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特開2023-93093食品防カビ効力増強剤、食品防カビ剤、及び食品防カビ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093093
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】食品防カビ効力増強剤、食品防カビ剤、及び食品防カビ方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/04 20060101AFI20230627BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230627BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20230627BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A01N31/04
A01P3/00
A01N31/06
A01N37/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208503
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】三石 帆波
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA03
4H011BA02
4H011BB03
4H011BB06
4H011BC03
4H011DA03
4H011DC10
(57)【要約】
【課題】メンタン化合物の食品防カビ効力を増強すること。
【解決手段】3価以上の多価アルコール類により、メンタン化合物の食品防カビ効力を増強する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価以上の多価アルコール類を含有する、メンタン系化合物の食品防カビ効力増強剤。
【請求項2】
メンタン系化合物と3価以上の多価アルコール類を含有する食品防カビ剤。
【請求項3】
メンタン系化合物、及び3価以上の多価アルコール類を、食品に暴露する、食品防カビ方法。



























【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品防カビ効力増強剤、食品防カビ剤、及び食品防カビ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メンタン系化合物は、抗菌・防カビ作用を有することが知られた化合物である。これまで、本出願人らにより、テルピネオール等のメンタン系化合物は食品に対する防カビ作用を有することが報告されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、3価以上の多価アルコールは、溶剤、保湿剤や増粘安定剤として使用することが知られている。
【0004】
しかしながら、3価以上の多価アルコールについての、食品に対する防カビ効果や防カビ増強効果は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-165245号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような背景において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、3価以上の多価アルコールが、メンタン系化合物の食品に対する防カビ効力を増強することを見出し、本発明に至った。
(1)3価以上の多価アルコール類を含有する、メンタン系化合物の食品防カビ効力増強剤。
(2)メンタン系化合物と3価以上の多価アルコール類を含有する食品防カビ剤。
(3)メンタン系化合物、及び3価以上の多価アルコール類を、食品に暴露する、食品防カビ方法。
【発明の効果】
【0007】
メンタン系化合物と3価以上の多価アルコール類とを組み合せる事で、メンタン系化合物の食品に対する防カビ効力が増強する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、前述の通り、食品防カビ効力増強剤、食品防カビ剤、及び食品防カビ方法等に関し、3価以上の多価アルコール類によりメンタン系化合物の食品に対する防カビ効力を増強することを特徴とする。以下、本発明の食品防カビ効力増強剤、食品防カビ剤、及び食品防カビ方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や実施例に限定されることを意図しない。なお、本明細書において、含有量の単位「w/w%」は、「g/100g」と同義である。また、本明細書における範囲を示す表記「~」がある場合は、上限と下限を含有するものとする。
【0009】
<食品防カビ効力増強剤、食品防カビ剤>
