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特開2023-93304HVPE法によるGa2O3結晶膜の蒸着方法、蒸着装置、および、これを用いて得られたGa2O3結晶膜蒸着基板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093304
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】HVPE法によるGa2O3結晶膜の蒸着方法、蒸着装置、および、これを用いて得られたGa2O3結晶膜蒸着基板
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20230627BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20230627BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230627BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B25/20
C23C16/40
H01L21/365
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125784
(22)【出願日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185166
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】512272731
【氏名又は名称】ルミジエヌテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】オ,ヘ ゴン
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BB10
4G077DB05
4G077EA02
4G077EA06
4G077ED04
4G077ED05
4G077ED06
4G077EE01
4G077HA12
4G077TA04
4G077TA07
4G077TB04
4G077TH01
4G077TJ03
4G077TK13
4K030AA03
4K030AA18
4K030BA08
4K030BA42
4K030BB02
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA02
4K030EA01
4K030JA05
4K030JA06
4K030JA10
5F045AA03
5F045AB40
5F045AC03
5F045AC11
5F045AC13
5F045AC15
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AD15
5F045AD16
5F045AF11
5F045AF13
5F045DP14
5F045EE12
(57)【要約】
【課題】蒸着方向を多様にすることができ、表面欠陥を最小化することができるGaのエピタキシャル技術開発が要求される。
【解決手段】本発明は、HVPE法によるGa結晶膜の蒸着方法、蒸着装置、および、これを用いたGa結晶膜蒸着基板に関し、本発明の一態様によれば、半導体単結晶基板上に中央供給路を通じてGaClガスを供給する第1段階と、前記GaClガスが供給される前記半導体単結晶基板上に酸素およびHClガスを供給する第2段階と、を含むGa結晶膜の蒸着方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体単結晶基板上に中央供給路を通じてGaClガスを供給する第1段階と、
前記GaClガスが供給される前記半導体単結晶基板上に酸素およびHClガスを供給する第2段階と、を含む、HVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項2】
前記HClガスは、前記中央供給路から区分される迂回供給路を通じて供給されることを特徴とする請求項1に記載のHVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項3】
前記HClガスは、窒素とともに供給されることを特徴とする請求項2に記載のHVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項4】
前記HClガスは、10sccm以上の流量で供給されることを特徴とする請求項2に記載のHVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項5】
前記HClガスと前記GaClガスとの気体分圧の比率は、1:5と同じか大きいことを特徴とする請求項1に記載のHVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項6】
前記HClガスと前記GaClガスとの気体分圧の比率は、2:5と同じか大きいことを特徴とする請求項5に記載のHVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項7】
