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特開2023-93158固定金具脱着治具、固定金具設置方法、固定金具取外し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093158
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】固定金具脱着治具、固定金具設置方法、固定金具取外し方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20230627BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
E01F8/00
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208615
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】592093914
【氏名又は名称】新中央工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 顕郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁
【テーマコード(参考)】
2D001
2E174
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2E174BA01
2E174DA14
2E174DA34
2E174DA65
(57)【要約】
【課題】遮音パネルを支柱に固定する固定金具をハンマー等で叩かずに支柱とパネルとの間に脱着可能な固定金具脱着治具を提供する。
【解決手段】遮音壁の支柱H1と遮音パネルP1との隙間に介装される固定金具10を取り外し、又は引き込んで前記隙間に装着する固定金具脱着治具1において、棒材からなる引込棒3と、この引込棒3と揺動自在に連結された棒材からなるレバー棒4と、を備え、前記引込棒3の上端部31に前記固定金具10の折り返されたループ部分に差し込まれて固定金具10を掛け止める掛け板2を固着し、レバー棒4の基端部41側に、前記遮音パネルP1の背面溝PGに嵌め込まれて反力を取る支え板6を回転自在に軸支する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音壁の支柱と遮音パネルとの隙間に介装される固定金具を取り外し、又は引き込んで前記隙間に装着する固定金具脱着治具であって、
棒材からなる引込棒と、この引込棒と揺動自在に連結された棒材からなるレバー棒と、を備え、
前記引込棒の上端部に前記固定金具の折り返されたループ部分に差し込まれて前記固定金具を掛け止める掛け板が固着され、
前記レバー棒の基端側には、前記遮音パネルの背面溝に嵌め込まれて反力を取る支え板が回転自在に軸支されていること
を特徴とする固定金具脱着治具。
【請求項2】
前記掛け板は、前記引込棒に両端部が突出するように取り付けられており、
前記引込棒と前記レバー棒は、180度以上揺動可能に連結されていること
を特徴とする請求項1に記載の固定金具脱着治具。
【請求項3】
前記引込棒と前記レバー棒は、短冊状の外倒れ防止板を介して揺動自在に連結され、前記外倒れ防止板の前記引込棒からの突出長さは、前記掛け板の前記両端部の前記引込棒からの突出長さより長く設定されていること
を特徴とする請求項2に記載の固定金具脱着治具。
【請求項4】
前記引込棒の背面には、作業時に誤って落下することを防止する引掛け金具が取り付けられていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の固定金具脱着治具。
【請求項5】
遮音壁の支柱と遮音パネルとの隙間に固定金具を設置する固定金具設置方法であって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の固定金具脱着治具を前記遮音パネルの背面溝に装着し、前記レバー棒を引き上げることで前記引込棒に固着された前記掛け板を引き下げてそれに装着された固定金具を引き込んで設置すること
を特徴とする固定金具設置方法。
【請求項6】
既設の遮音壁の支柱と遮音パネルとの隙間に設置された既設の固定金具を取り外す固定金具取外し方法であって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の固定金具脱着治具を前記遮音パネルの背面溝に装着し、前記レバー棒を引き下げることで前記引込棒に固着された前記掛け板を押し上げてそれに装着された固定金具を押し上げて取り外すこと
