(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093054
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
B04C 5/04 20060101AFI20230627BHJP
B04C 5/12 20060101ALI20230627BHJP
B04C 11/00 20060101ALI20230627BHJP
B23Q 11/00 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
B04C5/04
B04C5/12 Z
B04C11/00
B23Q11/00 U
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208454
(22)【出願日】2021-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】594204756
【氏名又は名称】株式会社ブンリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 誠
【テーマコード(参考)】
3C011
4D053
【Fターム(参考)】
3C011BB32
4D053AA03
4D053AB04
4D053BA01
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CC02
4D053CG00
(57)【要約】
【課題】 液体の発泡をより効果的に抑制することが可能な分離装置を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様に係る分離装置は、中心軸線に沿って延び、内部に異物を含む液体を導入するための導入口と、下端に設けられ異物を排出するための第1排出口と、を有し、内部で液体を旋回させ遠心力によって液体から異物を分離するとともに、第1排出口から中心軸線に沿って延びる柱状の空気層が形成され、空気層の外周面に沿って異物が分離された液体が上昇するサイクロンと、サイクロンの延在方向における第1排出口の反対側に設けられ、サイクロンの上端に設けられ連通孔が形成された隔壁と第2排出口とを有し、連通孔によって内部と連通されたクリーンケースと、連通孔から中心軸線に沿って延び、複数の第1孔を有する気液分離管と、中心軸線に沿って延び、気液分離管を囲むとともに、複数の第2孔を有する内壁と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線に沿って延び、内部に異物を含む液体を導入するための導入口と、下端に設けられ前記異物を排出するための第1排出口と、を有し、前記内部で前記液体を旋回させ遠心力によって前記液体から前記異物を分離するとともに、前記第1排出口から前記中心軸線に沿って延びる柱状の空気層が形成され、前記空気層の外周面に沿って前記異物が分離された液体が上昇するサイクロンと、
前記サイクロンの延在方向における前記第1排出口の反対側に設けられ、前記サイクロンの上端に設けられ連通孔が形成された隔壁と第2排出口とを有し、前記連通孔によって前記内部と連通されたクリーンケースと、
前記クリーンケースに設けられ、前記連通孔から前記中心軸線に沿って延び、複数の第1孔を有する気液分離管と、
前記クリーンケースに設けられ、前記中心軸線に沿って延び、前記気液分離管を囲むとともに、複数の第2孔を有する内壁と、を備え、
前記空気層に沿って前記第1排出口から前記気液分離管まで上昇した前記異物が分離された液体は、前記複数の第1孔および前記複数の第2孔を通過し、前記第2排出口から前記クリーンケースの外部へ排出される、
分離装置。
【請求項2】
前記複数の第2孔は、前記複数の第1孔よりも大きい、
請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記延在方向において、前記気液分離管の前記内壁で囲われている領域は、前記気液分離管の前記内壁で囲われていない領域よりも小さい、
請求項1または2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記クリーンケースは、前記延在方向において前記第1排出口と前記隔壁との間に位置している底壁と、前記底壁に接続され前記内壁および前記サイクロンを囲う側壁と、をさらに有し、
前記第2排出口は、前記側壁に設けられている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項5】
前記第2排出口は、前記延在方向において、前記底壁と前記隔壁との間に位置している、
請求項4に記載の分離装置。
【請求項6】
前記第2排出口は、前記サイクロンと向かい合っている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項7】
