(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092984
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】溶接用電極および溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
B23K 9/29 20060101AFI20230627BHJP
B23K 35/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B23K9/29 B
B23K35/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208333
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 主税
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LD01
4E001LD09
4E001LE06
4E001LH04
(57)【要約】
【課題】周面を筒状部材に被覆されている電極棒において、電極棒が消耗した際に電極棒のみ交換して筒状部材を再利用する。
【解決手段】溶接用電極は、電極棒110と、筒状部材120とを備える。電極棒110は、軸方向に延在している。筒状部材120は、電極棒110の材料より低い電気抵抗を有する金属で構成され、かつ、電極棒110が着脱可能に嵌入されて電極棒110の周面を覆う。筒状部材120には、軸方向の一端から他端に向かって延在しつつ、筒状部材120を貫通したスリット部122が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する電極棒と、
前記電極棒の材料より低い電気抵抗を有する金属で構成され、かつ、前記電極棒が着脱可能に嵌入されて前記電極棒の周面を覆う筒状部材とを備え、
前記筒状部材には、前記軸方向の一端から他端に向かって延在しつつ、前記筒状部材を貫通したスリット部が形成されている、溶接用電極。
【請求項2】
前記スリット部は、直線状に形成されている、請求項1に記載の溶接用電極。
【請求項3】
前記スリット部は、らせん状に形成されている、請求項1に記載の溶接用電極。
【請求項4】
前記スリット部は、前記一端から前記他端まで連続して形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶接用電極。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶接用電極と、
前記軸方向における前記筒状部材の被支持領域と接して前記溶接用電極を支持するコレットとを備え、
前記スリット部は、前記軸方向において前記一端から前記被支持領域に到達するまでの区間において連続して形成されている、溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用電極および溶接トーチに関する。
【背景技術】
【0002】
金属接合用電極を開示した先行技術文献として、特開2002-316293号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された金属接合用電極は、中心電極と、導体部とを備える。中心電極には、導体部より電気抵抗が大きい材料が用いられている。導体部は、中心電極の表面に焼きばめ、鍛造、溶射、鋳込みおよびろう付けのうちのいずれかにより被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された金属接合用電極においては、電極棒を被覆する導体部が電極棒に接合されて一体になっているため、電極棒が消耗した場合、導体部に被覆された電極棒と交換する必要があり、電極棒のみ交換することはできない。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、周面を筒状部材に被覆されている電極棒において、電極棒が消耗した際に電極棒のみ交換して筒状部材を再利用することができる、溶接用電極および溶接トーチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく溶接用電極は、電極棒と、筒状部材とを備える。電極棒は、軸方向に延在している。筒状部材は、電極棒の材料より低い電気抵抗を有する金属で構成され、かつ、電極棒が着脱可能に嵌入されて電極棒の周面を覆う。筒状部材には、軸方向の一端から他端に向かって延在しつつ、筒状部材を貫通したスリット部が形成されている。
【0007】
これにより、周面を筒状部材に被覆されている電極棒において、電極棒が消耗した際に電極棒のみ交換して筒状部材を再利用することができる。
【0008】
本発明の一形態においては、スリット部は、直線状に形成されている。
【0009】
この場合、スリット部を容易に形成できるとともに、スリット部の幅を筒状部材の周方向に容易に拡げて、筒状部材から電極棒を着脱し易くすることができる。
【0010】
本発明の一形態においては、スリット部は、らせん状に形成されている。
【0011】
この場合、電極棒の熱を筒状部材の周面の全周に均一に伝えることができる。
