(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093253
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】照明制御システム、及びスレーブ
(51)【国際特許分類】
H05B 47/18 20200101AFI20230627BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20230627BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20230627BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20230627BHJP
【FI】
H05B47/18
H05B45/10
H05B47/19
H05B47/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208777
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昇太郎
(72)【発明者】
【氏名】廣渡 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 智
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA03
3K273PA08
3K273QA31
3K273RA08
3K273RA16
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA28
3K273TA29
3K273TA41
3K273TA46
3K273TA52
3K273TA54
3K273TA63
3K273TA66
3K273UA15
3K273UA17
3K273UA18
3K273UA21
3K273UA22
3K273UA23
(57)【要約】
【課題】マスタがスレーブに対してデータを送信する所定の周期を変更することなく、データを追加すること。
【解決手段】照明制御システム100は、スレーブ1と、マスタ2と、を備える。マスタ2は、スレーブ1との間でシリアル通信を行うことにより、スレーブ1に割り当てられているアドレスに対してデータを所定の周期で送信する。スレーブ1は、入力受付部14と、通信部11と、制御部12と、を有する。入力受付部14は、アドレスの入力を受け付ける。通信部11は、入力受付部14で受け付けたアドレスを用いてマスタ2との間でシリアル通信を行う。制御部12は、通信部11で受信したデータに基づいて、スレーブ1に対応する照明装置3に関する制御を実行する。入力受付部14は、スレーブ1に割り当てられるアドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレーブと、
前記スレーブとの間でシリアル通信を行うことにより、前記スレーブに割り当てられているアドレスに対してデータを所定の周期で送信するマスタと、を備え、
前記スレーブは、
前記アドレスの入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた前記アドレスを用いて前記マスタとの間でシリアル通信を行う通信部と、
前記通信部で受信した前記データに基づいて、前記スレーブに対応する照明装置に関する制御を実行する制御部と、を有し、
前記入力受付部は、前記スレーブに割り当てられる前記アドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている、
照明制御システム。
【請求項2】
前記マスタは、前記スレーブに複数の前記アドレスが割り当てられている場合、複数の前記アドレスの各々で互いに内容が異なる複数種類の前記データを前記スレーブに送信する、
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記入力受付部は、前記スレーブに割り当てる前記アドレスの数を変更する入力を受け付ける、
請求項1又は2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記通信部で前記データを受信した場合に、前記データに基づく前記照明装置に関する制御と、前記アドレスに応じた前記照明装置に関する制御と、を実行する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明制御システム。
【請求項5】
アドレスの入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた前記アドレスを用いて、前記アドレスに対してデータを所定の周期で送信するマスタとの間でシリアル通信を行う通信部と、
前記通信部で受信した前記データに基づいて、対応する照明装置に関する制御を実行する制御部と、を備え、
前記入力受付部は、前記アドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている、
スレーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置を制御する照明制御システム、及び照明制御システムに用いられるスレーブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マスタとなるコントローラに対して、スレーブとなる照明器具を接続するマスタ-スレーブ方式の照明制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、マスタがスレーブに対してデータを送信する所定の周期を変更することなく、データを追加することができる照明制御システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る照明制御システムは、スレーブと、マスタと、を備える。前記マスタは、前記スレーブとの間でシリアル通信を行うことにより、前記スレーブに割り当てられているアドレスに対してデータを所定の周期で送信する。前記スレーブは、入力受付部と、通信部と、制御部と、を有する。前記入力受付部は、前記アドレスの入力を受け付ける。前記通信部は、前記入力受付部で受け付けた前記アドレスを用いて前記マスタとの間でシリアル通信を行う。前記制御部は、前記通信部で受信した前記データに基づいて、前記スレーブに対応する照明装置に関する制御を実行する。前記入力受付部は、前記スレーブに割り当てられる前記アドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている。
【0006】
本発明の一態様に係るスレーブは、入力受付部と、通信部と、制御部と、を備える。前記入力受付部は、アドレスの入力を受け付ける。前記通信部は、前記入力受付部で受け付けた前記アドレスを用いて、前記アドレスに対してデータを所定の周期で送信するマスタとの間でシリアル通信を行う。前記制御部は、前記通信部で受信した前記データに基づいて、対応する照明装置に関する制御を実行する。前記入力受付部は、前記アドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の照明制御システム等は、マスタがスレーブに対してデータを送信する所定の周期を変更することなく、データを追加することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る照明制御システムの概要を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係るスレーブに割り当てられるアドレスの入力の一例の説明図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係るスレーブに割り当てられるアドレスの入力の他の一例の説明図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る照明制御システム及び比較例の照明制御システムの動作の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0011】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る照明制御システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る照明制御システムの概要を示すブロック図である。
図1に示すように、照明制御システム100は、複数のスレーブ1と、マスタ2と、を備えている。各スレーブ1は、通信線L1を介してマスタ2に接続されている。
図1では、通信線L1は1本の通信線で示されているが、実際には2本の通信線により構成されている。また、各スレーブ1には、対応する照明装置3が接続されている。
【0012】
照明装置3は、例えば室内空間の天井に設置されて、当該室内空間を照らすベースライト等である。照明装置3は、ベースライトに限定されず、例えばシーリングライト、ダウンライト、又はスポットライト等であってもよい。また、照明装置3は、例えば誘導灯、又は作業灯等であってもよく、設置場所も室内に限定されない。また、照明制御システム100が制御対象とする照明装置3は1種類に限らず、種々の照明装置3が混在していてもよい。
【0013】
照明装置3は、光源を有する。光源は、例えばLED(Light Emitting Diode)素子によって実現され、白色光を対象空間へと照射する。なお、光源は、例えば半導体レーザ、有機EL(Electro Luminescence)、又は無機EL等の他の発光素子によって実現されてもよい。また、光源は、白色光を照射する態様に限らず、赤色光等の他の光色の光を照射する態様であってもよい。さらに、光源は、複数種類の光色から選択された光色の光を照射する態様であってもよい。
【0014】
各スレーブ1は、通信線L1を介してマスタ2との間で双方向の半二重式のシリアル通信を行う。実施の形態では、シリアル通信の通信規格として国際規格で認証を受けたDALI(登録商標)(Digital Addressable Lighting Interface)規格を採用する。したがって、照明制御システム100では、1つのマスタ2に対してスレーブ1を最大64台接続することが可能である。また、照明制御システム100では、スレーブ1のグループ化(つまり、照明装置3のグループ化)を行うことが可能である。また、照明制御システム100では、照明装置3単位、又は照明装置3のグループ単位で点灯、消灯、及び調光を行うことが可能であり、例えば254階調の調光、又はフェード若しくは16種類のシーンを設定した調光等の高度な制御を行うことが可能である。さらに、照明制御システム100では、各スレーブ1とマスタ2との間で双方向で通信できることから、各スレーブ1に対応する照明装置3の状態(例えば、照明装置3の故障、又は照明装置3が有する光源の寿命等)に関する情報を、マスタ2で収集することも可能である。
