(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093097
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/04 20060101AFI20230627BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20230627BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20230627BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20230627BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01Q1/04
H01Q1/22 Z
H01Q1/38
H05K9/00 G
H05K5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208510
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 恒太
(72)【発明者】
【氏名】小俣 順一
【テーマコード(参考)】
4E360
5E321
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
4E360AA03
4E360AB64
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA24
4E360EB03
4E360FA02
4E360FA12
4E360FA13
4E360GA34
4E360GA53
4E360GB99
4E360GC04
4E360GC08
5E321AA14
5E321BB60
5E321GG05
5J046AA04
5J046AA07
5J046AA12
5J046AB06
5J046AB07
5J046AB11
5J046AB13
5J046PA07
5J047AA04
5J047AA07
5J047AA12
5J047AB06
5J047AB07
5J047AB11
5J047AB13
5J047EF01
(57)【要約】
【課題】放射する電波の周波数が低い場合において、地表への放射指向性及び放射利得を改善可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、底部が地表に設置又は地中に埋設される筐体と、筐体内に収容され、回路を有する基板と、基板に配置され、回路からの給電により、低周波数帯の電波を放射するアンテナと、底部に配置され、基板以上の面積を有する導体と、を備える。導体は、底部において、筐体の外側に配置される、又は、筐体の内側に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が地表に設置又は地中に埋設される筐体と、
前記筐体内に収容され、回路を有する基板と、
前記基板に配置され、前記回路からの給電により、低周波数帯の電波を放射するアンテナと、
前記底部に配置され、前記基板以上の面積を有する導体と、
を備える、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記導体は、前記底部において、前記筐体の外側に配置される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記導体は、前記底部において、前記筐体の内側に配置される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地表に設置又は地中に埋設して、電波を送受信するアンテナ装置が知られている。例えば、特許文献1には、マンホール内部に本体部分が設置され、電波を放射するアンテナをマンホールの鍵穴に装着したアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地表に設置又は地中に埋設するアンテナ装置は、アンテナ装置を小型化するため、地上にアンテナを出すよりも、アンテナ装置の筐体内にアンテナを収容する場合がある。このような場合、パッチアンテナ、プリントアンテナ、チップアンテナ等のアンテナを、アンテナ装置の基板上に配置することが考えられる。
【0005】
放射する電波の周波数が高い場合、小型化に適したパッチアンテナであれば、パッチアンテナが配置される基板自体が地板となり、放射する電波に対する地中の影響が少なく済み、放射する電波を地表への放射性指向に限定することができる。
【0006】
一方、放射する電波の周波数が低い場合、パッチアンテナではサイズが大きくなるため、プリントアンテナでは、逆Lアンテナや逆Fアンテナ、チップアンテナでは、小型のチップアンテナを使用することになる。プリントアンテナ、チップアンテナを使用する場合、地表と地中の双方向性の指向性アンテナになり、地中側の誘電率による減衰や反射の影響で放射指向性が大きく歪み、本来必要である地表への放射指向性及び放射利得にも多大な影響を与えてしまう。
【0007】
本発明の目的は、放射する電波の周波数が低い場合において、地表への放射指向性及び放射利得を改善可能なアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアンテナ装置は、
底部が地表に設置又は地中に埋設される筐体と、
前記筐体内に収容され、回路を有する基板と、
前記基板に配置され、前記回路からの給電により、低周波数帯の電波を放射するアンテナと、
