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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093175
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20230627BHJP
【FI】
H02M7/483
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208646
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】廣田 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】花村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 渉
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA04
5H770CA05
5H770DA01
5H770DA37
5H770EA01
5H770FA03
5H770GA17
5H770HA02Y
5H770HA03X
5H770HA03Y
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】マルチレベル電力変換装置のフライングキャパシタの電圧を安定化させる。
【解決手段】インバータ回路(10)は、直流電源(2)から出力される直流電圧をもとに、5レベルの電圧を有する擬似正弦波を生成する。マルチレベル出力部(11-14)は、4つのフライングキャパシタ回路(11-14)を含み、各フライングキャパシタ回路(11-14)は3レベルの電位を出力可能である。極性切替部(15、16)は、マルチレベル出力部(11-14)の出力電圧の電圧符号を制御する。制御回路(30)は、直流電源(2)からインバータ回路(10)に供給される直流電圧を1/4にした基準電圧と、1つ分のキャパシタの電圧との偏差をもとに、複数のスイッチング素子(Q1-Q16)の駆動信号を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から出力される直流電圧をもとに、5レベルの電圧を有する擬似正弦波を生成するインバータ回路と、
前記インバータ回路に含まれる複数のスイッチング素子を制御する制御回路と、を備え、
前記インバータ回路は、
2つ又は4つのフライングキャパシタ回路を含み、各フライングキャパシタ回路が3レベルの電位を出力可能なマルチレベル出力部と、
前記マルチレベル出力部の出力電圧の電圧符号を制御する極性切替部と、を含み、
前記フライングキャパシタ回路は、
直列接続された4つのスイッチング素子と、
2番目と3番目の2つのスイッチング素子に並列に接続された1つのキャパシタと、を含み、
前記制御回路は、前記直流電源から前記インバータ回路に供給される直流電圧を1/4にした基準電圧と、1つ分のキャパシタの電圧との偏差をもとに、前記複数のスイッチング素子の駆動信号を補正することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記インバータ回路は、
複数のスイッチング素子と第1キャパシタを含む第1フライングキャパシタ回路と、
複数のスイッチング素子と第2キャパシタを含む第2フライングキャパシタ回路と、
複数のスイッチング素子と第3キャパシタを含む第3フライングキャパシタ回路と、
複数のスイッチング素子と第4キャパシタを含む第4フライングキャパシタ回路と、を有し、
前記第1フライングキャパシタ回路及び前記第2フライングキャパシタ回路が直流電源の両端間に直列に接続され、前記第3フライングキャパシタ回路及び前記第4フライングキャパシタ回路が前記直流電源の両端間に直列に接続され、前記第1フライングキャパシタ回路と前記第2フライングキャパシタ回路との接続点と前記第3フライングキャパシタ回路と前記第4フライングキャパシタ回路との接続点との間が接続され、
前記制御回路は、前記複数のスイッチング素子を制御して、前記直流電源の正電圧、前記第1キャパシタと前記第4キャパシタの電圧を加算して生成される正の中間電圧、ゼロ電圧、前記第2キャパシタと前記第3キャパシタの電圧を加算して生成される負の中間電圧、及び前記直流電源の負電圧を生成し、前記擬似正弦波を発生させることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記インバータ回路から入力される擬似正弦波の高調波成分を減衰させて出力するフィルタ回路と、
前記インバータ回路から前記フィルタ回路に流れる電流を検出する電流検出部と、をさらに備え、
前記制御回路は、前記電流検出部により検出された電流の符号と、前記フィルタ回路の出力電圧の符号が異なる場合、前記偏差の符号を反転させることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記スイッチング素子を制御するための変調信号が正のとき、前記第2フライングキャパシタ回路及び前記第3フライングキャパシタ回路に含まれる複数のスイッチング素子の駆動信号を補正せず、
前記スイッチング素子を制御するための変調信号が負のとき、前記第1フライングキャパシタ回路及び前記第4フライングキャパシタ回路に含まれる複数のスイッチング素子の駆動信号を補正しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記基準電圧と、前記第1キャパシタの電圧と前記第4キャパシタの電圧の平均電圧との偏差を算出し、
前記基準電圧と、前記第2キャパシタの電圧と前記第3キャパシタの電圧の平均電圧との偏差を算出する、
ことを特徴とする請求項2または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記基準電圧と、前記第1キャパシタの電圧または前記第4キャパシタの電圧との偏差を算出し、
前記基準電圧と、前記第2キャパシタの電圧または前記第3キャパシタの電圧との偏差を算出する、
ことを特徴とする請求項2、4、5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、蓄電池、燃料電池などに接続されるパワーコンディショナは、高効率な電力変換と小型設計が望まれる。それを実現する電力変換装置の1つに、フライングキャパシタを用いたマルチレベル電力変換装置がある(例えば、特許文献1参照)。マルチレベル電力変換装置では、スイッチング素子に印加される電圧を小さくすることができ、それによりスイッチング損失を少なくすることができるため、高効率化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/030152号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フライングキャパシタの電圧値は、充電量と放電量、充電時間と放電時間が理想的に同じである場合、一定に保たれるが、実際には充電量と放電量の誤差、又は充電時間と放電時間の誤差により、一定に保たれない場合がある。フライングキャパシタの電圧が一定に保たれない場合、スイッチング素子に耐圧オーバーが発生する可能性があり、耐圧オーバーが発生するとスイッチング素子に不具合が発生しやすくなる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、回路規模の増大を抑制しつつ、フライングキャパシタの電圧が安定しているマルチレベル電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電力変換装置は、直流電源から出力される直流電圧をもとに、5レベルの電圧を有する擬似正弦波を生成するインバータ回路と、前記インバータ回路に含まれる複数のスイッチング素子を制御する制御回路と、を備える。前記インバータ回路は、2つ又は4つのフライングキャパシタ回路を含み、各フライングキャパシタ回路が3レベルの電位を出力可能なマルチレベル出力部と、前記マルチレベル出力部の出力電圧の電圧符号を制御する極性切替部と、を含む。前記フライングキャパシタ回路は、直列接続された4つのスイッチング素子と、2番目と3番目の2つのスイッチング素子に並列に接続された1つのキャパシタと、を含む。前記制御回路は、前記直流電源から前記インバータ回路に供給される直流電圧を1/4にした基準電圧と、1つ分のキャパシタの電圧との偏差をもとに、前記複数のスイッチング素子の駆動信号を補正する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回路規模の増大を抑制しつつ、フライングキャパシタの電圧が安定しているマルチレベル電力変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図2図2(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置の状態1及び状態2の電流経路を示す図である。