【0015】
各スレーブ1は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、入力受付部14と、を備えている。また、図示していないが、各スレーブ1は、対応する照明装置3と接続し、かつ照明装置3との間で信号を送受するためのインタフェースを備えている。
【0016】
通信部11は、入力受付部14で受け付けたアドレスを用いてマスタ2との間でシリアル通信を行う。ここで、入力受付部14で受け付けたアドレスとは、スレーブ1に割り当てられるアドレスである。つまり、通信部11は、マスタ2から送信された信号が指定するアドレスが、スレーブ1に割り当てられたアドレスと一致する場合、当該信号を受信する。一方、通信部11は、マスタ2から送信された信号が指定するアドレスが、スレーブ1に割り当てられたアドレスと一致しない場合、当該信号を破棄する。
【0017】
制御部12は、通信部11で受信したデータに基づいて、スレーブ1に対応する照明装置3に関する制御を実行する。例えば、制御部12は、通信部11で受信した信号に含まれるコマンドに従って、照明装置3の点灯、消灯、又は調光を実行する。そして、制御部12は、制御後の照明装置3の状態を示す信号を、通信部11を介してマスタ2へ返信する制御を実行する。また、制御部12は、通信部11で受信した信号に含まれるコマンドに従って、現在の照明装置3の状態を示す信号を、通信部11を介してマスタ2へ返信する制御を実行する。
【0018】
制御部12は、例えばマイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサ又は専用回路によって実現されてもよい。制御部12の機能は、制御部12を構成するマイクロコンピュータ又はプロセッサ等のハードウェアが記憶部13に記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0019】
記憶部13は、入力受付部14で入力されたアドレス、つまりスレーブ1に割り当てられたアドレス、及び制御部12が実行するコンピュータプログラム等のスレーブ1の動作に関する情報処理に必要な情報が記憶される記憶装置である。記憶部13は、例えば半導体メモリ等によって実現される。
【0020】
入力受付部14は、アドレスの入力を受け付ける。アドレスの入力は、例えば照明制御システム100のユーザ、又は施工者等によって行われる。上述のように、入力受付部14で入力されたアドレスは、スレーブ1のアドレスとして割り当てられ、マスタ2との間のシリアル通信で用いられる。ここで、スレーブ1には、1つのアドレスを割り当てるだけでなく、複数のアドレスを割り当てることも可能である。つまり、入力受付部14は、スレーブ1に割り当てられるアドレスとして複数のアドレスの入力を受付可能に構成されている。
【0021】
以下、入力受付部14の具体例について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、実施の形態に係るスレーブ1に割り当てられるアドレスの入力の一例の説明図である。
図3は、実施の形態に係るスレーブ1に割り当てられるアドレスの入力の他の一例の説明図である。
図2及び
図3に示すように、入力受付部14は、例えばDIP(Dual In-line Package)スイッチにより構成される。
図2及び
図3に示す例では、入力受付部14は、複数の第1スイッチ141と、1つの第2スイッチ142と、で構成されている。
【0022】
なお、
図2及び
図3に示す「X」は、アドレスの各桁に対応する数を表しており、後述するように第1スイッチ141のオン/オフに応じて「1」及び「0」のいずれか一方の値を示す。つまり、
図2及び
図3に示す例では、スレーブ1に割り当てられるアドレスは2進数で表されている。もちろん、スレーブ1に割り当てられるアドレスは、例えば16進数等の他の進数で表されてもよい。
【0023】
複数の第1スイッチ141は、それぞれスレーブ1に割り当てられるアドレスの各桁(ここでは、1桁目を除く)に対応する。例えば、
図2及び
図3において最も左に位置する第1スイッチ141は、アドレスの最上位桁に対応する。また、例えば、
図2及び
図3において最も右に位置する第1スイッチ141は、アドレスの最下位から2番目の桁に対応する。第1スイッチ141がオンに設定されると、当該第1スイッチ141が対応するアドレスの桁が「1」に設定される。一方、第1スイッチ141がオフに設定されると、当該第1スイッチ141が対応するアドレスの桁が「0」に設定される。
【0024】
