劣るが、適度に粒感が感じられる
3点:参考例1よりも劣り、若干粒感が少ないが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例1よりも悪く、粒感が少なく、米粒同士の結着が感じられる
1点:参考例1よりも非常に悪く、明らかに粒感がなく、米粒同士の結着している
【0067】
(総合評価)
やわらかさ、粘り、粒感の評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:やわらかさ、粘り、粒感の評価が全て4.0点以上5.0点以下を満たしているもの
B:やわらかさ、粘り、粒感の評価が全て3.5点以上5.0点以下であって、且つ3.5点以上4.0点未満が少なくとも一つあるもの
C:やわらかさ、粘り、粒感の評価が全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0点以上3.5点未満が少なくとも一つあるもの
D:やわらかさ、粘り、粒感の評価が全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0点以上3.0点未満が少なくとも一つあるもの
E:やわらかさ、粘り、粒感の評価において、2.0未満が少なくとも一つあるもの
【0068】
(製造例1) 担子菌由来の抽出物の製造
市販のエノキタケ9.1重量部(湿重量)を水酸化カリウム水溶液(15wt%)90.9重量部で100℃、2時間抽出処理した。濾紙(アドバンテック社製)を用いて、濾別した後、回収した濾液を限外濾過濃縮装置(アドバンテック社製、品番:UHP-150)で減圧濃縮して、濃縮液を約48.5重量部得た。これを10,000×g、10分間遠心分離して固形分濃度1.5mg/mlの上清を回収した。この上清を担子菌由来の抽出物(エノキタケ抽出物)として用いた。
【0069】
(実施例1) 冷凍米飯の作製
表1に従って、炊飯用原料として、原料米:無洗米「あきたこまち」100重量部に対して、担子菌由来の抽出物(製造例1)0.14重量部、α-グリコシルトランスフェラーゼ0.008重量部、α-アミラーゼ0.027重量部、水178重量部を添加し、1時間放置後、IHジャー炊飯器を用いて炊飯を行なった。炊飯後の米飯を60gずつ成型し、-30℃の急速凍結装置にて30分間保持して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯は-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表1に示した。なお、各実施例及び参考例における、各酵素の単位量、活性比、及び抽出物の固形分量は表1に示すとおりである。
【0070】
【0071】
(実施例2~6) 冷凍米飯の作製
表1の配合に従い、実施例1のα-グリコシルトランスフェラーゼ0.008重量部とα-アミラーゼ0.027重量部を夫々、0.002重量部と0.0067重量部(実施例2)、0.03重量部と0.10重量部(実施例3)、0.003重量部と0.10重量部(実施例4)、0.2重量部と0.067重量部(実施例5)、又は0.03重量部と0.001重量部(実施例6)に変更した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表1に示した。
【0072】
(参考例1) 米飯の作製
実施例1において、担子菌由来の抽出物、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを添加せず、水178重量部を150重量部に変更した以外は、実施例1と同様に炊飯を行い、炊飯後の米飯を25℃まで冷却し、60gずつ成型した後に、官能評価を行った結果を参考例1として表1に示した。
【0073】
表1から明らかなように、担子菌由来の抽出物、原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼ50~5000単位及びα-アミラーゼ1.5~150単位を含有し、α-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500の範囲にある炊飯用原料が炊飯され、その後冷凍された冷凍米飯(実施例1~6)は、いずれも自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘り、粒感の評価は良好であった。
【0074】
(比較例1~6) 冷凍米飯の作製
表2の配合に従い、実施例1のα-グリコシルトランスフェラーゼ0.008重量部とα-アミラーゼ0.027重量部を夫々、0.002重量部と0.0067重量部(比較例1)、0.21重量部と0.067重量部(比較例2)、0.002重量部と0.0005重量部(比較例3)、0.03重量部と0.11重量部(比較例4)、0.003重量部と0.1重量部(比較例5)、又は0.032重量部と0.001重量部(比較例6)に変更した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表2に示した。なお、各比較例における、各酵素の単位量、活性比、及び抽出物の固形分量は表2に示すとおりである。
【0075】
【0076】
表2から明らかなように、原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼが38単位と少ない炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例1)は、自然解凍後の米飯の粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼが5250単位と多い炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例2)は、自然解凍後の米飯のやわらかさと粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。原料米100gに対してα-アミラーゼが0.75単位と少ない炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例3)は、自然解凍後の米飯の粘りと粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。