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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093123
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】塗工装置及び塗工方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 3/132 20060101AFI20230627BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230627BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230627BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20230627BHJP
   B05D 1/34 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B05C3/132
B05C11/10
B05D3/00 C
B05D3/00 B
B05D3/00 D
B05D1/28
B05D1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208558
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 正明
(72)【発明者】
【氏名】畑中 基
(72)【発明者】
【氏名】福田 一人
(72)【発明者】
【氏名】大熊 崇文
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC56
4D075AC62
4D075AC80
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC92
4D075AC93
4D075AC94
4D075AC95
4D075AE24
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB04
4D075EA05
4D075EA14
4F040AA22
4F040AA24
4F040AB00
4F040AC02
4F040BA47
4F040CC02
4F040CC14
4F040CC15
4F040CC19
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA10
4F042BA12
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB10
4F042DB01
4F042DF23
(57)【要約】
【課題】開口部が設けられた基材に形成される塗膜の不良を抑制する。
【解決手段】塗工装置20は、基材2の両面に対して塗液Cを塗布し、基材2の厚み方向に互いに対向する第1及び第2ブロック21,22と、第1及び第2ブロック21,22同士の隙間に塗液Cが溜まるように形成されるとともに、基材2が通る液溜り部23と、を備える。液溜り部23は、基材2の搬送方向における上流側に開口し、基材2が導入される基材導入口24と、搬送方向における下流側に開口し、基材2が排出される基材排出口25と、幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部26と、を含む。基材排出口25の開口縁部25aは、幅方向及び厚み方向に見て、搬送方向に垂直な方向Gに対して傾斜する第1傾斜部R1及び第2傾斜部R2を、含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、
前記基材の厚み方向に互いに対向する一対のブロックと、
前記一対のブロック同士の隙間に前記塗液が溜まるように形成されるとともに、前記基材が通る液溜り部と、を備え、
前記液溜り部は、
前記基材の搬送方向における上流側に開口し、前記基材が導入される基材導入口と、
前記搬送方向における下流側に開口し、前記基材が排出される基材排出口と、
前記搬送方向に交差する幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部と、を含み、
前記基材排出口の開口縁部は、前記幅方向及び前記厚み方向の少なくとも一方に見て、前記搬送方向に垂直な方向に対して傾斜する傾斜部を、含む、塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記開口縁部は、前記幅方向に見て、前記搬送方向に垂直な方向に対して傾斜する前記傾斜部を、含む、塗工装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗工装置において、
前記傾斜部は、前記幅方向に見て、前記搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って、前記厚み方向の前記液溜り部とは反対側に、延びている、塗工装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記開口縁部は、前記厚み方向に見て、前記搬送方向に垂直な方向に対して傾斜する前記傾斜部を、含む、塗工装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記幅方向における少なくとも片側の前記側面部には、前記基材導入口から前記基材排出口に亘って開口する露出口が設けられており、
前記露出口からは、前記基材の前記幅方向における一部が前記液溜り部の外部に突出可能である、塗工装置。
【請求項6】
請求項5に記載の塗工装置において、
前記傾斜部は、前記厚み方向に見て、前記幅方向の前記露出口側に臨むとともに、前記搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って、前記幅方向の前記露出口とは反対側に延びている、塗工装置。
【請求項7】
請求項5に記載の塗工装置において、
前記傾斜部は、前記厚み方向に見て、前記幅方向の前記露出口とは反対側に臨むとともに、前記搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って前記露出口側に延びている、塗工装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記傾斜部は、前記幅方向及び前記厚み方向の少なくとも一方に見て、前記搬送方向の上流側から下流側に至るに従って、前記搬送方向に垂直な方向から前記搬送方向に変化するように、曲線状に形成されている、塗工装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記傾斜部は、前記幅方向及び前記厚み方向の少なくとも一方に見て、前記搬送方向の上流側から下流側に至るに従って、前記搬送方向から前記搬送方向に垂直な方向に変化するように、曲線状に形成されている、塗工装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記傾斜部は、前記搬送方向の上流側に凹む凹部又は前記搬送方向の下流側に突出する凸部を、構成している、塗工装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記液溜り部の断面積は、前記搬送方向における前記基材導入口側から前記基材排出口側に向かうに従って小さくなる、塗工装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記搬送方向において前記傾斜部に重なる位置には、前記液溜り部から前記塗液を排出する塗液排出部が配置されている、塗工装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記一対のブロック及び前記側面部のうちの少なくともいずれかには、前記液溜り部に臨むとともに前記液溜り部に前記塗液を供給する塗液供給口が設けられている、塗工装置。
【請求項14】
請求項13に記載の塗工装置において、