前記底部に配置され、前記基板以上の面積を有する導体と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射する電波の周波数が低い場合において、地表への放射指向性及び放射利得を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアンテナ装置であって、地中に埋設した状態における断面図である。
【
図3】
図1に示したアンテナ装置であって、地中に埋設した状態における斜視図である。
【
図4A】従来のアンテナ装置のXZ平面における放射特性を示す図である。
【
図4B】従来のアンテナ装置のYZ平面における放射特性を示す図である。
【
図5A】
図1に示したアンテナ装置のXZ平面における放射特性を示す図である。
【
図5B】
図1に示したアンテナ装置のYZ平面における放射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。Z方向は鉛直方向であり、上方はZ方向の+側であり、下方はZ方向の-側である。
【0013】
本実施の形態に係るアンテナ装置10を、
図1~
図3を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態のアンテナ装置10であって、地中に埋設した状態における断面図である。
図2は、アンテナ装置10の斜視図である。
図3は、アンテナ装置10であって、地中に埋設した状態における斜視図である。
【0015】
アンテナ装置10は、地表に設置又は地中に埋設して、電波を送受信する装置である。アンテナ装置10は、例えば、車両の駐車状態を検知する駐車検知装置等に使用可能である。本実施の形態においては、一例として、
図1に示すように、アンテナ装置10を地中100に埋設した場合を例示して説明を行う。なお、地中100は、土に限らず、アスファルトの場合でもよい。
【0016】
アンテナ装置10は、筐体20、基板30、アンテナ40、導体50等を有する。
【0017】
筐体20は、下部筐体21と上部筐体22とを有する円筒状の収容容器である。下部筐体21は上方に開口する下部収容空間23aを有し、上部筐体22は下方に開口する上部収容空間23bを有する。下部筐体21に上部筐体22を取り付けて、筐体20を構成すると、下部収容空間23aと上部収容空間23bとにより、収容空間23が形成される。なお、
図2及び
図3においては、収容空間23(下部収容空間23a、上部収容空間23b)の図示は省略している。
【0018】
収容空間23に基板30及びアンテナ40等が収容される。なお、収容空間23には、基板30を動作させるためのバッテリー等も収容されるが、ここでは、バッテリー等の図示は省略する。このような収容空間23を有する筐体20は、例えば、プラスチック等の樹脂部材から形成される。
【0019】
基板30は、誘電体で構成される円形状のプリント基板であり、回路(図示省略)を有する。回路は、アンテナ40と電気的に接続され、アンテナ40に給電を行うことにより、アンテナ40から低周波数帯の電波を放射させる。放射された低周波数帯の電波の反射波は、アンテナ40とは別の受信用のアンテナ(図示省略)で受信され、回路は、受信された反射波の処理を行って、例えば、車両の駐車状態を検知する。
【0020】
アンテナ40は、基板30に形成された平面状のプリントアンテナである。ここでは、一例として、基板30上において、円弧形状(逆L形状)に形成している。上述したように、基板30の回路からの給電により、低周波数帯の電波を放射する。低周波数帯の電波としては、例えば、1GHzより小さい周波数帯である。なお、アンテナ40としては、プリントアンテナに代えて、チップアンテナを用いてもよい。このようなアンテナ40は、基本的には、基板30を地板とするダイポールアンテナの特性となる。
【0021】
このようなアンテナ40を有するアンテナ装置10を、
図1に示すように、地中100に埋設する場合には、地表面100aから埋設穴110を掘削し、掘削された埋設穴110内にアンテナ装置10を設置する。そして、埋設穴110内におけるアンテナ装置10との隙間には、例えば、モルタル等を注入することで、埋設穴110内にアンテナ装置10を埋め込む。
【0022】
このように、アンテナ装置10を地中100に埋め込んだ場合には、低周波数帯の電波は波長距離が長いため、地中100側の誘電率による電波の減衰や反射の影響を受ける。そして、このような影響により、アンテナ40から放射する電波の放射指向性が大きく歪み、地表側への放射指向性及び放射利得に大きな影響を与える。
【0023】
ここで、
図4Aは、従来のアンテナ装置のXZ平面における放射特性を示す図であり、また、
図4Bは、従来のアンテナ装置のYZ平面における放射特性を示す図である。なお、ここでの従来のアンテナ装置は、一例として、
図1に示すアンテナ装置10から導体50を除いた構成である。なお、
図4A、
図4B及び後述する
図5A、
図5Bにおける放射特性(放射利得)の数値の単位はdBである。
【0024】
従来のアンテナ装置を空中に配置した場合、アンテナ40のXZ平面における放射特性は、
図4A中に実線で示すように、アンテナ40を中心とする8の字状となる。また、アンテナ40のYZ平面における放射特性は、
図4B中に実線で示すように、アンテナ40を中心とする円形状となる。
【0025】
このような従来のアンテナ装置を地中に埋設した場合、アンテナ40のXZ平面における放射特性は、
図4A中に点線で示すように、地表側(
図4Aの中心より上側)では、実線で示す放射利得より小さくなる。また、地中側(