前記内壁は、前記クリーンケースに貯留された前記異物が分離された液体の液面よりもサイクロン側に位置している、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械により金属材料などを機械加工する際、加工精度の向上、工具の寿命の延命、および切り屑や金属粉などの排出を促進することを目的として研削液、切削液、クーラントなどと呼ばれる各種の液体が使用される。
【0003】
これらの液体は、機械加工により生じた切り屑や金属粉などの異物が含まれた状態で工作機械から排出される。排出された液体は、異物を分離し取り除いた後、工作機械に戻して再利用される。異物が含まれる液体から異物を分離し取り除くための分離装置に関し、これまで様々な提案がなされている。
【0004】
例えば特許文献1には、発泡抑制型液体サイクロンが開示されている。このサイクロンは、重力方向に向かって内径が次第に小さくなる部分を有し内径の大径部に供給された分離対象液状体を旋回させて比重の大きい物質と比重の小さい液体とに分離する旋回流室を備え、分離された前記比重の大きい物質が排出される排出口を下端に有すると共に分離された前記比重の小さい液体が旋回流として上昇する上昇流路を上端に有するサイクロン本体と、前記サイクロン本体の上端に設けられ前記上昇流路を通って前記比重の小さい液体が流入する上室とを具備する液体サイクロンであって、前記サイクロン本体の下端の排出口の気圧Pをゲージ圧で-0.5kg/cm2G≦P<0kg/cm2Gの負圧の範囲になるように、前記上室から前記比重の小さい液体が流出する流出路の横断面積を規制したことを特徴としている。
【0005】
このサイクロンは、分離されて回収された液体の発泡を十分に抑制することを課題としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されたサイクロンを踏まえても、液体の発泡を抑制するための構造に関しては、未だに種々の改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は、液体の発泡をより効果的に抑制することが可能な分離装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る分離装置は、中心軸線に沿って延び、内部に異物を含む液体を導入するための導入口と、下端に設けられ前記異物を排出するための第1排出口と、を有し、前記内部で前記液体を旋回させ遠心力によって前記液体から前記異物を分離するとともに、前記第1排出口から前記中心軸線に沿って延びる柱状の空気層が形成され、前記空気層の外周面に沿って前記異物が分離された液体が上昇するサイクロンと、前記サイクロンの延在方向における前記第1排出口の反対側に設けられ、前記サイクロンの上端に設けられ連通孔が形成された隔壁と第2排出口とを有し、前記連通孔によって前記内部と連通されたクリーンケースと、前記クリーンケースに設けられ、前記連通孔から前記中心軸線に沿って延び、複数の第1孔を有する気液分離管と、前記クリーンケースに設けられ、前記中心軸線に沿って延び、前記気液分離管を囲むとともに、複数の第2孔を有する内壁と、を備える。
【0010】
前記空気層に沿って前記第1排出口から前記気液分離管まで上昇した前記異物が分離された液体は、前記複数の第1孔および前記複数の第2孔を通過し、前記第2排出口から前記クリーンケースの外部へ排出される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体の発泡をより効果的に抑制することが可能な分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る分離装置の概略的な斜視図である。
【
図3】
図3は、分離装置が備える気液分離管および内壁の概略的な部分拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1のIV-IV線に沿って示す気液分離管の概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿って示す気液分離管の概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、第1孔および第2孔に適用可能な孔の他の例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1孔および第2孔に適用可能な孔のさらに他の例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1孔および第2孔に適用可能な孔のさらに他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