前記GaClガスと前記HClガスとの気体分圧の比率は、5:4より大きいことを特徴とする請求項6に記載のHVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項8】
前記第1段階は、
ガリウムにガリウム反応用HClガスを50sccm以上300sccm以下の流量で供給する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のHVPE法によるGa結晶膜蒸着方法。
【請求項9】
GaClガスが供給され、反応部と連結される中央供給路と、
前記中央供給路と区分され、酸素およびHClガスが供給され、反応部と連結される迂回供給路と、
Ga基板が装着される前記反応部を含むGa結晶膜蒸着装置。
【請求項10】
前記中央供給路および前記迂回供給路は、450℃以上900℃以下に制御されることを特徴とする請求項9に記載のGa結晶膜蒸着装置。
【請求項11】
前記中央供給路および前記迂回供給路は、入口から前記GaClガスが蒸発して移動する区域まで、順次に温度が高まるように制御されることを特徴とする請求項10に記載のGa結晶膜蒸着装置。
【請求項12】
前記中央供給路および前記迂回供給路は、前記入口から前記GaClカスが蒸発して移動する区域まで、注入部、蒸発部、及び移送部に区分され、
前記注入部は、450℃以上650℃以下に制御され、
前記蒸発部は、550℃以上750℃以下に制御され、
前記蒸発部は、750℃以上900℃以下に制御されることを特徴とする請求項11に記載のGa結晶膜蒸着装置。
【請求項13】
前記反応部は、850℃以上1150℃以下に制御されることを特徴とする請求項9に記載のGa結晶膜蒸着装置。
【請求項14】
前記反応部は、前記中央供給路および前記迂回供給路に近い区域から反応気体が放出される区域まで、移入部、蒸着部、及び放出部に区分され、
前記移入部は、950℃以上1150℃以下に制御され、
前記蒸着部は、900℃以上1050℃以下に制御され、
前記放出部は、850℃以上950℃以下に制御されることを特徴とする請求項13に記載のGa結晶膜蒸着装置。
【請求項15】
成長した(As grown)状態で基板表面に発見される欠陥の密度が4.57×10/cm以下であることを特徴とするGa結晶膜蒸着基板。
【請求項16】
前記基板表面は、100g/cmの圧力で180分以下の時間で表面をCMP技術で研磨した際、基板表面の欠陥が全て研磨されることを特徴とする請求項15に記載のGa結晶膜蒸着基板。
【請求項17】
前記基板表面は、(002)および(-402)面のFWHM(Full width at half maximu m)の値が100arcsec以下であり、表面粗さRaが254.9nm以下であり、Rtが2312nm以下であることを特徴とする請求項15に記載のGa結晶膜蒸着基板。
【請求項18】
前記基板表面は、欠陥の密度が2.29×10/cm以下であり、(002)および(-402)の面の半値全幅の値が90arcsec以下であり、Raが71.5nm以下であり、Rtが1150nm以下であることを特徴とする請求項15に記載のGa結晶膜蒸着基板。
【請求項19】
前記基板表面は、欠陥の密度が1.14×10/cm以下であり、(002)および(-402)の面の半値全幅の値が30arcsec以下であり、表面粗さRaが11.42nm以下、Rtが203.20nm以下であることを特徴とする請求項15に記載のGa結晶膜蒸着基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HVPE法(ハイドライド気相成長法; Hydride Vapor Phase Epitaxy)によるGa結晶膜の蒸着方法、蒸着装置、および、これを用いて得られたGa結晶膜蒸着基板に関し、より詳細には、表面欠陥を最小化したGa結晶膜の蒸着方法、蒸着装置、および、これを用いて得られた結晶膜蒸着基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のSiベース電力半導体素子は、本質的な物性の限界に起因して技術発展に比べて性能改善の限界に到達して、WBG(Wide bandgap; ワイドバンドギャップ)とUWB(Ultra-wide bandgap; 超ワイドバンドギャップ)特性を有する電力半導体素材の産業的必要性がますます拡大している。
【0003】
UWB(超ワイドバンドギャップ)のGa素材は、GaNまたはSiCに比べて、製造費用が略1/3~1/5の水準と安いため、価格競争力を備えた次世代電力半導体用のウェハーである。
【0004】
特に、UWBのGa素材は、バンドギャップ(Bandgap)による耐降伏電圧特性によって同じ降伏電圧を有するようにするために、薄膜の厚さを略1/3の程度と薄く成長することができるだけでなく、高温成長ではないので、これに伴う費用を節減することができる。
【0005】
Gaのエピタキシャル技術は、β-Ga基板の上に同種のβ-Ga単結晶層を成長させるか、サファイアなどの異種基板の上にα-Ga単結晶層を成長させる技術であって、高品位の単結晶層を得るための技術と、nタイプ(n-type)特性を得るためのドーピング技術とを含む。