【0012】
本発明の一形態においては、スリット部は、一端から他端まで連続して形成されている。
【0013】
この場合、上記軸方向における筒状部材の全長に亘ってスリット部の幅を筒状部材の周方向に拡げることができるため、筒状部材から電極棒を着脱し易くすることができる。
【0014】
本発明に基づく溶接トーチは、上記溶接用電極と、コレットとを備える。コレットは、軸方向における筒状部材の被支持領域と接して溶接用電極を支持する。スリット部は、軸方向において一端から被支持領域に到達するまでの区間において連続して形成されている。
【0015】
この場合、コレットと溶接用電極の筒状部材との接触面積を確保することによって、コレットと筒状部材との接触抵抗の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、周面を筒状部材に被覆されている電極棒において、電極棒が消耗した際に電極棒のみ交換して筒状部材を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る溶接トーチの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る溶接用電極の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2の溶接用電極をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
【
図4】
図2の溶接用電極をIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る溶接トーチが備える溶接用電極周辺の構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態3に係る溶接用電極の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施の形態に係る溶接用電極および溶接トーチについて図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0019】
なお、図面においては、電極棒および筒状部材が延在する軸方向をDR1方向とする。軸方向(DR1方向)において、電極棒が尖っている側を一端側とし、その反対側を他端側とする。
【0020】
(実施の形態1)
まず、溶接トーチの構造について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る溶接トーチの構成を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る溶接トーチ1は、たとえば、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接に使用される。
【0021】
本実施の形態に係る溶接トーチ1は、トーチボディ10と、ジャケット20と、コレットボディ30と、ノズル40と、コレット50と、溶接用電極100とを備える。
【0022】
トーチボディ10は、図示しないトーチハンドルに接続される部分である。トーチボディ10は、カバー部11と、導電部12とを含む。
【0023】
カバー部11は、絶縁性を有する樹脂部材で構成されている。カバー部11は、導電部12を保護する。導電部12は、カバー部11の内部に配置されている。導電部12は、内周面においてコレットボディ30と接触している。導電部12は、図示しない水冷または空冷の冷却機構に接続されている。導電部12は、溶接用電極100を冷却するための熱伝達経路の一部を構成している。
【0024】
カバー部11の内部には、電気ケーブル13およびガスホース14が配置されている。電気ケーブル13は、図示しない溶接電源から溶接用電極100へ給電するための給電経路である。具体的には、溶接装置から電気ケーブル13、導電部12、コレットボディ30およびコレット50を介して溶接用電極100に給電される。
【0025】
ガスホース14は、溶接用電極100へシールドガスを供給するためのガス供給経路である。シールドガスは、図示しないガスボンベからガスホース14を通じて溶接トーチ1内に供給された後、導電部12およびコレットボディ30とコレット50との間の隙間を通じて溶接用電極100の一端側へ供給される。シールドガスは、たとえば、アルゴンガスである。なお、シールドガスは、アルゴンガスに限定されず、炭酸ガスまたはヘリウムガスなどの他の不活性ガスであってもよい。
【0026】
トーチボディ10の他端側には、キャップ15が配置されている。キャップ15は、絶縁性を有する樹脂部材で構成されている。キャップ15は、溶接用電極100の他端側がトーチボディ10から露出することを防止する。キャップ15は、コレット50の他端側に接触して、コレット50を支持する。
【0027】
カバー部11の一端側には、アダプタ16が配置されている。アダプタ16は、絶縁材料で構成されている。アダプタ16は、導電部12の一端側の一部を保護する。アダプタ16は、トーチボディ10とジャケット20とを接続する。
【0028】
