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特開2023-93090シリンジポンプ、医療機器、およびシリンジポンプのセルフテスト方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093090
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】シリンジポンプ、医療機器、およびシリンジポンプのセルフテスト方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20230627BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61M5/145 508
A61M5/168 510
A61M5/168 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208500
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】金川 隆生
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩
(72)【発明者】
【氏名】篠川 光正
(72)【発明者】
【氏名】中村 将太
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066FF01
4C066HH02
4C066HH12
4C066QQ46
4C066QQ58
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
(57)【要約】
【課題】セルフテスト時にユーザがスライダを手動で移動させることを要しないシリンジポンプを提供する。
【解決手段】シリンジポンプは、シリンジのプランジャロッドをバレル内に押し込む送り方向に移動させるスライダと、スライダを送り方向と逆方向とに駆動する駆動部と、スライダの位置を検出する検出器と、駆動部を駆動させることよりスライダの位置を制御する制御部とを備える。スライダは、第1の位置と、第1の位置よりも第1の方向側の第2の位置との間を移動する。制御部は、シリンジポンプが起動状態となると、検出器からスライダの位置を示す情報を取得する。制御部は、スライダの位置が第2の位置から所定の距離以上離れていない場合には、スライダの位置が第2の位置から所定の距離以上離れるようにスライダを第2の方向に移動させた後に、スライダを第1の方向に少なくとも所定の距離移動させることによってセルフテストを行う。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジポンプであって、
前記シリンジポンプに取り付けられたシリンジのプランジャロッドを、前記シリンジのバレル内に押し込む第1の方向に移動させるスライダと、
前記スライダを、前記第1の方向と、前記第1の方向とは反対の第2の方向とに駆動する駆動部と、
前記スライダの位置を検出する検出器と、
前記駆動部を駆動させることより、前記スライダの位置を制御する制御部とを備え、
前記スライダは、第1の位置と、前記第1の位置よりも前記第1の方向側の第2の位置との間を移動可能であり、
前記制御部は、
前記シリンジポンプが起動状態となると、前記検出器から前記スライダの位置を示す情報を取得し、
前記スライダの位置が前記第2の位置から所定の距離以上離れていない場合には、前記スライダの位置が前記第2の位置から前記所定の距離以上離れるように、前記スライダを前記第2の方向に移動させ、
前記スライダを前記第2の方向に移動させた後に、前記スライダを前記第1の方向に少なくとも前記所定の距離移動させることによってセルフテストを行う、シリンジポンプ。
【請求項2】
前記制御部は、前記スライダの位置が前記第2の位置から前記所定の距離以上離れていない場合には、前記スライダの位置が前記第2の位置から前記所定の距離だけ離れるように、前記スライダを前記第2の方向に移動させる、請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検出器から前記スライダの位置を示す情報を取得したことに基づき、前記スライダの位置と、前記第2の位置から前記第2の方向に前記所定の距離離れた第3の位置とを比較し、
前記スライダの位置が前記第3の位置よりも前記第1の方向側であることを条件に、前記スライダを前記第2の方向に前記第3の位置まで移動させる、請求項2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記スライダの位置が前記第3の位置よりも前記第1の方向側である場合、前記スライダの位置と、前記第3の位置との間の距離を算出し、
算出された前記距離だけ、前記スライダを前記第2の方向に移動させる、請求項3に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシリンジポンプを備える、医療機器。
【請求項6】
シリンジポンプのセルフテスト方法であって、
前記シリンジポンプは、シリンジのプランジャロッドをバレル内に押し込む第1の方向に移動させるスライダを有し、前記スライダは、第1の位置と、前記第1の位置よりも前記第1の方向側の第2の位置との間を移動可能であり、
前記シリンジポンプのセルフテスト方法は、
前記シリンジポンプが起動状態となると、前記スライダの位置を検出するステップと、
検出された前記スライダの位置が前記第2の位置から所定の距離以上離れていない場合、前記スライダの位置が前記第2の位置から前記所定の距離以上離れるように、前記スライダを前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動させるステップと、
