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特開2023-93251予測システム、予測方法、プログラムおよびモデル生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093251
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】予測システム、予測方法、プログラムおよびモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20230627BHJP
【FI】
C02F1/00 V
C02F1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208775
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 絵里
(72)【発明者】
【氏名】山口 太秀
(72)【発明者】
【氏名】井元 剛
(57)【要約】
【課題】より簡易に、水源における臭気物質の濃度範囲、および、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する。
【解決手段】予測システム10は、水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、水質情報を臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルを生成する生成部11と、水源における水質情報をモデルに入力して、水質情報がX個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、水源における臭気物質の濃度範囲、および、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する判定部12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルを生成する生成手段と、
前記水源における水質情報を前記モデルに入力して、前記水質情報が前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、前記水源における前記臭気物質の濃度範囲、および、前記臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する判定手段と、を備える予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の予測システムにおいて、
前記生成手段は、前記水源における前記臭気物質の濃度を複数の時点でそれぞれ測定した複数の濃度データを分析し、分析の結果に基づいてXを決定する、予測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の予測システムにおいて、
前記生成手段は、
Y個の対策レベル(Yは2以上の整数)にそれぞれ対応するY個の濃度範囲を決定し、
前記複数の濃度データのそれぞれについて、前記Y個の濃度範囲のうち濃度データに示される濃度が属する1個の濃度範囲を特定し、特定された前記1個の濃度範囲に前記濃度データを対応付け、
前記Y個の濃度範囲のそれぞれに対応付けられた濃度データの数の比を算出し、
前記比に基づいてXを決定する、予測システム。
【請求項4】
請求項3に記載の予測システムにおいて、
前記生成手段は、前記比に応じて、前記Y個の対策レベルのそれぞれに対応するクラスを決定し、
前記判定手段は、前記Y個の対策レベルのうち、前記モデルに入力された前記水質情報がクラスタリングされたクラスに対応する対策レベルを、前記水源における前記臭気物質への対策レベルとして判定する、予測システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の予測システムにおいて、
前記生成手段は、前記比に応じて、前記Y個の濃度範囲のそれぞれに対応するクラスを決定し、
前記判定手段は、前記Y個の濃度範囲のうち、前記モデルに入力された前記水質情報がクラスタリングされたクラスに対応する濃度範囲を、前記水源における前記臭気物質の濃度範囲として判定する、予測システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の予測システムにおいて、
前記第1情報は、前記水源の水温、pH、溶存酸素、前記水源における気温、日照時間、および照度のうち少なくとも1つを示す情報であり、
前記第2情報は、前記水源の貯水量、流入量、取水量と流出量、電気伝導率、滞留時間、および前記水源における降水量のうち少なくとも1つを示す情報である、予測システム。
【請求項7】
水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルに、前記水源における水質情報を入力して、前記水質情報を前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングする工程と、
前記水質情報が前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、前記水源における前記臭気物質の濃度範囲、および、前記臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する工程と、を含む予測方法。
