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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093122
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】塗工装置及び塗工方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 3/132 20060101AFI20230627BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20230627BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230627BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20230627BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230627BHJP
   B05D 1/34 20060101ALI20230627BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B05C3/132
B05C5/02
B05C11/10
B05D1/28
B05D3/00 B
B05D1/34
B05D3/00 C
B05D7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208557
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 基
(72)【発明者】
【氏名】福田 一人
(72)【発明者】
【氏名】田邉 正明
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC56
4D075AC62
4D075AC80
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075AE24
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB04
4D075EA14
4F040AA22
4F040AB04
4F040AC02
4F040BA49
4F040CC01
4F040CC14
4F040CC15
4F040CC19
4F040DA12
4F040DA14
4F040DA15
4F040DB22
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA13
4F041BA14
4F041BA34
4F041BA56
4F041BA59
4F041CA02
4F041CA12
4F041CA28
4F042AA22
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
4F042BA27
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB19
4F042CC07
4F042DF23
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】開口部を有する基材の両面に形成される塗膜の厚みを、搬送方向に均一にする。
【解決手段】塗工装置20は、基材2の両面に対して塗液Cを塗布し、基材2の厚み方向に互いに対向する第1及び第2ブロック21,22と、第1及び第2ブロック21,22同士の隙間に塗液Cが溜まるように形成されるとともに、基材2が通る液溜り部23と、を備える。液溜り部23は、基材2の搬送方向における上流側に開口し、基材2が導入される基材導入口24と、搬送方向における下流側に開口し、基材2が排出される基材排出口25と、幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部26と、を含む。第1及び第2ブロック21,22には、液溜り部23に臨み且つ液溜り部23に塗液Cを供給する塗液供給口31が設けられる。塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、
前記基材の厚み方向に互いに対向する一対のブロックと、
前記一対のブロック同士の隙間に前記塗液が溜まるように形成されるとともに、前記基材が通る液溜り部と、を備え、
前記液溜り部は、
前記基材の搬送方向における上流側に開口し、前記基材が導入される基材導入口と、
前記搬送方向における下流側に開口し、前記基材が排出される基材排出口と、
前記搬送方向に交差する幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部と、を含み、
前記一対のブロック及び前記側面部のうちの少なくともいずれかには、前記液溜り部に臨むとともに前記液溜り部に前記塗液を供給する塗液供給口が設けられており、
前記塗液供給口を介して前記液溜り部に供給される前記塗液の量は、前記搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい、塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記塗液供給口の断面積は、前記搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい、塗工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗工装置において、
前記塗液供給口の数は、前記搬送方向の下流側よりも上流側の方が、多い、塗工装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記塗液供給口は、前記液溜り部における前記搬送方向の中央位置より上流側にのみ配置されている、塗工装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記塗液供給口を介して前記液溜り部に供給される前記塗液の流量を調整する流量調整機構が設けられており、
