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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093164
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20230627BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01L27/04 T
H01L27/04 G
H01L27/092 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208627
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢山 浩輔
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F038AV17
5F038BB05
5F038BG02
5F038BG03
5F038BG05
5F038BG09
5F038CA05
5F038CD02
5F038CD04
5F038CD16
5F038DF04
5F038DF08
5F038DT12
5F038DT19
5F038EZ01
5F038EZ06
5F038EZ20
5F048AB03
5F048AB04
5F048AC04
5F048BA16
5F048BB14
5F048BE02
5F048BE03
5F048BE09
5F048BF15
5F048BF16
5F048BF18
5F048BG13
(57)【要約】
【課題】低消費電力で基板バイアス電圧を検知することが可能な技術を提供する。
【解決手段】第1周波数(FCLKP)の第1クロック信号(CLKP)に基づいて昇圧電圧を出力する昇圧回路(CP1)と、第2周波数(FCLKN)の第2クロック信号(CLKN)に基づいて降圧電圧を出力する降圧回路(CP2)と、第1周波数と第2周波数とを比較し、予め規定した基準に従い前記第1周波数と第2周波数との比較結果(CMPOUT)を出力する論理回路ブロック(CL)と、を含む技術が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数の第1クロック信号に基づいて昇圧電圧を出力する昇圧回路と、
第2周波数の第2クロック信号に基づいて降圧電圧を出力する降圧回路と、
前記第1周波数と前記第2周波数とを比較し、予め規定した基準に従い前記第1周波数と前記第2周波数との比較結果を出力する論理回路ブロックと、
を含む、半導体装置。
【請求項2】
請求項1の半導体装置において、
前記第1周波数の前記第1クロック信号を出力する第1発振回路と、
前記第2周波数の前記第2クロック信号を出力する第2発振回路と、
を含む、半導体装置。
【請求項3】
請求項1の半導体装置において、
前記第1周波数の前記第1クロック信号を出力する第1発振回路と、
前記第1周波数の前記第1クロック信号をゲーティングして前記第2周波数の前記第2クロック信号を出力する第1ゲーティング回路と、を含む、半導体装置。
【請求項4】
請求項1の半導体装置において、
第1発振回路と、
前記第1発振回路の出力をゲーティングして前記第1周波数の前記第1クロック信号を出力する第1ゲーティング回路と、
前記第1発振回路の出力をゲーティングして前記第2周波数の前記第2クロック信号を出力する第2ゲーティング回路と、を含む、半導体装置。
【請求項5】
請求項2の半導体装置において、
前記昇圧回路の出力と前記降圧回路の出力とに間に設けられた抵抗素子を有する、半導体装置。
【請求項6】
請求項5の半導体装置において、
前記抵抗素子は、第1抵抗素子と第2抵抗素子と、を含み、
前記第2発振回路は、基準電圧と前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子との接続点の中間電圧との比較に基づいて、前記第2クロック信号の前記第2周波数を生成する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、SOTBを利用したMISFETを含む半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
SOTB(Silicon ON Thin Buried oxide)を利用したMISFETにより構成される半導体装置は、PチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBP)とNチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBN)とを発生させる基板バイアス発生回路を有する。この種の半導体装置の提案として、例えば、米国特許出願公開第2018/000568号明細書がある。
【0003】
PチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBP)やNチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBN)などの基板バイアス電圧が、正常な電圧か否かを検査することが必要な場合がある。例えば、1つの電圧を2つのコンパレータ(比較回路)を用いて検査することができる。この種の検査についての提案として、例えば、米国特許出願公開第2019/0310699号明細書がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/000568号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0310699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBP)とNチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBN)とを発生させる基板バイアス発生回路において、2つの基板バイアス電圧(VBP、VBN)を検知する場合には、4つのコンパレータが必要である。しかし、4つのコンパレータの消費電流の分だけ、半導体装置の消費電流が増加する。
【0006】
本開示の課題は、低消費電力で基板バイアス電圧を検知することが可能な技術を提供することにある。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0009】
