(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093083
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】分散アンテナシステム、通信装置、スリープ制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20230627BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20230627BHJP
【FI】
H04W52/02 111
H04W16/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208489
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】日岡 聖
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067DD11
5K067DD27
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH21
(57)【要約】
【課題】子局装置の使用状態に応じた適切なスリープ制御を実現する技術を提供する。
【解決手段】実施形態に係る分散アンテナシステムは、アンテナを介して無線端末と無線信号を送受信する少なくとも1つの送受信ユニットを備える1台以上の子局装置と、前記子局装置と直接または中継装置を介して前記無線信号を送受信する親局装置とを具備する。前記子局装置は、前記無線端末との間の前記無線信号の送受信状態を判定して、その判定結果を表す判定情報を前記親局装置に通知する判定部を備える。前記親局装置は、前記判定情報に基づいて、前記無線信号の送受信が行われる状態では前記送受信ユニットを動作可能モードに設定し、一方前記無線信号の送受信が行われない状態では前記送受信ユニットの少なくとも一部をスリープモードに設定するべく、前記子局装置を制御する制御部を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを介して無線端末と無線信号を送受信する少なくとも1つの送受信ユニットを備える1台以上の子局装置と、
前記子局装置と直接または中継装置を介して前記無線信号を送受信する親局装置と
を具備し、
前記子局装置は、前記送受信ユニットによる前記無線信号の送受信状態を判定して、その判定結果を表す判定情報を前記親局装置に通知する判定部を備え、
前記親局装置は、前記判定情報に基づいて、前記無線信号の送受信が行われる状態では前記送受信ユニットを動作可能モードに設定し、一方前記無線信号の送受信が行われない状態では前記送受信ユニットの少なくとも一部をスリープモードに設定するべく、前記子局装置を制御する制御部を備える
分散アンテナシステム。
【請求項2】
前記子局装置の前記判定部は、前記無線端末から送信される前記無線信号の受信品質を表す指標を検出し、検出された前記指標が予め設定された条件を満たすか否かを判定して、その判定結果を前記判定情報として前記親局装置に通知し、
前記親局装置の制御部は、前記判定情報に基づいて、前記無線信号の送受信が行われない状態では前記送受信ユニットの受信機能部をスリープモードに設定するべく、前記子局装置を制御する、請求項1に記載の分散アンテナシステム。
【請求項3】
アンテナを介して無線端末と無線信号を送受信する少なくとも1つの送受信ユニットを備える1台以上の子局装置と、前記子局装置と直接または中継装置を介して前記無線信号を送受信する親局装置とを具備する分散アンテナシステムにおいて、前記親局装置または前記子局装置として使用される通信装置であって、
前記子局装置の前記送受信ユニットによる前記無線信号の送受信状態を表す情報を取得する取得部と、
取得された前記送受信状態を表す情報に基づいて、前記無線信号の送受信が行われる状態では前記送受信ユニットを動作可能モードに設定し、一方前記無線信号の送受信が行われない状態では前記送受信ユニットの少なくとも一部をスリープモードに設定するべく、前記子局装置の動作モードを制御する制御部と
を具備する通信装置。
【請求項4】
前記子局装置が前記無線信号を送受信するための前記送受信ユニットを複数備える場合に、
前記取得部は、前記送受信ユニットごとに、前記無線信号の前記送受信状態を表す情報を取得し、
前記制御部は、前記送受信ユニットごとに、当該送受信ユニットに対応する前記送受信状態を表す情報に基づいて前記動作モードを制御する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記動作モードの制御可能期間または制御不可期間を指定する制御期間指定情報を記憶する第1の記憶部をさらに具備し、
前記制御部は、前記第1の記憶部に記憶された前記制御期間指定情報と、前記送受信状態を表す情報とに基づいて、前記制御可能期間内でかつ前記無線信号の送受信が行われない期間に、前記子局装置の前記送受信ユニットの少なくとも一部を前記スリープモードに設定する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記スリープモードとして、前記送受信ユニットが備えるベースバンド処理部およびデジタル/アナログ変換器に対する動作クロックの供給を停止させると共に、送信電力増幅器に対する動作電源の供給を停止させる、請求項3に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記送受信状態を表す情報に基づいて、受信品質の指標が第1のしきい値より低いか、前記受信品質の指標が前記第1のしきい値以上でかつ第2のしきい値より低いか判定する判定処理部と、
前記受信品質の指標が前記第1のしきい値以上でかつ前記第2のしきい値より低いと判定された場合には、前記送受信ユニットの第1の受信機能部をスリープモードに設定する第1の制御処理部と、
前記受信品質の指標が前記第1のしきい値より低いと判定された場合には、前記送受信ユニットの前記第1の受信機能部に加えて第2の受信機能部をスリープモードに設定する第2の制御処理部と
を行う、請求項3に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1の制御処理部は、前記受信品質の指標が前記第1のしきい値以上でかつ前記第2のしきい値より低いと判定された場合に、前記送受信ユニットが備えるデジタル/アナログ変換器のキャリブレーション動作および送信電力増幅器の特性補償動作をそれぞれ停止させる第1の処理を行い、
前記第2の制御処理部は、前記受信品質の指標が前記第1のしきい値より低いと判定された場合に、前記第1の処理に加え、前記送受信ユニットが備えるベースバンド処理部および前記デジタル/アナログ変換器に対する動作クロックの供給と、前記送信電力増幅器に対する動作電源の供給とを停止させる第2の処理をさらに行う