前記流量調整機構は、前記塗液供給口を介して前記液溜り部に供給される前記塗液の流量を、前記搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるように、調整する、塗工装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記液溜り部における前記搬送方向の中央位置より下流側には、前記液溜り部から前記塗液を排出する塗液排出口が配置されている、塗工装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記搬送方向に隣り合う前記塗液供給口同士の間隔は、前記搬送方向の下流側よりも上流側の方が、小さい、塗工装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記幅方向における少なくとも片側の前記側面部には、前記基材導入口から前記基材排出口に亘って開口する露出口が設けられており、
前記露出口からは、前記基材の前記幅方向における一部が前記液溜り部の外部に突出可能である、塗工装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記塗液供給口は、前記一対のブロックのうちの少なくとも一方の前記ブロックに設けられている、塗工装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の塗工装置を用いて、前記塗液供給口を介して前記液溜り部に供給される前記塗液の量を、前記搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにして、開口部が設けられた前記基材を前記液溜り部に通す、塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗工装置及び塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロールtoロール法によって搬送されるシート状の基材の両面に塗膜を形成するための塗工装置に関して、種々の技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示の塗布装置(塗工装置)では、先ず、連続搬送される長尺のシート状基材を塗液が溜められた浸漬槽に浸けることによって、基材の両面に対して塗液を塗布する。その後、基材を垂直方向に上昇させながら、一対の掻き落としロールによって、基材の両面における余分な塗液を掻き落とす。これにより、基材の両面に、一定の厚みの塗膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64-7965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スリット等の開口部が設けられた基材の両面に塗膜を形成しようとした場合、当該開口部が塗液で塞がること等に起因して、基材の両面に形成される塗膜の厚みが、基材搬送方向において不均一になることがある。
【0006】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送される基材の両面に塗膜を形成する塗工装置において、開口部が設けられた基材の両面に形成される塗膜の厚みを、搬送方向において均一にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る塗工装置は、搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、上記基材の厚み方向に互いに対向する一対のブロックと、上記一対のブロック同士の隙間に上記塗液が溜まるように形成されるとともに、上記基材が通る液溜り部と、を備え、上記液溜り部は、上記基材の搬送方向における上流側に開口し、上記基材が導入される基材導入口と、上記搬送方向における下流側に開口し、上記基材が排出される基材排出口と、上記搬送方向に交差する幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部と、を含み、上記一対のブロック及び上記側面部のうちの少なくともいずれかには、上記液溜り部に臨むとともに上記液溜り部に上記塗液を供給する塗液供給口が設けられており、上記塗液供給口を介して上記液溜り部に供給される上記塗液の量は、上記搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい。
【0008】
本開示に係る塗工方法は、上記塗工装置を用いて、上記塗液供給口を介して上記液溜り部に供給される上記塗液の量を、上記搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにして、開口部が設けられた上記基材を上記液溜り部に通す。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、搬送される基材の両面に塗膜を形成する塗工装置において、開口部が設けられた基材の両面に形成される塗膜の厚みを、搬送方向において均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工装置を含む塗工システムを模式的に示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る塗工装置の基材排出口近傍を拡大して示す拡大正面図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る塗工装置において、基材の両面に形成される塗膜の厚みが搬送方向において均一になるメカニズムを模式的に示す。
図7図7は、第2の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図9図9は、第4の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
図10図10は、第5の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
図11図11は、第6の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図12図12は、第7の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図13図13は、第8の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
図14図14は、第9の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