前記塗液供給口を介して前記液溜り部に供給される前記塗液の供給量及び/又は供給圧力を調整する塗液調整機構を備え、
前記塗液調整機構は、前記塗液供給口が前記基材に設けられた開口部に臨むときに、前記塗液供給口が前記開口部に臨まないときに比較して、前記塗液供給口からの前記塗液の前記供給量及び/又は前記供給圧力を小さくする、塗工装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の塗工装置を用いて、開口部が設けられた前記基材を前記液溜り部に通す、塗工方法。
【請求項16】
請求項15に記載の塗工方法において、
請求項13又は14に記載の塗工装置を用いて、
前記塗液供給口が前記開口部に臨むときに、前記塗液供給口が前記開口部に臨まないときに比較して、前記塗液供給口からの前記塗液の供給量及び/又は供給圧力を小さくする、塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗工装置及び塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロールtoロール法によって搬送されるシート状の基材の両面に塗膜を形成するための塗工装置に関して、種々の技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示の塗布装置(塗工装置)では、先ず、連続搬送される長尺のシート状基材を塗液が溜められた浸漬槽に浸けることによって、基材の両面に対して塗液を塗布する。その後、基材を垂直方向に上昇させながら、一対の掻き落としロールによって、基材の両面における余分な塗液を掻き落とす。これにより、基材の両面に、一定の厚みの塗膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64-7965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スリット等の開口部が設けられた基材の両面や側面に塗膜を形成しようとした場合、当該開口部が塗液で塞がったり、基材の側面に塗液が十分に行き渡らなかったり、基材の両面に形成される塗膜の厚みが基材搬送方向において不均一になったりすること等がある。
【0006】
このように、基材に開口部が設けられている場合、ユーザの意図に反して、基材の両面や側面に形成される塗膜に不良が生じることがある。
【0007】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開口部が設けられた基材に形成される塗膜の不良を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る塗工装置は、搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、上記基材の厚み方向に互いに対向する一対のブロックと、上記一対のブロック同士の隙間に上記塗液が溜まるように形成されるとともに、上記基材が通る液溜り部と、を備え、上記液溜り部は、上記基材の搬送方向における上流側に開口し、上記基材が導入される基材導入口と、上記搬送方向における下流側に開口し、上記基材が排出される基材排出口と、上記搬送方向に交差する幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部と、を含み、上記基材排出口の開口縁部は、上記幅方向及び上記厚み方向の少なくとも一方に見て、上記搬送方向に垂直な方向に対して傾斜する傾斜部を、含む。
【0009】
本開示に係る塗工方法は、上記塗工装置を用いて、開口部が設けられた上記基材を上記液溜り部に通す。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、開口部が設けられた基材に形成される塗膜の不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工装置を含む塗工システムを模式的に示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る塗工装置の基材排出口近傍を拡大して示す拡大正面図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図7図7は、第3の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図8図8は、第4の実施形態に係る塗工装置の拡大正面図である。
図9図9は、第5の実施形態に係る塗工装置の拡大正面図である。
図10図10は、第6の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図11図11は、第7の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図12図12は、第8の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図13図13は、第9の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
図14図14は、第10の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
図15図15は、第11の実施形態に係る塗工装置の拡大正面図である。
図16図16は、第12の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
図17図17は、第13の実施形態に係る塗工装置を模式的に示す図である。
図18図18は、従来の塗工装置において、基材に形成される塗膜に不良が生じるメカニズムを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0013】
<第1の実施形態>
(装置構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工システム1を模式的に示す。塗工システム1は、基材2の両面に塗膜Fを連続的に形成するためのものである。塗工システム1は、基材供給装置10、塗工装置20及び塗液供給装置40から構成されてなる。
【0014】
基材2は、長尺のシート状に形成されている。基材2としては、例えば、金属箔、樹脂フィルム、織布、不織布、紙等がある。基材2の塗膜Fを含まない厚み寸法t(図5参照)は、例えば1mm以下である。
【0015】
基材供給装置10は、ロールtoロール法によって、基材2を、その長手方向を搬送方向(Xで示す)として連続搬送する。具体的には、基材供給装置10は、基材2を巻出機11で巻き出して巻取機12で巻き取ることによって、基材2を連続搬送する。搬送される基材2は、途中、第1ロール13及び第2ロール14を通る。
【0016】
基材2の搬送方向において、第1ロール13と第2ロール14との間には、塗工装置20が配置されている。塗工装置20は、詳細は後述するが、連続搬送されるシート状の基材2の両面に対して塗液Cを塗布して、基材2の両面に塗膜Fを形成する。塗工装置20によって両面に塗膜Fが形成された基材2は、乾燥炉(図示せず)で乾燥されて塗膜F内に含まれる揮発成分が除去された後、巻取機12に巻き取られる。
【0017】
塗工装置20の構成について、詳細に説明する。図2~5は本実施形態に係る塗工装置20を示し、図2は正面図(II矢視図)、図3は平面図(III矢視図)、図4は側面図(IV矢視図)、図5は後述する基材排出口25近傍の拡大正面図である。
【0018】
なお、本実施形態において、基材2の搬送方向(長手方向)及び幅方向(Yで示す)は、水平方向である。基材2の幅方向は、基材2の搬送方向に交差、具体的には直交している。基材2の厚み方向(Zで示す)は、鉛直方向である。
【0019】
塗工装置20は、図2に示すように、一対のブロック、具体的には第1ブロック21及び第2ブロック22を備える。第1ブロック21と第2ブロック22とは、基材2の厚み方向に互いに所定の間隔を空けて配置されており、基材2の厚み方向に互いに対向している。各ブロック21,22は、略直方体状に形成されており、その長手方向が基材2の搬送方向に沿うように配置されている。
