(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093058
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20230627BHJP
G01B 5/30 20060101ALI20230627BHJP
G01N 3/06 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
G01N3/08
G01B5/30
G01N3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208461
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊介
【テーマコード(参考)】
2F062
2G061
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062EE04
2F062EE63
2F062FF03
2F062GG37
2G061AA01
2G061AB01
2G061CC16
2G061DA12
2G061DA19
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により、一対の掴み具と一対のアームの位置関係を、適切に変更できる材料試験機を提供する。
【解決手段】材料試験機(1)は、一対の掴み具(38、39)により両端を把持した試験片(T)に試験力を負荷する負荷機構(35)と、試験片(T)に設けた一対の標線(M1、M2)に一対のアーム(80、90)を固定して一対の標線(M1、M2)間の伸びを測定する伸び測定装置(70)と、を備える材料試験機(1)において、伸び測定装置(70)は、負荷機構(35)の動きと連動して一対のアーム(80、90)を押動し、一対のアーム(80、90)を一対の掴み具(38、39)間に位置決めする位置決め機構(100)を備え、位置決め機構(100)は、試験片(T)の長さに応じて一対のアーム(80、90)の押動量(U1、U2)を調整するアクチュエータ(102)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の掴み具により両端を把持した試験片に試験力を負荷する負荷機構と、前記試験片に設けた一対の標線に一対のアームを固定して前記一対の標線間の伸びを測定する伸び測定装置と、を備える材料試験機において、
前記伸び測定装置は、前記負荷機構の動きと連動して前記一対のアームを押動し、前記一対のアームを前記一対の掴み具間に位置決めする位置決め機構を備え、
前記位置決め機構は、前記試験片の長さに応じて前記一対のアームの押動量を調整するアクチュエータを備える、材料試験機。
【請求項2】
前記位置決め機構は、前記負荷機構に連結された連結フレームと、前記連結フレームに支持された前記アクチュエータと、前記アクチュエータに連結された衝撃吸収部材と、を備える、請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記一対のアーム間の中心位置を前記試験片の一対の標線間の中心位置に一致させるように、前記一対のアームの押動量を調整する、請求項1又は2に記載の材料試験機。
【請求項4】
前記試験片を収納する試験片収納装置と、前記試験片収納装置から前記試験片を取り出して、前記試験片を前記負荷機構に受け渡す搬送装置と、前記試験片の長さ情報を取得して、前記長さ情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する制御装置と、を備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載の材料試験機。
【請求項5】
前記位置決め機構は、前記一対のアームを前記一対の掴み具間に位置決めする場合、前記一対の掴み具のうちの上掴み具を下掴み具に向けて移動させる、請求項1乃至4の何れか一項に記載の材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験片に設けた一対の標線に一対のアームを固定して一対の標線間の伸びを測定する伸び測定装置を備える材料試験機が提案されている(特許文献1)。