本発明において、メンタン系化合物は特に限定されないが、例えば、p-メンタン-3,8-ジオール、p-メンタン-1,8-ジオール、メントール(L-メントール)、酢酸メンチル、1,8-シネオール、1,4-シネオール、p-メンタン、チモール、カルバクロール、リモネン(d-リモネン等)、テルピネオール(α-テルピネオール等)、カルベオール、ペリルアルデヒド、メントン、カルボン(D-カルボン、L-カルボン等)、ピノカルボン、ピノカルベオール、ピペリトン、ピペリテノン、プレゴン、ジヒドロカルボン等が挙げられる。これらの中でも、3価以上の多価アルコール類による増強効果が大きい点でも、p-メンタン-3,8-ジオール、p-メンタン-1,8-ジオール、メントール、酢酸メンチル、1,8-シネオール、及びテルピネオールからなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0010】
本発明において、3価以上の多価アルコール類は、分子内に水酸基を3つ以上有する化合物であり、特に限定されない。一例を挙げると、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類、ソルビトール、イノシトール、グルコシルトレハロース、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、フルクトース、オリゴ糖アルコール、マルチトール、還元パラチノース、還元水飴、還元澱粉加水分解物等の糖アルコール類、果糖、ブドウ糖、乳糖、キシロース、プシコース、麦芽糖、水飴、オリゴ糖、マルトース、トレハロース、ラクトース、パラチニット、ショ糖、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、ステビア、甘草、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースの糖類等が挙げられる。これらの中でも、メンタン系化合物の食品に対する防カビ効果増強の観点から、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類であることが好ましい。
【0011】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤は、それぞれ、グリコール類をさらに含有することが好ましい。グリコール類を含有することで、メンタン系化合物の食品に対する防カビ効力に加えて、メンタン系化合物の食品に対する害虫忌避効力を増強することができる。グリコール類としては、特に限定されないが、2価のグリコール類が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上がより好ましい。
【0012】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤は、それぞれ、必要に応じて、上記成分、メンタン系化合物以外の他の抗菌・防カビ成分、消臭剤、香料、pH調整剤、害虫防除成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、誤食防止剤、消泡剤、溶剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤を配合することにより、調製される。
【0013】
他の抗菌・防カビ成分としては、特に限定されないが、イソプロピルメチルフェノール、イミダゾール系殺菌剤、パラオキシ安息香酸エステル(エチル、プロピル、ブチル)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、N-(ジクロロフルオロメチルチオ)-フタルアミド、N’-(ジクロロフルオロメチルチオ)N,N’-ジメチル-N’-フェニル-スルファミド、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、チアベンタゾール、トリクロサン、p-クロロメタキシレノール(PCMX)、孟宗竹抽出物、グレープフルーツ種子抽出液等が挙げられる。
【0014】
消臭剤としては、特に限定されないが、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、カテキン、4-ヒドロキシ-6-メチル-3-(4-メチルペンタノイル)-2-ピロン、シクロデキストリン、ポリフェノール、オキシフラバン、フラボノール、ミリスチン酸アセトフェノン、緑茶乾留エキス等のチャ乾留液、サトウキビ抽出物、イチョウ抽出物、イチジク抽出物、レンギョウ抽出物、カキ抽出物、茶抽出物、竹抽出物、カタバミ抽出物、ドクダミ抽出物、ツガ抽出物、クロマツ抽出物、カラマツ抽出物、アカマツ抽出物、キリ抽出物、ヒイラギ抽出物、モクセイ抽出物、ライラック抽出物、キンモクセイ抽出物、フキ抽出物、ツワブキ抽出物、クリ抽出物、ハンノキ抽出物、コナラ抽出物、ザクロ抽出物、ゼンマイ抽出物、タニウツギ抽出物、カキノキ抽出物、オオバコ抽出物、ヨモギ抽出物、ヤマモミジ抽出物、サルスベリ抽出物、シロバナハギ抽出物、アセビ抽出物、シダ抽出物、ヤマナラシ抽出物、コバノトネリコ抽出物等の植物抽出物等が挙げられる。
【0015】