図3図3(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置の状態3及び状態4の電流経路を示す図である。
図4図4(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置の状態5及び状態6の電流経路を示す図である。
図5図5(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置の状態7及び状態8の電流経路を示す図である。
図6】実施の形態1に係る電力変換装置に含まれる第1スイッチング素子-第24スイッチング素子のスイッチングパターンをまとめた図である。
図7】実施の形態2に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図8】実施の形態2に係る電力変換装置に含まれる第1スイッチング素子-第24スイッチング素子のスイッチングパターンをまとめた図である。
図9】実施の形態3に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図10】実施の形態3に係る電力変換装置に含まれる第1スイッチング素子-第12スイッチング素子のスイッチングパターンをまとめた図である。
図11図11(a)-(c)は、実施の形態1に係る、フライングキャパシタの電圧を一定に保つための補正信号生成部の構成例を示す図である。
図12図12(a)-(c)で使用される、変調信号(信号B)、信号A、Vdc/4-(Vfc1+Vfc4)/2、偏差1、Vdc/4-(Vfc2+Vfc3)/2、及び偏差2の各符号の関係をまとめた図である。
図13図13(a)、(b)は、実施の形態1に係る駆動信号生成部の構成例1及び構成例2を示す図である。
図14図14(a)、(b)は、実施の形態1に係る駆動信号生成部の構成例3及び構成例4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。電力変換装置1は、直流電源2から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を商用電力系統(以下、単に系統3という)又は交流負荷に出力する。直流電源2は例えば、分散型電源(太陽電池、蓄電池、燃料電池など)と、当該分散型電源の出力を制御可能なDC/DCコンバータにより構成される。当該DC/DCコンバータと電力変換装置1間は、直流バスで接続される。なお直流電源2は、分散型電源とDC/DCコンバータの組が複数、並列接続されて構成されてもよい。
【0010】
電力変換装置1は、インバータ回路10、フィルタ回路20及び制御回路30を備える。インバータ回路10は、直流電源2から供給される直流電力を、マルチレベル(本実施の形態では5レベル)の電圧を有する疑似正弦波に変換する。インバータ回路10は、マルチレベル出力部と極性切替部15、16を有する。マルチレベル出力部は、第1フライングキャパシタ回路11、第2フライングキャパシタ回路12、第3フライングキャパシタ回路13、第4フライングキャパシタ回路14を含む。各フライングキャパシタ回路は11-14は、3レベルの電位を出力可能である。極性切替部15、16は、インバータ出力電圧の符号を制御する。
【0011】
第1フライングキャパシタ回路11及び第2フライングキャパシタ回路12は直流電源2の両端間に直列に接続される。第3フライングキャパシタ回路13及び第4フライングキャパシタ回路14は直流電源2の両端間に直列に接続される。第1フライングキャパシタ回路11と第2フライングキャパシタ回路12との接続点と、第3フライングキャパシタ回路13と第4フライングキャパシタ回路14との接続点との間が中間配線で接続される。
【0012】
第1フライングキャパシタ回路11は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4及び第1キャパシタC1を含む。第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4は直列に接続され、直流電源2の正極に接続されたハイサイド配線と中間配線の間に接続される。第1キャパシタC1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との接続点と、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との接続点との間に接続され、第1スイッチング素子Q1-第4スイッチング素子Q4により充放電される。
【0013】
第2フライングキャパシタ回路12は、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8及び第2キャパシタC2を含む。第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8は直列に接続され、中間配線と、直流電源2の負極に接続されたローサイド配線の間に接続される。第2キャパシタC2は、第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6との接続点と、第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8との接続点との間に接続され、第5スイッチング素子Q5-第8スイッチング素子Q8により充放電される。
【0014】
第3フライングキャパシタ回路13は、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12及び第3キャパシタC3を含む。第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11及び第12スイッチング素子Q12は直列に接続され、ハイサイド配線と中間配線の間に接続される。第3キャパシタC3は、第9スイッチング素子Q9と第10スイッチング素子Q10との接続点と、第11スイッチング素子Q11と第12スイッチング素子Q12との接続点との間に接続され、第9スイッチング素子Q9-第12スイッチング素子Q12により充放電される。
【0015】
第4フライングキャパシタ回路14は、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16及び第4キャパシタC4を含む。第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第15スイッチング素子Q15及び第16スイッチング素子Q16は直列に接続され、中間配線とローサイド配線の間に接続される。第4キャパシタC4は、第13スイッチング素子Q13と第14スイッチング素子Q14との接続点と、第15スイッチング素子Q15と第16スイッチング素子Q16との接続点との間に接続され、第13スイッチング素子Q13-第16スイッチング素子Q16により充放電される。
【0016】