を特徴とする固定金具取外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音壁の支柱と遮音パネルとの隙間に介装される固定金具の脱着治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路、線路、工場等の騒音源から騒音を遮蔽(遮音)するため、図9図10に示すように、H形鋼などからなる支柱H1のフランジ内に、遮音パネルP1(金属製吸音板などの吸音パネル、コンクリート製の遮音板、及び樹脂ガラス製の透光パネルなどを含む)が差し込まれた遮音壁が設置されている。
【0003】
このような遮音壁の遮音パネルP1は、支柱H1のフランジとパネルとの間に、図11に示すような鋼板から折曲成形された板バネ式の固定金具10がハンマー等で叩き込まれて挿入されて、固定金具10の復元力で押圧されて支柱H1に固定されている。
【0004】
また、遮音壁が設置されるようになってから50年が経過し、多くの製品に劣化が進むこととなり、取替工事が行われて更新されるようになってきた。遮音壁が設置されている道路は、既に供用されていることから、自ずと工事は夜間に行われる場合が多くなる。
【0005】
さらに、遮音壁が設置されている場所は、騒音に対する環境が整っている住宅街を通っている場合も多々あり、工事中の騒音は極力抑える必要がある。しかし、遮音壁の取替工事で遮音パネルを撤去及び設置する際には、前述の固定金具10の脱着が必要となり、その際の打撃音が騒音問題を引き起こしている。
【0006】
例えば、特許文献1には、帯状鋼板を曲折して縦差込み部2及び傾斜差込み部3とから成る差込み部4を形成し、傾斜差込み部3の上部から連続して縦差込み部2へ向けて縦断面形状が略くの字状になるように曲折した内側支え部5を形成し、縦差込み部2の上部から連続して縦差込み部2に対して側方へ突出するように形成した抜止め部6をそれぞれ形成した遮音パネルの固定金具1が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0012]~[0021]、図面の図1図4等参照)。
【0007】
また、本願出願人が提案した特許文献2には、鋼板を折り曲げ加工して形成された支持力伝達部材1と、遮音板4を固定する楔2とで構成され、支柱3の溝3a内へ挿入して、内端から遮音板4の表面に沿って下降する懸垂面部11がある懸垂面部11の下端を支柱3の対向する溝壁内面に向かって当接する圧接面部が形成され、前面に接触するか又は若干の隙間を空けて対峙する入力部が形成され、先方部分には、前記圧接面部の根元部分に向かって当接し突っ張る突っ張り面部に形成されている遮音板の高強度固定金具が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0021]~[0026]、図面の図1図5等参照)。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の固定金具1や特許文献2に記載の高強度固定金具は、固定金具10をハンマー等で叩いて支柱H1のフランジと遮音パネルP1との間に挿し込むものであった。このため、ハンマー等で固定金具10を叩く際に、衝撃音が発生し、騒音の原因となるという問題があった。このような遮音パネル等を設置する工事は、車線規制などの交通規制が行い易い夜間に行われることが多く、前述の衝撃音が問題となっていた。遮音パネルP1等が設置される場合は、近隣住民からの通行車両の騒音の苦情により設置される場合も多く、遮音パネル等を設置する工事における騒音には、特に注意が必要とされているという事情も存在する。
【0009】
そこで、本願発明者らは、特許文献3に記載の固定金具引込み治具を提案した。特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、固定金具10を掛け止める上下一対のフック2,2と、これらのフック2,2を繋ぐととともに、両者の間隔を梃子の原理を用いて接近又は離隔自在な梃子機構3と、を備え、固定金具10に掛け止めた一対のフック2,2同士の間隔を縮めて接近させることにより、上段の固定金具10を下段の固定金具側に引き下げ、支柱H1と遮音パネルP1との隙間に引き込んで装着することができる。
【0010】
しかし、特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、既存の遮音板の撤去の際に、既設の固定金具を容易に取り外すことはできず、作業性が悪いという問題があった。また、特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、下段の固定金具にフックの一方を引っ掛けて引き込む構成であるため、最下段の防音パネルを設置する際には使用できないという問題もあった。さらに、特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、大きいサイズの遮音パネルを取り外すために設計されたものであり、治具全体が大きく、かさばり持ち運ぶのが困難であるという問題もあった。それに加え、特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、梃子機構3の回転方向が限定されており、一対の固定金具の一方しか装着できず、回転方向が異なる固定金具脱着治具をそれぞれ現場まで持ち込む必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10-280335号公報