【0020】
図3,4において、L1は、各ブロック21,22の長さ寸法である。L2は、各ブロック21,22の幅寸法である。L3は、各ブロック21,22の厚み寸法である。各ブロック21,22の長さ寸法L1は、基材2の厚み寸法t(図5参照)に対して、十分大きい(例えば100倍以上)ことが好ましい。Bは、基材2の幅寸法である。
【0021】
図2に示すように、一対のブロック同士の隙間23、すなわち第1ブロック21と第2ブロック22との隙間23には、塗液Cが溜まるように、液溜り部が形成されている(以下、「液溜り部23」という)。基材2が液溜り部23を通ることによって、基材2の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の両面に塗膜Fが形成される。
【0022】
塗液Cは、ペースト状又はスラリー状であることが好ましい。塗液Cの粘度ηは、1mPa・s以上であることが好ましく、1Pa・s~1000Pa・sであることがより好ましい。塗液Cは、例えば、シリカ、低融点ガラス、アルミナ・酸化チタン等の金属酸化物粒子を含んだ絶縁体材料や、はんだ、銅、銀、金属被覆した粒子等の金属粒子や、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、カーボン等を含んだ導電性材料や、染料、等を用いることができる。
【0023】
Hは、第1ブロック21と第2ブロック22との隙間寸法を示す。隙間寸法Hは、基材2が通過可能なように、基材2の厚み寸法t(例えば0.1mm以下)よりも大きい。隙間寸法Hは、極力小さい方がよく、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0024】
液溜り部23は、基材2の搬送方向における上流側(図2における左側)に開口する基材導入口24と、基材2の搬送方向における下流側(図2における右側)に開口する基材排出口25と、を含む。基材導入口24と基材排出口25とは、搬送方向において、互いに対向している。基材2は、基材導入口24から導入されて、液溜り部23を通って、基材排出口25から排出される。なお、基材排出口25の詳細については、後述する。
【0025】
図3,4に示すように、液溜り部23は、基材2の幅方向における両側にそれぞれ位置する側面部26を含む。側面部26とは、液溜り部23の幅方向端部を構成する搬送方向及び厚み方向に延びる面をいう。側面部26は、幅方向一方側(図4における右側)の第1側面部26a及び幅方向他方側(図4における左側)の第2側面部26bから構成されている。第1側面部26aと第2側面部26bとは、幅方向において、互いに対向している。
【0026】
図4に示すように、幅方向における片側の側面部26、詳細には幅方向他方側の第2側面部26bには、露出口29が設けられている。露出口29は、第2側面部26bにおいて、基材導入口24側(上流側)から基材排出口25側(下流側)に亘って、開口している(図2参照)。すなわち、第2側面部26bは、開放されている。図4に示すように、露出口29からは、基材2の幅方向における一部が、液溜り部23の外部に突出可能である。
【0027】
図4に示すように、幅方向における片側の側面部26、詳細には幅方向一方側の第1側面部26aには、露出口29が設けられていない。すなわち、第1側面部26aは、閉塞している。第1側面部26aは、液溜り部23の幅方向一方側を覆うサイドブロック27における液溜り部23に臨む側面で構成されている。サイドブロック27は、略直方体状に形成されている。第1ブロック21及び第2ブロック22並びにサイドブロック27は、互いに一体物で形成されてもよい。
【0028】
図2,4に示すように、第1ブロック21における液溜り部23に臨む面には、塗液供給口31が設けられている。同様に、第2ブロック22における液溜り部23に臨む面には、塗液供給口31が設けられている。塗液供給口31は、液溜り部23に臨むとともに、液溜り部23に塗液Cを供給する。
【0029】
図3に示すように、塗液供給口31は、液溜り部23(第1ブロック21及び第2ブロック22)における幅方向他端部(露出口29近傍)に、配置されている。塗液供給口31は、搬送方向に並んで複数個(具体的には、各ブロック21,22に3個ずつ)配置されている。
【0030】
図2,4に示すように、第1ブロック21の塗液供給口31と第2ブロック22の塗液供給口31とは、基材2の厚み方向に互いに対向している。図3に示すように、塗液供給口31の断面形状は、例えば円形や楕円形等である。塗液供給口31の直径は、1mm以上であることが好ましい。各塗液供給口31の断面積は、互いに等しい。なお、塗液供給口31は、1個でもよい。
【0031】
図1に示すように、塗液供給装置40は、塗液Cを塗工装置20に供給するための装置であり、塗液供給ポンプ41及び塗液供給管42で構成されている。塗液供給ポンプ41及び塗液供給管42は、第1ブロック21及び第2ブロック22の外部に、設けられている。
【0032】
図2に示すように、塗液供給管42は、塗液供給ポンプ41から供給主管42aが出発して、供給主管42aから複数の供給分岐管42bに分岐している。各供給分岐管42bは、各塗液供給口31に対応している。
【0033】
ここで、図1,2,4に示すように、第1ブロック21及び第2ブロック22の内部には、各塗液供給口31に対応するように、塗液供給路33が設けられている。塗液供給路33は、その上流側で塗液供給管42を介して塗液供給ポンプ41に連通しているとともに、その下流側で塗液供給口31に連通している。塗液供給路33は、厚み方向に略真直ぐに延びている。なお、第1ブロック21及び第2ブロック22の内部に、マニホールドがあってもよい。
【0034】
塗液供給ポンプ41は、例えば、スクリューポンプ、ダイアフラムポンプ、シリンジポンプ又はチューブポンプ等の定量供給可能なものを採用することが好ましい。塗液供給ポンプ41の代わりに、塗液供給機構として、供給タンクに圧縮空気を導入して圧力送液してもよい。図示しないが、塗工停止時において液溜り部23の塗液Cを除去するために、塗液排出機構を設けてもよい。
【0035】
塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される塗液C(塗膜F)の量と、塗液排出機構によって液溜り部23から排出される塗液Cの量と、の和に略等しい。より具体的には、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される塗液C(塗膜F)の量よりも多い。そして、液溜り部23における余剰の塗液Cは、塗液排出機構によって液溜り部23から排出される。
【0036】
ここで、図3に示すように、基材2には、開口部3が設けられている。本実施形態では、開口部3は、基材2の幅方向に沿って延びるスリットで構成されている(以下、「スリット3」という場合がある)。スリット3は、基材2の幅方向に長手である。スリット3の長手方向(基材2の幅方向)における幅寸法は、d1である。スリット3の搬送方向における開口幅は、d2である。
【0037】
スリット3は、基材2の幅方向一方側2a(詳細には、幅方向一端部)に、複数設けられている。スリット3は、基材2の幅方向他方側2bには設けられていない。スリット3は、幅方向中央側(幅方向他方側)の基端部(根元部分)3aと、幅方向一方側の先端部3bと、を含む。スリット3の幅方向一方側の先端部3bは、開放されている。複数のスリット3は、搬送方向に並んでいる。基材2は、いわゆる櫛歯状に形成されている。
【0038】
なお、開口部3の態様は、スリットに限定されない。開口部3は、例えば、基材2の表面に設けられたスリット、切り欠き、貫通孔、凹部や、基材2の側面に設けられた隙間部(例えば、搬送方向に隣り合うノコギリ歯同士の隙間)や、基材2の全体に設けられた網目、多孔質、等を包括した概念である。基材2は、本実施形態のようなフラット状に限定されない。基材2は、例えば、パンチングメタル、メッシュ材、多孔質材等で構成されたり、ノコギリ形状、梯子形状等に形成されたりしてもよい。
【0039】
