(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093091
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】入口弁の設置構造
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
F16K27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208501
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴宏
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA04
3H051BB02
3H051BB04
3H051CC11
3H051CC15
3H051CC17
3H051FF15
(57)【要約】
【課題】本発明は、既設の天井クレーンの改変をせずに、入口弁として採用するロータリ弁の本体の重心を、天井クレーンの主巻のフック部の重心と同一鉛直線上に位置させることができる入口弁の設置構造を提供することを課題とする。
【解決手段】主巻3を有する天井クレーンが設けられた建屋内にて、水車発電機の水車62と水圧鉄管7との間に設置される入口弁8をロータリ弁に変更するにあたり、水車62の中心線P2から水車62のハウジング63の取付部63aの端までの寸法L1、入口弁8の本体9の接続部93の端から接続部94の端までの寸法L2、並びに、管部材10の水車62とは反対側への延出方向の寸法L3を調整して、管部材10の端部102と水圧鉄管7の端部71とが当接可能な状態で、入口弁8の本体の重心G1が天井クレーン2の主巻3の移動及び主巻3のフック3aの揚程により定められる範囲R1内になるようにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主巻及び補巻を有する天井クレーンが設けられた建屋内にて、水車発電機の水車と前記水車の上流側に位置する配管との間に設置される入口弁を、既設の弁から当該既設の弁よりも外形寸法の大きな弁に変更するための入口弁の設置構造であって、
前記既設の弁から変更する弁として、内部空間に弁体が収容されたケーシングを有すると共に前記ケーシングの側方の上流側と下流側とにそれぞれ接続部が設けられた本体と、前記本体の接続部のうちの一方の上流側の接続部と接続される管部材とを少なくとも有するロータリ弁が用いられ、
前記水車は、前記ロータリ弁の本体の接続部のうちの他方の下流側の接続部と接続する取付部が設けられたハウジングを有すると共に、
前記水車の中心から前記水車のハウジングの取付部の端までの寸法、前記ロータリ弁の本体の前記上流側の接続部の端から前記下流側の接続部の端までの寸法、並びに、前記管部材の前記水車とは反対側への延出方向の寸法を調整して、
前記管部材の前記水車とは反対側の端部と前記配管の前記水車側の端部とが当接可能な状態で、前記ロータリ弁の本体の重心が前記天井クレーンの主巻の移動及び前記主巻のフックの揚程により定められる範囲内になるようにしたことを特徴とする入口弁の設置構造。
【請求項2】
前記建屋内の前記水車の少なくとも側方を囲む壁部のうちの前記入口弁の本体の下流側の接続部との接続側の部位が切り欠かれていることを特徴とする請求項1に記載の入口弁の設置構造。
【請求項3】
前記ロータリ弁の本体のハウジングの内部空間の前記弁体よりも上流側と前記弁体よりも下流側との水圧差を解消するためのバイパス管の一方が前記ロータリ弁の本体のケーシングに取り付けられ、前記バイパス管の他方が前記水車のハウジングの取付部に取り付けられていると共に、
前記建屋内の前記水車の側方を囲む壁部のうちの前記バイパス管の経路と重なる部位が切り欠かれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入口弁の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水車発電機の水車の上流側に配置する入口弁を、ある形式の既設の弁から、当該既設の弁とは異なる形式であり、これに伴い外形寸法も大きな弁に変更しても、建屋内への設置を可能とするための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の水力発電所では、水車発電機を改修する機会に、入口弁について、開閉時間が長く、発電機並列までに時間を要するとの不具合を有していたスルース弁から、このスルース弁とは異なる形式のロータリ弁に変更することとした。水車発電機の入口弁に用いられるロータリ弁としては、例えば特許文献1に示されるものがある。