この伸び測定装置は、引張試験を行う際に、一対のアームを一対のパルスモータで駆動して、一対のアームを一対の掴み具間の任意の位置に位置決めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の伸び測定装置は、一対のアームを一対のパルスモータで駆動するため、駆動系の構成が複雑化するという課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、一対の掴み具と一対のアームの位置関係を、適切に変更できる材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、一対の掴み具により両端を把持した試験片に試験力を負荷する負荷機構と、前記試験片に設けた一対の標線に一対のアームを固定して前記一対の標線間の伸びを測定する伸び測定装置と、を備えた材料試験機において、前記伸び測定装置は、前記負荷機構の動きと連動して前記一対のアームを押動し、前記一対のアームを前記一対の掴み具間に位置決めする位置決め機構を備え、前記位置決め機構は、前記試験片の長さに応じて前記一対のアームの押動量を調整するアクチュエータを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、位置決め機構は、試験片の長さに応じて一対のアームの押動量を調整するアクチュエータを備えるため、簡単な構成により、一対の掴み具と一対のアームの位置関係を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】伸び測定装置と試験装置の要部を示す側面図である。
【
図3】伸び測定装置と試験装置の要部を示す斜視図である。
【
図5】
図2、
図4で説明した試験片よりも長さが短い試験片を試験する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0009】
[1.実施形態]
図1は、実施形態に係る材料試験機1の図である。
本実施形態の「材料試験機」の一例としての材料試験機1は、試験片Tに対して試験力としての試験荷重を付与することにより、試験片Tの引張力及び伸びを測定する。
【0010】
材料試験機1は、試験片供給装置10と、試験装置30と、試験片回収装置50と、伸び測定装置70と、制御装置200と、を備える。
【0011】
試験片供給装置10は、パレット11に試験片Tを収容した状態で収納する試験片収納装置12と、試験片Tの測寸を行う測寸装置14と、試験片収納装置12からパレット11が搬送される搬送台13と、搬送台13に供給されたパレット11から試験片Tを試験装置30に搬送する搬送装置20と、を備える。
【0012】
試験片収納装置12は、試験片Tが収められた複数のパレット11を、例えば、上下に重ねて収納する。
【0013】
試験装置30は、試験片供給装置10から供給された試験片Tに試験荷重を付与して試験片Tを試験する。
ここで、本実施形態では、
図1に示す試験装置30を基準にして、前後方向FD(
図2,
図3参照)、幅方向SD、および上下方向TDを使用する。なお、幅方向SDは、左右方向ともいう。
【0014】
試験装置30は、台座31を有する。台座31の上部にはテーブル32が設けられている。テーブル32には、鉛直方向上方に延びる支柱33が立設されている。支柱33は、試験装置30の幅方向SDに一対設けられている。支柱33の上部には、一対の支柱33の間に延びるクロスヨーク34が架け渡されている。支柱33の内部には、図示しないねじ棒が設けられている。ねじ棒はボールネジで構成されている。ねじ棒には、クロスヘッド35の両端が図示しないナットを介して連結されている。クロスヘッド35は、ねじ棒の回転によりテーブル32に対して昇降する。なお、ねじ棒は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0015】
クロスヘッド35には、ロードセル36が設置されている。ロードセル36には、継手37が取り付けられる。継手37は、下方に延びている。継手37の下端には、上掴み具38が接続されている。上掴み具38には、不図示のシリンダ装置が配置されている。不図示のシリンダ装置が作動することにより、上掴み具38は幅方向SDに開閉される。上掴み具38には、起立された状態の試験片Tの上側の端部が掴まれる。試験片Tは、上掴み具38の掴み中心L上に配置される。
【0016】
上掴み具38の下方には、下掴み具39が配置される。下掴み具39は、接手40を介してテーブル32の上面に固定される。下掴み具39は、上掴み具38に対して上下対称に構成されること以外は、上掴み具38と同様に構成される。下掴み具39には、起立された状態の試験片Tの下側の端部が掴まれる。試験片Tは、下掴み具39の掴み中心L上に配置される。
【0017】
上掴み具38及び下掴み具39によって試験片Tが掴まれた状態で、上掴み具38がクロスヘッド35と共に昇降する。これにより、上掴み具38と下掴み具39との間に掴まれた試験片Tには、試験力が付与される。この際に、ロードセル36は、継手37を介して、上掴み具38が付与する試験力を計測する。ロードセル36の計測信号は制御装置200に入力される。
【0018】
上掴み具38及び下掴み具39の右側には、試験片回収装置50が配置されている。試験片回収装置50は、試験装置30から試験片Tを回収する。
試験片回収装置50は、上掴み具38に対応して設けられた上部回収装置51と、下掴み具39に対応して設けられた下部回収装置61とを備える。上部回収装置51は、クロスヘッド35に固定されており、クロスヘッド35と共に昇降可能である。下部回収装置61は、テーブル32の上面に固定されている。