一実施の形態によれば、
第1周波数(FCLKP)の第1クロック信号(CLKP)に基づいて昇圧電圧を出力する昇圧回路(CP1)と、
第2周波数(FCLKN)の第2クロック信号(CLKN)に基づいて降圧電圧を出力する降圧回路(CP2)と、
第1周波数と第2周波数とを比較し、予め規定した基準に従い前記第1周波数と第2周波数との比較結果(CMPOUT)を出力する論理回路ブロック(CL)と、を含む技術が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記一実施の形態によれば、低消費電力で基板バイアス電圧を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1にかかる基板バイアス発生回路を説明する図である。
図2図2は、図1のカウンタ論理回路ブロックCLの構成例を示す図である。
図3図3は、図2のカウンタ論理回路ブロックCLの動作を説明する図である。
図4図4は、SOTBを利用したMISFETの断面図である。
図5図5は、カウンタ論理回路ブロックCLの消費電流を説明する図である。
図6図6は、実施例1の応用例1に係る半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、図6の半導体装置の動作例を説明する図である。
図8図8は、実施例1の応用例2に係る半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図9図9は、図8の半導体装置の動作例を説明する図である。
図10図10は、発振回路の動作を説明する図である。
図11図11は、実施例2に係る基板バイアス発生回路の構成例を示す図である。
図12図12は、周波数FOSCと、第1周波数FCLKPと、第2周波数FCLKNとの関係を示す図である。
図13図13は、実施例3に係る基板バイアス発生回路の構成例を示す図である。
図14図14は、第1周波数FCLKPと、第2周波数FCLKNとの関係を示す図である。
図15図15は、実施例4に係る基板バイアス発生回路の構成例を示す図である。
図16図16は、実施例5に係る基板バイアス発生回路の構成例を示す図である。
図17図17は、図16の基板バイアス発生回路の特性を示す図である。
図18図18は、第1基板バイアス電圧の設定値に対する第2基板バイアス電圧の依存性を示す図である。
図19図19は、第1基板バイアス電圧から第2基板バイアス電圧へ流れる異常電流(リーク)が発生した場合を説明する図である。
図20図20は、第1基板バイアス電圧の端子パッドと第2基板バイアス電圧の端子パッドとのレイアウト配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【実施例0013】
図1は、実施例1にかかる基板バイアス発生回路を説明する図である。図2は、図1のカウンタ論理回路ブロックCLの構成例を示す図である。図3は、図2のカウンタ論理回路ブロックCLの動作を説明する図である。図4は、SOTBを利用したMISFETの断面図である。図5は、カウンタ論理回路ブロックCLの消費電流を説明する図である。
【0014】
図1において、基板バイアス発生回路BBGは、第1発振回路OSC1、第2発振回路OSC2と、昇圧回路である第1チャージポンプCP1と、降圧回路である第2チャージポンプCP2と、論理回路ブロックであるカウンタ論理回路ブロックCLと、を含む。
【0015】
第1発振回路OSC1は、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPを出力する。第2発振回路OSC2は、第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNを出力する。
【0016】
第1チャージポンプCP1は、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPに基づいて昇圧電圧である第1基板バイアス電圧VBPを出力する。第2チャージポンプCP2は、第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNに基づいて降圧電圧である第2基板バイアス電圧VBNを出力する。第1基板バイアス電圧VBPは、例えば、正の電圧である。第2基板バイアス電圧VBNは、例えば、負の電圧である。
【0017】
第1基板バイアス電圧VBPおよび第2基板バイアス電圧VBNは、半導体装置1内に設けられたマイクロコンローラユニットMCU、中央処理装置CPU、メモリ回路などの大規模論理回路(コアロジック回路とも言う)CLCを構成するPチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートとに選択的に供給される基板バイアス電圧である。基板バイアス電圧VBPはPチャネルMISFET2の基板バイアス電圧とされ、基板バイアス電圧VBNはNチャネルMISFET3の基板バイアス電圧とされる。PチャネルMISFET2のソースドレイン経路とNチャネルMISFET3のソースドレイン経路とは、第2電源電位VDD2と接地電位VSS(例えば、0V)との間に、直列に接続されている。このため、大規模論理回路CLCは第2電源電位VDD2の供給領域と言うことができる。一方、基板バイアス発生回路BBGは、第1電源電位VDD1(VDD1>VDD2)と接地電位VSSとが供給される。このため、基板バイアス発生回路BBGは、第1電源電位VDD2の供給領域と言うことができる。
【0018】
ここで、選択的とは、たとえば、大規模論理回路CLCの動作モードが通常動作モードとスタンバイ動作モードとを有する場合において、通常動作モードからスタンバイ動作モードへ移行した時に、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNとが選択的にPチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートとへそれぞれ供給されることである。これにより、PチャネルMISFET2とNチャネルMISFET3のそれぞれのしきい値電圧が、通常動作モード時のPチャネルMISFET2とNチャネルMISFET3のそれぞれのしきい値電圧と比較して、大きくなる。これにより、スタンバイ動作モード時における大規模論理回路CLCのリーク電流を低減することができる。半導体装置1が電池などからの電源電位によって駆動される場合において、半導体装置1のリーク電流が低減できるので、電池などの電源電位を長時間利用できるという効果がある。