図15図15は、従来の塗工装置において、基材の両面に形成される塗膜の厚みが搬送方向において不均一になるメカニズムを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
<第1の実施形態>
(装置構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工システム1を模式的に示す。塗工システム1は、基材2の両面に塗膜Fを連続的に形成するためのものである。塗工システム1は、基材供給装置10、塗工装置20及び塗液供給装置40から構成されてなる。
【0013】
基材2は、長尺のシート状に形成されている。基材2としては、例えば、金属箔、樹脂フィルム、織布、不織布、紙等がある。基材2の塗膜Fを含まない厚み寸法t(図5参照)は、例えば1mm以下である。
【0014】
基材供給装置10は、ロールtoロール法によって、基材2を、その長手方向を搬送方向(Xで示す)として連続搬送する。具体的には、基材供給装置10は、基材2を巻出機11で巻き出して巻取機12で巻き取ることによって、基材2を連続搬送する。搬送される基材2は、途中、第1ロール13及び第2ロール14を通る。
【0015】
基材2の搬送方向において、第1ロール13と第2ロール14との間には、塗工装置20が配置されている。塗工装置20は、詳細は後述するが、連続搬送されるシート状の基材2の両面に対して塗液Cを塗布して、基材2の両面に塗膜Fを形成する。塗工装置20によって両面に塗膜Fが形成された基材2は、乾燥炉(図示せず)で乾燥されて塗膜F内に含まれる揮発成分が除去された後、巻取機12に巻き取られる。
【0016】
塗工装置20の構成について、詳細に説明する。図2~5は本実施形態に係る塗工装置20を示し、図2は正面図(II矢視図)、図3は平面図(III矢視図)、図4は側面図(IV矢視図)、図5は後述する基材排出口25近傍の拡大正面図である。
【0017】
なお、本実施形態において、基材2の搬送方向(長手方向)及び幅方向(Yで示す)は、水平方向である。基材2の幅方向は、基材2の搬送方向に交差、具体的には直交している。基材2の厚み方向(Zで示す)は、鉛直方向である。
【0018】
塗工装置20は、図2に示すように、一対のブロック、具体的には第1ブロック21及び第2ブロック22を備える。第1ブロック21と第2ブロック22とは、基材2の厚み方向に互いに所定の間隔を空けて配置されており、基材2の厚み方向に互いに対向している。各ブロック21,22は、略直方体状に形成されており、その長手方向が基材2の搬送方向に沿うように配置されている。
【0019】
図3,4において、L1は、各ブロック21,22の長さ寸法である。L2は、各ブロック21,22の幅寸法である。L3は、各ブロック21,22の厚み寸法である。各ブロック21,22の長さ寸法L1は、基材2の厚み寸法t(図5参照)に対して、十分大きい(例えば100倍以上)ことが好ましい。本実施形態では、図4に示すように、各ブロック21,22の幅寸法L2は、基材2の幅寸法Bよりも小さい。
【0020】
図2に示すように、一対のブロック同士の隙間23、すなわち第1ブロック21と第2ブロック22との隙間23には、塗液Cが溜まるように、液溜り部が形成されている(以下、「液溜り部23」という)。基材2が液溜り部23を通ることによって、基材2の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の両面に塗膜Fが形成される。
【0021】
塗液Cは、ペースト状又はスラリー状であることが好ましい。塗液Cの粘度ηは、1mPa・s以上であることが好ましく、1Pa・s~1000Pa・sであることがより好ましい。塗液Cは、例えば、シリカ、低融点ガラス、アルミナ・酸化チタン等の金属酸化物粒子を含んだ絶縁体材料や、はんだ、銅、銀、金属被覆した粒子等の金属粒子や、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、カーボン等を含んだ導電性材料や、染料、等を用いることができる。
【0022】
Hは、第1ブロック21と第2ブロック22との隙間寸法を示す。隙間寸法Hは、基材2が通過可能なように、基材2の厚み寸法t(例えば0.1mm以下)よりも大きい。隙間寸法Hは、極力小さい方がよく、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0023】
液溜り部23は、基材2の搬送方向における上流側(図2における左側)に開口する基材導入口24と、基材2の搬送方向における下流側(図2における右側)に開口する基材排出口25と、を含む。基材導入口24と基材排出口25とは、搬送方向において、互いに対向している。基材2は、基材導入口24から導入されて、液溜り部23を通って、基材排出口25から排出される。
【0024】
図3,4に示すように、液溜り部23は、基材2の幅方向における両側にそれぞれ位置する側面部26を含む。側面部26とは、液溜り部23の幅方向端部を構成する搬送方向及び厚み方向に延びる面をいう。側面部26は、幅方向一方側(図4における左側)の第1側面部26a及び幅方向他方側(図4における右側)の第2側面部26bから構成されている。第1側面部26aと第2側面部26bとは、幅方向において、互いに対向している。
【0025】
図4に示すように、幅方向における両側の側面部26、すなわち第1側面部26a及び第2側面部26bには、露出口29がそれぞれ設けられている。各露出口29は、第1側面部26a及び第2側面部26b各々において、基材導入口24側(上流側)から基材排出口25側(下流側)に亘って、開口している(図2参照)。すなわち、第1側面部26a及び第2側面部26bは、開放されている。図4に示すように、露出口29からは、基材2の幅方向における一部が、液溜り部23の外部に突出可能である。
【0026】
ここで、図3に示すように、基材2には、開口部3が設けられている。本実施形態では、開口部3は、基材2の幅方向に沿って延びるスリットで構成されている(以下、「スリット3」という場合がある)。スリット3は、基材2の幅方向に長手である。スリット3の長手方向(基材2の幅方向)における幅寸法は、d1である。スリット3の搬送方向における開口幅は、d2である。スリット3は、基材2の幅方向中間部2bに、複数設けられている。複数のスリット3は、搬送方向に並んでいる。
【0027】