第1極性切替部15は、第1フライングキャパシタ回路11の出力端(具体的には、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3との接続点)と、第2フライングキャパシタ回路12の出力端(具体的には、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7との接続点)との間に接続される。第1極性切替部15は、直列に接続された第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第19スイッチング素子Q19及び第20スイッチング素子Q20を含む。
【0017】
第2極性切替部16は、第3フライングキャパシタ回路13の出力端(具体的には、第10スイッチング素子Q10と第11スイッチング素子Q11との接続点)と、第4フライングキャパシタ回路14の出力端(具体的には、第14スイッチング素子Q14と第15スイッチング素子Q15との接続点)との間に接続される。第2極性切替部16は、直列に接続された第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24を含む。
【0018】
第1フライングキャパシタ回路11の出力端からは、第1スイッチング素子Q1の上側端子に印加される直流電源の電位Vdc[V]と、第4スイッチング素子Q4の下側端子に印加される電位Vdc/2[V]の間の範囲の電位が出力される。第1キャパシタC1はVdc/4[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、Vdc/4[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第1フライングキャパシタ回路11からは、概ね、Vdc[V]、3Vdc/4[V]、Vdc/2[V]の3レベルの電位が出力される。
【0019】
第2フライングキャパシタ回路12の出力端からは、第5スイッチング素子Q5の上側端子に印加される電位Vdc/2[V]と、第8スイッチング素子Q8の下側端子に印加される電位0[V]の間の範囲の電位が出力される。第2キャパシタC2はVdc/4[V]の電圧になるように初期充電され、Vdc/4[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第2フライングキャパシタ回路12からは、概ね、Vdc/2[V]、Vdc/4[V]、0[V]の3レベルの電位が出力される。
【0020】
第3フライングキャパシタ回路13の出力端からは、第9スイッチング素子Q9の上側端子に印加される直流電源の電位Vdc[V]と、第12スイッチング素子Q12の下側端子に印加される電位Vdc/2[V]の間の範囲の電位が出力される。第3キャパシタC3はVdc/4[V]の電圧になるように初期充電され、Vdc/4[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第3フライングキャパシタ回路13からは、概ね、Vdc[V]、3Vdc/4[V]、Vdc/2[V]の3レベルの電位が出力される。
【0021】
第4フライングキャパシタ回路14の出力端からは、第13スイッチング素子Q13の上側端子に印加される電位Vdc/2[V]と、第16スイッチング素子Q16の下側端子に印加される電位0[V]の間の範囲の電位が出力される。第4キャパシタC4はVdc/4[V]の電圧になるように初期充電され、Vdc/4[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第4フライングキャパシタ回路14からは、概ね、Vdc/2[V]、Vdc/4[V]、0[V]の3レベルの電位が出力される。
【0022】
ハイサイド配線と中間配線の間に第5キャパシタC5が接続され、中間配線とローサイド配線の間に第6キャパシタC6が接続される。第5キャパシタC5及び第6キャパシタC6は、インバータ回路10内で発生するサージ電圧を抑制するためのスナバコンデンサとして機能する。
【0023】
上記の第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にはそれぞれ、第1ダイオードD1-第24ダイオードD24が逆並列に形成/接続される。以下、本実施の形態では第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に、150V耐圧のNチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用する例を想定する。NチャネルMOSFETでは、寄生ダイオードが逆並列に形成される。
【0024】
なお、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やバイポーラトランジスタを使用することもできる。その場合、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にはそれぞれ、ダイオード素子が逆並列に接続される。
【0025】
第1極性切替部15の出力端(具体的には、第18スイッチング素子Q18と第19スイッチング素子Q19間の接続点)と、第2極性切替部16の出力端(具体的には、第22スイッチング素子Q22と第23スイッチング素子Q23間の接続点)から、マルチレベルの電圧(本実施の形態では5レベルの電圧)がフィルタ回路20に出力される。レベル数が多いほど、より正規の正弦波に近い擬似正弦波となる。なお、本実施の形態では第1極性切替部15の出力端からU相の電力を出力し、第2極性切替部16の出力端からW相の電力を出力する。
【0026】
フィルタ回路20は、第1リアクトルL1、第2リアクトルL2及び第7キャパシタC7を含み、第1極性切替部15及び第2極性切替部16から出力される電圧及び電流の高調波成分を減衰させて、系統3の正弦波と同期した正弦波に近づける。
【0027】
第1電圧検出回路41は、第1キャパシタC1の電圧を検出して制御回路30に出力する。第2電圧検出回路42は、第2キャパシタC2の電圧を検出して制御回路30に出力する。第3電圧検出回路43は、第3キャパシタC3の電圧を検出して制御回路30に出力する。第4電圧検出回路44は、第4キャパシタC4の電圧を検出して制御回路30に出力する。第5電圧検出回路45は、フィルタ回路20の出力電圧を検出して制御回路30に出力する。
【0028】
第1電流検出回路51は、インバータ回路10とフィルタ回路20間との間に設置され、インバータ回路10からフィルタ回路20に流れる電流Iaを検出して制御回路30に出力する。第2電流検出回路52は、フィルタ回路20の後段に設置され、電力変換装置1の出力電流Ioutを検出して制御回路30に出力する。第1電流検出回路51及び第2電流検出回路52には例えば、CTセンサを使用することができる。
【0029】
制御回路30は、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24のオン/オフを制御して、直流電源2から供給される直流電力を交流電力に変換する。制御回路30は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0030】
図2(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置1の状態1及び状態2の電流経路を示す図である。図3(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置1の状態3及び状態4の電流経路を示す図である。図4(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置1の状態5及び状態6の電流経路を示す図である。図5(a)、(b)は、実施の形態1に係る電力変換装置1の状態7及び状態8の電流経路を示す図である。以下に示す、スイッチングパターン1-4は、U相が+でW相が-である極性の出力電圧を出力する時のスイッチングパターンであり、スイッチングパターン5-8は、U相が-でW相が+である極性の出力電圧を出力する時のスイッチングパターンである。
【0031】
図2(a)に示すようにスイッチングパターン1は、+Vdc[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン1では、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態、並びに第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0032】