分離装置の一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ符号を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0014】
本実施形態においては、液体に含まれる異物を遠心力によって分離し取り除くための分離装置について開示する。液体には、例えば研削液、切削液、およびクーラントなどが含まれる。異物には、例えば金属材料などの切り屑、金属粉などが含まれる。
【0015】
図1は、本実施形態に係る分離装置1の概略的な斜視図である。
図2は、
図1に示す分離装置1の概略的な断面図である。
図3は、分離装置1が備える気液分離管60および内壁70の概略的な部分拡大図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿って示す気液分離管60の概略的な断面図である。
図1においては、説明の都合上、部品の一部を透過させて示している。
図1および
図2においては、分離装置1における液体の流れを矢印にて示す。
【0016】
図1および
図2に示すように、分離装置1は、サイクロン10と、クリーンケース20と、導入管31と、排出管32と、を備えている。サイクロン10は、中心軸線CXに沿って延びている。
【0017】
ここで、中心軸線CXに沿う平行な方向を軸方向Dxと定義する。軸方向Dx一方側を上または上方と定義し、軸方向Dx他方側を下または下方と定義する。サイクロン10の延在方向は、軸方向Dxに相当する。中心軸線CXを中心として中心軸線CXから離れる方向を半径方向Drと定義し、中心軸線CXを中心とする周方向θを定義する。
【0018】
サイクロン10は、導入部40と、導入部40と接続されたドレン部50と、を有している。導入部40は、サイクロン10の上端側に位置し、ドレン部50はサイクロン10の下端側に位置している。サイクロン10は、端部11と、端部11と反対側の端部12を有している。端部11はサイクロン10の上端に相当し、端部12はサイクロン10の下端に相当する。
【0019】
導入部40は、円筒状に形成されている。導入部40は、半径方向Dr内側に位置する内周面41と、半径方向Dr外側に位置する外周面42と、を有している。内周面41および外周面42は、軸方向Dxに沿って一様な径で延びている。
【0020】
ドレン部50は、導入部40と同軸上に位置している。ドレン部50は、導入部40と接続された円柱状の第1部材51と、第1部材51と接続された円柱状の第2部材52と、を有している。第1部材51および第2部材52は、半径方向Dr外側に位置する外周面53,54をそれぞれ有している。外周面53,54は、軸方向Dxに沿って一様な径で延びている。第1部材51の外径は、第2部材52の外径よりも大きい。
【0021】
ドレン部50は、第1部材51から第2部材52にわたり形成された内周面55を有している。内周面55は、内周面41の下端側において周方向θにわたり接続されている。内周面55は、内周面41との接続箇所からサイクロン10の下端に向けて延びる円錐面状に形成されている。内周面55は、サイクロン10の下端に向かうに従い徐々に内径が小さくなっている。以下、内周面41と内周面55とによって囲われた領域を「サイクロン10の内部IN10」と呼ぶ。
【0022】
導入部40側の第1部材51の端部には、外周面53から半径方向Drに突出するフランジ56が設けられている。
図2に示す例において、サイクロン10は、ボルトなどの固定部材57によりフランジ56を介して、後述のクリーンケース20の底壁と接続されている。
【0023】
サイクロン10は、導入口13と、第1排出口14と、をさらに有している。導入口13は、サイクロン10の内部IN10に異物を含む液体を導入する。導入口13は、導入部40に設けられている。
図2に示す例において、導入口13は、導入部40の端部11側に設けられている。導入口13は、円筒状に形成された導入部40の接線方向に沿うように開口している。
【0024】
導入口13には、導入管31が接続されている。導入管31には、異物を含む液体が流入する。導入管31は、導入口13を介してサイクロン10の内部IN10とサイクロン10の外部とを連通している。導入管31から導入口13に導入される液体は、導入部40の接線方向に沿って導入部40の内部に供給される。
図1に示す例において、導入管31には、圧力計33が設けられている。圧力計33は、例えば圧力センサなどでもよい。
【0025】
第1排出口14は、液体から分離された異物を多く含む液体をサイクロン10の内部IN10からサイクロン10の外部へ排出する。第1排出口14は、サイクロン10の内部IN10とサイクロン10の外部とを連通している。第1排出口14は、サイクロン10の端部12に設けられている。
【0026】
より具体的には、第1排出口14は、下端側の第2部材52の端部において、軸方向Dxに沿って延びるよう設けられている。
