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特開2023-93157スチレン系樹脂組成物及びその成形品、フィルム及び発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093157
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物及びその成形品、フィルム及び発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20230627BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208612
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 和也
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 利春
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB042
4J002AC081
4J002BC021
4J002BC031
4J002BC041
4J002BC051
4J002BC061
4J002BC071
4J002BC081
4J002BC091
4J002GC00
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】色相や耐熱性に優れ、バイオマス原料として澱粉を含むことで環境負荷の少ない樹脂組成物、および前記樹脂組成物から得られる成形品、フィルム、発泡体を提供する。
【解決手段】スチレン系樹脂Aと澱粉Bの合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂A45~95質量部と澱粉B5~55質量部を含有するスチレン系樹脂組成物であって、前記澱粉BのTG-DTAで測定される5%重量減少温度が285~350℃である、スチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂Aと澱粉Bの合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂A45~95質量部と澱粉B5~55質量部を含有するスチレン系樹脂組成物であって、前記澱粉BのTG-DTAで測定される5%重量減少温度が285~350℃である、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂Aが、ゴム含有スチレン系樹脂である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記澱粉Bの、トルエン溶媒中で測定される平均粒径Dが15~50μmであることを特徴する、請求項1~請求項2のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
スチレン系樹脂組成物100質量部中に含まれるバイオマスの含有量が5質量部以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項7】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスと複合化しつつ、色相及び耐熱性に優れた樹脂組成物、ならびに樹脂組成物から得られる成形品、フィルム及び発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の問題から二酸化炭素の低減が求められており、二酸化炭素を排出しない「カーボンニュートラル」な材料として、バイオマス由来の材料が注目されている。例えば、貝殻や竹粉、澱粉等のバイオマスを樹脂と複合化する事により、石油由来の原料の使用量を削減する事が出来る。
【0003】
しかしながら、貝殻や竹粉、澱粉等のバイオマスは、樹脂への分散性が悪く加工性や物性の低下につながる。そこで、近年では、抗酸化剤や界面活性剤の添加による分散性や加工性の改善が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-173868
【特許文献2】特開2009-120648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、色相や耐熱性に優れ、バイオマス原料として澱粉を含むことで環境負荷の少ない樹脂組成物、及び前記樹脂組成物から得られる成形品、フィルム、及び発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1).スチレン系樹脂Aと澱粉Bの合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂A45~95質量部と澱粉B5~55質量部を含有するスチレン系樹脂組成物であって、前記澱粉BのTG-DTAで測定される5%重量減少温度が285~350℃である、スチレン系樹脂組成物。
(2).前記スチレン系樹脂Aが、ゴム含有スチレン系樹脂である、(1)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(3).前記澱粉Bの、トルエン溶媒中で測定される平均粒径Dが15~50μmであることを特徴する、(1)~(2)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物。
(4).スチレン系樹脂組成物100質量部中に含まれるバイオマスの含有量が5質量部以上であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物。
(5).(1)~(4)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
(6).(1)~(4)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなるフィルム。
(7).(1)~(4)のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂組成物からなる発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形品、フィルム、発泡体は、低環境負荷であり、色相及び耐熱性に優れるため、食品容器・包装、OA機器、家電部品、雑貨等の用途で有利に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0009】
1.スチレン系樹脂組成物
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)と、澱粉(B)を含む。