請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記子局装置が複数台設置される場合に、
複数台の前記子局装置の各々に対応して予め設定された強制スリープ期間指定情報を記憶する第2の記憶部を、さらに具備し、
前記制御部は、前記子局装置ごとに、当該子局装置の前記動作モードを、前記強制スリープ期間指定情報により指定された期間に強制的にスリープモードに設定する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項10】
前記子局装置が複数台設置される場合に、
前記制御部は、複数台の前記子局装置の各々について、前記動作可能モードと前記スリープモードとの設定割合に基づく前記子局装置の稼働率を表す情報を取得または算出し、前記稼働率を表す情報に基づいて、複数台の前記子局装置の配置状態の適否に関する情報を生成し出力する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項11】
アンテナを介して無線端末と無線信号を送受信する少なくとも1つの送受信ユニットを備える1台以上の子局装置、または前記子局装置と直接または中継装置を介して前記無線信号を送受信する親局装置として使用される通信装置が実行するスリープ制御方法であって、
前記子局装置の前記送受信ユニットによる前記無線信号の送受信状態を表す情報を取得する過程と、
取得された前記送受信状態を表す情報に基づいて、前記無線信号の送受信が行われる状態では前記送受信ユニットを動作可能モードに設定し、一方前記無線信号の送受信が行われない状態では前記送受信ユニットの少なくとも一部をスリープモードに設定するべく、前記子局装置の動作モードを制御する過程と
を具備するスリープ制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載の通信装置として機能させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、分散アンテナシステム、通信装置、スリープ制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの一形態として分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna Systems)がある。DASは、例えば広域の移動通信ネットワークの通信エリアを電波の届き難いビルや地下等の屋内に拡張するために、上記移動通信ネットワークの基地局により送受信される通信信号を、屋内に分散配置された複数のアンテナに分配するものである。
【0003】
DASは、例えば、移動通信ネットワークの基地局に接続される親局装置と、屋内に分散配置され上記親局装置に中継装置を介して接続される複数の子局装置と、これらの子局装置に接続されるアンテナとを備える。上記基地局と親局装置との間、親局装置と各子局装置との間および子局装置とアンテナとの間の接続には、いずれも同軸ケーブルや光ケーブル等の伝送損失の少ない有線通信媒体が用いられる。
【0004】
ところで、一般にDASでは、子局装置が無線端末との間で通信を行っている状態でも、また通信を行っていない待機状態でも、常時動作状態となっている。このため、子局装置の待機状態における消費電力が大きくなる傾向がある。
【0005】
一方、移動通信システムの中には、移動通信ネットワークの基地局等で使用される通信装置の消費電力を低減する機能を備えたシステムもある。例えば、特許文献1には、マクロセル基地局の局所的帯域不足を補うために上記マクロセル内に複数のスモールセル基地局を配置したシステムにおいて、上記複数のスモールセル基地局の消費電力を低減するために、上記マクロセル基地局により管理される無線端末情報をもとに、光端局装置が上記光終端装置とそれに接続されるスモールセル基地局をスリープ状態に設定する技術が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術は、光終端装置およびスモールセル基地局をスリープ状態に設定するために、マクロセル基地局が管理する無線端末情報を利用している。このため、システム全体に対するスリープ制御は可能であるが、スモールセル基地局ごとにその使用状態に応じたスリープ制御を行うことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、子局装置の使用状態に応じた適切なスリープ制御を実現する技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る空間アンテナシステムは、アンテナを介して無線端末と無線信号を送受信する少なくとも1つの送受信ユニットを備える1台以上の子局装置と、前記子局装置と直接または中継装置を介して前記無線信号を送受信する親局装置とを具備する。前記子局装置は、前記送受信ユニットによる前記無線信号の送受信状態を判定して、その判定結果を表す判定情報を前記親局装置に通知する判定部を備える。前記親局装置は、前記判定情報に基づいて、前記無線信号の送受信が行われる状態では前記送受信ユニットを動作可能モードに設定し、一方前記無線信号の送受信が行われない状態では前記送受信ユニットの少なくとも一部をスリープモードに設定するべく、前記子局装置を制御する制御部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る分散アンテナシステムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】
図1に示した分散アンテナシステムの子局装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】
図2に示した子局装置の制御部の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図4】
図1に示した分散アンテナシステムの親局装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図5】
図4に示した親局装置の制御部の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図6】
図3に示した子局装置の制御部により実行される制御処理の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
【
図7】
図4に示した親局装置の制御部により実行される制御処理の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
【
図8】
図2に示した子局装置において送受信ユニットに対し行われるスリープ動作の一例を示すブロック図。
【
図9】
図1に示した分散アンテナシステムにおいて、子局装置に対し通常動作モードが設定された状態の一例を示す図である。
【
