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特開2023-93143ストラットマウント及びストラットマウントの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093143
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ストラットマウント及びストラットマウントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
F16F9/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208583
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】橋本 岳宗
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069CC35
3J069DD47
(57)【要約】
【課題】ロッド側部材の外形形状の自由度を向上できるストラットマウント及びストラットマウントの製造方法を提供すること。
【解決手段】ロッド側部材20は、筒状に形成される筒状金具と、筒状金具よりも大径の円環平板状に形成され、筒状金具に溶接により接合される平板金具とを備える。即ち、ロッド側部材20を形成するための素材の寸法を、筒状金具と平板金具とのそれぞれで個別に設定できる。よって、ロッド側部材20の外形形状の自由度を向上できる。本実施形態では、素材を鍛造で拡径する場合と比較して、ロッド側部材20(平板金具)の外径を大きくしても、ロッド側部材の必要のない部分(筒状金具の外径)まで大きくなることを抑制できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体とショックアブソーバーのピストンロッドとの間に介在されるストラットマウントにおいて、
前記車体に連結される車体側部材と、
前記ピストンロッドの先端が連結されるロッド側部材と、
前記車体側部材および前記ロッド側部材の間に介在される弾性部材と、を備え、
前記ロッド側部材は、
筒状に形成される筒状金具と、
前記筒状金具よりも大径の円環平板状に形成され、前記筒状金具に溶接により接合される平板金具と、を備えることを特徴とするストラットマウント。
【請求項2】
前記平板金具の内径が前記筒状金具の外径よりも小さくされ、前記平板金具の軸方向端面と前記筒状金具の軸方向端面とが重ね合わされることを特徴とする請求項1記載のストラットマウント。
【請求項3】
前記平板金具と前記筒状金具とは、重ね合わされた軸方向端面どうしがプロジェクション溶接により接合されることを特徴とする請求項2記載のストラットマウント。
【請求項4】
前記平板金具の外径が前記筒状金具の外径の略3倍よりも大きくされることを特徴とする請求項3記載のストラットマウント。
【請求項5】
前記平板金具の厚みが略2mm以下とされることを特徴とする請求項4記載のストラットマウント。
【請求項6】
車体に連結される車体側部材と、ショックアブソーバーのピストンロッドの先端が連結されるロッド側部材と、前記車体側部材および前記ロッド側部材の間に介在される弾性部材と、を備えたストラットマウントを製造するストラットマウントの製造方法において、
前記ロッド側部材を形成する形成工程と、
前記形成工程で形成された前記ロッド側部材を加硫金型内に設置すると共に前記加硫金型により前記弾性部材を加硫成形する加硫工程と、
前記加硫工程により加硫成形された前記弾性部材および前記弾性部材に加硫接着された前記ロッド側部材を前記車体側部材に装着する装着工程と、備え、
前記ロッド側部材は、筒状に形成される筒状金具と、筒状金具よりも大径の円環平板状に形成される平板金具と、を備え、
前記形成工程は、前記筒状金具と前記平板金具とを溶接により接合することで前記ロッド側部材を形成することを特徴とするストラットマウントの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットマウント及びストラットマウントの製造方法に関し、特に、ロッド側部材の外形形状の自由度を向上できるストラットマウント及びストラットマウントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体とショックアブソーバーのピストンロッドとの間に介在されるストラットマウントが知られている(特許文献1)。ピストンロッドの先端が連結されるロッド側部材は、断面T字形状に形成される。このように、ロッド側部材には、径方向外側へ張り出す円板状の部分だけでなく、軸方向に延びる筒状の部分が形成される。これにより、ピストンロッドに対してロッド側部材が斜めの状態で締結されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4641936号公報(例えば、図2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ストラットマウントでは、ロッド側部材(径方向外側へ張り出す円板状の部分)の外径を大きくすることが要請される。弾性部材の受圧面積を確保することで、その弾性部材の耐久性を確保しつつ、ばね定数を大きくできるからである。