第2スイッチ142は、スレーブ1に拡張アドレスを割り当てるか否か、つまりスレーブ1に複数のアドレスを割り当てるか否かを設定する際に用いられる。すなわち、第2スイッチ142がオンに設定されると、スレーブ1に拡張アドレスが割り当てられた状態、つまりスレーブ1に複数のアドレスが割り当てられた状態となる。一方、第2スイッチ142がオフに設定されると、スレーブ1に拡張アドレスが割り当てられない状態、つまりスレーブ1に1つのアドレスのみが割り当てられた状態となる。
【0025】
例えば、
図2に示すように第2スイッチ142がオンに設定されると、スレーブ1には、「XXX…X0」と、「XXX…X1」との2つのアドレスが割り当てられる。つまり、スレーブ1には、複数の第1スイッチ141の入力に基づく通常アドレスと、通常アドレスに所定の数(ここでは、「1」)をインクリメントした拡張アドレスと、が割り当てられる。一方、
図3に示すように第2スイッチ142がオフに設定されると、スレーブ1には、「XXX…X0」のアドレスのみが割り当てられる。つまり、スレーブ1には、複数の第1スイッチ141の入力に基づく通常アドレスのみが割り当てられる。
【0026】
このように、実施の形態では、入力受付部14は、スレーブ1に割り当てるアドレスの数を変更する入力を受け付けるように構成されている。
図2及び
図3に示す例では、第2スイッチ142のオン/オフにより、スレーブ1に割り当てるアドレスの数を1つ又は2つに変更することが可能である。
【0027】
実施の形態に係る照明制御システム100を利用するに当たっては、ユーザ又は施工者等は、各スレーブ1の入力受付部14を操作することにより、各スレーブ1に1つ又は2つのアドレスを割り当てる。このとき、ユーザ又は施工者等は、各スレーブ1に割り当てるアドレスが重複しないように割り当てる。
【0028】
マスタ2は、例えば調光盤であって、複数のスレーブ1にそれぞれ対応する複数の照明装置3を制御する。マスタ2は、複数の照明装置3をグループごとに制御することが可能であり、また、照明装置3ごとに制御することも可能である。マスタ2は、例えば照明装置3の点灯、消灯、及び調光制御を、グループごと又は照明装置3ごとに実行する。また、マスタ2は、例えば照明装置3の状態を監視する制御を、グループごと又は照明装置3ごとに実行する。
【0029】
マスタ2は、スレーブ1との間でシリアル通信を行うことにより、スレーブ1に割り当てられているアドレスに対してデータを所定の周期P1(
図4参照)で送信する。ここで、所定の周期P1は、いわゆるポーリング周期であって、例えば数十msである。具体的には、マスタ2は、照明装置3の制御を指示するコマンド(データ)、又は照明装置3の状態の返信を指示するコマンド(データ)を含む信号を、スレーブ1に割り当てられたアドレスを順次指定して送信する動作を実行する。
【0030】
例えば、マスタ2に通信線L1を介して接続されたスレーブ1の台数が16台であって、各スレーブ1に「1」~「16」のアドレスが割り当てられている、と仮定する。この場合、マスタ2は、アドレス「1」~「16」を順次指定してコマンドを含む信号を送信する動作を、所定の周期P1ごとに繰り返す。
【0031】
[動作]
以下、実施の形態に係る照明制御システム100の動作について、比較例の照明制御システムの動作との比較を交えて説明する。比較例の照明制御システムは、各スレーブに1つのアドレスのみが割り当てられており、複数のアドレスを割り当てることができない点で、実施の形態に係る照明制御システム100と相違する。
【0032】
図4は、実施の形態に係る照明制御システム100及び比較例の照明制御システムの動作の一例の説明図である。なお、
図4に示す「M1」は、スレーブ1との通信に割り当てられていない余裕期間を表している。ここでは、余裕期間M1は、所定の周期P1の20%の長さに相当する。
【0033】
図4の(a)は、実施の形態に係る照明制御システム100及び比較例の照明制御システムの両方に共通する通常動作の一例を示している。
図4の(a)に示す例では、マスタ2に通信線L1を介して接続されたスレーブ1の台数が16台であって、各スレーブ1に「1」~「16」のアドレスが割り当てられていることとして説明する。
【0034】
図4の(a)に示すように、マスタ2は、1つのアドレスに対して割り当てられた通信時間P11において、当該アドレスを指定してデータ(コマンド)を送信する動作と、当該アドレスを割り当てられたスレーブ1から返信されるデータを受信する動作と、を実行する。例えば、アドレス「1」に対応する通信時間P11においては、マスタ2は、アドレス「1」を指定してデータを送信し、アドレス「1」が割り当てられたスレーブ「1」から返信されるデータを受信する。以下、指定するアドレスを「2」、「3」、…「16」と順次指定して同様の動作を実行する。そして、最後のアドレス「16」に対応する通信時間P11の経過後、更に余裕期間M1が経過すると、所定の周期P1が経過する。以下、マスタ2は、所定の周期P1ごとに上記の動作を繰り返す。
【0035】
図4の(a)に示すデータD1は、1台のスレーブ1に割り当てられた通信時間P11においてマスタ2が送信及び受信可能なデータを表している。
図4の(a)に示す例では、所定の周期(つまり、ポーリング周期)P1が50ms、通信時間P11が2.5msである。
【0036】