スチレン系樹脂(A)と澱粉(B)の合計を100質量部としたとき、スチレン系樹脂(A)の含有量は、45~95質量部であり、45~90質量部であることが好ましい。具体的には、例えば、45、50、55、60、70、80、90、95質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、スチレン系樹脂(A)を併用する場合には、スチレン系樹脂(A)の使用量は、併用するスチレン系樹脂(A)の合計量を意味する。
スチレン系樹脂(A)と澱粉(B)の合計を100質量部としたとき、澱粉(B)の含有量は、5~55質量部であり、10~55質量部であることが好ましい。具体的には、例えば、5、10、20、30、40、45、50、55質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、澱粉(B)を併用する場合には、澱粉(B)の使用量は、併用する澱粉(B)の合計量を意味する。
【0010】
<スチレン系樹脂(A)>
スチレン系樹脂(A)は、芳香族ビニル化合物系単量体(a1)をラジカル重合して得られるものであり、必要に応じて共役ジエン系ゴム状重合体を加えてゴム変性を行ってもよい。重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。芳香族ビニル化合物系単量体は、単環又は多環の芳香族ビニル系モノマーであり、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の単独または2種以上の混合物であり、好ましくは、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンの単独または2種以上の混合物であり、より好ましくは、スチレンである。また、これらの芳香族ビニル化合物系単量体と共重合可能なアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体も、スチレン系樹脂組成物の性能を損なわない範囲で含有しても良い。さらに本発明ではジビニルベンゼン等の架橋剤をスチレン系単量体に対し添加して重合したものであっても差し支えない。
【0011】
本発明のスチレン系樹脂(A)のゴム変性に用いる共役ジエン系ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム又はブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン-イソプレンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムなどが挙げられるが、特にポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体が好ましい。また、これらは一部水素添加されていてもよく、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
本実施形態にかかるスチレン系樹脂(A)100質量部中のゴム状重合体の含有量は、強度と成形加工性の観点から1.0~25.0質量部が好ましく、5.0~20.0質量部がさらに好ましい。なお、ゴム状重合体の含有量は1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、25.0質量部のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。なお、ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の使用量は、併用するゴム状重合体の合計量を意味する。
【0013】
ゴム状重合体の含有量は、例えば、次のようにして測定できる。
試料をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出する。
【0014】
スチレン系樹脂(A)中のゴム状重合体の体積平均粒子径は、強度と剛性の観点から2.0~8.0μmが好ましく、特に好ましくは2.3~7.0μmが好ましい。なお、この体積平均粒子径は2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。ゴム状重合体を併用する場合には、ゴム状重合体の体積平均粒子径は、併用するゴム状重合体全体での体積平均粒子径を意味する。
【0015】
ゴム状重合体の体積平均粒子径は、例えば、次のようにして測定できる。
試料をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回析方式粒度分布装置(ベックマン・コールター社製レーザー回析方式粒子アナライザー「LS-230型」)にて測定する。
【0016】
スチレン系樹脂(A)の分子量は、重量平均分子量(Mw)で1万~50万が好ましく、より好ましくは3万~40万である。具体的には例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。このような範囲とすることで、流動性と耐熱性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
【0017】
重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定できる。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
本発明の分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0018】
スチレン系樹脂(A)のうち、ゴム変性したスチレン系樹脂については、ポリスチレン樹脂のマトリクス相にゴム状分散粒子が分散した形態であり、分子量はマトリクス相の分子量を意味する。そのため分子量測定に用いる試料は50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液にスチレン系樹脂(A)を溶解させ、遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にてゴム状分散粒子を除去し、メタノールに再沈殿させたポリマー物を使用する。
GPC機種:昭和電工株式会社製 Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 5μm MIXED-C
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
本発明の分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0019】
スチレン系樹脂(A)の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0020】
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0021】