図2に示す例において、第1排出口14の内周面は、内周面55との接続箇所からサイクロン10の下端に向かうに従い徐々に内径が大きくなる円錐面状に形成されている。
【0027】
クリーンケース20は、サイクロン10によって異物が分離された液体を内部に貯留する。
図1および
図2に示すように、クリーンケース20は、サイクロン10の上端側に設けられている。他の観点からは、分離装置1において、クリーンケース20は、軸方向Dxにおける第1排出口14の反対側に設けられている。
【0028】
クリーンケース20は、側壁21と、底壁22と、軸方向Dxにおける底壁22の反対側の上壁23と、を有している。底壁22および上壁23は、側壁21に接続されている。以下、側壁21、底壁22、および上壁23によって囲われた領域を「クリーンケース20の内部IN20」と呼ぶ。クリーンケース20の内部IN20には、液体が貯留される。
図1および
図2に示す例において、クリーンケース20の内部IN20には、導入部40が位置している。
【0029】
側壁21は、中心軸線CXを中心とする円筒状に形成されている。側壁21は、半径方向Dr内側に位置する内周面24と、半径方向Dr外側に位置する外周面25と、を有している。内周面24および外周面25は、軸方向Dxに沿って一様な径で延びている。底壁22および上壁23は、中心軸線CXを中心とする円板形状である。上壁23は、例えば側壁21に対して着脱可能に設けられている。
【0030】
クリーンケース20は、隔壁26と、第2排出口27と、をさらに有している。隔壁26は、サイクロン10の内部IN10とクリーンケース20の内部IN20とを隔てている。隔壁26は、端部11に設けられている。隔壁26は、中心軸線CXを中心とする円板形状である。
図1および
図2に示す例において、隔壁26の外径は、導入部40の外径とおおよそ等しい。
【0031】
隔壁26には、中心軸線CXを中心とする連通孔28が設けられている。連通孔28は、サイクロン10の内部IN10とクリーンケース20の内部IN20とを連通する。連通孔28は、中心軸線CXを中心とする円形状である。
【0032】
第2排出口27は、異物が分離された液体をクリーンケース20の内部IN20からクリーンケース20の外部へ排出する。第2排出口27は、側壁21に設けられている。第2排出口27には、排出管32が接続されている。排出管32は、第2排出口27を介してクリーンケース20の内部IN20とクリーンケース20の外部とを連通している。クリーンケース20の内部IN20からは、第2排出口27を除き液体が流出しないように形成されている。
【0033】
クリーンケース20の外部には、例えば第2排出口27から排出された液体を貯留するための液体回収タンク(図示しない)が設けられている。排出管32は、液体回収タンクへ向けて延びている。
【0034】
図1に示す例において、排出管32には、バルブ34が設けられている。バルブ34は、開度を調整することで排出管32から排出される流量を調整する。さらに、バルブ34は、クリーンケース20の内部IN20に貯留される液体の量を調整する。
【0035】
他の観点からは、バルブ34は、クリーンケース20の内部IN20における液面の高さを調整する。バルブ34を設けることで、液面の高さの調整が行いやすくなる。バルブ34の開度の調整は、例えばバルブ34に設けられたハンドル35を操作することで行う。バルブ34は、例えば仕切弁である。
【0036】
分離装置1は、連通管36と、気液分離管60と、気液分離管60を囲む内壁70と、をさらに備えている。連通管36は、導入部40の内部において中心軸線CXと同軸上に設けられている。連通管36は、円筒状に形成されている。連通管36は、軸方向Dxにおいて連通孔28から第1排出口14に向けて延びている。
【0037】
連通管36は、連通孔28を介して、サイクロン10の内部IN10とクリーンケース20の内部IN20とを連通する。
図2に示す例において、連通管36は、ドレン部50までは延びていない。他の観点からは、連通管36の長さは、導入部40の長さよりも短い。
【0038】
気液分離管60は、クリーンケース20の内部IN20において中心軸線CXと同軸上に設けられている。気液分離管60は、円筒状に形成されている。気液分離管60は、軸方向Dxに沿って連通孔28から上壁23に向けて延びている。
図2に示す例において、気液分離管60の一端は連通管36と接続され、気液分離管60の他端は上壁23と接している。
【0039】
気液分離管60は、半径方向Dr内側に位置する内周面61と、半径方向Dr外側に位置する外周面62と、を有している。内周面61および外周面62は、軸方向Dxに沿って一様な径で延びている。気液分離管60の内部は、連通管36の内部と接続されている。
図2に示す例において、気液分離管60の内径は、連通管36の内径とおおよそ等しい。