前記スライダを前記第2の方向に移動させた後に、前記スライダを前記第1の方向に前記所定の距離移動させることによって前記セルフテストを行うステップとを備える、シリンジポンプのセルフテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンジポンプ、医療機器、およびシリンジポンプのセルフテスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンジのプランジャロッドをスライダでシリンジのバレル内に押し込む方向(送り方向)に移動させることによって、シリンジ内の薬液を送り出すシリンジポンプが知られている。たとえば、特開2004-24884号公報に開示されたシリンジポンプは、電源スイッチが押されて電源が入ると、自動的にセルフテスト(「セルフチェック」,「自己診断」,「動作チェック」とも称される)を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-24884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルフテストを行う場合、シリンジポンプは、シリンジがセットされていない状態で、スライダを送り方向に所定の距離だけ移動させる。シリンジポンプの起動時のスライダの位置によっては、スライダを送り方向に所定の距離移動できない場合もある。この場合には、医療従事者(ユーザ)がスライダの位置を、送り方向とは逆方向に手動で移動させる必要がある。
【0005】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、セルフテスト時にユーザがスライダを手動で移動させることを必要としないシリンジポンプ、当該シリンジポンプを備える医療機器、およびシリンジポンプのセルフテスト方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、シリンジポンプは、シリンジポンプに取り付けられたシリンジのプランジャロッドを、シリンジのバレル内に押し込む第1の方向に移動させるスライダと、スライダを、第1の方向と、第1の方向とは反対の第2の方向とに駆動する駆動部と、スライダの位置を検出する検出器と、駆動部を駆動させることより、スライダの位置を制御する制御部とを備える。スライダは、第1の位置と、第1の位置よりも第1の方向側の第2の位置との間を移動可能である。制御部は、シリンジポンプが起動状態となると、検出器からスライダの位置を示す情報を取得する。制御部は、スライダの位置が第2の位置から所定の距離以上離れていない場合には、スライダの位置が第2の位置から所定の距離以上離れるように、スライダを前記第2の方向に移動させる。制御部は、スライダを第2の方向に移動させた後に、スライダを第1の方向に少なくとも所定の距離移動させることによってセルフテストを行う。
【0007】
本開示の他の局面に従うと、医療機器は、上記シリンジポンプを備える。
本開示のさらに他の局面に従うと、シリンジポンプは、シリンジのプランジャロッドをバレル内に押し込む第1の方向に移動させるスライダを有し、スライダは、第1の位置と、第1の位置よりも第1の方向側の第2の位置との間を移動可能である。シリンジポンプのセルフテスト方法は、シリンジポンプが起動状態となると、スライダの位置を検出するステップと、検出されたスライダの位置が第2の位置から所定の距離以上離れていない場合、スライダの位置が第2の位置から所定の距離以上離れるように、スライダを第1の方向とは反対の第2の方向に移動させるステップと、スライダを第2の方向に移動させた後に、スライダを第1の方向に所定の距離移動させることによってセルフテストを行うステップとを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の開示によれば、セルフテスト時にユーザがスライダを手動で移動させることが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】医療機器の一例としての血液浄化装置の使用状態を示した図である。
図2】シリンジポンプ、および、シリンジポンプに取り付けられるシリンジの各々の外観を示す斜視図である。
図3図2のIII線矢視図である。
図4図2のIV線矢視図である。
図5】シリンジポンプの内部構造の概略を示した図である。
図6】スライダの押圧面がフランジ保持部から最も離れた状態を示した図である。
図7】スライダの押圧面がフランジ保持部に最も近づいた状態を示した図である。
図8】シリンジポンプのハードウェア構成を示す図である。
図9】スライダが位置P1にある状態を示している。
図10】スライダが位置P2にある状態を示している。
図11】シリンジポンプにおいて実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
図12】セルフテストの結果を表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
[A.医療機器の外観]
図1は、医療機器の一例としての血液浄化装置の使用状態を示した図である。図1に示されるように、血液浄化装置1は、シリンジポンプ100を備える。なお、血液浄化装置は、透析装置とも称される。
【0012】
[B.シリンジポンプの外観]
図2は、シリンジポンプ、および、シリンジポンプに取り付けられるシリンジの各々の外観を示す斜視図である。図3は、図2のIII線矢視図である。図4は、図2のIV線矢視図である。
【0013】
図2に示すように、シリンジポンプ100には、シリンジ10が装着される。シリンジ10は、バレル20とプランジャロッド30とを含む。
【0014】
バレル20は、略円筒状の外形を有している。バレル20の先端に注液口22が設けられている。バレル20の後端に第1フランジ21が設けられている。バレル20は、ポリプロピレンなどの透明または半透明の樹脂にて構成されている。バレル20の内側に、薬液が充填される。
【0015】
プランジャロッド30は、バレル20の内側に嵌入され、後端に第2フランジ31を有する。プランジャロッド30の先端側には、バレル20の内周面と摺接するガスケット部32が設けられている。
【0016】