なお、開口部3の態様は、スリットに限定されない。開口部3は、例えば、基材2の表面に設けられたスリット、切り欠き、貫通孔、凹部や、基材2の側面に設けられた隙間部(第3の実施形態参照)や、基材2の全体に設けられた網目、多孔質、等を包括した概念である。基材2は、本実施形態のようなフラット状に限定されない。基材2は、例えば、パンチングメタル(第2の実施形態参照)、メッシュ材、多孔質材等で構成されたり、ノコギリ形状(第3の実施形態参照)、櫛歯形状、梯子形状等に形成されたりしてもよい。
【0028】
図2,4に示すように、第1ブロック21における液溜り部23に臨む面には、塗液供給口31が設けられている。同様に、第2ブロック22における液溜り部23に臨む面には、塗液供給口31が設けられている。塗液供給口31は、液溜り部23に臨むとともに、液溜り部23に塗液Cを供給する。
【0029】
図3に示すように、各ブロック21,22において、塗液供給口31は、搬送方向及び幅方向に並んで複数個(具体的には、各ブロック21,22に6個ずつ)配置されている。塗液供給口31は、幅方向に3個並んで配置されている。塗液供給口31は、搬送方向に2個並んで配置されている。
【0030】
図2,4に示すように、第1ブロック21の塗液供給口31と第2ブロック22の塗液供給口31とは、基材2の厚み方向に互いに対向している。図3に示すように、塗液供給口31の断面形状は、例えば円形や楕円形等である。塗液供給口31の直径は、1mm以上であることが好ましい。本実施形態では、各塗液供給口31の断面積は、互いに等しい。なお、塗液供給口31は、1個でもよい。
【0031】
さらに、塗液供給口31は、液溜り部23(各ブロック21,22)における搬送方向(長さ方向)の中央位置Aより上流側にのみ配置されている。換言すると、塗液供給口31の数は、液溜り部23(各ブロック21,22)における搬送方向の下流側よりも上流側の方が、多い。
【0032】
なお、「液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより上流側」とは、「液溜り部23における搬送方向の中央位置A」をも、含み得る。塗液供給口31は、液溜り部23における搬送方向の基材導入口24を起点にした上流側の1/2の部分にのみ配置されることが好ましく、液溜り部23における搬送方向の基材導入口24を起点にした上流側の1/3の部分にのみ配置されることがより好ましい。
【0033】
したがって、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい。
【0034】
図1に示すように、塗液供給装置40は、塗液Cを塗工装置20に供給するための装置であり、塗液供給ポンプ41及び塗液供給管42で構成されている。塗液供給ポンプ41及び塗液供給管42は、第1ブロック21及び第2ブロック22の外部に、設けられている。
【0035】
塗液供給管42は、塗液供給ポンプ41から供給主管42aが出発して、供給主管42aから複数の供給分岐管42bに分岐している。各供給分岐管42bは、各塗液供給口31に対応している。
【0036】
ここで、図1,2,4に示すように、第1ブロック21及び第2ブロック22の内部には、各塗液供給口31に対応するように、塗液供給路33が設けられている。塗液供給路33は、その上流側で塗液供給管42を介して塗液供給ポンプ41に連通しているとともに、その下流側で塗液供給口31に連通している。塗液供給路33は、厚み方向に略真直ぐに延びている。なお、第1ブロック21及び第2ブロック22の内部に、マニホールドがあってもよい。
【0037】
塗液供給ポンプ41は、例えば、スクリューポンプ、ダイアフラムポンプ、シリンジポンプ又はチューブポンプ等の定量供給可能なものを採用することが好ましい。塗液供給ポンプ41の代わりに、塗液供給機構として、供給タンクに圧縮空気を導入して圧力送液してもよい。図示しないが、塗工停止時において液溜り部23の塗液Cを除去するために、塗液排出機構を設けてもよい。
【0038】
塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される塗液C(塗膜F)の量と、塗液排出機構によって液溜り部23から排出される塗液Cの量と、の和に略等しい。より具体的には、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される塗液C(塗膜F)の量よりも多い。そして、液溜り部23における余剰の塗液Cは、塗液排出機構によって液溜り部23から排出される。
【0039】
(塗工態様)
塗液供給ポンプ41を駆動することによって、塗液Cは、塗液供給管42及び塗液供給路33を介して、塗液供給口31から液溜り部23に供給される。液溜り部23に塗液Cが溜められた状態で、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量を、液溜り部23における搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにして、基材2を液溜り部23に通す。これにより、基材2の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の両面に塗膜Fが形成される。
【0040】
塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、塗膜Fとして、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される。塗液Cの残部は、塗液排出機構(図示せず)によって、液溜り部23から排出される。
【0041】
図3,4に示すように、基材2の幅方向中間部2bを、塗液Cを塗布する特定部位Pとする。一方、基材2の幅方向両端部2a各々を、塗液Cを塗布しない非特定部位Qとする。基材2を液溜り部23に通す際、基材2の各非特定部位Q(幅方向両端部2a各々)を、各露出口29から液溜り部23の外部に突出させる。これにより、基材2の特定部位Pの両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の特定部位Pの両面に塗膜Fが形成される。一方、基材2の各非特定部位Qの両面には、塗液Cが塗布されないので、塗膜Fが形成されない。
【0042】
基材2が基材排出口25を介して液溜り部23から排出される際、基材排出口25の近傍において、基材2の両面に塗布された塗液Cに対して、強いせん断力が加わる。このため、図5に示すように、基材2の塗膜Fを含めた厚み寸法Tは、基材排出口25(液溜り部23)の隙間寸法Hに対して、やや小さくなる。
【0043】
