(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093084
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】トンネル掘進機及び充填材の充填方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20230627BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
E21D9/093 Z
E21D9/06 301K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208492
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一喜
(72)【発明者】
【氏名】沼宮内 克己
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054AD20
2D054AD22
2D054GA24
2D054GA66
2D054GA67
2D054GA68
2D054GA75
2D054GA96
(57)【要約】
【課題】地山と覆工体との間の隙間に充填材を確実に充填する。
【解決手段】トンネル掘進機は、トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の胴体と、胴体の前方において回転駆動される掘削部と、内壁と覆工体との間の隙間に充填材を充填する注入装置と、胴体において掘進方向の後端であって内壁と覆工体との間の隙間に臨む位置に設けられる電気伝導率計61と、を備え、電気伝導率計61は、隙間に充填される充填物の電気伝導率を測定可能に構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削した孔の内壁を覆工体で覆いながら地中を掘削してトンネルを構築するトンネル掘進機であって、
前記トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の胴体と、
前記胴体の前方において回転駆動される掘削部と、
前記内壁と前記覆工体との間の隙間に充填材を充填する注入装置と、
前記胴体において掘進方向の後端であって前記内壁と前記覆工体との間の前記隙間に臨む位置に設けられる測定部と、を備え、
前記測定部は、前記隙間に充填される充填物の物性を示す指標値を測定可能に構成される、
トンネル掘進機。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル掘進機であって、
前記測定部が測定する前記指標値には、電気的物性、粘性、密度、及びpHの少なくともいずれかに基づく値が含まれる、
トンネル掘進機。
【請求項3】
掘削した孔の内壁を覆工体で覆いながらトンネルを掘進するトンネル掘進機であって、
前記トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の胴体と、
前記胴体の前方において回転駆動される掘削部と、
前記内壁と前記覆工体との間の隙間に充填材を充填する注入装置と、
前記胴体において掘進方向の後端であって前記内壁と前記覆工体との隙間に臨む位置に設けられる測定部と、を備え、
前記測定部は、前記隙間に充填される充填物の温度を測定可能に構成される、
トンネル掘進機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のトンネル掘進機であって、
前記隙間内の圧力を測定する圧力測定部と、
前記測定部及び前記圧力測定部の測定結果を取得する制御装置と、さらに備え、
前記制御装置は、前記測定部の測定結果が前記充填材であることを示し、前記圧力測定部の測定結果が所定の閾値以上である場合に、前記隙間に前記充填材が充填されたと判定する、
トンネル掘進機。
【請求項5】
請求項4に記載のトンネル掘進機であって、
前記注入装置から前記隙間に充填された前記充填材の量を測定する充填量測定部をさらに備え、
前記制御装置は、前記測定部の測定結果が前記充填材であることを示し、前記圧力測定部の測定結果が前記閾値以上であって、前記隙間への前記充填材の充填量が前記隙間の容積以上である場合に、前記隙間に前記充填材が充填されたと判定する、
トンネル掘進機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のトンネル掘進機であって、
前記胴体の外周に設けられ、前記胴体の外周面と前記内壁との間を封止する封止部をさらに備える、
