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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093192
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電池用容器及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/167 20210101AFI20230627BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20230627BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20230627BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230627BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20230627BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20230627BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20230627BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01M50/167
H01M50/107
H01M50/152
H01M50/184 D
H01M50/193
H01M50/198
H01M10/28 Z
H01M10/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208669
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 永成
(72)【発明者】
【氏名】大浦 真
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC06
5H011DD15
5H011FF03
5H011GG02
5H011HH02
5H011JJ14
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB03
5H028CC04
5H028CC08
5H028EE10
(57)【要約】
【課題】耐圧性を備え、正極、負極の領域の異なる複数の電池用容器及び電池を提供する。
【解決手段】内部に電極体と電解液が収容される電池用容器であって、開口部を有する導電性を備えた有底筒状の容器本体と、容器本体の前記開口部に接合される導電性の蓋体と、を有し、蓋体と容器本体との第1接合部は、容器本体の開口部の開口縁に設けられるビード部と、蓋体の周縁に設けられビード部に嵌り合ってかしめ固定されるカール部と、ビード部とカール部の間に挟まれてビード部とカール部によって圧着される絶縁体と、を備え、絶縁体によって、蓋体と容器本体とが電気的に絶縁される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電極体と電解液が収容される電池用容器であって、
開口部を有する導電性を備えた有底筒状の容器本体と、該容器本体の前記開口部に接合される導電性の蓋体と、を有し、
前記蓋体と前記容器本体との第1接合部は、前記容器本体の前記開口部の開口縁に設けられるビード部と、前記蓋体の周縁に設けられ前記ビード部に嵌り合ってかしめ固定されるカール部と、前記ビード部と前記カール部の間に挟まれて圧着される絶縁体と、を備え、
前記絶縁体によって、前記蓋体と前記容器本体とが電気的に絶縁されることを特徴とする電池用容器。
【請求項2】
内部に電極体と電解液が収納される電池用容器であって、
開口部を有する導電性を備えた有底筒状の容器本体と、該容器本体の前記開口部に接合される導電性の蓋体と、を有し、
前記蓋体と前記容器本体との第1接合部は、前記容器本体の前記開口部の開口縁に設けられるビード部と、前記蓋体の周縁に設けられ前記ビードに嵌り合ってかしめ固定されるカール部と、を備え、
前記容器本体は、筒状の胴部と、該胴部の一端に設けられる底部と、前記胴部の他端から前記開口部に向けて延びる肩部と、を有し、前記胴部と前記肩部は、第2接合部を介して接合され、
前記第1接合部は電気的に導通状態とし、前記第2接合部には前記胴部と前記肩部を電気に絶縁する絶縁体が設けられ、
前記絶縁体によって、前記容器本体の前記胴部および底部を合わせた領域と、前記肩部および前記蓋体を合わせた領域とが電気的に絶縁されることを特徴とする電池用容器。
【請求項3】
内部に電極体と電解液が収納される電池用容器であって、
開口部を有する導電性を備えた有底筒状の容器本体と、該容器本体の前記開口部に接合される導電性の蓋体と、を有し、
前記蓋体と前記容器本体との第1接合部は、前記容器本体の前記開口部の開口縁に設けられるビード部と、前記蓋体の周縁に設けられ前記ビードに嵌り合ってかしめ固定されるカール部と、を備え、
前記容器本体は、筒状の胴部と、該胴部の一端に設けられる底部とを有し、前記胴部と前記底部は、第3接合部を介して接合され、
前記第1接合部は電気的に導通状態とし、前記第3接合部に前記胴部と前記底部を電気に絶縁する絶縁体が設けられ、
前記絶縁体によって、前記底部と、前記容器本体の前記底部以外の構成部分および蓋体を合わせた領域とが電気的に絶縁されることを特徴とする電池用容器。
【請求項4】
前記絶縁体は、シール性を有する樹脂材である請求項1、2または3に記載の電池用容器。
【請求項5】
前記絶縁体は、前記電解液に対する耐性を有する樹脂材である請求項4に記載の電池用容器。
【請求項6】
前記絶縁体には、前記電解液に対する腐食抑制剤が塗布されている請求項4または5に記載の電池用容器。