スイッチングパターン1では、第1キャパシタC1-第4キャパシタC4は充放電されず、電荷が維持される。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位はVdc[V]になり、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位は0[V]になり、電力変換装置1の出力電圧は+Vdc[V]になる。
【0033】
図2(b)に示すようにスイッチングパターン2は、+Vdc/2[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン2では、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態、並びに第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0034】
スイッチングパターン2では、第1キャパシタC1及び第4キャパシタC4が充電され、第2キャパシタC2及び第3キャパシタC3は充放電されない。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位は3Vdc/4[V]になり、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位はVdc/4[V]になり、電力変換装置1の出力電圧は+Vdc/2[V]になる。
【0035】
図3(a)に示すようにスイッチングパターン3は、+Vdc/2[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン3では、制御回路30は、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態、並びに第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0036】
スイッチングパターン3では、第1キャパシタC1及び第4キャパシタC4が放電され、第2キャパシタC2及び第3キャパシタC3は充放電されない。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位は3Vdc/4[V]を維持し、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位はVdc/4[V]を維持し、電力変換装置1の出力電圧は+Vdc/2[V]を維持する。
【0037】
図3(b)に示すようにスイッチングパターン4は、+0[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン4では、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態、並びに第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0038】
スイッチングパターン4では、第1キャパシタC1-第4キャパシタC4は充放電されず、電荷が維持される。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位はVdc/2[V]になり、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位もVdc/2[V]になり、電力変換装置1の出力電圧は+0[V]になる。
【0039】
図4(a)に示すようにスイッチングパターン5は、-Vdc[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン5では、制御回路30は、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態、並びに第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0040】
スイッチングパターン5では、第1キャパシタC1-第4キャパシタC4は充放電されず、電荷が維持される。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位は0[V]になり、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位はVdc[V]になり、電力変換装置1の出力電圧は-Vdc[V]になる。
【0041】
図4(b)に示すようにスイッチングパターン6は、-Vdc/2[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン6では、制御回路30は、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態、並びに第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0042】
スイッチングパターン6では、第2キャパシタC2及び第3キャパシタC3が充電され、第1キャパシタC1及び第4キャパシタC4は充放電されない。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位はVdc/4[V]になり、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位は3Vdc/4[V]になり、電力変換装置1の出力電圧は-Vdc/2[V]になる。
【0043】
図5(a)に示すようにスイッチングパターン7は、-Vdc/2[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン7では、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態、並びに第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0044】
スイッチングパターン7では、第2キャパシタC2及び第3キャパシタC3が放電され、第1キャパシタC1及び第4キャパシタC4は充放電されない。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位はVdc/4[V]を維持し、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位は3Vdc/4[V]を維持し、電力変換装置1の出力電圧は-Vdc/2[V]を維持する。
【0045】
図5(b)に示すようにスイッチングパターン8は、-0[V]の電圧を出力するためのスイッチングパターンである。スイッチングパターン8では、制御回路30は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態、並びに第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0046】
スイッチングパターン8では、第1キャパシタC1-第4キャパシタC4は充放電されず、電荷が維持される。第1フライングキャパシタ回路11の出力端及び第1極性切替部15の出力端の電位はVdc/2[V]になり、第2極性切替部16の出力端及び第4フライングキャパシタ回路14の出力端の電位もVdc/2[V]になり、電力変換装置1の出力電圧は-0[V]になる。
【0047】
図6は、実施の形態1に係る電力変換装置に含まれる第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24のスイッチングパターンをまとめた図である。まず、マルチレベル出力部の動作を説明する。第1スイッチング素子Q1、第5スイッチング素子Q5、第12スイッチング素子Q12、第16スイッチング素子Q16の第1グループと、第4スイッチング素子Q4、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第13スイッチング素子Q13の第2グループが相補関係となる。第2スイッチング素子Q2、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第15スイッチング素子Q15の第3グループと、第3スイッチング素子Q3、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第14スイッチング素子Q14の第4グループが相補関係となる。