【0019】
図4に示すように、PチャネルMISFET2とNチャネルMISFET3のおのおのは、例えば、SOTB(Silicon ON Thin Buried oxide)を利用したMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)とすることができる。図2には、PチャネルMISFET2とNチャネルMISFET3の断面図が示されている。図2において、PチャネルMISFET2とNチャネルMISFET3は、SOTBトランジスタとしてp型SOTBトランジスタPTとn型SOTBトランジスタNTとして示される。SOTBトランジスタには、単結晶シリコンなどのp型基板SU上に深いn型ウェル領域DNWが形成されている。
【0020】
p型SOTBトランジスタPTにおいて、n型ウェル領域DNW上にn型ウェル領域NWが形成される。n型ウェル領域NW上に絶縁膜BOXが形成される。絶縁膜BOXを挟むように、n型ウェル領域NW上に半導体層SL1が形成される。半導体層SL1内には、p型SOTBトランジスタPTのソース領域となるp+型領域SR1と、ドレイン領域となるp+型領域DR1とが形成される。また、半導体層SL1内には、p+型領域SR1とp+型領域DR1との間には実質的に不純物を含有していないチャネル領域CH1が形成される。チャネル領域CH1の不純物濃度は、例えば、3×1017cm-3以下となっている。p型SOTBトランジスタPTのゲート電極G1は、ゲート絶縁膜DL1を介して、チャネル領域CH1上に形成される。
【0021】
n型SOTBトランジスタNTにおいて、n型ウェル領域DNW上にp型ウェル領域PWが形成される。p型ウェル領域PW上に絶縁膜BOXが形成される。絶縁膜BOXを挟むように、p型ウェル領域PW上に半導体層SL2が形成される。半導体層SL2内には、n型SOTBトランジスタNTのソース領域となるn+型領域SR2と、ドレイン領域となるn+型領域DR2とが形成される。また、半導体層SL2内には、n+型領域SR2とn+型領域DR2との間には実質的に不純物を含有していないチャネル領域CH2が形成される。チャネル領域CH2の不純物濃度は、3×1017cm-3以下となっている。n型SOTBトランジスタNTのゲート電極G2は、ゲート絶縁膜DL2を介して、チャネル領域CH2上に形成される。
【0022】
また、絶縁膜BOXの厚さは、例えば10nm程度である。p型SOTBトランジスタPTにおいて、n型ウェル領域NW上には、基板バイアス生成回路BBGが第1基板バイアス電圧(バックバイアス電圧とも言う)VBPをn型ウェル領域NWへ供給するためのn+型領域NRが形成される。n型SOTBトランジスタNTにおいて、p型ウェル領域PW上には、基板バイアス生成回路BBGが第2基板バイアス電圧(バックバイアス電圧とも言う)VBNをp型ウェル領域PWへ供給するためのp+型領域PRが形成される。また、p型SOTBトランジスタPT、n型SOTBトランジスタNT、p+型領域PR、及びn+型領域NRは、素子分離膜STIにより分離されている。
【0023】
また、n型SOTBトランジスタNTの場合は、バックバイアス電圧VBNを負電圧にすることで、閾値電圧の絶対値が大きくなり、リーク電流を小さくすることが可能である。一方、p型SOTBトランジスタPTの場合は、バックバイアス電圧VBPを正電圧にすることで、閾値電圧の絶対値が大きくなり、リーク電流を小さくすることが可能である。リーク電流はバックバイアス電圧の変化に対して、指数関数的に変化する。
【0024】
したがって、バックバイアス電圧VBN及びVBPによって、p型SOTBトランジスタPT及びn型SOTBトランジスタNTの閾値電圧は制御され、リーク電流が抑制される。その結果、p型SOTBトランジスタPT及びn型SOTBトランジスタNTを有する大規模論理回路CLCの消費電力を低減することが出来る。
【0025】
p型SOTBトランジスタPT及びn型SOTBトランジスタNTでは、絶縁膜BOX上に形成されたチャネル層の膜厚を薄くすることによって短チャネル効果を抑制することができる。また、絶縁膜BOX下のN型ウェル領域NWやP型ウェル領域PWの不純物濃度を調整することによって閾値電圧を制御できる。このため、チャネル層の不純物を低濃度化することによって閾値電圧のばらつきを抑制することができる。また、SOTBトランジスタでは、薄い絶縁膜BOXを利用して基板からの電圧印加(つまり、第1基板バイアス電圧VBPおよび第2基板バイアス電圧VBNの印加)によって個々のトランジスタの閾値電圧を調整することができる。つまり、基板バイアス電圧VBPは絶縁膜BOX下のN型ウェル領域NWのウェル電位VNWとされ、基板バイアス電圧VBNは絶縁膜BOX下のP型ウェル領域PWのウェル電位VPWとされる。この場合、薄い絶縁膜BOXが設けられていることによって、ソースまたはドレインとバルク基板との間の接合リーク電流はほとんど問題にならないという利点がある。
【0026】
カウンタ論理回路ブロックCLは、第1周波数FCLKPと第2周波数FCLKNを比較し、予め規定した基準に従い第1周波数FCLKPと第2周波数FCLKNとの比較結果CMPOUTを出力する。
【0027】
第1発振回路OSC1は、第1チャージポンプCP1へ供給する第1クロック信号CLKPを生成し、その第1クロック信号CLKPの第1周波数FCLKPは第1基板バイアス電圧VBPの電圧値がターゲットの電圧になるように変化する。
【0028】
第2発振回路OSC2は第2チャージポンプCP2へ供給する第2クロック信号CLKNを生成し、その第2クロック信号CLKNの第2周波数FCLKNは第2基板バイアス電圧VBNの電圧値がターゲットの電圧になるように変化する。
【0029】
この2つのクロック信号CLKP、CLKNをカウンタ論理回路ブロックCL内のカウンタでカウントする。カウンタ論理回路ブロックCLは、カウント値が規定範囲内であるとき、比較結果CMPOUTを、例えば、ハイレベルH(CMPOUT=H)とする。カウンタ論理回路ブロックCLは、カウント値が規定範囲外であるとき、比較結果CMPOUTを、例えば、ロウレベルL(CMPOUT=L)とする。比較結果CMPOUTは、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNのそれぞれの電圧値は正常であるか異常であるかを検知する検知信号として用いることが出来る。
