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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093006
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】衝撃吸収ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/22 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
F16F9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208373
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】509109903
【氏名又は名称】株式会社サムエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】南 和夫
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC10
3J069DD47
3J069EE01
3J069EE19
3J069EE62
(57)【要約】
【課題】大きな衝撃力を吸収することができ、環境が汚染されるおそれがない衝撃吸収ダンパを提供する。
【解決手段】一端を封止するとともに他端を開放し、流体を内部に収容可能な円筒状のシリンダと、前記シリンダに内挿可能な円柱状の頭部と、前記頭部より小径のプランジャと、からなるピストンと、を有し、前記シリンダの外周には複数の貫通孔を形成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を封止するとともに他端を開放し、流体を内部に収容可能な円筒状のシリンダと、
前記シリンダに内挿可能な円柱状の頭部と、前記頭部より小径のプランジャと、からなるピストンと、を有し、
前記シリンダの外周には複数の貫通孔を形成した、
衝撃吸収ダンパ。
【請求項2】
前記流体は水であることを特徴とする、
請求項1に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項3】
前記貫通孔は雌ネジ状であり、
前記貫通孔に螺合して閉塞する雄ネジ状の栓ボルトを有することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項4】
前記ピストンの頭部の外径は、前記頭部の外周面と前記シリンダの内周面との間に一定の間隔を有する径であることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項5】
前記貫通孔は前記シリンダの所定の長さ中に均等に設けることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項6】
前記貫通孔は前記シリンダの所定の長さ中に、前記シリンダの開放端側から封止端側にかけて個数を漸減して設けることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項7】
前記貫通孔は前記シリンダの所定の長さ中に、前記シリンダの開放端側から封止端側にかけて径を漸減して設けることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項8】
前記プランジャは中空の円筒状であることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項9】
前記流体を貯留可能な貯液槽を有し、
前記シリンダの、少なくとも前記貫通孔を形成した部分は、前記貯液槽に内包することを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の衝撃吸収ダンパ。
【請求項10】
開放された前記貫通孔を封止する密閉栓を有し、
前記密閉栓は前記シリンダに内包した前記流体からの圧力により前記貫通孔から押し出されることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の衝撃吸収ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収ダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運動している対象物を衝突させて、その衝撃力を吸収して静止させるものとして様々なものが知られている。
例えば、対象物が自動車の場合には、タンクに水を充填した車両用バリケードがある。また鉄道の場合には、枕木やバラストを線路上に積む、鋼材を櫓型に組む、レールを上方にU字状に曲げる等の構造がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
対象物がこれらの衝撃吸収構造に衝突した際、瞬間的に大きな衝撃力が作用する。上述した衝撃吸収構造はいずれも静止しているため、対象物に大きな反力が作用し、対象物が破損してしまうおそれがある。
また、流体や変形材等の衝撃吸収体を組み合わせて用いることも考えられるが、これらの場合も衝突時に対象物に作用する反力が大きく、一定以上の変形距離を取る必要もある。そして、弾性変形材の場合には、吸収した衝撃力に応じた反発力が生じてしまう。一方、塑性変形材の場合には、一度のみしか使用することができないという問題もある。
【0004】
この他、油圧式ダンパが衝撃吸収用途で使用されているが、油圧式ダンパも衝突時の反力が大きく、また、メンテナンスが必要であり、内部のオイルが漏れ出した場合には環境が汚染されるおそれがある。
