(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093100
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208513
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 弥貴也
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 真吾
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BC01
3D023BD32
3D023BE03
3D023BE15
3D023BE31
(57)【要約】
【課題】表皮体を基材に対して固着する位置を確保できる内装材を提供する。
【解決手段】内装材1は、基材3と、基材3の表側の少なくとも一部を覆って基材3に取り付けられる表皮体4と、を備える。基材3は、基部10と、基部10の裏側に突出する壁部11と、を有する。表皮体4は、壁部11の意匠側を覆う壁部被覆部26と、壁部被覆部26と連なって壁部11の縁部から裏側へと折り返されて基材3に固着される壁部側被固着部31と、を有する。壁部11は、基部10からの突出方向と交差する方向の端縁部に、壁部被覆部26に対する壁部側被固着部31の少なくとも一部の折り返し方向を基部10の裏側へと誘導する誘導部35を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
この基材の表側の少なくとも一部を覆ってこの基材に取り付けられる表皮体と、を備え、
前記基材は、基部と、この基部の裏側に突出する壁部と、を有し、
前記表皮体は、前記壁部の意匠側を覆う壁部被覆部と、この壁部被覆部と連なって前記壁部の縁部から裏側へと折り返されて前記基材に固着される壁部側被固着部と、を有し、
前記壁部は、前記基部からの突出方向と交差する方向の端縁部に、前記壁部被覆部に対する前記壁部側被固着部の少なくとも一部の折り返し方向を前記基部の裏側へと誘導する誘導部を備える
ことを特徴とする内装材。
【請求項2】
誘導部は、壁部の基部からの突出方向と交差する方向の端縁部において、前記突出方向に対してその他の部分よりも大きく傾斜する傾斜部である
ことを特徴とする請求項1記載の内装材。
【請求項3】
誘導部は、壁部の基部からの突出方向と交差する方向の端縁部において、前記突出方向に対して所定の角度または所定の曲率で傾斜している
ことを特徴とする請求項2記載の内装材。
【請求項4】
誘導部は、直線状または曲線状に形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の内装材。
【請求項5】
表皮体は、少なくとも壁部被覆部から壁部側被固着部に亘り、意匠用の縫製部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の意匠側の少なくとも一部を覆ってこの基材に取り付けられる表皮体を備える内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の車室内を覆う内装材に高級感を付与するために、皮革や合成樹脂などからなる表皮体を備える内装材が用いられることがある。このような内装材は、基材の表面を覆う表皮体の端縁部を基材の端部から基材の裏側(反意匠側)に折り返し、基材に対して溶着などによって固着することで、一体的に形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-272828号公報 (第4-6頁、
図1-6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばインストルメントパネルの一部を装飾する加飾パネルでは、比較的小型、または長尺状で短手方向の幅が狭いデザインとなることが多い。その場合、加飾パネルの基部の互いに対向する縁部から裏側に突出する壁部の間隔が狭くなることから、基材の壁部を覆う表皮体を意匠側から裏側へと折り返し壁部の裏面へ溶着しようとしても、溶着治具を押し当てることができる範囲が限られる場合がある。
【0005】
特に、表皮体に対し、加飾を目的とした縫製を施す場合、縫製を施した分だけ表皮体に強度が付与されることになる。そのため、加飾用の縫製が壁部を覆う位置に形成されている場合、折り返した状態からの戻りを抑えつけるために、表皮体を基材に対してより強固に固着する必要がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、表皮体を基材に対して固着する位置を確保できる内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の内装材は、基材と、この基材の表側の少なくとも一部を覆ってこの基材に取り付けられる表皮体と、を備え、前記基材は、基部と、この基部の裏側に突出する壁部と、を有し、前記表皮体は、前記壁部の意匠側を覆う壁部被覆部と、この壁部被覆部と連なって前記壁部の縁部から裏側へと折り返されて前記基材に固着される壁部側被固着部と、を有し、前記壁部は、前記基部からの突出方向と交差する方向の端縁部に、前記壁部被覆部に対する前記壁部側被固着部の少なくとも一部の折り返し方向を前記基部の裏側へと誘導する誘導部を備えるものである。