原料米100gに対してα-アミラーゼが165単位と多い炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例4)は、自然解凍後の米飯のやわらかさと粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。原料米におけるα-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.42と小さい炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例5)は、自然解凍後の米飯の粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。原料米におけるα-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)が533と大きい炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例6)は、自然解凍後の米飯の粘りの評価が悪く、総合評価はDであった。
【0077】
(比較例7) 冷凍米飯の作製
表2の配合に従い、実施例1のα-グリコシルトランスフェラーゼ0.008重量部を0.3重量部に変更し、α-アミラーゼ0.027重量部と担子菌由来の抽出物(製造例1)0.14重量部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表2に示した。
【0078】
表2から明らかなように、原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼが7500単位と多く、α-アミラーゼと担子菌由来の抽出物を添加しなかった炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例7)は、自然解凍後の米飯の粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0079】
(比較例8) 冷凍米飯の作製
表2の配合に従い、実施例1のα-アミラーゼ0.027重量部を添加せず、代わりにβ-アミラーゼ0.004重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表2に示した。
【0080】
表2から明らかなように、α-アミラーゼを添加せず、代わりにβ-アミラーゼを添加した炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例8)は、自然解凍後の米飯の粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0081】
(実施例7~8及び比較例9~10) 冷凍米飯の作製
表3の配合に従い、実施例1の担子菌由来の抽出物(製造例1)0.14重量部を、0.02重量部(実施例7)、2.0重量部(実施例8)、0.014重量部(比較例9)、又は4.4重量部(比較例10)に変更した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表3に示した。なお、各実施例及び比較例における、各酵素の単位量、活性比、及び抽出物の固形分量は表3に示すとおりである。
【0082】
【0083】
表3から明らかなように、原料米100重量部に対する担子菌由来の抽出物に含まれる固形分の含有量が0.00003~0.003重量部の範囲にある炊飯用原料を用いた冷凍米飯(実施例1,7~8)は、いずれも自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘り、粒感の評価は良好であった。一方、原料米100重量部に対する担子菌由来の抽出物に含まれる固形分の含有量が0.000021重量部と少ない炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例9)は、自然解凍後の米飯の粘りと粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。また、原料米100重量部に対する担子菌由来の抽出物に含まれる固形分の含有量が0.0066重量部と多い炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例10)は、自然解凍後の米飯のやわらかさの評価が悪く、総合評価はDであった。
【0084】
(比較例11) 冷凍米飯の作製
表3の配合に従い、実施例1のα-グリコシルトランスフェラーゼ0.008重量部、及びα-アミラーゼ0.027重量部を添加せず、担子菌由来の抽出物(製造例1)0.14重量部を0.10重量部に、添加水178重量部を150重量部に変更し、トレハロース3.0重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表3に示した。
【0085】
表3から明らかなように、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを添加せず、代わりにトレハロースを添加した炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例11)は、自然解凍後の米飯のやわらかさと粘りの評価が悪く、総合評価はDであった。
【0086】
(実施例12) 冷凍米飯の作製
表4の配合に従い、実施例1においてHMペクチン0.007重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表4に示した。なお、各実施例及び比較例における、各酵素の単位量、活性比、及び抽出物の固形分量は表4に示すとおりである。
【0087】
【0088】
表4から明らかなように、原料米100重量部に対するHMペクチンの含有量が0.001~0.1重量部の範囲にある炊飯用原料を用いた冷凍米飯(実施例12)は、自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘り、粒感の評価は良好であった。特に、HMペクチンを添加しなかった冷凍米飯(実施例1)に比べて、自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘りの評価が優れていた。