【0003】
もっとも、ロータリ弁は、スルース弁よりも外形寸法が大きいのが一般的であるので、スルース弁が設置されていたスペースも、ロータリ弁の本体を組み立てたり、分解したりするためのスペースとしては不十分となる。このため、他所で予め組み立てられたロータリ弁の本体を、スルース弁が設置されていた場所まで運搬して設置したり、反対にロータリ弁をスルース弁が設置されていた場所から他所まで組み立てられたまま運搬したりすることが考えられる。
【0004】
このような組み立てられたロータリ弁の本体を運搬するには、組み立てられた状態のロータリ弁の本体が重量物であることから、例えば特許文献2に示されるように、天井クレーンの主巻(メインクレーンとも称する)や補巻(サブクレーンとも称する)を用いることが考えられ、これに伴い、前述の所定の水力発電所では、建屋に既設の天井クレーンの主巻や補巻を利用することとなる。なお、天井クレーンを用いない方法として、ロータリ弁の本体を上下に移動させるために、建屋の壁にアンカーを打ち込み、このアンカーの壁から突出した部位にチェーンブロックを引き掛けて、かかるチェーンブロックによりロータリ弁の本体を引き込む方法があるが、安全性や作業性に欠けるので、採用は困難である。
【0005】
一方で、天井クレーンの主巻や補巻で、吊り荷(重量物)を、安定した状態で吊り上げて、揚程させたりする必要があるところ、例えば特許文献3では、吊り荷(重量物)を安定して吊り上げられるように、吊りビームの重心と吊り下げ対象物の重心とが同一鉛直線上に位置していることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6614368号公報
【特許文献2】特開2011-196605号公報
【特許文献3】特開2019-64802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
もっとも、前述した所定の水力発電所の建屋に既設の天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフック部の揚程により定められる範囲(以下、便宜的に主巻のフック部の作業範囲と称する。)は、ロータリ弁よりも外形寸法が小さなスルース弁に対応している。このため、スルース弁をロータリ弁へ単に変更するのみでは、ロータリ弁をスルース弁が設置されていた場所に設置しようとしても、主巻のフック部の重心がロータリ弁の本体の重心と同一鉛直線上に位置するように、主巻の作業範囲が設定されていないという不具合が生ずるおそれがある。そして、天井クレーンの補巻の移動及び補巻のフック部の揚程により定められる範囲(以下、便宜的に補巻のフック部の作業範囲と称する。)について、補巻のフック部の重心をロータリ弁の重心と同一鉛直線上に位置させることができる範囲になっているとしても、ロータリ弁の構造上、当該ロータリ弁を設置する作業で、ロータリ弁の本体を立設させたり、転倒させたりする際には、天井クレーンの補巻ではなく主巻の方を使用する必要がある。
【0008】
この点、天井クレーンの主巻の作業範囲を変更する等、天井クレーンの改造、変更を行うことが考えられるが、建屋に既設されている天井クレーンの改造、変更を行うためには多額のコストが発生する可能性があるという不都合を有する。
【0009】
また、入口弁は、水車に対し反対側(上流側)において水圧鉄管等の既設の配管と接続する必要があるが、既設の配管の水車側の端の位置は、一般的に、ロータリ弁よりも外形寸法が小さな、変更前のスルース弁の設置に適した位置となっている。このため、スルース弁をロータリ弁へ単に変更するのみでは、ロータリ弁の上流側の接続部と既設の配管とを接続するために、既設の配管の端部を切断して寸法調整をし、更に既設の配管の切断後の端部とロータリ弁の上流側の接続部とを溶接で接続する必要性が生ずる可能性がある。既設の配管の端部を切断して当該配管とロータリ弁との溶接作業を行うと、ロータリ弁の設置のためのコストが高くなるという不具合が生ずる。