IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エイムの特許一覧

<>
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図1
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図2
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図3
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図4
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図5
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図6
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図7
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図8
  • 特開-電子部品の取り外し治具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093056
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電子部品の取り外し治具
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
H05K3/34 510
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208458
(22)【出願日】2021-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】500327625
【氏名又は名称】株式会社エイム
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】古家 功一
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB05
5E319AC01
5E319CC22
5E319CD57
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】 基板上に半田付けされた電子部品を容易に取り外すことの可能な電子部品の取り外し治具を提供する。
【解決手段】取り外し治具1は、基板2に当接するように配置される当接部11と、当接部11に接続され、電子部品2側に向けて延出した延出部12と、を備えている。延出部12には、電子部品3が内部に配置される切り欠き部13が形成されている。切り欠き部13は、延出部12の基部側の第1の端部13aと、延出部12の先端側の第2の端部13bと、を有している。第1の端部13a及び第2の端部13bの少なくとも一方には、延出部12の略延出方向に延びるスリット14が形成されている。スリット14が形成された第1の端部13a及び第2の端部13bの少なくとも一方を撓ませることで、電子部品3は、第1の端部13aと第2の端部13bの間で挟持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半田付けされた電子部品の取り外し治具であって、
前記基板に当接するように配置される当接部と、
前記当接部に接続され、前記電子部品側に向けて延出した延出部と、
を備え、
前記延出部には、前記電子部品が内部に配置される切り欠き部が形成されており、
前記切り欠き部は、前記延出部の基部側の第1の端部と、前記延出部の先端側の第2の端部と、を有しており、
前記第1の端部及び前記第2の端部の少なくとも一方には、前記延出部の略延出方向に延びるスリットが形成されており、
前記スリットが形成された第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方を撓ませることで、前記電子部品は、前記第1の端部と前記第2の端部の間で挟持されることを特徴とする取り外し治具。
【請求項2】
前記当接部及び前記延出部は、金属片により一体に形成されており、
前記延出部は、前記当接部との接続を部分的に維持しながら、前記当接部を切り欠いたものであることを特徴とする請求項1に記載の取り外し治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に半田付けされた電子部品の取り外し治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板の第一面と、第一面に半田付けされた電子部品と、の間の空隙に、電子部品が第一面から離れるような付勢力を生じさせる付勢部材を配置し、第一面が下方となるように基板を支持し、半田を加熱することで、基板から電子部品を取り外す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-111753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法は、基板の第一面と、第一面に半田付けされた電子部品と、の間に空隙が設けられていない場合には、使用することができない。