【0006】
Ga物質は、最も安定した形態であるβ-Gaを基本とし、その他に4種類(α、β、δ、ε)の相として存在する。
【0007】
β-Gaは、高温で最も安定した構造であって、インゴット成長が容易であり、α-Ga相は、500℃以下の低温領域で相対的に安定した構造であり、残りの相は、いずれも、準安定(Meta-stable)構造であり、不安定な状態で存在する。
【0008】
β-Ga物質は、略4.8~4.9eVのバンドギャップを有していて、単斜晶系構造であり、蒸着時に表面欠陥が大きく、劈開特性を有していることから、表面加工に困難性がある。これによって、成長したエピタキシャル層の表面欠陥を減少させるGaのエピタキシャル技術開発が行われている。
【0009】
最近、日本国特許登録6744523号公報(2020.08.04.公告)には、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法を用いて、表面欠陥が最小となる成長方向に成長する方法に対する発明が提案された。
【0010】
しかし、このような方法は、蒸着方向を特定方向に限定するので、多様な結晶方向の蒸着面を作ることができないという問題がある。
【0011】
これによって、蒸着方向を多様にすることができ、表面欠陥を最小化することができるGaのエピタキシャル技術開発が要求される。
【0012】
なお、前述した背景技術は、必ずしも、本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】日本国特許登録6744523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一実施例は、成長方向を多様化することができるので、Ga結晶膜の成長の自由度が高く、欠陥の数字と深さを最小化することができる、HVPE法によるGa結晶膜の蒸着方法、蒸着装置、および、これを用いたGa結晶膜の蒸着基板を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述のような技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一態様によれば、HVPE法によるGa結晶膜の蒸着方法は、半導体単結晶基板上に、中央供給路を通じてGaClガスを供給する第1段階と、前記GaClガスが供給される前記半導体単結晶基板上に、酸素およびHClガスを供給する第2段階と、を含む。
【0016】
本発明の一態様によると、前記HClガスは、中央供給路と区分される迂回供給路を通じて供給されうる。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記HClガスは、窒素とともに供給されうる。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記HClガスは、10sccm以上の流量で投入されうる。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記HClガスと前記GaClガスとの気体分圧は、1:5と同じか、大きくてもよい。
【0020】
本発明の一態様によれば、前記HClガスと前記GaClガスとの気体分圧は、2:5と同じか、大きくてもよい。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記GaClガスと前記HClガスとの気体分圧は、5:4より大きくてもよい。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記第1段階は、ガリウムに、ガリウム反応用HClガスを50sccm以上300sccm以下の流量で供給する段階を含んでもよい。
【0023】
本発明の他の態様によれば、Ga結晶膜の蒸着装置は、GaClガスが供給され、反応部と連結される中央供給路と、前記中央供給路から区分され、酸素およびHClガスが供給され、反応部に連結される迂回供給路と、Ga基板が装着される前記反応部と、を含む。
【0024】
本発明の他の態様によれば、前記中央供給路および前記迂回供給路は、450℃以上900℃以下に制御されうる。
【0025】
本発明の他の態様によれば、前記中央供給路および前記迂回供給路は、入口から前記GaClガスが蒸発して移動する区域まで、順次に温度が高まるように制御されうる。
【0026】
本発明の他の態様によれば、前記中央供給路および前記迂回供給路は、前記入口から前記GaClガスが蒸発して移動する区域まで、注入部、蒸発部、及び移送部に区分され、前記注入部は、450℃以上650℃以下に制御され、前記蒸発部は、550℃以上750℃以下に制御され、前記移送部は、750℃以上900℃以下の温度に制御されうる。
【0027】
本発明の他の態様によれば、前記反応部は、850℃以上1150℃以下に制御されうる。
【0028】
本発明の他の態様によれば、前記反応部は、前記中央供給路および前記迂回供給路に近い区域から反応器体が放出される区域まで、移入部、蒸着部、及び放出部に区分され、前記移入部は、950℃以上1150℃以下に制御され、前記蒸着部は、900℃以上1050℃以下に制御され、前記放出部は、850℃以上950℃以下に制御されうる。