図15は、従来の塗工装置20’において、基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みが搬送方向において不均一になるメカニズムを模式的に示す。なお、この塗工装置20’は、本願発明者等が開発したものである。塗工装置20’では、液溜り部23(各ブロック21,22)における搬送方向の中央位置Aより上流側だけでなく下流側にも、塗液供給口31が配置されている。すなわち、塗工装置20’では、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、搬送方向において均一である。その他の構成は、本実施形態に係る塗工装置20と同様である。
【0044】
図15に示すように、塗工装置20’では、基材2のスリット3が液溜り部23を通過すると、基材2のスリット3に塗液Cが充填される(スリット3が塗液Cで塞がれる)。
【0045】
特に基材2の搬送速度が速い場合、基材2が基材排出口25から排出される際に、基材2の両面に塗布された塗液Cに対して、強いせん断力が加わる。これにより、基材2の搬送方向とは反対方向に塗液Cが流れる尾引き現象が、発生する。このため、基材2の搬送速度が速い場合には、スリット3が、塗液Cによって、より一層、塞がれやすくなる。
【0046】
次に、基材2のスリット3が基材排出口25を介して液溜り部23から排出される際、スリット3に充填された塗液Cは、基材排出口25の開口縁部25aに濡れ広がるとともに(液切れするとともに)、基材排出口25の開口縁部25aに付着して滞留する。
【0047】
次に、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cが滞留した状態で、スリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部Kが、基材排出口25を介して液溜り部23から排出される。
【0048】
このとき、基材排出口25の開口縁部25aに滞留する塗液Cは、スリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部Kに、盛り上がる。すなわち、スリット縁部Kの両面に形成される塗膜Fは、厚くなってしまう。
【0049】
これにより、従来の塗工装置20’では、基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みの分布が、搬送方向において不均一になる。詳細には、搬送方向に隣り合う2つのスリット3間の基材部分における前側(下流側)部分(スリット3の直ぐ後側のスリット縁部K)に形成される塗膜Fの厚みが、厚くなる。
【0050】
さらに、従来の塗工装置20’では、基材2のスリット3が塗液Cで塞がれること自体も、通気性の低下等の影響があるので、好ましくない。
【0051】
図6は、本実施形態に係る塗工装置20において、基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みが搬送方向において均一になるメカニズムを模式的に示す。塗工装置20では、塗液供給口31は、液溜り部23(各ブロック21,22)における搬送方向の中央位置Aより上流側にのみ配置されている。すなわち、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい。
【0052】
図6に示すように、塗工装置20では、基材2のスリット3が液溜り部23の上流側部分(塗液供給口31が配置される部分)23aを通過すると、基材2のスリット3に塗液Cが充填される(スリット3が塗液Cで塞がれる)。
【0053】
基材2のスリット3が液溜り部23の下流側部分(塗液供給口31が配置されない部分)23bに至ると、スリット3に充填された塗液Cは、スリット3から基材2の下面側及び上面側に掻き出されるとともに、第1ブロック21及び第2ブロック22によって均される。このとき、スリット3には、空隙Eが形成され始める。
【0054】
基材2のスリット3が基材排出口25を介して液溜り部23から排出される際、スリット3には塗液Cがほとんど残っておらず(スリット3の空隙Eがさらに大きくなっており)、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cがほとんど付着しない。
【0055】
このため、スリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部Kに塗液Cが盛り上がることが、抑制される。すなわち、スリット縁部Kの両面に形成される塗膜Fが厚くなってしまうことが、抑制される。
【0056】
したがって、本実施形態に係る塗工装置20では、基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みの分布が、搬送方向において均一になる。さらに、塗工装置20では、基材2のスリット3が塗液Cで塞がれること自体も、抑制される。
【0057】
(作用効果)
本実施形態によれば、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量を、搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにしている。
【0058】
このため、上述したように、基材2のスリット3が塗液Cで塞がれた状態を、解消することができる。これにより、基材2のスリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部Kに塗液Cが盛り上がることを、抑制することができる。そして、基材2のスリット縁部Kの両面に形成される塗膜Fが厚くなってしまうことを、抑制することができる。
【0059】
したがって、搬送される基材2の両面に塗膜Fを形成する塗工装置20において、スリット3が設けられた基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みを、搬送方向において均一にすることができる。
【0060】
塗液供給口31の数を、液溜り部23における搬送方向の下流側よりも上流側の方が多くなるようにすることによって、簡単に、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量を、搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにすることができる。
【0061】