【0008】
請求項2記載の内装材は、請求項1記載の内装材において、誘導部は、壁部の基部からの突出方向と交差する方向の端縁部において、前記突出方向に対してその他の部分よりも大きく傾斜する傾斜部であるものである。
【0009】
請求項3記載の内装材は、請求項2記載の内装材において、誘導部は、壁部の基部からの突出方向と交差する方向の端縁部において、前記突出方向に対して所定の角度または所定の曲率で傾斜しているものである。
【0010】
請求項4記載の内装材は、請求項3記載の内装材において、誘導部は、直線状または曲線状に形成されているものである。
【0011】
請求項5記載の内装材は、請求項1ないし4いずれか一記載の内装材において、表皮体は、少なくとも壁部被覆部から壁部側被固着部に亘り、意匠用の縫製部を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の内装材によれば、壁部の裏面に十分な固着位置を取ることが容易でない基材の場合であっても、壁部側被固着部の少なくとも一部の固着位置を基部の裏面に設定できるので、表皮体を基材に対して固着する位置を確保できる。
【0013】
請求項2記載の内装材によれば、請求項1記載の内装材の効果に加えて、壁部側被固着部の少なくとも一部の折り返し方向をその傾斜に応じて容易に制御可能な誘導部を形成できる。
【0014】
請求項3記載の内装材によれば、請求項2記載の内装材の効果に加えて、壁部側被固着部の少なくとも一部の折り返し方向を、誘導部によって確実に誘導できる。
【0015】
請求項4記載の内装材によれば、請求項3記載の内装材の効果に加えて、誘導部を壁部の基部からの突出方向と交差する方向の端縁部に容易に形成できる。
【0016】
請求項5記載の内装材によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の内装材の効果に加えて、表皮体の基材に対する固着位置を確保できることで、表皮体を基材に対して強固に固着できるため、少なくとも壁部被覆部から壁部側被固着部に亘り縫製部を形成した表皮体であっても、表皮体が端末部から基材に対して剥がれにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の内装材の基材の一部を示す斜視図、(b)は同上内装材の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態の内装材の一部を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態の内装材の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図2及び
図3において、1は内装材である。内装材1は、自動車などの車両の車室の内装材として用いられる車両用内装材である。本実施の形態において、内装材1は、例えばインストルメントパネルあるいはセンタコンソールなどに用いられるものとする。一例として、内装材1は、乗員がレバー操作時などに手首を置くパームレストである。なお、以下、車室の内側すなわち意匠側を表側、その背面側を裏側として説明する。図中においては、裏側を上側に見えるように図示している。
【0020】
内装材1は、長尺状に形成されている。内装材1は、車室内に前後方向に長手方向を沿わせて配置されている。
【0021】
内装材1は、基材3と、基材3に取り付けられた表皮体4と、を備える。
【0022】
基材3は、車体側の構造物に固定されるなど、基本的には車室内に露出しない部分である。基材3は、配置する位置に応じた任意の形状とすることができるが、本実施の形態では、基部10と、基部10の縁部から突出する壁部11と、を一体的に有する。基材3は、例えば合成樹脂により形成され、所定の剛性を有している。
【0023】
基部10は、表皮体4に覆われる表側が面状に形成された一般部(基板部)である。本実施の形態において、基部10は、長手状の板状に形成されている。図示される例では、基部10は、長方形状に形成されている。本実施の形態において、基部10は、長手方向の両端部が中央部に対し裏側に湾曲されたアーチ形状となっている。基部10の裏側には、必要に応じて、リブなどの補強部や、構造物への取り付け用の突起などが形成されていてよい。
【0024】