図4の(b)は、マスタ2からスレーブ1に対して送信されるデータの追加が発生した場合における比較例の照明制御システムの動作の一例を示している。データの追加の発生は、例えば照明制御システムの仕様の変更により、照明装置3に関する制御の内容が変更された場合に生じ得る。
【0037】
一例として、照明装置3が誘導灯であって、照明制御システムの仕様の変更前においては、接点出力を指示するコマンドをマスタ2がスレーブ1に対して送信していた、と仮定する。ここで、接点出力とは、誘導灯の点灯確認のために誘導灯の有する接点を閉じる制御をいう。そして、照明制御システムの仕様の変更後においては、接点出力を指示するコマンドに加えて、接点点滅を指示するコマンドをマスタ2がスレーブ1に対して送信する、と仮定する。ここで、接点点滅とは、誘導灯の有する接点を入/切を繰り返すことで光源を点滅させる制御をいう。接点点滅においては、更に光源の光色を指定するコマンドも含まれ得る。上記の例では、照明制御システムの仕様の変更により、接点点滅を指示するコマンドの分だけデータの追加が発生している。
【0038】
上述のようにマスタ2からスレーブ1に対して送信されるデータの追加が発生した場合、通信時間P11内にマスタ2が追加分を含むデータを送信及び受信することができないといった事態が生じ得る。このような事態を回避する手段として、例えばマスタ2がデータを分割して送信及び受信することが考えられる。具体的には、マスタ2が1回目の所定の周期P1で接点出力を指示するコマンドの送信、及びスレーブ1からの返信を行い、2回目の所定の周期P1で接点点滅を指示するコマンドの送信、及びスレーブ1からの返信を行う、といった手段が考えられる。しかしながら、この手段では、スレーブ1に対して接点出力の指示を行うタイミングと、スレーブ1に対して接点点滅の指示を行うタイミングとの間に所定の周期P1分の遅延が生じてしまう、という問題がある。
【0039】
そこで、比較例の照明制御システムでは、
図4の(b)に示すように、1台のスレーブ1(つまり、1つのアドレス)に割り当てられる通信時間を、通信時間P11から通信時間P21へ延ばしている。ここでは、1つのアドレスに割り当てられる通信時間が、2.5msから3.0msへと延ばされている。この場合、マスタ2は、通信時間P21内にマスタ2が追加分を含むデータを送信及び受信することが可能である。
図4の(b)に示すデータD2は、1台のスレーブ1に割り当てられた通信時間P21においてマスタ2が送信及び受信可能なデータを表している。
【0040】
しかしながら、比較例の照明制御システムでは、以下のような問題がある。すなわち、1つのアドレスに割り当てられた通信時間は、全てのアドレスの各々について一律に設定されている。このため、いずれかのアドレスに割り当てられた通信時間を延ばした場合、全てのアドレスの各々について一律に通信時間を延ばさなければならない。したがって、いずれかのスレーブ1に対して送信されるデータの追加が発生した場合、当該スレーブ1に割り当てられた通信時間のみならず、データの追加が発生していないスレーブ1に割り当てられた通信時間も無駄に増大することとなり、所定の周期(つまり、ポーリング周期)が延びてしまう。
【0041】
図4の(b)に示す例では、1つのアドレスに割り当てられる通信時間が2.5msから3.0msへと延ばされたことにより、所定の周期P2は60msとなり、所定の周期P1と比較して10ms延びてしまっている。
【0042】
そして、所定の周期が延びると、例えばマスタ2から各スレーブ1に対して調光フェード制御、すなわち各照明装置3の調光レベルを連続的に変化させる制御を指示した場合、各スレーブ1に対する指示に遅延が生じる。このため、各照明装置3の調光レベルが不連続に変化してしまい、滑らかな調光フェード制御を実現することができない等の問題が生じ得る。
【0043】
そこで、実施の形態に係る照明制御システム100では、上記の問題を解決するために、スレーブ1の入力受付部14は、スレーブ1に割り当てられるアドレスとして複数(ここでは、2つ)のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている。つまり、実施の形態に係る照明制御システム100では、スレーブ1に割り当てられるアドレスの数に比例して、1台のスレーブ1に割り当てられる通信時間を延ばすことができる。また、実施の形態に係る照明制御システム100では、1つのアドレスに割り当てられた通信時間を延ばす必要がないため、比較例の照明制御システムのように所定の周期が延びることもない。
【0044】
図4の(c)は、マスタ2からスレーブ1に対して送信されるデータの追加が発生した場合における実施の形態に係る照明制御システム100の動作の一例を示している。
図4の(c)に示す例では、マスタ2に通信線L1を介して接続されたスレーブ1の台数が8台であって、各スレーブ1に2つずつアドレスが割り当てられていることとして説明する。すなわち、スレーブ「1」には通常アドレス「1」及び拡張アドレス「2」が割り当てられ、スレーブ「2」には通常アドレス「3」及び拡張アドレス「4」が割り当てられる。以下、スレーブ「3」~スレーブ「8」についても同様に通常アドレス及び拡張アドレスが割り当てられる。
【0045】