塗液供給口31を、液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより上流側にのみ配置することによって、簡単に、塗液供給口31の数を、液溜り部23における搬送方向の下流側よりも上流側の方が多くなるようにすることができる。
【0062】
本実施形態では、幅方向における少なくとも片側の側面部26に露出口29が設けられているので、基材2の幅方向における一部を、露出口29から液溜り部23の外部に突出させることができる。これにより、搬送される基材2の幅方向における特定部位Pの両面に選択的に塗膜Fを形成することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る塗工装置20について、図7を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0064】
本実施形態では、基材2は、パンチングメタルで構成されている。基材2には、開口部として、複数のパンチ穴3が空けられている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る塗工装置20について、図8を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0067】
本実施形態では、基材2の幅寸法Bは、各ブロック21,22の幅寸法(液溜り部23の幅寸法)L2よりも小さい。また、基材2の幅方向全体を特定部位Pとし、非特定部位Qを設けない。すなわち、基材2の幅方向全体の両面に塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される(全面塗り)。
【0068】
また、基材2の幅方向両側各々の側面は、ノコギリ形状に形成されており、搬送方向に並ぶ複数の歯4が設けられている。搬送方向に隣り合う歯4同士の隙間部には、開口部3が形成されている(以下、「隙間部3」という場合がある)。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る塗工装置20について、図9を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0071】
本実施形態では、第1ブロック21及び第2ブロック22における液溜り部23に臨む面には、複数の塗液排出口32が設けられている。塗液排出口32は、液溜り部23から塗液Cを排出する。
【0072】
第1ブロック21及び第2ブロック22の外部には、塗液排出装置(塗液吸引装置)50における塗液回収ポンプ(塗液吸引ポンプ)51及び塗液排出管52が、設けられている。塗液排出管52は、塗液回収ポンプ51から排出主管52aが出発して、排出主管52aから複数の排出分岐管52bに分岐している。各排出分岐管52bは、各塗液排出口32に対応している。
【0073】
第1ブロック21及び第2ブロック22の内部には、各塗液排出口32に対応するように、塗液排出路34が設けられている。塗液排出路34は、その下流側で塗液排出管52を介して塗液回収ポンプ51に連通しているとともに、その上流側で塗液排出口32に連通している。塗液排出路34は、厚み方向に略真直ぐに延びている。
【0074】
さらに、塗液排出口32は、液溜り部23(第1ブロック21及び第2ブロック22)における搬送方向の中央位置Aより下流側にのみ、配置されている。なお、「液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより下流側」とは、「液溜り部23における搬送方向の中央位置A」をも、含み得る。
【0075】
塗液回収ポンプ51として、例えば、スクリューポンプ、ダイアフラムポンプ、シリンジポンプ又はチューブポンプ等の定量排出可能なポンプや、レギュレータで適切に圧力管理された真空排気ポンプ等を、採用することが好ましい。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態によれば、液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより下流側において、塗液排出口32を介して液溜り部23から塗液Cが排出される。これにより、液溜り部23における塗液Cの量を、搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにする上で、より有利になる。
【0077】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る塗工装置20について、図10を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0078】
本実施形態では、塗液供給口31は、液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより上流側だけでなく下流側にも、配置されている(具体的には、各ブロック21,22に15個ずつ)。そして、搬送方向に隣り合う塗液供給口31同士の間隔D1~D4は、搬送方向の下流側よりも上流側の方が、小さい。詳細には、図10に示すように、間隔D1~D4は、搬送方向の上流側から順に、D1<D2<D3<D4となっている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0079】
本実施形態によれば、簡単に、塗液供給口31の数を、液溜り部23における搬送方向の下流側よりも上流側の方が多くなるようにすることができる。
【0080】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係る塗工装置20について、図11を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0081】
本実施形態では、第5の実施形態と同様に、塗液供給口31は、液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより上流側だけでなく下流側にも、配置されている(各ブロック21,22の幅方向中央部に5個ずつ)。しかしながら、搬送方向に隣り合う塗液供給口31同士の間隔は、互いに等しい。
【0082】
本実施形態では、塗液供給口31の断面積S1~S5は、搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい。詳細には、図11に示すように、塗液供給口31の断面積S1~S5は、搬送方向の上流側から順に、S1>S2>S3>S4>S5となっている。その他の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0083】