【請求項8】
コンピュータに、
水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルに、前記水源における水質情報を入力して、前記水質情報を前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングする処理と、
前記水質情報が前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、前記水源における前記臭気物質の濃度範囲、および、前記臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する処理と、を実行させるプログラム。
【請求項9】
水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルを生成するモデル生成方法であって、
Y個の対策レベル(Yは2以上の整数)にそれぞれ対応するY個の濃度範囲を決定する工程と、
前記水源における前記臭気物質の濃度を複数の時点で測定した複数の濃度データのそれぞれについて、前記Y個の濃度範囲のうち濃度データに示される濃度が属する1個の濃度範囲を特定し、特定された前記1個の濃度範囲に前記濃度データを対応付ける工程と、
前記Y個の濃度範囲のそれぞれに対応付けられた濃度データの数の比を算出する工程と、
前記比に基づいてXを決定する工程と、
前記水質情報を前記決定したX個のクラスのいずれかにクラスタリングするモデルを学習する工程と、を含むモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測システム、予測方法、プログラムおよびモデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貯水池などの水源において、カビ臭などの臭気物質に起因する臭いが突発的に発生することがある。突発的に臭気物質が発生すると、浄水場における、臭気物質を抑制するための処理の条件(粉末活性炭(粉炭)注入率およびオゾン注入率など)の変更が間に合わず、浄水中に臭気物質が残存する可能性がある。浄水中に臭気物質が残存すると、水質基準の超過および住民からの苦情の発生といった問題が生じてしまう。そのため、カビ臭などの臭気物質に起因する臭いの発生を予測する技術が検討されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、カビ臭の原因となるカビ臭物質を産生する生物(カビ臭物質産生生物)の濃度を説明因子に含む、カビ臭物質濃度を予測する教師ありモデル(ニューラルネットワーク)を生成し、生成したモデルを用いてカビ臭の発生を予測する技術が記載されている。また、非特許文献2には、所定の時間間隔(例えば、1時間間隔)でのカビ臭物質濃度の測定結果を用いて、カビ臭物質濃度を予測する教師ありモデル(ニューラルネットワーク)を生成し、生成したモデルを用いてカビ臭の発生を予測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D. H. THUAN, M. UMEDA et al., ”PREDICTION MODEL OF TASTE-AND-ODOR EVENTS IN KAMAFUSA RESERVOIR”, Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. B1 (Hydraulic Engineering), Vol. 68, No. 4, pp.I_289-I_294, (2012)
【非特許文献2】石井崇晃、山村寛ら、“ニューラルネットワークと長短期記憶ネットワークモデルを用いた2-MIBとジェオスミンの将来濃度予測モデルの構築”、令和2年度水道研究発表会講演集, pp592-593 (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の技術では、カビ臭物質産生生物の濃度に関するデータを取得する必要があり、非特許文献2に記載の技術では、通常の測定頻度(週1回~月1回程度)よりも高頻度にカビ臭物質濃度の測定結果を取得する必要があるため、カビ臭への対策に関する判定を簡易に行うことができないという問題がある。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、より簡易に水源における臭気物質の濃度範囲、および、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定することができる、予測システム、予測方法、プログラムおよびモデル生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る予測システムは、水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルを生成する生成手段と、前記水源における水質情報を前記モデルに入力して、前記水質情報が前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、前記水源における前記臭気物質の濃