シリンジポンプ100は、シリンジ10の着脱のために、シリンジを保持する要素(後述される、クランプ112およびスライダ120)の変位が検出されると、起動するように構成されている。これにより、医療従事者(以下、「ユーザ」とも称する)は、シリンジポンプ100が起動されていない状態でシリンジを装着しようとして上記要素を変位させることにより、シリンジポンプ100を起動させることができる。なお、変位の検出に伴う起動は、必須ではない。以下、シリンジポンプ100の構成を詳細に説明する。
【0017】
図2図4に示すように、シリンジポンプ100は、操作パネル180を含む。操作パネル180には、起動スイッチ183を含む各種のスイッチと、ディスプレイ181,182とが設けられている。一実現例では、ディスプレイ181には、シリンジ10に充填された薬剤の情報が表示され、ディスプレイ182には、シリンジ10に充填された薬剤の送液(流速等)に関する情報が表示される。ただし、ディスプレイ181,182に表示される情報は、これらに限定されない。ディスプレイ181,182上にタッチパネルを備えていてもよく、この場合、ユーザは、タッチパネルに対してタッチ操作をすることによってシリンジポンプ100に情報を入力し得る。
【0018】
シリンジポンプ100は、バレル受け部110と、ブーツ117と、スライダ120とを含む。
【0019】
バレル受け部110には、バレル20が載置される。バレル受け部110は、バレル20の外周面の下側部分と接する凹面部を有している。バレル受け部110の後端には、第1フランジ21を保持するフランジ保持部115が設けられている。フランジ保持部115は、溝部111と、押さえ板119とを有する。
【0020】
溝部111には、押さえ板119が挿入されている。溝部111には、押さえ板119を図3の左向き(X軸負方向)に向けて付勢する部材(図示せず)が配置されている。バレル受け部110の本体には、ホール素子131が設けられ、押さえ板119には、磁石132が埋め込まれている。第1フランジ21は、ホール素子131と磁石132(押さえ板119)との間に挿入される。
【0021】
スライダ120は、バレル受け部110に対して移動可能である。スライダ120の移動により、バレル受け部110とスライダ120との間の距離は変更される。なお、以下では、スライダ120がシリンジ10のプランジャロッド30をシリンジ10のバレル20内に押し込む方向(X軸負方向)を、「送り方向」と称する。また、送り方向とは反対の方向(X軸正方向)を、「逆方向」とも称する。
【0022】
スライダ120は、複数の部品を組み合わせて構成される。このようなスライダ120は、「スライダ組立体」とも称される。具体的には、スライダ120は、スライダカバー121と、第2フランジ31を押圧する押圧面122と、第2フランジ31を押圧面122と挟持して保持する可動爪部123とを有している。
【0023】
可動爪部123は、ばねなどの付勢機構により押圧面122に接近する方向に付勢されている。スライダ120は、バレル20に向かってプランジャロッド30を移動可能に保持する。なお、両矢印D1は、スライダ120の移動方向を表す。スライダ120によって、プランジャロッド30がバレル20に向かって移動させられることにより、バレル20内の薬液が注液口22からチューブ内に注入される。図2中の矢印D3は、両矢印D1で示される方向のうち、スライダ120がバレル受け部110から離れる向き(すなわち、逆方向)を表す。
【0024】
シリンジポンプ100は、押圧センサ140をさらに含む。押圧センサ140は、押圧面122において、第2フリンジ31等の部材による押圧の有無を検出する。
【0025】
スライダ120は、プランジャロッド30を着脱する際に、プランジャロッド30の延在方向における、スライダ120自体の位置および可動爪部123の位置を、手動で調整するためのクラッチレバー124をさらに有している。具体的には、クラッチレバー124を一方向に回動させることにより、スライダ120は手動で移動することが規制されるロック状態になるとともに、可動爪部123は押圧面122側に付勢された状態で維持される。クラッチレバー124を他方向に回動させることにより、スライダ120はアンロック状態になるとともに、可動爪部123は付勢力に抗して押圧面122から離間するように移動させられる。
【0026】
なお、スライダ120の構成は上記に限られず、スライダ120は、第2フランジ31を押圧する押圧面122、および、第2フランジ31を押圧面122との間に収容する固定爪部を有していてもよい。
【0027】
シリンジポンプ100は、バレル受け部110の上方に、クランプ112を含む。クランプ112は、両矢印R0方向に回動し、上下方向(両矢印D2方向,Z軸方向)に伸縮可能である。クランプ112は、伸縮部112Aと羽根部112Xを含む。
【0028】
[C.シリンジポンプの内部構造]
図5は、シリンジポンプ100の内部構造の概略を示した図である。図5に示されるように、シリンジポンプ100は、スライダ120と、駆動部190と、ポテンショメータ170と、ブーツ117と、ブーツ係止部118とを備える。
【0029】
スライダ120は、上述したように、スライダカバー121と、押圧面122と、可動爪部123と、クラッチレバー124とを有する。スライダ120は、さらに、パイプシャフト125と、ナットフォルダ126と、インナークラッチシャフト128とを有する。ナットフォルダ126には、ハーフナット127が取り付けられている。インナークラッチシャフト128は、パイプシャフト125の中空内において、X軸方向に延在している。
【0030】
ユーザが、クラッチレバー124を操作すると、インナークラッチシャフト128が、パイプシャフト125内において、クラッチレバー124の操作方向に応じた向きに回転する。
【0031】
ユーザがクラッチレバー124を一方向に回動させることにより、インナークラッチシャフト128の回転に基づき、ハーフナット127の溝とリードネジ191の溝とが係合(以下、「クラッチの係合」とも称する)する。これにより、スライダ120は手動で移動することが規制されるロック状態になる。一方、ユーザがクラッチレバー124を他方向に回動させることにより、インナークラッチシャフト128の回転に基づき、ハーフナット127の溝とリードネジ191の溝とが係合が解除される。これにより、スライダ120は手動で移動させることが可能なアンロック状態になる。