香料としては、インデン、カリオフィレン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、エチルリナロール、ボルネオール、アニスアルコール、β-フェネチルアルコール、1-ヘキセノール、シス-3-ヘキセン-1-オール、テトラヒドロゲラニオール、サンタリノール、シンナミルアルコール、セドロール等のアルコール系香料、カラクソリド、β-ナフチルメチルエーテル、シネオール、アンブロキシド、p-クレジールメチルエーテル等のエーテル系香料、アネトール、オイゲノール、イソオイゲノール、バニリン、エチルバニリン等のフェノール系香料、オクタナール、ノナナール、ウンデシルアルデヒド、ウンデカナール、デシルアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、アドキサール、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド等のアルデヒド系香料、ムスクケトン、樟脳、カンファー、アセトフェノン、ブチロフェノン、トナリド、α-イオノン、β-イオノン、α-メチルイオノン、β-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、β-イソメチルイオノン、γ-メチルイオノン、γ-イソメチルイオノン、ダマスコン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、アセチルセドレン、カシュメラン、シスジャスモン、ジヒドロジャスモン等のケトン系香料、γ-ブチルラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、クマリン、シネオール、アンブレッドリッド、ジャスモラクトン等のラクトン系香料、ゲラニルフォーメート、オクチルアセテート、ゲラニルアセテート、シンナミルアセテート、テトラヒドロゲラニルアセテート、酢酸メンチル、酢酸リナリル、プロピオン酸ブチル、酢酸ベンジル(ベンジルアセテート)、安息香酸メチル、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、アリルアミルグリコレート、アミルバレリアネート、アミルサリシレート、イソアミルアセテート、ブチルアセテート、エチルブチレート、アセチルオイゲノール、イソアミルサリシレート、アリルカプロエート、エチルカプロエート、エチルプロピオネート、エチルアセトアセテート、メチルサリシレート、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォーメート、シンナミルアセテート、ステアリルアセテート、ステアリルプロピオネート、セドリルアセテート、ターピニルアセテート等のエステル系香料、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール、シトラールジメチルアセタール等アセタール系香料、インドール、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセテート、テサロン、オウランチオール、リナロールオキシド等が挙げられる。上記香料は単独で使用することもでき、2種以上を混合した調合香料も使用することができる。これらは、合成香料又は抽出香料等として知られている。なお、メンタン系化合物は香料として使用されることもあるが、本発明においては、香料としては扱わないものとする。
【0016】
pH調製剤としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、りんご酸、安息香酸、クエン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の有機酸、無機酸、その塩類などが挙げられる。
【0017】
害虫防除成分としては、特に限定されないが、例えば、ピレトリンI、ピレトリンII、ジャスモリンI、ジャスモリンII、シネリンI、シネリンII、天然ピレトリン類(ピレトリンI、ピレトリンII、ジャスモリンI、ジャスモリンII、シネリンI、シネリンIIの混合物)、メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、プラレトリン、テフルスリン、シペルメトリン、シフェノトリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリン、エムペントリン、テラレスリン、ビフェントリン、エトフェンプロックス、イミプロトリン、シラフルオフェン等のピレスロイド系化合物、ディート、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)等が挙げられる。
【0018】
溶剤としては、特に限定されないが、例えば、水、ヘキサン、パラフィン、エタノール、イソプロパノール、デカノール、炭化水素、ジエチルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、アセトン、酢酸、オレイン酸、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、リノール油、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、2-フェノキシエタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0020】
陰イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
【0021】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
【0022】