度範囲、および、前記臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する判定手段と、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る予測方法は、水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルに、前記水源における水質情報を入力して、前記水質情報を前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングする工程と、前記水質情報が前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、前記水源における前記臭気物質の濃度範囲、および、前記臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する工程と、を含む。
【0009】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルに、前記水源における水質情報を入力して、前記水質情報を前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングする処理と、前記水質情報が前記X個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、前記水源における前記臭気物質の濃度範囲、および、前記臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する処理と、を実行させる。
【0010】
本発明の一実施形態に係るモデル生成方法は、水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、および、前記水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、前記水質情報を前記臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルを生成するモデル生成方法であって、Y個の対策レベル(Yは2以上の整数)にそれぞれ対応するY個の濃度範囲を決定する工程と、前記水源における前記臭気物質の濃度を複数の時点で測定した複数の濃度データのそれぞれについて、前記Y個の濃度範囲のうち濃度データに示される濃度が属する1個の濃度範囲を特定し、特定された前記1個の濃度範囲に前記濃度データを対応付ける工程と、前記Y個の濃度範囲のそれぞれに対応付けられた濃度データの数の比を算出する工程と、前記比に基づいてXを決定する工程と、前記水質情報を前記決定したX個のクラスのいずれかにクラスタリングするモデルを学習する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、より簡易に水源における臭気物質の濃度範囲、および、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る予測システムの構成例を示す図である。
図2図1に示す生成手段の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】対策レベルとカビ臭への対策との対応関係の一例を示す図である。
図4】対策レベルと2-MIB濃度との対応関係の一例を示す図である。
図5】年間を通しての2-MIB濃度の度数分布を示す図である。
図6】対策レベルとクラスとの対応関係の一例を示す図である。
図7図1に示す予測システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図8図1に示す分類モデルによるクラスタリングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して例示説明する。各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る予測システム10の構成例を示す図である。本実施形態に係る予測システム10は、評価対象とする所望の水源(例えば、貯水池など)における、臭気物質を産生する生物(臭気物質産生生物)が産生する臭気物質の濃度範囲、および/または、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定するシステムである。なお、対策レベルとは、臭気物質への対策の必要性の高さを示す指標である。本実施形態では、対策レベルとして1~3の3つのレベルが設定され、レベルが高いほど、臭気物質への対策の必要性が高いことを示すものとする。以下では、臭気物質が、カビ臭の原因となるカビ臭物質であり、カビ臭物質の濃度範囲およびカビ臭物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する例を用いて説明する。カビ臭物質への対策レベルの判定には、例えば、対策は不要である、対策が必要である、対策の準備が必要であるなどの判定が含まれる。また、カビ臭物質への対策レベルの判定には、例えば、カビ臭物質への対策を行う場合の、粉末活性炭(粉炭)注入率およびオゾン注入率などの条件の判定などが含まれてよい。
【0015】
図1に示す予測システム10は、生成手段11と、判定手段12とを備える。