壁部11は、基部10の裏側に突出された縦壁部である。壁部11は、基部10の裏側の任意の位置に形成されていてよいが、本実施の形態では、基部10の少なくとも一方の長辺に沿って形成されている。つまり、壁部11は、基部10の端縁部の近傍に位置し、端縁部に沿って形成されている。図示される例では、壁部11は、基部10の少なくとも一方の長辺全体に亘り連なる長手状に形成されている。また、壁部11は、基部10の一方の長辺全体に亘り連なる長手状に形成されている。すなわち、壁部11と基部10とにより、基材3は、断面L字状に形成されている。壁部11は、基部10からの突出寸法が長手方向の寸法に比較して相当小さい、細長い板状に形成されている。壁部11の最大突出寸法は、基部10の幅寸法の半分未満となっている。したがって、壁部11の面積は、基部10の面積より小さく形成されている。
【0025】
壁部11の外縁部は、基部10からの突出方向の先端縁13と、この先端縁13の端部から基部10の裏側へと連なる側縁14と、を有する。つまり、先端縁13は、壁部11において、突出方向の端縁部であり、側縁14は、突出方向に対し交差する方向の端縁部である。本実施の形態において、側縁14は、先端縁13の長手方向の端部に連なって位置する。図示される例では、側縁14は、基部10からの壁部11の突出方向(
図1(a)中の矢印Aに示す)に対して傾斜している。
【0026】
表皮体4は、基材3に取り付けられ、基材3の表側の少なくとも一部を覆うように配置されている。表皮体4は、基材3において、少なくとも基部10及び壁部11の表側を覆って配置され、本実施の形態では基材3の基部10及び壁部11の表側全体を覆っている。表皮体4は、例えば天然皮革、合成皮革、あるいは合成樹脂などの部材によりシート状に形成されている。
【0027】
表皮体4は、基材3の表側を覆う被覆部20と、基材3の裏側に折り返されて基材3に固着される被固着部21と、を一体的に有する。表皮体4のうち、基材3の表側を覆う被覆部20を除く周縁部が被固着部21となっている。つまり、被覆部20の周縁部に連なって被固着部21が形成されている。被覆部20の外縁部が基材3の外縁部に位置し、基材3の外縁部から基材3の端面に亘る折り返し部(折り曲げ部)22を介して被固着部21が基材3の裏側に延びている。本実施の形態において、折り返し部22は、基部10の短辺及び壁部11とは反対側の長辺に亘る部分と、壁部11の先端縁13及び側縁14と、に形成される。
【0028】
被覆部20は、基材3の基部10を覆う基部被覆部25と、基材3の壁部11の表側を覆う壁部被覆部26と、を一体に備える。
【0029】
基部被覆部25は、被覆部20の一般部を構成している。基部被覆部25は、基部10と略等しい形状に形成されている。本実施の形態において、基部被覆部25は、基部10より表皮体4の厚み分大きい長方形状に形成されている。
【0030】
壁部被覆部26は、基部被覆部25よりも面積が狭く形成されている。壁部被覆部26は、壁部11と略等しい形状に形成されている。本実施の形態において、壁部被覆部26は、壁部11より表皮体4の厚み分大きい長方形状に形成されている。つまり、本実施の形態において、壁部被覆部26は、細長い長方形状となっている。
【0031】
被固着部21により表皮体4が基材3の裏側に固着されることで、表皮体4の基材3からの剥がれや浮き上がりが防止されている。被固着部21は、例えば所定の器具を用いて、基材3に対し溶着固定されている。被固着部21は、基部被覆部25に連なる基部側被固着部30と、壁部被覆部26に連なる壁部側被固着部31と、を備える。基部側被固着部30と壁部側被固着部31とは、基部10と壁部11の基端部とが連なる位置で互いに分かれて形成されている。
【0032】
基部側被固着部30は、基部被覆部25から折り返し部22を介して折り返されて基部10の裏面に重ねられ、溶着などにより基部10の裏面に固着されている。本実施の形態において、基部側被固着部30は、基部10の各短辺及び壁部11とは反対側の長辺の位置に沿って長手状に配置されている。なお、基部側被固着部30は、基部10の角部の位置では、基部10の角部の大きさに応じて、短冊状などの小片として形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。
【0033】
壁部側被固着部31は、折り返し部22から基部10または壁部11の裏面に重ねられ、溶着などにより基部10または壁部11の裏面に固着されている。本実施の形態において、壁部側被固着部31は、壁部11が長手状であることにより、壁部11の先端縁13から折り返し部22を介して壁部被覆部26から折り返される先端縁側被固着部31aと、壁部11の側縁から折り返し部22を介して壁部被覆部26から折り返される側縁側被固着部31bと、が設定されている。
【0034】
