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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092988
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】車両用スライドデッキ
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/08 20060101AFI20230627BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B60R7/08 Z
B60N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208341
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】木戸 耕介
(72)【発明者】
【氏名】金谷 庸平
(72)【発明者】
【氏名】大竹 宏
【テーマコード(参考)】
3B088
3D022
【Fターム(参考)】
3B088AA05
3B088CA15
3D022CA21
3D022CB03
3D022CC26
3D022CD02
(57)【要約】
【課題】車両に設置されて簡易ベッド等になるスライドデッキであって、より使用性や操作性などに優れたスライドデッキの提供を目的とする。
【解決手段】 車室内に固定可能な固定デッキと、前記固定デッキ側からスライド展開可能な可動デッキとを備えた車両用スライドデッキであって、前記固定デッキ及び可動デッキはそれぞれ複数のパネルからなるデッキ部を有し、前記複数のパネルのうち、隣り合うパネルは一方の端部に挿入部、他方の端部に被挿入部を有し、一方のパネルの前記挿入部を他方のパネルの前記被挿入部に所定の度合で挿入してあることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に固定可能な固定デッキと、前記固定デッキ側からスライド展開可能な可動デッキとを備えた車両用スライドデッキであって、
前記固定デッキ及び可動デッキはそれぞれ複数のパネルからなるデッキ部を有し、
前記複数のパネルのうち、隣り合うパネルは一方の端部に挿入部、他方の端部に被挿入部を有し、
一方のパネルの前記挿入部を他方のパネルの前記被挿入部に所定の度合で挿入してあることを特徴とする車両用スライドデッキ。
【請求項2】
前記デッキ部は前端部側の前パネル、複数の中間パネル及び、後端部側の後パネルからなり、
前記前パネル及び後パネルは中空及び/又はセミホロー断面形状であり、前記中間パネルはセミホロー及び/又はソリッド断面形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項3】
車室内に固定可能な固定デッキと、前記固定デッキの上側からスライド展開可能な可動デッキとを備えた車両用スライドデッキであって、
前記固定デッキの上面を形成する固定デッキ部の前端側に前記可動デッキが展開する方向に沿って下方に傾斜した下り部を有し、
前記可動デッキの上面を形成する可動デッキ部の後端側に前記固定デッキ部の下り部に摺接する摺動部を有していることを特徴とする車載用スライドデッキ。
【請求項4】
前記摺動部は前記可動デッキの展開完了時及び/又は前記可動デッキの前記固定デッキ部の上辺に沿ったスライド時及び格納完了時には前記固定デッキに当接していないことを特徴とする請求項3に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項5】
前記固定デッキ部は先端側に立設した立設部を有し、前記可動デッキ部は後端側に垂下した垂下部を有し、
前記立設部と垂下部とのうち一方に抜止孔部、他方に抜止突部を有し、
展開完了時において前記抜止突部が抜止孔部に挿入されて前記可動デッキ部の上下方向の移動が制限されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用スライドデッキ。