【0029】
本発明のさらに他の一態様によれば、Ga薄膜蒸着基板は、成長した(as grown)状態で基板の表面に発見される欠陥の密度が4.57×10/cm以下であってもよい。
【0030】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記薄膜蒸着基板は、100g/cmの圧力にて180分以下の時間で表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術で研磨した際、基板表面の欠陥が全て研磨されうる。この際、例えば、シリカスラリー、ナノセリアスラリーなどをCMPスラリーとして用いることができる。
【0031】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記薄膜蒸着基板は、(002)および(-402)の面の半値全幅(FWHM;Full width at half maximum)の値が100arcsec(秒角)以下であり、算術平均粗さRaが300nm以下であり、最大断面高さRtが2500nm以下であってもよい(JJIS B 0601-2001)。
【0032】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記薄膜蒸着基板は、欠陥の密度が2.29×10/cm以下であり、(002)および(-402)の面の半値全幅(FWHM;Full width at half maximum)の値が100arcsec以下であり、表面粗さRaが71nm以下であり、Rtが1150nm以下であってもよい。
【0033】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記薄膜蒸着基板は、欠陥の密度が1.14×10/cm以下であり、(002)および(-402)の面の半値全幅(FWHM;Full width at half maximum)の値が30arcsec以下であり、表面粗さRaが11.42nm以下であり、Rtが203.20nm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0034】
前述した本発明の課題解決手段のうちの、いずれか一つによれば、本発明の一実施例は、蒸着方向と関係なく、表面欠陥が最小化した蒸着表面を有するGa蒸着基板を提供することができる。
【0035】
前述した本発明の課題解決手段のうちの、いずれか一つによれば、本発明の一実施例は、製品蒸着後、表面研磨(chemical-mechanical polishing;CMP)にかかる時間が最小化される基板を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例によるHVPE法によるGa蒸着方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施例によるHVPE法によるGa蒸着方法を行うための蒸着装置および反応過程を示す概念図である。
図3】本発明の一実施例による図2の蒸着装置のライン別気体投入流量を示すグラフである。
図4図2の蒸着装置において、ブロック別制御温度を示すグラフである。
図5】本文の表1と2の比較例および実施例に対する表面に対する光学顕微鏡の50倍、200倍、500倍の表面写真を羅列した表である。
図6a】迂回供給路に供給したHClガスの流量と(002)面と(-402)面の半値全幅(FWHM)を示すグラフである。
図6b】迂回供給路に供給したHClガスの流量とこれによる成長表面の粗さ(Ra、Rt)を示すグラフである。
図7】表面研磨の前後に表面を観察した、光学顕微鏡の50倍の表面写真である。
図8】中央供給路に過量のHClガスを投入するとき、Ga蒸着装置の反応過程を示す概念図である。
図9a】中央供給路に投入されたHClガスの量とGaの成長速度を示すグラフである。
図9b】中央供給路に供給したHClガスの流量と(002)面及び(-402)面の半値全幅を示すグラフである。
図10a】X方向とY方向を定義するために、蒸着面にXとYを表示した表面の写真である。
図10b】X方向の表面の粗さRaおよびRtを中央供給路に供給されたHClガスの流量と比較したグラフである。
図10c】Y方向の表面の粗さRaおよびRtを中央供給路に供給されたHClガスの流量と比較したグラフである。
図11】本発明の一実施例によるHVPE法によるGa蒸着方法の一例と比較例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、添付の図面を参照して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。また、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全般において類似の部分に対しては、類似の図面符号を付けた。
【0038】