ジャケット20は、トーチボディ10の一端側に配置されている。ジャケット20は、シールドガスの漏出を防止するためにOリング21を介してアダプタ16に接続されている。ジャケット20は、絶縁材料で構成されている。ジャケット20は、コレットボディ30の一端側を被覆して保護する。
【0029】
コレットボディ30は、フランジ形状を有する円筒部材である。コレットボディ30は、導電体により構成されている。コレットボディ30は、たとえば、銅により構成されている。コレットボディ30は、溶接用電極100を冷却するための熱伝達経路の一部を構成している。コレットボディ30の一端側には、シールドガスをノズル40へ供給するための貫通孔が複数形成されている。
【0030】
コレットボディ30の一端側には、ガスケット31とスリーブ32とが設けられている。ガスケット31は、軸方向(DR1方向)においてコレットボディ30のフランジ部に当接する円筒部材である。スリーブ32は、ガスケット31の一端側に位置する円筒部材である。ガスケット31およびスリーブ32は、絶縁材料で構成されている。これにより、コレットボディ30とノズル40とが絶縁されている。
【0031】
ノズル40は、溶接トーチ1の一端に設けられている。ノズル40は、ジャケット20に螺合している。ノズル40は、内側から溶接用電極100が突出し、溶接用電極100の周囲にシールドガスが噴射される部分である。ノズル40は、金属材料により構成されている。
【0032】
コレット50は、コレットボディ30の内部に収容されている。コレット50は、導電材料により構成されている。コレット50は、たとえば、銅により構成されている。コレット50は、一端側においてコレットボディ30と接触することによって給電可能に設けられている。コレット50は、溶接用電極100を冷却するための熱伝達経路の一部を構成している。
【0033】
次に、溶接用電極100について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る溶接用電極の構成を示す斜視図である。
図3は、
図2の溶接用電極をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4は、
図2の溶接用電極をIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
【0034】
溶接用電極100は、溶接時に給電されることによって一端側においてアークが発生する部分である。
図1~
図4に示すように、溶接用電極100は、電極棒110と、筒状部材120とを含む。
【0035】
電極棒110は、軸方向(DR1方向)に延在している。本実施の形態に係る電極棒110は、一端側に円錐形状の先端部111を有している。
【0036】
電極棒110は、たとえば、タングステンにより構成されている。なお、電極棒110は、タングステンに構成されていることに限定されず、タングステン合金または他の高融点材料により構成されていてもよい。
【0037】
図4に示すように、電極棒110の外径D1は、たとえば、3.2mmである。なお、電極棒110の外径D1は、後述する筒状部材120の内径D2より大径であればよい。外径D1は、0.5mm以上6.4mm以下であることが望ましい。
【0038】
筒状部材120は、電極棒110が着脱可能に嵌入されて電極棒110の周面を覆っている。筒状部材120は、電極棒110と筒状部材120とを互いに固定するために、周方向において、電極棒110の周面のうちの少なくとも半分以上を被覆している。筒状部材120は、たとえば、軸方向(DR1方向)において電極棒110の一端側が1cm以上2cm以下の範囲で露出した状態で電極棒110の周面を被覆している。
【0039】
図1および
図2に示すように、筒状部材120には、外周面の一部に被支持領域121が設けられている。被支持領域121は、コレット50と接触する領域である。コレット50が、軸方向(DR1方向)における筒状部材120の被支持領域121と接して溶接用電極100を支持している。
【0040】
筒状部材120は、電極棒110の材料より低い電気抵抗を有する金属で構成されている。本実施の形態に係る筒状部材120は、たとえば、銅により構成されている。筒状部材120は、電極棒110の材料より低い電気抵抗を有しているため、電極棒110と比較して高い熱伝導率を有する。なお、筒状部材120は、銅により構成されていることに限定されず、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金などであってもよい。
【0041】
図4に示すように、筒状部材120の内径D2は、たとえば、3.2mmである。筒状部材120に電極棒110が嵌入された状態においては、筒状部材120の内径D2と電極棒110の外径D1とは同じ径寸法となる。電極棒110が嵌入される前の筒状部材120の内径は、3.2mmより小径である。
【0042】
筒状部材120の外径は、たとえば、4.8mmである。筒状部材120の外径は、溶接時に電極棒110で発生する熱を十分に吸熱できる範囲で設定される。
【0043】
図2および
図4に示すように、筒状部材120には、軸方向(DR1方向)の一端から他端に向かって延在しつつ、筒状部材120を貫通したスリット部122が形成されている。本実施の形態に係る筒状部材120には、1つのスリット部122が形成されている。なお、スリット部122の数量は限定されない。