基材排出口25について、詳細に説明する。図4に示すように、搬送方向に見て基材排出口25(液溜り部23)の周囲(周縁部)には、基材排出口25の開口縁部25aがある。基材排出口25の開口縁部25aは、第1ブロック21の搬送方向下流側の面、第2ブロック22の搬送方向下流側の面及びサイドブロック27の搬送方向下流側の面で、構成されている。基材排出口25の開口縁部25aは、搬送方向に見て、幅方向他方側(露出口29側)が開口する略コ字状に、形成されている。基材排出口25の開口縁部25aは、搬送方向下流側に臨んでいる。
【0040】
図2に示すように、基材排出口25の開口縁部25aは、幅方向に見て、搬送方向に垂直な方向(面)Gに対して傾斜する第1傾斜部R1を、含む。第1傾斜部R1は、第1ブロック21の搬送方向下流側の面及び第2ブロック22の搬送方向下流側の面で、構成されている。
【0041】
図2に示すように、第1傾斜部R1は、幅方向に見て、第1ブロック21及び第2ブロック22(一対のブロック)における厚み方向内側、すなわち厚み方向の液溜り部23側に、設けられている。詳細には、第1傾斜部R1は、第1ブロック21及び第2ブロック22における厚み方向内側(液溜り部23側)且つ搬送方向下流側の角部を、面取りすることで得られる。
【0042】
そして、第1傾斜部R1は、幅方向に見て、厚み方向内側、すなわち厚み方向の液溜り部23側に、臨んでいる。さらに、第1傾斜部R1は、幅方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って、厚み方向外側、すなわち厚み方向の液溜り部23とは反対側に、延びている。
【0043】
第1傾斜部R1は、幅方向に見て、搬送方向に垂直な方向Gに対して、搬送方向下流側に第1傾斜角度θ1で傾斜している。第1傾斜角度θ1は、例えば、15°以上75°以下であることが好ましく、30°以上60°以下であることがより好ましい。
【0044】
図3に示すように、基材排出口25の開口縁部25aは、厚み方向に見て、搬送方向に垂直な方向(面)Gに対して傾斜する第2傾斜部R2を、含む。第2傾斜部R2は、第1ブロック21の搬送方向下流側の面及び第2ブロック22の搬送方向下流側の面で、構成されている。
【0045】
図3に示すように、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、第1ブロック21及び第2ブロック22(一対のブロック)における幅方向他方側、すなわち幅方向の露出口29側に、設けられている。詳細には、第2傾斜部R2は、第1ブロック21及び第2ブロック22の幅方向他方側(露出口29側)且つ搬送方向下流側の角部を、面取りすることで得られる。
【0046】
そして、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、幅方向他方側、すなわち幅方向の露出口29側に、臨んでいる。さらに、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って、幅方向一方側、すなわち幅方向の露出口29とは反対側に延びている。
【0047】
第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向に垂直な方向Gに対して、搬送方向下流側に第2傾斜角度θ2で傾斜している。第2傾斜角度θ2は、例えば、15°以上75°以下であることが好ましく、30°以上60°以下であることがより好ましい。
【0048】
(塗工態様)
塗液供給ポンプ41を駆動することによって、塗液Cは、塗液供給管42及び塗液供給路33を介して、塗液供給口31から液溜り部23に供給される。液溜り部23に塗液Cが溜められた状態で、塗液供給口31を介して液溜り部23に塗液Cを供給しながら、基材2を液溜り部23に通す。これにより、基材2の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の両面に塗膜Fが形成される。
【0049】
塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、塗膜Fとして、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される。塗液Cの残部は、塗液排出機構(図示せず)によって、液溜り部23から排出される。
【0050】
図3,4に示すように、基材2の幅方向一方側2aを、塗液Cを塗布する特定部位Pとする。一方、基材2の幅方向他方側2bを、塗液Cを塗布しない非特定部位Qとする。基材2を液溜り部23に通す際、基材2の非特定部位Q(幅方向他方側2b)を、露出口29から液溜り部23の外部に突出させる。これにより、基材2の特定部位P(幅方向一方側2a)の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の特定部位Pの両面に塗膜Fが形成される。一方、基材2の非特定部位Q(幅方向他方側2b)の両面には、塗液Cが塗布されないので、塗膜Fが形成されない。
【0051】
ここで、図3に示すように、スリット3は、基材2の幅方向一方側2aに設けられているので、特定部位Pに含まれる。したがって、スリット3の内面にも、塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される。さらに、基材2の幅方向一方側の側面2cも、特定部位Pに含まれる。したがって、基材2の幅方向一方側の側面2cにも、塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される。
【0052】
基材2が基材排出口25を介して液溜り部23から排出される際、基材排出口25の近傍において、基材2の両面に塗布された塗液Cに対して、強いせん断力が加わる。このため、図5に示すように、基材2の塗膜Fを含めた厚み寸法Tは、基材排出口25(液溜り部23)の隙間寸法Hに対して、やや小さくなる。
【0053】
図18は、従来の塗工装置20’において、基材2に形成される塗膜Fに不良が生じるメカニズムを模式的に示す。なお、この塗工装置20’は、本願発明者等が開発したものである。
【0054】
塗工装置20’では、基材排出口25の開口縁部25aは、幅方向及び厚み方向のいずれに見ても、搬送方向に対して垂直に延びている。すなわち、基材排出口25の開口縁部25aは、第1傾斜部R1及び第2傾斜部R2のいずれをも含まない。なお、図18では、簡単のため、基材排出口25の開口縁部25aを幅方向に見た場合のみを、図示する。その他の構成は、本実施形態に係る塗工装置20と同様である。
【0055】
図18に示すように、塗工装置20’では、基材2のスリット3が液溜り部23を通過すると、基材2のスリット3に塗液Cが充填されて、スリット3が塗液Cで塞がれる(ブリッジ現象)。
【0056】
特に基材2の搬送速度が速い場合、基材2が基材排出口25から排出される際に、基材2の両面に塗布された塗液Cに対して、強いせん断力が加わる。これにより、基材2の搬送方向とは反対方向に塗液Cが流れる尾引き現象が、発生する。このため、基材2の搬送速度が速い場合には、スリット3が、塗液Cによって、より一層、塞がれやすくなる。
【0057】
次に、基材2のスリット3が基材排出口25を介して液溜り部23から排出される際、スリット3に充填された塗液Cは、基材排出口25の開口縁部25aに濡れ広がるとともに(液切れするとともに)、基材排出口25の開口縁部25aに付着して滞留する。
【0058】
次に、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cが滞留した状態で、スリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部Kが、基材排出口25を介して液溜り部23から排出される。
【0059】
このとき、基材排出口25の開口縁部25aに滞留する塗液Cは、スリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部Kに、盛り上がる。すなわち、スリット縁部Kの両面に形成される塗膜Fは、厚くなってしまう。
【0060】