トンネル掘進機。
【請求項7】
掘削した孔の内壁と当該内壁の内周を覆う覆工体との間に充填材を充填する充填方法であって、
前記内壁と前記覆工体の外周面との間の隙間に前記充填材を注入する注入工程と、
前記内壁と前記覆工体の外周面との間の前記隙間に臨むように設けられた測定部によって、前記隙間に充填される充填物の物性を示す指標値を測定する測定工程と、を含む、
充填材の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘進機及び充填材の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネル掘進機によって掘削された地山の内面と、地山の内面に沿って環状に構築される覆工体の外周面と、の間の空隙(テールボイド)に裏込め材を注入して空隙を埋めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、地山と覆工体との間の隙間に対する充填材(裏込め材)の充填確認は、当該隙間の圧力を検出することで行っていた。
【0005】
しかしながら、地山と覆工体との間の隙間には、地山から地下水が流入することがある。圧力によって充填材の充填を確認する従来の方法では、隙間の圧力が増加して隙間が充填されたことを検知しても、地下水が混入している可能性もあった。
【0006】
本発明は、地山と覆工体との間の隙間に充填材を確実に充填することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、掘削した孔の内壁を覆工体で覆いながら地中を掘削してトンネルを構築するトンネル掘進機であって、トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の胴体と、胴体の前方において回転駆動される掘削部と、内壁と覆工体との間の隙間に充填材を充填する注入装置と、胴体において掘進方向の後端であって内壁と覆工体との間の隙間に臨む位置に設けられる測定部と、を備え、測定部は、隙間に充填される充填物の物性を示す指標値を測定可能に構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、掘削した孔の内壁を覆工体で覆いながらトンネルを掘進するトンネル掘進機であって、トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の胴体と、胴体の前方において回転駆動される掘削部と、内壁と覆工体との間の隙間に充填材を充填する注入装置と、胴体において掘進方向の後端であって内壁と覆工体との隙間に臨む位置に設けられる測定部と、を備え、測定部は、隙間に充填される充填物の温度を測定可能に構成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、掘削した孔の内壁と当該内壁の内周を覆う覆工体との間に充填材を充填する充填方法であって、内壁と覆工体の外周面との間の隙間に充填材を注入する注入工程と、内壁と覆工体の外周面との間の隙間に臨むように設けられた測定部によって、隙間に充填される充填物の物性を示す指標値を測定する測定工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地山と覆工体との間の隙間に充填材を確実に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル掘進機の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るトンネル掘進機のスキンプレートの後端部付近の構成を示す拡大図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る充填確認システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図2におけるセンサユニット周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の第2変形例に係る充填確認システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル掘削機について説明する。以下では、トンネル掘削機が、シールド工法において用いられるシールド掘進機100である場合について説明する。シールド掘進機100は、地中(地山)を掘進して掘削坑を形成し、掘削坑の内壁を覆うようセグメントリング1(覆工体)を組み立てることによって、シールドトンネルT(トンネル)を構築するものである。セグメントリング1は、円弧状に形成された複数のセグメント2を周方向に環状に並べて配置し隣り合うセグメント2どうしを連結することによって組立てられる。また、セグメントリング1は、軸方向に複数組立てられ、隣り合うセグメントリング1どうしが連結される。セグメントリング1の外周と地山の内壁との間のいわゆるテールボイドV(隙間)には、充填材3が充填される。なお、本発明は、シールド掘進機100以外のトンネル掘削機、例えば、推進工法において推進管の先端に設置される掘削機にも適用可能である。