【0030】
比較結果CMPOUTは、例えば、システム制御論理回路SLに供給される。システム制御論理回路SLは、比較結果CMPOUTの値(たとえば、ハイレベルH)に基づいて、第1基板バイアス電圧VBPのN型ウェル領域NWへの印加および第2基板バイアス電圧VBNのP型ウェル領域PWへの印加をさせるために、制御信号を発生することができる。システム制御論理回路SLは、比較結果CMPOUTの値(たとえば、ロウレベルL)に基づいて、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNが異常であること通知する制御信号を発生することができる。
【0031】
次に、図2および図3を用いて、図1のカウンタ論理回路ブロックCLの構成例およびの動作を説明する。図3において、tは時間を示す。
【0032】
カウンタ論理回路ブロックCLは、リセット端子付きのD-FF(D型フリップフロップ)20~30と、AND回路31等により構成されたカウンタ回路を含む。D-FF20~23において、各々D-FFのQ端子とD端子とは、インバータ回路により結合されて、Q端子の反転信号がD端子に入力されるように構成されている。D-FF20のクロック端子には、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPが入力されるように接続されている。D-FF21、22、23の各クロック端子には前段のD-FF20、21、22のQ端子の信号が入力されるように接続されている。D-FF20~23のリセット端子には、第1リセット信号RST1が入力されるように構成されている。D-FF23のG端子の信号は、第2リセット信号RST2とされている。D-FF23のD端子の信号がFCLK_8信号とされている。
【0033】
D-FF24~28において、各々D-FFのQ端子とD端子とは、インバータ回路IVにより結合されて、Q端子の反転信号がD端子に入力されるように構成されている。D-FF24のクロック端子には、第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNが入力されるように接続されている。D-FF25、26、27、28の各クロック端子には前段のD-FF24、25、26、27のQ端子の信号が入力されるように接続されている。D-FF20~28のリセット端子には、第2リセット信号RST2が入力されるように接続されている。
【0034】
D-FF29は、D-FF26のD端子に接続され、信号VCMPLを入力されるクロック端子と、第2リセット信号RST2を入力されるリセット端子と、を有する。D-FF29のQ端子は、AND回路31の第1入力に接続される。D-FF28のQ端子は、信号VCMPHとして、AND回路31の第2入力に接続される。D-FF29のQ端子は、4カウント目でL→Hへ変化するように動作し、D-FF28のQ端子は16カウント目でL→Hへ変化するように動作する。
【0035】
AND回路31の出力は、D-FF30のD端子に接続される。D-FF30のリセット端子には、第1リセット信号RST1が入力される。D-FF30のクロック端子には、インバータ回路を介して第2リセット信号RST2の反転信号が入力される。D-FF30のQ端子は、比較結果CMPOUTの信号とされる。
【0036】
図3に示すように、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPの8カウント期間(FCLK_8信号のハイレベルHの期間)に第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNが4~16(4個~16個のパルス)の場合に、比較結果CMPOUTの値がハイレベルH(CMPOUT=H)を出力する。なお、図3において、第2リセット信号RST2のハイレベルHの期間は比較期間TCMPとされ、第2リセット信号RST2のロウレベルHの期間はリセット期間TRSTとされている。
【0037】
図5を用いて、カウンタ論理回路ブロックCLの消費電流を説明する。図5において、縦軸は周波数(Freq)であり、横軸は時間(t)を示す。実線で示される周波数FVBPは、第1発振回路OSC1の発振周波数の変化であり、破線で示される周波数FVBNは第2発振回路OSC2の発振周波数の変化である。周波数FVBP、FVBNは、カウンタ論理回路ブロックCLによりカウントされる。図5に示すように、カウンタ論理回路ブロックCLは、第1チャージポンプCP1、第2チャージポンプCP2のチャージ期間中は高速(数MHz)で動作する。チャージが完了して第1チャージポンプCP1、第2チャージポンプCP2の発生する電圧(VBP、VBN)が安定すると、カウンタ論理回路ブロックCLは、数十kHzの動作となる。そのため、カウンタ論理回路ブロックCLの消費電流は無視できる程度と考えることができる。このことは、32kHzのクロックをカウントするカウント回路の消費電流が3nA程度であることからも理解できる。チャージが完了した時の周波数FVBP、FVBNの関係は、例えば、FVBP/FVBN≒A、(ここで、Aは所定の定数)のような一定の関係とされている。
【0038】
実施例1によれば、PチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBP)とNチャネルMISFET用の基板バイアス電圧(VBN)とを発生させる基板バイアス発生回路BBGにおいて、2つの基板バイアス電圧(VBP、VBN)を検知する場合、4つのコンパレータを利用することなく、カウンタ論理回路ブロックCLによって、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNのそれぞれの電圧値は正常であるか異常であるかを検知することができる。つまり、半導体装置1の消費電流を増加させることなく、低消費電力で基板バイアス電圧(VBP、VBN)を検知することができる。
【0039】
(実施例1の応用例1)
図6は、実施例1の応用例1に係る半導体装置1aの構成例を示すブロック図である。図7は、図6の半導体装置1aの動作例を説明する図である。
【0040】
図6の半導体装置1aが、図1の半導体装置1と異なる点について主に説明する。
【0041】