これにより、従来の塗工装置20’では、基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みの分布が、搬送方向において不均一になる(塗膜Fに不良が生じる)。詳細には、搬送方向に隣り合う2つのスリット3間の基材部分における前側(下流側)部分(スリット3の直ぐ後側のスリット縁部K)に形成される塗膜Fの厚みが、厚くなる。
【0061】
さらに、従来の塗工装置20’では、基材2のスリット3が塗液Cで塞がれること自体も、通気性の低下等の影響があるので、好ましくない。
【0062】
そこで、本実施形態に係る塗工装置20では、基材2に形成される塗膜Fに不良が生じないようにするために、基材排出口25の開口縁部25aに、搬送方向に垂直な方向Gに対して傾斜する第1傾斜部R1及び第2傾斜部R2を、設けた。
【0063】
具体的には、図3に示すように、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って、幅方向一方側、すなわち幅方向の露出口29とは反対側に延びている。
【0064】
このため、図3に示すように、液溜り部23を通過する基材2のスリット3は、幅方向一方側(露出口29とは反対側)の先端部3b側よりも、幅方向他方側(露出口29側)の基端部3a側の方が先に、基材排出口25から排出される。
【0065】
そして、スリット3に充填された塗液Cは、第2傾斜部R2に沿って(流れ方向Jに)、基端部3a側(幅方向他方側)から先端部3b側(幅方向一方側)へ移動することによって、液切れする。これにより、スリット3が塗液Cで塞がれた状態(ブリッジ現象)が、解消される。
【0066】
さらに、スリット3に充填された塗液Cが、第2傾斜部R2によって、基材2における幅方向一方側の側面2cにも、十分に行き渡るようになる。このため、基材2の側面2cにも塗液Cが十分に塗布されて、基材2の側面2cへの塗布抜けが抑制される。
【0067】
第2傾斜角度θ2を変化させると、第2傾斜部R2に沿って流れる塗液Cの移動速度(液切れ速度)が、変化する。第2傾斜角度θ2が小さいと、塗液Cの液切れ速度が速くなる。一方、第2傾斜角度θ2が大きいと、塗液Cの液切れ速度が遅くなる。
【0068】
一方、図2,5に示すように、第1傾斜部R1は、幅方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って、厚み方向外側、すなわち厚み方向の液溜り部23とは反対側に、延びている。
【0069】
このため、基材2のスリット3が基材排出口25を介して液溜り部23から排出される際、第1傾斜部R1が壁の役割を果たすため、仮にスリット3が塗液Cで塞がれていたとしても、スリット3に充填された塗液Cは、基材排出口25の開口縁部25aに濡れ広がりにくくなる(液切れしにくくなる)。このため、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cが付着しにくくなる。また、塗液Cと第1傾斜部R1との間に発生する摩擦力も、開口縁部25aへの塗液Cの付着を抑制するのに、寄与し得る。
【0070】
したがって、スリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部K(図18参照)に塗液Cが盛り上がることで、スリット縁部Kの両面に形成される塗膜Fが厚くなってしまうことが、抑制される。そして、基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みの分布が搬送方向において不均一になることが、抑制される。
【0071】
(作用効果)
以上、本実施形態によれば、図3に示すように、スリット3に充填された塗液Cが、第2傾斜部R2に沿って(流れ方向Jに)、基端部3a側(幅方向他方側)から先端部3b側(幅方向一方側)へ液切れするので、スリット3が塗液Cで塞がれた状態を、解消することができる。
【0072】
さらに、スリット3に充填された塗液Cが、第2傾斜部R2によって、基材2における幅方向一方側の側面2cにも十分に行き渡るようになるので、基材2の側面2cへの塗布抜けを、抑制することができる。
【0073】
また、図2,5に示すように、第1傾斜部R1が壁の役割を果たすため、仮にスリット3が塗液Cで塞がれていたとしても、スリット3に充填された塗液Cが、基材排出口25の開口縁部25aに付着しにくくなる。これにより、スリット3の直ぐ後側(直ぐ上流側)のスリット縁部K(図18参照)に塗液Cが盛り上がることが抑制されるので、基材2の両面に形成される塗膜Fの厚みの分布を、搬送方向において均一にすることができる。
【0074】
本実施形態に係る塗工装置20は、基材2が櫛歯形状の場合に、特に有効である。
【0075】
また、本実施形態では、幅方向における少なくとも片側の側面部26に露出口29が設けられているので、基材2の幅方向における一部を、露出口29から液溜り部23の外部に突出させることができる。これにより、搬送される基材2の幅方向における特定部位Pの両面に選択的に塗膜Fを形成することができる。
【0076】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る塗工装置20について、図6を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0077】
本実施形態では、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に至るに従って、搬送方向に垂直な方向Gから搬送方向Xに変化するように、曲線状に形成されている。第2傾斜部R2は、幅方向一方側且つ搬送方向上流側に凸である。
【0078】
第2傾斜角度θ2は、曲線状の第2傾斜部R2の接線と、搬送方向に垂直な方向Gとの、なす角度である。第2傾斜角度θ2は、搬送方向に従って、変化する。第2傾斜角度θ2は、搬送方向上流側(基端部3a側)では略ゼロである一方、搬送方向下流側(先端部3b側)では、略90°である。すなわち、第2傾斜部R2は、搬送方向上流側(基端部3a側)では、搬送方向に略垂直(≒G)である一方、搬送方向下流側(先端部3b側)では、略搬送方向(≒X)である。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0079】
本実施形態によれば、スリット3の基端部3a側では、塗液Cの液切れ速度が速くなる一方、スリット3の先端部3b側では、塗液Cの液切れ速度が遅くなる。このため、スリット3の基端部3a側では塗液Cが残りにくく、スリット3の先端部3b側では塗液Cが残りやすい。
【0080】
したがって、スリット3の基端部3a側の塗膜Fよりも、スリット3の先端部3b側の塗膜Fを厚くしたい場合に、有効である。また、第2傾斜部R2の曲率半径を変化させると、塗液Cの液切れ速度が変化する。さらに、第2傾斜部R2が曲線状なので、塗液Cの液切れがスムースになる。
【0081】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る塗工装置20について、図7を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0082】
本実施形態では、第2の実施形態とは反対に、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に至るに従って、搬送方向Xから搬送方向に垂直な方向Gに変化するように、曲線状に形成されている。第2傾斜部R2は、幅方向他方側且つ搬送方向下流側に凸である。
【0083】
第2傾斜角度θ2は、搬送方向上流側(基端部3a側)では略90°である一方、搬送方向下流側(先端部3b側)では略ゼロである。すなわち、第2傾斜部R2は、搬送方向上流側(基端部3a側)では、略搬送方向(≒X)である一方、搬送方向下流側(先端部3b側)では、搬送方向に略垂直(≒G)である。その他の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0084】
本実施形態によれば、スリット3の基端部3a側では、塗液Cの液切れ速度が遅くなる一方、スリット3の先端部3b側では、塗液Cの液切れ速度が速くなる。このため、スリット3の基端部3a側では塗液Cが残りやすく、スリット3の先端部3b側では塗液Cが残りにくい。