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、既設の天井クレーンの改造、変更を行うことなく、入口弁としてスルース弁に代えて採用するロータリ弁の本体の重心を、天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフックの揚程により定められる範囲内とすることができ、水車とは反対側となる上流側の既設の配管の端部を寸法調整のために切断する必要性もなくした入口弁の設置構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明の入口弁の設置構造は、主巻及び補巻を有する天井クレーンが設けられた建屋内にて、水車発電機の水車と前記水車の上流側に位置する配管との間に設置される入口弁を、既設の弁から当該既設の弁よりも外形寸法の大きな弁に変更するための入口弁の設置構造であって、前記既設の弁から変更する弁として、内部空間に弁体が収容されたケーシングを有すると共に前記ケーシングの側方の上流側と下流側とにそれぞれ接続部が設けられた本体と、前記本体の接続部のうちの一方の上流側の接続部と接続される管部材とを少なくとも有するロータリ弁が用いられ、前記水車は、前記ロータリ弁の本体の接続部のうちの他方の下流側の接続部と接続する取付部が設けられたハウジングを有すると共に、前記水車の中心から前記水車のハウジングの取付部の端までの寸法、前記ロータリ弁の本体の前記上流側の接続部の端から前記下流側の接続部の端までの寸法、並びに、前記管部材の前記水車とは反対側への延出方向の寸法を調整して、前記管部材の前記水車とは反対側の端部と前記配管の前記水車側の端部とが当接可能な状態で、前記ロータリ弁の本体の重心が前記天井クレーンの主巻の移動及び前記主巻のフックの揚程により定められる範囲内になるようにしたことを特徴としている。水車は、例えば縦軸フランシス水車である。既設の弁としては、例えばスルース弁が挙げられる。水車の中心から水車のハウジングの取付部の端までの寸法の調整は、例えば変更前の既設の弁が用いられていたときよりもその寸法を小さくすることであり、これに伴い、既設の弁からロータリ弁へ単に変更した場合よりも、ロータリ弁の本体の重心を水車発電機の水車の中心側に変位させることができる。ロータリ弁の本体の上流側の接続部の端から下流側の接続部の端までの寸法、並びに、ロータリ弁の本体の上流側の接続部と接続された状態の管部材の水車とは反対側への延出方向の寸法の調整は、水車の中心から水車のハウジングの取付部の端までの寸法の調整の結果を基礎として、ロータリ弁の本体の重心が天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフックの揚程により定められる範囲内まで変位するように追加的、補完的に行われる。管部材は、例えば、一般的な入口弁としてのロータリ弁では、当該ロータリ弁の本体の下流側の接続部と水車のハウジングの取付部との間に配置されていたのを、配管とロータリ弁の本体の上流側の接続部との接続のために配置変更をしたものである。このような管部材の配置変更によっても、既設の弁から一般的なロータリ弁へ単に変更した場合よりも、ロータリ弁の本体の重心を水車発電機の水車の中心側に変位させることができる。
【0012】
このように、入口弁について、既設の弁(例えばスルース弁)から、当該既設の弁よりも外形寸法の大きなロータリ弁に入れ替えるかたちで変更するにあたり、水車の中心から水車のハウジングの取付部の端までの寸法、ロータリ弁の本体の上流側の接続部の端から下流側の接続部の端までの寸法、並びに、管部材の水車とは反対側への延出方向の寸法を調整して、ロータリ弁を水車と配管との間に配置するときに、管部材の水車とは反対側の端部と配管の水車側の端部とが当接可能な状態で、ロータリ弁の本体の重心が、天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフックの揚程により定められる範囲内となるようにしたので、主巻のフック部の重心と同一鉛直線上に位置した状態でロータリ弁の本体を主巻により吊ることができる。
【0013】
また、配管の水車側の端部が、管部材の水車とは反対側の端部と当接可能な状態で、ロータリ弁の本体の重心が天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフックの揚程により定められる範囲内となるようにしたので、ロータリ弁を設置するための寸法調整として、配管を切断する作業が不要である。