明細書全般において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を間に置いて「間接的に連結」されている場合も含む。また、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0039】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明することとする。
【0040】
図1は、本発明の一実施例によるHVPE法によるGa蒸着方法のフローチャートであり、図2は、本発明の一実施例によるHVPE法によるGa蒸着方法を行うための蒸着装置および反応過程を示す概念図である。図3は、本発明の一実施例による図2の蒸着装置のライン別の気体投入流量を示すグラフである。図4は、図2の蒸着装置において、ブロック別の制御温度を示すグラフである。
【0041】
図1図4を参照して本発明を説明する。
【0042】
HVPE法によるGa結晶膜の蒸着方法は、半導体単結晶基板上に中央供給路を通じてGaClガスを供給する第1段階と、前記GaClガスが供給される前記半導体単結晶基板上に酸素およびHClガスを供給する第2段階と、を含む。
【0043】
ここで、HClガスは、窒素とともに供給されることができる。
【0044】
HClガスは、蒸着が行われるとき、蒸着面の表面エネルギーの高い部分をエッチングする役割をすることができる。この場合、曲率の大きい部分の表面エネルギーが高いので、曲率の高い部分が選択的にエッチングされる。したがって、蒸着が行われる際、HClガスを追加することによって、曲率の高い部分が最小化されて蒸着面が形成されることができ、表面粗さが低減することができる。
【0045】
HVPE法において原料のガリウムを気化する原料は、HClガスである。HClガスは、酸化力を有する物質であるから、蒸着が行われる際、同一の物質であるHClガスを追加することができる。
【0046】
GaClガスが酸素と反応する際、HClガスと反応気体の割合が厳格に維持されなければならないので、HClガスは、GaClガスが供給される中央供給路と区分される迂回供給路に供給されることができる。具体的に、HClガスは、10sccm以上の流量で供給されうる。
【0047】
ここで、HClガスとGaClガスとの気体分圧の比率は、1:5と同じか大きい値であってもよく、好ましくは、2:5と同じか、これより大きい値であってもよい。この値が効率的な理由は、図5および[表1]を参照して後述する。
【0048】
GaClガスとHClガスとの気体分圧の比率が5:4より小さければ、蒸着速度が過度に低くなるので、5:4より大きいことが好ましい。
【0049】
本制御方法は、図2に示されたGa結晶膜の蒸着装置で行われてもよい。
【0050】
図2に示されたように、本発明によるGa結晶膜の蒸着装置は、GaClガスが供給され、反応部と連結される中央供給路200と、中央供給路200から区分され、酸素およびHClガスが供給され、反応部220と連結される迂回供給路210と、Ga基板が装着される反応部220と、を含み、反応部位別温度を制御する加熱器233、235、237、243、245、247をさらに含む。
【0051】
本発明の一実施例によるGa結晶膜の蒸着装置は、ソースと反応気体を別途の供給路に供給し、特に、HClガスを別途の迂回供給路210を通じてさらに供給するという特徴を有する。
【0052】
具体的に、中央供給路200と迂回供給路210に供給されるガスについての成分別の流量を示す図3のグラフを参照して説明する。
【0053】
各列の内容を説明すると、「個別ライン(Line)」は、ライン別に供給される原料の種類を示す。各ライン別に供給される気体流量の単位は、sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)である。「Ratio of Flow(G1)」は、実際に蒸着反応が起こるG1段階における、全体の気体供給流量に対する分圧を示す。
【0054】
「Total Folw」には、段階別の総流量が記載されていて、HVPE蒸着工程で一般に行われる装着(loading)、維持(holding)、基板表面酸化(Oxidation)、GaClガス準備(Ga-T)、蒸着(G1)、及び終了(unloading)の6つの段階にわたる各ラインの気体圧力を示す。
【0055】
各ライン別の気体供給挙動を説明すれば、以下の通りである。
【0056】
バックグラウンド窒素ライン(background N:BG_N)301は、反応中に起こる気体分圧の急変や渦流の形成にもかかわらず、気体が逆流せず、一定の割合が維持されるようにバックグラウンド窒素を供給する。不活性気体である窒素が50%以上の割合で中央供給路200と迂回供給路210の両方ともに供給されることができる。バックグラウンド窒素ライン301は、6つの段階の間にわたって、一定の値を維持することができる。
【0057】
不活性気体である窒素は、中央供給路200にさらに供給されることができる。バランス窒素ライン(balance N)303は、内圧の微細調整のために、バランス窒素を供給することができる。バランス窒素は、蒸着表面品質の微細調整のために、さらに供給されうる。バランス窒素は、6つの段階の間にわたって、一定の値を維持し、必要に応じて調整されたまま、蒸着工程を行うことができる。