スチレン系樹脂(A)の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0022】
<澱粉(B)>
本実施形態にかかる澱粉(B)とは、アミロースとアミロペクチンの繰返単位を有する分岐鎖構造の炭水化物重合体である。このような澱粉は、植物中の貯蔵多糖類、すなわち天然高分子の多糖類として周知の物であり、例えば、馬鈴薯、薩摩芋等のいも類、米麦その他の穀物類、トウモロコシ、タピオカ類等から得られる未加工澱粉が挙げられる。
【0023】
また、澱粉(B)は、化学的または物理的に変性されたものであってもよく、化学分解変性澱粉、酵素性澱粉、物理的変性澱粉等であってもよい。
【0024】
以上のような澱粉類のうち、原材料または処理工程によって分類されるものの具体例を挙げると、天然高分子から分離して得られ、非変性の澱粉として、トウモロコシ澱粉、ワラビ澱粉、クズ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、大麦澱粉、米澱粉、キャッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、豆澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉、甘藷澱粉などが挙げられる。
【0025】
化学分解変性澱粉としては、アリルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、燐酸架橋澱粉、ホルムアルデヒド架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉、アセト酢酸エステル化澱粉、酢酸エステル化澱粉、コハク酢酸エステル化澱粉、キサントゲン酢酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、燐酸エステル化澱粉もしくはこれらの化学分解変性澱粉誘導体またはジアルデヒド澱粉、酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉などが挙げられる。
【0026】
酵素変性澱粉としては、加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロースなどが挙げられる。
【0027】
また、物理的変性澱粉としては、α-澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉などが挙げられる。
【0028】
澱粉(B)の5%重量減少温度Td5は、285℃~350℃であり、好ましくは290℃~325℃である。具体的には例えば、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。このような範囲とすることで、耐熱性と分散性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。澱粉(B)の5%重量減少温度Td5は、原材料の違いや化学的または物理的な変性、及び化学分解変性、酵素変性、物理的変性の条件によって制御することができる。
【0029】
澱粉(B)の5%重量減少温度Td5は、熱重量分析(TGA、Thermogravimetric Analysis)により求める事ができ、乾燥した原料を窒素雰囲気下で室温状態から20℃/分の昇温速度で加熱し、乾燥した原料の重量に対する減少した重量の割合が5%となる点での温度をTd5とする。
【0030】
澱粉(B)の平均粒径Dは、15~50μmが好ましく、20~35μmである。具体的には例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってよい。このような範囲とすることで、強度と分散性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物が得られる。澱粉(B)の平均粒径Dは、原材料の違いや化学的または物理的な変性、及び化学分解変性、酵素変性、物理的変性の条件によって制御することができる。
【0031】
澱粉(B)の平均粒子径Dは、澱粉をトルエンに溶解させ、レーザー回折方式粒度分布測定装置(コールター社製レーザー回折方式粒子アナライザーLS-230型)により測定して求めることができる。
【0032】
本発明の目的を損なわない範囲で他の添加剤、例えば可塑剤、展着剤、溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染顔料、有機系充填剤、着色防止剤、補強剤、相溶化剤、結晶化促進剤、難燃剤、難燃助剤、等を添加することができ、また澱粉以外の天然由来の材料をバイオマスとして含んでも良い。
【0033】
本実施形態におけるバイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものを意味する。本実施形態におけるバイオマスは、特段限定されるものではないが、例えば、木粉、竹粉、紙粉、炭類、籾柄、お茶柄、古米粉、米ぬか、ふすま、おから、酒・焼酎・ビール・ワイン・醤油の絞り滓、澱粉、蒟蒻副産物、果樹類の皮若しくは実の絞り滓、稲・麦・蕎麦を含む草類、海草若しくは藻類、綿繊維、パーム繊維、あるいはそれらの混合物等を好適に用いることができる。分散性の観点から、澱粉、竹粉、木粉が好ましい。
【0034】
これらの添加方法は、特に限定されず、公知の方法で添加すれば良い。スチレン系樹脂(A)または澱粉(B)の製造時の原料の仕込工程、重合工程、仕上工程で添加する方法や、押出機や成形機を用いて樹脂組成物を混合する工程で添加する方法を適用することができる。
【0035】
本発明に係る樹脂組成物は、一実施形態において、天然系抗酸化剤またはこれに相当する合成物を含有しない。天然系抗酸化剤またはこれに相当する合成物としては、例えば、α-、β-、γ-、δ-トコフェロールおよびそれらの二量体等のトコフェロール類(ビタミンE類);カテキン、ガロカテキンガレート、フラボノール等のフラボン誘導体;コーヒー酸、フェルラ酸、オリザノール等のコーヒー酸誘導体;アミノ酸およびその誘導体;B、B、B類等のビタミンB群およびそれらの誘導体;L-アスコルビン酸(ビタミンC)、L-アスコルビン酸のステアリン酸エステル;K~K等のビタミンK群およびそれらの誘導体;その他不飽和テルペンアルコール、ゴシポール、セザモール、オイゲノール、カンフェン、チモール、ショウガオール、ケイ皮アルデヒドが挙げられる。
【0036】
本発明に係る樹脂組成物は、一実施形態において、過酸化合物を含有しない。過酸化合物としては、例えば、一般式Y-R-COOOH(式中、Rは脂肪族炭化水素、或は芳香族炭化水素を示し、Yは澱粉の表面の水酸基と反応できるカルボキシル基、アルデヒド基等の官能基)で表されるものが挙げられる。
【0037】
本発明に係る樹脂組成物は、一実施形態において、酸化した油を含有しない。酸化した油としては、例えば、動物油や植物油を酸化させたもの、具体的にはナタネ油、コーン油、ヒマワリ油、ベニバナ油を酸化させたものが挙げられる。