先端縁側被固着部31aは、壁部11の裏面に重ねられ、溶着などにより壁部11の裏面に固着されている。
【0035】
側縁側被固着部31bは、基材3の側縁14に形成された誘導部35(
図1(a))により折り返し部22での折り返し方向が誘導されて、少なくとも一部が基部10の裏面に重ねられ、この基部10の裏面に重ねられた部分が基部10に対して溶着などにより固着されている。側縁側被固着部31bの残りの部分は、基部10の裏面に重ねられて基部10に固着されていてもよいし、壁部11の裏面に重ねられて壁部11に固着されていてもよい。
【0036】
図1(a)に示す誘導部35は、壁部11の基部10からの突出方向(矢印Aに示す)と交差する方向の端縁部である側縁14の所定部に形成されている。誘導部35は、壁部11の側縁14において、基部10と連なる部分、つまり側縁14の基部10側の端部の位置に形成されている。本実施の形態において、誘導部35は、壁部11の基部10からの突出方向に対して、側縁14におけるその他の部分よりも大きく傾斜する傾斜部である。誘導部35は、壁部11の側縁14において、先端縁13(
図2)と基部10の裏面との間の所定部から基部10の裏面に向かい傾斜している。誘導部35は、壁部11の基部10からの突出方向と交差する方向の端縁部において、壁部11の基部10からの突出方向に対して所定の角度または所定の曲率で傾斜している。つまり、誘導部35は、直線状または曲線状に形成されている。本実施の形態において、誘導部35は、壁部11の基部10からの突出方向(矢印Aに示す)に対して所定の角度αで傾斜する直線状の傾斜部となっている。
【0037】
本実施の形態において、誘導部35は、
図1(b)に示す表皮体4に形成された縫製部37に対応する位置に形成されている。ここで、縫製部37は、意匠用のステッチ部であり、本実施の形態では、表皮体4の表面に縫い糸のラインが形成されるように配置されている。これに限らず、縫製部37は、複数の表皮体片同士を縫い合わせて表皮体4を構成するためのものでもよい。縫製部37は、表皮体4の少なくとも壁部被覆部26から壁部側被固着部31(側縁側被固着部31b)に亘り形成されている。本実施の形態では、縫製部37は、壁部被覆部26に長手方向に沿って形成されている。縫製部37近辺の壁部被覆部26は、
図1(a)に示す壁部11の溝部39に収容される。溝部39は、壁部11において、意匠側つまり表皮体4の壁部被覆部26(
図1(b))により覆われる側に形成されている。本実施の形態では、溝部39は、壁部11の長手方向に沿って長手状に凹設されている。溝部39の端部に、誘導部35が位置している。すなわち、縫製部37は、誘導部35に重なる位置にある。本実施の形態では、誘導部35は、壁部側被固着部31(側縁側被固着部31b)のうち、縫製部37(
図1(b))が形成された位置を含む部分の折り返し方向を矢印Bに示す方向に誘導する。
【0038】
そして、内装材1を製造する際には、予め射出成形などにより成形した基材3に対し、別途成形された表皮体4の被覆部20を重ね、基材3の裏側に折り返し部22を介して被固着部21を折り返して巻き込み、この巻き込んだ被固着部21を基材3の裏面に重ねて、任意の溶着器具(溶着手段)を用いて基材3の裏面に溶着などにより固着する。
【0039】
被固着部21は、基部側被固着部30が基部被覆部25の端縁部から基材3の端縁部にしたがい基材3の裏側へと巻き込まれて基材3の基部10の裏面に重ねられて、溶着器具などを用いて基部10に対して固着される。また、壁部側被固着部31は、壁部被覆部26の端縁部から基材3の端縁部にしたがい基材3の裏側へと巻き込まれて基材3の基部10または壁部11の裏面に重ねられて、溶着器具などを用いて基部10または壁部11に対して固着される。
【0040】
壁部側被固着部31では、先端縁側被固着部31aを壁部11の先端縁13から壁部11の裏側に折り返し、壁部11の裏面に溶着などにより固定する。また、側縁側被固着部31bを壁部11の側縁14から壁部11の裏側に折り返す。
【0041】
このとき、壁部11の基部10からの突出方向と交差する方向の端縁部である側縁14の基部10の裏側と連なる端部が、基部10からの壁部11の突出方向(
図1(a)の矢印Aに示す)に沿って形成されている従来例の場合には、側縁側被固着部31bはその端部と直交する方向に折り返され、壁部11の裏面側に重ねられる。
【0042】
それに対し、本実施の形態の場合には、側縁14に、壁部被覆部26に対する壁部側被固着部31の少なくとも一部、本実施の形態では側縁側被固着部31bの折り返し方向を基部10の裏側へと誘導する誘導部35を備えることで、側縁側被固着部31bを壁部11の裏面ではなく、基部10の裏面に重ねることができる。そこで、壁部11の裏面に十分な固着位置を取ることが容易でない基材3の場合であっても、側縁側被固着部31bの固着位置(固着ポイントP)を基部10の裏面に設定できるので、表皮体4を基材3に対して固着する位置を確保できる。特に、本実施の形態では、基部10の面積が壁部11の面積より大きいため、側縁側被固着部31bの固着位置(固着ポイントP)を基部10の裏面に設定することで、表皮体4を基材3に対して固着する位置を十分に確保できる。