【0048】
制御回路30は、第1グループを制御する駆動信号PWM1a、第2グループを制御する駆動信号PWM1b(駆動信号PWM1aの相補信号)、第3グループを制御する駆動信号PWM2a、第4グループを制御する駆動信号PWM2b(駆動信号PWM2aの相補信号)の4つの駆動信号で、各時点において制御対象となるマルチレベル出力部に含まれる8つ(電流が流れていない方の対角の2つのアームを含む4つのアーム全体で16)のスイッチング素子を制御する。制御回路30は、駆動信号PWM1と駆動信号PWM2を個別に制御することができる。
【0049】
次に、極性切替部の動作を説明する。第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23、第24スイッチング素子Q24の正のグループは、基本波の正の半周期の期間に常時オンし、負の半周期の期間に常時オフする。第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22の負のグループは、基本波の負の半周期の期間に常時オンし、正の半周期の期間に常時オフする。日本では、基本波は50Hz/60Hzの正弦波である。正のグループと負のグループは相補関係となる。
【0050】
以上のように、本実施の形態に係る電力変換装置1は、-Vdc、-Vdc/2、0、+Vdc/2、+Vdcの5レベルの電圧を出力することができ、5レベルの電圧により擬似正弦波が生成される。
【0051】
制御回路30は、指令値をもとにインバータ回路10の駆動信号を生成し、当該駆動信号をインバータ回路10に供給する。本実施の形態では駆動信号としてPWM信号を生成して、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24のゲートを駆動する。PWM信号のデューティ比を上げることによりインバータ回路10の出力電力を上げることができ、PWM信号のデューティ比を下げることによりインバータ回路10の出力電力を下げることができる。
【0052】
上記指令値は、出力電流の目標値と、第1電流検出回路51により検出されたリアクトル電流値Iaとの偏差をPI補償またはP補償することにより生成される変調信号で規定される。変調信号は、後述する三角波信号(搬送波)と比較され、比較結果に応じたPWM信号が生成される。
【0053】
図7は、実施の形態2に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。実施の形態2に係る電力変換装置1は、実施の形態1に係る電力変換装置1とインバータ回路10の構成が異なる。
【0054】
実施の形態2に係るマルチレベル出力部は、2つのフライングキャパシタ回路11-12を含む。第1極性切替部15は、第9スイッチング素子Q9-第16スイッチング素子Q16を含む。第2極性切替部16は、第17スイッチング素子Q17-第24スイッチング素子Q24を含む。
【0055】
直流電源2のハイサイド配線と第1フライングキャパシタ回路11との間に、直列接続された第9スイッチング素子Q9及び第10スイッチング素子Q10が接続される。直流電源2のローサイド配線と第1フライングキャパシタ回路11との間に、直列接続された第11スイッチング素子Q11及び第12スイッチング素子Q12が接続される。第1フライングキャパシタ回路11と並列に、直列接続された第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16が接続される。
【0056】
直流電源2のハイサイド配線と第2フライングキャパシタ回路12との間に、直列接続された第17スイッチング素子Q17及び第18スイッチング素子Q18が接続される。直流電源2のローサイド配線と第2フライングキャパシタ回路12との間に、直列接続された第19スイッチング素子Q19及び第20スイッチング素子Q20が接続される。第2フライングキャパシタ回路12と並列に、直列接続された第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22、第23スイッチング素子Q23、第24スイッチング素子Q24が接続される。
【0057】
図8は、実施の形態2に係る電力変換装置1に含まれる第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24のスイッチングパターンをまとめた図である。まず、マルチレベル出力部の動作を説明する。第1スイッチング素子Q1、第8スイッチング素子Q8の第1グループと、第4スイッチング素子Q4、第5スイッチング素子Q5の第2グループが相補関係となる。第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7の第3グループと、第3スイッチング素子Q3、第6スイッチング素子Q6の第4グループが相補関係となる。
【0058】
制御回路30は、第1グループを制御する駆動信号PWM1a、第2グループを制御する駆動信号PWM1b(駆動信号PWM1aの相補信号)、第3グループを制御する駆動信号PWM2a、第4グループを制御する駆動信号PWM2b(駆動信号PWM2aの相補信号)の4つの駆動信号で、マルチレベル出力部に含まれる8つのスイッチング素子Q1-Q8を制御する。制御回路30は、駆動信号PWM1と駆動信号PWM2を個別に制御することができる。
【0059】
次に、極性切替部の動作を説明する。第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22の正のグループは、基本波の正の半周期の期間に常時オンし、負の半周期の期間に常時オフする。第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23、第24スイッチング素子Q24の負のグループは、基本波の負の半周期の期間に常時オンし、正の半周期の期間に常時オフする。正のグループと負のグループは相補関係となる。
【0060】
実施の形態2においても、直流電源2と負荷側がフライングキャパシタを介在させずに導通すると、インバータ回路10から±Vdcが出力される。直流電源2と負荷側が2つのフライングキャパシタ(C1-C2)を介在させて導通すると、インバータ回路10から±1/2Vdcが出力される。インバータ回路10の交流端子間が短絡すると、インバータ回路10から0が出力される。以上により5レベルの電圧を出力することができる。
【0061】
図9は、実施の形態3に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。実施の形態3に係る電力変換装置1は、実施の形態1に係る電力変換装置1とインバータ回路10の構成が異なる。
【0062】
実施の形態3に係るマルチレベル出力部は、2つのフライングキャパシタ回路11-12を含む。極性切替部15は、第9スイッチング素子Q9-第12スイッチング素子Q12を含む。第9スイッチング素子Q9-第12スイッチング素子Q12は、Hブリッジ回路を構成する。Hブリッジ回路は、第1フライングキャパシタ回路11の中点(具体的には、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3との接続点)と、第2フライングキャパシタ回路12の中点(具体的には、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7との接続点)との間に接続される。Hブリッジ回路で構成される極性切替部15は、5レベルの電圧をフィルタ回路20に出力する。
【0063】
図10は、実施の形態3に係る電力変換装置1に含まれる第1スイッチング素子Q1-第12スイッチング素子Q12の第1のスイッチングパターンをまとめた図である。図10に示す実施の形態3に係るスイッチングパターンのマルチレベル出力部の動作は、図8に示した実施の形態2に係るスイッチングパターンのマルチレベル出力部の動作と同様である。