【0085】
したがって、スリット3の先端部3b側の塗膜Fよりも、スリット3の基端部3a側の塗膜Fを厚くしたい場合に、有効である。
【0086】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る塗工装置20について、図8を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0087】
本実施形態では、第1傾斜部R1は、幅方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に至るに従って、搬送方向に垂直な方向Gから搬送方向Xに変化するように、曲線状に形成されている。第1傾斜部R1は、厚み方向外側且つ搬送方向上流側に凸である。
【0088】
第1傾斜角度θ1は、曲線状の第1傾斜部R1の接線と、搬送方向に垂直な方向Gとの、なす角度である。第1傾斜角度θ1は、搬送方向に従って、変化する。第1傾斜角度θ1は、搬送方向上流側では略ゼロである一方、搬送方向下流側では略90°である。すなわち、第1傾斜部R1は、搬送方向上流側では搬送方向に略垂直(≒G)である一方、搬送方向下流側では、略搬送方向(≒X)である。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0089】
本実施形態によれば、第1傾斜部R1の搬送方向上流側において、基材排出口25の開口縁部25aと液溜り部23との隙間が、大きくなっている。このため、基材排出口25の開口縁部25aに、塗液Cを敢えて液切れさせたい場合等に、有効である。
【0090】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る塗工装置20について、図9を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0091】
本実施形態では、第4の実施形態とは反対に、第1傾斜部R1は、幅方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に至るに従って、搬送方向Xから搬送方向に垂直な方向Gに変化するように、曲線状に形成されている。第1傾斜部R1は、厚み方向内側且つ搬送方向下流側に凸である。
【0092】
第1傾斜角度θ1は、搬送方向上流側では略90°である一方、搬送方向下流側では略ゼロである。すなわち、第1傾斜部R1は、搬送方向上流側では略搬送方向(≒X)である一方、搬送方向下流側では搬送方向に略垂直(≒G)である。その他の構成は、第4の実施形態と同様である。
【0093】
本実施形態によれば、第1傾斜部R1の搬送方向上流側において、基材排出口25の開口縁部25aと液溜り部23との隙間が、狭くなっている。このため、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cが付着することを抑制する上で、より有利になる。
【0094】
また、塗液Cと第1傾斜部R1との間に発生する摩擦力が大きくなるので、基材排出口25からの塗液Cの漏出が抑制されて、基材2の両面への塗液Cの被覆性を向上させることができる。
【0095】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係る塗工装置20について、図10を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0096】
本実施形態では、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向上流側に凹む凹部N1を、構成している。凹部N1は、厚み方向に見て、搬送方向上流側に頂点N1aを有する略三角形状である。詳細には、2つの第2傾斜部R2が、凹部N1の頂点N1aを起点に、幅方向両外側且つ搬送方向下流側に延びている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0097】
本実施形態によれば、スリット3に充填された塗液Cは、基端部3a側(幅方向他方側)及び先端部3b側(幅方向一方側)の両方から、2つの第2傾斜部R2に沿って(流れ方向Jに)、凹部N1の頂点N1aへ流れ込む。このため、塗液Cは、凹部N1の頂点N1aに集中するようになる。
【0098】
したがって、基材2における凹部N1の頂点N1aを通過する部分に、積極的に塗液Cを塗布することができる。例えば、基材2における塗膜Fが薄くなりやすい箇所(反り部等)に対して、積極的に塗液Cを塗布することが、考えられる。
【0099】
また、図10に二点鎖線で示すように、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向の下流側に突出する凸部N2を、構成してもよい。凸部N2は、厚み方向に見て、搬送方向下流側に頂点N2aを有する略三角形状である。詳細には、2つの第2傾斜部R2が、凸部N2の頂点N2aを起点に、幅方向両外側且つ搬送方向上流側に延びている。
【0100】
これによれば、スリット3に充填された塗液Cは、凸部N2の頂点N2aから基端部3a側(幅方向他方側)及び先端部3b側(幅方向一方側)へ、2つの第2傾斜部R2に沿って(流れ方向Jに)、凸部N2における幅方向両側部分N2bへ流れ込む。このため、塗液Cは、凸部N2の幅方向両側部分N2bに集中するようになる。
【0101】
したがって、凹部N1の頂点N1aの場合と同様に、基材2における凸部N2の幅方向両側部分N2bを通過する部分に、積極的に塗液Cを塗布することができる。
【0102】
なお、凹部N1及び凸部N2は、例えば、台形状や半円状等に形成されてもよい。また、複数の凹部N1及び複数の凸部N2を、幅方向に交互に並べてもよい。
【0103】
<第7の実施形態>
第7の実施形態に係る塗工装置20について、図11を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0104】
本実施形態では、第1の実施形態とは反対に、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、幅方向一方側、すなわち幅方向の露出口29とは反対側に、臨んでいる。さらに、第2傾斜部R2は、厚み方向に見て、搬送方向の上流側から下流側に延びるに従って、幅方向他方側、すなわち露出口29側に延びている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0105】
本実施形態によれば、液溜り部23を通過する基材2のスリット3は、幅方向他方側(露出口29側)の基端部3a側よりも、幅方向一方側(露出口29とは反対側)の先端部3b側の方が先に、基材排出口25から排出される。
【0106】
そして、スリット3に充填された塗液Cは、第2傾斜部R2に沿って(流れ方向Jに)、先端部3b側(幅方向一方側)から基端部3a側(幅方向他方側)へ移動することによって、液切れする。
【0107】
スリット3の先端部3b側よりも基端部3a側の方へ、積極的に塗液Cを塗布したい場合に、有効である。
【0108】
<第8の実施形態>
第8の実施形態に係る塗工装置20について、図12を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0109】
本実施形態では、液溜り部23(各ブロック21,22)の幅寸法L2は、搬送方向における基材導入口24側(上流側)から基材排出口25側(下流側)に向かうに従って、狭くなる。すなわち、液溜り部23の断面積は、搬送方向における基材導入口24側から基材排出口25側に向かうに従って、小さくなる。基材排出口25の断面積(幅寸法L2)は、基材導入口24の断面積(幅寸法L2)よりも、小さい。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0110】