【0014】
以下では、シールド掘進機100が進む方向である切羽側を「前方」とし、その反対の方向である坑口側を「後方」として説明する。
【0015】
図1に示すように、シールド掘進機100は、泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧式シールド掘進機である。なお、シールド掘進機100は、泥水式のシールド掘進機でもよい。
【0016】
シールド掘進機100は、シールドトンネルTの軸方向に沿って延在する筒状のスキンプレート10(胴体)と、スキンプレート10の前方において回転駆動されるカッタヘッド20(掘削部)と、カッタヘッド20を回転させる電動モータ30と、を有する。
【0017】
スキンプレート10の内周面には、シールドトンネルTの軸方向においてカッタヘッド20に対向して配置される隔壁11が設けられており、隔壁11によって回転ドラム31が回転自在に支持されている。カッタヘッド20は、連結ロッド32を介して回転ドラム31に連結されており、回転ドラム31と共に回転可能である。回転ドラム31は、不図示の減速機構を介して電動モータ30に連結されており、電動モータ30の駆動により、回転ドラム31とカッタヘッド20がスキンプレート10に対して回転する。電動モータ30の作動を制御することによって、カッタヘッド20の回転方向や回転速度を制御することが可能である。
【0018】
カッタヘッド20には複数のカッタビット21が取付けられており、カッタヘッド20は、地山(切羽)に押し付けられた状態で回転することにより、地山(切羽)を掘削する。カッタヘッド20の外径は、スキンプレート10の外径と略等しく、地山は、スキンプレート10の外径と略等しい内径で掘削される。
【0019】
シールド掘進機100は、掘削土砂をシールド掘進機100の後方へと搬出するためのスクリュコンベア40と、セグメントリング1を組み立てるエレクタ33と、シールド掘進機100を前進させる複数のシールドジャッキ34と、カッタヘッド20により掘削された掘削坑の内周面とセグメントリング1の外周面との間のテールボイドVに充填材3を注入する注入装置50と、をさらに備える。
【0020】
隔壁11及び回転ドラム31は、カッタヘッド20と間隔を空けて配置されており、スキンプレート10、隔壁11、カッタヘッド20及び回転ドラム31によってチャンバ22が形成されている。カッタヘッド20による掘削で生じる掘削土砂は、チャンバ22に一時的に滞留する。チャンバ22内に滞留した掘削土砂は、隔壁11に形成された排出口11aからスクリュコンベア40を用いて排出され、シールド掘進機100の前進に伴って順次構築されるセグメントリング1の内側の空間を通じてシールドトンネルTの坑口(掘進開始地点)に搬送される。
【0021】
セグメントリング1は、エレクタ33を用いてスキンプレート10の内部で組立てられる。エレクタ33は、セグメント2を把持可能であると共に周方向に回転可能であり、複数のセグメント2をスキンプレート10の内周面に沿って環状に配置する。環状に配置されたセグメント2どうしを連結することにより、セグメントリング1が組立てられる。また、環状に配置されたセグメント2は、組立て済みのセグメントリング1に連結される。
【0022】
シールドジャッキ34のシリンダから突出したロッドの先端部をセグメントリング1の側面に当接させた状態でシールドジャッキ34を伸長作動させると、セグメントリング1から得られる反力により、カッタヘッド20は地山に押し付けられる。このように、シールド掘進機100は、シールドジャッキ34が既設のセグメントリング1を押圧することで得られる反力を、前方へ掘進するための推進力としている。
【0023】
注入装置50は、充填材3を吐出するポンプ51と、ポンプ51から吐出された充填材3をテールボイドVへと導く配管52と、を有する。充填材3は、セメント系材料であり、例えばモルタルである。本実施形態では、セグメント2に注入孔2aが予め形成されており、ポンプ51は、配管52を通じて注入孔2aからテールボイドVに充填材3を注入する。注入装置50によりテールボイドVに充填材3が注入されることで、セグメントリング1は充填材3を介して地山に強固に結合された状態となる。