図10】
図1に示した分散アンテナシステムにおいて、子局装置に対しスリープモードが設定された状態の一例を示す図である。
【
図11】
図1に示した分散アンテナシステムにおいて、すべての子局装置が通常動作モードに設定された状態の一例を示す図である。
【
図12】
図1に示した分散アンテナシステムにおいて、子局装置の一部が強制スリープモードに、子局装置の他の一部がスリープモードにそれぞれ設定された状態の一例を示す図である。
【
図13】この発明の第2の実施形態に係る子局装置において、受信機能部が通常動作モードにより動作している状態の一例を示すブロック図。
【
図14】この発明の第2の実施形態に係る子局装置において、受信機能部の一部機能がスリープモードに設定された状態の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る分散アンテナシステムと、このシステムで使用される通信装置、スリープ制御方法およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、第1の実施形態に係る分散アンテナシステム100の構成の一例を示すブロック図である。
【0013】
分散アンテナシステム100は、親局装置(MU)1と、中継装置としての機能を有するハブ局装置(HUB)2と、複数の子局装置(RU)3-1~3-mと、これらの子局装置3-1~3-mに接続される複数のアンテナ4-1~4-mとを備える。親局装置1とハブ局装置2との間、およびハブ局装置2と各子局装置3-1~3-mとの間は、いずれも光ケーブルを介して接続される。なお、親局装置1と一部の子局装置3との間は、ハブ局装置2を介さずに直接接続されてもよい。
【0014】
親局装置1は、屋外等の広域をカバーエリアとする移動通信システムの基地局装置BSに、例えば同軸ケーブルを介して接続される。そして、親局装置1は基地局装置BSとの間で無線信号を送受信する。親局装置1は、上記基地局装置BSから受信した上記無線信号を下り方向(ダウンリンク)のデジタル伝送信号に変換して、子局装置3-1~3-mへ直接またはハブ局装置2を介して伝送する。また親局装置1は、子局装置3-1~3-mから直接またはハブ局装置2を介して伝送された上り方向(アップリンク)のデジタル伝送信号を、無線信号に変換して基地局装置BSへ送信する。
【0015】
子局装置3-1~3-mは、無線端末MT1~MTnとの間でアンテナ4-1~4-mを介して無線信号を送受信する。子局装置3-1~3-mは、上記無線端末MT1~MTnから受信された無線信号を上りデジタル伝送信号に変換して、上記親局装置1へ直接またはハブ局装置2を介して伝送する。また子局装置3-1~3-mは、親局装置1から直接またはハブ局装置2を介して伝送された下りデジタル伝送信号を無線信号に変換し、アンテナ4-1~4-mから無線端末MTに向け送信する。
【0016】
分散アンテナシステム100は、システム管理者等が使用する管理端末7を備える。管理端末7は、例えばLAN(Local Area Network)により構成されるネットワークNWおよびルータ6を介して上記親局装置1に接続され、親局装置1との間で制御データを送受信する。
【0017】
(2)装置
(2-1)子局装置3-1~3-m
図2は、子局装置3-1~3-mとして使用される通信装置の構成の一例を示すブロック図である。なお、子局装置3-1~3-mはいずれも同一構成であるため、ここでは子局装置3-1を例にとって説明し、他の子局装置3-2~3-mの説明は省略する。
【0018】
子局装置3-1は、子局制御部30と、それぞれバンドに対応する複数の送受信ユニット31~3kと、アップリンク処理部35と、ダウンリンク処理部36と、伝送インタフェース(以後インタフェースをI/Fと記載する)部37と、電源・クロック供給部38とを備えている。
【0019】
子局制御部30は、例えば中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサと、プログラム記憶部と、データ記憶部と、入出力インタフェース部とを備える。そして子局制御部30は、上記ハードウェアプロセッサが上記プログラム記憶部に格納されたOS(Operating System)等のミドルウェアとアプリケーション・プログラムを実行することで、所定の各種信号処理および制御処理を実現する。なお、ハードウェアプロセッサは、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて構成されてもよい。
【0020】
送受信ユニット31~3kは、それぞれ、アナログ/デジタル変換器(ADC)321~32kと、デジタル/アナログ変換器(DAC)331~33kと、アンテナI/F部341~34kとを備える。
【0021】
アンテナI/F部341~34kは、例えば送信電力増幅器(PA)および受信用の低雑音増幅器を有し、アンテナ4-11~4-1kを介して無線端末MT1~MTnとの間で無線信号を送受信する。
【0022】
ADC321~32kは、上記アンテナI/F部341~34kにより受信された各バンドの無線信号をそれぞれ上りデジタル無線信号に変換し、変換された上りデジタル無線信号を子局制御部30へ出力する。
【0023】
子局制御部30は、上記ADC321~32kから出力された上りの各デジタル無線信号に対しそれぞれ所定のベースバンド信号処理を行ってベースバンドの上り伝送信号に変換する。そして、この上り伝送信号を、子局制御部30が生成した制御信号と共に、アップリンク処理部35へ出力する。
【0024】
アップリンク処理部35は、子局制御部30から出力された上記上り伝送信号と制御信号とを多重化して上り多重化伝送信号を生成し、生成された上り多重化伝送信号を伝送I/F部37へ送出する。伝送I/F部37は、上記アップリンク処理部35から送出された上り多重化伝送信号を光信号に変換して、直接またはハブ局装置2を介して親局装置1へ送信する。
【0025】
また、伝送I/F部37は、ハブ局装置2または親局装置1から伝送された光信号からなる下り多重化伝送信号を受信して電気信号に変換した後、ダウンリンク処理部36へ出力する。
【0026】
ダウンリンク処理部36は、上記伝送I/F部37から出力された下り多重化伝送信号をバンドごとに複数の伝送信号と制御信号とに分離し、分離された各バンドの伝送信号および制御信号を子局制御部30に入力する。
【0027】
子局制御部30は、ダウンリンク処理部36から出力された各バンドの下り伝送信号に対しそれぞれ所定のベースバンド信号処理を行って下りデジタル伝送信号に変換した後、それぞれ対応する送受信ユニット31~3kへ出力する。
【0028】
送受信ユニット31~3kは、それぞれ上記子局制御部30から出力された下りデジタル伝送信号をDAC331~33kによりアナログ信号に変換し、変換されたアナログの下り伝送信号をアンテナI/F部341~34kへ入力する。アンテナI/F部341~34kは、上記アナログの下り伝送信号を無線信号に変換し、変換された無線信号をアンテナ4-1~4-mから無線端末MT1~MTnに向けて送信する。