【0058】
迂回供給窒素ライン(O_N)311は、迂回供給路210に窒素を供給することができる。迂回供給路210は、酸素が供給されるための供給路であるが、酸素だけが供給される場合、反応速度をすべての領域で均一に維持しにくいという問題がある。不活性気体である窒素を酸素と混入することで、酸素を希釈して供給することができる。迂回供給路210に供給される窒素も、6つの段階の間にわたって、一定の値を維持することができる。
【0059】
中央供給窒素ライン(Ga_HCl_N)305は、中央供給路200に窒素を供給することができる。中央供給路200は、HClガスがガリウムと反応してGaClガスを形成する反応区間である。ここで、反応速度を制御するために、HClガスを希釈する必要があり、このために、不活性気体がさらに供給される。供給される窒素は、供給されるHClガスの10倍内外であってもよい。中央供給窒素ライン305は、6つの段階の間にわたって、窒素の供給流量を一定の値に維持することができる。
【0060】
実際反応気体は、各段階別に相異に制御される。基板を装着し、気体フローを維持する区間(loading,holding)には、反応気体であるGaClガスおよび酸素を供給しない。基板表面酸化(Oxidation)段階の間は、迂回供給路210に酸素のみを供給する。GaClガス準備(Ga-T)段階には、中央供給路200にハロゲン酸であるHClガスを供給してGaClガスが均一に流れるように維持する。以後、反応が起こる蒸着(G1)段階にて、迂回供給路210に酸素およびHClガスを供給し、中央供給路200にGaClガスを続いて供給して蒸着を起こす。以後、終了(unloading)段階にて、すべての反応ガスの供給を中止する。
【0061】
これを各反応気体の供給ライン別に工程を確認すると、以下の通りである。
【0062】
基板の表面を酸化させる酸化区間(oxidation)と反応が起こる蒸着するG1期間に酸素ライン(O)315は、酸素を迂回供給路210に供給し、残りの期間には、酸素の供給を中止することができる。基板の種類によって異なるが、蒸着直前に表面研磨工程を行った場合、表面の酸化膜が除去されて、表面蒸着が難しくなりうる。G1期間の前に酸化区間(oxidation)を置いて、一定時間、酸素を基板の上に供給する。酸素が供給されると、基板表面に酸化膜が形成されうる。以後、酸素の供給を中止する。
【0063】
基板の酸化が終わった後、GaClガス準備段階で中央供給塩酸ライン(Ga_HCl)307は、中央供給路200にHClガスを供給することができる。HClガスとガリウムの初期反応が起こる時間の不均一を回避するための段階であるから、HClガスは、蒸着時に投入されるGaClガスの量より少ない量を供給しても関係ない。
【0064】
蒸着段階(G1)で中央供給塩酸ライン307は、中央供給路200にHClガスの供給を持続し、必要に応じて供給流量を増大させることができる。また、酸素供給ライン315は、酸素をさらに供給する。酸素の供給が不十分である場合、GaClガスが酸素と十分に反応せず、GaClガスがそのまま排気されうる。ガリウム原料の無駄を防ぐために、酸素は、GaClガスに比べて過量で供給されうる。中央供給塩酸ライン307に供給されるHClガスは、酸素に比べて5%内外の分圧で供給されることができる。
【0065】
反応が起こるG1期間に迂回供給路210にHClガスがさらに供給される。HClガスは、ガリウムをハロゲン化するのに用いられる原料にもなるので、単一のソースとして活用できる長所がある。迂回供給塩酸ライン(HCl)313は、G1段階で供給される酸素と比較して1%以上の割合でHClガスを供給することができ、中央供給塩酸ライン307に供給されるHClガス(Ga_HCl)の量に比べて20%以上の割合でHClガス(Side_HCl)を供給することができる。迂回供給塩酸ライン313は、G1段階にのみ供給され、残りの期間には、HClガスの供給を中止することができる。
【0066】
以上のように、中央供給路200に供給されたGaClガスと、迂回供給路210を用いて供給されたHClガスとの比を精密に制御して、表面の欠陥が低減された結晶膜蒸着工程を行うことができる。
【0067】
図4は、図1図3の製造方法において、ブロック別の制御温度を示すグラフである。
【0068】
図2に示されたように、中央供給路200と迂回供給路210の後端(下流端)は、反応部220と連結される。
【0069】
中央供給路200では、HClガスがガリウムと反応してGaClガスを生成し、反応部220では、GaClガスと酸素が反応する。中央供給路200と迂回供給路210に供給された原料は、類似した温度(反応温度)で反応部220に供給されなければならないので、これら供給路200,210がまとめて共に加熱されることが好ましい。
【0070】