【0005】
ロッド側部材は、削り出しでは製造に要する時間が嵩むため、筒状の素材を鍛造により拡径させて形成される。しかしながら、鍛造により拡径できる寸法には限界があるため、外径のみを大きくすることが困難であった。
【0006】
例えば、素材を大型化すれば、拡径限界が高まり、その分、外径を大きくできるが、必要のない部分まで大型化され、その分、ロッド側部材の重量が嵩む。また、材料コストも嵩む。一方、素材を小型化すれば、重量や材料コストを抑制できるが、外径を十分に大きくできない。即ち、従来のストラットマウントでは、ロッド側部材の外形形状の自由度が低いという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、ロッド側部材の外形形状の自由度を向上できるストラットマウント及びストラットマウントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明のストラットマウントは、車体とショックアブソーバーのピストンロッドとの間に介在されるものであり、前記車体に連結される車体側部材と、前記ピストンロッドの先端が連結されるロッド側部材と、前記車体側部材および前記ロッド側部材の間に介在される弾性部材と、を備え、前記ロッド側部材は、筒状に形成される筒状金具と、前記筒状金具よりも大径の円環平板状に形成され、前記筒状金具に溶接により接合される平板金具と、を備える。
【0009】
本発明のストラットマウントの製造方法は、車体に連結される車体側部材と、ショックアブソーバーのピストンロッドの先端が連結されるロッド側部材と、前記車体側部材および前記ロッド側部材の間に介在される弾性部材と、を備えたストラットマウントを製造する方法であり、前記ロッド側部材を形成する形成工程と、前記形成工程で形成された前記ロッド側部材を加硫金型内に設置すると共に前記加硫金型により前記弾性部材を加硫成形する加硫工程と、前記加硫工程により加硫成形された前記弾性部材および前記弾性部材に加硫接着された前記ロッド側部材を前記車体側部材に装着する装着工程と、備え、前記ロッド側部材は、筒状に形成される筒状金具と、筒状金具よりも大径の円環平板状に形成される平板金具と、を備え、前記形成工程は、前記筒状金具と前記平板金具とを溶接により接合することで前記ロッド側部材を形成する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のストラットマウントによれば、車体に連結される車体側部材と、ピストンロッドの先端が連結されるロッド側部材と、車体側部材およびロッド側部材の間に介在される弾性部材と、を備え、ロッド側部材は、筒状に形成される筒状金具と、筒状金具よりも大径の円環平板状に形成され、筒状金具に溶接により接合される平板金具と、を備えるので、素材の寸法を、筒状金具と平板金具とのそれぞれで個別に設定できる。よって、ロッド側部材の外形形状の自由度を向上できる。
【0011】
請求項2記載のストラットマウントによれば、請求項1記載のストラットマウントの奏する効果に加え、平板金具の内径が筒状金具の外径よりも小さくされ、平板金具の軸方向端面と筒状金具の軸方向端面とが重ね合わされるので、ロッド側部材の寸法精度を出しやすくできる。また、平板金具と筒状金具とは、軸方向端面どうしを重ね合わせ、その重ね合わせた方向において、ピストンロッドの座とナットとの間に挟持されるので、溶接不良が発生しても、ロッド側部材の機能を担保できる。
【0012】
請求項3記載のストラットマウントによれば、請求項2記載のストラットマウントの奏する効果に加え、平板金具と筒状金具とは、重ね合わされた軸方向端面どうしがプロジェクション溶接により接合されるので、溶接ビードが外面に形成されることを抑制できる。よって、仕上げ処理を行うことなく、ロッド側部材を加硫金型内に設置できる。また、平板金具の軸方向端面を筒状金具の軸方向端面に接合する構成であるので、例えば、プレス成形により平板金具にプロジェクション突起を形成できる。よって、プロジェクション突起の形成を容易とできる。