【0032】
駆動部190は、リードネジ191と、歯車192,193と、モータ194とを備える。駆動部190は、シリンジポンプ100内で位置固定されている。
【0033】
リードネジ191は、軸受け(図示せず)により回動自在に支持されている。歯車192は、回転軸がリードネジ191と同じとなるように、リードネジ191の端部に取り付けられている。歯車193は、モータ194の出力軸に取り付けられている。歯車193は、歯車192に噛み合っている。
【0034】
後述する制御ユニット150(図8)によって、モータ194は回転する。モータ194が正転(出力軸側から見て時計方向)すると、クラッチの係合を条件に、本例では、スライダ120はX軸負方向(モータ194に近づく方向)に移動する。すなわち、モータ194が正転すると、スライダ120は、シリンジ10のプランジャロッド30を、シリンジ10のバレル20内に押し込む送り方向に移動する。
【0035】
モータ194が逆転(出力軸側から見て反時計方向)すると、本例ではスライダ120はX軸正方向(モータ194から遠ざかる方向)に移動する。すなわち、モータ194が逆転すると、クラッチの係合を条件に、スライダ120は送り方向と反対の逆方向に移動する。
【0036】
ポテンショメータ170は、本例では、直線摺動式かつ接触型のメータである。ポテンショメータ170は、筐体171と、シャフト172とを備える。シャフト172は、X軸方向に移動する。シャフト172の基端部は、筐体171内において移動可能に取り付けられている。シャフト172の先端部は、ナットフォルダ126に取り付けられている。ポテンショメータ170は、シャフト172の位置に応じた出力を、制御ユニット150(図8)に送る。
【0037】
ブーツ117は、パイプシャフト125がシリンジポンプ100の外部に露出しないように、パイプシャフト125の周囲を覆っている。ブーツ117は、蛇腹の構造を有し、伸縮可能である。ブーツ117の一端は、スライダ120に取り付けられている。ブーツの他端は、ブーツ係止部118に取り付けられている。ブーツ係止部118は、シリンジポンプ100内で位置固定しており、移動しない。
【0038】
以下では、説明の便宜上、スライダ120の位置(詳しくは、X軸方向の位置)を、スライダ120の押圧面122の位置(詳しくは、X軸方向の位置)を基準として説明する。ただし、スライダ120の位置の基準は、これに限定されるものではない。
【0039】
図6は、スライダ120の押圧面122がフランジ保持部115から最も離れた状態を示した図である。すなわち、図6は、スライダ120がモータ194から最も離れた状態を示した図である。
【0040】
説明の便宜上、図6に示されるように、フランジ保持部115のX軸方向の位置をPoとし、かつ押圧面122のX軸方向の位置をPfとする。図6の状態では、ポテンショメータ170のシャフト172の露出している部分の長さが最大となる。以下では、図6のように押圧面122がフランジ保持部115から最も離れたときの、ポテンショメータ170の筐体171と、スライダ120のナットフォルダ126との間の距離を、「Lmax」と表記する。
【0041】
図7は、スライダ120の押圧面122がフランジ保持部115に最も近づいた状態を示した図である。すなわち、図7は、スライダ120がモータ194に最も近づいた状態を示した図である。より詳しくは、図7は、押圧面122がフランジ保持部115に接触した状態、すなわちスライダ120が最終位置にある状態を示した図である。
【0042】
図7に示されているように、押圧面122のX軸方向の位置はPoとなる。すなわち、フランジ保持部115の位置と、押圧面122の位置とが同じになる。図7の状態では、ポテンショメータ170のシャフト172の露出している部分の長さが最小となる。以下では、図7のように押圧面122がフランジ保持部115に最も近づいたときの、ポテンショメータ170の筐体171と、スライダ120のナットフォルダ126との間の距離を、「Lmin」と表記する。よって、位置Poと位置Pfとの間の距離(一定値)は、「Lmax-Lmin」となる。
【0043】
以上のように、シリンジポンプ100は、シリンジポンプ100に取り付けられたシリンジ10のプランジャロッド30を、シリンジ10のバレル30内に押し込む送り方向(第1の方向)に移動させるスライダ120と、スライダ120を、送り方向と、送り方向とは反対の逆方向(第2の方向)とに駆動する駆動部190と、スライダ120の位置を検出するポテンショメータ170(検出器)と、駆動部190を駆動させることより、スライダ120の位置を制御する制御ユニット150(制御部)とを備える。スライダ120は、位置Pf(第1の位置)と、位置Pfよりも送り方向側の位置Po(第2の位置)との間を移動可能である。
【0044】
[D.シリンジポンプのハードウェア構成]
図8は、シリンジポンプ100のハードウェア構成を示す図である。図8に示されるように、シリンジポンプ100は、シリンジポンプ100の動作を制御する制御ユニット150を含む。制御ユニット150は、所与のプログラムを実行するプロセッサ151と、プロセッサ151が実行するプログラムおよび当該プログラムの実行に必要な種々のデータを格納するメモリ152とを含む。
【0045】
シリンジポンプ100では、プロセッサ151が所与のプログラムを実行することによって、本実施の形態に記載された動作が実現される。なお、シリンジポンプ100は、プロセッサ151の代わりに、もしくは、プロセッサ151に加えて、ASIC(application specific integrated circuit)またはFPGA(field-programmable gate array)などの専用回路を含んでいてもよい。
【0046】
シリンジポンプ100は、外部機器と通信するためのインターフェース101を含む。当該通信は有線による通信であってもよく、この場合、インターフェース101はUSB(Universal Serial Bus)インターフェースであってもよい。通信は無線通信であってもよく、この場合、インターフェース101はネットワークカードであってもよい。通信の方式は、特に限定されない。