【0064】
次に、極性切替部の動作を説明する。第9スイッチング素子Q9、第12スイッチング素子Q12の正のグループは、基本波の正の半周期の期間に常時オンし、負の半周期の期間に常時オフする。第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11の負のグループは、基本波の負の半周期の期間に常時オンし、正の半周期の期間に常時オフする。正のグループと負のグループは相補関係となる。
【0065】
実施の形態3においても、直流電源2と負荷側がフライングキャパシタを介在させずに導通すると、インバータ回路10から±Vdcが出力される。直流電源2と負荷側が2つのフライングキャパシタ(C1-C2)を介在させて導通すると、インバータ回路10から±1/2Vdcが出力される。インバータ回路10の交流端子間が短絡すると、インバータ回路10から0が出力される。以上により5レベルの電圧を出力することができる。
【0066】
図11(a)-(c)は、実施の形態1に係る、フライングキャパシタの電圧を一定に保つための補正信号生成部の構成例を示す図である。図11(a)において、加算部31aは、第1電圧検出回路41により検出された第1キャパシタC1の電圧値Vfc1と、第4電圧検出回路44により検出された第4キャパシタC4の電圧値Vfc4を加算する。乗算部31bは、加算部31aにより算出された電圧値(Vfc1+Vfc4)に1/2を乗算して、第1キャパシタC1と第4キャパシタC4の平均電圧値(Vfc1+Vfc4)/2を算出する。加算部31cは、第2電圧検出回路42により検出された第2キャパシタC2の電圧値Vfc2と、第3電圧検出回路43により検出された第3キャパシタC3の電圧値Vfc3を加算する。乗算部31dは、加算部31cにより算出された電圧値(Vfc2+Vfc3)に1/2を乗算して、第2キャパシタC2と第3キャパシタC3の平均電圧値(Vfc2+Vfc3)/2を算出する。
【0067】
乗算部31eは、直流電源2から供給される直流電圧値Vdcに1/4を乗算して、基準電圧値Vdc/4を算出する。減算部31fは、乗算部31eにより算出された基準電圧値Vdc/4から、第1キャパシタC1と第4キャパシタC4の平均電圧値(Vfc1+Vfc4)/2を減算して偏差1を算出する。減算部31gは、乗算部31eにより算出された基準電圧値Vdc/4から、第2キャパシタC2と第3キャパシタC3の平均電圧値(Vfc2+Vfc3)/2を減算して偏差2を算出する。
【0068】
図11(b)において、符号判定部31rは、第1電流検出回路51により検出された電流値Iaに所定の符号関数を適用して符号情報を出力する。当該符号関数は、入力値が正のとき1を、入力値が負のとき-1を、入力値が0のとき0を出力する関数である。符号判定部31sは、第5電圧検出回路45により検出された出力電圧値Ioutに上記の符号関数を適用して符号情報を出力する。乗算部31tは、符号判定部31rから入力される符号情報と、符号判定部31sから入力される符号情報を乗算して信号Aを生成する。信号Aの値は、フィルタ回路20に流れる電流値Iaと出力電圧値Ioutが同符号のとき1、フィルタ回路20に流れる電流値Iaと出力電圧値Ioutが異符号のとき-1、フィルタ回路20に流れる電流値Iaと出力電圧値Ioutの少なくとも一方が0のとき0となる。
【0069】
図11(a)において、乗算部31hは、減算部31fにより算出された偏差1と信号Aを乗算する。乗算部31iは、減算部31gにより算出された偏差2と信号Aを乗算する。力率の影響により、フィルタ回路20に流れる電流値Iaと出力電圧値Ioutの符号が一致しないときがある。その場合、フライングキャパシタの充放電がスイッチのパターンに対して逆の動きになる。フィルタ回路20に流れる電流値Iaと出力電圧値Ioutの符号が一致しない場合、乗算部31h及び乗算部31iにより、偏差1及び偏差2の符号を反転させる。
【0070】
図11(c)において、比較部31uは変調信号と0を比較して、比較結果をもとに信号Bを生成する。信号Bの値は、変調信号>0のとき1、変調信号≦0のとき0となる。図11(a)において、乗算部31jは、乗算部31hから入力される偏差1と信号Bを乗算する。反転部31kは信号Bの符号を反転させて乗算部31lに出力する。乗算部31lは、乗算部31iから入力される偏差2と、信号Bの反転信号を乗算する。これにより、変調信号の符号が正のときは偏差2が0になり、変調信号の符号が負のときは偏差1が0になる。
【0071】
補償部31mは、乗算部31jから入力される偏差1をPI補償して補正量1を生成する。補償部31nは、乗算部31lから入力される偏差2をPI補償して補正量2を生成する。なお補償部31m及び補償部31nにおいてPI補償の代わりに、P補償またはPID補償を行ってもよい。
【0072】
乗算部31oは、補償部31mから入力される補正量1と信号Bを乗算する。反転部31pは信号Bの符号を反転させて乗算部31qに出力する。乗算部31qは、補償部31nから入力される補正量2と、信号Bの反転信号を乗算する。これにより、変調信号の符号が正のときは補正量2が0になり、変調信号の符号が負のときは補正量1が0になる。補正量1及び補正量2は、PWM信号を生成するための、変調信号または三角波信号(搬送波)を補正するために使用される。
【0073】
図12は、図11(a)-(c)で使用される、変調信号(信号B)、信号A、Vdc/4-(Vfc1+Vfc4)/2、偏差1、Vdc/4-(Vfc2+Vfc3)/2、及び偏差2の各符号の関係をまとめた図である。
【0074】
変調信号が正のときは、第1フライングキャパシタ回路11と第4フライングキャパシタ回路14が同時に充放電し、第2フライングキャパシタ回路12及び第3フライングキャパシタ回路13は充放電しない。一方、変調信号が負のときは、第2フライングキャパシタ回路12と第3フライングキャパシタ回路13が同時に充放電し、第1フライングキャパシタ回路11及び第4フライングキャパシタ回路14は充放電しない。
【0075】
充放電しないフライングキャパシタ回路は、充放電しない期間、フィードバック制御を停止させる必要がある。具体的には、変調信号が正のときは、信号Bの反転信号(0)を偏差2と補正量2に乗算することにより、偏差2と補正量2を0に設定する。変調信号が負のときは、信号B(0)を偏差1と補正量1に乗算することにより、偏差1と補正量1を0に設定する。
【0076】
図11(a)に示した構成例では、基準電圧値Vdc/4から、第1キャパシタC1と第4キャパシタC4の平均電圧値(Vfc1+Vfc4)/2を減算して偏差1を算出する例を説明した。この点、基準電圧値Vdc/4から、第1キャパシタC1の電圧値Vfc1または第4キャパシタC4の電圧値Vfc4を減算して偏差1を算出してもよい。
【0077】
同様に図11(a)に示した構成例では、基準電圧値Vdc/4から、第2キャパシタC2と第3キャパシタC3の平均電圧値(Vfc2+Vfc3)/2を減算して偏差2を算出する例を説明した。この点、基準電圧値Vdc/4から、第2キャパシタC2の電圧値Vfc2または第3キャパシタC3の電圧値Vfc3を減算して偏差2を算出してもよい。
【0078】
なお、実施の形態2、3に係る補正信号生成部では、図11(a)に示した加算部31c、乗算部31d、減算部31g、乗算部31i、乗算部31l、反転部31k、補償部31n、反転部31p、乗算部31qを省略することができる。実施の形態2、3に係る補正信号生成部では、加算部31aは、第1電圧検出回路41により検出された第1キャパシタC1の電圧値Vfc1と、第2電圧検出回路42により検出された第2キャパシタC2の電圧値Vfc2を加算する。乗算部31bは、加算部31aにより算出された電圧値(Vfc1+Vfc2)に1/2を乗算して、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2の平均電圧値(Vfc1+Vfc2)/2を算出する。実施の形態2、3では、補正信号生成部で生成される偏差、補正量はそれぞれ1つとなる。