【請求項6】
前記抜止突部は突出長さが前記抜止孔部の上下方向の内径以下であることを特徴とする請求項5に記載の車両用スライドデッキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置されて簡易ベッド等になるスライドデッキに関し、より使用性や操作性などに優れたスライドデッキに係る。
【背景技術】
【0002】
車室内に設ける簡易ベッドとして、例えば車室内の上部に収納したベッドボードを使用時にクロスリンク機構により吊り下げて使用するもの(特許文献1)や、3列シートのシートベルトを支持するアンカを利用して組み立てたフレーム枠に載置する簡易ベッド(特許文献2)などが開発されている。
一方、本発明者らは、車室内に固定可能な固定デッキと、この固定デッキ側にスライド収納可能な可動デッキを備えることで、車両側の改造や組立て作業をほとんど必要とせず、車両内に設置する設置スペースのコンパクト化に優れたスライドデッキの開発をしてきた(特許文献3)。
本発明は、このスライドデッキについて、さらに簡易ベッド等としての使用性や操作性に優れるように改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-184576号公報
【特許文献2】特開平7-291041号公報
【特許文献3】特願2020-178647
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車両に設置されて簡易ベッド等になるスライドデッキであって、より使用性や操作性などに優れたスライドデッキの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用スライドデッキは、車室内に固定可能な固定デッキと、前記固定デッキ側からスライド展開可能な可動デッキとを備えた車両用スライドデッキであって、前記固定デッキ及び可動デッキはそれぞれ複数のパネルからなるデッキ部を有し、前記複数のパネルのうち、隣り合うパネルは一方の端部に挿入部、他方の端部に被挿入部を有し、一方のパネルの前記挿入部を他方のパネルの前記被挿入部に所定の度合で挿入してあることを特徴とする。
ここで、所定の度合で挿入してあるとは、挿入部の先端部が被挿入部の底部に必ずしも当接していない状態で挿入されていることをいう。
このようにすると、隣り合うパネルの挿入部と被挿入部の挿入度合によって、デッキ部の全長を微調整することができる。
これにより、全長を微調整するための専用パネルを新設する必要がなく、例えば押出材であるパネルの汎用性に優れる。
また、挿入部と被挿入部で形成された嵌合部を介して各パネルに荷重伝達が可能であり、デッキ部の剛性を確保しやすい。
さらに、荷重が負荷された際に嵌合部によって隣接するパネルが連動するため、パネル間での隙間の発生を抑制できる。
【0006】
本発明において、前記デッキ部は前端部側の前パネル、複数の中間パネル及び、後端部側の後パネルからなり、前記前パネル及び後パネルは中空及び/又はセミホロー断面形状であり、前記中間パネルはセミホロー及び/又はソリッド断面形状であってもよい。
各パネルがそれぞれ剛性を確保しようとすると、デッキ部重量が増大してしまう。
しかし、本発明のように挿入部と被挿入部を介して各パネルに荷重伝達が可能であれば、複数のパネル全体で剛性を確保できる。
そのため、中間パネルが中空断面形状に比べて断面2次モーメントの小さいソリッド及び/又はセミホロー断面形状であっても、両側のパネルに荷重伝達可能であり、デッキ部の剛性を確保しながらその軽量化が可能となる。
【0007】
本発明の一態様として、車室内に固定可能な固定デッキと、前記固定デッキの上側からスライド展開可能な可動デッキとを備えた車両用スライドデッキであって、前記固定デッキの上面を形成する固定デッキ部の前端側に前記可動デッキが展開する方向に沿って下方に傾斜した下り部を有し、前記可動デッキの上面を形成する可動デッキ部の後端側に前記固定デッキ部の下り部に摺接する摺動部を有していることを特徴とするものが挙げられる。