【0043】
そのため、限られた窮屈なレイアウト内であっても、表皮体4(側縁側被固着部31b)の基材3に対する固着ポイントPを確保して強固に固着できる。したがって、側縁側被固着部31bつまり端末部から、表皮体4が基材3に対して剥がれることを防止でき、生産性を改善できる。また、表皮体4の側縁側被固着部31bを折り返す際に一定の引っ張り力を生じさせることができるので、皴の発生を抑制でき、見栄えの向上すなわち外観品質の向上も期待できる。
【0044】
また、側縁側被固着部31bを基材3に対して固着する際に、溶着器具を用いる場合であっても、溶着器具による作業スペースを確保でき、作業性が良好である。
【0045】
誘導部35を、壁部11の基部10からの突出方向と交差する方向の端縁部である側縁14において、突出方向に対してその他の部分よりも大きく傾斜する傾斜部として形成することで、壁部側被固着部31の少なくとも一部(側縁側被固着部31b)の折り返し方向を、その傾斜に応じて容易に制御(コントロール)可能な誘導部35を形成できる。
【0046】
誘導部35が、壁部11の基部10からの突出方向と交差する方向の端縁部である側縁14において、壁部11の基部10からの突出方向に対して所定の角度または所定の曲率で傾斜しているため、壁部側被固着部31の少なくとも一部(側縁側被固着部31b)の折り返し方向を、誘導部35によって確実に誘導できる。
【0047】
誘導部35を直線状または曲線状に形成することで、誘導部35を壁部11の基部10からの突出方向と交差する方向の端縁部である側縁14に容易に形成できる。
【0048】
また、表皮体4の少なくとも壁部被覆部26から壁部側被固着部31に亘り、意匠用の縫製部37を形成する場合、縫製部37を形成した分だけ表皮体4の強度(硬さまたは折れ曲がりにくさ)が増すこととなり、折り返した状態からの戻りを押さえつけるために表皮体4を基材3に対して、より強固に固着する必要がある。そこで、本実施の形態では、表皮体4の基材3に対する固着位置を確保できることで、表皮体4を基材3に対して強固に固着できるため、少なくとも壁部被覆部26から壁部側被固着部31に亘り縫製部37を形成した表皮体4であっても、表皮体4が端末部から基材3に対して剥がれにくくできる。
【0049】
また、誘導部35の形状のみによって側縁側被固着部31bの折り返し方向を誘導するため、表皮体4を有する任意の内装材1にも応用ができる。
【0050】
なお、誘導部35は、その傾斜した角度αや曲率を調整することで、壁部側被固着部31の少なくとも一部(側縁側被固着部31b)の折り返し方向を制御(コントロール)し、固着ポイントPを調整可能である。例えば、
図4に示す第2の実施の形態のように、角度αをより大きく設定することで、壁部被覆部26に対する壁部側被固着部31(側縁側被固着部31b)の折り返し方向(矢印Bに示す)を、壁部11からより遠ざけて基部10側に向かわせることができる。つまり、固着ポイントPを設定したい位置に応じて、角度αを設定することができ、本実施の形態では、角度αが大きいほど固着ポイントPを壁部11から遠ざけることができる。例えば、固着ポイントPは、他部品との合わせに応じて調整することも可能である。
【0051】
また、誘導部35の位置は、基部10の裏面に連なって形成されるものに限らず、側縁14において、先端縁13から基部10の裏面までの間の任意の位置に設定してよい。例えば
図5に示す第3の実施の形態のように、誘導部35は、基部10から突出方向に離れた位置までとし、誘導部35の先端部から基部10の裏面までの間を、基部10からの壁部11の突出方向に沿わせた非傾斜部40として形成してもよい。
【0052】
さらに、上記の各実施の形態において、縫製部37は、複数の表皮体片を重ねて厚みを増して形成された表皮体4に対しても形成可能である。
【0053】
内装材1は、センタコンソールやインストルメントパネルなどの内装用以外の任意の車両の内装材に適用できる。また、車両用内装材に限らず、その他の任意の内装材に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば自動車のセンタコンソールやインストルメントパネルに用いられる車両用内装材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 内装材
3 基材
4 表皮体
10 基部
11 壁部
26 壁部被覆部
31 壁部側被固着部
35 誘導部
37 縫製部