【0029】
電源・クロック供給部38は、システム電源供給装置BTから供給される主電源出力をもとに動作電源出力VCを生成して、子局装置3-1内の各部に供給する。また電源・クロック供給部38は、クロック発生回路から発生された動作クロックCKを子局装置3-1内の各部に供給する。
【0030】
ところで、子局制御部30は、上記ベースバンド信号処理機能に加え、第1の実施形態に係るスリープ制御を実現するための機能を有している。
図3は、上記スリープ制御を実現するための機能の構成を示すブロック図である。
【0031】
子局制御部30は、スリープ制御を実現するための機能として、受信レベル検出処理部301と、受信レベル検出信号送信処理部302と、電源・クロック制御処理部303とを備えている。
【0032】
受信レベル検出処理部301は、アンテナI/F部341~34kにより受信された無線信号をもとに、それぞれ送受信ユニット32~3kごと、つまりバンドごとの受信レベル(例えば受信電界強度(RSSI))を検出し、その検出値を受信レベル検出信号送信処理部302に通知する処理を行う。
【0033】
受信レベル検出信号送信処理部302は、上記受信レベル検出処理部301から通知された上記検出値と、検出対象のバンドの識別IDとを含む受信レベル検出信号を生成する。そして、受信レベル検出信号送信処理部302は、生成された上記受信レベル検出信号を制御信号の1つとしてアップリンク処理部35へ出力する。
【0034】
電源・クロック制御処理部303は、親局装置1から送信される動作モード制御信号をダウンリンク処理部36を介して受け取る。そして、電源・クロック制御処理部303は、受け取った上記動作モード制御信号に従い、子局装置3-1内の送受信ユニット31~3kに対する動作電源出力VCおよび動作クロックCKの供給を制御するための指示を電源・クロック供給部38に対し与える処理を行う。
(2-2)親局装置1
図4は、第1の実施形態に係る親局装置1として使用される通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
親局装置1は、親局制御部10と、伝送I/F部11と、アップリンク処理部12と、ダウンリンク処理部13と、DAC14と、ADC15と、無線I/F部16とを備えている。
【0036】
親局制御部10は、例えば中央処理ユニット(CPU)等のハードウェアプロセッサと、プログラム記憶部と、データ記憶部と、入出力インタフェース部とを備える。そして親局制御部10は、上記ハードウェアプロセッサが上記プログラム記憶部に格納されたOS等のミドルウェアとアプリケーション・プログラムを実行することで、所定の各種信号処理および制御処理を実現する。なお、ハードウェアプロセッサは、PLDやFPGA等を用いて構成されてもよい。
【0037】
伝送I/F部11は、上記子局装置3-1~3-mから直接またはハブ局装置2を介して伝送される光信号からなる上り多重化伝送信号を受信して電気信号に変換した後、アップリンク処理部12へ出力する。
【0038】
アップリンク処理部12は、上記子局装置3-1~3-mから出力された上り多重化伝送信号を伝送信号と制御信号とに分離し、分離された上記伝送信号および制御信号を親局制御部10に入力する。
【0039】
親局制御部10は、入力された上記上り伝送信号に対し所定のベースバンド信号処理を行った後、DAC14へ出力する。DAC14は、親局制御部10から出力された上り伝送信号をアナログ信号に変換し、変換されたアナログの上り伝送信号を無線I/F部16へ出力する。無線I/F部16は、上記アナログの上り伝送信号を無線信号に変換して基地局装置BSへ送信する。
【0040】
無線I/F部16は、基地局装置BSから送信された下り無線信号を受信してADC15へ出力する。ADC15は、上記下り無線信号をデジタル無線信号に変換し、変換された下りデジタル無線信号を親局制御部10に入力する。
【0041】
親局制御部10は、上記ADC15から入力された下りデジタル無線信号に対し所定のベースバンド信号処理を行ってベースバンドの下り伝送信号に変換する。そして、親局制御部10は、上記ベースバンドの下り伝送信号を、親局制御部10が生成した制御信号と共に、ダウンリンク処理部13へ出力する。
【0042】
ダウンリンク処理部13は、上記下り伝送信号に制御信号を多重化して下り多重化伝送信号を生成し、生成された上記下り多重化伝送信号を伝送I/F部11へ出力する。伝送I/F部11は、上記下り多重化伝送信号を直接またはハブ局装置2を介して子局装置3-1~3-mへ送信する。
【0043】
ところで、親局制御部10は、上記ベースバンド信号処理機能に加え、第1の実施形態に係る子局装置3-1~3-mの動作モードの制御を実行するための機能を有している。
図5は、上記動作モード制御を実現するための機能の構成を示すブロック図である。
【0044】
親局制御部10は、上記スリープ制御を実現するための機能として、受信レベル検出信号受信処理部101と、動作モード設定制御処理部102と、動作モード制御信号送信処理部103と、設定情報記憶部104とを備えている。
【0045】
設定情報記憶部104は、子局装置3-1~3-mの動作モードの切替制御を可能とする期間を指定する動作モード制御可能期間と、子局装置3-1~3-mの動作モードを強制的にスリープモードに設定する期間を指定する強制スリープ設定期間と、受信レベル判定用のしきい値TH1を記憶するために用いられる。
【0046】
受信レベル検出信号受信処理部101は、子局装置3-1~3-mから制御信号として送られた受信レベル検出信号を受信する。そして、受信レベル検出信号受信処理部101は、受信された各受信レベル検出信号からそれぞれ各送受信ユニットの受信レベル検出値を抽出する処理を行う。
【0047】
動作モード設定制御処理部102は、上記子局装置3-1~3-mごとに、各送受信ユニットの受信レベル検出値を、設定情報記憶部104に予め記憶された判定しきい値TH1と比較し、その判定結果に基づいて、各送受信ユニットに対する動作モードを設定する処理を行う。動作モードには、送信動作および受信動作をいずれも行う「通常動作モード」と、受信動作を停止して送信動作のみを行う「スリープ動作モード」とがあり、動作モード設定制御処理部102はこれらの動作モードのいずれかを設定する。
【0048】
また、動作モード設定制御処理部102は、上記受信レベル検出値の判定結果に基づく動作モードの設定制御を行う際に、図示しないタイマにより計時される現在時刻を、設定情報記憶部104に予め記憶されている動作モード制御可能期間および強制スリープ設定期間と比較し、この判定結果をさらに考慮して上記動作モード設定制御を実行する。その動作の一例は、動作例において述べる。
【0049】