【0047】
シリンジポンプ100は、ポテンショメータ114,170を含む。ポテンショメータ114は、クランプ112(羽根部112X)の両矢印D2方向の位置に応じた電圧値を出力する。ポテンショメータ170は、スライダ120の両矢印D1方向の位置に応じた電圧値を出力する。ポテンショメータ114,170の双方は、制御ユニット150へ電圧値を出力する。ここで、ポテンショメータ114,170の検出出力の利用方法について説明する。
【0048】
制御ユニット150のプロセッサ151は、ポテンショメータ170からの電圧値に基づいてスライダ120の両矢印D1方向(X軸方向)の位置を特定する。具体的には、プロセッサ151は、スライダ120の位置として、図6および図7に基づき説明したように、位置Po~Pfの間の位置を特定する。
【0049】
スライダ120にプランジャロッド30がセットされている場合、スライダ120の位置に従ってプランジャロッド30の位置が変化する。メモリ152には、シリンジのサイズと電圧値(プランジャロッド30の位置)の組合せに応じた、シリンジ内の薬剤の残量が格納されていてもよく、プロセッサ151は、ポテンショメータ170からの電圧値に応じた薬剤の残量を出力してもよい。
【0050】
プロセッサ151は、ポテンショメータ114からの電圧値に基づいてクランプ112の両矢印D2方向の位置を特定する。メモリ152には、シリンジのサイズに応じた電圧値が格納されていてもよく、プロセッサ151は、ポテンショメータ170からの電圧値に応じたシリンジのサイズ(たとえば、10mL用シリンジ、20mL用シリンジなど)を出力してもよい。一実現例では、ユーザは、シリンジ10のバレル20をバレル受け部110にセットした後、バレル20に当接する位置までクランプ112(詳しくは、羽根部112X)を下降させる。これにより、クランプ112(詳しくは、羽根部112X)の両矢印D2方向の位置は、バレル20の径に応じて変化し、これにより、バレル20のサイズに応じて変化する。
【0051】
シリンジポンプ100は、フォースセンサ(図示せず)を含む。フォースセンサは、スライダ120に対して図2の矢印D3の向きに印加される力の大きさを、検出して制御ユニット150へ出力する。ホール素子131も、また、それぞれの検出結果を制御ユニット150へ出力する。
【0052】
シリンジポンプ100は、モータ194を含む。モータ194は、典型的には、ステッピングモータである。制御ユニット150は、スライダ120を両矢印D1方向(X軸方向)に移動させるために、モータ194を駆動する。
【0053】
シリンジポンプ100は、ロータリエンコーダ195を含む。ロータリエンコーダ195は、モータ194の回転量を、検出して制御ユニット150へ出力する。
【0054】
操作パネル180は、制御ユニット150に接続されている。プロセッサ151には、起動スイッチ183を含む、操作パネル180内の各種のスイッチへの操作に応じた信号が入力される。プロセッサ151は、ディスプレイ181,182の表示を制御する。
【0055】
変位検出用センサ160,911,912,921のそれぞれは制御ユニット150と接続されている。プロセッサ151は、変位検出用センサ160,911,912,921のそれぞれからの検出出力を取得する。
【0056】
[E.シリンジポンプのセルフテスト]
シリンジポンプ100は、セルフテストを実施可能である。詳しくは、シリンジポンプ100では、プロセッサ151は、当該シリンジポンプ100のセルフテスト(セルフチェック,自己診断,動作チェック)を実施する。
【0057】
シリンジポンプ100は、セルフテストにおいていかなる項目のチェックを実行してもよいが、一実現例では、セルフテストにおいて以下の(e1)~(e8)の各項目のチェックを実行する。
【0058】
(e1)バレル検出用センサチェック
プロセッサ151は、「バレル検出用センサチェック」として、バレル受け部110へのバレル20の載置の有無を検出するためのセンサ(ホール素子131)の動作をチェックする。
【0059】
バレル受け部110にバレル20がセットされていない状態では、磁石132の磁束がホール素子131に届く。一方、バレル受け部110にバレル20がセットされている状態では、押さえ板119がバレル20の第1フランジ21によって、図3の右側(スライダ120が位置する側)に向けて付勢され、これにより、バレル受け部110にバレル20がセットされていない状態よりも、ホール素子131と磁石132との間の距離が長くなる。これにより、磁石132の磁束は、ホール素子131に届かなくなる。
【0060】
「バレル検出用センサチェック」において、プロセッサ151は、ホール素子131が磁石132の磁束を検出していれば、ホール素子131の動作が正常であると判断し、磁束を検出していなければ異常であると判断する。これにより、ホール素子131が磁束を検出できない状態にある場合、または、「バレル検出用センサチェック」が実行されたときにバレル受け部110にバレル20がセットされていた場合、ホール素子131の動作が異常であると判断される。
【0061】
(e2)クラッチ検出用センサチェック
プロセッサ151は、「クラッチ検出用センサチェック」として、クラッチレバー124の状態(ロック/ロック解除)を検出するためのセンサ(変位検出用センサ160)の動作をチェックする。
【0062】
「クラッチ検出用センサチェック」において、プロセッサ151は、投光器161から放出された光を受光器162が検出すること、および、投光器161が光を放出しない状態で受光器162が光を検出しないことを確認する。
【0063】
より具体的には、プロセッサ151は、投光器161に光の放出を指示したときの受光器162の検出出力が投光器161からの光を検出したことを表すものであり、かつ、投光器161に光を放出しないことを指示したときの受光器162の検出出力が投光器161からの光を検出しないことを表すものである場合、変位検出用センサ160の動作が正常であると判断する。
【0064】