1)基板バイアス発生回路BBGにおいて、第1チャージポンプCP1の出力と接地電位VSSと間に、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2とが直列に接続されている。第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2との接続点(中間点)の電位VFBNは第1発振回路OSC1に供給されるように構成されている。第1発振回路OSC1の発振周波数(第1周波数FCLKP)は、参照電圧VFERと電位VFBNとの差電圧に基づいて、決定されることになる。電位VFBNは、第1チャージポンプCP1の出力電圧を、第1抵抗素子R1と第2抵抗素子R2とにより分圧した電位である。
【0042】
2)基板バイアス発生回路BBGにおいて、第1チャージポンプCP1の出力と第2チャージポンプCP2の出力との間に、第3抵抗素子R3と第4抵抗素子R4とが直列に接続されている。第3抵抗素子R3と第4抵抗素子R4との接続点(中間点)の電位VFBPは第2発振回路OSC2に供給されるように構成されている。第2発振回路OSC2の発振周波数(第2周波数FCLKN)は、参照電圧VFERと電位VFBPとの差電圧に基づいて、決定されることになる。電位VFBPは、第1チャージポンプCP1の出力電圧と第2チャージポンプCP2の出力電圧を、第3抵抗素子R3と第4抵抗素子R4とにより分圧した電位である。
【0043】
3)半導体装置1aは、基板バイアス発生回路BBGと大規模論理回路(コアロジック回路とも言う)CLCを構成するPチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートとの間に、スイッチ回路SWCが設けられる。スイッチ回路SWCは、PチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートに供給する基板バイアス電圧を選択するように構成されている。半導体装置1a(または、大規模論理回路CLC)が、例えば、3つの動作モード(通常動作モード、スタンバイ動作モード、ブースト動作モード)、を有するものとする。なお、ブースト動作モードは設けなくでも良い。
【0044】
スタンバイ動作モードでは、スイッチ回路SWCの第2スイッチ素子SW2が、例えば、制御信号CNT2のハイレベル(選択レベル)によりオン状態とされる。なお、この時、スイッチ回路SWCの第1スイッチ素子SW1は、例えば、制御信号CNT1のロウレベル(非選択レベル)によりオフ状態にされており、スイッチ回路SWCの第3スイッチ素子SW3は、例えば、制御信号CNT3のロウレベル(非選択レベル)によりオフ状態にされている。これにより、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNとが選択的にPチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートとへそれぞれ供給される。
【0045】
通常動作モードでは、第1スイッチ素子SW1が、例えば、制御信号CNT1のハイレベル(選択レベル)によりオン状態とされる。なお、この時、第2スイッチ素子SW2は、例えば、制御信号CNT2のロウレベル(非選択レベル)によりオフ状態にされており、第3スイッチ素子SW3は、例えば、制御信号CNT3のロウレベル(非選択レベル)によりオフ状態にされている。これにより、電源電位VDD2と接地電位VSSとが選択的にPチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートとへそれぞれ供給される。通常動作モードにおけるPチャネルMISFET2のしきい値電圧とNチャネルMISFET3のしきい値電圧は、スタンバイ動作モードにおけるPチャネルMISFET2のしきい値電圧とNチャネルMISFET3のしきい値電圧より、小さくされる。
【0046】
ブースト動作モードでは、第3スイッチ素子SW3が、例えば、制御信号CNT3のハイレベル(選択レベル)によりオン状態とされる。なお、この時、第1スイッチ素子SW1は、例えば、制御信号CNT1のロウレベル(非選択レベル)によりオフ状態にされており、第2スイッチ素子SW2は、例えば、制御信号CNT2のロウレベル(非選択レベル)によりオフ状態にされている。これにより、これにより、第2基板バイアス電圧VBNと第1基板バイアス電圧VBPとが選択的にPチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートとへそれぞれ供給される。つまり、ブースト動作モードでは、PチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートはフォワードバイアスとされて、PチャネルMISFET2のしきい値電圧とNチャネルMISFET3のしきい値電圧は、通常動作モードにおけるPチャネルMISFET2のしきい値電圧とNチャネルMISFET3のしきい値電圧より、小さくされる。ブースト動作モードは、動作速度を重視した動作モードである。
【0047】
4)半導体装置1aには、パワー管理回路(パワーマネジメントユニットとも言う)PMUが設けられている。システム論理回路SLは、パワー管理回路(パワーマネジメントユニットとも言う)PMUからの信号に基づいて、制御信号CNT1,CNT2,CNT3の信号レベル(ハイレベルおよびロウレベル)を制御することができる。パワー管理回路PMUは、大規模論理回路CLCの動作モードを、通常動作モード、スタンバイ動作モードおよびブースト動作モードから選択できる。
【0048】
5)システム論理回路SLは、パワー管理回路PMUから供給されるパワーオンリセット信号PORに基づいて、基板バイアス発生回路BBGの起動信号VBB_ENを生成し、生成した起動信号VBB_ENを基板バイアス発生回路BBGへ供給する。基板バイアス発生回路BBGは、起動信号VBB_ENに基づいて、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNの生成を開始する構成とされている。
【0049】
6)システム論理回路SLは、基板バイアス発生回路BBGからのハイレベルHの比較結果CMPOUTに基づいて、制御信号CNT1,CNT2,CNT3の生成、および、スイッチ回路SWCの制御を行う。ハイレベルHの比較結果CMPOUTは、基板バイアス発生回路BBGのセットアップ完了信号と見なすことも可能である。
【0050】
次に、図7を用いて、半導体装置1aの動作例を説明する。
【0051】