【特許文献2】特開2000-336766号公報
【特許文献3】特開2021-123956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、遮音パネルを支柱に固定する固定金具をハンマー等で叩かずに支柱とパネルとの間に脱着可能な固定金具脱着治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る固定金具脱着治具は、遮音壁の支柱と遮音パネルとの隙間に介装される固定金具を取り外し、又は引き込んで前記隙間に装着する固定金具脱着治具であって、棒材からなる引込棒と、この引込棒と揺動自在に連結された棒材からなるレバー棒と、を備え、前記引込棒の上端部に前記固定金具の折り返されたループ部分に差し込まれて前記固定金具を掛け止める掛け板が固着され、前記レバー棒の基端側には、前記遮音パネルの背面溝に嵌め込まれて反力を取る支え板が回転自在に軸支されていることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る固定金具脱着治具は、第1発明において、前記掛け板は、前記引込棒に両端部が突出するように取り付けられており、前記引込棒と前記レバー棒は、180度以上揺動可能に連結されていることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る固定金具脱着治具は、第2発明において、前記引込棒と前記レバー棒は、短冊状の外倒れ防止板を介して揺動自在に連結され、前記外倒れ防止板の前記引込棒からの突出長さは、前記掛け板の前記両端部の前記引込棒からの突出長さより長く設定されていることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る固定金具脱着治具は、第1発明ないし第3発明のいずれかにおいて、前記引込棒の背面には、作業時に誤って落下することを防止する引掛け金具が取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る固定金具設置方法は、遮音壁の支柱と遮音パネルとの隙間に固定金具を設置する固定金具設置方法であって、請求項1ないし4のいずれかに記載の固定金具脱着治具を前記遮音パネルの背面溝に装着し、前記レバー棒を引き上げることで前記引込棒に固着された前記掛け板を引き下げてそれに装着された固定金具を引き込んで設置することを特徴とする。
【0018】
第6発明に係る固定金具取外し方法は、既設の遮音壁の支柱と遮音パネルとの隙間に設置された既設の固定金具を取り外す固定金具取外し方法であって、請求項1ないし4のいずれかに記載の固定金具脱着治具を前記遮音パネルの背面溝に装着し、前記レバー棒を引き下げることで前記引込棒に固着された前記掛け板を押し上げてそれに装着された固定金具を押し上げて取り外すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明~第5発明によれば、固定金具を支柱と遮音パネルとの隙間にハンマー等で叩いて挿し込むことが不要となり、容易に短時間で固定金具を設置することができるだけでなく、衝撃音の発生を防止して、遮音壁の設置工事の騒音を低減することができる。
【0020】
特に、第2発明によれば、1つの固定金具脱着治具で左右いずれの固定金具も装着し又は取外すことができる。このため、左右一対の治具を持ち歩く必要がなくなる。
【0021】
特に、第3発明によれば、揺動動作において、支柱の外側フランジに沿って外倒れ防止板が摺動することで、揺動動作を安定させて、レバー棒を引き上げ又は引き下げる揺動動作で固定金具脱着治具全体が外倒れすることを防止することができる。
【0022】
特に、第4発明によれば、引掛け金具が取り付けられているので、作業員の手からレバー棒が離れてしまった場合でも、固定金具脱着治具全体が誤って落下して落下音が発生することを防止することができる。
【0023】
第6発明によれば、従来の固定金具引込み治具では、取り外すことができなかった既設の固定金具を容易に取り外すことができる。このため、既存の遮音パネルの撤去作業を容易且つ短時間で音を立てずに効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態に係る固定金具脱着治具を示す正面斜視図である。
図2図2は、同上の固定金具脱着治を示す背面斜視図である。
図3図3は、同上の固定金具脱着治具の掛け板に固定金具を装着した状態を示す部分拡大斜視図である。
図4図4は、固定金具脱着治具の設置状況を支柱を省略して示す設置状況説明図である。