陽イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、4級アンモニウム塩等が挙げられる。4級アンモニウム塩のカウンターアニオンとしては、特に限定されないが、フッ化物イオン(フルオライド)、塩化物イオン(クロライド)、臭化物イオン(ブロマイド)、ヨウ化物イオン(アイオダイド)、メチル硫酸イオン(メトサルフェート)、炭酸イオン(カーボネート)、重炭酸イオン(ビカーボネート)、酢酸イオン(アセテート)、プロピオン酸イオン(プロピオネート)、グルコン酸イオン(グルコネート)等が挙げられる。4級アンモニウム塩の具体例としては、1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジクロライド、1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジメトサルフェート等の1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタン塩、塩化ベンザルコニウム、ベンザルコニウムメトサルフェート等のベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ベンゼトニウムメトサルフェート等のベンゼトニウム塩、塩化セチルピリジニウム、セチルピリジニウムメトサルフェート等のセチルピリジニウム塩、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、デシルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、ジラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジラウリルジメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジステアリルジメチルアンモニウム塩、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム等のジオクチルジメチルアンモニウム塩等のジアルキルジメチルアンモニウム塩(但し、前記アルキル基は同一又は相異なり、炭素数8~20の直鎖飽和炭化水素を表す。)、N,N-ジデシル-N-メチルポリ(オキシエチレン)アンモニウムプロピオネート等のN,N-ジデシル-N-メチルポリ(オキシエチレン)アンモニウム塩、N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム炭酸塩/重炭酸塩、塩化N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩等のクロルヘキシジン塩、塩化オクタデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ドデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ドデシルジイソプロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化テトラデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化テトラデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化テトラデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ペンタデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ペンタデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ペンタデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ヘキサデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ヘキサデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化ヘキサデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化オクタデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化オクタデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム等のトリアルキル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウム塩(但し、前記アルキル基は同一又は相異なり、炭素数1~18の直鎖飽和炭化水素を表わす。)等が挙げられる。
【0023】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤において、メンタン系化合物(a)と3価以上の多価アルコール類(b)との配合重量比率[(a)/(b)]は、特に限定されないが0.1≦(a)/(b)≦10であることが好ましく、0.2≦(a)/(b)≦5であることがより好ましく、0.5≦(a)/(b)≦2であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤において、メンタン系化合物の含有量は、使用剤型により変えることができ、特に限定されないが、1~70w/w%であることが好ましく、3~65w/w%であることがより好ましく、5~60w/w%であることがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤において、3価以上の多価アルコール類の含有量は、使用剤型により変えることができ、特に限定されないが、10~60w/w%であることが好ましく、15~50w/w%であることがより好ましく、20~40w/w%であることがさらに好ましい。