【0079】
図13(a)、(b)は、実施の形態1に係る駆動信号生成部の構成例1及び構成例2を示す図である。図14(a)、(b)は、実施の形態1に係る駆動信号生成部の構成例3及び構成例4を示す図である。図13(a)、(b)、図14(a)、(b)に示す駆動信号生成部は、第1フライングキャパシタ回路11を駆動するための駆動信号生成部である。
【0080】
図13(a)、(b)に示す駆動信号生成部は、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3の動作タイミングを制御することにより、第1キャパシタC1の電圧を一定に保つ方式である。図14(a)、(b)に示す駆動信号生成部は、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4の動作タイミングを制御することにより、第1キャパシタC1の電圧を一定に保つ方式である。
【0081】
図13(a)に示す構成例1において、変換部32aは、変調信号の負領域の信号を正領域にレベルシフトして、正のみの変調信号に変換する。加算部32b1は、変換部32aから入力される変調信号に補正量2を加算する。減算部32c1は、補正量2が加算された変調信号から補正量1を減算する。
【0082】
比較部32dの非反転入力には、変換部32aにより変換され、補正量1が加算され、補正量2が減算された変調信号が入力される。比較部32dの反転入力には、180度位相がシフトされた逆位相の三角波信号(搬送波)が入力される。比較部32dは両者の比較結果(PWM2a)を反転信号生成部32eに出力する。
【0083】
比較部32fの非反転入力には、変換部32aにより変換された変調信号が入力される。比較部32fの反転入力には、三角波信号が入力される。比較部32fは両者の比較結果(PWM1a)を反転信号生成部32gに出力する。
【0084】
反転信号生成部32eは、駆動信号PWM2aの位相を反転させて駆動信号PWM2bを生成する。反転信号生成部32eは、駆動信号PWM2aを第2スイッチング素子Q2のゲートに供給し、駆動信号PWM2bを第3スイッチング素子Q3のゲートに供給する。なお図示しないが、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3との間でオン/オフが切り替わる際、デッドタイムが挿入される。
【0085】
反転信号生成部32gは、駆動信号PWM1aの位相を反転させて駆動信号PWM1bを生成する。反転信号生成部32gは、駆動信号PWM1aを第1スイッチング素子Q1のゲートに供給し、駆動信号PWM1bを第4スイッチング素子Q4のゲートに供給する。なお図示しないが、第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4との間でオン/オフが切り替わる際、デッドタイムが挿入される。
【0086】
図13(b)に示す構成例2において、変換部32aは、変調信号の負領域の信号を正領域にレベルシフトして、正のみの変調信号に変換する。減算部32b2は、逆位相の三角波信号から補正量2を減算する。加算部32c2は、補正量2が減算された、逆位相の三角波信号に補正量1を加算する。
【0087】
比較部32dの非反転入力には、変換部32aにより変換された変調信号が入力される。比較部32dの反転入力には、補正量2が減算され、補正量1が加算された逆位相の三角波信号が入力される。比較部32dは両者の比較結果(PWM2a)を反転信号生成部32eに出力する。
【0088】
比較部32fの非反転入力には、変換部32aにより変換された変調信号が入力される。比較部32fの反転入力には、三角波信号が入力される。比較部32fは両者の比較結果(PWM1a)を反転信号生成部32gに出力する。反転信号生成部32e及び反転信号生成部32gの動作は、構成例1と同じである。
【0089】
図14(a)に示す構成例3において、変換部32aは、変調信号の負領域の信号を正領域にレベルシフトして、正のみの変調信号に変換する。減算部32b3は、変換部32aにより変換された変調信号から補正量2を減算する。加算部32c3は、補正量2が減算された変換信号に補正量1を加算する。
【0090】
比較部32dの非反転入力には、変換部32aにより変換された変調信号が入力される。比較部32dの反転入力には、逆位相の三角波信号が入力される。比較部32dは両者の比較結果(PWM2a)を反転信号生成部32eに出力する。
【0091】
比較部32fの非反転入力には、変換部32aに変換され、補正量2が減算され、補正量1が加算された変調信号が入力される。比較部32fの反転入力には、三角波信号が入力される。比較部32fは両者の比較結果(PWM1a)を反転信号生成部32gに出力する。反転信号生成部32e及び反転信号生成部32gの動作は、構成例1と同じである。
【0092】
図14(b)に示す構成例4において、変換部32aは、変調信号の負領域の信号を正領域にレベルシフトして、正のみの変調信号に変換する。加算部32b4は、三角波信号に補正量2を加算する。減算部32c4は、補正量2が加算された三角波信号から補正量1を減算する。
【0093】
比較部32dの非反転入力には、変換部32aにより変換された変調信号が入力される。比較部32dの反転入力には、逆位相の三角波信号が入力される。比較部32dは両者の比較結果(PWM2a)を反転信号生成部32eに出力する。
【0094】
比較部32fの非反転入力には、変換部32aに変換された変調信号が入力される。比較部32fの反転入力には、変換部32aにより変換され、補正量2が加算され、補正量1が減算された三角波信号が入力される。比較部32fは両者の比較結果(PWM1a)を反転信号生成部32gに出力する。反転信号生成部32e及び反転信号生成部32gの動作は、構成例1と同じである。
【0095】
なお変換部32aは、変調信号を絶対値に変換することにより、正のみの変調信号に変換してもよい。その場合、図13(a)、(b)、図14(a)、(b)において補正量2の符号を反転させる必要がある。
【0096】
第2フライングキャパシタ回路12-第4フライングキャパシタ回路14の駆動信号生成部にも、以上に説明した第1フライングキャパシタ回路11の駆動信号生成部と同様の構成を用いることができる。なお、第1フライングキャパシタ回路11と第4フライングキャパシタ回路14の駆動信号生成部は共有することが可能であり、第2フライングキャパシタ回路12と第3フライングキャパシタ回路13の駆動信号生成部も共有することが可能である。
【0097】
図11(a)-(c)に示した補正信号生成部、及び図13(a)、(b)、図14(a)、(b)に示した駆動信号生成部は、プロセッサ(例えば、マイクロコンピュータ、DSP)によるデジタル信号により実現されてもよいし、アナログ回路により実現されてもよいし、両者の併用で実現されてもよい。
【0098】
以上説明したように本実施の形態によれば、フライングキャパシタの検出電圧をもとに、スイッチング素子の駆動信号に対してフィードバック制御を加えることにより、フライングキャパシタの電圧を安定化させることができる。これにより、スイッチング素子の耐圧オーバーによりスイッチング素子に不具合が発生することを防止することができる。
【0099】
上記特許文献1では、スイッチング制御回路が、入力電圧Vdc、キャパシタの電圧Vcf及び出力電流Ioの入力をもとに、キャパシタの電圧Vcfに誤差が発生した場合に補正量を生成し、当該補正量を変調信号に加算または減算してキャパシタの電圧Vcfを一定に保つ制御を開示する(上記特許文献1の図1図9図17参照)。当該開示技術では、出力電流Ioの流れる方向によって、キャパシタの充電と放電が入れ替わる。従って、出力電流Ioを検出して、変調信号に補正量を加算するか減算するか切り替える必要がある。
【0100】
当該開示技術を、図1に示す本実施の形態1に係る電力変換装置1に導入する場合、第1フライングキャパシタ回路11の出力端と第1極性切替部15の上端との間の電流経路に電流センサ1を設置し、第3フライングキャパシタ回路13の出力端と第2極性切替部16の上端との間の電流経路に電流センサ2を設置する必要がある。電力変換装置1の出力電圧Voutが正のときは電流センサ1で電流を検出し、電力変換装置1の出力電圧Voutが負のときは電流センサ2で電流を検出する。