【0040】
気液分離管60は、複数の第1孔63を有している。複数の第1孔63は、例えば気液分離管60の全体に設けられている。
図3に示す例において、複数の第1孔63は、軸方向Dxおよび周方向θにそれぞれ均一な間隔を置いて設けられている。第1孔63は、内周面61と外周面62とを貫通する貫通孔である。第1孔63の形状は、例えば円形状である。
【0041】
内壁70は、クリーンケース20の内部IN20において気液分離管60を半径方向Dr外側から囲うように中心軸線CXと同軸上に設けられている。内壁70は、円筒状に形成されている。
図2に示す例において、内壁70の外径は、導入部40の外径とおおよそ等しい。
【0042】
内壁70は、軸方向Dxに沿って隔壁26から上壁23に向けて延びている。内壁70は、半径方向Dr内側に位置する内周面71と、半径方向Dr外側に位置する外周面72と、を有している。内周面71および外周面72は、軸方向Dxに沿って一様な径で延びている。
【0043】
内壁70は、サイクロン10の上端側に位置する気液分離管60の一部分を周方向θの全体にわたり囲んでいる。内壁70の内径は、気液分離管60の外径よりも大きく、側壁21の内径よりも小さい。
【0044】
図2に示す例において、半径方向Drにおける気液分離管60の外周面62から内壁70の内周面71までの長さは、側壁21の内周面24から内壁70の外周面72までの長さとおおよそ等しい。気液分離管60の外周面62から内壁70の内周面71までの長さは、側壁21の内周面24から内壁70の外周面72までの長さよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0045】
例えば、軸方向Dxにおいて、気液分離管60の内壁70で囲われている領域は、気液分離管60の内壁70で囲われていない領域よりも小さい。
図2においては、気液分離管60の内壁70で囲われている領域を領域P1で示し、気液分離管60の内壁70で囲われていない領域を領域P2で示す。例えば、気液分離管60の内壁70で囲われている領域P1の軸方向Dxの長さは、気液分離管60の軸方向Dxの長さの2分の1よりも小さい。
【0046】
内壁70は、複数の第2孔73を有している。複数の第2孔73は、例えば内壁70の全体に設けられている。
図3に示す例において、複数の第2孔73は、軸方向Dxおよび周方向θにそれぞれ均一な間隔を置いて設けられている。第2孔73は、内周面71と外周面72とを貫通する貫通孔である。第2孔73の形状は、例えば円形状である。
【0047】
図3に示すように、複数の第2孔73の大きさは、複数の第1孔63の大きさよりも大きい。他の観点からは、内壁70の開口率は、気液分離管60の開口率よりも大きい。ここで、「大きさ」とは第1孔63および第2孔73の開口面積に相当し、「開口率」とは単位面積に対する開口面積の合計の割合である。
【0048】
例えば、第1孔63の直径D1は1~2mmであり、第2孔73の直径D2は例えば3~5mmである。一例では、第1孔63の直径D1は1mmであり、第2孔73の直径D2は例えば3mmである。気液分離管60および内壁70は、例えばパンチングプレートのような多数の孔を有する多孔板によって形成することができる。
【0049】
側壁21は、内壁70および導入部40を半径方向Dr外側から囲っている。底壁22は、軸方向Dxにおいて第1排出口14と隔壁26との間に位置している。
図2に示す例において、底壁22は、軸方向Dxにおいて、ドレン部50側の導入部40の端部に設けられている。
【0050】
第2排出口27は、軸方向Dxにおいて底壁22と隔壁26との間に位置している。第2排出口27は、半径方向Drにおいて、ドレン部50側の導入部40の外周面42と向かい合うように開口している。他の観点からは、第2排出口27は、軸方向Dxにおいて底壁22と導入口13との間に位置している。
図2に示す例において、サイクロン10の下端側の第2排出口27の一端は、底壁22の上面と半径方向Drに重なるように設けられている。
【0051】
クリーンケース20の内部IN20には、気液分離管60と内壁70との間に第1貯留部81が形成され、導入部40と側壁21との間および内壁70と側壁21との間に第2貯留部82が形成されている。他の観点からは、第2貯留部82は、第1貯留部81を周方向θに囲っている。
【0052】
第2貯留部82の体積は、例えば第1貯留部81の体積よりも大きい。他の観点からは、第2貯留部82の軸方向Dxの長さは、第1貯留部81の軸方向Dxの長さよりも長い。
【0053】
図2に示すように、気液分離管60には、逃し孔64が設けられている。逃し孔64は、複数の第1孔63が異物により閉じられた際に、気液分離管60へ流入した液体をクリーンケース20の内部IN20へ排出する。逃し孔64は、気液分離管60の上方に複数(例えば、2つ)設けられている。逃し孔64は、第1孔63よりも大きく、内壁70によって囲われていない。