【0016】
生成手段11は、分類モデル13を生成する手段である。分類モデル13は、後述する第1情報及び第2情報を含む水質情報に基づき、当該水質情報を臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のいずれかにクラスタリングするモデルである。すなわち、分類モデル13は、水源の水質情報を入力データとし、X個のクラスのうち当該水質情報が属するクラスを出力データとするクラスタリングモデルである。
【0017】
第1情報は、水源における臭気物質産生生物の増殖に寄与する因子に関する情報である。増殖に寄与する因子とは、生物が増殖するための条件となる因子(例えば、水温、pH、溶存酸素、気温、日照時間、および照度などであるが、これらに限られない。)、ならびに、増殖の程度を示唆する因子(例えば、pHおよび溶存酸素などであるが、これらに限られない。)である。本実施形態では、第1情報は、例えば水源の水温および/またはpHを示す情報である。しかしながら、第1情報は、当該例に限られず、例えば水源の水温、pH、溶存酸素、水源における気温、日照時間、および照度のうち少なくとも1つを示す情報であってもよい。水温、pHおよび溶存酸素は、例えば、水源における定期採水あるいは水源に設置された水質計による計測などにより取得することができる。また、気温、日照時間、および照度は、例えば、気象庁から発表されるデータから取得することができる。しかしながら、水源における水温、pH、溶存酸素、気温、日照時間、および照度は、当該例に限られず任意の手法で取得されてもよい。
【0018】
また、第2情報は、水源の貯水量を直接的または間接的に示す情報である。貯水量を間接的に示す情報(すなわち、貯水量を示唆する情報)とは、例えば、水源における流入量、取水量と流出量、降水量、および/または電気伝導率などであるが、これらに限られない。換言すると、水源における流入量、取水量と流出量、流出量、降水量、電気伝導率、滞留時間、またはこれらの組み合わせに基づいて、水源の貯水量を算出可能である。本実施形態では、第2情報は、水源の貯水量、流入量、および取水量と流出量のうち少なくとも1つを示す情報である。しかしながら、第2情報は、当該例に限られず、例えば水源の貯水量、流入量、取水量と流出量、電気伝導率、滞留時間、および水源における降水量のうち少なくとも1つを示す情報であってもよい。ここで、水源における臭気物質の量および臭気物質産生生物の数自体には増減が無くても、水源の貯水量が変化することで、水源における臭気物質および臭気物質産生生物の濃度も変化する。そのため、評価対象の水源における貯水量を直接的または間接的に示す第2情報は、評価対象の水源における、臭気物質への対策レベルを決定する上で利用可能な情報である。滞留時間は、例えば水源の容積を平均流入量で除することで算出することができる。水源の貯水量、水源からの流入量および取水量と流出量は、例えば、水源(貯水池)の諸元から取得することができる。また、降水量は、例えば、気象庁から発表されるデータから取得することができる。また、電気伝導率は、例えば、水源における定期採水あるいは水源に設置された電気伝導率計による計測などにより取得することができる。しかしながら、貯水量、流入量、取水量と流出量、降水量、および電気伝導率は、当該例に限られず任意の手法で取得されてもよい。
【0019】
このように、本実施形態に係る水質情報は、少なくとも、臭気物質産生生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、評価対象の水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む。ここで、本実施形態に係る水質情報には、一般的に取得が困難な臭気物質の濃度データ(本実施形態では、カビ臭に直接的に関係する2-MIB濃度などのデータ)は含まない。
【0020】
生成手段11は、評価対象の水源における臭気物質の濃度(本実施形態では、カビ臭物質濃度(例えば、2-MIB(2-Methylisoborneol)濃度))を示す臭気データおよび水質情報を取得し、取得した臭気データおよび水質情報に基づき分類モデル13を生成する。上述したように、分類モデル13は、水源の水質情報に基づき、当該水質情報を臭気物質の濃度に応じたX個のクラスの何れかにクラスタリングするモデルである。生成手段11による分類モデル13の生成の詳細は後述する。
【0021】
判定手段12は、評価対象の水源における水質情報を分類モデル13に入力して、水質情報がX個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、水源における臭気物質の濃度範囲、および、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する手段である。ここで、判定手段12は、生成手段11による分類モデル13の生成に用いられた水質情報と同様の情報、すなわち、評価対象の水源における臭気物質産生生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、および、当該水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報を、分類モデル13に入力する。本実施形態においては、判定手段12は、水源の水質情報を分類モデル13に入力して、水質情報がカビ臭物質濃度に応じたX個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、水源におけるカビ臭物質の濃度範囲、および、カビ臭物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する。
