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特開2023-93235シャットオフノズルの異常診断方法、射出装置、および射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093235
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】シャットオフノズルの異常診断方法、射出装置、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20230627BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208749
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM14
4F206AM19
4F206AM32
4F206AP03
4F206AP11
4F206AP19
4F206AR03
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JM04
4F206JM05
4F206JN06
4F206JP14
4F206JP18
4F206JP22
4F206JP27
4F206JP30
4F206JQ27
4F206JQ55
4F206JQ57
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】交換すべきか否かを判断することができるシャットオフノズルの異常診断方法を提供する。
【解決手段】本開示は、ノズル部(25)と、その外周面から内部の射出流路(34)に達する軸方向に対して斜めに形成されているニードル孔(36)に入れられているニードル弁(26)と、からなるシャットオフノズル(5)を備えた射出装置(3)を対象とする。ニードル弁(26)を前進させて射出流路(34)を閉鎖した状態にし、この状態でスクリュ(20)を駆動して射出材料に圧力を印可する。ニードル孔(36)から、もしくはノズル部の先端の射出口(41)からの射出材料漏れ(43、44)の有無を検出するようにする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、を備え、
前記シャットオフノズルは射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
ニードル弁と、を備え、
前記ニードル弁は、前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めに開けられているニードル孔に対して隙間を介して入れられて進退して前記射出流路を開閉するようになっている射出装置において、
前記ニードル弁を前進させて前記射出流路を閉鎖した状態にする射出流路閉鎖工程と、
前記射出流路が閉鎖された状態で前記スクリュを駆動して前記射出材料に圧力を印可し、前記ニードル孔から、もしくは前記ノズル部の先端の射出口からの射出材料漏れの有無を検出する摩耗検査工程と、を備える、シャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項2】
前記シャットオフノズルはカメラを備え、前記摩耗検査工程における前記射出材料漏れの有無の検出は前記カメラによって得た前記シャットオフノズルの画像によって判断する、請求項1に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項3】
前記画像からの前記射出材料漏れの検出は、前記画像の輝度の変化により判定する、請求項2に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項4】
前記摩耗検査工程は、前記スクリュを駆動して射出圧力に相当する第1の圧力を前記射出材料に印可する第1の圧力印可工程を備えている、請求項1~3のいずれかの項に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項5】
前記摩耗検査工程は、前記第1の圧力印可工程の後に前記スクリュにより前記射出材料に対して前記第1の圧力より小さい第3の圧力を印可して規定時間維持する第3の圧力印可工程を備えている、請求項4に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項6】
前記摩耗検査工程は、前記スクリュにより計量時の背圧に相当する第2の圧力を前記射出材料に印可する第2の圧力印可工程を備えている、請求項1~5のいずれかの項に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項7】
前記摩耗検査工程において、前記ニードル孔からの射出材料漏れが検出された場合、前記ニードル弁と前記ニードル孔の摩耗が発生していると判断する、請求項1~6のいずれかの項に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項8】
前記摩耗検査工程において、前記射出口からの射出材料漏れが検出された場合、前記ニードル弁の先端部におけるシール異常であると判断する、請求項1~6のいずれかの項に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項9】