図5図5は、遮音パネルと支柱のフランジとの間に固定金具を差し込む状況を示す同上の固定金具脱着治具の使用状況説明図である。
図6】、図6(a)は、遮音壁の正面側の斜め上方から固定金具脱着治具の固定金具付近を拡大して示す部分拡大図、図6(b)は、その反対側となる背面側の斜め上方から見た部分拡大図である。
図7図7は、同上の固定金具脱着治具の装着時の動作を示す背面斜視図である。
図8図8は、図7とは別角度の背面斜視図である。
図9図9は、遮音壁の一例を示す写真である。
図10図10は、図9の支柱付近を拡大して示す部分拡大写真である。
図11図11は、支柱に遮音パネルを固定金具で固定する状態を模式的に示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る固定金具脱着治具、固定金具設置方法、及び固定金具取外し方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
[固定金具脱着治具]
図1図8を用いて、本発明の実施形態に係る固定金具脱着治具について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る固定金具脱着治具1を示す正面斜視図であり、図2は、固定金具脱着治具1を示す背面斜視図である。図1図2に示すように、本実施形態に係る固定金具脱着治具1は、前述の固定金具10を掛け止める掛け板2と、この掛け板2を支持固定する引込棒3と、この引込棒3と揺動自在に連結されて梃子の原理を用いて引込棒3ごと掛け板2を引き下げ又は引き上げるレバー棒4と、このレバー棒4に接続されるとともに前記引込棒3の下端に軸支された外倒れ防止板5と、遮音パネルP1の背面溝PGに嵌め込まれて反力を取る支え板6など、から構成されている。なお、正面とは、遮音壁側となり使用時に道路内側に面した面を指している(以下同じ)。
【0027】
(掛け板)
図3は、固定金具脱着治具1の掛け板2に固定金具10を装着した状態を示す部分拡大斜視図である。図3に示すように、掛け板2は、帯鋼板からなる短冊状の鋼板であり、前述の固定金具10の折り返されたループ部分10aに差し込まれ、固定金具10を引っ掛けて掛け止める機能を有している。勿論、掛け板2は、装着する新設の又は取り替える既設の固定金具10に掛け止めて固定金具10を引き下げ又は引き上げることができる所定の強度を有する部材であれば、鋼板などの金属に限られず、他の素材から構成されていてもよいことは云うまでもない。
【0028】
この掛け板2は、図1図3に示すように、長手方向の中央部20が後述の引込棒3の上端部31にビス止めされて固定され、長手方向の両端部21が引込棒3の側面から突出するように取り付けられている。勿論、引込棒3への掛け板2の固定方法も、ビス止めに限られず、ボルト固定や溶接固定であってもよいことは云うまでもない。
【0029】
(引込棒)
引込棒3は、図1図3に示すように、各筒状の角形鋼管なる棒材であり、掛け板2を固定するとともに、上端部31に鋭利な金属端部から保護するための保護キャップ7が嵌着されている。勿論、この引込棒3も所定の強度を有する素材であれば、鋼管などの金属に限られず、他の素材から構成されていてもよいことは云うまでもない。
【0030】
なお、図2に示すように、引込棒3の背面には、作業時に固定金具脱着治具1が誤って落下することを防止する引掛け金具8が取り付けられている。この引掛け金具8は、作業員のベルトなど適切な箇所に連結されることで、作業員の手から後述のレバー棒4が離れてしまった場合でも、固定金具脱着治具1全体が誤って落下して落下音が発生することを防止することができる。
【0031】
(レバー棒)
レバー棒4は、引込棒3と同様に、各筒状の角形鋼管なる棒材であり、後述の支え板6に軸支された回転軸を中心に回転させる際に、その長さで梃子の原理を発揮させ、引込棒3の引き上げ、引き下げの力を小さくする機能を有している。
【0032】
図1図2に示すように、このレバー棒4の長手方向の一端で引込棒3と連結される基端部41には、後述の外倒れ防止板5がビス止め等で固着されて固定されており、引込棒3とレバー棒4とは、この外倒れ防止板5を介して後述の軸50で180度以上揺動自在に連結されている。このため、レバー棒4の長手方向の一端で引込棒3と連結されない先端部42を掴んで引き上げ又は引き下げることにより、基端部41で連結された引込棒3を引き下げ又は引き上げることができる構成となっている(図7図8も参照)。
【0033】
(外倒れ防止板)
外倒れ防止板5は、掛け板2と同様に、帯鋼板からなる短冊状の鋼板であり、長手方向の一端が前述のレバー棒4の基端部41に固着され、中央部で前述の引込棒3の下端部32の側面に、軸50で回転自在に軸支されている。この外倒れ防止板5は、長手方向の他端である先端51が前述の掛け板2の端部21の突出長さより長く設定されている。このため、外倒れ防止板5は、レバー棒4の揺動動作において、先端51が支柱H1の外側フランジの内側に差し込まれ、支柱H1の外側フランジに沿って摺動することで、揺動動作を安定させて、レバー棒4の揺動動作で固定金具脱着治具1全体が外倒れすることを防止する機能を有している。