【0013】
請求項4記載のストラットマウントによれば、平板金具の外径が筒状金具の外径の略3倍よりも大きくされる。よって、請求項3記載のストラットマウントの奏する効果に加え、次の効果を奏する。平板金具の外径を大きくできるので、弾性部材の受圧面積を大きくして、弾性部材の耐久性を確保しつつ、ばね定数を大きくできる。一方で、筒状金具の外径を小さくできるので、こじり入力時に筒状金具が他の部材と干渉することを抑制できる。また、筒状金具の外径が小さくなる分、ロッド側部材を軽量化できる。
【0014】
請求項5記載のストラットマウントによれば、請求項4記載のストラットマウントの奏する効果に加え、平板金具の厚みが略2mm以下とされるので、ストラットマウントの高さ寸法を抑制できる。
【0015】
請求項6記載のストラットマウントの製造方法によれば、ロッド側部材を形成する形成工程と、形成工程で形成されたロッド側部材を加硫金型内に設置すると共に加硫金型により弾性部材を加硫成形する加硫工程と、加硫工程により加硫成形された弾性部材および弾性部材に加硫接着されたロッド側部材を車体側部材に装着する装着工程と、備え、ロッド側部材は、筒状に形成される筒状金具と、筒状金具よりも大径の円環平板状に形成される平板金具と、を備え、形成工程は、筒状金具と平板金具とを溶接により接合することでロッド側部材を形成するので、素材の寸法を、筒状金具と平板金具とのそれぞれで個別に設定できる。よって、ロッド側部材(平板金具)の外径を大きくしても、ロッド側部材の必要のない部分(筒状金具)まで大きくなることを抑制できる。その結果、ロッド側部材の外形形状の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態におけるストラットマウントの上面図であり、(b)は、図1(a)のIb-Ib線におけるストラットマウントの縦断面図である。
図2】(a)は、ロッド側部材の縦断面図であり、(b)は、第2実施形態におけるロッド側部材の縦断面図である。
図3】(a)は、第3実施形態におけるストラットマウントの縦断面図であり、(b)は、第4実施形態におけるロッド側部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態におけるストラットマウント1の上面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb-Ib線におけるストラットマウント1の縦断面図である。なお、図1(b)では、車体BDへの取り付け状態が図示される。
【0018】
図1に示すように、ストラットマウント1は、車体BDとショックアブソーバーのピストンロッドPRとの間に介在される。詳細には、ストラットマウント1は、車体BDに連結される車体側部材10と、ピストンロッドPRの先端が連結されるロッド側部材20と、車体側部材10及びロッド側部材20の間に介在される弾性部材30とを備える。
【0019】
なお、車体側部材10及びロッド側部材20は金属材料から形成され、弾性部材30はゴム状弾性体から形成される。本実施形態では、車体側部材10がアルミニウム合金鋳物から形成され、ロッド側部材20は鉄鋼材料から形成される。
【0020】
車体側部材10は、ロッド側部材20を取り囲む筒状(軸Oを中心とする略円筒状)に形成される上筒部11と、その上筒部11の下端側から径方向内側へ張り出して形成される底部12と、上筒部11の下端側から径方向外側に張り出して形成され上面に車体BDが連結される腕部13と、腕部13の下面から突出され上筒部11と略同心の筒状(軸Oを中心とする略円筒状)に形成される下筒部14とを備える。
【0021】
上筒部11の上端には、円板形状の上蓋部材40が配設され、この上蓋部材40と底部12との間に弾性部材30が軸O方向に圧縮された状態で配設される。上蓋部材40の中央には、円形の貫通孔が貫通形成され、この貫通孔には、ピストンロッドPRの先端に締結されるナットN1が挿通される。
【0022】
なお、上蓋部材40が配設される前の状態では、上筒部11の上端から屈曲片が全周に亘って突出されており、その屈曲片を径方向内側に屈曲させることで、上蓋部材40が上筒部11の上端にかしめ固定される。
【0023】
底部12の中央には、円形の貫通孔が貫通形成され、この貫通孔には、ピストンロッドPR及びロッド側部材20(筒状金具21)が挿通される。なお、本実施形態では、底部12の厚み寸法(軸O方向寸法)は、腕部13の厚み寸法よりも大きくされる。
【0024】
腕部13は、上面視略三角形状に形成されると共に、厚み寸法(軸O方向寸法)が略一定の平板形状とされる。腕部13には、周方向等間隔となる複数箇所(本実施形態では3箇所)に締結孔13aが貫通形成され、それら各締結孔13aに挿通されたボルトB2の先端にナットN2が締結されることで、腕部13の上面に車体BDが連結(締結固定)される。