パワー管理回路PMUから供給されるパワーオンリセット信号PORがハイレベルからロウレベルに変化すると、システム論理回路SLは、基板バイアス発生回路BBGの起動信号VBB_ENをロウレベルからハイレベルへ変化させる。
【0052】
基板バイアス発生回路BBGは、ハイレベルの起動信号VBB_ENに基づいて、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNの生成を開始する。
【0053】
周波数FVBPは第1発振回路OSC1の発振周波数FCLKPの変化であり、周波数FVBNは第2発振回路OSC2の発振周波数FCLKNの変化である。周波数FVBP、FVBNは、カウンタ論理回路ブロックCLによりカウントされる。カウンタ論理回路ブロックCLは、第1チャージポンプCP1、第2チャージポンプCP2のチャージ期間中は高速(数MHz)で動作する。チャージが完了して第1チャージポンプCP1、第2チャージポンプCP2の発生する電圧(VBP、VBN)が安定すると、カウンタ論理回路ブロックCLは、数十kHzの動作となる。
【0054】
第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPの8カウント期間(FCLK_8信号のハイレベルHの期間)に第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNが4~16(4個~16個のパルス)の場合(つまり、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNのそれぞれの電圧値は正常である場合)に、比較結果CMPOUTの値がロウレベルLからハイレベルH(CMPOUT=H)へ変化する。
【0055】
この例では、起動信号VBB_ENのハイレベルへ変化から比較結果CMPOUTのハイレベルHへ変化までの時間(基板バイアス発生回路BBGの起動からチャージ完了までの時間、または、電圧(VBP、VBN)が安定するまでの時間)は、寄生容量CEXTの値に依存して、40ms-300msとされている。
【0056】
そして、比較結果CMPOUTの値がロウレベルLからハイレベルH(CMPOUT=H)への変化に応答して、制御信号CNT2がロウレベルからハイレベルへ変化する。これにより、大規模論理回路CLCを構成するPチャネルMISFET2の基板ゲートとNチャネルMISFET3の基板ゲートに、電圧(VBP、VBN)が供給される。
【0057】
(実施例1の応用例2)
図8は、実施例1の応用例2に係る半導体装置1bの構成例を示すブロック図である。図9は、図8の半導体装置1bの動作例を説明する図である。
【0058】
図8の半導体装置1bが、図6の半導体装置1aと異なる点を主に説明する。
【0059】
1)第2抵抗素子R2が可変抵抗素子により構成されており、システム論理回路SLから出力されるトリム信号(トリミング信号とも言う)TRIMのコード値に基づいて、第2抵抗素子R2の値が決定できるように構成されている。
【0060】
2)第1チャージポンプCP1の出力のノードN1と第2チャージポンプCP2の出力のノードN2とのそれぞれには、スイッチ素子SW4を介して抵抗素子(シャント抵抗素子)RSHが設けられている。スイッチ素子SW4は、システム論理回路SLから出力される制御信号CNT4により制御される。スイッチ素子SW4は、例えば、ブースト動作モード(速度重視の動作モード)から通常動作モード(中速度でリーク電流抑制できる動作モード)へ遷移する場合、一時的にオン状態とされるように、その動作を制御される。
【0061】
次に、図9を用いて、半導体装置1bの動作例を説明する。ここでは、半導体装置1bの動作モードが、ブースト動作モードから通常動作モードへ遷移する場合を動作例として説明する。
【0062】
ブースト動作モードにおいて、第2抵抗素子R2は、システム論理回路SLから出力されるトリム信号TRIMのコード値(コード1)による抵抗値に設定されているものとする。
【0063】
ブースト動作モードから通常動作モードへ遷移させるため、システム論理回路SLは、トリム信号TRIMのコード値をコード1からコード2へ変更する。これにより、第1発振回路OSC1および第2発振回路OSC2は動作を停止し、第1発振回路OSC1の周波数FVBPおよび第2発振回路OSC2の周波数FVBNは、一旦、0Hzとなる。
【0064】
システム論理回路SLは、また、制御信号CNT4をハイレベルとして、スイッチ素子SW4をオン状態にさせる。これにより、第1チャージポンプCP1、第2チャージポンプCP2の出力電位VBP,VBNは0Vの方向へ変化する。ここで、ハイレベルHの比較結果CMPOUTは、第1発振回路OSC1の周波数FVBPおよび第2発振回路OSC2の周波数FVBNが0Hzとなっても、第1発振回路OSC1および第2発振回路OSC2の発振動作が再開されるまで、比較結果CMPOUTのレベルを更新しない様にする。
【0065】
第1発振回路OSC1および第2発振回路OSC2は、トリム信号TRIMのコード値(ード2)で指定された第2抵抗素子R2の抵抗値により決定される電圧以下となると、発振動作を再開する。第1発振回路OSC1および第2発振回路OSC2の発振動作が再開されると、比較結果CMPOUTのレベルがハイレベルHからロウレベルLへ変化する。これに伴い、システム論理回路SLは、制御信号CNT4をロウレベルとして、スイッチ素子SW4をオフ状態にさせる。
【0066】
周波数FVBP、FVBNは、カウンタ論理回路ブロックCLによりカウントされる。カウンタ論理回路ブロックCLは、第1チャージポンプCP1、第2チャージポンプCP2のチャージ期間中は高速(数MHz)で動作する。チャージが完了して第1チャージポンプCP1、第2チャージポンプCP2の発生する電圧(VBP、VBN)が安定すると、カウンタ論理回路ブロックCLは、数十kHzの動作となる。
【0067】
第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPの8カウント期間(FCLK_8信号のハイレベルHの期間)に第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNが4~16(4個~16個のパルス)の場合(つまり、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNのそれぞれの電圧値は正常である場合)に、比較結果CMPOUTの値がロウレベルLからハイレベルH(CMPOUT=H)へ変化する。これにより、半導体装置1bの動作モードが、ブースト動作モードから通常動作モードへ遷移する。