【0044】
スリット部122は、直線状に形成されている。また、スリット部122は、軸方向(DR1方向)において一端から他端まで連続して形成されている。スリット部122は、たとえば、レーザ加工によって形成されている。
【0045】
図4に示すように、スリット部122の周方向の幅Wは、たとえば、1mmである。ただし、幅Wは、1mmに限定されない。幅Wは、できるだけ狭い方が望ましい。これにより、筒状部材120と電極棒110とが接触する面積を大きくすることができるため、溶接の際に電極棒110で発生する熱を筒状部材120へ伝えやすくすることができる。
【0046】
溶接用電極100が給電されてアークが発生すると、溶接用電極100が抵抗発熱を引き起こす。具体的には、筒状部材120より高い電気抵抗を有する電極棒110が主に抵抗発熱を引き起こす。電極棒110の周面に筒状部材120を配置することによって、給電される電流は主に筒状部材120へ流れるため、電極棒110における抵抗発熱を抑制することができる。
【0047】
さらに、筒状部材120は、電極棒110と比較して熱伝導率が高いため、電極棒110が発熱した場合でも、電極棒110から筒状部材120を介してコレット50へ熱を伝えることができる。これにより、溶接の際に電極棒110で発生した熱を効率良く冷却することができる。筒状部材120を溶接用電極100に設けることにより、電極棒110の抵抗発熱を抑制することによって、電極棒110の蒸発を抑制することができるため、溶接用電極100を長寿命化することができる。
【0048】
次に、溶接用電極100における電極棒110と筒状部材120との着脱について説明する。
【0049】
電極棒110を筒状部材120に装着する場合、電極棒110を軸方向(DR1方向)から筒状部材120の内側に嵌入する。このとき、電極棒110の外径D1は、筒状部材120の内径より大きいため、筒状部材120の内径を径方向に拡径しながら電極棒110が筒状部材120に嵌入される。これにより、スリット部122の幅Wを周方向に拡げることができるため、筒状部材120が周方向に弾性変形した状態で電極棒110を被覆する。
【0050】
電極棒110を筒状部材120から取り外す場合、たとえば、他端側から電極棒110をハンマなどによって打ちつけることによって電極棒110を筒状部材120から取り外すことができる。筒状部材120は、スリット部122が設けられていることによって、電極棒110に対して弾性変形した状態で電極棒110を固定しているため、電極棒110を筒状部材120に焼きばめなどで接合する場合と比較して、軸方向(DR1方向)に動かしやすい。
【0051】
電極棒110が溶接時に高温になって蒸発することにより一端側が短くなった場合、筒状部材120から電極棒110を取り外して、電極棒110のみを再研磨することができる。電極棒110を再研磨した後、筒状部材120に対する電極棒110の突き出し長さを調整して電極棒110を筒状部材に再度取り付けることができるため、筒状部材120を再利用することができる。筒状部材120を再利用することによって、電極棒110と筒状部材120とが一体化した状態で使用する場合と比較して、筒状部材120の使用量を少なくすることができるため、溶接用電極100の部材費を削減することができる。さらに、電極棒110と筒状部材120とを個々に取り扱うことができるため、溶接用電極100を廃棄する場合に取り扱いを容易にすることができる。
【0052】
本発明の実施の形態1に係る溶接用電極100および溶接トーチ1においては、筒状部材120にスリット部122が形成されていることによって、筒状部材120が周方向に弾性変形した状態で電極棒110を固定しつつ被覆することができるため、周面を筒状部材120に被覆されている電極棒110において、電極棒110が消耗した際に電極棒110のみ交換して筒状部材120を再利用することができる。
【0053】
本発明の実施の形態1に係る溶接用電極100および溶接トーチ1においては、スリット部122が軸方向(DR1方向)において直線状に形成されていることによって、スリット部122を容易に形成できるとともに、スリット部122の幅Wを筒状部材120の周方向に容易に拡げて、筒状部材120から電極棒110を着脱し易くすることができる。
【0054】
本発明の実施の形態1に係る溶接用電極100および溶接トーチ1においては、スリット部122が軸方向(DR1方向)において一端から他端まで連続して形成されていることによって、軸方向(DR1方向)における筒状部材120の全長に亘ってスリット部122の幅Wを筒状部材120の周方向に拡げることができるため、筒状部材120から電極棒110を着脱し易くすることができる。
【0055】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る溶接用電極および溶接トーチについて図を参照して説明する。本発明の実施の形態2に係る溶接用電極および溶接トーチは、筒状部材の構成が本発明の実施の形態1に係る溶接用電極100および溶接トーチ1と異なるため、本発明の実施の形態1に係る溶接用電極100および溶接トーチ1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0056】