本実施形態によれば、簡単に、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量を、搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにすることができる。
【0084】
<第7の実施形態>
第7の実施形態に係る塗工装置20について、図12を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0085】
本実施形態では、塗液供給口31は、各ブロック21,22に1個ずつ設けられている。そして、塗液供給口31は、搬送方向の上流側に底辺を有し且つ搬送方向の下流側に頂点を有する三角形状に形成されている。すなわち、塗液供給口31の断面積は、搬送方向の下流側よりも上流側の方が、大きい。その他の構成は、第6の実施形態と同様である。
【0086】
本実施形態によれば、第6の実施形態と同様の効果が得られる。また、塗液供給口31の個数を低減することができる。なお、塗液供給口31は、例えば、搬送方向の上流側に長底辺を有し且つ搬送方向の下流側に短底辺を有する台形状等に、形成されてもよい。
【0087】
<第8の実施形態>
第8の実施形態に係る塗工装置20について、図13を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0088】
本実施形態では、塗液供給口31は、液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより上流側だけでなく下流側にも、配置されている(具体的には、搬送方向に5個並んでいる)。塗液供給路33についても同様である。塗液供給管42の供給分岐管42bについても同様である。
【0089】
各供給分岐管42bには、流量調整機構としての流量調整バルブ60が設けられている。各流量調整バルブ60は、各塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの流量V1~V5を、調整する。具体的には、各流量調整バルブ60は、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの流量V1~V5を、搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるように、調整する。詳細には、図13に示すように、流量V1~V5は、搬送方向の上流側から順に、V1>V2>V3>V4>V5となっている。
【0090】
流量調整バルブ60は、例えば、ボールバルブ、ゲートバルブ又はダイヤフラムバルブ等である。流量調整バルブ60は、全閉(流量ゼロ)にしてもよい。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0091】
本実施形態によれば、各流量調整バルブ60の絞り量を変化させることによって、各塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの流量V1~V5を、微調整することができる。
【0092】
<第9の実施形態>
第9の実施形態に係る塗工装置20について、図14を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0093】
本実施形態では、露出口29は、第1側面部26a及び第2側面部26bのいずれにも設けられていない。すなわち、第1側面部26a及び第2側面部26b(幅方向における両側の側面部)は、いずれも閉塞している。第1側面部26a及び第2側面部26bは、液溜り部23の幅方向両側を覆う2つのサイドブロック27における液溜り部23に臨む側面で構成されている。
【0094】
基材2の幅寸法Bは、各ブロック21,22の幅寸法(液溜り部23の幅寸法)L2よりも小さい。また、基材2の幅方向全体を特定部位Pとし、非特定部位Qを設けない。すなわち、基材2の幅方向全体の両面に塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される(全面塗り)。さらに、基材2の幅方向両側の側面2eにも塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0095】
なお、図14に二点鎖線で示すように、塗液供給口31(塗液供給路33)は、第1ブロック21及び第2ブロック22ではなく、第1側面部26a又は第2側面部26b(サイドブロック27)に、設けられてもよい。また、第1ブロック21及び第2ブロック22並びにサイドブロック27は、互いに一体物で形成されてもよい。
【0096】
<その他の実施形態>
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0097】
塗液供給口31は、第1ブロック21及び第2ブロック22のうちの一方にのみ、設けられてもよい。また、塗液供給口31は、第1ブロック21及び第2ブロック22には設けられず、第1側面部26a又は第2側面部26bにのみ設けられてもよい。すなわち、塗液供給口31は、一対のブロック(一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロック)及び側面部のうちの少なくともいずれかに、設けられればよい。
【0098】
塗液供給口31が、液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより上流側及び下流側の両方に配置されるとともに、塗液排出口32が、液溜り部23における搬送方向の中央位置Aより下流側にのみ配置されてもよい。
【0099】
第8の実施形態(図13参照)において、塗液供給管42の各供給分岐管42bに流量調整バルブ60を設けずに、各塗液供給口31を、互いに別々の塗液供給ポンプに連通させてもよい。そして、各塗液供給ポンプを、流量調整機構として用いてもよい。すなわち、各塗液供給口31に対応する各塗液供給ポンプ(流量調整機構)の吐出量を、搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにしてもよい。
【0100】
露出口29は、幅方向における片側の側面部26にのみ設けられてもよい。そして、基材2における幅方向片側部分のみを、特定部位Pとして、液溜り部23に通してもよい。