【0034】
勿論、この外倒れ防止板5も、掛け板2と同様に、鋼板などの金属に限られず、他の素材から構成されていてもよいことは云うまでもない。
【0035】
(支え板)
支え板6は、断面コの字状のチャンネル材などの鋼材からなり、遮音パネルP1の背面溝PGに嵌り込む断面コの字の端部が外側に開いた断面台形状となっている。この支え板6は、遮音パネルP1の背面溝PGに嵌り込んで掛け止められることにより、レバー棒4の揺動動作の回転中心を固定する機能を有している。
【0036】
この支え板6は、図2に示すように、円筒状のスペーサー9を介して前述のレバー棒4の外倒れ防止板5が取り付けられた側の端部に軸60で回転自在に軸支されている。このため、レバー棒4の他端を引き上げ又は引き下げると、レバー棒4に連結されている外倒れ防止板5及び引込棒3が反対に引き下げ、又は引き上げられ、掛け板2に装着された固定金具10が装着又は取外せる仕組みとなっている。
【0037】
勿論、この支え板6も、掛け板2と同様に、鋼板などの金属に限られず、他の素材から構成されていてもよいことは云うまでもない。
【0038】
<固定金具設置方法(固定金具取外し方法)>
次に、図3図8を用いて、固定金具脱着治具1の使用方法である本発明の実施形態に係る固定金具取外し方法及び固定金具設置方法について説明する。先ず、固定金具設置方法について説明する。図4は、固定金具脱着治具1の設置状況を、支柱H1を省略して示す設置状況説明図である。また、図5は、遮音パネルP1と支柱H1のフランジとの間に、固定金具10を差し込む状況を示す固定金具脱着治具1の使用状況説明図である。そして、図6(a)は、遮音壁の正面側の斜め上方から固定金具脱着治具1の固定金具10付近を拡大して示す部分拡大図、図6(b)は、その反対側となる背面側の斜め上方から見た部分拡大図である。
【0039】
(固定金具)
最初に、図3図11を用いて簡単に固定金具10について説明する。図3図11に示すように、固定金具10は、所定厚さのステンレス鋼板から折り曲げ加工された部材であり、支柱H1のフランジと遮音パネルP1との間に、挿入されて鋼材の復元力で遮音パネルP1を押圧して支柱H1に固定する機能を有している。
【0040】
図3に示すように、この固定金具10は、ステンレス鋼板から折り返されたループ部分10aが形成されており、そのループ部分10aが支柱H1のフランジと遮音パネルP1との間に挿し込まれることで弾性変形して、その復元力で遮音パネルP1を押圧して支柱H1に固定する。
【0041】
本実施形態に係る固定金具設置方法では、先ず、取り付ける固定金具10の位置に応じて掛け板2の両端部21のいずれか一方に固定金具10のループ部分10aを差し込んで装着する。
【0042】
例えば、図5に示すように、背面側から見て遮音パネルP1の右側に固定金具10を装着する場合は、図3に示すように、掛け板2の両端部21の正面側から見て左側の端部21に固定金具10のループ部分10aを差し込んで装着する。一方、背面側から見て遮音パネルP1の右側に固定金具10を装着する場合は、図3に示す方向とは反対の掛け板2の端部21に装着する。
【0043】
このように、前述の固定金具脱着治具1は、図1図2で示したように、掛け板2が長手方向の両端部21が引込棒3の側面から突出するように取り付けられており、しかも、引込棒3とレバー棒4は、外倒れ防止板5を介して軸50で180度以上揺動自在に連結されている。このため、1つの固定金具脱着治具1で左右いずれの固定金具10も装着又は取外しが可能となっている。
【0044】
次に、本実施形態に係る固定金具設置方法では、図4図6に示すように、固定金具脱着治具1を遮音パネルP1の背面に装着する。具体的には、遮音パネルP1の背面溝PGに支え板6を嵌め込むとともに、遮音パネルP1と支柱H1のフランジとの間に固定金具10を装着した掛け板2及び外倒れ防止板5の先端51が差し込まれることにより装着される。
【0045】
図7は、固定金具脱着治具1の装着時の動作を示す背面斜視図であり、図8は、図7とは別角度の背面斜視図である。なお、図8は、外倒れ防止板5の先端51の動作を示すため支柱H1を省略している。次に、本実施形態に係る固定金具設置方法では、前述のように、固定金具脱着治具1が遮音パネルP1の背面溝PGに支え板6が嵌め込まれた状態で、図7図8に示すように、図の矢印方向にレバー棒4の先端部42を引き上げる。すると、支え板6を介して背面溝PGから反力を得ることができるため、レバー棒4の基端部41に軸支された軸60で連結された引込棒3が引き下げられることになる。また、引込棒3の上端部31に固着された掛け板2及びその端部21に装着された固定金具10が遮音パネルP1と支柱H1のフランジとの間に引き込まれて装着される。
【0046】