【0019】
図2は、伸び測定装置70と試験装置30の要部を示す側面図である。
材料試験機1は、試験装置30により試験力が付与される際に、試験片Tの伸びを計測する伸び測定装置70を備える。本実施形態の伸び測定装置70は、試験片Tにアーム80、90が接触して伸びを計測する接触式伸び計である。
伸び測定装置70は、クロスヘッド35の後方(
図1の紙面裏側)に配置される。伸び測定装置70は、例えば、試験装置30のテーブル32の上面に固定される。伸び測定装置70は、上下方向TDに延びる外装フレーム71を備える。外装フレーム71の前方には、ガイドロッド72が支持される。ガイドロッド72は、試験装置30の支柱33(
図1参照)に沿って延びる。ガイドロッド72には、上アーム80と下アーム90とが摺動可能に支持される。上アーム80と下アーム90とは、試験装置30の上掴み具38と下掴み具39との間に配置される。
【0020】
外装フレーム71の上端部内部には、アーム80、90のそれぞれに対応して、一対のプーリー73A、73Bが回転可能に支持される。各プーリー73A、73Bには、連結部材の一例としてのベルト75A、75Bが上方から巻き掛けられている。ベルト75A、75Bの一端は、アーム80、90に連結される。ベルト75A、75Bの他端には、バランスウエイト76A、76Bが吊り下げられる。バランスウエイト76A、76Bは、対応するアーム80、90の重さに対応する重さに設定される。バランスウエイト76A、76Bは、ベルト75A、75Bを介しアーム80、90の重さを打ち消す力をアーム80、90に作用させる。これにより、アーム80、90は、上下方向TDの外力が作用すると、その外力に応じてガイドロッド72に沿って上下方向TDに移動し易くなる。
【0021】
各プーリー73A、73Bには、ロータリーエンコーダー74A、74Bが接続される。ロータリーエンコーダー74A、74Bは、プーリー73A、73Bの回転量を検出する。ここで、アーム80、90が上下方向TDに移動する場合には、ベルト75A、75Bを介してプーリー73A、73Bが回転する。よって、プーリー73A、73Bの回転量がロータリーエンコーダー74A、74Bにより計測され制御装置200に入力されることにより、制御装置200では、プーリー73A、73Bの回転量に基づいて、アーム80、90の移動量が計測可能になっている。
【0022】
図3は、伸び測定装置70と試験装置30の要部を示す斜視図である。
上アーム80は、ガイドロッド72に摺動自在に支持される摺動部81を有する。摺動部81は、例えば、リニアブッシュを介してガイドロッド72に支持される。摺動部81には、前方に延びる一対の挟持部材82が支持される。挟持部材82は、基端側が、上下に延びるヒンジ軸(不図示)を中心に回動可能に支持され、先端側が開閉可能に構成される。一対の挟持部材82の下部には、引張ばね(弾性部材)83が跨った状態で取り付けられる。引張ばね83により、挟持部材82が閉じ方向に付勢される。一対の挟持部材82の上部には、被押圧ローラー84が設けられる。被押圧ローラー84間には、シリンダ機構85が配置される。
【0023】
シリンダ機構85は、エアシリンダで構成される。シリンダ機構85は、円錐状のロッド先端部85Aを有する。ロッド先端部85Aが被押圧ローラー84間に進入することにより、引張ばね83の弾性力に抗して挟持部材82を押し広げて開放させる。また、ロッド先端部85Aを被押圧ローラー84間から後退させることにより、引張ばね83の弾性力により挟持部材82を閉じさせる。シリンダ機構85により、挟持部材82が閉じられることで、上アーム80が試験片Tを挟持して試験片Tに固定される。
本実施形態では、上アーム80には、板状の押圧受部86(
図2参照)が形成される。
【0024】
下アーム90は、上アーム80と略上下対称に構成される。詳細には、下アーム90は、上アーム80の部材81~85に対応する部材91~95を有する。
また、下アーム90には、下方に凹んだ着脱孔を有する着脱部92Aが形成されている。着脱部92Aには、上下方向TDに延びるカラー96が着脱可能に支持される。カラー96は、試験片Tの標線間距離λ1、λ2(
図4,
図5参照)に応じる長さを有するように構成された棒である。カラー96の上面に上アーム80が当接することにより、上アーム80と下アーム90との間が標線間距離λ1、λ2に保持される。
【0025】
本実施形態では、試験片Tの長さに対応する、長さの異なる複数のカラー96が準備されており、カラー96が選択的に使用される。これにより、上アーム80および下アーム90の間隔を所定の標線間距離λ1、λ2に設定することができる。
【0026】