【請求項7】
前記容器本体及び前記蓋体の内面には、前記電解液に対する耐性を有する表面処理が施されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電池用容器。
【請求項8】
該蓋体に、常時閉弁状態で、外部から操作によって開弁して前記電解液およびガスの充填が可能なバルブを有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電池用容器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電池用容器に、電極体が収納され、電解液と水素とが充填された構成となっている電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、水素を負極活物質とするニッケル水素電池等に利用可能な電池用容器およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の水素を負極活物質とする電池としては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。この電池は、水素が封入されているので、正極に含まれるカーボンから成る導電剤は酸化されることがなく、負極の水素吸蔵合金も酸化劣化せず、優れた寿命特性を有する。その構成は、外装体(容器)と、集電棒と、外装体内部に収納される電極体とを主な構成要素とし、外装体は、有底の円筒缶(容器本体)と、円筒缶の開口部に取付けられた蓋部材とから構成されている。蓋部材は、電極体を収納後に、円筒缶の開口部において密に嵌合される。蓋部材には、電解液および水素ガスの供給を行うための供給口が設けられていて、この供給口には水素ガスタンクが接続され、外装体内部に水素ガスが充填される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020―113373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電池においては、水素ガスの圧力は高圧であり、接合部には高い耐圧強度が要求される。さらに、容器を、正極と負極に区分する絶縁部を設ける必要があるが、従来は、絶縁部が蓋部材と容器本体との接合部に限定されてしまい、正極と負極の領域が制約されてしまう。
本発明の目的は、耐圧性を備える電池用容器及び電池を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、正極、負極の領域の異なる複数の電池用容器及び電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
内部に電極体と電解液が収容される電池用容器であって、
開口部を有する導電性を備えた有底筒状の容器本体と、該容器本体の前記開口部に接合される導電性の蓋体と、を有し、
前記蓋体と前記容器本体との第1接合部は、前記容器本体の開口部の開口縁に設けられるビード部と、前記蓋体の周縁に設けられ前記ビード部に嵌り合ってかしめ固定されるカール部と、前記ビード部と前記カール部の間に挟まれて前記ビード部と前記カール部によって圧着される絶縁体と、を備え、
前記絶縁体によって、前記蓋体と前記容器本体とが電気的に絶縁されることを特徴とする。
蓋体と容器本体との第1接合部は、ビードに嵌り合ってかしめ固定されるカール部を備えた構成であり、接合強度が高く、高い耐圧性を保持できる。
また、このビード部とカール部に絶縁体を挟むことにより、絶縁体を確実に固定でき、絶縁の信頼性を高めることができる。
【0006】
また、第2の発明は、
内部に電極体と電解液が収納される電池用容器であって、
開口部を有する導電性を備えた有底筒状の容器本体と、該容器本体の前記開口部に接合される導電性の蓋体と、を有し、
前記蓋体と前記容器本体との第1接合部は、前記容器本体の開口部の開口縁に設けられるビード部と、前記蓋体の周縁に設けられ前記ビードに嵌り合ってかしめ固定されるカール部と、を備え、
前記容器本体は、筒状の胴部と、該胴部の一端に設けられる底部と、前記胴部の他端から前記開口部に向けて延びる肩部と、を有し、前記胴部と前記肩部は第2接合部を介して接合され、
前記第1接合部は電気的に導通状態とし、前記第2接合部には前記胴部と前記肩部を電気に絶縁する絶縁体が設けられ、
前記絶縁体によって、前記容器本体の胴部および底部を合わせた領域と、前記肩部および蓋体を合わせた領域とが電気的に絶縁されることを特徴とする。
本発明においても、蓋体と容器本体との第1接合部は、ビードに嵌り合ってかしめ固定されるカール部を備えた構成であり、接合強度が高く、高い耐圧性を保持できる。
また、胴部と肩部の第2接合部に絶縁体を設けることにより、胴部と肩部を電気的に絶縁することができる。第2接合部を巻締部によって構成すれば、絶縁が確実にできる。
【0007】
さらに、第3の発明は、
内部に電極体と電解液が収納される電池用容器であって、
開口部を有する導電性を備えた有底筒状の容器本体と、該容器本体の前記開口部に接合される導電性の蓋体と、を有し、
前記蓋体と前記容器本体との第1接合部は、前記容器本体の開口部の開口縁に設けられるビード部と、前記蓋体の周縁に設けられ前記ビードに嵌り合ってかしめ固定されるカール部と、を備え、
前記容器本体は、筒状の胴部と、該胴部の一端に設けられる底部とを有し、前記胴部と前記底部は、第3接合部を介して接合され、
前記第1接合部は電気的に導通状態とし、前記第3接合部に胴部と底部を電気に絶縁する絶縁体が設けられ、
前記絶縁体によって、前記底部と、前記容器本体の前記底部以外の構成部分および蓋体を合わせた領域とが電気的に絶縁されることを特徴とする。
本発明においても、蓋体と容器本体との第1接合部は、ビードに嵌り合ってかしめ固定されるカール部を備えた構成であり、接合強度が高く、高い耐圧性を保持できる。また、胴部と底部の第3接合部に絶縁体を設けることにより、胴部と底部を電気的に絶縁することができる。第3接合部を巻締部によって構成すれば、絶縁が確実にできる。