【0014】
そして、請求項2に記載の発明の入口弁の設置構造では、前記建屋内の前記水車の少なくとも側方を囲む壁部のうちの前記入口弁の本体の下流側の接続部との接続側の部位が切り欠かれていることを特徴としている。これにより、水車のハウジングの取付部が水車の中心側への変位により壁部に近接しても、水車のケーシングの取付部とロータリ弁の本体の接続部のうち下流側の接続部とをボルト等の固定具を介して着脱するための作業スペースを確保することが可能である。
【0015】
更に、請求項3に記載の発明の入口弁の設置構造では、前記ロータリ弁の本体のハウジングの内部空間の前記弁体よりも上流側と前記弁体よりも下流側との水圧差を解消するためのバイパス管の一方が前記ロータリ弁の本体のケーシングに取り付けられ、前記バイパス管の他方が前記水車のハウジングの取付部に取り付けられていると共に、前記建屋内の前記水車の側方を囲む壁部のうちの前記バイパス管の経路と重なる部位が切り欠かれていることを特徴としている。これにより、バイパス管の他方が水車のハウジングの取付部に取り付けられるようにした状態と、水車のハウジングの取付部が水車の中心側への変位により壁部に近接した状態とを兼ねるようにしても、壁部が切り欠かれることで、水車のハウジングの取付部のバイパス管の他方との取り付け用部位が外部に露出するので、バイパス管を確実に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べたように、本発明の入口弁の設置構造によれば、入口弁について、既設の弁から当該既設の弁よりも外形寸法の大きなロータリ弁に入れ替えるかたちで変更するにあたり、水車の中心から水車のハウジングの取付部の端までの寸法、ロータリ弁の本体の上流側の接続部の端から下流側の接続部の端までの寸法、並びに、管部材の水車とは反対側への延出方向の寸法を調整して、ロータリ弁を水車と配管との間に配置するときに、管部材の水車とは反対側の端部と配管の水車側の端部とが当接可能な状態で、ロータリ弁の本体の重心が、天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフックの揚程により定められる範囲内となるようにしたので、主巻のフック部の重心と同一鉛直線上に位置した状態でロータリ弁の本体を主巻により吊ることができる。よって、ロータリ弁を揚程させるために、建屋に既設された天井クレーンの主巻を用いて直接にロータリ弁の本体を吊り上げたり、吊り下げたりすることが可能となる。また、天井クレーンを改造、変更することも不要となる。
【0017】
また、本発明の入口弁の設置構造によれば、配管の水車側の端部が、管部材の水車とは反対側の端部と当接可能な状態で、ロータリ弁の本体の重心が天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフックの揚程により定められる範囲内となるようにしたので、ロータリ弁を水車と配管との間に配置するための寸法調整として、配管を切断する作業が不要であり、ロータリ弁の設置作業でコストが高くなるのを抑制することが可能である。
【0018】
特に請求項2に記載の発明の入口弁の設置構造によれば、水車のハウジングの取付部が水車の中心側への変位により壁部に近接しても、水車のケーシングの取付部とロータリ弁の本体の接続部のうち下流側の接続部とをボルト等の固定具を介して着脱するための作業スペースを確保することが可能である。
【0019】
特に請求項3に記載の発明の入口弁の設置構造によれば、バイパス管の他方が水車のハウジングの取付部に取り付けられるようにした状態と、水車のハウジングの取付部が水車の中心側への変位により壁部に近接した状態とを兼ねるようにしても、壁部が切り欠かれることで、水車のハウジングの取付部のバイパス管の他方との取り付け用部位が外部に露出するので、バイパス管を確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明が適用された入口弁の設置構造の一例の概略を示した説明図である。
【
図2】この発明が適用された入口弁の断面図であり、弁体が上方を向いて弁が閉じた状態と弁体が側方を向いて弁が開いた状態とを示した説明図である。
【
図3】この発明が適用された入口弁の設置構造の一例を示す側面図である。
【
図4】この発明が適用された入口弁の設置構造の一例を示す平面図である。