【0025】
下筒部14の内周面には、凹部が形成され、その凹部にショックアブソーバーのバウンドバンパーBB1の突部が嵌合されることで、下筒部14にバウンドバンパーBB1が保持される。即ち、バウンドバンパーBB1の上面が、底部12の下面および腕部13の下面に当接可能とされる。
【0026】
ロッド側部材20は、円形の貫通孔が貫通形成される筒状の筒部分と、その筒部分から径方向外方へ張り出して形成される張出部分とを備えた断面T字形状に形成され、貫通孔に挿通されたピストンロッドPRの先端にナットN1が締結されることで、ピストンロッドPRの先端に連結(締結固定)される。ロッド側部材20には、その張出部分に全周に亘って弾性部材30が加硫接着される。
【0027】
本発明では、2つの金具(素材)を溶接により接合することで、ロッド側部材20を断面T字形状に形成する。ロッド側部材20の詳細構成について、図2(a)を参照して説明する。
【0028】
図2(a)は、ロッド側部材20の縦断面図である。図2(a)に示すように、ロッド側部材20は、筒状に形成される筒状金具21と、その筒状金具21よりも大径の円環平板状に形成される平板金具22とを備え、それら筒状金具21と平板金具22とが溶接により接合される。
【0029】
筒状金具21及び平板金具22の外径の寸法はそれぞれD1,D2とされ(以下「外径D1,D2」と称す)、筒状金具21及び平板金具22の内径の寸法はそれぞれd1,d2とされる(以下「内径d1,d2」と称す)。平板金具22の板厚方向(軸O方向)の寸法はt2とされる(以下「厚みt2」と称す)。
【0030】
なお、本実施形態では、筒状金具21の外径D1は、ピストンロッドPRの外径よりも若干大きな寸法とされる。筒状金具21の軸O方向の長さは、平板金具22の厚みt2の略3倍の寸法とされる。筒状金具21の径方向の厚み(=(D1-d1)/2)は平板金具22の厚みt2と略同一の寸法とされる。筒状金具21及び平板金具22の内径d1,d2は略同一の寸法とされる(d1=d2)。
【0031】
このように、ロッド側部材20は、素材の寸法を、筒状金具21と平板金具22とのそれぞれで個別に設定できる。よって、ロッド側部材20の外形形状の自由度を向上できる。本実施形態では、素材を鍛造で拡径する場合と比較して、ロッド側部材20(平板金具22)の外径D2を大きくしても、ロッド側部材20の必要のない部分(筒状金具21の外径D1)まで大きくなることを抑制できる。
【0032】
即ち、外径D2を大きくできることで、弾性部材30の受圧面積を確保して、弾性部材30の耐久性を確保しつつ、ばね定数を大きくできる。一方、弾性部材30の受圧面積の確保には関係のない部分(筒状金具21)については、外径D1を小さくできるので、その分、ロッド側部材20の重量や材料コストが嵩むことを抑制できる。
【0033】
ロッド側部材20は、平板金具22の内径d2が筒状金具21の外径D1よりも小さくされ、平板金具22の軸O方向端面と筒状金具21の軸O方向端面とが重ね合わされる。
【0034】
ここで、例えば、平板金具222の内周に筒状金具221を差し込む構造では(図2(b)参照)、平板金具222の内径d22と筒状金具221の外径D1との寸法公差に比較的高い精度が要求され、管理コストが嵩む。また、溶接による接合時に、筒状金具221に対して平板金具222が傾きやすく、平行度や直角度などの姿勢精度の確保が困難となる。
【0035】
これに対し、ロッド側部材20によれば、軸O方向端面どうしを重ね合わせるので、筒状金具21及び平板金具22に要求される寸法公差の範囲を比較的緩くできる。例えば、筒状金具21の内径d1と平板金具22の内径d2とは、それぞれピストンロッドPRが挿通可能な孔であれば足り、差し込み(嵌め合い)を考慮してそれぞれの寸法公差を規定する必要がないので、それら内径d1,d2のそれぞれの寸法公差の範囲を比較的緩くできる。また、溶接による接合時には、筒状金具21及び平板金具22の軸O方向端面どうしを押し当てておけばよいので、平行度や直角度などの姿勢精度を確保しやすくできる。
【0036】
ここで、例えば、平板金具222の内周に筒状金具221を差し込む構造では(図2(b)参照)、溶接不良が発生した際には、車両の走行中に、平板金具222が筒状金具221に対して軸O方向に摺動(位置ずれ)する虞がある。
【0037】