中央供給路200と迂回供給路210は、HClガスとガリウムの反応のための適正温度である450℃以上900℃以下に制御されることが好ましい。反応部220は、塩化ガリウムガスが酸素と反応し、蒸着時に欠陥を最小化するようにするために、高い温度に制御されることが好ましい。具体的に、850℃以上1150℃以下に制御されることが好ましい。中央供給路200と迂回供給路210の制御温度よりも、反応部220の制御温度がさらに高いので、中央供給路200および迂回供給路210と反応部220との間の領域にて、順次に温度が上昇することが好ましい。
【0071】
したがって、中央供給路200と迂回供給路210は、入口から、GaClガスが蒸発して移動する区域まで、順次に温度が高まるように制御されることが好ましい。
【0072】
具体的に、中央供給路200および迂回供給路210は、入口からGaClガスが蒸発して移動する区域まで、注入部233、蒸発部235、及び移送部237に区分され、注入部233は、450℃以上650℃以下に制御され、蒸発部235は、550℃以上750℃以下に制御され、移送部237は、750℃以上900℃以下の温度に制御されうる。
【0073】
反応部220も、中央供給路200および迂回供給路210に近い区域から、反応気体が放出される区域まで、移入部243、蒸着部245、及び放出部247に区分され、移入部243は、950℃以上1150℃以下に制御され、蒸着部245は、900℃以上1050℃以下に制御され、放出部247は、850℃以上950℃以下に制御されうる。
【0074】
図5は、本文の表1及び2における比較例および実施例についての表面に対する、光学顕微鏡による50倍、200倍、及び500倍の表面写真を羅列した表である。
【0075】
No.1は、迂回供給路にHClガス(Side_HCl)を追加しない場合の基板であり、No.2は、20sccmの流量でHClガスを迂回供給路に供給して蒸着した基板であり、No.3は、40sccmの流量でHClガスを迂回供給路に供給して蒸着した基板であり、No.4は、60sccmの流量でHClガスが迂回供給路に供給して蒸着した基板である。本実験は、図3および図4の制御グラフで、迂回供給路に供給するHClガスの流量のみを変因として変化させて成長させた実験結果である。
【0076】
それぞれの成長条件および表面物性の測定結果は、[表1]に示された通りである。
【0077】
【表1】
【0078】
ここで、粗さ(Ra, Rt)は、Dektak 150表面検査装置(株式会社アルバックの触針式表面形状測定器)を用いて測定したのであり、ロッキングカーブの半値全幅(FWHM of RC;単位が秒角(arc-sec))は、各結晶面(002, -402)についてのPanalytical社のX’pert Pro MRD(高分解能X線回折装置)を用いて測定した。
【0079】
比較例No.1と実施例No.2~No.4を比較してみると、添加されるHClガスの流量が増えるほど表面粗さが減少し、半値全幅も減少することを確認することができる。したがって、GaClガスを供給し、これを酸化して蒸着する(比較例No.1)よりも、反応性の高いガスをさらに供給し、酸化雰囲気を作った状態にてGaClガスを酸化および蒸着した方(実施例No.2~No.4)が、粗さの低減および結晶性の向上に役に立つことが分かる。
【0080】
平均粗さの場合、中央供給路に供給されるHClガス(Ga_HCl)の量と、迂回供給路に供給されるHClガス(Side_HCl)の量との比が5:1になるとき(No.2)から大きく低下し、FWHMも小さくなって、結晶性が向上する効果があることが分かる。中央供給路に供給されるHClガスの量と迂回供給路に供給されるHClガスの量の比が5:2(No.3)を超える場合、最大粗さRtも大きく低下するという効果がある。また、中央供給路に供給されるHClガスの量と、迂回供給路に供給されるHClガスの量との比が5:3(No.4)を超える場合、結晶性が向上し、最大粗さおよび平均粗さが全て大きく低くなるという効果がある。
【0081】
図6aは、迂回供給路に供給したHClガスの流量と、(002)面と(-402)面の半値全幅(FWHM)を示すグラフであり、図6bは、迂回供給路に供給したHClガスの流量と、これによる成長表面の粗さRa、Rtを示すグラフである。
【0082】
図6aおよび図6bは、前記[表1]の記載内容を示すグラフである。前記[表1]から分かるように、迂回供給路に印加するHClガスの流量が10sccmを超える場合、結晶性が大きく向上し、表面粗さも大きく減少することを確認することができる。
【0083】
具体的に、20sccm以上のHClガスを迂回供給路に供給する場合(すなわち迂回供給路に供給するHClガス(Side_HCl)と中央供給路に供給するHClガス(Ga_HCl)との比が1:5以上である場合)、Raの値は300nm以下に制御することができ、FWHM値は100arcsec以下に維持することができることが分かる。
【0084】
また、No.3のように、40sccm以上のHClガスを迂回供給路に供給する場合(すなわち迂回供給路に供給するHClガス(Side_HCl)と中央供給路に供給するHClガス(Ga_HCl)との比が2:5以上である場合)、Rtの値は1150nm以下に維持することができることを確認することができる。
【0085】