【
図5】従来のロータリ弁を単に設置した入口弁の設置構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1において、この発明が適用される入口弁の設置構造が用いられた建屋1の一例が示されている。もっとも
図1に示される建屋1は、その概略が示されているもので、下記する入口弁の設置構造につての説明の便宜のため、下記する水車発電機6を囲む壁部12等、実際の建屋に対し所定の部分が省略されたり、簡略化されたりしている。
【0023】
建屋1は、天井11側に主巻3と補巻4とを有する天井クレーン2が設置されている。天井クレーン2は、この実施形態では、2つの立設部21、22と立設部21、22間に架設された架設部23とを有して構成されており、立設部21、22の下面に設けられた車輪(図示せず)等により建屋1の壁から突出した台24、24の上面(走行軌道等)を当該台24、24の長手方向に沿って走行することが可能である。
【0024】
主巻3が架設部23の長手方向に沿って移動(横行)することが可能な範囲(
図3、
図5にその一部をD1として示す。)と、フック部3aの揚程の上限から下限の範囲とにより定められる、
図1の一点鎖線で囲まれた範囲(但し、便宜上、障害物による可動の規制は考慮していない範囲にて示されている。以下、作業範囲と称する。)R1内で、フック部3aは、可動して、吊り荷を移動させることができる。天井クレーン2の走行により主巻3が吊り荷を移動させることが可能な前後方向の範囲は、示していない。なお、主巻3が横行することが可能な範囲D1から導かれる主巻3のフック部3aについての入口弁8側の可動限界点P1が
図3及び
図5に示されている。
【0025】
補巻4が架設部23の長手方向に沿って移動(横行)することが可能な範囲と、フック部4aの揚程の上限から下限までの範囲とにより定められる、
図1の二点鎖線で囲まれた範囲(但し、便宜上、障害物による可動の規制は考慮していない範囲にて示されている。以下、作業範囲と称する。)R2内で、フック部4aは、可動して、吊り荷を移動させることができる。天井クレーン2の走行により補巻4が吊り荷を移動させることができる前後方向の範囲は、示していない。なお、この実施形態では、主巻3は、下記する入口弁8の本体9を吊り上げ、吊り下げることが可能であるが、補巻4は、必ずしも入口弁8の本体9を吊り上げ、吊り下げることが可能にはなっていない。
【0026】
建屋1の下方には、水車発電機6が設置されている。水車発電機6は、この実施形態では、発電機61とこの発電機61の下方に配置された水車62とを有して構成されている。
【0027】
水車62は、この実施例では、縦軸フランシス水車が用いられており、縦に延びる主軸62aの軸線が水車62の中心を通る線(以下、中心線)P2となっている。また、この実施形態では、水車62は、主軸62a等が当該主軸62aの径方向の外側に位置するハウジング63で覆われ、更にハウジング63の径方向の外側に、建屋1の下部を構成する壁部12が配置されることで、壁部12によりその周囲が囲まれている。ハウジング63は、取付部63aにより入口弁8と接続される。取付部63aは、ハウジング63と別部材としてハウジング63に固定されるもの、及び、ハウジング63の一部として一体化されたものの双方が含まれる。なお、
図3に示されるように、水車62の中心線P2から取付部63aの入口弁8側の端までの寸法をL1とする。
【0028】
入口弁8は、
図1に示されるように、水車62のハウジング63の取付部63aと、水車62の上流側に位置する既設の配管である水圧鉄管7との間に配置されて、上流側から水車62に水を送るにあたって、水を通したり、水を通すのを止めたりするためのものである。入口弁8は、特に
図3及び
図4に示されるように、本体9と管部材10とを有して構成されている。
【0029】
本体9は、
図2に示されるように、ケーシング91及び弁体92で少なくとも構成されており、
図1に示されるように、建屋1の水車発電機6に対して水圧鉄管7側に形成された部屋13内に、基礎14の上に置かれるかたちで配置されている。なお、