【0089】
(比較例12) 冷凍米飯の作製
表4の配合に従い、実施例1の担子菌由来の抽出物(製造例1)、α-グリコシルトランスフェラーゼ0.008重量部、及びα-アミラーゼを添加せず、添加水178重量部を190重量部に変更し、更にHMペクチン0.67重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表4に示した。
【0090】
表4から明らかなように、担子菌由来の抽出物(製造例1)、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼを添加せず、原料米100重量部に対するHMペクチンの含有量が0.67重量部と多い炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例12)は、自然解凍後の米飯の粘りと粒感の評価が悪く、総合評価はEであった。
【0091】
(実施例13~14及び比較例13~14) 冷凍米飯の作製
表4の配合に従い、実施例1において添加水178重量部を、150重量部(実施例13)、190重量部(実施例14)、145重量部(比較例13)、又は、200重量部(比較例14)に変更した以外は、実施例1と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表4に示した。
【0092】
表4から明らかなように、原料米100重量部に対する添加水の含有量が150~190重量部の範囲にある炊飯用原料を用いた冷凍米飯(実施例1,12~14)は、自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘り、粒感の評価は良好であった。一方、原料米100重量部に対する添加水の含有量が145重量部と少ない炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例13)は、自然解凍後の米飯のやわらかさと粘りの評価が悪く、総合評価はDであった。また、原料米100重量部に対する添加水の含有量が200重量部と多い炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例14)は、自然解凍後の米飯のやわらかさと粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0093】
(実施例15) 冷凍米飯用改良剤の作製
表5に従って、40℃に加温したソルビトール液:92.8重量部をケミスターラー(東京理化学機器株式会社製「品番:ZZ―1020」)を用いて41.7S-1で攪拌しているところに、α-グリコシルトランスフェラーゼ:0.3重量部、α-アミラーゼ:1.0重量部、担子菌由来の抽出物(製造例1):5.4重量部、HMペクチン:0.25重量部、及びキサンタンガム:0.25重量部を加えて溶解し、冷凍米飯用改良剤を得た。得られた冷凍米飯用改良剤中の担子菌由来の抽出物の固形分、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼの含有量、並びにα-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)を表5に示した。なお、各実施例における、各酵素の単位量、活性比、及び抽出物の固形分量は表5に示すとおりである。
【0094】
【0095】
(実施例16) 冷凍米飯用改良剤の作製
表5の配合に従って、α-グリコシルトランスフェラーゼ0.3重量部を6.6重量部に、α-アミラーゼ1.0重量部を0.22重量部に、担子菌由来の抽出物(製造例1)5.4重量部を13.6重量部に、HMペクチン0.25重量部を0.5重量部に、及びソルビトール92.8重量部を78.8重量部に変更した以外は、実施例15と同様にして冷凍米飯用改良剤を得た。得られた冷凍米飯用改良剤中の担子菌由来の抽出物の固形分、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼの含有量、並びにα-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)を表5に示した。
【0096】
(実施例17) 冷凍米飯用改良剤の作製
表5の配合に従って、α-グリコシルトランスフェラーゼ0.3重量部を0.1重量部に、α-アミラーゼ1.0重量部を3.33重量部に、及びソルビトール92.8重量部を90.67重量部に変更した以外は、実施例15と同様にして冷凍米飯用改良剤を得た。得られた冷凍米飯用改良剤中の担子菌由来の抽出物の固形分、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼの含有量、並びにα-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)を表5に示した。
【0097】
(実施例18) 冷凍米飯用改良剤の作製
表5の配合に従って、40℃に加温したソルビトール液:49.6重量部に添加水:28.73重量部を加えてケミスターラー(東京理化学機器株式会社製「品番:ZZ―1020」)を用いて41.7S-1で攪拌しているところに、α-グリコシルトランスフェラーゼ:0.66重量部、α-アミラーゼ:0.11重量部、担子菌由来の抽出物(製造例1):5.4重量部、HMペクチン:0.25重量部、及びキサンタンガム:0.25重量部を加えて溶解した。これにショ糖脂肪酸エステル:2.5重量部を添加したのち、攪拌しながら80℃まで昇温し、グリセリン脂肪酸エステル:10.0重量部、クエン酸モノグリセリド:2.5重量部を加えて溶解した。得られた溶液を高速乳化分散機(プライミクス社製「品番:ホモミクサーMARK II」)にて均質化しながら55℃まで降温し、これを38℃の恒温槽で16時間保温して冷凍米飯用改良剤を得た。得られた冷凍米飯用改良剤中の担子菌由来の抽出物の固形分、α-グリコシルトランスフェラーゼ、及びα-アミラーゼの含有量、並びにα-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)を表5に示した。
【0098】