図4の(c)に示す例では、アドレス「1」に対応する通信時間P11においては、マスタ2は、アドレス「1」を指定してデータを送信し、アドレス「1」が割り当てられたスレーブ「1」から返信されるデータを受信する。続けて、アドレス「2」に対応する通信時間P11においては、マスタ2は、アドレス「2」を指定してデータを送信し、アドレス「2」が割り当てられたスレーブ「1」から返信されるデータを受信する。つまり、マスタ2は、アドレス「1」に対応する通信時間P11、及びアドレス「2」に対応する通信時間P11のいずれにおいても、1台のスレーブ「1」との間でデータの送信及び受信を行うことになる。
【0046】
ここでは、マスタ2は、奇数のアドレス(通常アドレス)を指定した場合は、接点出力を指示するコマンドを含むデータを送信し、偶数のアドレス(拡張アドレス)を指定した場合は、接点点滅を指示するコマンドを含むデータを送信する。つまり、マスタ2は、スレーブ1に複数(ここでは、2つ)のアドレスが割り当てられている場合、複数のアドレスの各々で互いに内容が異なる複数種類のデータをスレーブ1に送信することになる。このため、マスタ2が所定の周期P1ごとにデータの種類を変更して送信する場合と比較して、スレーブ1で複数種類のデータの各々を受信するタイミングに遅延が生じにくい。
【0047】
上述のように、マスタ2は、1台のスレーブ1に割り当てられた通信時間(ここでは、通信時間P11の2倍の時間)内に、追加分を含むデータを送信及び受信することが可能である。
図4の(c)に示すデータD3は、1台のスレーブ1に割り当てられた通信時間においてマスタ2が送信及び受信可能なデータを表している。
【0048】
以降、マスタ2は、指定するアドレスを「3」、「4」、…「16」と順次指定して同様の動作を実行する。そして、最後のアドレス「16」に対応する通信時間P11の経過後、更に余裕期間M1が経過すると、所定の周期P1が経過する。以下、マスタ2は、所定の周期P1ごとに上記の動作を繰り返す。これにより、所定の周期P1において、マスタ2は、8台のスレーブ1との間でデータの送信及び受信を行うことになる。
【0049】
図4の(c)に示す例では、各スレーブ1には2つのアドレスが割り当てられているため、各スレーブ1に割り当てられる通信時間は、1つのアドレスに割り当てられた通信時間P11の2倍となる。一方、1つのアドレスに割り当てられた通信時間P11は、通常動作時と同じ長さで済む。したがって、比較例の照明制御システムのように所定の周期が延びることがない。
【0050】
上述のように、実施の形態に係る照明制御システム100では、スレーブ1に割り当てられるアドレスの数に比例して、1台のスレーブ1に割り当てられる通信時間を延ばすことができる。このため、マスタ2は、1台のスレーブ1に割り当てられる通信時間内に、追加分を含むデータを送信及び受信することが可能である。また、実施の形態に係る照明制御システム100では、1つのアドレスに割り当てられた通信時間を延ばす必要がないため、比較例の照明制御システムのように所定の周期が延びることもない。したがって、実施の形態に係る照明制御システム100では、マスタ2がスレーブ1に対してデータを送信する所定の周期P1を変更することなく、データを追加することができる、という利点がある。
【0051】
[変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。以下、実施の形態の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、スレーブ1の制御部12は、通信部11でコマンドを受信した場合に、受信したコマンドに従って照明装置3に関する制御を実行しているが、これに限られない。例えば、制御部12は、通信部11でコマンド(データ)を受信した場合に、コマンドに基づく照明装置3に関する制御と、アドレスに応じた照明装置3に関する制御と、を実行してもよい。
【0053】
一例として、マスタ2から照明装置3の状態の返信を指示するコマンドが各アドレスに送信される、と仮定する。この場合、通常アドレスの他に拡張アドレスが割り当てられている、つまり複数のアドレスが割り当てられているスレーブ1の制御部12は、通信部11で通常アドレスを指定した信号を受信した場合には、照明装置3の現在の状態を返信する制御を実行し、拡張アドレスを指定した信号を受信した場合には、当該制御とは異なる制御を実行してもよい。例えば、制御部12は、拡張アドレスを指定した信号を受信した場合には、照明装置3に備え付けのブザーを鳴動させたり、照明装置3の備える光源を通常時とは異なる態様で点灯させたりしてもよい。
【0054】
上記実施の形態では、各スレーブ1には2つのアドレスを割り当てることが可能であるが、これに限られない。例えば、各スレーブ1には、3つ以上のアドレスを割り当てることが可能であってもよい。つまり、入力受付部14は、スレーブ1に割り当てるアドレスとして3つ以上のアドレスの入力を受け付け可能に構成されていてもよい。例えば、入力受付部14は、複数の第1スイッチ141及び第2スイッチ142の他に、拡張アドレスの数を指定するスイッチを更に有していればよい。
【0055】