前記摩耗検査工程において、前記スクリュが前進していると共に前記ニードル孔からも前記射出口からも射出材料漏れが不検出のとき、前記スクリュに設けられている逆流防止リングの摩耗が発生していると判断する、請求項1~6のいずれかの項に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項10】
前記摩耗検査工程は、第1、第2のフェーズと、該第1、第2のフェーズのそれぞれにおいて実施する第1、第2の検査と、を備え、
前記第1のフェーズは、射出圧力に相当する第1の圧力を前記射出材料に印可する第1の圧力印可工程を実施するフェーズであり、
前記第2のフェーズは、計量時の背圧に相当する第2の圧力を前記射出材料に印可する第2の圧力印可工程を実施するフェーズであり、
前記第1の検査は、前記ニードル孔からの前記射出材料漏れを検出する検査であり、
前記第2の検査は、前記射出口からの前記射出材料漏れを検出する検査であり、
前記第1のフェーズを実施して前記第1の検査により前記射出材料漏れを検出したとき前記ニードル弁と前記ニードル孔の摩耗が生じていると判断し、次いで前記第2のフェーズを実施して前記第1の検査により前記射出材料漏れを検出したときは摩耗の量が規定摩耗量を超えていると判断し、不検出のときは前記規定摩耗量以下であると判断し、
前記第1のフェーズを実施して前記第2の検査により前記射出材料漏れを検出したとき、前記ニードル弁の先端部におけるシール異常であると判断する、請求項1~3のいずれかの項に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項11】
前記摩耗検査工程は、第3のフェーズと、該第3のフェーズのそれぞれにおいて実施する第1、第2の検査と、を備え、
前記第1の検査は前記ニードル孔からの前記射出材料漏れを検出する検査であり、
前記第2の検査は、前記射出口からの前記射出材料漏れを検出する検査であり、
前記第3のフェーズは、射出圧力に相当する第1の圧力を前記射出材料に印可する第1の圧力印可工程と、前記第1の圧力より小さい第3の圧力を前記射出材料に印可する第3の圧力印可工程と、を備え、
前記第1の圧力印可工程において、前記第1、第2の検査を実施して前記射出材料漏れが不検出であり、前記第3の圧力印可工程において前記スクリュの前進が検出されるとき、前記スクリュに設けられている逆流防止リングの摩耗が発生していると判断する、請求項1~3のいずれかの項に記載のシャットオフノズルの異常診断方法。
【請求項12】
制御装置と、
加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、を備え、
前記シャットオフノズルは射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
ニードル弁と、を備え、
前記ニードル弁は、前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めに開けられているニードル孔に対して隙間を介して入れられて進退して前記射出流路を開閉するようになっており、
前記制御装置は、前記ニードル弁を前進させて前記射出流路を閉鎖した状態にする射出流路閉鎖工程と、
前記射出流路が閉鎖された状態で前記スクリュを駆動して前記射出材料に圧力を印可し、前記ニードル孔から、もしくは前記ノズル部の先端の射出口からの射出材料漏れの有無を検出する摩耗検査工程と、を実施するようになっている、射出装置。
【請求項13】
前記射出装置はカメラを備え、前記摩耗検査工程における前記射出材料漏れの有無の検出は前記カメラによって得た前記シャットオフノズルの画像によって判断する、請求項12に記載の射出装置。
【請求項14】
前記画像からの前記射出材料漏れの検出は、前記画像の輝度の変化により判定する、請求項13に記載の射出装置。
【請求項15】
前記摩耗検査工程は、射出時の射出圧力に相当する第1の圧力を前記射出材料に印可する第1の圧力印可工程を備えている、請求項12~14のいずれかの項に記載の射出装置。
【請求項16】
前記摩耗検査工程は、前記第1の圧力印可工程の後に前記スクリュにより前記射出材料に対して前記第1の圧力より小さい第3の圧力を印可して規定時間維持する第3の圧力印可工程を備えている、請求項15に記載の射出装置。
【請求項17】
前記摩耗検査工程は、前記スクリュにより計量時の背圧に相当する第2の圧力を前記射出材料に印可する第2の圧力印可工程を備えている、請求項12~16のいずれかの項に記載の射出装置。
【請求項18】
制御装置と、
金型を型締する型締装置と、
射出材料を射出する射出装置と、を備えた射出成形機であって、
前記射出装置は、加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、を備え、
前記シャットオフノズルは射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
ニードル弁と、を備え、