このようなスライドデッキは、例えば車の走行時においてはセカンドシートの後ろに格納でき、ベッドとして使用する際に固定デッキ部上をスライドさせながら可動デッキ部を引き出してもよい。
可動デッキ部に設けた摩擦係数の小さい摺動部が、固定デッキ部の下り部に摺接することで、スライド操作の荷重低減やメタルタッチによる異音発生の防止等が可能である。
本発明においては、前記摺動部は前記可動デッキの展開完了時及び/又は前記可動デッキの前記固定デッキ部の上辺に沿ったスライド時及び格納完了時には前記固定デッキに当接していないことが好ましい。
摺動部は、例えば下り部を駆け上がった後は固定デッキ部に当接せず、展開完了時や格納完了時にベッドを使用する人や積載された荷物などの荷重を受けないことで、高い強度を必要とせずに低コスト化・軽量化・コンパクト化が可能である。
例えば、摺動部が汎用の樹脂クリップのように簡易固定されていてもよい。
【0008】
また、本発明において、前記固定デッキ部は先端側に立設した立設部を有し、前記可動デッキ部は後端側に垂下した垂下部を有し、前記立設部と垂下部とのうち一方に抜止孔部、他方に抜止突部を有し、展開完了時において前記抜止突部が抜止孔部に挿入されて前記可動デッキ部の上下方向の移動が制限されていてもよい。
展開完了時において、可動デッキ部の垂下部が固定デッキ部の前端側に載った状態であれば、可動デッキ部と固定デッキ部を前後方向に連続した状態で使用できる。
しかし、この状態の可動デッキ部に対し、下から突き上げるような力が加われば、可動デッキ部は固定デッキ部側から容易に離脱してしまう。
そこで、本発明は可動デッキ部と固定デッキ部の一方に抜止突部、他方に抜止突部が挿入される抜止孔部を設け、これらがストッパーとして作用することで、ベッド使用時に可動デッキ部の上下方向の移動を制限した。
このようなストッパー構造において、抜止突部の突出量が長すぎると、可動デッキ部の前端側を上方向に持ち上げた際に、抜止孔部に対して引っ掛かりが発生する可能性がある。
また、収納する際にストッパーを外す動作が必要となってしまう。
そのため、本発明においては、前記抜止突部は突出長さが前記抜止孔部の上下方向の内径以下であることが好ましい。
これにより、可動デッキ部の前端側を上方向に持ち上げた際に抜止突部が自然と抜止孔部から外れる構造となり、収納操作に支障をきたすことなくストッパー機能を有することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両に設置されて簡易ベッドとしての使用が可能で、その使用性や操作性などに優れたスライドデッキを提供できる。
例えば、デッキ部の剛性を確保しながら軽量化したスライドデッキや、スライド操作性、ベッドとしての使用性等に優れたスライドデッキである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車両用スライドデッキの構造例を示し、(a)は可動デッキを展開している状態を、(b)は展開完了時を示す斜視図である。
図2】可動デッキ部の断面図を示し、(a)は図1(b)中のA-A線断面図を、(b)はそのB部分の拡大図を、(c)はC部分の拡大図を示す。
図3】挿入部と被挿入部の挿入度合を示す断面図であり、(a)は挿入度合の深い例を、(b)はやや深い例を、(c)は浅い例を示す。
図4】(a)は荷重伝達を説明するための断面図を、(b)はパネルの連動を説明するための断面図を示す。
図5】摺動部、抜止突部及び抜止孔部を説明するための部分拡大図を示し、(a)は固定デッキ部の上辺に沿った可動デッキのスライド時を、(b)はその展開完了時を示す。
図6】摺動部付近の断面図を示し、(a)は図5(b)中のE-E断面図を、(b)は下り部に摺動部が摺接した状態を、(c)は摺動部が下り部を駆け上がった後の状態を示す。
図7】抜止突部と抜止孔部付近の断面図を示し、(a)は図5(b)中のF-F断面図を、(b)は可動デッキ部に下から突き上げるような力が作用した例を、(c)は可動デッキ部の前端側を上方向に持ち上げた例を示す。