【0022】
上述した、水質情報に含まれる第1情報ならびに第2情報は、水源における水質管理に一般的に用いられる情報であり、比較的容易に取得することができる。さらに、クラスタリングに用いる水質情報には、一般的に取得が困難な、カビ臭に直接的に関係する2-MIB濃度あるいはカビ臭物質産生生物の濃度などに関する情報は含まない。したがって、本実施形態に係る予測システム10は、入手が容易な水質情報を用いることで、より簡易に、水源における臭気物質の濃度範囲、および、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方(本実施形態では、カビ臭物質の濃度範囲、および、カビ臭物質への対策レベルの少なくとも一方)を判定するシステムだということができる。
【0023】
次に、生成手段11による分類モデル13の生成について説明する。
【0024】
図2は、生成手段11の動作の一例を示すフローチャートであり、本実施形態に係るモデル生成方法について説明するための図である。本実施形態では、臭気物質の一例として、カビ臭物質の一例である2-MIBを用いて説明する。カビ臭物質の例としては、2-MIBのほかに、ジェオスミンなどを用いてもよい。
【0025】
まず、生成手段11は、2-MIBへのY個の対策レベル(Yは2以上の整数)と、Y個の対策レベルそれぞれにおける2-MIBへの対策とを決定する(ステップS11)。生成手段11は、例えば、図3に示すように、Y=3、すなわち、3つの対策レベル(レベル1、レベル2およびレベル3)を設定する。そして、生成手段11は、例えば、レベル1に対応する対策として、2-MIBへの対策が不要であることを示す「対策不要」を設定し、レベル2に対応する対策として、必要に応じて2-MIBへの対策が実行できるように準備を行うことを示す「対策準備」を設定し、レベル3に対応する対策として、2-MIBへの対策が必要であることを示す「対策必要」を設定する。
【0026】
図3においては、Y=3である例を示しているが、これに限られるものではない。生成手段11は、Y=2あるいはY=4以上であってもよい。また、生成手段11は、例えば、2-MIBへの対策を実行する場合に、対策内容が異なる(例えば、粉炭注入率およびオゾン注入率が異なる)複数の対策を異なるレベルに対応付けて設定してもよい。
【0027】
図2を再び参照すると、生成手段11は、Y個の対策レベルにそれぞれ対応するY個の濃度範囲(本実施形態では、2-MIB濃度の範囲)を決定する(ステップS12)。生成手段11は、例えば、図4に示すように、レベル1に対応する2-MIB濃度の範囲として、2-MIBへの対策が不要な濃度範囲(例えば、0~0.7ng/L)の範囲を設定し、レベル2に対応する2-MIB濃度の範囲として、2-MIBへの対策を準備すべき濃度範囲(例えば、0.7~3.0ng/Lの範囲)を設定し、レベル3に対応する2-MIB濃度の範囲として、2-MIBへの対策を実行すべき濃度範囲(例えば、3.0~ng/Lの範囲)を設定する。なお、Y個の対策レベルにそれぞれ対応するY個の2-MIB濃度の範囲の設定は、厳密な設定である必要はなく、後述するクラス数の設定が可能であればよい。したがって、各レベルに対応する2-MIB濃度の範囲は、経験則などに基づいて設定されてもよい。
【0028】
図4に示す例はあくまでも一例であり、例えば、評価対象の水源における2-MIB濃度の濃度データあるいは水道水質基準などに基づき、任意の濃度範囲を設定すればよい。
【0029】
図2を再び参照すると、生成手段11は、評価対象の水源における臭気データ(臭気物質(2-MIB)の濃度を複数の時点でそれぞれ測定した複数の濃度データ)を分析し、分析の結果に基づいて、Xを決定する。なお、臭気データは、一定期間(例えば、1か月、1年など)における臭気物質の濃度の変化の傾向を把握するために、当該期間の複数の時点それぞれで臭気物質の濃度を測定した複数の濃度データを含む。
【0030】
生成手段11による、臭気データの分析および分析の結果に基づくXの決定について、具体的に説明する。以下では、図3に示すように、Y=3、すなわち、3つの対策レベル(レベル1、レベル2およびレベル3)が設定されたとする。また、図4に示すように、レベル1に対応する2-MIB濃度の範囲として、0~0.7ng/Lの範囲が設定され、レベル2に対応する2-MIB濃度の範囲として、0.7~3.0ng/Lの範囲が設定され、レベル3に対応する2-MIB濃度の範囲として、3.0~ng/Lの範囲が設定されたとする。
【0031】
図5は、年間を通じての2-MIB濃度の度数分布の一例を示す図である。
【0032】
図5に示すように、2-MIB濃度は、一般的に、年間を通じてほとんどの期間において10ng/L未満であり、10ng/Lを超過するのは10%にも満たない期間である。すなわち、水源における臭気物質の濃度(2-MIB濃度)を複数の時点でそれぞれ測定した複数の濃度データの分布には偏りがある。