【0005】
本発明は、大きな衝撃力を吸収することができ、環境が汚染されるおそれがない衝撃吸収ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、一端を封止するとともに他端を開放し、流体を内部に収容可能な円筒状のシリンダと、前記シリンダに内挿可能な円柱状の頭部と、前記頭部より小径のプランジャと、からなるピストンと、を有し、前記シリンダの外周には複数の貫通孔を形成した、衝撃吸収ダンパを提供する。
本願の第2発明は、第1発明において、前記流体は水であることを特徴とする。
本願の第3発明は、第1発明又は第2発明において、前記貫通孔は雌ネジ状であり、前記貫通孔に螺合して閉塞する雄ネジ状の栓ボルトを有することを特徴とする。
本願の第4発明は、第1発明乃至第3発明において、前記ピストンの頭部の外径は、前記頭部の外周面と前記シリンダの内周面との間に一定の間隔を有する径であることを特徴とする。
本願の第5発明は、第1発明乃至第4発明にいずれかおいて、前記貫通孔は前記シリンダの所定の長さ中に均等に設けることを特徴とする。
本願の第6発明は、第1発明乃至第4発明のいずれかにおいて、前記貫通孔は前記シリンダの所定の長さ中に、前記シリンダの開放端側から封止端側にかけて個数を漸減して設けることを特徴とする。
本願の第7発明は、第1発明乃至第6発明のいずれかにおいて、前記貫通孔は前記シリンダの所定の長さ中に、前記シリンダの開放端側から封止端側にかけて径を漸減して設けることを特徴とする。
本願の第8発明は、第1発明乃至第7発明のいずれかにおいて、前記プランジャは中空の円筒状であることを特徴とする。
本願の第9発明は、第1発明乃至第8発明のいずれかにおいて、前記流体を貯留可能な貯液槽を有し、前記シリンダの、少なくとも前記貫通孔を形成した部分は、前記貯液槽に内包することを特徴とする。
本願の第10発明は、第1発明乃至第8発明のいずれかにおいて、開放された前記貫通孔を封止する密閉栓を有し、前記密閉栓は前記シリンダに内包した前記流体からの圧力により前記貫通孔から押し出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)シリンダ内部の流体が貫通孔から押し出されることにより、衝撃力を吸収する。
(2)ピストンが押し込まれる方向に沿って、開いた貫通孔の面積が漸減するため、衝突初期は流体が多く押し出されることで大きく衝撃力を吸収し、ピストンが押し込まれるにつれて押し出される流体が少なくしながら反発力を大きくして吸収することで、全工程を通して短いストロークで効率よく大きな衝撃力を吸収することができる。
(3)貫通孔は栓ボルトにより閉塞することで、貫通孔の数を増減することができ、衝撃吸収力を調整することができる。
(4)流体として水を使用すれば、安全性が高く、漏れ出しても環境を汚染することがない。
(5)貫通孔を設けたシリンダに流体を収容し、ピストンを摺動させるのみの簡易な構成のため、使用場所や対象を問わず、メンテナンスフリーで使用することができる。
(6)密閉栓を用いることで貯液槽が不要となり、より様々な場所で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の衝撃吸収ダンパの斜視図
図2】本発明の衝撃吸収ダンパの側面図
図3】本発明の衝撃吸収ダンパの断面図
図4】本発明の衝撃吸収ダンパの使用状態の説明図(1)
図5】本発明の衝撃吸収ダンパの使用状態の説明図(2)
図6】本発明の衝撃吸収ダンパの使用状態の説明図(3)
図7】その他の実施例に係る本発明の衝撃吸収ダンパにおけるシリンダの側面図(1)
図8】その他の実施例に係る本発明の衝撃吸収ダンパにおけるシリンダの側面図(2)
図9】その他の実施例に係る本発明の衝撃吸収ダンパの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
[実施例1]
<1>全体構成
本発明の衝撃吸収ダンパ1は、シリンダ2と、シリンダ2に挿入するピストン3を有する(図1、2)。
【0011】
<1>シリンダ
シリンダ2は一端を封止するとともに他端を開放した円筒状の部材であり、シリンダ2の外周には複数の貫通孔21を設ける。本実施例においては、貫通孔21は均一の径であり、シリンダ2の所定の長さ中に均等に設ける。
貫通孔21は栓ボルト22により閉塞可能とする。本実施例においては貫通孔21を雌ネジ状とし、栓ボルト22を貫通孔21に螺合することにより貫通孔21を閉塞するが、栓ボルト22による閉塞の形態はこれに限定されない。
シリンダ2の閉塞端の内面には、ピストン3の頭部31が衝突して破損しないように内部緩衝ゴム23を設ける(図3)。
【0012】
<1.1>栓ボルトの本数
栓ボルト22は、長さ方向に均等に設けた貫通孔21に対して、シリンダ2の開放端側から封止端側にかけて本数が多くなるように設ける。
【0013】
<2>ピストン
ピストン3はシリンダ2の開放端側から挿入し、シリンダ2の軸方向に摺動可能な部材であり、シリンダ2の内径よりも小径の略円柱状の頭部31と、頭部31より小径の円筒状のプランジャ32と、からなる。
頭部31の外周面とシリンダ2の内周面との間には、シリンダ2内部の流体に異物が混入してもピストン3の摺動に影響がないように、シール材等を設けず一定の間隔を確保する。
ピストン3のシリンダ2と逆側の端部は、衝突時に対象物が破損しないように外部緩衝ゴム33を設ける。
プランジャ32はより軽量となるように、内部を中空とする。
また、ピストン3の摺動方向の両側面にローラ34を設け、同じくピストン3の摺動方向の両側に平行に設けたレール35上に載置する。ローラ34がレール35上を移動することで、ピストン3をシリンダ2の軸方向に摺動することができる。