【0026】
また、本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤において、グリコール類を配合する場合、グリコール類の含有量は、使用剤型により変えることができ、特に限定されないが、1~30w/w%であることが好ましく、2~25w/w%であることがより好ましく、3~20w/w%であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤は、それぞれ、各種剤型にすることができ、例えば、ポンプスプレー剤、エアゾール剤、ペースト、ゲル、固形剤、粉末剤、顆粒剤、液剤などにすることができる。
【0028】
固形剤としては、例えば、マット状、シート状、ビーズ状、フィルム、打錠形、ハニカム状の担体に、メンタン系化合物及び/又は3価以上の多価アルコール類を含む溶液を含浸した製剤が挙げられる。担体は、薬剤揮散の持続性の観点から、多孔性材料が好適である。固形剤は、例えば、不織布袋等の通気性容器に収容して使用することもできる。固形剤がマット状、シート状の担体の場合、メンタン系化合物を0.1~100mg/cm担持させることが好ましく、固形剤がビーズ状の担体である場合、担体1gあたりメンタン系化合物を0.1~500mgの割合で担持させることが好ましい。
【0029】
粉末剤又は顆粒剤としては、無水ケイ酸、タルク、珪藻土等の無機粉体、又はシリコーン等の有機粉体に、メンタン系化合物及び/又は3価以上の多価アルコール類を含む溶液を含浸した製剤が挙げられる。
【0030】
液剤としては、メンタン系化合物及び/又は3価以上の多価アルコール類を含む溶液をそのまま用いることもできるし、ポンプスプレー剤やエアゾール剤としても使用することもできる。
【0031】
エアゾール剤の噴射剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ジメチルエーテル、液化石油ガス、ハイドロフルオロカーボン、液化炭酸ガス等の液化ガス;又は窒素ガス、炭酸ガス、これらの混合ガス、圧縮空気、亜酸化窒素等の圧縮ガスが挙げられる。これらの噴射剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。原液としてメンタン系化合物及び/又は3価以上の多価アルコール類を含む溶液に、これらの噴射剤を充填してエアゾール剤とすることができる。
【0032】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤は、メンタン系化合物及び3価以上の多価アルコール類の相互作用により、食品防カビ効力を増強し、食品のカビが発生するのを阻害するものである。従って、メンタン系化合物及び3価以上の多価アルコール類の両成分が同じ担体に溶解又は含侵している食品防カビ剤が好ましいが、例えば、分封されたエアゾールのように、メンタン系化合物及び3価以上の多価アルコール類を別々に含む食品防カビ剤及び食品防カビ効力増強剤としてもよい。メンタン系化合物及び3価以上の多価アルコール類の両成分が同じ担体に溶解又は含侵している食品防カビ剤の場合には、3価以上の多価アルコール類は、メンタン系化合物の防カビ効力増強剤及び/又はカビ発生阻害剤として食品防カビ剤に含有される。また、このような3価以上の多価アルコール類の新たな特性から、本発明は、メンタン系化合物を含む食品防カビ剤に有効量の3価以上の多価アルコール類を添加する、該メンタン系化合物の効力増強方法や、メンタン系化合物を含む食品防カビ剤に有効量の3価以上の多価アルコール類を添加する、カビ発生阻害方法を提供する。
【0033】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤は、例えば、米、麦、大麦、小麦、ライ麦、ソバ、雑穀等の穀物類、豚肉、牛肉、鶏肉等の肉類、魚、イカ、カニ、タコ、エビ、等の魚介類、大根、ジャガイモ、ナス、ニンジン、ブロッコリー、らっきょう、ホウレン草、ゴーヤ、ネギ、レンコン、ミョウガ、菜の花、カイワレ、白菜、大葉、ピーマン、キャベツ、タマネギ、生姜、ニンニク、カボチャ、梅、落花生、セロリ、ニラ、トウモロコシ等の野菜類、エンドウ豆、大豆、もやし等の豆類等の食品の防カビに有効であり、未加工食品でもこれらを原料とする加工食品であっても良い。中でも、米、麦、大麦、小麦、ライ麦、ソバ、雑穀等の穀物類の防カビにより有効であり、米の防カビに特に有効である。なお、本明細書における食品は、上記の通り、可食の食品であることが好ましいが、これらの可食の食品由来の生ゴミも含むものとする。
【0034】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤における、カビは、特に限定されないが、具体的には、コウジカビ(Aspergillus brasiliensis)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・バージカラー(Aspergillus versicolor)、アスペルギルス・キャンディダス(Aspergillus candidus) 等のアスペルギルス(Aspergillus)属、クロカワカビ(Cladosporium cladosporioides)等のクラドスポリウム(Cladosporium)属、アオカビ(Penicillium citrinum)、ペニシリウム・イスランジカム(Penicillium islandicum)等のペニシリウム(Penicillium)属、ススカビ(Alternaria alternata)等のアルテルナリア(Alternaria)属、アカカビ(Fusarium solani)等のフザリウム(Fusarium)属、Eurotium herbariorum等のユーロチウム(Eurotium)属、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属、エキソフィアラ(Exophiala)属等の黒色酵母類、フォーマ(Phoma)属等が例示される。