これに対し、ロッド側部材20によれば、筒状金具21と平板金具22とは、軸O方向端面どうしが重ね合わされ、その重ね合わされた方向(軸O方向)において、ピストンロッドPRの座とナットN1との間に挟持されるので、溶接不良が発生しても、筒状金具21と平板金具22との位置関係を維持できる。その結果、ロッド側部材20の機能を担保できる。
【0038】
筒状金具21と平板金具22とは、重ね合わされた軸O方向端面どうしがプロジェクション溶接により接合される。そのため、溶接ビードがロッド側部材20(筒状金具21及び平板金具22)の外面に形成されることを抑制できる。よって、溶接ビードを除去するための仕上げ処理を行うことなく(或いは、最小限の仕上げ処理だけで)、ロッド側部材20を加硫金型内に設置できる。
【0039】
また、平板金具22の軸O方向端面を筒状金具21の軸O方向端面に接合する構成であれば、例えば、プレス成形により平板金具22の軸O方向端面にプロジェクション突起を形成できる。よって、プロジェクション突起の形成を容易とできる。なお、平板金具22の形成は、切削でも良く、プレス成形でも良い。プレス成形による場合は、平板金具22の形成と同じ工程において、プロジェクション突起の形成も行うことができ、効率化できる。
【0040】
プロジェクション溶接は、筒状金具21と平板金具22との軸O方向端面どうしを重な合わせ、反対側の軸O方向端面にそれぞれ電極を押し当て、電極間に挟み込む形で行われる。これにより、溶接による接合時に、筒状金具21に対して平板金具22が傾くことを抑制でき、ロッド側部材20の平行度や直角度などの姿勢精度を確保しやすくできる。
【0041】
平板金具22の外径D2は、筒状金具21の外径D1の略3倍よりも大きくされることが好ましい。本実施形態では、外径D2が外径D1の略3.5倍とされる(D2=3.5×D1)。これにより、ロッド側部材20(平板金具22)の外径D2の大径化と、筒状金具21の外径D1の小径化とを図ることができる。
【0042】
ここで、弾性部材30の軸O方向寸法(底部12及び上蓋部材40と平板金具22との間の厚み)を小さくすることや、弾性部材30の軸O方向の予圧縮量を増加させることでも、ばね定数を大きくできる。しかし、この場合には、弾性部材30のひずみが高くなるため、その耐久性が悪化する。
【0043】
これに対し、上述のように、ロッド側部材20(平板金具22)の外径D2を大きくできることで、弾性部材30の軸O方向寸法(高さ寸法)を小さくすることや、弾性部材30の軸O方向の予圧縮量を増加させることしなくても、弾性部材30の受圧面積を大きくして、弾性部材30の耐久性を確保しつつ、ばね定数を大きくできる。
【0044】
一方で、筒状金具21の外径D1を小さくできることで、ピストンロッドPRのこじり入力によるロッド側部材20の変位時に、ロッド側部材20(筒状金具21)が車体側部材10(底部12)と干渉することを抑制できる。よって、その分、底部12の貫通孔の内径を小さくできるので、底部12の強度と弾性部材30の受圧面積とを確保できる。また、筒状金具21の外径D1が小さくなる分、ロッド側部材20を軽量化できる。
【0045】
なお、このような外形形状をロッド側部材20に適用することは、筒状の素材を鍛造により拡径させて形成される従来品(従来のロッド側部材)では実現不可能であり、本発明のように、筒状金具21と平板金具22とを溶接により接合する構成により、初めて実現可能となったものであり、これにより、弾性部材30の耐久性およびばね定数の確保と、筒状金具21の他部材への干渉抑制および軽量化の達成とを両立するという従来品では奏し得ない効果を奏する。
【0046】
次いで、ストラットマウント1の製造方法について説明する。ストラットマウント1の製造は、まず、ロッド側部材20を形成する(形成工程)。即ち、筒状金具21及び平板金具22を切削やプレス成形により形成し、軸O方向端面どうしをプロジェクション溶接により接合して、ロッド側部材20を形成する。
【0047】
形成工程の後は、ロッド側部材20を加硫金型(図示せず)内に設置し、そのロッド側部材20が設置された加硫金型により弾性部材30を加硫成形する(加硫工程)。これにより、ロッド側部材20(平板金具22)に弾性部材30が加硫接着された加硫品が得られる。
【0048】
加硫工程の後は、加硫品を車体側部材10の上筒部11の内周側に設置し、上蓋部材40を上筒部11の上端にかしめ固定することで、加硫品を車体側部材10に装着する(装着工程)。これにより、ストラットマウント1の製造が完了される。
【0049】
次いで、第2実施形態について説明する。図2(b)は、第2実施形態におけるロッド側部材220の縦断面図である。なお、図2(b)では、溶接部分の開先形状や溶接ビードの図示が省略され、ロッド側部材220が模式的に図示される。上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0050】