【0024】
スキンプレート10の内周面には、
図1及び
図2に示すように、スキンプレート10とセグメントリング1との間の隙間をシールする環状のテールシール31aが軸方向に所定の間隔をあけて複数設けられる。テールシール31aは、スキンプレート10とセグメントリング1との間の隙間を通じて土砂や水、充填材3がシールド掘進機100内に侵入することを防止するために設けられる。
【0025】
また、スキンプレート10には、スキンプレート10の外周面と地山の内壁との間の隙間をシールする環状の封止部としての逆流防止板35が設けられる。逆流防止板35によって、テールボイドVに充填される充填材3がスキンプレート10と地山との間の隙間を通じてスキンプレート10の前方の切羽面に導かれることが防止される。
【0026】
また、テールシール31a及び逆流防止板35は、テールボイドVへの充填材3の充填における型枠としての機能も発揮する。テールシール31a及び逆流防止板35が設けられることで、テールボイドVへ充填材3をより確実に充填することができる。
【0027】
また、シールド掘進機100は、
図3に示すように、テールボイドVへの充填材3の充填を確認する充填確認システム60を備えている。充填確認システム60は、スキンプレート10の後端であってテールボイドVに臨む位置に設けられる測定部としての電気伝導率計61と、テールボイドVの圧力を測定する圧力測定部としての圧力計62と、注入装置50からのテールボイドVへの充填材3の充填量を測定する充填量測定部としての流量計63と、電気伝導率計61、圧力計62、及び流量計63の測定結果が入力される制御装置70と、テールボイドVへの充填材3の充填状況を表示するための表示器71と、を有する。
【0028】
図4に示すように、電気伝導率計61と、電気伝導率計61を収容しスキンプレート10に取り付けられるハウジング65と、によってセンサユニットUが構成される。
【0029】
本実施形態では、8個の電気伝導率計61(センサユニットU)が周方向に等間隔を空けてスキンプレート10の後端に設けられる(
図2参照)。具体的には、ハウジング65が、ボルト等(図示省略)を介してスキンプレート10の後端に取り付けられる。電気伝導率計61は、
図4に示すように、テールボイドVに臨む一対の電極61a,61bを有する。一対の電極61a,61bには、スキンプレート10に形成される通過孔10aを通る配線61cを通じて制御装置70(
図3参照)に接続される。電気伝導率計61は、電極61a,61b間に通電して電気抵抗を取得することで、電極61a,61bが接触する測定対象(テールボイドVの充填物)の電気伝導率を測定する。なお、
図1及び
図2では、通過孔10aの図示を省略している。
【0030】
一対の電極61a,61bは、それぞれ樹脂製のホルダ66の挿入穴66aに挿入される。ホルダ66は、例えば金属製のハウジング65の収容穴65aに挿入されて取り付けられる。このように、電気伝導率計61の一対の電極61a,61bは、ホルダ66を介してハウジング65に取り付けられる。一対の電極61a,61bの先端は、テールボイドVに進入する。
【0031】
一対の電極61a,61bが樹脂製のホルダ66によってハウジング65に取り付けられることで、電極61a,61bとハウジング65の収容穴65aとの間が封止され、電極61a,61bと収容穴65aとの間を通じたテールボイドV内の土砂や水の漏れが防止される。また、ホルダ66は、絶縁性を有する樹脂製であるため、ハウジング65を通じた電極61a,61b間での通電がホルダ66によって防止される。ホルダ66は、樹脂製に限定されないが、絶縁性を有する材質であることが望ましい。
【0032】
本実施形態では、4個の圧力計62が周方向に等間隔を空けてスキンプレート10の後端に設けられる。4個の圧力計62は、
図4に示すように、それぞれセンサユニットUのハウジング65に形成される取付孔65bに収容されハウジング65に取り付けられる。圧力計62は、スキンプレート10に形成される通過孔10aを通る配線62aを通じて制御装置70に接続される。つまり、4個の圧力計62は、電気伝導率計61と共にセンサユニットUを構成する。圧力計62は、歪みゲージ式や圧電式の圧力センサであって、圧力検出面がテールボイドVに臨むようにハウジング65に設けられる。なお、圧力計62が設けられないセンサユニットUは、圧力計62及び当該圧力計62が挿入される取付孔65bが設けられていない点を除いて