【0054】
分離装置1は、ドレン部50の第1部材51を半径方向Dr外側から囲うカバー37をさらに備えている。カバー37は、中心軸線CXを中心とする円筒状に形成されている。カバー37は、軸方向Dxに沿って一様な径で延びている。カバー37の外径は、例えば側壁21の外径とおおよそ等しくてもよいし、側壁21の外径よりも小さくてもよい。第1排出口14の下方には、例えば第1排出口14から排出された異物や液体を貯留するための異物回収タンク(図示しない)が設けられている。
【0055】
次に、分離装置1における異物を含む液体から異物を分離し取り除く工程について、説明する。
【0056】
まず、サイクロン10の内部IN10には、異物を含む液体が導入管31を介して導入口13から導入される。液体は、導入部40の接線方向に所定の流速で供給される。供給された液体は、導入部40の内周面41およびドレン部50の内周面55に沿って旋回しながら、第1排出口14へ向けて下降する。
【0057】
これにより、サイクロン10の内部IN10には、中心軸線CXを中心とする下降渦流が発生する。
図2においては、下降渦流を渦流DVで示す。液体に含まれた異物は、サイクロン10の内部IN10において下降渦流に基づく遠心力により分離される。
【0058】
分離された異物は、ドレン部50の内周面55に集まるとともに、ドレン部50の内周面55に沿って旋回しながら下降する。異物は、例えばスラッジとなって第1排出口14から少量の液体とともに排出される。排出された異物および液体は、異物回収タンクに回収される。
【0059】
ドレン部50の内周面55に沿って下降した下降渦流は、第1排出口14の付近で上向きの力を受けて上昇に転じる。これにより、サイクロン10の中心軸線CXに沿って第1排出口14からクリーンケース20に向かう上昇渦流が形成される。
図2においては、上昇渦流を渦流RVで示す。
【0060】
図4に示すように、上昇渦流は、中心軸線CXを中心とする柱状の空気層84と、空気層84の周りに形成された液体層85と、を含んでいる。空気層84の中央部には、真空の部分が形成されている。空気層84は、軸方向Dxに沿って第1排出口14から連通管36を通って気液分離管60に向けて延びている。液体層85は、空気層84の外周面に沿って第1排出口14から気液分離管60に向けて異物が分離された液体が上昇することで形成されている。
【0061】
上昇渦流が気液分離管60へ流入することで、空気層84に沿って第1排出口14から気液分離管60まで異物が分離された液体が上昇する。上昇渦流の表層部分に位置する液体層85から気液分離管60の複数の第1孔63を通過して第1貯留部81へ液体が流れる。第1貯留部81へ流入した液体は、内壁70の複数の第2孔73を通過して第2貯留部82へ流れる。
【0062】
第1貯留部81へ流入した液体の一部は、内壁70を越えて第2貯留部82へ流れる。他の観点からは、第1貯留部81へ流入した液体の一部は、第2貯留部82へオーバフローする。分離装置1の稼働時において、クリーンケース20の内部IN20には、第1貯留部81から第2貯留部82へ液体の流れが2つ形成される。
【0063】
第2孔73の大きさを調整することにより、複数の第2孔を通過する流量とオーバフローする流量とを調整することができる。複数の第2孔73を通過する流量は、例えばオーバフローする流量よりも多い。他の観点からは、複数の第2孔の大きさによりオーバフローする流量を抑制することができる。
【0064】
気液分離管60から流入した液体は、主に第1貯留部81および第2貯留部82に一時的に貯留される。サイクロン10の内部IN10において異物は液体から分離されているため、クリーンケース20に貯留された液体には異物がほとんど含まれていない。クリーンケース20の内部IN20には、貯留された液体により液面が形成される。
図1および
図2においては、液面を液面L1として示す。
【0065】
クリーンケース20の内部IN20において、液面L1よりも上方には、空気だまり83が形成される。第2貯留部82に貯留された液体は、第2排出口27から排出管32を介して液体回収タンクへ排出される。
【0066】
分離装置1の稼働時には、気液分離管60および内壁70は液体に浸かっている。例えば、液面L1は、気液分離管60の軸方向Dxの中心よりもサイクロン10側に位置している。気液分離管60の液体に浸かっている領域の軸方向Dxの長さは、例えば気液分離管60の液体に浸かっていない領域の軸方向Dxの長さよりも小さい。
【0067】
分離装置1の稼働時において、内壁70の全体は、液体に浸かっている。
図1に示すように、内壁70は、分離装置1の稼働時における液面L1以下となるように設けられている。
【0068】
他の観点からは、内壁70は、分離装置1の稼働時における液面L1よりもサイクロン10側に位置している。