本実施形態によれば、基材排出口25における塗液Cの圧力損失は、基材導入口24における塗液Cの圧力損失よりも、大きい。このため、液溜り部23における塗液Cは、基材排出口25から外部に漏出しにくくなる。これにより、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cが付着することを、抑制することができる。
【0111】
<第9の実施形態>
第9の実施形態に係る塗工装置20について、図13を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0112】
本実施形態では、液溜り部23の隙間寸法(第1ブロック21と第2ブロック22との隙間寸法)Hは、搬送方向における基材導入口24側(上流側)から基材排出口25側(下流側)に向かうに従って、狭くなる。すなわち、液溜り部23の断面積は、搬送方向における基材導入口24側から基材排出口25側に向かうに従って、小さくなる。その他の構成は、第8の実施形態と同様である。
【0113】
本実施形態によれば、第8の実施形態と同様の効果が得られる。
【0114】
<第10の実施形態>
第10の実施形態に係る塗工装置20について、図14を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0115】
本実施形態では、幅方向一方側のサイドブロック27における液溜り部23に臨む面には、塗液排出部としての塗液排出口32が、設けられている。塗液排出口32は、液溜り部23から塗液Cを排出する。
【0116】
第1ブロック21及び第2ブロック22並びにサイドブロック27の外部には、塗液排出装置(塗液吸引装置)50における塗液回収ポンプ(塗液吸引ポンプ)51及び塗液排出管52が、設けられている。
【0117】
塗液回収ポンプ51として、例えば、スクリューポンプ、ダイアフラムポンプ、シリンジポンプ又はチューブポンプ等の定量排出可能なポンプや、レギュレータで適切に圧力管理された真空排気ポンプ等を、採用することが好ましい。
【0118】
サイドブロック27の内部には、塗液排出口32に対応するように、塗液排出路34が設けられている。塗液排出路34は、その下流側で塗液排出管52を介して塗液回収ポンプ51に連通しているとともに、その上流側で塗液排出口32に連通している。塗液排出路34は、幅方向に略真直ぐに延びている。
【0119】
塗液排出口32は、搬送方向において、第2傾斜部R2に重なる位置に、配置されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0120】
本実施形態によれば、スリット3における基端部3a側(幅方向他方側)から先端部3b側(幅方向一方側)へ液切れした塗液Cは、塗液排出口32を介して、液溜り部23の外部に排出される。これにより、液切れした塗液Cが基材2の一部に付着することに起因して、基材2に形成される塗膜Fに不均一が生じることを、抑制することができる。
【0121】
なお、図14に二点鎖線で示すように、塗液排出部として、塗液回収ポンプ51に接続された塗液排出管52の開口部52aを、搬送方向において第2傾斜部R2に重なる位置に、配置してもよい。
【0122】
<第11の実施形態>
第11の実施形態に係る塗工装置20について、図15を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0123】
本実施形態では、第1ブロック21及び第2ブロック22における液溜り部23に臨む面には、塗液排出部としての塗液排出口32が、設けられている。塗液排出口32は、液溜り部23から塗液Cを排出する。
【0124】
第1ブロック21及び第2ブロック22の内部には、塗液排出口32に対応するように、塗液排出路34が設けられている。塗液排出路34は、その下流側で塗液排出管52を介して塗液回収ポンプ51に連通しているとともに、その上流側で塗液排出口32に連通している。塗液排出路34は、厚み方向に略真直ぐに延びている。
【0125】
塗液排出口32は、搬送方向において、第1傾斜部R1に重なる位置に、配置されている。その他の構成は、第10の実施形態と同様である。
【0126】
本実施形態によれば、基材排出口25近傍における余剰の塗液Cは、塗液排出口32を介して、液溜り部23から排出される。これにより、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cが付着することを、抑制することができる。
【0127】
<第12の実施形態>
第12の実施形態に係る塗工装置20について、図16を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0128】
本実施形態では、露出口29は、第1側面部26a及び第2側面部26bのいずれにも設けられていない。すなわち、第1側面部26a及び第2側面部26b(幅方向における両側の側面部)は、いずれも閉塞している。第1側面部26a及び第2側面部26bは、液溜り部23の幅方向両側を覆う2つのサイドブロック27における液溜り部23に臨む側面で構成されている。
【0129】
基材2の幅寸法Bは、各ブロック21,22の幅寸法(液溜り部23の幅寸法)L2よりも小さい。また、基材2の幅方向全体を特定部位Pとし、非特定部位Qを設けない。すなわち、基材2の幅方向全体の両面に塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される(全面塗り)。さらに、基材2の幅方向両側の側面2cにも塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される。
【0130】
第1傾斜部R1は、第1ブロック21及び第2ブロック22における厚み方向内側(液溜り部23側)且つ搬送方向下流側に、設けられている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0131】
本実施形態によれば、第1側面部26a及び第2側面部26bが、いずれも閉塞した場合であっても、基材排出口25の開口縁部25aに塗液Cが付着することを、抑制することができる。
【0132】
なお、図16に二点鎖線で示すように、塗液供給口31(塗液供給路33)は、第1ブロック21及び第2ブロック22ではなく、第1側面部26a又は第2側面部26b(サイドブロック27)に、設けられてもよい。
【0133】
<第13の実施形態>
第13の実施形態に係る塗工装置20について、図17を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0134】
本実施形態では、塗液供給ポンプ41と塗液供給口31との間には、流量調整バルブ60が設けられている。詳細には、流量調整バルブ60は、塗液供給管42に設けられている。
【0135】
また、塗液供給ポンプ41及び流量調整バルブ60各々は、塗液調整機構としての制御部70に、接続されている。制御部70は、例えば、マイクロコンピュータ及びプログラムで、構成されている。
【0136】
制御部70は、塗液供給ポンプ41による塗液Cの供給圧力、すなわち塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの供給圧力を、調整(制御)する。また、制御部70は、流量調整バルブ60の絞り量を調整することによって、塗液供給管42を流れる塗液Cの流量、すなわち塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの供給量を、調整(制御)する。
【0137】
制御部70は、塗液供給ポンプ41による塗液Cの供給圧力を調整することによって、塗液供給口31が基材2に設けられたスリット3に臨むとき(第2モードM2)に、塗液供給口31がスリット3に臨まないとき、具体的には塗液供給口31が基材本体部Uに臨むとき(第1モードM1)に比較して、塗液供給口31からの塗液Cの供給圧力を小さくする。例えば、塗液供給口31がスリット3に臨むときに、塗液供給口31からの塗液Cの供給圧力を、ゼロにする。
【0138】