【0008】
本発明は、次のように構成することができる。
1.前記絶縁体は、シール性を備えた樹脂材である。
シール性を有することで、電解液を確実に封止することができる。
2.前記絶縁体は、容器内に収容される電解液に対する耐性を有する樹脂材である。
電解液による劣化を防止することができる。
3.前記絶縁体には、腐食抑制剤(インヒビター)が塗布されている。
腐食抑制剤を塗布することにより、金属の接合面の腐食による漏洩を防止することができる。
4.前記容器本体及び蓋体の内面には、容器内に収容される電解液に対する耐性を有する表面処理が施されている。
5.前記蓋体に、常時閉弁状態で、外部から操作によって開弁してガスの充填、放出が可能な開閉バルブを有する。
バルブを有することにより、水素ガス等を、容易に充填あるいは放出させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の電池は、上記した電池用容器に、少なくとも、水素、電極体が収納されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐圧性を備え、正極、負極の領域の異なる複数の電池用容器及びそれを用いた電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)は、本発明の実施形態1に係る電池用容器が使用された電池を示す概略断面図、(B)は(A)の容器本体と蓋体とを分解して示す部分断面図である。
図2図2(A)は、図1の蓋体の第1接合部の部分拡大断面図、(B)接合前の状態を示す部分拡大断面図である。
図3図3(A)は、第2接合部の部分拡大断面図、(B)第3接合部の部分拡大断面図である。
図4図4(A)は、図1の開閉バルブの閉状態の拡大断面図、(B)は開状態の部分拡大断面図である。
図5図5(A)~(D)は、図1の電池の組み立て工程を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態2に係る電池用容器が使用された電池の概略断面図である。
図7図7(A)は、図6の第2接合部の部分拡大断面図、(B)接合前の状態を示す部分拡大断面図である。
図8図8は、図6の第1接合部の部分拡大断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態3に係る電池用容器が使用された電池の概略断面図である。
図10図10(A)は、図9の第3接合部の部分拡大断面図、(B)接合前の状態を示す部分拡大断面図である。
図11図11(A)は、第1接合部の内周に嵌合する第1例のアダプタキャップ、図11(B)は、第1接合部の外周に嵌合する第2例のアダプタキャップである。
図12図12(A)は、図9の第3接合部の変形例の部分拡大断面図、(B)接合前の状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
以下の説明では、本発明の電池用容器をニッケル水素・水素電池に適用した例について説明する。ニッケル水素・水素電池は、従来技術に説明したような、ニッケル水素電池に水素ガスを封入した構成の二次電池である。
【0013】
[実施形態1]
まず、図1を参照して、実施形態1に係る電池用容器が使用された電池の全体構成について説明する。図1(A)は、本発明の実施形態1に係る電池用容器が使用された電池の概略断面図、(B)は(A)の容器本体と蓋体とを分解して示す部分断面図である。
電池容器100は、電極体50が収納される導電性で有底筒状の容器本体10と、容器本体10の開口部12に接合される導電性の蓋体20と、蓋体20に設けられる開閉バルブ30と、を有している。容器本体10及び蓋体20の材料としては、アルミニウムあるいはスチール等、導電性の金属が用いられる。
【0014】
容器本体10は、この例では有底円筒形状で、円筒状の胴部11と、胴部11の一端に
設けられる底部13と、胴部11の他端から開口部12に向かって延びる肩部15と、を有している。図示例では、容器本体10は、胴部11と、底部13と、肩部15とに三分割され、胴部11と肩部15は、第2接合部42を介して接合され、胴部11と底部13は、第3接合部43を介して接合されている。開口部12は胴部11より小径で、肩部15を介して胴部径から開口部12に向かって徐々に縮径されている(図1(B)参照)。胴部11と肩部15とが接合される第2接合部42、胴部11と底部13が接合される第3接合部43は、それぞれ、二重巻締によって巻締固定されている。第2接合部42と第3接合部43は、金属接触しており、胴部11と肩部15、胴部11と底部13は、導通状態である。
なお、胴部11と肩部15が一体となっていてもよいし(第2接合部42が無い構成)、胴部11と底部13が一体となっていてもよい(第3接合部43が無い構成)。また、胴部11、肩部15および底部13がすべて一体となっていてもよい(第2接合部42も第3接合部43も無い構成)。また、開口部12を縮径する必要が無ければ肩部15は不要である。
【0015】
蓋体20は、断面ハット形状の本体部21と、本体部21の外周縁から立ち上がる接合筒部24と、を備え、第1接合部41において、接合筒部24が容器本体10の肩部15に接合されている。本体部21は、円筒状の中央突出部22と、中央突出部22の付け根側の端部から外向きに張り出すつば部23と、を備えている。つば部23は、図示例では斜め下向きに円錐台状に傾斜しているが、水平に張り出す構成でもよい。
また、容器本体10及び蓋体20の内面には、容器内に収容される電解液に対する耐性を有する表面処理が施されている。表面処理は、導電性を有する処理であり、この例では、容器本体10及び蓋体20の内面はニッケルメッキが施されている。
【0016】