動作モード制御信号送信処理部103は、上記動作モード設定制御処理部102から上記動作モードの設定結果を受け取って、子局装置3-1~3-mごとに、その各送受信ユニットに対する動作モードを指定する動作モード制御信号を生成する。そして、動作モード制御信号送信処理部103は、生成された上記動作モード制御信号をダウンリンク処理部13へ出力する処理を行う。
【0050】
(動作例)
次に、以上のように構成された分散アンテナシステム100の子局装置3-1~3-mおよび親局装置1の動作例を説明する。なお、ここでは、子局装置3-1の動作モードを親局装置1が制御する場合を例にとって説明を行うが、他の子局装置3-2~3-mについても同様である。
【0051】
(1)子局装置3-1における受信レベルの検出
図6は、子局装置3-1の子局制御部30が実行するスリープ制御の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
【0052】
システムの運用中に、子局装置3-1の子局制御部30は、受信レベル検出処理部301の制御の下、先ずステップS11によりバンドを1つ選択する。そして、受信レベル検出処理部301は、ステップS12により現在時刻が受信レベル検出を行う期間であるか、または動作モードの制御を行う期間であるかを判定する。この判定の結果、受信レベルの検出期間であれば、受信レベル検出処理部301はステップS13に移行して、選択された上記バンドに対応する送受信ユニットにより受信された無線信号の受信レベル(RSSI値)を検出する。
【0053】
以後同様に、受信レベル検出処理部301は、子局装置3-1が備えるすべてのバンドについて、上記受信レベルの検出処理を順次行う。
【0054】
すべてのバンドに対する受信レベルの検出処理を終了すると、子局制御部30は次に受信レベル検出信号送信処理部302の制御の下、ステップS14において、各バンドについて得られた受信レベル検出値と、検出対象となった上記各バンドの識別IDとを含む受信レベル検出信号を生成する。そして、受信レベル検出信号送信処理部302は、生成された上記受信レベル検出信号を親局装置1へ送信する。
【0055】
(2)親局装置1による動作モード設定制御
親局装置1の親局制御部10は、子局装置3-1~3-mに対するバンドごとの動作モードの設定制御に係る処理を以下のように実行する。
【0056】
上記動作モード設定制御の処理の実行に先立ち、例えばシステム管理者は、管理端末7を操作して、親局装置1の親局制御部10に設けられた設定情報記憶部104に対し、各子局装置3-1~3-mの各々に対する、動作モード制御可能期間と、強制スリープ設定期間と、受信レベル判定用のしきい値TH1を初期登録する。
【0057】
図7は、親局制御部10が実行する動作モード設定制御の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
【0058】
すなわち、親局装置1の親局制御部10は、受信レベル検出信号受信処理部101の制御の下、ステップS21において、各子局装置3-1~3-mからの受信レベル検出信号の送信を監視する。そして、例えばいま子局装置3-1から受信レベル検出信号が送られると、受信レベル検出信号受信処理部101は当該受信レベル検出信号を受信する。なお、受信レベル検出信号受信処理部101は、他の子局装置3-2~3-mから送信される受信レベル検出信号についても、同様に受信処理を行う。
【0059】
子局装置3-1~3-mから上記受信レベル検出信号を受信すると、親局制御部10は動作モード設定制御処理部102の制御の下、子局装置3-1~3-mに対する動作モードの設定制御を以下のように実行する。なお、ここでは子局装置3-1を制御対象として説明を行う。
【0060】
すなわち、動作モード設定制御処理部102は、先ずステップS22において、設定情報記憶部104に、子局装置3-1に対応して動作モード制御可能期間が登録されているか否かを判定する。この判定の結果、動作モード制御可能期間が登録されていなければ、動作モード設定制御処理部102は動作モード設定制御を行わずにそのまま処理を終了する。
【0061】
一方、設定情報記憶部104に、子局装置3-1に対応して動作モード制御可能期間が登録されていたとする。この場合、動作モード設定制御処理部102は、ステップS23において、図示しないタイマにより計時される現在時刻が、上記動作モード制御可能期間内であるか否かを判定する。この判定の結果、現在時刻が動作モード制御可能期間外であれば、動作モード設定制御処理部102は動作モード設定制御を行わずにそのまま処理を終了する。
【0062】
これに対し、現在時刻が動作モード制御可能期間内だったとする。この場合、動作モード設定制御処理部102は、次にステップS24において、現在時刻が設定情報記憶部104に記憶されている強制スリープ設定期間内であるか否かを判定する。この判定の結果、現在時刻が強制スリープ設定期間外であれば、動作モード設定制御処理部102は、ステップS25に移行する。なお、現在時刻が強制スリープ設定期間内の場合の強制スリープ設定制御は後述する。
【0063】
動作モード設定制御処理部102は、上記ステップS25において、ステップS21により受信した子局装置3-1のバンドごとの受信レベル検出信号の検出値を、設定情報記憶部104に記憶されているしきい値TH1とそれぞれ比較し、上記受信レベルの検出値が、所定時間以上連続してしきい値TH1未満となっているか否かを判定する。
【0064】
この判定の結果、受信レベルの検出値が所定時間以上連続してしきい値TH1未満となったバンドがあると、動作モード設定制御処理部102はステップS26に移行し、当該バンドの動作モードを「スリープ動作モード」に設定する。なお、受信レベルの検出値が所定時間以上しきい値TH1以上を維持しているバンドに対しては、動作モード設定制御処理部102はステップS27において、当該バンドの動作モードを「通常動作モード」のまま維持する。
【0065】
上記動作モードの設定処理を終了すると、親局制御部10は続いて動作モード制御信号送信処理部103の制御の下、ステップS28において、上記子局装置3-1の各バンドに対する動作モードの設定情報を含む動作モード制御信号を生成する。そして、動作モード制御信号送信処理部103は、生成された上記動作モード制御信号をダウンリンク処理部13へ出力する。この結果、上記動作モード制御信号は、ダウンリンク処理部13から子局装置3-1に向け伝送される。
【0066】
なお、他の子局装置3-2~3-mに対しても、同様に、上記した一連の動作モード設定制御および動作モード制御信号の送信処理が行われる。
【0067】
(3)子局装置3-1における動作モード制御
子局装置3-1の子局制御部30は、現在時刻が動作モード制御期間になると、電源・クロック制御処理部303の制御の下、ステップS15において、親局装置1から送信される動作モード制御信号を受信する。電源・クロック制御処理部303は、続いてステップS16において、受信された上記動作モード制御信号に基づいて電源・クロック制御信号を生成し、電源・クロック供給部38に供給する。