図8】スライドデッキを車両に設置した例を示し、(a)は格納完了時を、(b)は展開完了時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る車両用スライドデッキの構造例を以下、図に基づいて説明する。
スライドデッキは、車室内に固定可能な固定デッキ300と、この固定デッキ側からスライド展開可能な可動デッキ100を備える。
図1(a)に可動デッキ100を展開している状態を、(b)にその展開が完了した状態例を示す。
なお、本明細書において車両前後方向を前後方向、鉛直方向を上下方向、車幅方向を左右方向と称し、可動デッキの展開方向を前方向、格納方向を後方向として説明する。
【0012】
固定デッキ300は、図1(b)に示すように複数のパネルからなる固定デッキ部30と、この固定デッキ部30を左右両側から保持する一対のフレーム40、40を有し、フレーム40に脚部41を垂下させてある。
フレーム40は、前後方向が長手方向となって複数のパネルを前後方向に連結保持できれば、その形状や材質に制限はない。
また、脚部41は、固定デッキ部30やフレーム40を支持しながら車室内に固定できれば、その形状や材質、取り付け位置に制限はなく、固定デッキ部に直接取り付けてあっても、脱着可能あるいは折り畳み構造であってもよい。
例えば、脚部41の下端部に床面におよそ水平な水平部41aを有し、この水平部に設けた固定孔を車両側のサービスホールとユースフルナット等で固定してもよい。
これにより、例えば図8に示すように固定デッキの脚部41を荷室2内の床面4(例えばデッキボード)に立設、固定できる。
図8は、車両1の車室1a内のうち荷室2に固定デッキを固定し、後部座席3のシートバックを前方側に倒すことで可動デッキがスライド展開可能な例である。
【0013】
可動デッキ100は、図1(b)に示すように複数のパネルからなる可動デッキ部10と、可動デッキ部10を左右両側から保持する一対のフレーム25、25と、フレーム25から垂下可能な脚部26を有する。
本実施例は、複数のパネルを前後方向に連結保持するフレーム25が、固定デッキのフレーム40よりも左右外側に位置し、その下側に脚部26を折り畳み収納できるスペースを有する例である。
これにより、脚部26をコンパクトに収納した状態で、可動デッキ100の展開操作や格納が可能である。
また、本実施例は可動デッキ部10が固定デッキ部30上を直接スライド可能な例であるが、例えばフレーム40にレール部が形成されてあってもよく、フレーム40のみに可動デッキ部の下側が接触してスライドしてもよい。
【0014】
可動デッキ部10と固定デッキ部30の構造について、より詳細に説明する。
本実施例の可動デッキ部10は、前後両端部側の前パネル11及び後パネル15と、その間の複数の中間パネル12,13,14からなり、固定デッキ部30は同様に前パネル31、中間パネル32,33,34及び後パネル35からなる。
例えば可動デッキ部10について、図1(b)中のA-A線断面図を図2(a)に、そのB部分、C部分の拡大図をそれぞれ図2(b)、(c)に示す。
また、図2(b)中のD部分の拡大図を図3、4に示す。
なお、各デッキ部を構成する複数のパネルは、前後両端部側に配設される前後パネルの間に1枚以上の中間パネルを有することが好ましく、可動デッキ部と固定デッキ部を構成するパネルの枚数が異なっていてもよい。
【0015】
本明細書において、中空断面とは中空部を有する断面形状を、ソリッド断面とは開口部があることで中空部を有しない断面形状をいい、セミホロー断面とは開口部の小さい断面形状をいう。
可動デッキ部10の前パネル11は、図2(b)に示すように上辺11a、下辺11b、前辺11c及び後辺11dで形成された略四角枠内に複数のリブ辺11eを有する中空断面形状の例であり、後端部に被挿入部(被挿入突部16,17)を有する。
なお、隣り合うパネルの一方の端部に挿入部、他方の端部に被挿入部を有していればよく、前パネル11の後端部に挿入部を有していてもよい。
本実施例の被挿入部は、上辺11aからおよそ水平に後方へ突出した被挿入突部16と後辺11dからおよそ垂直に後方へ突出した被挿入突部17の間で形成され、後述する挿入部18が挿入可能であり、中間パネルの後端部にも同様に形成されている。