【0033】
生成手段11は、複数の濃度データのそれぞれについて、Y個の濃度範囲のうち濃度データに示される濃度が属する1個の濃度範囲(0~0.7ng/Lの範囲、0.7~3.0ng/Lの範囲および3.0~ng/Lの範囲のいずれか)を特定し、特定された1個の濃度範囲に濃度データを対応付ける(ステップS13)。
【0034】
次に、生成手段11は、Y個の濃度範囲のそれぞれに対応付けられた濃度データの数の比を算出する(ステップS14)。そして、生成手段11は、算出した比に基づいてXを決定する(ステップS15)。
【0035】
例えば、0~0.7ng/Lの範囲に属する濃度データの数と、0.7~3.0ng/Lの範囲に属する濃度データの数と、3.0~ng/Lの範囲に属する濃度データの数との比が、a:b:c(a,b,cは正の整数。)であるとする。この場合、生成手段11は、X=a+b+cと決定する。なお、各濃度範囲に属する濃度データの数の比が小数になる場合がある。この場合、生成手段11は、各値の小数点以下を四捨五入するなどして、各濃度範囲に属する濃度データの数の比を整数比とし、a,b,cの値を決定する。
【0036】
そして、生成手段11は、算出したデータ数の比に応じて、各対策レベルに対応するクラスを決定する。具体的には、生成手段11は、レベル1に対応するクラス数をa個と決定し、レベル2に対応するクラス数をb個と決定し、レベル3に対応するクラス数をc個と決定する。
【0037】
例えば、レベル1に対応する2-MIB濃度の範囲(0~0.7ng/Lの範囲)に属するデータ数と、レベル2に対応する2-MIB濃度の範囲(0.7~3.0ng/Lの範囲)に属するデータ数と、レベル3に対応する2-MIB濃度の範囲(3.0~ng/Lの範囲)に属するデータ数との比が、5:3:2である場合、生成手段11は、上述したように、X=10(=5+3+2)と決定する。そして、生成手段11は、図6に示すように、レベル1に対応するクラスの数を5個と決定し、濃度範囲の小さいクラス1からクラス5までをレベル1に対応付け、レベル2に対応するクラスの数を3個と決定し、クラス6からクラス8までをレベル2に対応付け、レベル3に対応するクラスの数を2個と決定し、クラス9,10をレベル3に対応付ける。このように、本実施形態においては、結果として、各クラスには、対策レベルを介して、濃度範囲および対策がそれぞれ対応付けられる。上述した例では、例えば、クラス1には、対策レベル1を介して、0~0.7ng/Lの2-MIBの濃度範囲および「対策不要」が対応付けられる。
【0038】
一般に、モデルによるクラスタリングの手法としてK-Means法を用いる場合には、各クラスに含まれるデータ数を均一にするという傾向があるので、例えば、学習済みモデルに入力された水質情報があるクラスにクラスタリングされることを確率的に解釈した場合、入力された水質情報が各クラスにクラスタリングされる確率は均一になる傾向がある。このため、例えば、クラス数=対策レベル数=3個としてモデルを学習させてしまうと、学習済みモデルに入力した水質情報がクラス3にクラスタリングされる確率(すなわち、対策レベル3(対策要)と判定される確率)はおよそ1/3となる。しかしながら、実際の水源では、図5に示すように、濃度データの分布に偏りがあるので、例えば、対策が実際に必要となる確率は1/3よりも大きく下回る。このように、クラス数=対策レベル数とすると、判定結果が実情と整合しない可能性が高い。
【0039】
一方、本実施形態においては、生成手段11は、水源における臭気物質の濃度を複数の時点でそれぞれ測定した複数の濃度データを分析し、分析の結果に基づいてXを決定する。具体的には、生成手段11は、Y個の対策レベル(Yは2以上の整数)にそれぞれ対応するY個の濃度範囲を決定し、複数の濃度データのそれぞれについて、Y個の濃度範囲のうち濃度データに示される濃度が属する1個の濃度範囲を特定し、特定された1個の濃度範囲に濃度データを対応付ける。そして、生成手段11は、Y個の濃度範囲のそれぞれに対応付けられた濃度データの数の比を算出し、算出した比に基づいてXを決定する。こうすることで、各対策レベルに対応する臭気物質の濃度範囲(図4参照)に即した水質情報のクラスタリングが可能となる。また、例えばクラス数=対策レベル数とした場合と比較して、判定結果が実情と整合する可能性が向上し得る。
【0040】
図2を再び参照すると、生成手段11は、水質情報を決定したX個のクラスのいずれかにクラスタリングするモデルを学習(教師なし学習)して、分類モデル13を生成する(ステップS16)。上述した例では、生成手段11は、濃度範囲0~0.7ng/Lに5個のクラス(クラス1~5)が属し、濃度範囲0.7~3ng/Lに3個のクラス(クラス6~8)が属し、濃度範囲3~ng/Lに2個のクラス(クラス9,10)が属するように、モデルを学習させる。上述したような学習(教師なし学習)は、例えば、k-means法により行うことができる。
【0041】