【0101】
上記実施形態では、基材2の搬送方向は、水平方向であったが、これに限定されない。基材2は、例えば鉛直方向上方から下方へ、また鉛直方向下方から上方へ、さらには斜め方向に搬送されてもよい。
【0102】
上記実施形態では、塗工装置20は、ロールtoロール法によって連続搬送される基材2の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられるが、これに限定されない。塗工装置20は、例えば、ベルトコンベヤによって搬送されるガラス基板の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられてもよい。
【0103】
本開示に係る塗工方法は、塗工装置20を用いて、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量を、液溜り部23における搬送方向の下流側よりも上流側の方が大きくなるようにして、開口部3が設けられた基材2を液溜り部23に通す。
【実施例0104】
<設定条件>
(実施例1)
基材2として、厚み0.1mm、幅20mmのSUS304材を用いた。基材2には、幅寸法d1が10mm、開口幅d2が0.5mmのスリット3(図3参照)を、搬送方向に20mm毎に設けた。
【0105】
塗液Cとして、粘度ηが約100Pa・sの導電性ペーストを用いた。塗液Cの粘度ηは、回転式粘度計(Thermo Scientific Mars40、HAAKE製)を用いて測定した。なお、粘度ηの測定条件は、ステージの直径20mm、測定子の直径20mm、角度1°、測定ギャップ0.05mm、せん断速度1/秒、測定温度25℃とした。
【0106】
第1の実施形態に係る塗工装置20(図1~5参照)を用いた。但し、塗液供給口31を、第1ブロック21及び第2ブロック22各々における幅方向中央部のみに設けた。また、基材2の幅方向全体を特定部位Pとした。具体的には、塗工装置20は、卓上型塗工装置(ミニラボ、康井精機製)を用いた。第1ブロック21及び第2ブロック22は、SUS304材で形成した。各ブロック21,22の長さ寸法L1を40mm、幅寸法L2を50mm、厚み寸法L3を10mmとした。
【0107】
第1ブロック21の幅方向中央部における基材導入口24から下流側に5mmの位置及び10mmの位置に、直径3.0mmの円形の塗液供給口31を、設けた。
【0108】
第1ブロック21と第2ブロック22との隙間寸法Hは、SUS304製のシムを用いて、任意に設定した。塗工速度(搬送速度)は、任意に設定し、基材厚み方向が鉛直方向を向くように水平方向に搬送した。
【0109】
塗液供給ポンプ41として、モーノポンプ(3HMC010F、兵神装備製)を用いた。基材供給装置10の巻出側トルク及び巻取側トルクは、いずれも60N・mとした。
【0110】
塗膜Fの形成後、熱風乾燥炉(DKM-400、ヤマト科学製)を用いて、設定温度200℃、ファン回転数500rpmにて、30分間乾燥し、乾燥膜を得た。
【0111】
<測定条件>
塗膜Fの膜厚を、マイクロメータ(ミツトヨ製)を用いて測定した。膜厚は、塗膜F形成後における基材2の厚み寸法Tから、塗膜F形成前における基材2の厚み寸法tを差し引いた値とした(図5参照)。基材2の搬送方向に隣り合う2つのスリット3の間(20mm)において、搬送方向に5mm毎に、3点測定した。具体的には、3つの測定点は、下流側のスリット3から上流側に5mm離れた点X1、下流側のスリット3から上流側に10mm離れた点X2、下流側のスリット3から上流側に15mm離れた点X3である。
【0112】
<測定結果>
(実施例1)
隙間寸法Hを0.15mm、塗工速度(搬送速度)を毎分0.2mとした。塗膜Fの膜厚は、X1で25μm、X2で20μm、X3で20μmであり、良好な結果が得られた。
【0113】
(実施例2)
隙間寸法Hを0.2mm、塗工速度(搬送速度)を毎分1mとした。その他の構成は、実施例1と同様である。塗膜Fの膜厚は、X1で45μm、X2で40μm、X3で40μmであり、良好な結果が得られた。
【0114】
(比較例1)
ディップコータにて塗膜を形成した。塗工速度(搬送速度)を毎分0.1mとして、鉛直方向に基材2を搬送した。塗膜Fの膜厚は、X1で100μm、X2で150μm、X3で100μmであり、実施例に比較して、搬送方向にばらついた。
【0115】
(比較例2)
比較例1に係るディップコータにて塗膜を形成した後に、ブレードにて余分な塗膜を除去した。塗工速度(搬送速度)を毎分0.1m、ブレード間隔を0.15mmとした。塗膜Fの膜厚は、X1で30μm、X2で25μm、X3で20μmであった。しかしながら、基材2のスリット3が塗液Cで塞がれた。
【0116】
(比較例3)
実施例1に係る塗工装置20に対して、塗液供給口31をさらに追加した。詳細には、第1ブロック21(長さ寸法L1=40mm)の幅方向中央部における基材導入口24から、下流側に5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm及び35mmの位置に、直径3.0mmの円形の塗液供給口31を計7個設けた。隙間寸法Hを0.15mm、塗工速度(搬送速度)を毎分0.2mとした。その他の構成は、実施例1と同様である。なお、比較例3に係る塗工装置は、本願発明者等が開発したものである。
【0117】
塗膜Fの膜厚は、X1で130μm、X2で20μm、X3で20μmであり、実施例に比較して、搬送方向にばらついた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本開示は、塗工装置及び塗工方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0119】
X 搬送方向
Y 幅方向
Z 厚み方向
P 特定部位
Q 非特定部位
A 中央位置
C 塗液
F 塗膜
1 塗工システム
2 基材
3 開口部(スリット、パンチ穴、隙間部)
20 塗工装置
21 第1ブロック(一対のブロック)
22 第2ブロック(一対のブロック)
23 液溜り部(隙間)
24 基材導入口
25 基材排出口
26 側面部
26a 第1側面部
26b 第2側面部
29 露出口
31 塗液供給口
32 塗液排出口
60 流量調整バルブ(流量調整機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15