【0068】
例えば、電源・クロック制御処理部303は、動作モード制御信号に含まれる各バンドに対する動作モード設定情報に従い、動作モードが「通常動作モード」に設定されているバンドに対応する送受信ユニットに対しては、動作電源出力VCおよび動作クロックCKの供給を維持させるための制御信号を生成し、電源・クロック供給部38に供給する。
【0069】
一方、動作モードが「スリープ動作モード」に設定されているバンドに対応する送受信ユニットに対して、電源・クロック制御処理部303は、動作電源出力VCおよび動作クロックCKの供給をスリープ状態に対応するように制御するための制御信号を生成し、電源・クロック供給部38に供給する。
【0070】
電源・クロック供給部38は、供給された上記制御信号に従い、各送受信ユニット31~3kに対して個別に、動作電源出力VCの供給および動作クロックCKの供給を制御する。
【0071】
例えば、いま送受信ユニット31~3kのうち、送受信ユニット31を「スリープ動作モード」に設定する場合を考える。
図8は、送受信ユニット31および子局制御部30のダウンリンク系ブロックの構成の一例を示すものである。子局装置3-1のダウンリンク系ブロックは、
図8に示すように、アンテナI/F部341に設けられた送信電力増幅器3411と、DAC331と、子局制御部30内のダウンリンク用ベースバンド処理部39とを有する。ダウンリンク用ベースバンド処理部39には、例えば直交変調処理機能が含まれる。
【0072】
電源・クロック供給部38は、上記ダウンリンク系ブロックを「スリープ動作モード」に設定する場合、上記送信電力増幅器3410への動作電源出力VCの供給を停止し、かつDAC331および子局制御部30内のダウンリンク用ベースバンド処理部39に対する動作クロックCKの供給を停止する。この結果、子局装置3-1の送受信ユニット31および子局制御部30内のダウンリンク系ブロックはスリープ動作に移行し、これにより消費電力は低減される。
【0073】
なお、上記電源・クロック制御処理部303から「通常動作モード」が指定された送受信ユニットおよび子局制御部30内のダウンリンク系ブロックには、動作電源出力VCおよび動作クロックCKが供給され、通常の動作が維持される。
【0074】
以上述べた動作モードの制御処理は、他の子局装置3-2~3-mにおいてもバンドごとに同様に行われる。
【0075】
以上述べた動作モード制御の実行例を、
図9および
図10を用いて説明する。
図9は動作モードの制御が行われる前のタイミングにおける子局装置3-1~3-2の稼働状態の一例を示し、一方
図10は動作モード制御後のタイミングにおける子局装置3-1~3-2の稼働状態の一例を示している。
【0076】
図9に示す状態では、無線端末MT1,MT2,MT3がそれぞれ子局装置3-1のバンドB1,B2,B3を使用して通信を行い、また無線端末MT4,MT5が子局装置3-2のバンドB4,B5を使用して通信を行っている。
【0077】
その後、無線端末MT1~MT5が通信を終了し、別の無線端末MTiが子局装置3-1のバンドB1を使用して通信を開始したとする。この場合、先に述べた一連の動作モード制御が行われることにより、
図10に示すように子局装置3-1のバンドB1に対応するブロックのみが「通常動作モード」を維持し、子局装置3-1,3-2の他のバンドに対応するブロックはいずれも「スリープ動作モード」に設定される。
【0078】
従って、子局装置3-1~3-mを常時「通常動作モード」に固定して動作させる場合に比べ、子局装置3-1~3-mにおける消費電力は低減される。
【0079】
(4)スリープ動作モードから通常動作モードへの回復
スリープ動作モードに設定された状態において、子局装置3-1~3-mの子局制御部30は、無線端末MT1~MTnからのアクセスに備え、受信レベルの検出処理を継続する。そして、子局制御部30は、上記受信レベル検出処理により得られた受信レベル検出信号を親局装置1に送信する。
【0080】
これに対し、親局装置1の親局制御部10は、子局装置3-1~3-mから送信された受信レベル検出信号を受信すると、各子局装置3-1~3-mについて、バンドごとに受信レベル検出値がしきい値TH1以上になったか否かをステップS25により判定する。そして、受信レベルの検出値がしきい値TH1以上になったバンドが検出されると、ステップS27に移行して対応するバンドの動作モードを「通常動作モード」に変更し、その動作モード制御信号を対応する子局装置3-1~3-mへ送信する。
【0081】
子局装置3-1~3-mの子局制御部30は、親局装置1から上記動作モード制御信号を受信すると、この動作モード制御信号により制御対象として指定されたバンドに対応する送受信ユニットおよび子局制御部30のダウンリンク系ブロックに対し、動作電源出力VCおよび動作クロックCKの供給を再開する。
【0082】
(5)強制スリープ制御の実行
親局装置1の親局制御部10において、動作モード設定制御処理部102が、
図7に示したステップS24において、現在時刻が設定情報記憶部104に記憶されている強制スリープ設定期間内であると判定したとする。
【0083】
この場合、動作モード設定制御処理部102は、受信レベルの検出値に基づく動作モードの判定処理を行わずに、ステップS24からステップS26に移行する。そして、動作モード設定制御処理部102は、ステップS26において、設定情報記憶部104に記憶された強制スリープ設定期間情報に基づいて、子局装置を強制的にスリープ動作モードに設定するための制御信号を出力する。
【0084】
例えば、強制スリープ設定期間情報は、各子局装置3-1~3-mに対応付けられて個別に設定されている。このため、動作モード設定制御処理部102は、上記強制スリープ設定期間情報が設定された子局装置の全バンドに対し、動作モードを一括して「スリープ動作モード」に設定する。
【0085】
すなわち、子局装置3-1~3-mごとに強制スリープ設定期間を設定することで、子局単位でその全バンドの動作モードを強制的にスリープ動作モードに設定することが可能となる。
図11(a),(b)および
図12(a),(b)に、強制スリープ制御の実行例を示す。
【0086】
この例は、オフィスビルの各階に子局装置3-1~3-mを分散配置し、これらの子局装置3-1~3-mを複数階ごとにまとめてハブ局装置2,2,…に接続し、これらのハブ局装置2,2,…を親局装置1に接続した分散アンテナシステムを示す。
【0087】
図11(a),(b)は、すべての子局装置3-1~3-mを「通常動作モード」に設定して動作させたときの状態を示している。一方、