図1に示すように、軸方向Dxにおいて、隔壁26から液面L1までの長さH1は、内壁70の長さH70よりも長い。
【0069】
ここで、本実施形態に係る分離装置1の比較例を示す。
図5は、
図1に示す分離装置1の比較例を示す図である。
図6は、
図5のVI-VI線に沿って示す気液分離管60の概略的な断面図である。
図5においては、説明の都合上、部品の一部を透過させて示している。
【0070】
図5に示すように、分離装置100が備える内壁70は、第2孔73を有していない。軸方向Dxにおいて、底壁22は、隔壁26と同じ位置にある。
図5に示す例において、底壁22は隔壁26と一体で形成されている。
【0071】
底壁22は、
図1と比較して、軸方向Dxにおいて、より上方に形成されている。そのため、第2排出口27は、内壁70と向かい合っている。第2排出口27は、
図1と比較して、軸方向Dxにおいて、より上方に形成されている。
【0072】
分離装置100において、上昇渦流が気液分離管60へ流入すると、上昇渦流の表層部分に位置する液体層85から気液分離管60の複数の第1孔63を通過して第1貯留部81へ液体が流れる。第1貯留部81へ流入した液体は、内壁70に衝突する。液体の一部は内壁70に衝突し、内壁70の内周面を軸方向Dxに沿って流れる。
【0073】
そして、液体は、内壁70を越えて第2貯留部82へ流れる。分離装置100の稼働時において、クリーンケース20の内部IN20には、第1貯留部81から内壁70を越えて第2貯留部82へ流れる液体の流れが1つ形成される。
【0074】
分離装置100の稼働時において、第1貯留部81から内壁70を越えて第2貯留部82へ液体が流れるため、液面は暴れやすく、安定しにくい。「液面が暴れる」とは、液面が軸方向Dxに動くこと、液面がうねることなどをいう。
【0075】
図5においては、液面を液面L100として示す。液面L100が暴れることで、液体が空気だまり83から空気を巻き込みやすく、クリーンケース20の内部IN20で液体は発泡しやすくなる。液面L100が暴れることで、バルブ34による液面L100の軸方向Dxにおける位置の調整が行いにくい。
【0076】
液面L100が安定しないと、気液分離管60からクリーンケース20の内部IN20への流量が安定しない。その結果、上昇渦流の液体層85を形成する液体の流れは安定しにくくなる。
【0077】
このため、
図6に示すように液体層85の厚さW100は、周方向θに均一でない。液体層85の厚さW100は、
図4と比較して、大きくなる。さらに、上昇渦流が安定して形成されない場合には、サイクロン10の内部IN10における液体からの異物の分離精度の低下の原因となり得る。分離精度は、濾過精度とも呼ばれる場合がある。
【0078】
軸方向Dxにおいて、底壁22は、隔壁26と同じ位置にあるため、
図1と比較して、液面L100は高い。他の観点からは、隔壁26から液面L100までの長さH100は、
図1に示す隔壁26から液面L1までの長さH1よりも長い。さらに、第2排出口27が液面L100に近くなるため、液面L100が低下すると第2排出口27から液体が排出される際に空気を巻き込みやすくなる。
【0079】
以上のように構成された本実施形態の分離装置1は、気液分離管60を囲むとともに、複数の第2孔73を有する内壁70を備えている。内壁70に複数の第2孔73を形成することで、分離装置1には、第1貯留部81から複数の第2孔73を通過して第2貯留部82へ流れる液体の流れを形成することができる。
【0080】
クリーンケース20の内部IN20には、第1貯留部81から第2貯留部82へ液体の流れが2つ形成される。複数の第2孔73を通過する際に液体の勢いが抑えられることで、スムーズに液体を第1貯留部81から第2貯留部82へ流すことができる。
【0081】
内壁70に複数の第2孔73を形成することで、第1貯留部81へ流入した液体は、内壁70の内周面71に衝突しにくくなる。これにより、軸方向Dxに内壁70の内周面71に沿う液体の流れを抑制することができる。
【0082】
その結果、液面L1は暴れにくく、安定しやすくなる。液面L1が安定することで、液体が空気だまり83から空気を巻き込みにくく、クリーンケース20の内部IN20における液体の発泡を効果的に抑制することができる。したがって、分離装置1であれば、
図5に示した分離装置100と比較して、液体の発泡をより効果的に抑制することができる。
【0083】
分離装置1からは、気泡をほとんど含まない液体を排出管32からクリーンケース20の外部へ排出することができる。本実施形態の分離装置1であれば、消泡剤などを用いる必要がなく、液体の発泡を抑制することができる。
【0084】
さらに、複数の第2孔73の大きさを複数の第1孔63の大きさよりも大きくすることで、複数の第2孔73を通過する流量をオーバフローする流量よりも多くすることができる。