図4に示すセンサユニットUと同一の構成であるため、図示を省略する。
【0033】
流量計63は、注入装置50のポンプ51から吐出される充填材3の流量を測定する。流量計63は、例えば、ポンプ51から吐出される充填材3を導く配管52に取り付けられ、配管52を通過する流量を測定する(
図1参照)。
【0034】
また、配管52には、ポンプ51から吐出される充填材の吐出圧を測定する吐出圧計64が設けられる。吐出圧計64の測定結果は、制御装置70に入力される。
【0035】
制御装置70は、CPU等の演算処理装置、記憶装置、ネットワーク接続装置等を備えるコンピュータにより構成される。記憶装置には、予めプログラム、アプリケーション等が記憶されており、CPUがこれを実行することにより、本明細書に記載の制御装置70の各種機能を実行する。なお、制御装置70は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0036】
制御装置70は、電気伝導率計61、圧力計62、及び流量計63のそれぞれの測定結果を取得し、それぞれの測定結果に基づいて充填材3の充填確認を行う。制御装置70には、充填材3の電気伝導率が予め記憶される。制御装置70による充填材3の確認結果は、表示器71に表示される。
【0037】
次に、テールボイドVへの充填材3の充填方法について説明する。
【0038】
本実施形態のテールボイドVへの充填材3の充填方法は、テールボイドVに充填材3を充填する注入工程と、テールボイドVに充填される充填材3の電気伝導率を電気伝導率計61によって測定する測定工程と、測定工程での測定結果に基づいてテールボイドVへの充填材3の充填を確認する充填検知工程と、を含む。
【0039】
注入工程では、スキンプレート10の前進に伴って、セグメントリング1の外周面と地山の内壁との間に生じる空間であるテールボイドVにポンプ51を用いて充填材3が注入される。
【0040】
測定工程及び充填検知工程は、充填確認システム60によって実行される。
【0041】
測定工程では、電気伝導率計61によってテールボイドVの電気伝導率が測定される。また、圧力計62によってテールボイドV内の圧力が測定される。また、ポンプ51から吐出される充填材3の流量が流量計63によって測定される。また、ポンプ51の充填材3の吐出圧が吐出圧計64によって測定される。
【0042】
充填検知工程では、電気伝導率に基づく充填確認、圧力に基づく充填確認、充填量に基づく充填確認の3つが行われる。この3つの充填確認のすべてにおいてテールボイドVへの充填材3の充填が確認されると、テールボイドVに充填材3が充填された判定される。
【0043】
電気伝導率による充填確認では、8個の電気伝導率計61のそれぞれにおいて、取得した電気伝導率と制御装置70に予め記憶される充填材3の電気伝導率とを比較する。8個の電気伝導率計61の測定結果のすべてが、記憶される充填材3の電気伝導率と一致すると、電気伝導率による充填確認がなされたと判定される。
【0044】
なお、測定した電気伝導率と予め記憶される充填材3の電気伝導率とが一致するとは、厳密な意味ではなく、充填材3の電気伝導率を示す所定の数値範囲内に測定した電気伝導率が含まれることを意味する。つまり、本実施形態での充填材3の電気伝導率とは、ただ一つの値だけを含む意味ではなく、所定の幅を持った数値範囲も含む意味である。
【0045】
圧力による充填確認では、4個の圧力計62の測定結果のすべてが、予め制御装置70に記憶される圧力判定閾値を上回ると、圧力による充填確認がなされたと判定する。圧力判定閾値は、テールボイドVに充填材3が充分に充填された状態での圧力値であり、具体的には、切羽圧と同じ又は切羽圧よりも少し高い圧力値に設定される。また、圧力による充填確認では、圧力計62が測定する圧力値が圧力判定閾値を上回るかの判定に加えて、吐出圧計64が測定する圧力値に達したことを確認するようにしてもよい。これによれば、圧力計62の測定圧力を圧力判定閾値及びポンプ51の吐出圧の両方と比較することで、充填材3の充填確認の精度をより高めることができる。
【0046】
充填量による充填確認では、テールボイドVへの充填材3の充填量が予め制御装置70に記憶される充填量判定閾値を上回ると、充填量による充填確認がなされたと判定される。充填量判定閾値は、少なくともテールボイドVの容積以上の値であり、望ましくは、テールボイドVの容積よりも数%ほど大きい値に設定される。テールボイドVの容積は、地山の内径(カッタヘッド20の外径)、セグメントリング1の外径、及びシールド掘進機100の掘進速度に基づいて算出することができる。テールボイドVへの充填材3の充填量は、流量計63が測定する流量の積算値として算出することができる。つまり、流量計63が測定する単位時間当たりの充填材の充填量が、単位時間あたりに生じるテールボイドVの容積以上であれば、充填量による充填確認がなされたと判定される。