【0005】
そこで、本発明は、基板と電子部品の間に空隙が設けられていない場合であっても、基板上に半田付けされた電子部品を容易に取り外すことの可能な電子部品の取り外し治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板上に半田付けされた電子部品の取り外し治具であって、前記基板に当接するように配置される当接部と、前記当接部に接続され、前記電子部品側に向けて延出した延出部と、を備え、前記延出部には、前記電子部品が内部に配置される切り欠き部が形成されており、前記切り欠き部は、前記延出部の基部側の第1の端部と、前記延出部の先端側の第2の端部と、を有しており、前記第1の端部及び前記第2の端部の少なくとも一方には、前記延出部の略延出方向に延びるスリットが形成されており、前記スリットが形成された第1の端部及び第2の端部の少なくとも一方を撓ませることで、前記電子部品は、前記第1の端部と前記第2の端部の間で挟持されることを特徴とする取り外し治具を提供している。
【0007】
このような構成によれば、電子部品は、電子部品と基板を接続していた全ての半田が溶解した瞬間に取り外されることとなる。特に、基板上に半田付けされた多数の電子部品をリフロー装置等を用いて一括して加熱するような場合に効果的であり、各電子部品に対して取り外し治具を配置してしまえば、半田が溶解するまでの時間だけで全ての電子部品を取り外すことが可能となる。また、撓ませた第1の端部と第2の端部の間で電子部品を挟持する構成であるため、基板と電子部品の間に空隙が設けられていない場合であっても、電子部品を容易に取り外すことが可能である。
【0008】
また、前記当接部及び前記延出部は、金属片により一体に形成されており、前記延出部は、前記当接部との接続を部分的に維持しながら、前記当接部を切り欠いたものであることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、一枚の金属片を切り欠く等の作業のみで、安価かつ容易に取り外し治具を製造することが可能となる。また、一枚の金属片から製造した場合、取り外し治具は非常に軽量なものになるので、半田が溶解した際に、取り外し治具が電子部品と共に落下するように構成した場合でも、取り外し治具から電子部品に与える落下時の衝撃が著しく軽減される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子部品の取り外し治具によれば、基板と電子部品の間に空隙が設けられていない場合であっても、基板上に半田付けされた電子部品を容易に取り外すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による取り外し治具の側面図
図2】本発明の実施の形態による取り外し治具の上面図
図3】本発明の実施の形態による取り外し治具の側面図
図4】本発明の実施の形態による電子部品の取り外し方法のフローチャート
図5】本発明の実施の形態による加熱装置の内部の説明図
図6】本発明の変形例による取り外し治具の上面図
図7】本発明の変形例による取り外し治具の上面図
図8】本発明の変形例による取り外し治具の側面図
図9】本発明の変形例による取り外し治具の上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態による電子部品の取り外し治具1について、図1図5を参照して説明する。
【0013】
本実施の形態による電子部品の取り外し治具1は、図1に示すように、基板2上に半田付けされた電子部品3を取り外すためのものである。
【0014】
本実施の形態では、電子部品3は、リードのない電極パッド型のものであり、電子部品3の電極パッド(図示せず)が基板2上のパッド(図示せず)に直接半田付けされている。従って、基板2と電子部品3の間には、空隙が設けられていないこととなる。電子部品3としては、例えば、ICパッケージが考えられる。
【0015】
図1及び図2に示すように、取り外し治具1は、当接部11と、延出部12と、を備えている。
【0016】
本実施の形態では、当接部11及び延出部12は、金属片により一体に形成されているものとする。金属片は、可撓性を有するように、その材質及び厚みが選択されている。また、金属片は、半田と接合されない(されにくい)材質が好ましく、例えば、ステンレスが考えられる。
【0017】
当接部11は、基板2に当接するように配置される。本実施の形態では、当接部11は、図1に示すように、その面が基板2に対向かつ当接するように配置される。
【0018】
延出部12は、当接部11に接続され、電子部品3側に向けて延出している。