図1では、入口弁8の本体9の吊り上げ、吊り下げの説明上、部屋13の上方が開放されたかたちで示されている。ケーシング91は、この実施形態では複数の部材91a、91bを組み合わせて形成されていると共に、両側の側方に外部と連通する開口H1、H2が形成された内部空間Sを有しており、開口H1、H2の周縁部分に接続部93、94が設けられている。接続部93は、下記する管部材10の端部101と例えばボルト等の固定具30により接続可能となっていると共に、接続部94は、水車62のハウジング63の取付部63aとボルト等の固定具30により接続可能となっている。なお、ケーシング91の接続部93の端から接続部94の端までの寸法をL2とする。
【0030】
弁体92は、両側が開口した筒状体となっているもので、ケーシング91に形成された内部空間S内に収容されており、軸95を中心に90度の範囲で回転して、
図2に示されるように、水平若しくは略水平の状態(横の状態)となって、ケーシング91の開口H1、H2間を連通させることで、弁が開となり、垂直若しくは略垂直の状態(縦の状態)となって、ケーシング91の開口H1、H2間を塞ぐことで、弁が閉となる。本発明では、
図2に示される組み立てられた状態の入口弁8の本体9について、天井クレーン2の主巻3のフック部3aにより吊られる。
【0031】
そして、入口弁8は、
図3及び
図4に示されるように、本体9のケーシング91の内部空間Sの弁体92よりも上流側と弁体92よりも下流側との水圧差を解消するための弁(図示せず)が内蔵されたバイパス管20を有している。バイパス管20は、本発明では、一方が本体9のケーシング91に接続すると共に、他方が下記する管部材10との関連で取付部63aと接続されている。バイパス管20の本発明との関連に基づく更なる構成は後述する。
【0032】
管部材10は、本発明では、
図3及び
図4に示されるように、入口弁8の本体9の接続部93と端部101を介して接続され、水圧鉄管7の端部71と端部102を介して接続されるものとなっている。なお、管部材10の端部101の端から端部102の端までの寸法、すなわち管部材10の水車62とは反対側への延出方向の寸法をL3とする。
【0033】
図5に示される入口弁の設置構造では、スルース弁等の既設の弁から当該弁よりも外形寸法が大きなロータリ弁に変更するにあたり、既存のロータリ弁をそのまま入口弁8の本体9として用い、入口弁8の管部材10の配置もそのままとし、更には、水車62の中心線P2から取付部63aの入口弁8側の端までの寸法L1、ケーシング91の接続部93の端から接続部94の端までの寸法L2、管部材10の水車62とは反対側への延出方向の寸法L3を調整していないために、入口弁8の本体9の重心G1が主巻3のフック部3aの作業範囲R1内になく、よって主巻3の可動限界点P1よりも外側に位置したものとなっている。なお、
図5に示される入口弁8は、これまで説明してきた入口弁8とは、管部材10の配置を除いた基本的な構成について、大きく異なるものではないので、重複した説明を回避するために、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図5では、水車62の中心線P2から取付部63aの入口弁8側の端までの寸法L1について例えば4,000mmのままとしているのに対し、
図3では、当該寸法L1を3,500mm等の短い寸法に変更するように調整している。これにより、入口弁8の本体9の設置位置を、
図5における設置位置よりも水車62の中心線P2側に変位させることを可能にしている。
【0035】
次に、
図5では、入口弁8の本体9について、既存のものをそのまま用いることで、ケーシング91の接続部93の端から接続部94の端までの寸法L2が例えば2,500mmとなっているのに対し、
図3では、当該寸法L2を2,200mm等の短い寸法のものに変更するように調整している。そして、
図5では、管部材10がハウジング63の取付部63aと本体9の接続部94との間に配置されているのに対し、
図3では、ハウジング63の取付部63aと本体9の接続部94とが直接に接続され、且つ、管部材10は、水圧鉄管7と本体9の接続部93との間に配置されるようにしている。これにより、管部材10が水車62側からなくなる分、入口弁8の本体9の設置位置を、更に
図5における設置位置よりも水車62の中心線P2側に変位させることを可能にしている。
【0036】
更に、バイパス管20の他方が
図5では管部材10と接続していたのを、上記のような管部材10の本体9に対する位置の入れ替えに伴い、
図3、
図4では、上記したように、バイパス管20の他方が取付部63aと接続するように変更している。そして、バイパス管20は、