図12(a),(b)は、子局装置3-1~3-mのうち、上層階の子局装置に対し「強制スリープ期間」を設定し、中層階および下層階の子局装置には「強制スリープ期間」を設定しなかった場合の各子局装置3-1~3-mの動作状態を示している。
【0088】
なお、
図11(a),(b)および
図12(a),(b)では、「通常動作モード」により動作中の子局装置を3(on)で示し、「強制スリープモード」設定中の子局装置を3(off)で示している。また、「強制スリープモード」が設定されていない子局装置のうち、「スリープ動作モード」設定中の子局装置を3(sleep)で示している。
【0089】
この例に示すように、例えば、上層階と中層階および下層階に入居しているテナントが異なる場合に、テナントごとにその勤務時間帯等に応じて、対応する階の子局装置に対し強制スリープ設定情報を設定しておくことで、例えば上層階のテナントについてその勤務時間以外の時間帯には各子局装置を一括して強制的にスリープ動作モードに設定することが可能となる。このようにすることで、消費電力をさらに効率的に削減することが可能となる。
【0090】
また、一般に、システム電源供給装置BTから遠く離れた上層階の子局装置群は、電源供給路が長く電圧降下が大きくなるため、上層階の子局装置群に動作電源出力VCを常時供給すると、システムとしての電力効率が低下する。そこで、上層階の子局装置群に対し強制スリープ期間を設定する。このようにすると、システムとしての電力効率の低下を抑制することが可能となる。なお、この場合、上記強制スリープ期間の設定中に上層階の子局装置群は通信を行えなくなる。しかし、オフィスビルのように階層化された設置環境であれば、中層階から漏洩する無線信号を窓等を通して上層階においても受信することが可能であるため、無線端末TM1~TMnの無線通信は維持可能である。
【0091】
(効果)
以上述べたように第1の実施形態では、子局装置3-1~3-mにおいてそれぞれバンドごとに無線信号の受信レベルを検出してその検出結果を親局装置1に通知する。そして親局装置1において、上記受信レベルの検出結果をもとに、各子局装置3-1~3-mに対しそれぞれバンドごとに動作モードを通常動作モードとするかスリープ動作モードとするかを判定し、その判定結果に基づいて各子局装置3-1~3-mが、送受信ユニット31~3k等のダウンリンク系ブロックの動作モードを、バンドごとに制御するようにしている。
【0092】
従って、子局装置3-1~3-mの動作モードを常時「通常動作モード」に固定する場合に比べ、無線端末MT1~MTnとの間で無線通信が行われていない期間の子局装置3-1~3-mにおける消費電力を低減することが可能となる。
【0093】
また、第1の実施形態では、子局装置3-1~3-mごとに強制スリープ設定期間を設定しておき、上記期間に各子局装置3-1~3-mを強制的にスリープ動作モードに設定するようにしている。この結果、子局装置3-1~3-mが実質的に使用されない期間には、その動作モードが一括して強制的にスリープ動作モードに設定されるため、システムの消費電力をより効果的に削減することが可能となる。
【0094】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、受信レベル検出値を判定するためのしきい値として、第1の実施形態で用いたスリープ動作モードの設定の要否を判定するためののしきい値TH1に加え、このしきい値TH1と通常動作時の受信レベルとの間にしきい値TH2を設定する。しきい値TH2は、動作制限モードの判定用として使用される。そして、第2の実施形態は、受信レベル検出値が上記しきい値TH2としきい値TH1との間の値に低下した場合に、送受信ユニット31~3kおよび子局制御部30のダウンリンク系ブロックについて、その制御系の動作のみを停止させる。
【0095】
図13は、第2の実施形態に係る分散アンテナシステムの、子局装置3-1~3-mの送受信ユニット31~3kおよび子局制御部30のダウンリンク系ブロックと、当該ブロックの制御系の構成の一例を示した図である。なお、子局装置3-1~3-mの他の部位および親局装置1については、
図2乃至
図5を用いて説明を行う。
【0096】
図13において、送受信ユニット31~3kは、DAC331および送信電力増幅器341に加え、分岐回路411と、レベル検出回路421と、ADC431とからなるフィードバック制御系を備えている。
【0097】
分岐回路411は、上記送信電力増幅器341から出力された無線信号を二分岐し、一方をアンテナ4-11~4-1kへ、他方をレベル検出回路421へ出力する。レベル検出回路421は、上記無線信号を整流して信号レベルを検出し、その検出信号を出力する。ADC431は、上記信号レベルの検出信号をデジタル信号に変換してダウンリンク用ベースバンド処理部39に入力する。
【0098】
ダウンリンク用ベースバンド処理部39は、直交変調処理機能に加え、ローカル周波数の漏れや変調時の直交誤差を補正するキャリブレーション処理機能と、送信電力増幅器341の特性を補償するためのDPD(Digital Pre-Distortion)処理機能391とをさらに備えている。
【0099】
親局装置1の親局制御部10は、子局装置3-1~3-mから送信されたバンドごとの受信レベル検出信号を受信すると、動作モード設定制御処理部102により、各子局装置3-1~3-mについて、バンドごとに上記受信レベル検出信号に含まれる受信レベルの検出値をしきい値TH1,TH2とそれぞれ比較する。そして、動作モード設定制御処理部102は、上記比較の結果、受信レベルの検出値がしきい値TH1未満に低下した場合には「スリープ動作モード」を設定する。一方、受信レベルの検出値がしきい値TH1以上ではあるが、しきい値TH2未満に低下している場合には、「動作制限モード」を設定する。
【0100】
親局制御部10は、以上の処理により、各子局装置3-1~3-mについてバンドごとに設定された動作モードの設定情報を、動作モード制御信号送信処理部103の制御の下で、各子局装置3-1~3-mに向け送信する。
【0101】
これに対し、子局装置3-1~3-mの子局制御部30は、上記動作モード制御信号を受信すると、電源・クロック制御処理部303により、上記動作モード制御信号に含まれるバンドごとの動作モード設定情報に従い、動作電源・動作クロックの供給を制御するための制御信号を以下のように生成し、電源・クロック供給部38に与える。
【0102】
すなわち、動作モード設定情報により、動作モードが「スリープ動作モード」に設定されている場合には、送受信ユニットおよび子局制御部30のダウンリンク系ブロックをスリープ状態に設定するための制御信号を生成し、電源・クロック供給部38に与える。
【0103】
これに対し、動作モード設定情報により、動作モードが「動作制限モード」に設定されている場合には、送受信ユニット31~3kおよび子局制御部30のダウンリンク系ブロックの制御系の動作を停止させるための制御信号を生成し、電源・クロック供給部38に与える。
【0104】