前記ニードル弁は、前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めに開けられているニードル孔に対して隙間を介して入れられて進退して前記射出流路を開閉するようになっており、
前記制御装置は、前記ニードル弁を前進させて前記射出流路を閉鎖した状態にする射出流路閉鎖工程と、
前記射出流路が閉鎖された状態で前記スクリュを駆動して前記射出材料に圧力を印可し、前記ニードル孔から、もしくは前記ノズル部の先端の射出口からの射出材料漏れの有無を検出する摩耗検査工程と、を実施するようになっている、射出成形機。
【請求項19】
前記射出成形機はカメラを備え、前記摩耗検査工程における前記射出材料漏れの有無の検出は前記カメラによって得た前記シャットオフノズルの画像によって判断する、請求項18に記載の射出成形機。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャットオフノズルの異常を診断するニードル弁摩耗診断方法、およびシャットオフノズルが設けられている射出装置、ならびにシャットオフノズルが設けられている射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の射出装置に設けられるシャットオフノズルは、射出ノズルの射出材料が流れる流路を開閉していわゆるハナタレを防止することができるようになっている。シャットオフノズルには色々なタイプがあるが、本発明が対象にしているタイプは、例えば特許文献1に記載されているようなタイプになる。すなわちシャットオフノズルは、ノズル部と、このノズル部に対して斜めに設けられたニードル弁とからなる。このタイプのシャットオフノズルは、ノズル部の外周面からノズル部内の射出流路に達する斜めの孔、つまりニードル孔が開けられている。このニードル孔にニードル弁が進退自在に挿入されている。ニードル弁を前進させると射出流路が閉鎖され、後退させると射出流路が開くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-274125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニードル孔とニードル弁の間にはわずかな隙間があり、ニードル弁は滑らかに前進・後退させることができるようになっている。この隙間からわずかに射出材料が漏れ出すことがあり、長期間の運転を経ると漏れた射出材料がシャットオフノズルに設けられているヒータに接触して煙が発生したりする。このような場合シャットオフノズルを清掃しなければならない。しかしながら、長期間の運転によりニードル孔やニードル弁の摩耗により隙間が拡大している場合には、清掃してもすぐに射出材料漏れが発生してしまうのでシャットオフノズルの交換が必要になる。シャットオフノズルには、ニードル弁によるシール異常により、ノズル部の先端から射出材料が漏れることもある。このような場合にも清掃等が必要であるが、摩耗が進行している場合にはやはりシャットオフノズルの交換が必要になる。
【0005】
従来は、シャットオフノズルの交換をすべきなのか否かを判断できない、という課題があった。
【0006】
本開示において、シャットオフノズルを清掃すべきか、交換すべきかを判断することができるシャットオフノズルの異常診断方法を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、ノズル部と、その外周面から内部の射出流路に達する軸方向に対して斜めに形成されているニードル孔に入れられているニードル弁と、からなるシャットオフノズルを備えた射出装置を対象とする。ニードル弁を前進させて射出流路を閉鎖した状態にし、この状態でスクリュを駆動して射出材料に圧力を印可し、ニードル孔から、もしくはノズル部の先端の射出口からの射出材料漏れの有無を検出するようにする。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、シャットオフノズルについて清掃すべきか交換すべきかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係るシャットオフノズルと射出装置の一部を示す正面断面図である。
図3】本実施の形態に係るシャットオフノズルの一部を示す正面断面図である。
図4】本実施の形態に係るシャットオフノズルの異常診断方法における第1、2のフェーズを示すフローチャートである。
図5】本実施の形態に係るシャットオフノズルの異常診断方法における第3のフェーズを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、図1に示されているように、トグル式の型締装置2と、射出装置3と、を備えている。本実施の形態に係る射出装置3にはシャットオフノズル5が設けられ、シャットオフノズル5の近傍にはカメラ6が設けられている。射出成形機1には制御装置4が設けられ、型締装置2、射出装置3、シャットオフノズル5、カメラ6等、は制御装置4に接続され制御装置4によって制御されるようになっている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤7と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤8と、型締ハウジング9と、を備えている。