図4Aの中心より下側)では、実線で示す放射指向性より少し広い放射指向性になるが、放射指向性が歪んだ形状となり、また、全体として、実線で示す放射利得より小さくなる。
【0026】
また、アンテナ40のYZ平面における放射特性は、
図4B中に点線で示すように、地表側(
図4Bの中心より上側)及び地中側(
図4Bの中心より下側)において、全体として、放射指向性が歪んだ形状となり、また、実線で示す放射利得より小さくなる。
【0027】
このように、従来、アンテナ装置を地中に埋設する場合には、地中側の誘電率の影響があり、主に、放射指向性に歪みが生じる。
【0028】
そのため、本実施の形態では、筐体20の下部筐体21の底部211に導体50を設けている。導体50としては、例えば、銅箔等を用いることができる。
【0029】
導体50は、筐体20の外側である底部211の底部下面211aに配置される。また、導体50の面積は、アンテナ40が配置される基板30の面積以上の大きさである。導体50の面積は、より大きいことが望ましく、底部211の底部下面211aに配置する場合には、底部211の底部上面211bに配置する場合よりも、導体50の面積を大きくすることができる。
【0030】
なお、導体50は、筐体20の内側である底部211の底部上面211bに配置されてもよい。この場合においても、導体50の面積は、アンテナ40が配置される基板30の面積以上の大きさであればよい。
【0031】
また、アンテナ40(基板30)と導体50との間の距離は、アンテナ40が放射する電波の波長をλとすると、λ/2とすることが望ましい。なお、この距離は、筐体20の厚さによっては、λ/2に足りない場合もあり得るが、その場合でも、ある程度は、以下に説明する作用、効果を得ることができる。
【0032】
このような導体50を、アンテナ40が配置される基板30の下方側に配置することにより、双方向の放射特性、所謂、ダイポールアンテナの放射特性の地中側への放射指向性を導体50で地表側へ反射することができる。これにより、反射した放射指向性を地表側への放射指向性と重ね合わせることで、放射利得を向上させることができる。
【0033】
また、地中100側の誘電率による影響を導体50で遮ることができる。これにより、地中側へ向かっていた放射指向性が略地表側の放射指向性となり、地表側への放射指向性の歪みがなくなり、等方性となり、地表側との通信を向上させることができる。
【0034】
図5Aは、アンテナ装置10のXZ平面における放射特性を示す図であり、また、
図5Bは、アンテナ装置10のYZ平面における放射特性を示す図である。
【0035】
アンテナ40のXZ平面における放射特性について、従来のアンテナ装置を地中に埋設した場合と、導体50を有するアンテナ装置10を地中に埋設した場合とを、
図4A及び
図5Aを参照して比較する。
図4A及び
図5A中に点線で示すように、地表側(
図4A及び
図5Aの中心より上側)では、
図5A中に点線で示す放射特性は、
図4A中に点線で示す放射特性より、広い放射指向性になり、また、大きい放射利得となる。
【0036】
なお、地中側(
図4A及び
図5Aの中心より下側)では、
図5A中に点線で示す放射特性は、
図4A中に点線で示す放射特性より、狭い放射指向性になり、また、一部の方向で小さい放射利得となる。しかしながら、アンテナ装置10は、地表側への放射指向性及び放射特性を改善できればよいので、このような特性でもよい。
【0037】
また、アンテナ40のYZ平面における放射特性について、従来のアンテナ装置を地中に埋設した場合と、導体50を有するアンテナ装置10を地中に埋設した場合とを、
図4B及び
図5Bを参照して比較する。
図4B及び
図5B中に点線で示すように、地表側(
図4B及び
図5Bの中心より上側)では、
図5B中に点線で示す放射特性は、
図4B中に点線で示す放射特性より、広い放射指向性になり、また、大きい放射利得となる。
【0038】
なお、地中側(
図4B及び
図5Bの中心より下側)では、
図5B中に点線で示す放射特性は、
図4B中に点線で示す放射特性より、狭い放射指向性になり、また、小さい放射利得となる。しかしながら、アンテナ装置10は、地表側への放射指向性及び放射特性を改善できればよいので、このような特性でもよい。
【0039】
以上説明したように、筐体20の底部211に導体50を設けることにより、アンテナ40から放射する電波の地表側への放射特性(放射指向性及び放射利得)を改善することができる。そして、このようにして、地表側への電波の放射特性を改善できるので、アンテナ装置10を地中100に埋設することができ、また、筐体20内にアンテナ40を収容して、アンテナ装置10を小型化することができる。
【0040】
なお、ここでは、アンテナ装置10を地中100に埋設しているが、アンテナ装置10を地表に設置する場合でも、上述したように、上方側への放射指向性及び放射特性を改善することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は、本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るアンテナ装置は、底部が地表に設置又は地中に埋設される装置、例えば、例えば、車両の駐車状態を検知する駐車検知装置等に有用なものである。
【符号の説明】
【0043】
10 アンテナ装置
20 筐体
21 下部筐体
211 底部
211a 底部下面
211b 底部上面
22 上部筐体
23 収容空間
23a 下部収容空間
23b 上部収容空間
30 基板
40 アンテナ
50 導体
100 地中
100a 地表面
110 埋設穴