ガイドロッド72の下部には、ストッパ77が固定される。ストッパ77は、クランプ構造を有する。ストッパ77は、ガイドロッド72をクランプすることにより、ガイドロッド72の所定の高さに固定される。所定の高さは、下掴み具39の高さに応じた高さである。ストッパ77は、その上面が、下アーム90に接触して下アーム90の下方への移動を規制する。ストッパ77は、下アーム90の下限位置を設定する。
【0027】
ストッパ77の上面には、所定の厚みを有する板状のアジャスター78が着脱可能に支持される。アジャスター78は、例えば、ガイドロッド72に嵌合する略C字板状に形成される。アジャスター78がガイドロッド72に嵌合してストッパ77の上面に支持される。これにより、ストッパ77は、アジャスター78の厚み分だけ、上面が嵩上げされた状態となる。すなわち、アジャスター78は、ストッパ77により設定された下アーム90の下限位置を変更可能に調節する部材である。
【0028】
本実施形態では、試験片Tの下側の標線M2と下掴み具39との距離D1、D2(
図4、
図5参照)に対応させて、高さが異なる複数のアジャスター78が準備されており、アジャスター78が選択的に使用される。なお、ストッパ77に対してアジャスター78が選択的に配置されるとは、ストッパ77に対してアジャスター78が配置されない場合も含んだ意味で使用する。これにより、ストッパ77をアンクランプ、クランプして、下掴み具39に対してストッパ77の位置を調整する場合に比べて、容易に下アーム90の下限位置を調整可能になっている。
ストッパ77と、アジャスター78とにより、本実施形態の下アーム90のストッパ機構79が構成される。
【0029】
図2および
図3に示すように、上アーム80の上方に位置するクロスヘッド(負荷機構)35には、位置決め機構100が設けられる。
位置決め機構100は、クロスヘッド35に連結された連結フレーム101を有する。連結フレーム101は、クロスヘッド35から下方に延びる折り曲げ板状である。連結フレーム101には、三角板状のリブ101Aが支持されている。リブ101Aにより、折り曲げ板状の連結フレーム101の剛性が確保される。連結フレーム101の下端には、アクチュエータ102が支持される。
【0030】
アクチュエータ102は、本実施形態では、エアシリンダで構成される。アクチュエータ102は、シリンダ部102Aと、シリンダ部102Aに対して上下方向TDに伸縮可能に支持されるロッド部102Bとを備える。
【0031】
ロッド部102Bには、折り曲げ板状の接続板103を介して、押圧機構(衝撃吸収部材)104が連結される。
押圧機構104は、クロスヘッド35と共に一体に降下し、上アーム80の押圧受部86に接触すると押圧受部86を下方に押す。押圧機構104は、本実施形態では、エアシリンダにより構成される。押圧機構104は、接続板103に固定されたシリンダ部104Aと、シリンダ部104Aに対して上下方向TDに伸縮可能に支持されたロッド部104Bと、ロッド部104Bの下端に支持された押圧子104Cと、を備える。押圧子104Cは、下端が上掴み具38よりも下方に配置される。
【0032】
押圧機構104では、アクチュエータ102がロッド部102Bを保持する力よりも小さい力でロッド部104Bを保持する。押圧機構104は緩衝機構として機能する。
【0033】
図1に示すように、材料試験機1には、材料試験機1の各部を制御する制御装置200が配置される。制御装置200は、材料試験機1との間で信号を送受信可能に接続される。制御装置200が受信する信号は、ロードセル36が出力する計測信号や、ロータリーエンコーダー74A、74Bが出力する計測信号、制御や試験に要する適宜の信号である。制御装置200が送信する信号は、試験片供給装置10の制御信号、掴み具38、39の図示しないシリンダ装置の制御信号や、図示しないネジ棒のモータの制御信号、回収装置51、61の制御信号、アクチュエータ102の図示しないシリンダ装置の制御信号、その他の制御や試験に要する適宜の信号である。
【0034】
制御装置200はコンピュータを備え、このコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイスと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置と、制御装置200や各種の周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、を備える。そして、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶された制御プログラムを実行することで、材料試験機1の各種の機能を実現する。
【0035】
制御装置200は、各試験片Tの長さ情報を記憶する。ここで、パレット11毎に同一規格の試験片Tを収容してパレット11毎に試験片Tの規格を変更する場合には、パレット11毎に試験片Tの長さを記憶してもよい。試験開始前に、作業者が制御装置200に入力することにより各試験片Tの長さを制御装置200に記憶させることができる。
【0036】