固定盤7と型締ハウジング9は複数本のタイバー11、11、…により連結されており、可動盤8は固定盤7と型締ハウジング9の間でスライド自在になっている。型締ハウジング9と可動盤8の間には型締機構が、すなわち本実施の形態においてはトグル機構13が設けられている。固定盤7と可動盤8には、それぞれ固定側金型15、可動側金型16が設けられている。従って、トグル機構13を駆動すると金型15、16が型開閉される。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられているスクリュ20と、スクリュ駆動装置22と、を備えている。加熱シリンダ19はスクリュ駆動装置22に支持されており、スクリュ20はスクリュ駆動装置22によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ19にはホッパ23と、次に説明する本実施の形態に係るシャットオフノズル5が設けられている。射出装置3のスクリュ20には、図2に示されているように、その先端部に逆流防止リング24が設けられている。
【0015】
このような射出装置3において、制御装置4からの指令により加熱シリンダ19を加熱して、ホッパ23から射出材料を供給してスクリュ20を回転する。そうすると、射出材料が溶融し、逆流防止リング24を流れてスクリュ20の先端に送られる。すなわち計量される。射出材料が計量されたら、制御装置4の指令によりスクリュ駆動装置22を制御してスクリュ20を軸方向に駆動する。そうすると逆流防止リング24により射出材料の逆流が防止され、射出材料がスクリュ20の前進に伴って前方に押し出される。すなわち、射出材料が金型15、16に射出される。
【0016】
<本実施の形態に係るシャットオフノズル>
本実施の形態に係るシャットオフノズル5は、図2に示されているように、ノズル部25と、ニードル弁26と、ニードル弁26を駆動するニードル弁駆動手段28と、ニードル弁駆動手段28を支持する支持構造30と、を備えている。ノズル部25は加熱シリンダ19に対して、アダプタ32を介して設けられている。
【0017】
ノズル部25には、内部に射出材料が流れる流路すなわち射出流路34が形成されている。射出流路34はノズル部25の軸心に形成されている。本明細書において軸方向とは、ノズル部25の軸の方向を意味するものとする。つまり射出流路34はノズル部25の内部に軸方向に形成されている。そして射出流路34はノズル部25の先端部において開口し、射出材料が射出される射出口41になっている。このようなノズル部25には、その外周面から射出流路34に達する孔、つまりニードル孔36も形成されている。ニードル孔36は軸方向に対して斜めに開けられている。このニードル孔36にニードル弁26が進退自在に挿入されている。
【0018】
本実施の形態において、ニードル弁26は軸径が大きい大径軸部38と、大径軸部38の先端に設けられている軸径が小さい小径軸部39と、小径軸部39の先端に形成されている半球状の頭部40とから形成されている。ニードル孔36には頭部40を先頭にして小径軸部39の一部が摺動的に入れられている。ニードル弁26を駆動するニードル弁駆動手段28はピストンシリンダユニットからなり支持構造30によって支持されている。制御装置4(図1参照)からの指令によりニードル弁駆動手段28を駆動するとニードル弁26が前進・後退して、頭部40が射出流路34を閉鎖・開放するようになっている。射出流路34を閉鎖すると、射出口41からの射出材料漏れが防止される。
【0019】
このように構成されているシャットオフノズル5の近傍には、前記したようにカメラ6が設けられている。より詳しく説明すると、カメラ6はノズル部25のニードル孔36の出口近傍と射出口41近傍とを撮影するようになっている。
【0020】
ニードル弁26を前進させると、前記したように射出口41からの射出材料漏れが防止されるはずである。しかしながら、ニードル弁26の頭部40に射出材料の残存物が蓄積したり、頭部40の摩耗やノズル部25の射出流路34の摩耗が進行したりすると、ニードル弁26によるシール効果が低下する。後で説明するように、シャットオフノズル5の異常を検出する異常検出方法において、ニードル弁26の頭部40により射出流路34を閉じた状態で射出材料に圧力を印可する。このときカメラ6は、図3に示されているような、射出口41からの射出材料漏れ43があるか否かを検出するようにしている。
【0021】
カメラ6は、ニードル孔36からの射出材料漏れ44も検出するようになっている。ニードル孔36の内径は、ニードル弁26の小径軸部39の軸径よりわずかに大きく、ニードル弁26は滑らかに駆動することができるようになっている。正常な状態においては、ニードル孔36と小径軸部39の隙間はわずかであるので、射出流路34内の射出材料はこの隙間からほとんど漏れない。しかしながら、長期間の運転を経るとニードル孔36とニードル弁26の小径軸部39の摩耗により隙間が拡大して、射出材料漏れが生じる。後で説明するようにシャットオフノズル5の異常を検出する異常検出方法において、ニードル弁26の頭部40により射出流路34を閉じた状態で射出材料に圧力を印可する。このときカメラ6は、ニードル孔36からの射出材料漏れ44の有無を検出するようにしている。