【0038】
本発明に係る樹脂組成物は、一実施形態において、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、微粉ケイ酸、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸鉛、リトボン、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、ミネラルブラック、アニリンブラック、シアニンブラックBX、黄鉛、亜黄鉛、クロム酸バリウム、カドミウムエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、鉛シアナミド、鉛酸カルシウム、赤口黄鉛、クロムバーミリオン、酸化鉄、アンバー、べんがら、鉛丹、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、コバルト紫、マンガン紫、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、呉須、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ビリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末が挙げられる。無機フィラーの含有量は、樹脂組成物100質量部に対し1質量部未満であることが好ましく、0.5質量部未満であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明に係る樹脂組成物は、一実施形態において、ノニオン系界面活性剤を含有しない。低融点添加剤としては、例えば、グリセロールモノステアレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットが挙げられる。
本発明に係る樹脂組成物は、一実施形態において、アニオン系界面活性剤を含有しない。低融点添加剤としては、例えば、ペレックスOT-P(商品名、花王株式会社製が挙げられる。
【0040】
次に本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0041】
本発明の樹脂組成物の混合方法は、特に限定されず、公知の混合技術を適用することが出来る。例えば、ミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置を用いて、各種原料を予め混合しておき、その混合物を溶融混練することによって、均一な樹脂組成物を製造することが出来る。溶融混練装置も、特に限定されないが、例えばバンバリー型ミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等が挙げられる。更に、押出機等の溶融混練装置の途中から他の添加剤を別途添加する方法もある。
【0042】
本発明の樹脂組成物から成形品を得る成形法には特に制限は無くカレンダ成形、中空成形、押出発泡成形、異形押出成形、ラミネート成形、インフレーション成形、Tダイフィルム成形、シート成形、真空成形、圧空成形などの押出成形法や、射出成形、RIM成形、射出発泡成形などの射出成形法といった公知の成形法を好適に用いることが出来るが、好ましくは射出成形またはシート成形である。
【実施例0043】
以下に本発明を実施例及び比較例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
【0045】
〔スチレン系樹脂(A)〕
(A)HIPS(ポリブタジエンゴムで変性したポリスチレン樹脂、分子量(Mw)22万、樹脂100質量%中のゴム状重合体の含有量10質量%、体積平均粒子径2.9μm)
【0046】
〔澱粉(B)〕
(B-1)コーンスターチ(日本食品化工社製)5%重量減少温度Td5298℃、平均粒径D23μm
(B-2)変性澱粉 5%重量減少温度Td5297℃、平均粒径D28μm
(B-3)変性澱粉 5%重量減少温度Td5284℃、平均粒径D14μm
【0047】
(実施例1~5、比較例1~5)
各成分を表1及び表2に示す配合量で、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製、FM20B)にて予備混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)に供給して、シリンダー温度200℃、供給量25kg/hの条件にてストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。得られたペレットを射出成形して、各種特性の評価を行った結果を表1及び表2に示す。
【0048】
〔バイオマス含有量〕
バイオマス含有量は、以下の計算式を使用して算出した。
バイオマス含有量(%)=X/A×100
X:澱粉(B)および澱粉以外のバイオマス成分の合計含有量(質量部%)
A:澱粉(B)、澱粉以外のバイオマス成分、およびスチレン系樹脂(A)の合計含有量(質量部)
【0049】
〔押出安定性〕
押出安定性は、以下の評価基準に基づいて評価した。
×:ストランドをペレタイザーに供給できず、ペレット化できない
〇:断続的にストランドをペレタイザーに供給できる
◎:継続的にストランドをペレタイザーに供給できる
【0050】
〔ペレット色相〕
ペレット色相は、以下の評価基準に基づいて評価した。
×:スチレン系樹脂100質量部により作成したペレット(比較例1)と比較して黄変あり
〇:スチレン系樹脂100質量部により作成したペレット(比較例1)と比較して黄変なし
【0051】
〔シャルピー衝撃強さ〕
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7111により求めた。
【0052】
〔ビカット軟化温度の測定〕
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7206に基づき50N荷重の条件により求めた。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1の実施例より本発明の樹脂組成物は、バイオマス含有量及びペレット色相に優れ、またビカット軟化温度が高い事がわかる。一方、表2の比較例より本発明の規定を満足しない樹脂組成物はバイオマス含有量及びペレット色相が劣り、ビカット軟化温度が低い事がわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明にかかるスチレン系樹脂と澱粉とを含有するスチレン系樹脂組成物は、環境負荷が少なく、色相に優れ、また耐熱性に優れている。本発明にかかるスチレン系樹脂組成物は、成形品やフィルム、発泡体として好適に用いることができ、産業上の利用可能性を有する。