上記実施の形態では、スレーブ1の入力受付部14はDIPスイッチで構成されているが、これに限られない。例えば、入力受付部14は、アドレス設定器からの無線信号を受信することでアドレスの入力を受け付ける通信インタフェースで構成されていてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態で説明したスレーブ1とマスタ2との間のシリアル通信の通信規格は、一例である。スレーブ1とマスタ2との間のシリアル通信の通信規格については特に限定されるものではない。
【0057】
上記実施の形態では、スレーブ1と、対応する照明装置3とは別体であるが、これに限られない。例えば、スレーブ1は、対応する照明装置3に内蔵されていてもよい。つまり、照明装置3がスレーブ1としての機能を有していてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、制御部等の構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0059】
また、制御部等の構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、制御部等の構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0060】
また、上記実施の形態のスレーブ1は、単独で市場に流通し得る。すなわち、スレーブ1は、入力受付部14と、通信部11と、制御部12と、を有する。入力受付部14は、アドレスの入力を受け付ける。通信部11は、入力受付部14で受け付けたアドレスを用いて、アドレスに対してデータを所定の周期P1で送信するマスタ2との間でシリアル通信を行う。制御部12は、通信部11で受信したデータに基づいて、対応する照明装置3に関する制御を実行する。入力受付部14は、スレーブ1に割り当てられるアドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている。
【0061】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0062】
(まとめ)
以上説明したように、照明制御システム100は、スレーブ1と、マスタ2と、を備える。マスタ2は、スレーブ1との間でシリアル通信を行うことにより、スレーブ1に割り当てられているアドレスに対してデータを所定の周期P1で送信する。スレーブ1は、入力受付部14と、通信部11と、制御部12と、を有する。入力受付部14は、アドレスの入力を受け付ける。通信部11は、入力受付部14で受け付けたアドレスを用いてマスタ2との間でシリアル通信を行う。制御部12は、通信部11で受信したデータに基づいて、スレーブ1に対応する照明装置3に関する制御を実行する。入力受付部14は、スレーブ1に割り当てられるアドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている。
【0063】
このような照明制御システム100によれば、マスタ2がスレーブ1に対してデータを送信する所定の周期P1を変更することなく、データを追加することができる、という利点がある。
【0064】
また、例えば、マスタ2は、スレーブ1に複数のアドレスが割り当てられている場合、複数のアドレスの各々で互いに内容が異なる複数種類のデータをスレーブ1に送信する。
【0065】
このような照明制御システム100によれば、マスタ2が所定の周期P1ごとにデータの種類を変更して送信する場合と比較して、スレーブ1で複数種類のデータの各々を受信するタイミングに遅延が生じにくい、という利点がある。
【0066】
また、例えば、入力受付部14は、スレーブ1に割り当てるアドレスの数を変更する入力を受け付ける。
【0067】
このような照明制御システム100によれば、照明制御システム100の仕様に応じて、スレーブ1に割り当てるアドレスの数、言い換えればスレーブ1に割り当てられる通信時間を変更することができる、という利点がある。
【0068】
また、例えば、制御部12は、通信部11でデータを受信した場合に、データに基づく照明装置3に関する制御と、アドレスに応じた照明装置3に関する制御と、を実行する。
【0069】
このような照明制御システム100によれば、マスタ2からスレーブ1に対して送信するデータを変更することなく、スレーブ1に照明装置3に関する種々の制御を実行させることができる、という利点がある。
【0070】
また、例えば、スレーブ1は、入力受付部14と、通信部11と、制御部12と、を有する。入力受付部14は、アドレスの入力を受け付ける。通信部11は、入力受付部14で受け付けたアドレスを用いて、アドレスに対してデータを所定の周期P1で送信するマスタ2との間でシリアル通信を行う。制御部12は、通信部11で受信したデータに基づいて、対応する照明装置3に関する制御を実行する。入力受付部14は、スレーブ1に割り当てられるアドレスとして複数のアドレスの入力を受け付け可能に構成されている。
【0071】
このようなスレーブ1によれば、マスタ2がスレーブ1に対してデータを送信する所定の周期P1を変更することなく、データを追加することができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0072】
1 スレーブ
11 通信部
12 制御部
14 入力受付部
2 マスタ
3 照明装置
100 照明制御システム
P1、P2 ポーリング周期(所定の周期)