一方、プロセッサ151は、投光器161に光の放出を指示したときの受光器162の検出出力が投光器161からの光を検出しないことを表すものであるか、または、投光器161に光を放出しないことを指示したときの受光器162の検出出力が投光器161からの光を検出したことを表すものである場合、変位検出用センサ160の動作が異常であると判断する。
【0065】
(e3)押し子検出用センサチェック
プロセッサ151は、「押し子検出用センサチェック」として、第2フランジ31等の要素による押圧を検出するためのセンサ(押圧センサ140)の動作をチェックする。
【0066】
一実現例では、押圧センサ140は、0.0Vから5.0Vの範囲の電圧値を出力可能であり、押圧されていない状態にあるときには1.0Vの電圧値を出力し、そして、押圧されている状態にあるときには4.0Vの電圧値を出力する、ように構成されている。セルフテストにおいて、プロセッサ151は、押圧センサ140から出力される電圧値が1.0V~4.0Vの範囲内であれば、押圧センサ140の動作が正常であると判断し、当該範囲の外であれば異常であると判断する。
【0067】
(e4)シリンジサイズ検出用センサチェック
プロセッサ151は、「シリンジサイズ検出用センサチェック」として、バレル受け部110上に載置されたシリンジのサイズを検出するためのセンサ(ポテンショメータ114)の動作をチェックする。
【0068】
一実現例では、ポテンショメータ114は、0.0Vから5.0Vの範囲の電圧値を出力可能であり、そして、バレル20のサイズに応じて1.0Vから4.0Vの電圧値を出力する、ように構成されている。セルフテストにおいて、プロセッサ151は、ポテンショメータ114から出力される電圧値が1.0V~4.0Vの範囲内であれば、ポテンショメータ114の動作が正常であると判断し、当該範囲の外であれば異常であると判断する。
【0069】
(e5)スライダ位置検出用センサチェック
プロセッサ151は、「スライダ位置検出用センサチェック」として、スライダ120の両矢印D1方向の位置を検出するためのセンサ(ポテンショメータ170)の動作をチェックする。
【0070】
一実現例では、ポテンショメータ170は、0.0Vから5.0Vの範囲の電圧値を出力可能であり、そして、スライダ120の位置に応じて1.0V~4.0Vの電圧値を出力する、ように構成されている。セルフテストにおいて、プロセッサ151は、ポテンショメータ170から出力される電圧値が1.0V~4.0Vの範囲内であれば、ポテンショメータ170の動作が正常であると判断し、当該範囲の外であれば異常であると判断する。
【0071】
(e6)閉塞検出用センサチェック
プロセッサ151は、「閉塞検出用センサチェック」として、シリンジ10に充填された薬剤の流路における閉塞の有無を検出するためのセンサ(フォースセンサ)の動作をチェックする。
【0072】
一実現例では、フォースセンサは、0.0Vから5.0Vの範囲の電圧値を出力可能であり、上記流路において閉塞が発生していない状態では1.0Vの電圧値を出力し、そして、上記流路において閉塞が発生している状態では閉塞の程度に応じて、1.0Vを超える所与の値から4.0Vまでの電圧値を出力するように構成されている。セルフテストにおいて、プロセッサ151は、フォースセンサから出力される電圧値が1.0V~4.0Vの範囲内であれば、フォースセンサの動作が正常であると判断し、当該範囲の外であれば異常であると判断する。
【0073】
(e7)モータ駆動チェック
プロセッサ151は、「モータ駆動チェック」としてモータ194の動作をチェックする。より具体的には、セルフテストにおいて、プロセッサ151は、モータ194に所与の駆動力を一定時間印加し、ロータリエンコーダ195の検出出力に基づいて当該一定時間におけるモータ194の回転量を特定する。
【0074】
メモリ152には、モータ194の回転量に関する基準値が格納されている。プロセッサ151は、特定した回転量とメモリ152内の基準値との差異が一定値未満であれば、モータ194の動作は正常であると判断し、一定値以上であれば異常であると判断する。
【0075】
(e8)シリンジ未装着状態検出
プロセッサ151は、「シリンジ未装着状態検出」として、セルフテストがシリンジポンプ100においてシリンジ10の装着状態をチェックする。
【0076】
一実現例では、プロセッサ151は、セルフテストにおいて、ホール素子131が磁石132の磁束を検出せず、かつ、押圧センサ140が出力する電圧値が4.0V(押圧されている状態に相当する電圧値)である場合には、シリンジ10が装着されていると判断する。一方、ホール素子131が磁石132の磁束を検出していること、および、押圧センサ140が出力する電圧値が4.0Vより低い値(押圧されていない状態に相当する電圧値)である場合には、シリンジ10が装着されていない状態であると判断する。
【0077】
セルフテストは、通常、シリンジ10が装着されていない状態で行われる。それゆえ、シリンジ10がシリンジポンプ100に装着されている場合には、プロセッサ151は、セルフテスト開始時にシリンジ10が装着されていたと判断すると、その旨のメッセージ(警告)を出力する。
【0078】
[F.セルフテスト時におけるスライダの移動制御]
ところで、スライダ位置検出用センサチェックでは、モータ194を駆動することにより、スライダ120を送り方向に所定の距離Lth以上移動させる必要がある。スライダ位置検出用センサチェックの際には、一例として、スライダを少なくとも5.0mm移動させる必要がある。また、通常、スライダ位置検出用センサチェックと同時に、モータ駆動チェックが行われる。
【0079】
図9は、スライダ120が位置P1にある状態を示している。詳しくは、図9は、押圧面122が位置P1にある状態を示している。なお、位置P1は、位置Poから上述した所定の距離Lthだけ離れた位置P3よりも、さらに位置Pf側である。
【0080】
なお、このときのシャフト172の露出している部分の長さ(すなわち、筐体171とナットフォルダ126との間の距離)を「L1」とする。この場合、押圧面122とフランジ保持部115との間の距離Ld(この場合には、位置Poと位置P1との間の距離)は、「L1-Lmin」となる。