複数の中間パネルは、前後両端部の一方に被挿入部と他方に挿入部を有すれば中空断面形状であってもよいが、軽量化等の観点からソリッド及び/又はセミホロー断面形状であることが好ましい。
本実施例の中間パネル12、13、14は、図2(a)に示すように開口部19aを有するソリッド及び小さい開口部19bを有するセミホロー断面形状の例である。
例えば、図2(b)に中間パネル12の断面拡大図を示すが、前パネル11のように上辺12a、前辺12c、後辺12d及び複数のリブ辺12eを有するが、下辺12bが複数の開口部19a、19bにより切断されて中空部を有していない。
なお、開口部の位置や大きさ等に制限はなく、複数の中間パネルの断面形状がそれぞれ異なっていてもよい。
本実施例の挿入部18は、例えば前辺12cからおよそ垂直に前方へ突出し、隣り合うパネルの被挿入突部16,17間に挿入された場合に、各パネルの上辺11a、12aがおよそ同一の高さになるように形成され、後パネルの前端部にも同様に形成されている。
なお、被挿入部と挿入部は当接可能な状態で嵌合し、後述するようにその挿入度合を調整できれば、本実施例の形状に限定するわけではない。
後パネル15の断面拡大図を、図2(c)に示す。
後パネル15は、下辺15bの後側に後方に沿って上方に傾斜した上り部15fを有し、この上り部15fと上辺15a、下辺15b、前辺15c及び複数のリブ辺15eで中空断面形状が形成され、前端部に挿入部18と後端部に上辺15aに垂下した垂下部20を有する。
なお、前パネルや後パネルの両方又は片方が、セミホロー断面形状であってもよい。
【0016】
デッキ部を構成する複数のパネルは、隣り合う一方のパネルの被挿入突部16,17間に他方のパネルの挿入部18を所定の度合で挿入し、この状態を一対のフレーム(例えば、可動デッキ部10の場合にはフレーム25)で保持されている。
図3(a)~(c)に挿入度合の例を示す。
例えば、図3(a)は挿入部18の先端部18aが被挿入部の底部16aにほぼ当接するような状態で挿入され、図3(c)は先端部18aと底部16aが離れた状態で挿入されている例を示すが、所定の度合は適宜選択可能である。
このように挿入部と被挿入部で嵌合部を形成することで、図4(a)に示すように隣り合ったパネルの一方が受けた荷重を、例えば被挿入突部16と挿入部18を介して他方のパネルに伝達できる。
同様に、他方のパネルが受けた荷重は、例えば挿入部18と被挿入突部17を介して一方のパネルに伝達でき、デッキ部の剛性をパネル全体で確保できる。
また、図4(b)に示すように、例えば荷重を受けて被挿入突部16の先端部16bが他方のパネルの上辺や前後辺等に当接し、各パネルが連動すれば、パネル間に大きな隙間が発生する虞がない。
【0017】
固定デッキ部30を構成する各パネルも、隣り合うパネルの一方の端部に挿入部18、他方の端部に被挿入部(被挿入突部16,17)を有し、一方のパネルの挿入部18が他方のパネルの被挿入突部16,17間に所定の度合で挿入されている。
例えば図7(b)に示すように、前パネル31の断面形状は上辺31aの前側に前方に沿って下方に傾斜した下り部36を有し、この下り部36と上辺31a、下辺31b、後辺(図示省略)及び複数のリブ辺31eで中空断面形状が形成され、後端部に被挿入部(図示省略)を有する。
また、下り部36の先端側には下辺31bが前方に延在した延在部36aと、この延在部36aの先端部に立設した立設部37を有する。
なお、延在部36aや立設部37は、図5(a)に示すように前パネルの左右両端側には設けず、固定デッキ部30の左右両端側の先端部には切欠部39が形成されている。
固定デッキ部30の中間パネル32,33,34がソリッド及び/又はセミホロー断面形状であり、後パネル35が中空断面形状であれば、可動デッキ部のように剛性を確保しながら軽量化が可能である。
このような中空断面、ソリッド及びセミホロー断面は、例えばアルミニウムの押出し加工により成形でき、デッキ部をこのようなパネルで構成することで全長・全幅・全高を任意に設定できる。
【0018】