次に、第1接合部41について、図2を参照して説明する。
図2(A)は、第1接合部の部分拡大断面図、(B)接合前の状態を示す部分拡大断面図である。
図2に示すように、第1接合部41は、容器本体10の開口部12の開口縁に設けられるビード部12aと、蓋体20の周縁に設けられビード部12aに嵌り合ってかしめ固定されるカール部25と、ビード部12aとカール部25の間に挟まれてビード部12aとカール部25の間を電気的に絶縁する絶縁体60とを備えている。
【0017】
ビード部12aは、肩部15の内径端から容器外方に立ち上がり、外側に断面円形状に曲げ返された構成となっている。蓋体20のカール部25は、接合筒部24の先端部から、外側に向けて断面円弧状に曲げ返された構成で、このカール部25が、断面円形状のビード部12aの上半部に係合している。接合筒部24は、その上端部外周がビード部12aの内周と対向しており、ビード部12aの下縁に対応する位置の直下に、径方向外向きに拡径する方向にかしめられたクリンチ部27を有し、このクリンチ部27とカール部25との間で、絶縁体60を介してビード部12aの外周を上下から包むように把持している。
【0018】
絶縁体60は電気を通さない絶縁性を有するゴム状弾性を備えた樹脂材であり、第1接合部41のクリンチ部27の上半部から容器本体10のビード部12aとカール部25との隙間に介装され、容器本体10と蓋体20とを、電気的に絶縁するとともに、流体の漏洩を防止するように密封している。シール性を有することで、電解液および充填される水素等のガスを確実に封止することができる。また、絶縁体60は、容器内に収容される電解液に対する耐性を有する樹脂材によって構成される。また、絶縁体60の表面に、腐食抑制剤(インヒビター)が塗布されていてもよい。腐食抑制剤を塗布することにより、金属の接合面の腐食による漏洩を防止することができる。
【0019】
次に、図3を参照して、第2接合部42及び第3接合部43について説明する。
図3(A)は第2接合部42の部分断面図である。
第2接合部42は、一般的な二重巻締構造で、胴部11の肩部側の端部に形成された不図示の巻締フランジ部に、肩部15の外縁に形成された不図示の巻締カール部を重ねて巻締められている。すなわち、胴部11側は、胴部11の端部から、ボディフックラジアス40aを介して外向きにU字状に折り返されたボディフック40cを備えている。一方、肩部15側には、胴部11の上縁のボディウォール40h内周に沿って延びるチャックウォール40iと、チャックウォール40iの先端からシーミングウォール40eを介して外向きにU字状に容器の底部側に向かって折り返され、ボディフック40cの外周に密着するシーミングパネル40dと、シーミングパネル40dの端部からカバーフックラジアス40fを介してU字状に底部と反対側に向かって折り返されるカバーフック40gとを有している。このカバーフック40gが、ボディフック40cとチャックウォール40iの外周面との間に挟まれ、コンパウンド70を介して締め付け固定されている。
【0020】
コンパウンド70は、たとえば、ボディフック40cとカバーフック40gとの隙間等に偏在し、カバーフック40gとボディウォール40hとの接触部や、チャックウォール40iとボディウォール40hとの接触部は、金属接触しており、胴部11と肩部15とは電気的に導通している。
【0021】
図3(B)は第3接合部43の部分断面図である。
第3接合部43も、第2接合部42と同様の二重巻締構成であり、胴部11の底部側の端部に形成された不図示の巻締フランジ部に、底部13の外縁に形成された不図示の巻締カール部を重ねて巻締められている。第2接合部42とは、胴部11に対して肩部15を接合するか底部13を接合するかの相違だけなので、以下の説明では、同一の構成部分について同一の符号を付して説明する。
すなわち、ボディフック40cは、胴部11の底部側の端部から、ボディフックラジアス40aを介して外向きにU字状に折り返されている。底部13側には、胴部11の底部側の端部近傍内周に沿って延びるチャックウォール40iを有し、シーミングウォール40eを介して、シーミングパネル40dが容器の蓋体側に向かって折り返されて、ボディフック40cの外周に密着し、カバーフックラジアス40fを介して、カバーフック40gがU字状に底部側に向かって折り返され、ボディフック40cとチャックウォール40iの外周面との間に挟まれ、コンパウンド70を介して締め付け固定されている。
コンパウンド70は、第2接合部42と同様に、ボディフック40cとカバーフック40gとの隙間等に偏在し、カバーフック40gとボディウォール40hとの接触部や、チャックウォール40iとボディウォール40hとの接触部は、金属接触しており、胴部11と底部13とは電気的に導通している。
【0022】
次に、図4を参照して、開閉バルブ30について説明する。
図4(A)は、図1の開閉バルブの閉状態の拡大断面図、(B)は開状態の部分拡大断面図である。
開閉バルブ30は、常時閉弁状態で、外部からの操作によって開弁して、電解液や水素ガスの充填を可能とする。開閉バルブ30の構成は、蓋体20の中央突出部22の内周に嵌合されるバルブハウジング31と、中央突出部22の端面部に設けられた挿通孔からバルブハウジング31内に出没可能に挿通されるステム32と、ステム32の側面に設けられた弁孔33と、ステム32の移動によって開閉される弁孔33を封止するガスケット34と、ステム32を突出方向に付勢するスプリング35と、を備えている。
バルブハウジング31は、底部31dにノズル36を備えた有底円筒形状で、開口端側が中央突出部22の内周に嵌合され、開口端31aと中央突出部22の天板部22bとの間がガスケット34によって密封されている。なお、ノズル36については無くてもよく、底部31dに通孔が開口しているだけでもよい。また、バルブハウジング31の開口端