【0081】
位置Poと位置P1との間の距離は、位置Poと位置P3との間の距離(すなわち、所定の距離Lth)よりも長い。したがって、スライダ120が図9に示す位置にある場合には、この位置からスライダ120を送り方向(矢印501の方向)に所定の距離Lth移動させることにより、スライダ位置検出用センサチェックを行うことができる。
【0082】
図10は、スライダ120が位置P2にある状態を示している。詳しくは、図10は、押圧面122が位置P2にある状態を示している。なお、位置P2は、位置Poから上述した所定の距離Lthだけ離れた位置P3よりも、位置Po側である。
【0083】
なお、このときのシャフト172の露出している部分の長さ(すなわち、筐体171とナットフォルダ126との間の距離)を「L2」する。押圧面122とフランジ保持部115との間の距離Ld(この場合、位置Poと位置P2との間の距離)は、「L2-Lmin」となる。
【0084】
位置Poと位置P2との間の距離は、位置Poと位置P3との間の距離(すなわち、所定の距離Lth)よりも短い。したがって、スライダ120が図10に示す位置にある場合には、この位置からスライダ120を送り方向(矢印502の方向)に所定の距離Lth移動させることはできない。それゆえ、この状態では、スライダ位置検出用センサチェックを行うことができない。そこで、制御ユニット150は、以下の処理を実行する。
【0085】
(1)制御部ユニット71は、シリンジポンプ100が起動状態となると、ポテンショメータ170からスライダ120の位置を示す情報を取得する。制御ユニット150は、図9のように、スライダ120の位置が位置Poから所定の距離Lth以上離れている場合には、スライダ120を送り方向に所定の距離Lth移動させることによってセルフテストを行う。
【0086】
制御ユニット150は、図10のように、スライダ120の位置が位置Poから所定の距離Lth以上離れていない場合には、スライダ120の位置が位置Poから所定の距離Lth以上離れるように、スライダ120を逆方向に移動させる。制御ユニット150は、スライダ120を逆方向に移動させた後(移動が完了した後)に、スライダ120を送り方向に少なくとも所定の距離Lth移動させることによって、セルフテストを行う。
【0087】
このような構成によれば、少なくともスライダ位置検出用センサチェックとモータ駆動チェックとを含むセルフテスト時に、ユーザがスライダ120を手動で移動させる必要がなくなる。それゆえ、ユーザの手間を省くことが可能となる。詳しくは、起動時に、制御ユニット150が必要に応じてスライダ120を逆方向に移動させる制御を行うため、ユーザが手動でスライダ120の位置操作をしなくても、セルフテストのための距離を確保できる。
【0088】
(2)好適には、制御ユニット150は、スライダ120の位置が位置Poから所定の距離Lth以上離れていない場合には、スライダ120の位置が位置Poから所定の距離Lthだけ離れるように、スライダ120を逆方向に移動させる。このような構成によれば、スライダ120の逆方向への移動距離を最小とすることができる。
【0089】
(3)詳しくは、制御ユニット150は、ポテンショメータ170からスライダ120の位置を示す情報を取得したことに基づき、スライダ120の位置(本例では、押圧面122の位置)と、位置Poから逆方向に所定の距離Lthだけ離れた位置P3とを比較する。制御ユニット150は、スライダ120の位置が位置P3よりも送り方向側であることを条件に、スライダ120を逆方向に位置P3まで移動させる。
【0090】
(4)さらに詳しくは、制御ユニット150は、スライダ120の位置が位置P3よりも送り方向側である場合、スライダ120の位置と、位置P3との間の距離を算出する。制御ユニット150は、算出された距離だけ、スライダ120を逆方向に移動させる。
【0091】
なお、シリンジポンプ100は、シリンジポンプ100が起動状態となったときにクラッチが係合状態でない場合には、所定の警報を出力する。また、シリンジポンプ100は、シリンジポンプ100にシリンジ10が取り付けられている場合には、所定の警告を出力する。このような構成によれば、ユーザは不備に気付くことができる。
【0092】
図11は、シリンジポンプ100において実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。シリンジポンプ100では、プロセッサ151が所与のプログラムを実行することによって、図11に示された処理が実現されてもよい。
【0093】
一実現例では、図11の処理は、シリンジポンプ100が、商用電源に接続され、かつ、スリープ状態にあるときに開始される。スリープ状態とは、制御ユニット150、クランプ112の変位を検出するためのセンサ(変位検出用センサ911,912)、および、スライダ120の変位を検出するためのセンサ(変位検出用センサ921)には電源が投入されているが、それら以外の少なくとも一つの要素には電源が投入されていない状態を意味する。
【0094】
なお、後述するように、クランプ112およびスライダ120のうち少なくとも一方の変位が検出されると、シリンジポンプ100は、起動され、これにより起動状態へと以降する。起動状態では、スリープ状態において電源を投入されていなかった要素にも電源が投入される。上述したように、変位の検出に伴う起動は必須ではない。
【0095】
ステップS10にて、シリンジポンプ100は、起動スイッチ183が操作されたか、または、クランプ112およびスライダ120のうち少なくとも一方の変位が検出されたか否かを判断する。シリンジポンプ100は、変位検出用センサ911および変位検出用センサ912からの検出出力に基づいてクランプ112の変位の有無を判断し、変位検出用センサ921からの検出出力に基づいてスライダ120の変位の有無を判断する。
【0096】