制御装置200は、例えば、試験片の長さに対応する参照情報に基づいて、これらの降下量と押動量とを取得する。そして、制御装置200は、搬送装置20から上掴み具38に試験片Tが受け渡された場合に、クロスヘッド35を試験片Tの長さに応じた降下量、降下させる。また、制御装置200は、搬送装置20から上掴み具38に試験片Tが受け渡された場合に、アクチュエータ102を試験片Tの長さに応じた押動量U1、U2(
図4、
図5参照)となるように制御する。試験片Tの長さに代えて、試験片Tの降下量と押動量とを記憶してもよい。
なお、伸び測定装置70では、試験開始前に、ストッパ機構79においては、アジャスター78が選択的に配置される。また、下アーム90には、カラー96が選択的に装着される。
【0037】
図4は、試験片Tを試験する場合の説明図である。
図5は、
図2、
図4で説明した試験片Tよりも長さが短い試験片Tを試験する場合の説明図である。
図2、
図4、
図5を参照し、実施形態の作用を説明する。
試験開始の所定の操作が入力されると、試験片供給装置10では、搬送装置20が、回動アーム26(
図1参照)に支持された吸着パッド29により、パレット11から試験片Tを一片ずつ取り出して保持し、
図2に示すように、試験片Tを試験装置30の上掴み具38に供給し、上掴み具38に掴ませる。
【0038】
次に、クロスヘッド35を降下させて、試験片Tが把持された上掴み具38を下掴み具39に向けて移動させる。クロスヘッド35の降下とともに、位置決め機構100を構成する連結フレーム101、アクチュエータ102及び押圧機構104が一体となって降下し、やがて押圧機構104が上アーム80に当接する。押圧機構104が上アーム80に当接した後、クロスヘッド35の降下を継続すると、上アーム80が降下を開始し、上アーム80がカラー96に当接する。更に、クロスヘッド35の降下を継続すると、上アーム80がカラー96を介して下アーム90を押下げ始め、下アーム90が上アーム80と一体となって降下を開始する。そして、クロスヘッド35は所定の降下量だけ降下して停止し、
図4に示すように、下掴み具39に試験片Tが進入して下掴み具39が試験片Tを掴む。下アーム90はストッパ機構79に当たって停止する。
【0039】
このとき、伸び測定装置70では、上アーム80および下アーム90の位置が試験片Tの標線M1、M2の位置に一致し、一対の掴み具38、39の中心位置M0に対して上下に均等な位置で、上アーム80の挟持部材82および下アーム90の挟持部材92を閉じて試験片Tが固定される。これにより、アーム80、90は、試験片Tの伸びに応じて標線M1、M2に追従可能となる。
なお、押圧機構104は、緩衝機構として機能するため、下アーム90がストッパ機構79に当接してクロスヘッド35が降下を停止しても、上アーム80などを過剰に押すことが抑制される。
伸び測定装置70では、試験装置30のクロスヘッド35の移動を利用して、上アーム80および下アーム90を標線M1、M2に移動させて位置決めすることができる。
【0040】
図5は、
図2、
図4で説明した試験片Tよりも長さが短い試験片Tを試験する場合の説明図である。試験片Tの長さが短い場合には、一対の掴み具38、39間の距離L2は、
図4に示す距離L1よりも短くなる。また、試験片Tの標線間距離λ2は、
図4に示す標線間距離λ1よりも短くなり、一対のアーム80、90間の距離が短くなる。
本実施形態では、アクチュエータ102を備える位置決め機構100を備えるため、この位置決め機構100により、試験片Tの長さに応じて一対のアーム80、90の押動量を調整する。具体的には、押圧機構104の押圧子104Cの位置が上掴み具39に対して距離U2となるように調整する。この際には、ストッパ機構79においては、アジャスター78が選択的に配置される。また、下アーム90には、カラー96が選択的に装着される。
【0041】
これにより、クロスヘッド35が試験片Tの長さに応じて所定の降下量だけ降下すると、伸び測定装置70では、掴み具38、39に対して異なる位置に上アーム80および下アーム90を移動させて、長い試験片Tとは異なる標線M1、M2に一致させることができる。よって、上アーム80および下アーム90が短い長さの標線M1,M2に固定できる。
よって、本実施形態では、位置決め機構100は、試験片Tの長さに応じて一対のアーム80、90の押動量を調整するアクチュエータ102を備えるため、伸び測定装置70では、構成が簡素化されており、簡単な構成により、一対の掴み具38、39と一対のアーム80、90の位置関係を変更できる。
【0042】
試験片Tに試験力が付与される際には、押圧機構104では、ロッド部104Bを縮めて押圧子104Cを上アーム80の押圧受部86から離間させる。これにより、試験力の負荷時に、押圧子104Cが上アーム80を拘束しない状態にできる。