このとき、図8に示すように、外倒れ防止板5の先端51は、図の矢印方向に、軸60を中心に円弧を描くように支柱H1の外側フランジ内をこれに沿って摺動することとなる。このため、レバー棒4による回転揺動動作を安定させて、レバー棒4の揺動動作で固定金具脱着治具1全体が外倒れすることを防止することができる。
【0047】
<固定金具取外し方法>
次に、本発明の実施形態に係る固定金具取外し方法について説明する。本実施形態に係る固定金具取外し方法では、既設の遮音パネルP1に装着されている既設の固定金具10のループ部分10aに掛け板2の端部21を差し込んで装着する。そして、固定金具設置方法と同様に、既設の遮音パネルP1の背面溝PGに支え板6を嵌め込むとともに、遮音パネルP1と支柱H1のフランジとの間に外倒れ防止板5の先端51を差し込んで装着する。
【0048】
その後、固定金具脱着治具1が遮音パネルP1の背面溝PGに支え板6が嵌め込まれた状態で、図7図8の矢印と反対方向にレバー棒4の先端部42を引き下げる。すると、支え板6を介して背面溝PGから反力を得ることができるため、レバー棒4の基端部41に軸支された軸60で連結された引込棒3が引き上げられ、掛け板2の端部21に装着された固定金具10が遮音パネルP1と支柱H1のフランジとの間から押し上げられて取り外すことができる。
【0049】
このように、本実施形態に係る固定金具取外し方法によれば、従来の特許文献3に記載の固定金具引込み治具では、取り外すことができなかった既設の固定金具を前述の固定金具脱着治具1で容易に取り外すことができる。このため、既存の遮音パネルの撤去作業を容易且つ短時間で音を立てずに効率よく行うことができる。
【0050】
以上説明した本実施形態に係る固定金具脱着治具1及びそれを用いた固定金具設置方法によれば、固定金具10を支柱H1と遮音パネルP1との隙間にハンマー等で叩いて挿し込むことが不要となり、衝撃音の発生を防止して、遮音壁の設置工事の騒音を低減することができる。
【0051】
また、本発明の実施形態に係る固定金具取外し方法によれば、従来の特許文献3に記載の固定金具引込み治具では、取り外すことができなかった既設の固定金具を前述の固定金具脱着治具1で容易に効率よく取り外すことができる。
【0052】
また、従来の特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、下段の固定金具にフックの一方を引っ掛けて引き込む構成であるため、最下段の防音パネルに固定金具を設置する際には使用できないという問題があった。これに対して、本発明の実施形態に係る固定金具脱着治具1及びそれを用いた固定金具設置方法では、遮音パネルP1の背面溝PGに支え板6を嵌め込むことにより固定金具脱着治具1を装着する。このため、最下段の防音パネルに固定金具を設置する際にも固定金具脱着治具1で音を立てずに効率よく行うことができる。
【0053】
その上、特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、下段の遮音パネルを固定する固定金具に引っ掛けて上段の遮音パネルの固定金具を引き込む構成であったため、遮音パネルの高さ方向を超える大きいサイズの治具が必要であった。これに対して、固定金具脱着治具1は、前述のように、遮音パネルP1の背面溝PGに支え板6を嵌め込むことにより遮音パネルの自重から反力を得る構成であるため、遮音パネルP1の高さ方向の半分程度の大きさの治具とすることができる。このため、固定金具脱着治具1は、嵩張らず、持ち運ぶのが容易となっている。
【0054】
さらに、特許文献3に記載の固定金具引込み治具は、梃子機構の回転方向が限定されており、一対の固定金具の一方しか装着できなかった。そのため、回転方向が異なる固定金具脱着治具をそれぞれ現場まで持ち込む必要があった。これに対して、固定金具脱着治具1は、掛け板2が長手方向の両端部21が引込棒3の側面から突出するように取り付けられており、しかも、引込棒3とレバー棒4は、外倒れ防止板5を介して軸50で180度以上揺動自在に連結されている。このため、1つの固定金具脱着治具1で左右いずれの固定金具10も装着又は取外しが可能となっており、左右一対の治具を持ち歩く必要がなくなった。
【0055】
以上、本実施形態に係る固定金具脱着治具及びそれを用いた固定金具設置方法及び固定金具取外し方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0056】
1:固定金具脱着治具
2:掛け板
20:中央部
21:(両)端部
3:引込棒
31:上端部
32:下端部
4:レバー棒
41:基端部
42:先端部
5:外倒れ防止板
50:軸
51:先端
6:支え板
60:軸
7:保護キャップ
8:引掛け金具
9:スペーサー
10:固定金具
10a:ループ部分
11:上辺部
H1:支柱
P1:遮音パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11