【0022】
カメラ6は、射出口41からの射出材料漏れ43と、ニードル孔36からの射出材料漏れ44を検出するが、具体的には次のようにして検出するようになっている。すなわち、制御装置4(図1)はカメラ6において撮影された画像を検査する。そして射出材料漏れ43、44が発生していない正常だったときの画像と、次に説明する異常診断方法を実施しているときに撮影した画像を比較して輝度が変化している部分を探す。変化している部分があり、その大きさが規定の大きさ以上になっていれば、射出材料漏れ43、44が発生していると判断する。
【0023】
<本実施の形態に係るシャットオフノズルの異常診断方法>
本実施の形態に係るシャットオフノズル5の異常診断方法は、第1~3のフェーズから構成されている。第1のフェーズは、ニードル弁26の頭部40におけるシールが正常であるか異常であるかの検査、およびニードル孔36とニードル弁26の小径軸部39の摩耗が進行しているか否かの検査を実施する。そして第2のフェーズはニードル孔36とニードル弁26の小径軸部39の摩耗が進行しているときに実施し、摩耗が規定摩耗量に達しているか否かを検査するようになっている。
【0024】
第3のフェーズは、独立したフェーズになっており、検出可能な異常について可能な限りすべて検出して問題のある部品を洗い出すようになっている。すなわち、シャットオフノズル5のシール異常や摩耗の有無について検査するだけでなく、さらに逆流防止リング24の摩耗を検査するようになっている。これによってシャットオフノズル5の分解の作業を1回で済むようにしている。
【0025】
<第1のフェーズ>
本実施の形態に係るシャットオフノズル5の異常診断方法の第1のフェーズを実施する。図4に示されているように、ニードル弁26を前進(ステップS01)させる。つまり制御装置4(図1参照)により、ニードル弁駆動手段28(図2参照)を駆動してニードル弁26を前進させる。そうすると頭部40によりノズル部25の射出流路34が閉鎖される。
【0026】
制御装置4は第1の圧力印可工程(ステップS02)を実施する。第1の圧力は制御装置4内に設定されており、射出時の圧力に相当する圧力になっている。この第1の圧力になるようにスクリュ駆動装置22を駆動してスクリュ20を介して射出材料に圧力を印可する。この工程で、制御装置4は単に射出工程を実施してもよい。射出工程において制御装置4はスクリュ20を速度制御する。しかしながら、速度が目標速度に達しない場合には、制御装置4は規定の圧力リミッタを超えないようにスクリュ20を制御している。この圧力リミッタが実質的に射出時の圧力に相当しており、第1の圧力になっているからである。
【0027】
このステップS02の工程を実施しているとき、射出材料漏れ43、44(図3参照)の有無を検出する。まず制御装置4は、カメラ6により画像を得、射出口41における射出材料漏れ43の有無を検出する(ステップS03)。もし、射出口41からの射出材料漏れ43があれば、シール異常であると判断(ステップS04)する。すなわち、ニードル弁26の頭部40におけるシールが異常であると判断する。制御装置4は、シャットオフノズル5の清掃が必要である、あるいは交換が必要であると警報を発する。もし、射出口41における射出材料漏れ43がなければ、制御装置4はステップS05に移行する。
【0028】
ステップS05において制御装置4は、ニードル孔36における射出材料漏れ44の有無を検査する。もし射出材料漏れ44が発生していなければ、制御装置4はニードル弁26とニードル孔36の摩耗は発生していないと判断(ステップS06)する。ここで第1のフェーズを完了し、制御装置4はシャットオフノズル5に異常はない、とメッセージを出力する。一方ステップS05において、制御装置4が射出材料漏れ44を検出したら、ニードル弁26とニードル孔36の摩耗が発生していると判断(ステップS07)する。制御装置4は摩耗が発生していることを警告する。ここで第1のフェーズは完了する。制御装置4はここで処理を終了してもよい。しかしながら、本実施の形態においては第2のフェーズを引き続き実施する。
【0029】
<第2のフェーズ>
第2のフェーズを実施する場合には、ニードル弁26(図2参照)を前進させて頭部40により射出流路34が閉鎖されていることが前提になる。すでに第1のフェーズにおいてステップS01によって射出流路34が閉鎖されているので、そのままステップS08を実施する。
【0030】
ステップS08では、第2の圧力印可工程を実施する。制御装置4はスクリュ駆動装置22(図1参照)によりスクリュ20を制御して、射出材料に対して制御装置4に設定されている第2の圧力を印可する。第2の圧力は第1の圧力より小さく、計量時における背圧に相当する。制御装置4は、単に計量工程を実施してもよい。計量工程によって射出材料が計量され、射出材料に第2の圧力が印可されるからである。
【0031】