【0085】
これにより、第1貯留部81に流入する液体を液体の勢いを抑えて第2貯留部へ液体を主に流すことができるため、液面L1はより安定しやすくなる。複数の第2孔73を通過する流れとオーバフローする流れとを形成することで、第2貯留部82への液体の勢いを抑制し、液体の発泡をより効果的に抑制することができる。
【0086】
液面L1が安定することで、気液分離管60からクリーンケース20の内部IN20への流量が安定する。さらに、液面L1が安定することで、液面L1を低い位置に設定することができる。液面L1を低い位置に設定することで、気液分離管60の内壁70で囲われている領域P1を気液分離管60の内壁70で囲われていない領域P2よりも小さくすることができる。
【0087】
その結果、気液分離管60の内部における液体の流れが妨げられにくく、液体層85を形成する液体の流れが安定する。
図4に示すように液体層85の厚さW1は、周方向θに均一となりやすい。
【0088】
さらに、液体層85の厚さW1は、
図6に示す厚さW100よりも薄くすることができる。上昇渦流を安定して形成することでサイクロン10の内部IN10における下降渦流の流速が安定し、サイクロン10の内部IN10における液体からの異物の分離精度が向上する。
【0089】
液面L1が安定することで、バルブ34による液面L1の軸方向Dxにおける位置の調整が行いやすくなる。さらに、液面L1が安定することで、クリーンケース20の内部IN20における空気だまり83に相当する部分を小さくすることができるため、クリーンケース20の軸方向Dxの長さを短くして、分離装置1をよりコンパクトにすることができる。
【0090】
本実施形態の分離装置1においては、クリーンケース20が有する底壁22が軸方向Dxに第1排出口14と隔壁26との間に位置している。このため、第2排出口27は、隔壁26よりも下方に設けることができる。第2排出口27が軸方向Dxにおける底壁22と隔壁26との間に位置することで、第2排出口27を導入部40の外周面42と向かい合うように開口させることができる。
【0091】
これにより、第2孔73を通過した液体は、半径方向Drに沿って第2排出口27へ直接流れない。この結果、第2排出口27へ直接液体が流れる際における空気の巻き込みが防止されている。
【0092】
さらに、第2排出口27を液面L1からより離して設けることができるため、液面L1が低下した際における空気の巻き込みを防止し、液体の発泡を抑制することができる。第2排出口27を液面L1から離して設けることで、クリーンケース20の内部IN20に貯留された液体から気泡が抜ける時間を確保することができる。これにより、より気泡を含まない液体を排出管32からクリーンケース20の外部へ排出することができる。
【0093】
本実施形態によれば、液体の発泡をより効果的に抑制することが可能な分離装置1を提供することができる。以上説明した他にも、本実施形態からは種々の好適な作用が得られる。
【0094】
上述の実施形態に係る分離装置1の構成は、一例にすぎない。以下に第1孔63および第2孔73について、変形例を示す。
図7乃至
図9は、第1孔63および第2孔73に適用可能な孔の例を説明するための図である。以下、第1孔63および第2孔73をまとめて、「孔3」と呼ぶ。
【0095】
図7に示すように、孔3の形状は、四角形でもよい。一例として、孔3の形状は、長方形、正方形、ひし形などである。さらに他の例として
図8に示すように、孔3の形状は、スリットのような長孔でもよい。
図8に示す例において孔3は、周方向θに延びる長孔であるが、軸方向Dxに延びる長孔でもよい。
【0096】
さらに他の例として
図9に示すように、孔3は、網目状に形成されてもよい。気液分離管60および内壁70は、例えばメッシュシートによって形成することができる。孔3は、切欠きを含んでもよい。上述のような孔の形状は、第1孔63および第2孔73にそれぞれ適用することができ、第1孔63および第2孔73はそれぞれ同じ形状でもよいし、それぞれ異なってもよい。
【0097】
なお、第1孔63の大きさはすべて同じでもよいし、異なってもよい。第2孔73の大きさはすべて同じでもよいし、異なってもよい。なお、第1孔63および第2孔73の軸方向Dxの間隔は、周方向θの間隔と等しくてもよいし、異なってもよい。分離装置1の各部は、例えば金属材料で形成することができる。ただし、分離装置1は、樹脂などの非金属材料で形成された部材を含んでもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…分離装置、10…サイクロン、11…端部(上端)、12…端部(下端)、13…導入口、14…第1排出口、20…クリーンケース、21…側壁、22…底壁、23…上壁、26…隔壁、27…第2排出口、28…連通孔、60…気液分離管、63…第1孔、70…内壁、73…第2孔、84…空気層。