【0068】
この様に、ブースト動作モードは、大規模論理回路CLCを構成するPチャネルMISFET2のしきい値電圧とNチャネルMISFET3のしきい値電圧を小さく下げて高速化するため、高いFoard bias(FB)に設定する。このとき、高速動作を必要としない状態(ブースト動作モード以外の通常動作モードやスタンバイ動作モード)ではリーク電流を抑えるためFoard bias(FB)の電圧を下げる必要があり、シャントスイッチ(SW4)の制御タイミング含めて、判断が可能である。したがって、動作モードの遷移を高速に行うために、本実施例は有効である。
【0069】
上記実施例1では、基板バイアス電圧(VBP、VBN)の異常電圧および異常電流の両方を検知し、機能不良の前にアラームを出すことが出来る。異常電流の例としては、例えば、絶縁膜BOXが破壊した場合、基板バイアス電圧(VBP、VBN)のどちらかの配線(外部出力した場合はその端子など)に異物が付着し、マイクロコンローラユニットMCUの消費電流仕様を超え、バッテリー駆動で保証している期間を下回ってしまう場合などである。基板バイアス電圧(VBP、VBN)の両方にリークが発生した場合、リーク量に差があれば検出可能である。
【0070】
絶縁膜BOXの破壊によるPチャネルMISFET2とNチャネルMISFET3の動作不良の有無の検出することができる。また、機能不良に陥る前にアラームを出すことができる。これにより、IoT(Internet of Things)分野のエッジ端末などでアラームをホストに送信することができる。
【0071】
コンパレータのミスマッチなどでオフセット電圧を確保する必要があり、検知する電圧の不感帯が大きい(例えば、±30mV差)。電源電圧が低電圧になるに従い、更に不感帯を大きくする必要があり、要求される電圧精度を満たせない場合がある。一方、本実施例では、フィードバックに使用する電圧を周波数に変換する回路(つまり、第1発振回路OSC1,第2発振回路OSC2)は共通のため、ミスマッチは無視できる。
【0072】
図10は、発振回路(OSC1,OSC2)の動作を説明する図である。図10において、縦軸は周波数(Freq)を示し、横軸が入力電位差を示す。図10に示される様に、傾きKvcoは高ゲインが可能で、検知レベルの不感帯を±1mV以下にすることが可能である。
【0073】
発振回路(OSC1,OSC2)の入力差で周波数が決まるため、第1基板バイアス電圧VBPおよび第2基板バイアス電圧VBNの設定電圧の高低の影響を受けない。本実施例では以下の優位性があり、第1基板バイアス電圧VBPおよび第2基板バイアス電圧VBNの設定電圧の高低に依存せず、カウンタ論理回路ブロックCLを検知回路として使用できる。
【0074】
1)フィードバックする発振回路(OSC1,OSC2)が電位差を周波数に変換し、変換した周波数を検知回路(カウンタ論理回路ブロックCL)で使用するため、コンパレータの様なミスマッチが無い。
【0075】
2)発振回路(OSC1,OSC2)の入力の電位差は、1/Kvco倍されるため、不感帯が小さい。不感帯は、±1mV以下にできる。
【0076】
3)発振回路(OSC1,OSC2)の周波数は(I=C×V×Freq)で決まり、容量Cと電圧Vのばらつきは一般的に±20%程度のため、周波数のばらつきは小さい。
【0077】
4)第1基板バイアス電圧VBPおよび第2基板バイアス電圧VBNのチャージ完了は、数μsで検知することが出来る。
【実施例0078】
図11は、実施例2に係る基板バイアス発生回路BBG2の構成例を示す図である。図12は、周波数FOSCと、第1周波数FCLKPと、第2周波数FCLKNとの関係を示す図である。
【0079】
図1に示す実施例1では2個の発振回路(OSC1,OSC2)を利用した構成であったが、図11に示すように、実施例2の基板バイアス発生回路BBG2では、1個の発振回路OSC1とした構成例である。このため、昇圧回路である第1チャージポンプCP1の前段と、降圧回路である第2チャージポンプCP2の前段とに、発振回路OSC1からの発振する周波数FOSCのクロック信号CLKをゲーティング(gating)して止める機能を持つ第1ゲーティング回路(第1ゲート回路)GT1,第2ゲーティング回路(第2ゲート回路)GT2をそれぞれ設ける。第1ゲーティング回路GT1は、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPを出力する。第2ゲーティング回路GT2は、第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNを出力する。
【0080】
図12には、発振回路OSC1の発振するクロック信号CLKの周波数FOSCと、第1ゲーティング回路GT1の出力する第1クロック信号CLKPの第1周波数FCLKPと、第2ゲーティング回路GT2の出力する第2クロック信号CLKNの第2周波数FCLKNとの関係が示される。第1ゲーティング回路GT1は、この例では、周波数FOSCの連続する4個のクロックの内、最初の2個(1番目と2番目)のクロックを通過させ、後の2個(3番目と4番目)のクロックを通過させないようにゲーティングを行うことで、第1周波数FCLKPを生成する。第2ゲーティング回路GT2は、この例では、周波数FOSCの連続する4個のクロックの内、最初の1個(1番目)のクロックと最後の1個(4番目)のクロックとを通過させ、最初の1個(1番目)のクロックと最後の1個(4番目)の間の2個(2番目と3番目)のクロックを通過させないようにゲーティングを行うことで、第2周波数FCLKNを生成する。
【0081】
実施例2によれば、基板バイアス発生回路BBG2内に設ける発振回路の数を1つにすることが出来るという効果がある。
【実施例0082】
図13は、実施例3に係る基板バイアス発生回路BBG3の構成例を示す図である。図14は、第1周波数FCLKPと、第2周波数FCLKNとの関係を示す図である。
【0083】
実施例3では、実施例2の基板バイアス発生回路BBG2の構成から、さらに、1つのゲーティング回路を削除した、基板バイアス発生回路BBG3の構成例である。第2周波数FCLKNに必要なクロックが第1周波数FCLKPより低いことを利用し、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPをゲーティングして、止める機能を持つ第2ゲーティング回路(第2ゲート回路)GT2を入れること、発振回路は1つにすることが出来る。