電源・クロック供給部38は、先ずスリープ状態に設定するための制御信号を受け取ると、送信電力増幅器3410への動作電源出力VCの供給を停止し、かつDAC331および子局制御部30内のダウンリンク用ベースバンド処理部39に対する動作クロックCKの供給を停止する。この結果、子局装置3-1の送受信ユニット31~3kおよび子局制御部30内のダウンリンク系のブロックはスリープ動作に移行する。
【0105】
一方、動作制限モードに設定するための制御信号を受信した場合、電源・クロック供給部38は、送受信ユニット31~3k内のレベル検出回路421への動作電源出力VCの供給を停止すると共に、ADC431およびDPD391に対する動作クロックCKの供給を停止する。
【0106】
この結果、送受信ユニット31~3kでは、
図14に示すように、ダウンリンクの無線信号の送信動作は維持されるものの、ダウンリンク系ブロックの制御系(破線で表示した部位)の動作が停止される。すなわち、ダウンリンク系ブロックの動作の一部が制限され、その分消費電力は低減される。
【0107】
以上のように第2の実施形態によれば、子局装置3-1~3-mにおける無線信号の受信レベルが低下した場合、受信レベルがスリープ動作モードに移行するしきい値TH1までは低下していないものの、受信レベルがしきい値TH2未満に低下した場合に、子局装置3-1~3-mのダウンリンク系ブロックの制御系の動作が停止される。従って、子局装置3-1~3-mにおける消費電力をさらに低減することが可能となり、これによりシステムにおける消費電力の削減効果をさらに高めることができる。
【0108】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、子局装置3-1~3-mの稼働率を計算する機能を備え、その計算結果をもとにシステム改善等を促すための警報情報または推奨情報を生成し、生成された情報をシステム管理者に向けて出力するようにしたものである。
【0109】
例えば、子局装置3-1~3-mの子局制御部30は、自己の子局装置3-1~3-mが通常動作モードにより動作している時間と、スリープ動作モードにより動作している時間をそれぞれ計時し、定期的または所定のタイミングで上記各動作モードの計時時間をもとに子局装置3-1~3-mの稼働率を計算する。そして、計算された上記稼働率を表す情報を親局装置1へ送信する。
【0110】
親局装置1は、子局装置3-1~3-mから送られる上記稼働率を表す情報に基づいて、システム改善を促すための警報情報または推奨情報を生成する。例えば、親局装置1は、ある子局装置の稼働率がしきい値TH3未満に低下すると、当該子局装置の利用状況に関する警報情報を生成し出力する。
【0111】
また親局装置1は、例えばエリアごとに当該エリアに配置されている複数の子局装置の稼働率を判定し、その判定結果をもとに上記エリアにおける各子局装置の削減と再配置を促す推奨情報を生成し出力する。この場合、推奨情報としては、例えば再配置後の子局装置のレイアウトを地図データ上に示したものが用いられる。
【0112】
システム管理者は、上記警報情報および推奨情報をもとに、子局装置3-1~3-mの再配置を行うことが可能となる。これにより、実質的に不要な子局装置を削減してシステムの電力効率をさらに高めることが可能となる。
【0113】
なお、以上の説明では、警報情報の生成を親局装置1が行う場合を例にとって説明したが、子局装置3-1~3-mが上記警報情報の生成機能まで備えるようにしてもよい。また、子局装置3-1~3-mの稼働率の計算は、子局装置3-1~3-mの代わりに、親局装置1により一括して行われるようにしてもよい。
【0114】
[その他の実施形態]
(1)第1の実施形態では、子局制御部30により実行される、バンドごとの受信レベルの検出判定処理と、親局装置1から送られる動作モード信号に応じた各バンドに対する動作モードの制御処理とを、動作期間を分けて交互に行う場合を例にとって説明した。しかし、それに限らず、上記各制御処理は動作期間を分けずに並行して行われるようにしてもよい。
【0115】
(2)第1の実施形態および第2の実施形態では、子局装置3-1~3-mは各バンドの受信レベルの検出処理のみを行ってその検出値を親局装置1へ送り、親局装置1が上記受信レベルの検出値をしきい値TH1,TH2と比較して判定するようにした。しかし、それに限らず、子局装置3-1~3-mが各バンドの受信レベルの検出と判定処理を行ってその判定結果を親局装置1へ送り、親局装置1は送られた上記受信レベルの判定結果を用いて動作モードの設定制御を行うようにしてもよい。
【0116】
(3)第1乃至第3の各実施形態では、動作モードの設定制御機能を親局装置1に設けた場合を例にとって説明した。しかし、それに限らず、例えば各子局装置3-1~3-mにより検出された受信レベルの検出結果を、子局装置3-1~3-mから直接または親局装置1を介して
図1に示す管理端末7へ転送し、管理無線端末において子局装置3-1~3-mの動作モード設定制御を一括して行うようにしてもよい。この場合、管理端末7は、動作モード設定制御により設定された動作モード設定制御情報を、子局装置3-1~3-mに対し直接または親局装置1を介して伝送し、子局装置3-1~3-mに電源・クロックの供給制御を行わせる。
【0117】
(4)その他、子局装置および親局装置として使用される通信装置の構成と処理機能、処理手順と処理内容等については、上記した各実施形態以外の形態を採用してもよい。
【0118】
以上、複数の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において例示に過ぎない。この発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、この発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0119】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0120】
BS…基地局装置、MT1~MTn…無線端末、BT…システム電源供給装置、100…分散アンテナシステム、1…親局装置、2…ハブ局装置、3-1~3-m…子局装置、7…管理無線端末、10…親局制御部、11…伝送I/F部、12…アップリンク処理部、13…ダウンリンク処理部、14…DAC、15…ADC、16…無線I/F部、101…受信レベル検出信号受信処理部、102…動作モード設定制御処理部、103…動作モード制御信号送信処理部、104…設定情報記憶部、30…子局制御部、31~3k…送受信ユニット、321~32k…ADC、331~33k…DAC、341~34k…アンテナI/F部、35…アップリンク処理部、36…ダウンリンク処理部、37…伝送I/F部、38…電源・クロック供給部、301…受信レベル検出処理部、302…受信レベル検出信号送信処理部、303…電源・クロック制御処理部。