そして、クロスヘッド35が上昇して、上掴み具38が下掴み具39に対して離間することにより、試験片Tには引張荷重が付与される。これに伴い、試験片Tは上掴み具38に引っ張られて上方に延びる。このとき、下アーム90は標線M2の移動に追従して上方に移動し、ストッパ機構79から離間する。また、上アーム80は標線M1の移動に追従して上方に移動し、カラー96から離間する。押圧機構104は、クロスヘッド35と共に上昇する。材料試験機1では、試験片Tの引張荷重が計測されると共に、試験時のアーム80、90間の距離の変動により試験片Tの伸びが計測される。
また、
図2に示すように、ストッパ機構79、下アーム90、上アーム80、および、押圧機構104は、上下方向TDに互いに離れ、上アーム80および下アーム90が位置決め機構100により押すことが可能な位置に戻る。なお、押圧機構104では、縮められていたロッド部104Bが伸ばされ、押圧子104Cが上アーム80を押すための位置に戻される。
【0043】
[2.変形例]
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、および応用が可能である。
【0044】
上述した実施形態において、アクチュエータ102は、エアシリンダで構成され、ロッド部102Bが二段階に位置が切り替わる構成を説明したが、任意の位置に調整可能な構成でもよい。例えば、アクチュエータ102を、電動シリンダで構成して、任意の押動量に調整可能な構成にしてもよい。
【0045】
上述した実施形態において、押圧機構104を設けていたが、アクチュエータ102のロッド部102Bで直接、上アーム80を押してもよい。
【0046】
上述した例示的な実施形態、及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0047】
(第1項)
一態様に係る材料試験機は、一対の掴み具により両端を把持した試験片に試験力を負荷する負荷機構と、前記試験片に設けた一対の標線に一対のアームを固定して前記一対の標線間の伸びを測定する伸び測定装置と、を備える材料試験機において、前記伸び測定装置は、前記負荷機構の動きと連動して前記一対のアームを押動し、前記一対のアームを前記一対の掴み具間に位置決めする位置決め機構を備え、前記位置決め機構は、前記試験片の長さに応じて前記一対のアームの押動量を調整するアクチュエータを備えてもよい。
【0048】
第1項に記載の材料試験機によれば、位置決め機構は、試験片の長さに応じて一対のアームの押動量を調整するアクチュエータを備えるため、簡単な構成により、一対の掴み具と一対のアームの位置関係を変更できる。
【0049】
(第2項)
第1項に記載の材料試験機において、前記位置決め機構は、前記負荷機構に連結された連結フレームと、前記連結フレームに支持された前記アクチュエータと、前記アクチュエータに連結された衝撃吸収部材と、を備えてもよい。
【0050】
第2項に記載の材料試験機によれば、アクチュエータの接触に伴うアームに対する衝撃を緩衝できる。
【0051】
(第3項)
第1項又は第2項に記載の材料試験機において、前記一対のアーム間の中心位置を前記試験片の一対の標線間の中心位置に一致させるように、前記一対のアームの押動量を調整してもよい。
【0052】
第3項に記載の材料試験機によれば、試験片にバランスよくアームを固定できる。
【0053】
(第4項)
第1項乃至第3項の何れか一項に記載の材料試験機において、前記試験片を収納する試験片収納装置と、前記試験片収納装置から前記試験片を取り出して、前記試験片を前記負荷機構に受け渡す搬送装置と、前記試験片の長さ情報を取得して、前記長さ情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する制御装置と、を備えてもよい。
【0054】
第4項に記載の材料試験機によれば、アクチュエータの制御を自動化でき、長さが異なる試験片の伸びを容易に計測し易くできる。
【0055】
(第5項)
第1項乃至第4項の何れか一項に記載の材料試験機において、前記位置決め機構は、前記一対のアームを前記一対の掴み具間に位置決めする場合、前記一対の掴み具のうちの上掴み具を下掴み具に向けて移動させてもよい。
【0056】
第5項に記載の材料試験機によれば、重力方向にアームを移動させて位置決めできる。
【0057】
第5項に記載の材料試験機において、前記試験片を収納する試験片収納装置と、前記試験片収納装置に収納された試験片を取り出して前記試験片を前記負荷機構の前記上掴み具に搬送する搬送装置と、を備えてもよい。
この材料試験機によれば、試験開始時の負荷機構の移動を利用して一対のアームを位置決めできる。
【符号の説明】
【0058】
1 材料試験機
12 試験片収納装置
20 搬送装置
35 クロスヘッド(負荷機構)
38 上掴み具
39 下掴み具
70 伸び測定装置
80 上アーム
90 下アーム
100 位置決め機構
101 連結フレーム
102 アクチュエータ
104 押圧機構(衝撃吸収部材)
M0 標線間の中心位置
M1、M2 標線
T 試験片
U1、U2 押動量