シリンジポンプ100は、起動スイッチ183が操作されたか、または、クランプ112およびスライダ120のうち少なくとも一方の変位が検出された、と判断するまで、一定時間ごとにステップS10の制御を繰り返す(ステップS10にてNO)。シリンジポンプ100は、起動スイッチ183が操作されたか、または、クランプ112およびスライダ120のうち少なくとも一方の変位が検出された、と判断すると(ステップS10にてYES)、ステップS12へ制御を進める。
【0097】
ステップS12にて、シリンジポンプ100は、当該シリンジポンプ100を起動する。これにより、シリンジポンプ100は、スリープ状態から起動状態へと移行する。
【0098】
ステップS14にて、シリンジポンプ100は、スライダ120の位置を検出する。ステップS16にて、シリンジポンプ100は、スライダ120の位置の検出結果に基づき、スライダ120のナットフォルダ126との間の距離Ldが閾値として距離Lth以上であるか否かを判断する。
【0099】
距離Ldが閾値として距離Lth以上であると判断された場合(ステップS16においてYES)、ステップS18にて、シリンジポンプ100は、スライダ120を送り方向に移動させることにより、セルフテストを開始する。距離Ldが閾値として距離Lth未満であると判断された場合(ステップS16においてNO)、ステップS20にて、シリンジポンプ100は、スライダ120を逆方向に移動させる。シリンジポンプ100は、その後、処理をステップS16に戻す。
【0100】
ステップS18の後、ステップS22にて、シリンジポンプ100は、セルフテストが終了したか否かを判断し、終了したと判断すると(ステップS22にてYES)、ステップS24へ制御を進める。
【0101】
ステップS24にて、シリンジポンプ100は、セルフテストの結果をディスプレイ182に表示する。
【0102】
ステップS26にて、シリンジポンプ100は、指示に応じた動作を実行する。シリンジポンプ100に対する指示は、操作パネル180から入力されてもよいし、外部機器から入力されてもよい。
【0103】
ステップS28にて、シリンジポンプ100は、起動スイッチ183が操作されたか否かを判断し、操作されたと判断すると(ステップS28にてYES)、ステップS32へ制御を進め、そうでなければ(ステップS28にてNO)、ステップS30へ制御を進める。
【0104】
ステップS30にて、シリンジポンプ100は、一定時間以上シリンジポンプ100に対する操作が無い状態が発生したか否かを判断する。シリンジポンプ100は、当該状態が発生していないと判断すると(ステップS30にてNO)、ステップS26へ制御を戻し、発生したと判断すると(ステップS30にてYES)、ステップS32へ制御を進める。
【0105】
一実現例では、ステップS30における「操作」は、操作パネル180に対する操作、および、クランプ112またはスライダ120の移動を含む。すなわち、ユーザが、一定時間以上、操作パネル180を操作せず、クランプ112を移動させず、かつ、スライダ120を移動させなければ、制御は、ステップS30からステップS32へと進められる。
【0106】
ステップS32にて、シリンジポンプ100は、当該シリンジポンプ100の状態を起動状態からスリープ状態へと移行させる。これにより、シリンジポンプ100の起動が解除される。その後、シリンジポンプ100は、ステップS10へ制御を戻す。
【0107】
[G.セルフテストの結果出力]
図12は、セルフテストの結果を表示する画面の一例を示す図である。画面1200は、セルフテストの各項目の結果を表示する欄1210と、ボタン1222とを含む。
【0108】
シリンジポンプ100は、欄1210において、セルフテストについて上述した項目(1)~(8)の結果を表示する。より具体的には、シリンジポンプ100は、項目(1)~(7)については、チェックの結果が「正常」であれば結果として「OK」を表示し、「異常」であれば結果として「NG」を表示する。シリンジポンプ100は、項目(8)については、セルフテスト開始時にシリンジ10が装着されていなかったと判断した場合には「OK」を表示し、装着されていたと判断した場合には「NG」と判断する。図12の例では、(1)~(8)のすべての項目の結果として「OK」が表示されている。
【0109】
なお、ボタン1222は、セルフテストの再実施を指示するためのボタンである。ユーザは、ボタン1222を操作することにより、シリンジポンプ100にセルフテストの再実施を指示し得る。セルフテストの再実施が指示されると、再度セルフテストを開始する。
【0110】
<変形例>
上記においては、ポテンショメータ170として、直線摺動式かつ接触型のメータを用いたが、必ずしもこれに限定されるものではない。スライダ120の位置を測定できる機器(センサ、エンコーダ等)であれば、特に限定されない。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
1 血液浄化装置、10 シリンジ、20 バレル、21 第1フランジ、22 液口
30 プランジャロッド、31 第2フランジ、32 ガスケット部、71 制御部ユニット、100 シリンジポンプ、101 インターフェース、110 バレル受け部、111 溝部、112 クランプ、112A 伸縮部、112X 羽根部、114,170 ポテンショメータ、115 フランジ保持部、117 ブーツ、118 ブーツ係止部、119 押さえ板、120 スライダ、121 スライダカバー、122 押圧面、123 可動爪部、124 クラッチレバー、125 パイプシャフト、126 ナットフォルダ、127 ハーフナット、128 インナークラッチシャフト、131 ホール素子、132 磁石、140 押圧センサ、150 制御ユニット、151 プロセッサ、152 メモリ、160,911,912,921 変位検出用センサ、161 投光器、162 受光器、171 筐体、172 シャフト、180 操作パネル、181,182 ディスプレイ、183 起動スイッチ、190 駆動部、191 リードネジ、192,193 歯車、194 モータ、195 ロータリエンコーダ、1200 画面、1222 ボタン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12