【0035】
本発明の食品防カビ効力増強剤及び食品防カビ剤は、メンタン系化合物及び3価以上の多価アルコール類によって食品防カビ効力を発揮するので、食品がこれらに暴露される状態であれば、その剤型応じて、いかなる方法で、いかなる対象に適用してよい。適用方法としては、塗付、散布、噴霧、又は設置などが挙げられる。また、メンタン系化合物と、3価以上の多価アルコール類とを含む製剤を、塗付等してもよいし、これらの有効成分を個別に含む製剤を、個別に塗付等してもよい。
【0036】
例えば、米の防カビを目的とする場合には、米収納袋、米俵、米収納ケース、米びつ等を対象にして、塗付、散布、噴霧、又は設置することができる。また、本発明の食品防カビ剤及び/又は食品防カビ効力増強剤を、また、本発明の食品防カビ剤及び/又は食品防カビ効力増強剤を、米収納袋、米俵、米収納ケース、米びつ等を対象として直接塗付、散布、又は噴霧することもできる。また、米収納袋、米俵、米収納ケース、米びつ等の内部に設置等してもよい。
【0037】
<食品防カビ方法>
本発明の一実施形態の食品防カビ方法は、メンタン系化合物、及び3価以上の多価アルコール類を、食品に暴露する方法である。本実施形態の食品防カビ方法を実施するにあたり、食品防カビ剤は、いずれも前記実施形態において説明したものと同様のものを使用し得る。
【0038】
本実施形態において、固形剤として使用する場合、設置個数は特に限定されず、1個であっても、2個以上であっても良い。
【0039】
本実施形態において、メンタン系化合物の対象物(米収納袋、米俵、米収納ケース、米びつ等)に対する処理量は、0.1~250mg/Lであることが好ましく、0.5~200mg/Lであることがより好ましく、1.0~180mg/Lであることがさらに好ましい。また、3価以上の多価アルコール類の対象物(米収納袋、米俵、米収納ケース、米びつ等)に対する処理量は、0.1~200mg/Lであることが好ましく、0.5~150mg/Lであることがより好ましく、1.0~125mg/Lであることがさらに好ましい。
【0040】
以上、本発明の食品防カビ方法によれば、メンタン系化合物の食品防カビ効力が増強することができるため、対象物(米収納袋、米俵、米収納ケース、米びつ等)での食品にカビが発生することを阻害し、対象物における食品への防カビ効果を付与することができる。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0042】
(製造例1)
粒子径約5mmの炭配合パルプ製ビーズ3gに、p-メンタン-3,8-ジオール500mg、グリセリン300mg、プロピレングリコール150mg、及び緑茶エキス10mgを含有させ、得られたビーズを通気性のある不織布袋に入れて、開口部を有する扁平状のポリエステル製容器(米びつの上蓋の裏に固定用の両面テープ付き)に収納して、固形剤である食品防カビ剤(本発明1)を得た。
【0043】
製造例1に準じて、表1に示す各種固形剤である食品防カビ剤(本発明2~5、比較例1~4)を調製した。
【0044】
【表1】
【0045】
[米の防カビ試験]
40℃、湿度75%の恒温室に容量20Lの米びつを設置し、米びつ内に、本発明1の食品防カビ剤を設置した。米びつ内に米100gを入れた容積が0.8Lのプラスチック容器を入れた。カビ(アスペルギルス属)を培養したコロニーから採取したカビ(アスペルギルス属)を米全体に筆で数回塗布して、米にカビ(アスペルギルス属)を植え付けた。そして、10日後にカビ(アスペルギルス属)の繁殖を観察した。観察の結果、以下の基準でA~Dの4段階で評価した。また、本発明2~5、及び比較例1~4についても同様に試験を行った(試験結果は表2に示す)。
(評価基準)
A:米に全く変質が見られない。
B:米に小さな変質・変色が僅かに見られる。
C:米に小さな変質・変色が多数みられる。
D:米に大きな変質・変色が多数みられる。
【0046】
[食パンの防カビ試験]
40℃、湿度75%の恒温室に容量20Lの米びつを設置し、米びつ内に、本発明1の食品防カビ剤を設置した。米びつ内に食パン10gを入れた容積が0.8Lのプラスチック容器を入れた。1週間後のカビの繁殖を観察した。観察の結果、以下の基準でA~Dの4段階で評価した。また、本発明2~5、及び比較例1~4についても同様に試験を行った(試験結果は表2に示す)。
(評価基準)
A:食パンに全く変質が見られない。
B:食パンに小さな変質・変色が僅かに見られる。
C:食パンに小さな変質・変色が多数みられる。
D:食パンに大きな変質・変色が多数みられる。
【0047】
【表2】
【0048】
試験の結果、本発明1~5のように3価以上の多価アルコール類であるグリセリンやジグリセリンは、メンタン系化合物であるp-メンタン-3,8-ジオール、テルピネオール、L-メントール、酢酸メンチルの食品である穀物(米や食パン)に対する防カビ効果を増強することが分かった。