【0019】
本実施の形態では、延出部12は、当接部11との接続を部分的に維持しながら、当接部11を切り欠いたものである。図2では、略四角形状の当接部11及び延出部12を示している。
【0020】
なお、延出部12は、使用前には、当接部11と同一平面上に位置していて、使用時に、図1に示すように、当接部11から斜め上方に延出させる構成であっても良い。
【0021】
図2に示すように、延出部12には、電子部品3が内部に配置される切り欠き部13が形成されており、切り欠き部13は、延出部12の基部側の第1の端部13aと、延出部12の先端側の第2の端部13bと、を有している。図2では、切り欠き部13は、延出部12の略中央部を略四角形状にくり抜いた例を示している。以下では、略四角形状を有する切り欠き部13の第1の端部13a及び第2の端部13b以外の一対の辺を一対の辺13cと称す。
【0022】
なお、後述するように、第2の端部13bを撓ませることで、第2の端部13bは、図1及び図2に示す位置に配置されるが、第2の端部13bを撓ませていない状態では、図3に示すように、切り欠き部13の第1の端部13a-第2の端部13b間の水平方向(図3における左右方向)の長さは、電子部品3の同方向における長さよりも短くなるように設計されている。
【0023】
第1の端部13a及び第2の端部13bの少なくとも一方には、延出部12の略延出方向に延びるスリット14が形成されている。図2では、第2の端部13b側にのみ、一対の辺13cに連続するように、一対のスリット14が形成されている。
【0024】
このような構成の下、取り外し治具1は、第1の端部13aと第2の端部13bの間で電子部品3を挟持するものであるが、図3に示すように、切り欠き部13の第1の端部13a-第2の端部13b間の水平方向の長さは、電子部品3の同方向における長さよりも短く設計されているので、そのままでは、第1の端部13aと第2の端部13bの間に電子部品3を配置することができない。
【0025】
しかしながら、本実施の形態では、切り欠き部13の第2の端部13bに、延出部12の略延出方向に延びるスリット14が形成されているので、図1に示すように、第2の端部13bを撓ませることが可能である。これにより、切り欠き部13の第2の端部13bが下方に延びた状態となり、結果として、第1の端部13a-第2の端部13b間の長さが広がることとなる。そして、この長さが広がった状態の第1の端部13a-第2の端部13b間に電子部品3を配置した後、手を離すことで、電子部品3が挟持されることとなる。
【0026】
なお、電子部品3の挟持状態を安定させるために、切り欠き部13の一対の辺13c間の長さは、電子部品3の同方向の長さと略同一であることが好ましい。
【0027】
続いて、図4のフローチャートを用いて、本実施の形態による取り外し治具1を用いた電子部品3の取り外し方法について説明する。
【0028】
まず、当接部11を基板2に当接するように配置する(S1)。この際、電子部品3上に切り欠き部13が位置するように配置する。
【0029】
続いて、第2の端部13bを撓ませることで、第1の端部13aと第2の端部13bの間で電子部品3を挟持させる(S2)。
【0030】
続いて、基板2を加熱装置4内の支持部41に、電子部品3が半田付けされた面が下方となるように支持させる(S3)。
【0031】
加熱装置4としては、図5に示すように、内部にベルトコンベア等の移動装置5が設けられたリフロー装置等が考えられる。
【0032】
支持部41は、移動装置5上に配置され、基板2は、支持部41上に載置される。基板2が支持部41上に略水平に載置された状態で、基板2(電子部品3)と移動装置5の搬送面との間には、電子部品3が落下するための空間が設けられている。
【0033】
最後に、加熱装置4による間接的な加熱、及び、移動装置5の移動を開始させる(S4)。
【0034】
ここで、電子部品3が重力方向を向くように基板2を配置して加熱するだけでは、電子部品3(特に表面面積の大きい電子部品)は、溶解した半田の表面張力により容易には落下せず、電子部品3及び基板2は長時間の加熱に晒されることとなるため、再利用を視野に入れた電子部品3及び基板2に対する取り外し方法としては適していない。
【0035】
しかしながら、本実施の形態では、第2の端部13bを撓ませることで、電子部品3は、第1の端部13aと第2の端部13bの間で挟持され、この第2の端部13bの撓みに伴い、第2の端部13bから電子部品3に弾性力が加わる。また、当接部11が基板2に当接するように配置されているので、上記弾性力は、基板2からの反力により、上方(電子部品3が基板2から離れる方向)に向けて指向されることとなる。
【0036】
このような構成により、電子部品3は、電子部品3と基板2を接続していた全ての半田が溶解した瞬間に落下するので、電子部品3や基板2を長時間の加熱に晒すことなく、電子部品3を基板2から容易に取り外すことが可能となる。なお、この際、取り外し治具1は、電子部品3と共に落下することとなる。