分類モデル13の学習における説明変数は、クラスタリングに用いるデータ、すなわち、水質情報に合わせる必要がある。そこで、生成手段11はまず、水質情報に含まれる第1情報および第2情報に基づき、水質情報をクラスタリングする。次に、生成手段11は、水質情報のクラスタリングの結果、水質情報の各クラスターが、図5に示すどのクラスに該当するかを、各クラスターの2-MIB濃度についての情報を含むデータセットにより決定する。そして、生成手段11は、学習用に入力された複数のデータのクラス分類精度が高くなるようパラメータを調整し、分類モデル13を生成する。上述したように、本実施形態においては、分類モデル13の学習には、第1情報および第2情報を含む水質情報が用いられ、2-MIB濃度の測定データ自体は用いられていない。ただし、分類モデル13の学習には、第1情報および第2情報を含む水質情報が各データに含まれていれば、2-MIB濃度を含むデータと、2-MIB濃度を含まないデータとが混在してもよい。
【0042】
このように本実施形態に係る生成手段11によるモデル生成方法は、Y個の対策レベル(Yは2以上の整数)にそれぞれ対応するY個の濃度範囲を決定する工程(ステップS12)と、水源における臭気物質の濃度を複数の時点で測定した複数の濃度データのそれぞれについて、Y個の濃度範囲のうち濃度データに示される濃度が属する1個の濃度範囲を特定し、特定された1個の濃度範囲に濃度データを対応付ける工程(ステップS13)と、Y個の濃度範囲のそれぞれに対応付けられた濃度データの数の比を算出する工程(ステップS14)と、算出した比に基づいてXを決定する工程(ステップS15)と、水質情報を決定したX個のクラスのいずれかにクラスタリングするモデルを学習する工程(すステップS16)と、を含む。このように本実施形態においては、臭気物質の測定データをモデルの学習に用いることなく、水源における水質管理に一般的に用いられる水質情報を用いて、分類モデル13を生成することができる。
【0043】
次に、本実施形態に係る予測システム10の動作について説明する。
【0044】
図7は、本実施形態に係る予測システム10の動作の一例を示すフローチャートであり、本実施形態に係る予測システム10による予測方法について説明するための図である。
【0045】
判定手段12は、評価対象の水源における水質情報を、前述した方法で生成した分類モデル13に入力して、水質情報を、臭気物質の濃度に応じたX個のクラスのいずれかにクラスタリングする(ステップS21)。上述したように、本実施形態においては、臭気物質の濃度(例えば、2-MIB濃度)に関する情報を用いず、水質情報に含まれる第1情報および第2情報を、分類モデル13の学習に用いる説明変数に設定している。そのため、臭気物質の濃度に関する情報を用いずに、評価対象の水源における水質情報を、臭気物質の濃度に応じたX個のクラスのいずれかにクラスタリングすることができる。
【0046】
判定手段12は、クラスタリングの結果に基づき、評価対象の水源における臭気物質の濃度範囲および臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する(ステップS22)。具体的には、判定手段12は、臭気物質の濃度範囲を判定する場合、水質情報がクラスタリングされたクラスに対応する、臭気物質の濃度範囲を判定する。また、判定手段12は、臭気物質への対策レベルを判定する場合、対策レベルとクラスとの対応付け(図6)を参照し、水質情報がクラスタリングされたクラスに対応する対策レベルを判定する。すなわち、判定手段12は、Y個の濃度範囲のうち、分類モデル13に入力された水質情報がクラスタリングされたクラスに対応する濃度範囲を、評価対象の水源における臭気物質の濃度範囲として判定する。また、判定手段12は、Y個の対策レベルのうち、分類モデル13に入力された水質情報がクラスタリングされたクラスに対応する対策レベルを、評価対象の水源における臭気物質への対策レベルとして判定する。
【0047】
図8は、分類モデル13によるクラスタリングの一例を示す図である。図8においては、クラス数が3(クラス0,1,2)であり、レベル数が3(レベル1,2,3)である例を示している。また、図8においては、クラス0は、2-MIB濃度が0~約0.7ng/Lの範囲であり、クラス1は、2-MIB濃度が0.7ng/Lから、3ng/Lの範囲であり、クラス2は、2-MIB濃度がそれ以上の範囲である。
【0048】
図8に示すように、各クラスにおけるデータが略均等にクラスタリングされた。また、低濃度側が高濃度側と比べて、より細かく分類できていることが確認された。低濃度側をより細かく分類することにより、カビ臭の発生の立ち上がりを高精度に検出し、カビ臭への対策の実施の判定をより速やかに行うことができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、生物が産生する臭気物質に起因する臭いとして、カビ臭を対象とする例として説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、藻類が発生する臭気、例えば、藻類Uroglena sp.が原因である生ぐさ臭あるいは、Staurastrumが原因である青草臭を対象としてもよい。
【0050】
また、判定手段12は、例えば、臭気物質に起因する臭いの立ち上がり時は分類モデル13によるクラスタリングの結果に基づき判定を行い、臭気物質が高濃度になると、ガスクロマトグラフィーによる臭気物質の測定を高頻度に行うようにしてもよい。そして、判定手段12は、ガスクロマトグラフィーによる測定結果も踏まえて判定を行うようにしてもよい。臭気物質が高濃度になると、より速やかかつ確実に臭気物質への対策を行う必要がある。分類モデル13によるクラスタリングの結果に加えて、ガスクロマトグラフィーによる測定結果を踏まえて判定を行うことで、より速やかかつ確実に臭気物質への対策を行うことができる。