【0047】
以上のように、電気伝導率、圧力、及び充填量に基づく充填確認のすべてにおいて充填材3の充填が確認されると、テールボイドVに充填材3が充填されたと判定され、判定結果が表示器71に表示される。なお、表示器71には、電気伝導率、圧力、及び充填量の値が表示されていてもよいし、充填が不十分(未完了)であることが表示されてもよい。
【0048】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0049】
テールボイドには、地山から漏れ出す水が流入することがある。この場合、充填材に水が混入していてもテールボイドの圧力は増加するため、圧力によってテールボイドの充填を確認する方法では、水の混入を検知することは難しい。このため、圧力による充填確認のみでは、テールボイドへの充填材の充填を高い精度で検知することが難しい。
【0050】
これに対し、本実施形態では、電気伝導率計61によって測定する電気伝導率を用いて、テールボイドVへの充填材3の充填を確認する。充填材3と水は、互いに物性が異なるものであり、電気伝導率も互いに異なる。よって、充填材3の充填の確認において、充填材3の物性を示す指標値である電気伝導率に基づくことで、水と充填材3との区別が可能となる。したがって、実施形態によれば、テールボイドVへの充填材3の充填を確認する精度が向上するため、テールボイドVに充填材3をより確実に充填することができる。
【0051】
また、本実施形態では、電気伝導率、圧力、及び充填量の3つによってテールボイドVへの充填材3の充填が確認されるため、高い精度で充填材3の充填を判定することができる。
【0052】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0053】
<第1変形例>
上記実施形態では、測定部は、電気伝導率を測定する電気伝導率計61である。これに対し、測定部は、電気伝導率計61に限定されず、充填材3と水との物性の違いを検知可能なものであれば、その他の指標値を検出するものでもよい。また、充填確認システム60は、一つの測定部を備えるものに限定されず、互いに異なる物性に基づく指標値を測定する二以上の測定部を備えていてもよい。
【0054】
例えば、測定部は、指標値として、電気的物性、粘性、密度、及びpHの少なくともいずれかに基づく値を含むことが望ましい。電気的物性、粘性、密度、及びpHは、それぞれ水と充填材3とを区別できるような差が生じる物性に基づくため、これらを利用することで、水と充填材3とを容易に区別できる。
【0055】
粘性に基づく指標値を測定する測定部としては、例えば、振動デバイスを用いた充填センサがある。この充填センサは、振動デバイスを振動させ、振動デバイスの周波数特性を検出することで、振動デバイスが接触する物質を粘性の違いによって物質を識別することができる。一般的には、この充填センサは、空気、水、コンクリートやグラウト材といった材料の識別が可能である。
【0056】
密度は、例えば、いわゆるラジオアイソトープ(RI)計器によって測定することができる。RI計器は、例えばγ線源から対象に向けてγ線を出射し、対象の内部で散乱し土砂から抜け出てくるγ線を、γ線検出部を用いて検出する。γ線には、密度が高いほど対象の内部で消滅しやすい性質があるため、γ線源から土砂に向けて出射されたγ線の数と、γ線検出部を用いて検出されたγ線の数と、を比較することにより、密度を測定することができる。また、RI計器は、γ線に代えて、中性子線を利用するものでもよい。このようなRI計器を測定部として備え、密度に基づいてテールボイドV内の物質を識別してもよい。
【0057】
また、pHを測定する測定部は、例えばpH計である。
【0058】
以上のような第1変形例であっても、水と充填材3とを区別することができるため、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0059】
<第2変形例>
上記実施形態では、測定部は、充填材3の物性を示す指標値を測定するものである。これに対し、テールボイドVに充填される充填材3と地山から流入する水とには、温度差が生じることが一般的である。
【0060】
よって、測定部は、