【0084】
第1発振回路OSC1は、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPを発生する。第2ゲーティング回路GT2は、第2ゲーティング回路GT2は、第1周波数FCLKPの第1クロック信号CLKPをゲーティングして、第2周波数FCLKNの第2クロック信号CLKNを出力する。
【0085】
図14には、発振回路OSC1の発振する第1クロック信号CLKPの第1周波数FCLKPと、第2ゲーティング回路GT2の出力する第2クロック信号CLKNの第2周波数FCLKNとの関係が示される。第2ゲーティング回路GT2は、この例では、第1周波数FCLKPの連続する5個のクロックの内、最初の4個(1番目、2番目、3番目、4番目)のクロックを通過させ、後の1個(5番目)のクロックを通過させないようにゲーティングを行うことで、第2周波数FCLKNを生成する。
【0086】
実施例3によれば、基板バイアス発生回路BBG3内に設ける発振回路の数を1つにし、また、ゲーティング回路の数も1つにすることが出来るという効果がある。
【実施例0087】
図15は、実施例4に係る基板バイアス発生回路BBG4の構成例を示す図である。
【0088】
実施例4の基板バイアス発生回路BBG4では、実施例1~3の第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNとの間に、抵抗素子R5を設けた構成例である。つまり、第1チャージポンプCP1の出力(または、第1チャージポンプCP1の出力端子に接続された第1出力信号線)と第2チャージポンプCP2の出力(または第2チャージポンプCP2の出力端子に接続された第2出力信号線)との間に、抵抗素子R5が接続されている。
【0089】
低温などのリークが極めて小さい環境では、昇降圧回路である第1チャージポンプCP1や第2チャージポンプCP2の回路内のリーク電流が支配的となり、IVBP/IVBN≒A>1の関係が保てない可能性が出てくる。その発生を抑制するため、第1基板バイアス電圧VBPと第2基板バイアス電圧VBNとの間に抵抗素子R5を設け、IVBP/IVBNの最低電流を設けることが出来る。ここで、IVBPは、第1チャージポンプCP1の出力からPチャネルMISFET2の基板ゲート側に流れる電流である。IVBNは、第2チャージポンプCP2の出力からNチャネルMISFET3の基板ゲート側に流れる電流である。
【実施例0090】
図16は、実施例5に係る基板バイアス発生回路BBG5の構成例を示す図である。図17は、図16の基板バイアス発生回路BBG5の特性を示す図である。図18は、第1基板バイアス電圧VBPの設定値に対する第2基板バイアス電圧VBNの依存性を示す図である。図19は、第1基板バイアス電圧VBPから第2基板バイアス電圧VBNへ流れる異常電流(リーク)が発生した場合を説明する図である。図20は、第1基板バイアス電圧VBPの端子パッドと第2基板バイアス電圧VBNの端子パッドとのレイアウト配置を説明する図である。
【0091】
図16に示すように、実施例5に係る基板バイアス発生回路BBG5では、実施例4の抵抗素子R5が抵抗素子R3と抵抗素子R4とに変更されている。そして、基板バイアス発生回路BBG5では、実施例1、4の第2発振回路OSC2のフィードバック制御に用いる電圧(VFBN)が抵抗素子R3と抵抗素子R4との中間電圧Viから取り出した構成である。
【0092】
一般的に、第2基板バイアス電圧VBNは負電位になるため、抵抗素子R3と抵抗素子R4とにより生成した中間電圧Vi(VFBN)と、基準電圧VREFを第2発振回路OSC2により比較することで、第2基板バイアス電圧VBNの設定電圧とすることが出来る。
【0093】
実施例5の構成にすることで、第2基板バイアス電圧VBNは第1基板バイアス電圧VBPに依存する特性となる(式1参照)。
【0094】
VBN=VBP-((R3+R4)/R3)×(VBP-VREF) 式1
図17に示すように、この特性により、第2基板バイアス電圧VBNは降圧側の第2チャージポンプCP2の能力に依らず、第1基板バイアス電圧VBPのチャージ開始時間が遅れ、かつ、チャージ完了のタイミングも遅れる動きをする。そのため、遷移時に、誤って周波数の比が規定範囲内に入ることを防止することが出来る。
【0095】
また、図18に示すように、この特性を活用し、第1基板バイアス電圧VBPの側のターゲット電圧の設定値を変えることで、第2基板バイアス電圧VBNを連動して変化させることが出来る。
【0096】
図19に示すように、異常検知する際、第1基板バイアス電圧VBPから第2基板バイアス電圧VBNへ流れる異常電流(リーク)が発生した場合(VBP→VBNの経路のリーク発生)は、リーク電流が等しく増加し、第1発振回路OSC1および第2発振回路OSC2の出力クロック(FVBP、FVBN)も、同じ割合で変化する。このため本発明でも、VBP→VBNの経路のリーク発生の検知は出来ない。
【0097】
そのため、基板バイアス発生回路BBG5のレイアウト配置において、隣接する配置の箇所を排除することが有効である。例えば、図20に示すように、第1基板バイアス電圧VBPの端子パッドPad_VBPと第2基板バイアス電圧VBNの端子パッドPad_VBNとのレイアウト配置において、端子パッドPad_VBPと端子パッドPad_VBNとを隣接してレイアウト配置するのではなく、端子パッドPad_VBPと端子パッドPad_VBNとの間に、接地電位GND(VSS)の端子パットPad_GNDや他の端子パットPad_Xを配置することが有効である。
【0098】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0099】
1:半導体装置
2:PチャネルMISFET
3:NチャネルMISFET
BBG:基板バイアス発生回路
OSC1:第1発振回路
OSC2:第2発振回路
CP1:第1チャージポンプ(昇圧回路)
CP2:第2チャージポンプ(降圧回路)
CL:カウンタ論理回路ブロック(論理回路ブロック)
CLC:大規模論理回路(コアロジック回路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20