図4に示されるように、入口弁8の本体9と接続する一方側の箇所、及び、取付部63aと接続する他方の箇所のいずれもが、
図4に示される本体9の中心線に対し垂直方向の上方に位置していない。すなわち、本体9の開口H1又H2側から見て本体9の中心線に対し垂直方向の上方に延びる基準線を採った場合に、バイパス管20は、かかる基準線に対し例えば30度の角度で斜めに傾斜し、且つ、本体9の中心線から左右方向にずれて設置されている。これにより、入口弁8として採用されるロータリ弁の本体9の外形寸法がスルース弁の本体の外形寸法よりも大きくても、本体9が部屋13の上方を閉じるためのハッチ(図示せず)と干渉するのを防止することができる。
【0037】
しかも、入口弁8の本体9が上記のように水車62の中心線P2側に変位する一方で、水圧鉄管7の端部71の端の位置は固定されているところ、管部材10の本体9の接続部93との接続位置から水車62とは反対側への延出方向の寸法L3について、
図5では端部101の端から端部102の端までの寸法として750mmであったのを、例えば800mm等の長い寸法となるように調整することにより、水圧鉄管7と水車62の中心線P2側に変位した本体9の接続部93とを、管部材10により適切に接続させることが可能になっている。
【0038】
これにより、
図1及び
図3に示されるように、入口弁8の本体9の重心G1は、主巻3のフック部3aの作業範囲R1の範囲内に入り、これに伴い主巻3の可動限界点P1よりも水車62の中心線P2側に位置することが可能となる。よって、入口弁8の本体9の重心G1と主巻3の重心G2とを
図3に示されるように鉛直線上に一致させることができるので、
図1に示されるように、入口弁8の本体9を主巻3で安定した状態にて吊って揚程させることが可能となる。なお、管部材10は、
図1及び
図3に示されるように、主巻3のフック部3aの作業範囲R1の範囲から外れ、これに伴い主巻3の可動限界点P1よりも水車62の中心線P2とは反対側に位置することとなるが、
図1に示されるように、補巻4のフック部4aの作業範囲R2に入っており、且つ、重量も本体9ほど大きくないので、補巻4で安定した状態にて吊って揚程させることが可能である。
【0039】
一方で、水車62の中心線P2から水車62のハウジング63の取付部63aの端までの寸法L1の短縮化に伴い、ハウジング63の取付部63aは、水車62の中心線P2側に変位して、水車62の側方の周囲を覆う壁部12に近接することになるが、
図3に示されるように、壁部12のうち取付部63aの水車62の中心線P2側の部位に、切り欠き15が形成されている。これにより、水車62のハウジング63の取付部63aと入口弁8の本体9の接続部94とをボルト等の固定具30を介して着脱するための作業スペースを確保することが可能になっている。
【0040】
また、バイパス管20の他方が水車62のハウジング63の取付部63aに取り付けられるようにした状態と、ハウジング63の取付部63aが水車62の中心線P2側に変位して、水車62の側方の周囲を覆う壁部12に近接した状態とを兼ねるようにしても、
図4に示されるように、壁部12のうちバイパス管20の経路と重なる部位に、切り欠き16が形成されている。これにより、水車62のハウジング63の取付部63aのバイパス管20の他方との取り付け用部位が外部に露出するので、バイパス管20を確実に取付部63aに取り付けることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 建屋
11 天井
12 壁部
15 切り欠き
16 切り欠き
2 天井クレーン
3 主巻
3a フック部
4 補巻
6 水車発電機
62 水車
63 ハウジング
63a 取付部
7 水圧鉄管(配管)
71 端部
8 入口弁
9 入口弁の本体
91 ケーシング
92 弁体
93 接続部(上流側の接続部)
94 接続部(下流側の接続部)
10 管部材
P2 水車の中心線(水車の中心)
S 入口弁の本体のケーシングの内部空間
R1 主巻のフック部の作業範囲(天井クレーンの主巻の移動及び主巻のフックの揚程により定められる範囲)
L1 水車の中心から水車のハウジングの取付部の端までの寸法
L2 入口弁の本体の上流側の接続部の端から下流側の接続部の端までの寸法
L3 管部材の水車とは反対側への延出方向の寸法
G1 入口弁の本体の重心