【0101】
このように当該開示技術では、キャパシタ電圧の安定化制御に必要な電流センサを2つ設置する必要がある。一方、本実施の形態では、キャパシタ電圧の安定化制御に必要な電流センサを1つ(第1電流検出回路51)設置するだけで足りる。従って、電流センサの数、及び補正信号生成部(制御器)の入力数を増やすことなく、キャパシタ電圧を安定化させることができる。
【0102】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0103】
実施の形態1に係る第1極性切替部15及び第2極性切替部16において、耐圧が高いスイッチング素子(例えば、300V耐圧のスイッチング素子)を使用する場合、第17スイッチング素子Q17と第18スイッチング素子Q18、第19スイッチング素子Q19と第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21と第22スイッチング素子Q22、第23スイッチング素子Q23と第24スイッチング素子Q24は、それぞれ1つのスイッチング素子で構成することができる。
【0104】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0105】
[項目1]
直流電源(2)から出力される直流電圧をもとに、5レベルの電圧を有する擬似正弦波を生成するインバータ回路(10)と、
前記インバータ回路(10)に含まれる複数のスイッチング素子(Q1-Q24)を制御する制御回路(30)と、を備え、
前記インバータ回路(10)は、
2つ又は4つのフライングキャパシタ回路(11-12 or 11-14)を含み、各フライングキャパシタ回路(11-12 or 11-14)が3レベルの電位を出力可能なマルチレベル出力部(11-12 or 11-14)と、
前記マルチレベル出力部(11-12 or 11-14)の出力電圧の電圧符号を制御する極性切替部(15、16)と、を含み、
前記フライングキャパシタ回路(C1)は、
直列接続された4つのスイッチング素子(Q1-Q4)と、
2番目と3番目の2つのスイッチング素子(Q2-Q3)に並列に接続された1つのキャパシタ(C1)と、を含み、
前記制御回路(30)は、前記直流電源(2)から前記インバータ回路(10)に供給される直流電圧を1/4にした基準電圧と、1つ分のキャパシタ(C1-C2 or C1-C4)の電圧との偏差をもとに、前記複数のスイッチング素子(Q1-Q16)の駆動信号を補正することを特徴とする電力変換装置(1)。
これによれば、キャパシタ(C1-C2 or C1-C4)の電圧を一定に保つことができ、スイッチング素子(Q1-Q16)の耐圧オーバーを防止することができる。
[項目2]
前記インバータ回路(10)は、
複数のスイッチング素子(Q1-Q4)と第1キャパシタ(C1)を含む第1フライングキャパシタ回路(11)と、
複数のスイッチング素子(Q5-Q8)と第2キャパシタ(C2)を含む第2フライングキャパシタ回路(12)と、
複数のスイッチング素子(Q9-Q12)と第3キャパシタ(C3)を含む第3フライングキャパシタ回路(13)と、
複数のスイッチング素子(Q13-Q16)と第4キャパシタ(C4)を含む第4フライングキャパシタ回路(14)と、を有し、
前記第1フライングキャパシタ回路(11)及び前記第2フライングキャパシタ回路(12)が直流電源(2)の両端間に直列に接続され、前記第3フライングキャパシタ回路(13)及び前記第4フライングキャパシタ回路(14)が前記直流電源(2)の両端間に直列に接続され、前記第1フライングキャパシタ回路(11)と前記第2フライングキャパシタ回路(12)との接続点と前記第3フライングキャパシタ回路(13)と前記第4フライングキャパシタ回路(14)との接続点との間が接続され、
前記制御回路(30)は、前記複数のスイッチング素子(Q1-Q16)を制御して、前記直流電源(2)の正電圧、前記第1キャパシタ(C1)と前記第4キャパシタ(C4)の電圧を加算して生成される正の中間電圧、ゼロ電圧、前記第2キャパシタ(C2)と前記第3キャパシタ(C3)の電圧を加算して生成される負の中間電圧、及び前記直流電源(2)の負電圧を生成し、前記擬似正弦波を発生させることを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、キャパシタ(C1-C4)の電圧を一定に保つことができ、スイッチング素子(Q1-Q16)の耐圧オーバーを防止することができる。
[項目3]
前記インバータ回路(10)から入力される擬似正弦波の高調波成分を減衰させて出力するフィルタ回路(20)と、
前記インバータ回路(10)から前記フィルタ回路(20)に流れる電流を検出する電流検出部(51)と、をさらに備え、
前記制御回路(30)は、前記電流検出部(51)により検出された電流の符号と、前記フィルタ回路(20)の出力電圧の符号が異なる場合、前記偏差の符号を反転させることを特徴とする項目1または2に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、1つの電流検出部(51)で、各キャパシタ(C1-C4)が充電されているか放電されているかを検出することができ、各キャパシタ(C1-C4)の電圧を逆方向に補正することを防止することができる。
[項目4]
前記制御回路(30)は、
前記スイッチング素子(Q1-Q16)を制御するための変調信号が正のとき、前記第2フライングキャパシタ回路(12)及び前記第3フライングキャパシタ回路(13)に含まれる複数のスイッチング素子(Q5-Q8、Q9-Q12)の駆動信号を補正せず、
前記スイッチング素子(Q1-Q16)を制御するための変調信号が負のとき、前記第1フライングキャパシタ回路(11)及び前記第4フライングキャパシタ回路(14)に含まれる複数のスイッチング素子(Q1-Q4、Q13-Q16)の駆動信号を補正しない、
ことを特徴とする項目2に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、充放電しないキャパシタを含むフライングキャパシタ回路の誤動作を防止することができる。
[項目5]
前記制御回路(30)は、
前記基準電圧と、前記第1キャパシタ(C1)の電圧と前記第4キャパシタ(C4)の電圧の平均電圧との偏差を算出し、
前記基準電圧と、前記第2キャパシタ(C2)の電圧と前記第3キャパシタ(C3)の電圧の平均電圧との偏差を算出する、
ことを特徴とする項目2または4に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、キャパシタ(C1-C4)の容量のばらつきを緩和することができる。[項目6]
前記制御回路(30)は、
前記基準電圧と、前記第1キャパシタ(C1)の電圧または前記第4キャパシタ(C4)の電圧との偏差を算出し、
前記基準電圧と、前記第2キャパシタ(C2)の電圧または前記第3キャパシタ(C3)の電圧との偏差を算出する、
ことを特徴とする項目2、4、5のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、補正信号生成部にフィードバックする信号数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0106】
1 電力変換装置、 2 直流電源、 3 系統、 10 インバータ回路、 11 第1フライングキャパシタ回路、 12 第2フライングキャパシタ回路、 13 第3フライングキャパシタ回路、 14 第4フライングキャパシタ回路、 15 第1極性切替部、 16 第2極性切替部、 20 フィルタ回路、 30 制御回路、 41-45 電圧検出回路、 51 第1電流検出回路、 52 第2電流検出回路、 Q1-Q24 スイッチング素子、 D1-D24 ダイオード、 C1-C7 キャパシタ、 L1-L2 リアクトル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14