近傍の外周には外側に張り出す環状凸部31cが設けられている。また、中央突出部22には、環状凸部31cの底部側の縁部に係合するかしめ凹部22aが局部的に設けられ、環状凸部31cとガスケット34とが、かしめ凹部22aと天板部22bとの間で軸方向に挟むように固定されている。
【0023】
ステム32は、バルブハウジング31内に収納される大径のステム基部32aと、中央突出部22の天板部22bの穴からガスケット34を介して外部に突出するステム基部32aよりも小径のステム軸部32bと、を備えている。ステム軸部32bには、先端開口部から軸方向に所定寸法延びる流路32cが設けられ、ステム基部32aとの境界付近の側面に容器内部側の通路出口である弁孔33が開口している。弁孔33は、流路32cとバルブハウジング31内部とを連通し、流路32cと共に、外部空間と容器内部とを連通する通路を構成する。
ステム32は、通常は、スプリング35の付勢力で突出方向に付勢され、弁孔33がガスケット34の内周によって閉塞される閉弁位置にあり、常時閉弁状態に維持されている。
ステム32が相対的に容器内方に向かって押し込まれると、図4(B)に示すように、ガスケット34の内縁が容器の内方に向けて撓み、ガスケット34の内周面が弁孔33の孔縁から離れて開弁し、電解液やガスの充填が可能となる。
なお、蓋体20には、内圧が異常に過大になると圧力を解放する防爆弁85が設けられている。防爆弁85は、たとえば、薄肉部や、スコア等の脆弱部を局部的に設けることによって構成される。図示例では、圧力によって膨らむつば部23に設けられている。
【0024】
次に、図1を参照して、電極体50について説明する。
本実施形態の電池は、ニッケル水素・水素電池(ニッケル水素電池に水素ガスを充填した電池)であり、電極体50として、負極に水素吸蔵合金を含む電極が用いられ、正極には、水酸化ニッケル、電解液としては、たとえば水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の水溶液が用いられる。
電極体50は、積層タイプを例示している。すなわち、複数の正極51と、負極52が、セパレータ53を挟んで、容器本体10の内部に積層された状態で収納されている。正極51は、正極集電体54を介して容器本体10と電気的に接続され、負極52は、負極集電体55を介して蓋体20と電気的に接続されている。電解液はセパレータ53に含浸されている。
【0025】
正極集電体54は、筒状部54aと底板部54bとを有する有底円筒形状で、筒状部54aの内周に各正極51の外縁部が接触し、筒状部54aの外周が容器本体10の胴部11内周に接している。正極51は、正極集電体54の筒状部54aを介して容器本体10の胴部11と電気的に接続され、底板部54bを介して、容器本体10の底部13と電気的に接続される。
【0026】
負極集電体55は、正極集電体54によりも小径の有底円筒状部材である。負極集電体55は、ワッシャ状の正極51、セパレータ53および負極52の穴を貫通し、負極集電体55の外周に、負極52の内縁部が密着している。負極集電体55の蓋体側(開放側)の端部は、蓋体20のつば部23に接触し電気的に接続されている。負極集電体55は、たとえば、連続気泡の多孔質金属によって構成され、負極集電体55の内部空間と、正極51、負極52およびセパレータ53が配置される空間とが連通している。多孔質金属で無くても、負極集電体55に、負極集電体55の内部空間と、正極51、負極52およびセパレータ53が配置される空間とを連通する連通路が設けられていればよい。
正極集電体54の底板部54bと負極集電体55の底部55bは、図示しないが、絶縁部材によって絶縁されている。
なお、上記電極体50の構成は一例であって、たとえば、負極集電体55を開閉バルブ
30に接触させてもよく、種々の構成を採用することができる。
【0027】
この実施形態1では、容器本体10の開口部12を構成する肩部15と蓋体20との第1接合部41が、絶縁体60を介して電気的に絶縁され、胴部11と肩部15の第2接合部42、および胴部11と底部13の第3接合部43は導通状態となっている。
負極52は、負極集電体55を介して蓋体20に電気的に接続され、正極51は正極集電体54を介して、胴部11および底部13に電気的に接続されている。
したがって、開閉バルブ30および蓋体20が負極領域N1となり、肩部15、胴部11および底部13で構成される容器本体10全体が正極領域P1となる。負極領域N1および正極領域P1は、負極、正極の電源端子として利用することができる。電源端子としては、負極領域N1、正極領域P1の任意の位置を端子として利用することもできるし、一部を絶縁フィルム等で被覆することにより、特定の領域を端子として利用することもできる。
また、電極体50で発生した熱は、正極集電体54の筒状部54aに接触する胴部11、底板部54bに接触する底部13を通じて効率的に放熱される。
【0028】
次に、図5を参照して、電池の組み立て工程の一例について説明する。
まず、容器本体10の胴部11と底部13を接合して第1の予備成形体10Aを成形する(図5(A)、(B)参照)。胴部11と底部13の第3接合部43は、二重巻締である。
次いで、第1の予備成形体10Aの胴部11の開口部から、電極体50を収納し、胴部11の開口部に肩部15を接合して、電極体50が収納された状態の容器本体10を成形する(図5(B)、(C)参照)。胴部11と肩部15との第2接合部42も二重巻締である。
次に、容器本体10の肩部15の開口部12に、予め開閉バルブ30が組付けられた蓋体20を接合し、電池の組み立てが完了する(図5(C),(D)参照)。肩部15と蓋体20との第1接合部41の接合は、クリンチ加工によってなされる。
【0029】