図5は、本発明の実施の形態2に係る溶接トーチが備える溶接用電極周辺の構成を示す斜視図である。
図5に示すように、本発明の実施の形態2に係る溶接トーチ1Aは、コレット50と、溶接用電極200とを備える。
【0057】
溶接用電極200は、電極棒110と、筒状部材220とを含む。筒状部材220には、外周面の一部に被支持領域221が設けられている。コレット50は、被支持領域221と接して溶接用電極200を支持している。
【0058】
筒状部材220には、スリット部222が軸方向(DR1方向)において一端から被支持領域221に到達するまでの区間において連続して形成されている。
【0059】
電極棒110を筒状部材220に装着する場合、電極棒110を軸方向(DR1方向)から筒状部材220の内側に嵌入する。筒状部材220のスリット部222が設けられていない部分においては、電極棒110は筒状部材220に圧入状態で嵌入される。筒状部材220のスリット部222が設けられている部分においては、電極棒110が嵌入することによってスリット部222の幅を周方向に拡げることができるため、筒状部材220が周方向に弾性変形した状態で電極棒110を固定しつつ被覆する。
【0060】
電極棒110を筒状部材220から取り外す場合、たとえば、他端側から電極棒110をハンマなどによって打ちつけることによって電極棒110を筒状部材220から取り外すことができる。
【0061】
本発明の実施の形態2に係る溶接用電極200および溶接トーチ1Aにおいては、スリット部222が軸方向(DR1方向)において一端から被支持領域221に到達するまでの区間において連続して形成されていることによって、コレット50と溶接用電極200の筒状部材220との接触面積を確保することができるため、コレット50と筒状部材220との接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0062】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3に係る溶接用電極および溶接トーチについて図を参照して説明する。本発明の実施の形態3に係る溶接用電極および溶接トーチは、筒状部材の構成が本発明の実施の形態1に係る溶接用電極100および溶接トーチ1と異なるため、本発明の実施の形態1に係る溶接用電極100および溶接トーチ1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0063】
図6は、本発明の実施の形態3に係る溶接用電極の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、本発明の実施の形態3に係る溶接トーチ1Bは、溶接用電極300を備える。
【0064】
本実施の形態に係る溶接用電極300は、電極棒110と、筒状部材320とを含む。筒状部材320には、外周面の一部に被支持領域321が設けられている。これにより、図示しないコレットが、被支持領域321と接して溶接用電極300を支持している。
【0065】
筒状部材320には、軸方向(DR1方向)の一端から他端に向かって延在しつつ、筒状部材320を貫通したスリット部322が形成されている。本実施の形態に係る筒状部材320には、1つのスリット部322が形成されている。
【0066】
スリット部322は、らせん状に形成されている。また、スリット部322は、軸方向(DR1方向)において一端から他端まで連続して形成されている。らせん状のスリット部322は、軸方向(DR1方向)に沿って電極棒110の周方向の一方向に偏ることなく周面に均一に配置されている。
【0067】
スリット部322がらせん状に形成されていることによって、筒状部材320は、コイルばねのように軸方向(DR1方向)に変形することができる。溶接の際に電極棒110が抵抗発熱によって高温になり、線膨張係数の差によって電極棒110および筒状部材320の軸方向(DR1方向)の長さに差異が生じた場合でも、筒状部材320が軸方向(DR1方向)に変形することができるため、筒状部材320が電極棒110に追従しやすくなる。
【0068】
本発明の実施の形態3に係る溶接用電極300および溶接トーチ1Bにおいては、スリット部322が軸方向(DR1方向)においてらせん状に形成されていることによって、溶接の際に電極棒110で発生する熱を筒状部材320の周面の全周に均一に伝えることができる。
【0069】
なお、本発明の各実施の形態に係る溶接用電極および溶接トーチにおいては、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接について例示したが、本発明の適用はTIG溶接用の溶接装置に限定されない。本発明は、プラズマアーク溶接などの他の非溶極式溶接においても適用することができる。
【0070】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,1A,1B 溶接トーチ、50 コレット、100,200,300 溶接用電極、110 電極棒、120,220,320 筒状部材、121,221,321 被支持領域、122,222,322 スリット部。