【0051】
上述した生成手段11および判定手段12は、例えば、コンピュータが備える、1つ以上のプロセッサにより構成される。プロセッサは、例えば、マイクロコントローラであるがこれに限られず、例えば、汎用のプロセッサまたは特定の処理に特化した専用プロセッサなど、任意のプロセッサとすることができる。本開示に係るプログラムが当該プロセッサにより読み込まれて実行されることで、生成手段11および判定手段12の動作が実現される。すなわち、本開示に係るプログラムは、プロセッサにより読み込まれて実行されることで、コンピュータを予測システム10として動作させる。
【0052】
このように、予測システム10は、生成手段11と、判定手段12とを備える。生成手段11は、水源における臭気物質を産生する生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報、ならびに、水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報を含む水質情報に基づき、水質情報を臭気物質の濃度に応じたX個のクラス(Xは2以上の整数)のクラスのいずれかにクラスタリングするモデル(分類モデル13)を生成する。判定手段12は、水源における水質情報を分類モデル13に入力して、水質情報がX個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、水源における臭気物質の濃度範囲、および、臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定する。
【0053】
水質情報を分類モデル13に入力して、水質情報がX個のクラスのいずれかにクラスタリングされた結果に基づき、水源における臭気物質の濃度範囲および臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定することで、2-MIBなどの臭気物質の測定データを用いることなく、水質情報を用いて、水源における臭気物質の濃度範囲および臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定することができる。水質情報は水源における水質管理に一般的に用いられる情報であるため、より簡易に水源における臭気物質の濃度範囲および臭気物質への対策レベルの少なくとも一方を判定することができる。
【0054】
本発明を諸図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段およびステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。前述したところは本発明の一実施形態にすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えてよいことは言うまでもない。
【0055】
例えば上述した実施形態では、水源における臭気物質産生生物の増殖に寄与する因子に関する第1情報が、水温、pH、溶存酸素、気温、日照時間、および照度のうち少なくとも1つを示す情報であり、水源の貯水量を直接的又は間接的に示す第2情報が、水源の貯水量、流入量、取水量と流出量、電気伝導率、滞留時間、および水源における降水量のうち少なくとも1つを示す情報である具体例について説明した。しかしながら、ある1つの情報が第1情報および第2情報のいずれに該当するか(或いは、第1情報および第2情報の両方に該当するか)は、実施形態に応じて適宜決定されてもよい。換言すると、ある1つの情報が第1情報および第2情報のいずれに該当するかを厳密に決定しなくてもよい。例えば、上述した実施形態では第2情報に分類されている滞留時間について説明すると、滞留時間が短いほど臭気物質産生生物が水源から流出しやすく、結果として臭気物質産生生物の増殖が抑制され得る。このため、滞留時間を第1情報に該当するものとして取り扱う実施形態も可能である。
【0056】
また、上述した実施形態において、予測システム10によって実現される各種の手段をソフトウェア構成として説明したが、これらのうち少なくとも一部の手段は、ソフトウェア資源および/またはハードウェア資源を含む概念であってもよい。
【0057】
また、上述した実施形態に係る予測システム10として機能させるために、コンピュータなどの装置を用いることができる。当該装置は、実施形態に係る予測システム10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該装置のメモリに格納し、当該装置のプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることによって実現可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 予測システム
11 生成手段
12 判定手段
13 分類モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8