図5に示すように、テールボイドV内の温度を測定する温度計161であってもよい。この場合、制御装置70には、注入装置50によってテールボイドVに注入される温度に基づいて設定される温度閾値が記憶される。温度計161の測定結果が温度閾値を上回る場合には、充填材3が充填されたと判定する。
【0061】
このような第2変形例によっても、充填材3と水とを区別することができるため、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
また、例えば海中にトンネルを掘削する場合など、テールボイドVに海水が侵入する場合、充填材3と海水との電気伝導率の違いは、充填材3と水(真水)との電気伝導率の違いよりも小さくなる。このようにテールボイドVに侵入する侵入物と充填材3との物性の違いが生じにくい場合には、測定部である電気伝導率計61の測定結果に基づく充填確認に代えて、又は加えて、測定部としての温度計161の測定結果に基づいて充填材の充填確認を行うことで、充填材3の充填の検知精度を向上させることができる。
【0063】
<第3変形例>
上記実施形態では、電気伝導率計61は、一対の電極61a,61bに電流または電圧を印加し、電気抵抗を測定する、いわゆる2端子式(2極式)のものである。これに対し、電気伝導率計61は、電力が印加される一対の印加電極と、一対の印加電極の間を流れる電流を測定する一対の測定用電極と、を有する、いわゆる4端子式(4極式)のものでもよい。
【0064】
<第4変形例>
上記実施形態の充填方法は、測定工程によって測定した電気伝導率、圧力、及び充填量に基づいて充填材3の充填を検知する充填検知工程が行われる。これに対し、制御装置70による充填検知工程は必須のものではない。制御装置70によって充填検知工程を行わない場合には、測定工程によって測定した電気伝導率、圧力、及び充填量が表示器71によって表示される。表示器71によって表示された電気伝導率、圧力、及び充填量に基づいて、現場の作業者が充填材3の充填を判断するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態の充填検知工程では、電気伝導率、圧力、及び充填量のすべてで充填が確認されるとテールボイドVに充填材3が充填されたと判定されたが、少なくとも電気伝導率によって充填材3の充填が確認された状態であればテールボイドVに充填材3が充填されたと判定してもよい。また、圧力計62及び流量計63の構成は必須のものではない。
【0066】
<第5変形例>
充填確認システム60では、充填材3がテールボイドVに充填されたことを示す結果のみならず、テールボイドVへの充填状況を表示器71に表示してもよい。
【0067】
具体的に説明すると、セグメントリング1は、分割されたセグメント2を周方向に連結して構成されるため、注入孔2aが形成されるセグメント2の位置は、セグメントリング1ごとに異なることがある。つまり、充填材3の充填位置は、セグメントリング1によって異なることがある。
【0068】
これに対し、上記実施形態では、電気伝導率計61は、周方向に等間隔を空けて8個設けられる。よって、8個の電気伝導率計61の測定結果を観察することで、周方向における充填材3の充填状況(充填材3の分布)を把握することができる。8個の電気伝導率計61の測定結果を利用することで、充填材3の充填状況を3Dマッピングすることができる。このような変形例によれば、充填材3の充填状況をより明確に把握できるため、作業効率を向上させることができる。
【0069】
なお、充填材3の充填はセグメントリング1の注入孔2aを通じて行う構成に限定されず、図示を省略するが、例えば、スキンプレート10に沿って又はスキンプレート10の内部に配管を設け、スキンプレート10の後端に注入孔を設けて、テールボイドVの前方側から充填材3を注入してもよい。
【0070】
<第6変形例>
上記実施形態では、測定部は、テールボイドVの充填を確認するために利用される。これに対し、シールド掘進機100は、スキンプレート10の外周と地山との内壁の間、及び、スキンプレート10の内周とセグメントリング1の外周との間を通じた充填材の漏れを検知するために、測定部と同様の計測器をさらに備えていてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0072】
100 シールド掘進機(トンネル掘進機)
1 セグメントリング(覆工体)
3 充填材
10 スキンプレート(胴体)
20 カッタヘッド(掘削部)
35 逆流防止板(封止部)
50 注入装置
61 電気伝導率計(測定部)
62 圧力計(圧力測定部)
63 流量計(充填量測定部)
70 制御装置
161 温度計(測定部)