制御装置4は、カメラ6により画像を得、ニードル孔36(図3参照)からの射出材料漏れ44の有無を判断する(ステップS09)。ただし、ニードル孔36からはすでにステップS07で判断したように射出材料漏れ44が発生した状態になっている。このステップS09においては、ステップS08の工程において、射出材料漏れ44の量が増加しているか否かをチェックすることになる。射出材料漏れ44の量が増加していなければ、ニードル弁26とニードル孔36の摩耗は、規定摩耗量に達していないと判断(ステップS10)する。例えばニードル弁26とニードル孔36の隙間は0.03mmより小さいと判断することになる。シャットオフノズル5は、必ずしも交換する必要はなく使用を継続することができる。
【0032】
一方、ステップS09において射出材料漏れ44の量が増加していることを検出したら、制御装置4はステップS11に移行する。すなわち、ニードル弁26とニードル孔36の摩耗は、規定摩耗量に達したと判断(ステップS11)する。例えばニードル弁26とニードル孔36の隙間は0.03mm以上になったと判断することになる。制御装置4はシャットオフノズル5の交換を促す警報を発する。第2のフェーズを終了する。
【0033】
<第3のフェーズ>
本実施の形態に係るシャットオフノズル5の異常診断方法における第3のフェーズを図5によって説明する。まず、制御装置4(図1参照)はステップS21によりニードル弁26(図2参照)を駆動して頭部40により射出流路34を閉鎖する。次いで、制御装置4はスクリュ駆動装置(22)によりスクリュ(20)を駆動して射出材料に第1の圧力を印可(ステップS22)する。このとき射出口(41)からの射出材料漏れ43(図3参照)の有無をチェックし(ステップS23)、射出材料漏れ43があればステップS23によりシール異常であると判断する。制御装置4は、シャットオフノズル5の清掃が必要である、あるいは交換が必要であると警報を発し、処理を終了する。
【0034】
一方、射出材料漏れ43がなければ、ニードル孔36からの射出材料漏れ44(図3参照)の有無をチェック(ステップS25)する。漏れがあれば制御装置4はステップS26により、ニードル弁26とニードル孔36とに摩耗があると判断し、摩耗が発生していることを警告する。処理を終了する。しかしながら、ステップS25においてニードル孔36の射出材料漏れ44を検出しなければ、制御装置4はステップS27を実施し、シャットオフノズル5には異常がないと判断する。制御装置4は処理を進める。
【0035】
制御装置4は第3の圧力印可工程(ステップS28)を実施する。すなわち、射出材料が制御装置4に設定されている第3の圧力になるようにスクリュ20を駆動する。第3の圧力は第1の圧力より小さい圧力である。竪型射出成形機においてこのステップS28を実施する場合、スクリュ20を駆動しているサーボモータの制御を完全に停止して、いわゆるサーボフリーにしてもよい。このようにするとスクリュ20の自重によって射出材料に圧力が印可されることになる。第3の圧力は、このときに印可される圧力と同程度の大きさの圧力になっている。
【0036】
このように射出材料に第3の圧力を印可したとき、スクリュ20が前進するか否かをチェック(ステップS29)する。もしスクリュ20の前進が検出されたら、ステップS30により逆流防止リング24(図2参照)の摩耗が発生していると判断する。制御装置4(図1参照)は逆流防止リング24の交換を促す警報を出力する。一方、スクリュ20の前進が検出されなければステップS31により、逆流防止リング24は正常であると判断する。制御装置4は処理を終了する。
【0037】
<本実施の形態の変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、射出材料漏れ43、44(図3参照)のチェックにカメラ6を使用しない方法もある。カメラ6の代わりに射出成形機1の制御装置4(図1参照)を操作するオペレータが、目視により射出材料漏れ43、44の有無をチェックしてもよい。
【0038】
本実施の形態に係るシャットオフノズルの異常診断方法で説明した第1~3のフェーズについても変形が可能である。例えば、第1のフェーズにおいてステップS03とステップS05の順番を入れ替えることができる。同様に、第3のフェーズにおいて、ステップS23とステップS25の順番を入れ替えても良い。もし、シャットオフノズル5(図2参照)の異常がないことが明らかであれば、第3のフェーズにおいてステップS21を実施した後に、ステップS28に移行するようにしてもよい。さらには第2のフェーズは第1のフェーズの後に連続して実施するように説明したが、単独で実施することもできる。第2のフェーズを単独で実施する場合には、制御装置4はニードル弁26を前進させて頭部40により射出流路34を閉鎖し、その後ステップS08を実施するようにする。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
5 シャットオフノズル 6 カメラ
7 固定盤 8 可動盤
9 型締ハウジング 11 タイバー
13 トグル機構 15 固定側金型
16 可動側金型 19 加熱シリンダ
20 スクリュ 22 スクリュ駆動装置
23 ホッパ 24 逆流防止リング
25 ノズル部 26 ニードル弁
28 ニードル弁駆動手段 30 支持構造
32 アダプタ 34 射出流路
36 ニードル孔 38 大径軸部
39 小径軸部 40 頭部
41 射出口 43 射出材料漏れ
44 射出材料漏れ
B ベッド


図1
図2
図3
図4
図5