電池の組立完了後、開閉バルブ30が開弁され、電池内部が脱気(バキューム)された後、まず、電解液が充填される。バキューム時の容器本体10に作用する陰圧は、内部に収納された電極体50によって保持され、容器本体10の変形は阻止される。電解液は負極集電体55の小径筒状部55aの内部に流入する。負極集電体55は、たとえば、連続気泡の多孔質の金属製、あるいは連通路によって、小径筒状部55aの内部と外部が連通しており、電解液は小径筒状部55aの内部から外部に流出し、セパレータ53に含浸された状態で保持される。次いで、開閉バルブ30を通じて、電池内部(ヘッドスペース)の空気、すなわち、酸素、窒素を脱気(バキューム)した後、水素ガスが電池内部に封入され、開閉バルブ30が閉弁される。この開閉バルブ30の開閉操作は、ステム32を押し込むことで開弁し、ステム32への押し込み力を解放することで閉弁する。
封入される水素ガスの圧力は、最低1MPa、1MPa以上とすることが好ましい。容器の耐圧強度は、水素ガスのガス圧以上の1MPa以上に設定される。容器の耐圧強度は、容器の内圧によってバックリングが生じない圧力である。バックリングは、たとえば、図4(A)に、二点鎖線で示すように、蓋体20の、つば部23と接合筒部34の角部が外向きに反転する変形である。防爆弁85の作動圧は耐圧強度より大きく、内圧が耐圧強度より増大すると蓋体20にバックリングが生じ、さらに内圧が増大し所定圧以上となると防爆弁85が作動し、容器の破壊による内容物の漏洩が防止される。防爆弁85が作動する圧力は、水素ガスの圧力が1MPa程度であれば、1.2~1.5MPa程度に設定される。
ガス圧が作用しても、蓋体20と容器本体10との第1接合部41は、ビード部12aに嵌り合ってかしめ固定されるカール部25を備えた構成であり、接合強度が高く、高い耐圧性を保持できる。さらに、このビード部12aとカール部25に絶縁体60を挟むこ
とにより、絶縁体60を確実に固定でき、絶縁の信頼性を高めることができる。
【0030】
容器内に充填した水素ガスは、負極52の水素吸蔵合金に吸蔵され、負極52は満充電状態になるとともに、水素ガスは、容器の内部空間、たとえば、電極体50と肩部15および蓋体20とのスペース、正極51、負極52、セパレータ53間の隙間、負極集電体55とセパレータ53、正極51との隙間、正極集電体54とセパレータ53、負極52との隙間等に入り込んだ状態となる。
この状態で、充電を行うと、負極52から水素ガスが発生する。開閉バルブ30は閉弁状態となっているので、充電が進むにつれて、電池内部の水素ガス濃度は上昇し、負極52の電位が低下し、その結果、端子電圧が上昇する。このとき、容器内の隙間に保持されている水素ガスによって、正極で発生する酸素は、水素と結合して水となり、正極51の導電剤の酸化、負極52の水素吸蔵合金の酸化が防止される。
【0031】
次に本発明の他の実施形態について説明する。以下の説明で、同じ構成については同一の符号を付して、説明を省略するものとする。
(実施形態2)
図6は本発明の実施形態2に係る電池用容器を使用した電池を示している。
この実施形態では、容器本体の胴部11と肩部15の第2接合部242が、絶縁体を構成する樹脂被膜260を介して電気的に絶縁され、蓋体20と容器本体10との第1接合部241、および胴部11と底部13の第3接合部243は導通状態となっている。
したがって、電池用容器の、肩部15および蓋体20が負極領域N2となり、胴部11と底部13が正極領域P2となり、これらの領域を、正極、負極の電源端子として利用することができる。なお、負極領域N2、正極領域P2は、金属部分に着目した領域であり、例えば表面が樹脂で被覆されていても、樹脂を剥離すれば負極あるいは正極として利用可能な領域と言うものとする。
【0032】
図7(A)は、本実施形態2の絶縁された第2接合部242の拡大断面図である。
第2接合部242の基本的な構成は、樹脂被膜260以外は、実施形態1の第2接合部42と同一の二重巻締構造であり、以下の説明では、主として、絶縁体との関係について説明し、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
この実施形態では、肩部15の内表面と外表面を保護する樹脂被膜260を、第2接合部42まで延ばして、絶縁被膜として利用している。樹脂被膜260としては、電解液に対する耐性を備えた材料、たとえば、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレ
フタレート)等を用いることができる。
この樹脂被膜260によって、チャックウォール40iとボディウォール40hとの接合面、シーミングパネル40dとボディフックラジアスとの接合面、シーミングウォール40eとボディフック40cとの接合面、カバーフックラジアス40fとボディフック40cの端部の間、カバーフック40gとボディフック40cとの間、カバーフック40gとボディウォール40hとの接合面には、樹脂被膜260が介在することになり、金属接触が防止され、肩部15と胴部11の間を電気的に絶縁することができる。
この実施形態では、肩部15の内表面と外表面を保護する樹脂被膜260を第2接合部242の絶縁体として利用しているが、少なくとも、チャックウォール40i、シーミングパネル40d、シーミングウォール40e、カバーフックラジアス40fおよびカバーフック40gの内表面と、カバーフック40gの外表面が被覆されていればよく、これらの部分に部分的に被覆してもよい。また、樹脂被膜を、胴部11のボディウォール40h、ボディフックラジアス40aおよびボディフック40cの内表面および外表面に被覆してもよいし、胴部11の内表面および外表面全体を保護する樹脂被膜が設けられる場合には、肩部15と同様に、第2接合部242まで延ばして、絶縁被膜として利用してもよい。
【0033】
第2接合部242は、図7(B)に示すように、胴部11の肩部15側の端部に形成された巻締フランジ部11aに、肩部15の外縁に形成された巻締カール部15aを重ねて巻締められる。樹脂被膜260は、チャックウォール40iから巻締カール部15aの内表面および外表面に被覆され、巻締カール部15aの内表面には、樹脂被膜260を介してコンパウンド70が塗布される。