【0014】
<3>貯液槽およびシリンダとピストンの配置
シリンダ2内には流体Fを満たす必要がある。
このため、流体Fを貯留する貯液槽4を使用し、シリンダ2を貯液槽4に貯留した流体F中に沈めることにより、シリンダ2の内部に流体Fが満たされる(図3)。貯液槽は、シリンダ2の、少なくとも貫通孔21を設けた部分を内包する大きさとする。
ピストン3は外部緩衝ゴム33を設けた端部側が貯液槽4から突設するように配置する。ピストン3と貯液槽4との隙間はゴム等のシール材(図示しない)を設けて、水が漏れ出さないようにする。
流体Fとしては、水の他、粘性流体を用いることができる。水であれば安全性が高く、漏れ出しても環境を汚染することがない。
【0015】
<4>衝撃の吸収
対象物がピストン3に衝突し、衝撃力がピストン3に作用すると、ピストン3が押され、貯液槽4内のシリンダ2に挿入される(図4)。
シリンダ2内をピストン3が動く際には、流体Fによる抵抗が生じる。これにより衝撃力が吸収される。また、ピストン3のプランジャ32を中空として軽量にすることで、対象物がピストン3に衝突した際に、対象物へ作用する反発力が小さくなる。
衝撃力は、ピストン3の動きに合わせてシリンダ2内部の流体Fに伝達される。
シリンダ2は外周に貫通孔21を有し、シリンダ2内部の流体Fは貫通孔21からシリンダ2の外に押し出されることとなる。このときのシリンダ2の外側の貯液槽4内の水の抵抗や、貫通孔21通過時の圧力損失等により、衝撃力が吸収される。
ピストン3の頭部31の外周面とシリンダ2の内周面との間に一定の間隔を設けることで、シリンダ2内部の流体Fに砂や石等の異物が混入してもピストン3の摺動に影響がない。
【0016】
シリンダ2の貫通孔21は栓ボルト22により閉塞することができる。
栓ボルト22は、長さ方向に均等に設けた貫通孔21に対して、シリンダ2の開放端側から封止端側にかけて本数が多くなるように設けることで、ピストン3が押し込まれる方向に沿って、開いた貫通孔21の面積が漸減する。
衝突初期はピストン3の位置に対して多くの貫通孔21が開いており、衝撃力によりシリンダ2の内部から外部に流体Fが多く押し出され、対象物へ作用する反発力を小さくおさえつつ、大きく衝撃力を吸収する。
その後、ピストン3が押し込まれるにつれて(図5)、栓ボルト22が多くなり、開いた貫通孔21が少なくなるため、シリンダ2の内部から外部に押し出される流体Fが徐々に少なくなり、流体Fの抵抗で衝撃力を受けるため、反発力の割合が大きくなる。
このように、初期は反発力をおさえて大きく衝撃力を吸収し、徐々に反発力を大きくして小さく衝撃力を吸収することで、全工程を通して短いストロークで効率よく大きな衝撃力を吸収することができる。
【0017】
<5>衝撃吸収力の調整
一部の貫通孔21を栓ボルト22で閉塞することにより、衝撃力が加わったときにシリンダ2の内部から貫通孔21を通じて外部に押し出される流体Fの量を調整できる。例えば、閉塞する貫通孔21を増やすことにより、外部に押し出される流体Fの量が減り、対象物に作用する反発力は大きくなる。貫通孔21は衝撃吸収ダンパ1の衝撃吸収能力は小さくなる。
貫通孔21は、シリンダ2の長さ方向に均等に設けるため、栓ボルト22を用いて選択的に貫通孔21を閉塞することで衝撃吸収力を任意に調整できる。
【0018】
本発明の衝撃吸収ダンパ1は、外周に複数の貫通孔21を設けたシリンダ2に流体Fを収容し、ピストン3を摺動させるのみであり、簡易な構成である。また、ピストン3の頭部31の外周面とシリンダ2の内周面との間に一定の間隔を設けることで、シリンダ2内部の流体Fに砂や石等の異物が混入してもピストン3の摺動に影響がない。
このため、使用場所や対象を問わず、衝撃吸収が必要な様々な場所で、メンテナンスフリーで使用することができる。また、ピストン3を摺動して元の配置に戻すのみで、何度でも使用可能である。
そして、衝撃吸収ダンパ1を並列に配置し、ピストン3の後端に設けた受撃体36を介して連結することもできる(図6)。対象物や作用する衝撃力に合わせて、衝撃吸収ダンパ1の本数を増減できる。
【0019】
[その他の実施例]
<1>貫通孔の寸法や配置
上述の実施例1においては、貫通孔21をシリンダ2の長さ方向に均等に設け、栓ボルト22をシリンダ2の開放端側から封止端側にかけて本数が多くなるように設けることで、ピストン3が押し込まれる方向に沿って、開いた貫通孔21の面積を漸減したが、この形態に限定されず、例えば貫通孔21の個数をシリンダ2の開放端側から封止端側にかけて漸減したり(図7)、貫通孔21の径をシリンダ2の開放端側から封止端側にかけて小さくしたりすることにより(図8)、栓ボルト22の有無に関わらず、開いた貫通孔21の面積を漸減してもよい。
【0020】
<2>密閉栓の使用
また、上述の実施例1においては、貯液槽4内の流体F中にシリンダ2を沈めたが、貫通孔21を密閉栓5で封止しシリンダ2内部に流体Fを充填して構成してもよい。密閉栓5はゴム等からなり、内部の流体Fに衝撃力が作用した時に圧力により貫通孔21から押し出されるため、内部の流体Fが貫通孔21から外部に押し出され、衝撃吸収ダンパ1としての衝撃吸収能力が発揮される。
貯液槽4が不要となるため、より様々な場所で使用することができる(図9)。
【符号の説明】
【0021】
1…衝撃吸収ダンパ
2…シリンダ、21…貫通孔、22…栓ボルト、23…内部緩衝ゴム
3…ピストン、31…頭部、32…プランジャ、33…外部緩衝ゴム、34…ローラ、35…レール、36…受撃体
4…貯液槽
5…密閉栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9