本実施例はさらに、図5に示すように可動デッキ部10の後端側に摺動部22を設け、この摺動部22が固定デッキ部30の下り部36に摺接して切欠部39を通過する。
摺動部22は摺動抵抗を低減できればその素材に限定はなく、本実施例は略L字形状の取付部21に保持された樹脂クリップの例であるが、これに限定するわけではない。
本実施例は、可動デッキ部10を構成するパネルの下辺に樹脂材23をリベット等で固定してあり、図6(a)に示すように樹脂材23の後方であって垂下部20の前側に摺動部22を、固定デッキ部30を構成するパネルの上辺に当接しないように設けてある。
具体的には、上り部15fと垂下部20の間の略三角形状の空間に納まるように取付部21を取り付け、この取付部21から下方に露出した摺動部22が、樹脂材23又は可動デッキ部の下辺、例えば下辺15bよりも下方に飛び出さないように設けてある。
これにより、図6(b)に示すように固定デッキ部の下り部36に摺動部22は摺接するが、図6(c)に示すように樹脂材23が固定デッキ部の上辺、例えば上辺31aをスライド当接する際には、摺動部22は上辺31aとの間に隙間dを有して当接しない。
このように設けられた摺動部22は、図6(a)に示すように可動デッキの展開完了時や、図6(c)に示すように固定デッキ部30の上辺に沿ったスライド時及び格納時に固定デッキに当接することがない。
【0019】
本明細書において可動デッキの展開完了時とは、例えば図7(a)に示すように可動デッキ部の垂下部20が固定デッキ部の延在部36aに載っている状態であり、デッキ部が互いに前後に連続している。
この際、各デッキ部10、30を構成するパネルの上辺、例えば上辺15a、31aがおよそ同一の高さであれば、各デッキ100、300の上面高さがおよそ等しくなり、ベッドとしての使用性に優れる。
本実施例は展開完了時に、図5(b)に示すように垂下部20が立設部37に係止して可動デッキ部10の前方への移動を抑制するとともに、垂下部20と立設部37の対応位置にストッパー構造(抜止孔部24,抜止突部38)を設けて可動デッキ部10の上下方向の移動も制限した例である。
具体的には図7(a)に示すように、立設部37に後方へ突出部38aが突出するように抜止突部38を設け、これに対応する可動デッキ部の垂下部20に突出部38aを挿入可能な抜止孔部24を設けてある。
なお、垂下部に前方へ突出部が突出するように抜止突部を設け、立設部に抜止孔部を設けてもよい。
本実施例の抜止突部38は、立設部37の一部に設けた孔に突出部38aを挿入した状態で頭部38bが立設部に係止する樹脂材の例である。
突出部38aは、立設部37の後面から先端部までの突出長さaを有し、直径は突出長さaよりも短い略円柱形状である。
一方、抜止孔部24は略楕円形状であり、上下方向の内径bが突出長さaよりも大きい。
これにより、図7(b)に示すように可動デッキ部10に下から突き上げるような力が作用しても、突出部38aが抜止孔部24に係止し、可動デッキ部10の上下方向の移動が抑制される。
また、図7(c)に示すように可動デッキ部10の前端側を上方向に持ち上げた際に、突出部38aの突出長さaが抜止孔部24の上下方向の内径b以下であるため、突出部38aが抜止孔部24から自然と外れる。
なお、図1(a)に示すように可動デッキ部10の前端側にハンドル27を設けることで、持ち上げ操作やスライド操作をしやすくしてあってもよい。
また、本発明のパネル同士の嵌合構造は、複数のパネルを並べてパネル全体で剛性を確保する製品であれば、スライドデッキ以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 可動デッキ部
11 前パネル
12、13、14 中間パネル
15 後パネル
16、17 被挿入突部
18 挿入部
20 垂下部
22 摺動部
24 抜止孔部
30 固定デッキ部
31 前パネル
32、33、34 中間パネル
35 後パネル
36 下り部
37 立設部
38 抜止突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8