【0034】
巻締めは、一般的な巻締手順で巻締られる。たとえば、チャックウォール部40i内周に不図示のチャックをあてがい、重ねられた巻締カール部15aと巻締フランジ部11aを、不図示の巻締めロールによってチャックに向けて押圧し、チャックとの間で圧縮しつつ周方向に移動させることによって二重巻締めがなされる。
このように、第2接合部242の巻締部を構成する巻締カール部15aの内表面および外表面に樹脂被膜260を被覆しておけば、巻締カール部15aと巻締フランジ部11aの接触面に、樹脂被膜260が介在することになり、肩部15と胴部11間の絶縁を図ることができる。
【0035】
図8には、第1接合部241を示している。
樹脂被膜260は、第1接合部241には延びていない。第1接合部241は、実施形態1の第1接合部41と同様に、容器本体10の開口部12の開口縁に設けられるビード部12aと、蓋体20の周縁に設けられビード部12aに嵌り合ってかしめ固定されるカール部25と、を備えている。かしめ固定は、接合筒部24を局部的に外側に屈曲させたクリンチ部27とカール部25との間で、ビード部12aの外周を上下から包むように把持している。このビード部12aとカール部25の接触面間は、コンパウンド70でシールされているが、クリンチ部27とビード部12aの下縁内周との間が、金属接触しており、電気的に導通状態となっている。
また、第3接合部243は、図3(B)の第3接合部43と同じ構造であり、電気的に導通状態となっている。
本実施形態2においても、開閉バルブ30を用いることで、電解液および水素を容易に容器内に充填することができる。また、蓋体20と容器本体10との第1接合部41は、ビード部12aに嵌り合ってかしめ固定されるカール部25を備えた構成であり、接合強度が高く、水素ガスを充填しても、高い耐圧性を保持できる。
なお、本実施形態2においては、容器本体10の底部13が別部品で、第3接合部243で接合されているが、第3接合部243が無く、底部13と胴部11が一体構成となっていてもよい。要するに、第2接合部242によって、容器本体10の胴部11および底部13を合わせた領域と、肩部15および蓋体20を合わせた領域とが電気的に絶縁されていればよい。
【0036】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。
図9は本発明の実施形態3に係る電池用容器を用いた電池を示している。
この実施形態3では、容器本体10の胴部11と底部13の第3接合部343が、絶縁体を構成する樹脂被膜360を介して電気的に絶縁され、蓋体20と容器本体10との第1接合部341、および胴部11と肩部15の第2接合部342は導通状態となっている。
内部の電極体50は、正極集電体54の筒状部54aと容器本体10の胴部11間は、絶縁し、底板部54bと容器本体10の底部13とを電気的に接続する構成となっている。したがって、電池用容器の、蓋体20、肩部15および胴部11が負極領域N3、底部13が正極領域P3となり、これらの領域を、正極、負極の電源端子として利用することができる。
【0037】
図10(A)は、第3接合部343の拡大断面図、図10(B)は、第3接合部343
の接合前の状態を示している。
第3接合部343は、実施形態1と同様に二重巻締によって構成され、樹脂被膜360によって、巻締フランジ部11b側の巻締め部分と、巻締カール部13a側の巻締め部分との接触面間が全て絶縁されている。
この実施形態では、底部13の内表面と外表面を保護する樹脂被膜360を、第3接合部43まで延ばして、絶縁被膜として利用している。樹脂被膜360としては、実施形態2と同様に、電解液に対する耐性を備えた材料、たとえば、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いることができる。
なお、底部13の内表面の樹脂被膜360は、正極集電体54の底板部54bと接触する必要があるので、接触部分はニッケルメッキの金属面が露出している。また、底部13の外表面についても、樹脂被膜360が全面にあると、電極端子とならないので、電極端子となる部分は金属面が露出する構成となる。
この樹脂被膜360によって、チャックウォール40iとボディウォール40hとの接合面、シーミングパネル40dとボディフックラジアスとの接合面、シーミングウォール40eとボディフック40cとの接合面、カバーフックラジアス40fとボディフック40cの端部の間、カバーフック40gとボディフック40cとの間、カバーフック40gとボディウォール40hとの接合面には、樹脂被膜360が介在することになり、金属接触が防止され、底部13と胴部11の間を電気的に絶縁することができる。
この実施形態3では、底部13の内表面と外表面を保護する樹脂被膜360を第3接合部243の絶縁体として利用しているが、少なくとも、チャックウォール40i、シーミングパネル40d、シーミングウォール40e、カバーフックラジアス40fおよびカバーフック40gの内表面と、カバーフック40gの外表面が被覆されていればよく、これらの部分に部分的に被覆してもよい。また、樹脂被膜360を、胴部11のボディウォール40h、ボディフックラジアス40aおよびボディフック40cの内表面および外表面に被覆してもよいし、胴部11の内表面および外表面全体を保護する樹脂被膜360が設けられる場合には、図12に示すように、底部13と同様に、第3接合部243まで延ばして、絶縁被膜として利用してもよい。
二重巻締は、図10(B)に示すように、胴部11の底部側の端部に形成された巻締フランジ部11bに、底部13の外縁に形成された巻締カール部13aを重ねて巻締められる。樹脂被膜360は、チャックウォール40iから巻締カール部13aの内表面および
外表面の全面に被覆され、巻締カール部13aの内表面には、樹脂被膜360を介してコンパウンド70が塗布される。