(実施例19) 冷凍米飯の作製
表6に従って、炊飯用原料として、原料米:無洗米「あきたこまち」100重量部に対して、実施例15の冷凍米飯用改良剤2.8重量部、水178重量部を添加し、1時間放置後、IHジャー炊飯器を用いて炊飯を行なった。炊飯後の米飯を60gずつ成型し、-30℃の急速凍結装置にて30分間保持して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯は-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表6に示した。なお、各実施例における、各酵素の単位量、活性比、抽出物の固形分量、HMペクチンの量は表6に示すとおりである。
【0099】
【0100】
(実施例20~22) 冷凍米飯の作製
表6に従って、実施例19の冷凍米飯用改良剤(実施例15)2.8重量部を、実施例16の冷凍米飯用改良剤1.0重量部(実施例20)、実施例17の冷凍米飯用改良剤2.0重量部(実施例21)、又は、実施例18の冷凍米飯用改良剤2.8重量部(実施例22)に変更した以外は、実施例19と同様にして炊飯後、できた米飯を成型し冷凍して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯を-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表6に示した。
【0101】
表6から明らかなように、原料米100重量部に対し、担子菌由来の抽出物に含まれる固形分が0.00003~0.003重量部の範囲にあり、且つ原料米100gに対してα-グリコシルトランスフェラーゼ50~5000単位及びα-アミラーゼ1.5~150単位を含有し、α-グリコシルトランスフェラーゼ/α-アミラーゼ(酵素活性比)が0.5~500の範囲にある炊飯用原料を用いた冷凍米飯(実施例19~22)は、いずれも自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘り、粒感の評価は良好であった。
【0102】
(実施例23) 冷凍米飯の作製
表7に従って、原料米:無洗米「あきたこまち」を無洗米「コシヒカリ」に変更した以外は、実施例19と同様にして炊飯を行ない、炊飯後の米飯を60gずつ成型し、-30℃の急速凍結装置にて30分間保持して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯は-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表7に示した。なお、各実施例、比較例及び参考例における、各酵素の単位量、活性比、抽出物の固形分量、HMペクチンの量は表7に示すとおりである。
【0103】
【0104】
(参考例2) 米飯の作製
実施例23において、実施例15の冷凍米飯用改良剤2.8重量部を添加せず、水178重量部を150重量部に変更した以外は、実施例23と同様に炊飯を行い、炊飯後の米飯を25℃まで冷却し、60gずつ成型した後に、官能評価を行った結果を参考例2として表7に示した。
【0105】
(実施例24) 冷凍米飯の作製
表7に従って、原料米:無洗米「あきたこまち」を「キヨニシキ」に変更し、これを流水で3回洗米したのちに水を加えて添加水量を178重量部とした以外は、実施例19と同様にして炊飯を行ない、炊飯後の米飯を60gずつ成型し、-30℃の急速凍結装置にて30分間保持して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯は-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表7に示した。
【0106】
(参考例3) 米飯の作製
実施例24において、実施例15の冷凍米飯用改良剤2.8重量部を添加せず、水178重量部を150重量部に変更した以外は、実施例24と同様に炊飯を行い、炊飯後の米飯を25℃まで冷却し、60gずつ成型した後に、官能評価を行った結果を参考例3として表7に示した。
【0107】
(実施例25) 冷凍米飯の作製
表7に従って、原料米:無洗米「あきたこまち」を「日本晴」に変更し、これを流水で3回洗米したのちに水を加えて添加水量を178重量部とした以外は、実施例19と同様にして炊飯を行ない、炊飯後の米飯を60gずつ成型し、-30℃の急速凍結装置にて30分間保持して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯は-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表7に示した。
【0108】
(参考例4) 米飯の作製
実施例25において、実施例15の冷凍米飯用改良剤2.8重量部を添加せず、水178重量部を150重量部に変更した以外は、実施例25と同様に炊飯を行い、炊飯後の米飯を25℃まで冷却し、60gずつ成型した後に、官能評価を行った結果を参考例4として表7に示した。
【0109】
(比較例15) 冷凍米飯の作製
表7に従って、原料米:無洗米「あきたこまち」を「ホシユタカ」に変更し、これを流水で3回洗米したのちに水を加えて添加水量を178重量部とした以外は、実施例19と同様にして炊飯を行ない、炊飯後の米飯を60gずつ成型し、-30℃の急速凍結装置にて30分間保持して冷凍米飯を得た。得られた冷凍米飯は-20℃で7日間保存した後、自然解凍(25℃で4時間)して評価を行い、その結果を表7に示した。
【0110】
(参考例5) 米飯の作製
比較例15において、実施例15の冷凍米飯用改良剤2.8重量部を添加せず、水178重量部を150重量部に変更した以外は、比較例15と同様に炊飯を行い、炊飯後の米飯を25℃まで冷却し、60gずつ成型した後に、官能評価を行った結果を参考例5として表7に示した。
【0111】
表7から明らかなように、アミロース含量[X]及び水分含量[Y]が条件(A)及び条件(B)を満たす原料米を使用した冷凍米飯(実施例19,23~25)は、自然解凍後の米飯のやわらかさ、粘り、粒感の評価は良好であった。一方、原料米中のアミロース含量[X]が25.5重量%と高い炊飯用原料を用いた冷凍米飯(比較例15)は、自然解凍後の米飯の粘り、粒感の評価が悪く、総合評価はDであった。