図2(b)に示すように、第2実施形態におけるロッド側部材220は、筒状に形成される筒状金具221と、その筒状金具221よりも大径の円環平板状に形成される平板金具222とを備え、その外形形状は、第1実施形態におけるロッド側部材20の外形形状と略同一とされる。
【0051】
平板金具222の内径の寸法はd22とされ(以下「内径d22」と称す)、内径d22は、筒状金具221の外径D1と略同一の寸法または若干大きな寸法とされる。ロッド側部材220は、平板金具222の中央の貫通孔(開口)に筒状金具221の軸O方向端部が差し込まれた状態で、それら筒状金具221と平板金具222とが溶接により接合される。
【0052】
第2実施形態におけるロッド側部材220においても、素材の寸法を、筒状金具221と平板金具222とのそれぞれで個別に設定できる。よって、ロッド側部材220の外形形状の自由度を向上できる。即ち、上記第1実施形態の場合と同様に、素材を鍛造で拡径する場合と比較して、ロッド側部材220(平板金具222)の外径D2を大きくしても、ロッド側部材220の必要のない部分(筒状金具221の外径D1)まで大きくなることを抑制できる。
【0053】
次いで、第3実施形態について説明する。図3(a)は、第3実施形態におけるストラットマウント301の縦断面図である。なお、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0054】
図3(a)に示すように、第3実施形態におけるストラットマウント301は、車体BDに連結される車体側部材10と、ピストンロッドPRの先端が連結されるロッド側部材320と、車体側部材10及びロッド側部材20の間に介在される弾性部材30とを備える。
【0055】
ロッド側部材320は、第1実施形態のロッド側部材20と同様に断面T字形状に形成され、第1実施形態のロッド側部材20とは上下逆向きとした姿勢で、ピストンロッドPRの先端にナットN1により連結(締結固定)される。このロッド側部材320の詳細構成について、図3(b)を参照して説明する。
【0056】
図3(b)は、ロッド側部材320の縦断面図である。図3(a)に示すように、ロッド側部材320は、筒状に形成される筒状金具321と、その筒状金具321よりも大径の円環平板状に形成される平板金具322とを備え、それら筒状金具321と平板金具322との軸O方向端面どうしがプロジェクション溶接により接合される。
【0057】
筒状金具321及び平板金具322の外径の寸法はそれぞれD3,D4とされ(以下「外径D3,D4」と称す)、筒状金具321及び平板金具322の内径の寸法はそれぞれd3,d4とされる(以下「内径d3,d4」と称す)。平板金具322の板厚方向(軸O方向)の寸法はt3とされる(以下「厚みt3」と称す)。
【0058】
なお、本実施形態では、筒状金具321の外径D3は、ナットN1の外径よりも若干大きな寸法とされる。筒状金具321の軸O方向の長さは、平板金具322の厚みt3の略4倍の寸法とされる。筒状金具321の径方向の厚み(=(D3-d3)/2)は平板金具322の厚みt3の略2倍の寸法とされる。筒状金具321及び平板金具322の内径d3,d4は略同一の寸法とされる(d3=d4)。
【0059】
ロッド側部材320によれば、筒状金具321の外径D3がナットN1の外径よりも大きくされるので、座面の面積を確保して、締結強度を確保できる。
【0060】
平板金具322の厚みt3は、略2mm以下とされることが好ましい。本実施形態では、厚みt3が略1.5mmとされる。このように、平板金具322の厚みt3が小さく(薄く)されることで、その分、弾性部材30の軸O方向寸法(底部12及び上蓋部材40と平板金具22との間の厚み)を小さくできる。その結果、ストラットマウント301の軸O方向寸法(高さ寸法)を小型化できる。
【0061】
なお、このような外形形状をロッド側部材320に適用することは、筒状の素材を鍛造により拡径させて形成される従来品(従来のロッド側部材)では実現不可能であり(即ち、鍛造では、平板金具322の厚みt3を薄くすると、筒状金具321の外径D3も小さくなり、締結強度が低下する)、本発明のように、筒状金具321と平板金具322とを溶接により接合する構成により、初めて実現可能となったものであり、これにより、締結強度の確保と、ストラットマウント301の軸O方向寸法の小型化とを両立するという従来品では奏し得ない効果を奏する。
【0062】