このように、第3接合部243の巻締部を構成する巻締カール部13aの内表面および外表面に樹脂被膜360を被覆しておけば、巻締カール部15aと巻締フランジ部11bの接触面に、樹脂被膜360が介在することになり、底部13と胴部11間の絶縁を図ることができる。
【0038】
導通状態の第1接合部341は、図8(A)に示した実施形態2の第1接合部241と同じ構成である。また、導通状態の第2接合部342は、図3(A)に示した実施形態1の第2接合部42と同じ構成であり、説明を省略する。
本実施形態3においても、開閉バルブ30を用いることで、電解液および水素を容易に容器内に充填することができる。また、蓋体20と容器本体10との第1接合部41は、ビード部12aに嵌り合ってかしめ固定されるカール部25を備えた構成であり、接合強度が高く、高い耐圧性を保持できる。
なお、本実施形態3においては、容器本体10の開口部12を構成する肩部15が別部品として構成されているが、肩部15が一体成形される場合、あるいは肩部15が無い構成でもよい。要するに、第3接合部343によって、底部13の領域と、容器本体10の底部13以外の構成部分および蓋体20の領域とが、電気的に絶縁される構成となっていればよい。
【0039】
アダプタキャップについて
図11には、上記実施形態1~3の電池用容器の第1接合部に適用されるアダプタキャップが示されている。図11(A)は、第1接合部の内周に嵌合する第1例のアダプタキャップ、図11(B)は、第1接合部の外周に嵌合する第2例のアダプタキャップである。
まず、図11(A)を参照して、第1例のアダプタキャップ81について説明する。
このアダプタキャップ81は、断面ハット形状に成形された金属製で、ステム32を覆う中央凸部81aと、中央凸部81aの下縁から円板状に張り出すつば部81bと、つば部81bの外縁から直角に垂下する係止筒部81cと、を備えている。係止筒部81cの下縁には、外向きに突出する係合突部81dが設けられている。係止筒部81cの外周は第1接合部41の内周に嵌合し、係合突部81dは、つば部81bが蓋体20の中央突出
部22の端面に当接した状態で、クリンチ部27内周に係合し、上下方向に固定される。
【0040】
次に、図11(B)を参照して、第2例のアダプタキャップ82について説明する。
このアダプタキャップ82も、断面ハット形状に成形された金属製で、ステム32を覆う中央凸部82aと、中央凸部82aの下縁から円板状に張り出すつば部82bと、つば部82bの外縁から直角に垂下する係止筒部82cと、を備えている。係止筒部82cの下縁には、内向きに突出する係合突部82dが設けられている。係止筒部82cの内周は第1接合部41の外周に嵌合し、係合突部82dは、つば部82bが第1接合部41のカール部25上端に当接した状態で、第1接合部41のカール部25の下端に係合し、上下方向に固定されている。
これらのアダプタキャップ81、82によって、ステム32が保護され、ステム32が不用意に押し込まれることを防止する。また、アダプタキャップ81、82は、蓋体20と接触しているので、蓋体20と電気的に接続され、電池の端子としても機能する。
【0041】
なお、実施形態2及び実施形態3では、絶縁体として樹脂被膜を利用しているが、実施形態1と同様に、コンパウンドを絶縁体として利用することもできる。また、実施形態1において、実施形態2と同様に、肩部15の樹脂被膜を絶縁体として利用することもできる。さらに、絶縁体としては、樹脂被膜、コンパウンドに限らず、絶縁性の塗膜等、種々の絶縁体を利用することができる。
また、上記各実施形態では、水素ガスを充填するバルブを備えた電池用容器について説明したが、水素ガスを充填しないニッケル水素電池にも適用することもできる。その場合には、蓋体にはバルブを設けず、負極集電体が蓋体に接触する構成とすればよい。
また、上記説明では、ニッケル水素電池について説明したが、正極は二酸化マンガン等の酸化金属であればよく、ニッケル水素電池には限定されず、負極活物質が水素で、水素ガスを封入した二次電池について適用可能である。
さらに、上記各実施形態では、電極体50として、正極、セパレータおよび負極を軸方向に積層した積層体構造となっているが、電極体の構成は積層構造に限定されるものではなく、巻回型の電極体についても適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
実施形態1
10 容器本体
11 胴部、11a 巻締フランジ部、11b 巻締フランジ部
12 開口部
13 底部、13a 巻締カール部
15 肩部、15a 巻締カール部
20 蓋体
21 本体部、22 中央突出部、23 つば部、24 接合筒部、
30 開閉バルブ
31 バルブハウジング、32 ステム、32a 流路、33 弁孔、
34 ガスケット、35 スプリング
41 第1接合部
12a ビード部、25 カール部、27 クリンチ部、
60 絶縁体
42 第2接合部
40a ボディフックラジアス、40c ボディフック、40d シーミングパネル
40e シーミングウォール、40f カバーフックラジアス、40g カバーフック
40h ボディウォール、40i チャックウォール、70 コンパウンド
43 第3接合部
50 電極体
51 正極、52 負極、53 セパレータ、
54 正極集電体、54a 筒状部、54b 底板部
55 負極集電体、55a 小径筒状部、55b 底部
100 電池容器
P1 正極領域、N1 負極領域、
実施形態2
241 第1接合部、242 第2接合部、243 第3接合部、260 絶縁体
P2 正極領域、N2 負極領域
実施形態3
341 第1接合部、342 第2接合部、343 第3接合部、360 絶縁体
P3 正極領域、N3 負極領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12