【0037】
特に、加熱の開始から所定時間経過で基板2が加熱装置4内から外部に移動するように、加熱装置4及び移動装置5は設定されており、所定時間は、加熱する工程において半田が溶解してから、取り外し治具1が配置されていない場合に溶解した半田の表面張力に抗して電子部品3が落下するより前の時間であることが好ましい。“取り外し治具1が配置されていない場合に溶解した半田の表面張力に抗して電子部品3が落下する”時間としては、多数の同一の電子部品3に同一の取り外し治具1を取り付けた場合の最速の落下時間、平均の落下時間、最遅の落下時間等の実験値を用いることが考えられる。
【0038】
これにより、電子部品3及び基板2を加熱に晒す時間及び加熱温度を必要最小限にすることが可能となり、電子部品3及び基板2の品質の劣化を抑制すること可能となる。また、電子部品3及び基板2が直接的に加熱されないので、電子部品3及び基板2の品質の劣化は更に抑制される。更に、基板2は、加熱装置4内でその全体が加熱されるので、基板2が収縮して反ってしまうことも抑制される。
【0039】
本願の発明者の実験によると、従来のリワーク装置で電子部品を1つずつ取り外していくと、1個当たり10分程度の時間がかかるところ、上記方法によれば、取り外し治具1を配置してしまえば(数秒程度)、半田が溶解するまでの時間(5分程度)で電子部品3を取り外すことができた。特に、基板2上に多数の電子部品3が半田付けされている場合、従来のリワーク装置では、約10分×電子部品の個数分の時間がかかるところ、上記方法によれば、電子部品3の個数に限らず、5分程度の時間で全ての電子部品3を取り外すことができた。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態による取り外し治具1では、第2の端部13bを撓ませることで、電子部品3は、第1の端部13aと第2の端部13bの間で挟持される。
【0041】
このような構成によれば、電子部品3は、電子部品3と基板2を接続していた全ての半田が溶解した瞬間に取り外されることとなる。特に、基板2上に半田付けされた多数の電子部品3をリフロー装置等を用いて一括して加熱するような場合に効果的であり、各電子部品3に対して取り外し治具1を配置してしまえば、半田が溶解するまでの時間だけで全ての電子部品3を取り外すことが可能となる。また、撓ませた第1の端部13aと第2の端部13bの間で電子部品3を挟持する構成であるため、基板2と電子部品3の間に空隙が設けられていない場合であっても、電子部品3を容易に取り外すことが可能である。
【0042】
また、本実施の形態による取り外し治具1では、当接部11及び延出部12は、金属片により一体に形成されており、延出部12は、当接部11との接続を部分的に維持しながら、当接部11を切り欠いたものである。
【0043】
このような構成によれば、一枚の金属片を切り欠く等の作業のみで、安価かつ容易に取り外し治具1を製造することが可能となる。また、一枚の金属片から製造した場合、取り外し治具1は非常に軽量なものになるので、半田が溶解した際に、取り外し治具1が電子部品3と共に落下するように構成した場合でも、取り外し治具1から電子部品3に与える落下時の衝撃が著しく軽減される。
【0044】
尚、本発明の電子部品の取り外し治具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0045】
例えば、当接部11及び延出部12の形状としては、図6及び図7に示すように、様々なものが考えられる。
【0046】
また、スリット14は、第1の端部13a側だけに形成されていても良いし、図6及び図7に示すように、第1の端部13a側にも形成されていても良い。この場合、例えば、図6の取り外し治具1の側面図である図8に示すように、当接部11は基板2に少ない面積で当接するので、基板2上に取り外し治具1を配置するスペースが狭い場合であっても取り外し治具1を使用することが可能である。
【0047】
また、切り欠き部13は、延出部12の略中央部を略四角形状にくり抜いた例を示したが、図9に示すように、端部を切り欠いたものであっても良い。
【0048】
また、上記実施の形態では、電子部品3として、リードのない(空隙が設けられない)電極パッド型のICパッケージを例に説明したが、リードのある(空隙が設けられる)電子部品やICパッケージ以外の電子部品に対しても使用可能である。
【0049】
また、上記実施の形態では、半田が接合されない(されにくい)金属として、ステンレスを挙げたが、例えば、半田が鉛フリーのステンレス用のものの場合、他の金属を使用することが好ましい。
【符号の説明】
【0050】
1 取り外し治具
2 基板
3 電子部品
4 加熱装置
5 移動装置
11 当接部
12 延出部
13 切り欠き部
13a 第1の端部
13b 第2の端部
13c 辺
14 スリット
41 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9