同様に、制御部70は、流量調整バルブ60の絞り量を調整することによって、塗液供給口31が基材2に設けられたスリット3に臨むとき(第2モードM2)に、塗液供給口31がスリット3に臨まないとき、具体的には塗液供給口31が基材本体部Uに臨むとき(第1モードM1)に比較して、塗液供給口31からの塗液Cの供給量を小さくする。例えば、塗液供給口31がスリット3に臨むときに、塗液供給口31からの塗液Cの供給量を、ゼロにする。
【0139】
なお、制御部70は、塗液供給口31を介して液溜り部23に供給される塗液Cの供給圧力及び供給量のうちのいずれか一方のみを、調整してもよい。
【0140】
本実施形態によれば、塗液供給口31から液溜り部23へと塗液Cを間欠供給することによって、スリット3が塗液Cで塞がれることを、抑制することができる。
【0141】
<その他の実施形態>
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0142】
塗液供給口31は、第1ブロック21及び第2ブロック22のうちの一方にのみ、設けられてもよい。また、塗液供給口31は、第1ブロック21及び第2ブロック22には設けられず、第1側面部26a又は第2側面部26bにのみ設けられてもよい。すなわち、塗液供給口31は、一対のブロック(一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロック)及び側面部のうちの少なくともいずれかに、設けられればよい。
【0143】
基材排出口25の開口縁部25aは、幅方向及び厚み方向のいずれか一方に見て、搬送方向に垂直な方向Gに対して、平行でもよい。すなわち、基材排出口25の開口縁部25aは、幅方向及び厚み方向の少なくとも一方に見て、搬送方向に垂直な方向Gに対して傾斜する傾斜部を、含めばよい。
【0144】
傾斜部は、基材排出口25の開口縁部25aのうちのサイドブロック27の搬送方向下流側の面に、設けられてもよい。
【0145】
露出口29は、幅方向における両側の側面部26(第1側面部26a及び第2側面部26bの両方)に、設けられてもよい。そして、基材2における幅方向両端部各々を、非特定部位Qとして、各露出口29を介して液溜り部23から、突出させてもよい。
【0146】
上記実施形態では、基材2の搬送方向は、水平方向であったが、これに限定されない。基材2は、例えば鉛直方向上方から下方へ、また鉛直方向下方から上方へ、さらには斜め方向に搬送されてもよい。
【0147】
上記実施形態では、塗工装置20は、ロールtoロール法によって連続搬送される基材2の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられるが、これに限定されない。塗工装置20は、例えば、ベルトコンベヤによって搬送されるガラス基板の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられてもよい。
【0148】
本開示に係る塗工方法は、塗工装置20を用いて、開口部3が設けられた基材2を、液溜り部23に通す。
【0149】
さらに、本開示に係る塗工方法は、塗工装置20を用いて、塗液供給口31が開口部3に臨むときに、塗液供給口31が開口部3に臨まないときに比較して、塗液供給口31からの塗液Cの供給量及び/又は供給圧力を、小さくする。塗液Cの供給量及び/又は供給圧力の調整は、制御部70を用いずに、手動で行ってもよい。
【実施例0150】
<設定条件>
(実施例1)
基材2として、厚み0.1mm、幅20mmのSUS304材を用いた。基材2には、幅寸法d1が10mm、開口幅d2が0.5mmのスリット3(図3参照)を、搬送方向に20mm毎に設けた。基材2は、櫛歯状である。スリット3は、基材2の幅方向一方側に設けられている。基材2の反り量は、幅方向中央部と幅方向両端部との間において、厚み方向の変化で、0.002mmであった。
【0151】
塗液Cとして、粘度ηが約100Pa・sの導電性ペーストを用いた。塗液Cの粘度ηは、回転式粘度計(Thermo Scientific Mars40、HAAKE製)を用いて測定した。なお、粘度ηの測定条件は、ステージの直径20mm、測定子の直径20mm、角度1°、測定ギャップ0.05mm、せん断速度1/秒、測定温度25℃とした。
【0152】
第1の実施形態に係る塗工装置20(図1~5参照)を用いた。但し、基材排出口25の開口縁部25aには、第1傾斜部R1を設けずに、第2傾斜部R2のみを設けた。具体的には、塗工装置20は、卓上型塗工装置(ミニラボ、康井精機製)を用いた。第1ブロック21及び第2ブロック22は、SUS304材で形成した。各ブロック21,22の長さ寸法L1を40mm、幅寸法L2を50mm、厚み寸法L3を10mmとした。第2傾斜角度θ2は、60°とした。
【0153】
各ブロック21,22の幅方向他端部(第2側面部26b、露出口29)から幅方向一方側に5mm離れた位置に、直径1.0mmの円形の塗液供給口31を、搬送方向に等間隔に3個ずつ並べた。
【0154】
塗液供給ポンプ41として、モーノポンプ(3HMC010F、兵神装備製)を用いた。基材供給装置10の巻出側トルク及び巻取側トルクは、いずれも60N・mとした。
【0155】
塗膜Fの形成後、熱風乾燥炉(DKM-400、ヤマト科学製)を用いて、設定温度200℃、ファン回転数500rpmにて、30分間乾燥し、乾燥膜を得た。
【0156】
第1ブロック21と第2ブロック22との隙間寸法Hは、SUS304製のシムを用いて、0.2mmに設定した。塗工速度(搬送速度)は、毎分0.3mに設定し、基材厚み方向が鉛直方向を向くように水平方向に搬送した。
【0157】
(実施例2)
第1の実施形態に係る塗工装置20(図1~5参照)を用いた。但し、基材排出口25の開口縁部25aには、第2傾斜部R2を設けずに、第1傾斜部R1のみを設けた。第1傾斜角度θ1は、30°とした。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0158】
(比較例)
第1の実施形態に係る塗工装置20(図1~5参照)を用いた。但し、基材排出口25の開口縁部25aには、第1傾斜部R1及び第2傾斜部R2のいずれをも、設けなかった。その他の構成は、実施例と同様である。
【0159】
<測定条件>
塗膜Fの膜厚を、マイクロメータ(ミツトヨ製)を用いて測定した。膜厚は、塗膜F形成後における基材2の厚み寸法Tから、塗膜F形成前における基材2の厚み寸法tを差し引いた値とした(図5参照)。膜厚平均値は、膜厚を塗工方向(搬送方向)に5mm間隔で5点測定して、その測定値より算出した。膜厚バラツキは、5点の測定値より標準偏差3σを計算し、これを膜厚平均値で割った値(パーセント表示)とした。
【0160】
<測定結果>
(実施例1)
平均膜厚は18.9μm、膜厚バラツキは25%、表面粗さは4.6μmであった。
【0161】
(実施例2)
平均膜厚は26.4μm、膜厚バラツキは33%、表面粗さは8.1μmであった。
【0162】
(比較例)
平均膜厚は50.4μm、膜厚バラツキは35%、表面粗さは10.3μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本開示は、塗工装置及び塗工方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0164】
X 搬送方向
Y 幅方向
Z 厚み方向
P 特定部位
Q 非特定部位
C 塗液
F 塗膜
G 搬送方向に垂直な方向
R1 第1傾斜部
R2 第2傾斜部
θ1 第1傾斜角度
θ2 第2傾斜角度
J 流れ方向
N1 凹部
N2 凸部
1 塗工システム
2 基材
3 スリット(開口部)
3a 基端部
3b 先端部
20 塗工装置
21 第1ブロック(一対のブロック)
22 第2ブロック(一対のブロック)
23 液溜り部(隙間)
24 基材導入口
25 基材排出口
25a 開口縁部
26 側面部
26a 第1側面部
26b 第2側面部
27 サイドブロック
29 露出口
31 塗液供給口
32 塗液排出口(塗液排出部)
41 塗液供給ポンプ
51 塗液回収ポンプ
52 塗液排出管
52a 開口部(塗液排出部)
60 流量調整バルブ
70 制御部(塗液調整機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18