第3実施形態では、ロッド側部材320の姿勢が第1実施形態の場合と上下逆向きとされるので、筒状金具321が底部12に挿通されない。よって、第1実施形態の場合と比較して、底部12の貫通孔の内径を小さくでき、その分、車体側部材10(底部12)の強度を向上できる。底部12は、弾性部材30及びバウンドバンパー(図示せず)の双方から荷重が入力される部位であるため、底部12の強度を向上できることは特に有効となる。
【0063】
次いで、第4実施形態について説明する。図3(b)は、第4実施形態におけるロッド側部材420の縦断面図である。なお、図3(b)では、溶接部分の開先形状や溶接ビードの図示が省略され、ロッド側部材420が模式的に図示される。上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0064】
図3(b)に示すように、第4実施形態におけるロッド側部材420は、筒状に形成される筒状金具421と、その筒状金具421よりも大径の円環平板状に形成される平板金具422とを備え、その外形形状は、第3実施形態におけるロッド側部材320の外形形状と略同一とされる。
【0065】
平板金具422の内径の寸法はd44とされ(以下「内径d44」と称す)、内径d44は、筒状金具421の外径D3と略同一の寸法または若干大きな寸法とされる。ロッド側部材420は、平板金具422の中央の貫通孔(開口)に筒状金具421の軸O方向端部が差し込まれた状態で、それら筒状金具421と平板金具422とが溶接により接合される。
【0066】
第4実施形態におけるロッド側部材420においても、素材の寸法を、筒状金具421と平板金具422とのそれぞれで個別に設定できる。よって、ロッド側部材420の外形形状の自由度を向上できる。即ち、上記第3実施形態の場合と同様に、筒状金具421の径方向の厚みを確保しつつ、筒状金具421の厚みt3を小さく(薄く)できる。
【0067】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0068】
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記第1実施形態では、筒状金具21の軸O方向の長さが平板金具22の厚みt2の略3倍の寸法とされたが、略3倍よりも小さい寸法でも良く、略3倍よりも大きい寸法でも良い。また、筒状金具21の径方向の厚みが平板金具22の厚みt2の略1倍の寸法とされたが、略1倍よりも小さい寸法でも良い、略1倍よりも大きい寸法でも良い。
【0069】
例えば、第3実施形態では、筒状金具321の軸O方向の長さが平板金具322の厚みt3の略4倍の寸法とされたが、略4倍よりも小さい寸法でも良く、略4倍よりも大きい寸法でも良い。また、筒状金具321の径方向の厚みが平板金具322の厚みt3の略2倍の寸法とされたが、略2倍よりも大きい寸法でも良く、略2倍よりも小さい寸法でも良い。
【0070】
上記第1及び第3実施形態では、筒状金具21,321及び平板金具22,322の軸O方向端面どうしをプロジェクション溶接により接合する場合を説明したが、他の溶接方法を採用しても良い。他の溶接方法としては、融接(アーク溶接、電子ビーム溶接、ガス溶接、レーザー溶接)が例示される。
【0071】
上記第2及び第4実施形態では、溶接方法の説明を省略したが、上記例示した融接(アーク溶接、電子ビーム溶接、ガス溶接、レーザー溶接)を採用することができる。
【0072】
上記各実施形態では、平板金具22~422の軸O方向視における外形形状が円形に形成される場合を説明したが、他の外形形状(例えば、楕円形や多角形)であっても良い。同様に、平板金具22~422の厚みt2,t3が一定とされる場合を説明したが、厚みt2,t3が部分的に異なる(例えば、弾性部材30に加硫接着される領域において、厚い部分と薄い部分とが周方向または径方向に交互に形成される)ものであっても良い。
【0073】
上記第1及び第3実施形態で説明したように、平板金具22の外径D2は、筒状金具21の外径D1の略3倍よりも大きくされることが好ましく、平板金具322の厚みt3は、略2mm以下とされることが好ましい。この場合、外径D2の上限および下限は任意であるが、例えば、外径D2は外径D1の略4倍以下とされることが好ましく、厚みt3は略1mm以上とされることが好ましい。
【符号の説明】
【0074】
1,301 ストラットマウント
10 車体側部材
11 上筒部
12 底部
13 腕部
14 下筒部
20,220,320,420 ロッド側部材
21,221,321,421 筒状金具
D1,D3 筒状金具の外径
22,222,322,422 平板金具
D2,D4 平板金具の外径
d2,d4 平板金具の内径
t2,t3 平板金具の厚み
30 弾性部材
O 軸
BD 車体
PR ピストンロッド

図1
図2
図3