また、No.4のように、60sccm以上のHClガスを迂回供給路に供給する場合、FWHMの値は30arcsec以下であり、表面粗さRaは11.42nm以下、Rtは203.20nm以下に維持することができる。
【0086】
前記[表1]および図5のNo.1~No.4の写真を通じて分かるように、迂回供給路に供給されるHClガスの流量が増えるほど表面粗さが減少する傾向を示し、全く入れなかった場合(図5のNo.1)と比較して、大きく粗さが減少する姿を確認することができる。
【0087】
具体的に、Gaを蒸着した場合、成長のための原料ガスが通る方向に屈曲が生成される。ここで、表面に発生する線状のくぼみをピートという。
【0088】
このピートの個数を、500倍に拡大した光学写真にて計数するという方式で、粗さを定義することもできる。具体的に、241.4μm×181.1μmを撮影した光学写真にてピートの個数を計数し、単位面積当たりのピートの個数を示すと、[表2]の通りである。
【0089】
【表2】
【0090】
実施例のうち最もピートが多く発生したNo.2は、比較例No.1に比べてピートの発生数が20%以下と少なくなり、そのため、容易に研磨できるという効果がある。ピートの密度が4.57×10/cmより小さい場合、さらに小さい研磨でも表面欠陥を除去することができる。
【0091】
好ましくは、中央供給路と迂回供給路に供給するHClガスの比は、10:4以下10:6以上の値であってもよい。この場合、図6に示されたように、Rtの値は、1150nm以下であり、ピートの密度は、2.29×10/cm以下に維持することができる。
【0092】
また、中央供給路と迂回供給路とに供給するHClガスの比が10:6以上である場合、ピートの密度を1.14×10/cm以下の値に維持することができ、(002)および(-402)の面の半値全幅の値について30arcsec以下に維持することができる。また、表面粗さRaは11.42nm以下、Rtは203.20nm以下に維持することができる。
【0093】
図7は、表面研磨の前後に表面を観察した光学顕微鏡による50倍の表面写真である。
【0094】
表面蒸着直後(As grown)の基板表面が粗いため、表面の欠陥がすべてなくなるまで研磨する場合にのみ、後続の蒸着工程を行うことができる。ここで、必要な表面研磨の程度は、欠陥の深さによって決定される。言い換えれば、表面に形成された粗い屈曲は、最も深い屈曲まで全部研磨される場合にのみ、後続の蒸着の表面として用いられ得る。
【0095】
図7に示された基板の研磨は、シリカスラリー(silica slurry)を研磨剤として、100g/cmの圧力で均一に加圧して研磨した。
【0096】
No.2は、180分間研磨した後に蒸着が可能な程度に研磨される。
【0097】
No.3は、120分間研磨した後に蒸着が可能な程度に研磨される。
【0098】
No.4は、60分間研磨した後に蒸着が可能な程度に研磨される。
【0099】
比較例No.1の場合、同じ条件で180分以上研磨しても、蒸着が可能な程度に(epi-ready)研磨されないのに対し、実施例は、必要な研磨時間を大幅に低減するという効果がある。
【0100】
研磨は、屈曲が全て消えるまで行われなければならないので、Rt(最大粗さ)値に比例する。しかし、最大粗さが大きいとしても、粗さの様相によって必要な研磨時間が異なりうる。本発明による粗さ低減の効果は、ピートの密度を低減するだけでなく、必要な研磨時間を低減する効果がある。
【0101】
図8図10を参照して、中央供給路200に投入されるHClガスの量についての最適化の程度を確認する。
【0102】
図8は、中央供給路に過量のHClガスを投入するとき、Ga蒸着装置の反応過程を示す概念図である。
【0103】
構成と加熱方式は、図2の内容と同一であるが、迂回供給路210に供給するHClガスの流量でなく、中央供給路200に投入されるHClガスの量を変化させ、基板の粗さを最小化する。
【0104】
図9aは、中央供給路に投入されたHClガスの量と、Gaの成長速度を示すグラフであり、図9bは、中央供給路に供給したHClガスの流量と、(002)面及び(-402)面の半値全幅を示すグラフである。半値全幅の単位は、arcsecである。
【0105】
結晶膜を成長させる際、中央供給路200に供給するHClガスの流量は、50sccmより大きく、250sccmと同じか、これより小さいことが好ましい。
【0106】
中央供給路200に供給されるHClガスが大幅に増大すると、ほとんどのHClガスがガリウムと反応してGaClガスを生成しうる。このGaClガスは、過量の酸素と反応して蒸着される。したがって、図9aに示されたように、成長速度が大幅に増大する。特に中央供給路200にHClガスが250sccm以上で供給された場合、酸化ガリウムの蒸着速度が大幅に改善される。
【0107】
半値全幅が増大することは、多様な結晶構造が混在していることを意味する。図9bを参照すると、成長速度が増大する250sccm以上で、中央供給路200にHClガスが供給されるとき、結晶の品質が急激に低下することを確認することができる。
【0108】
また、図9bを参照すると、50sccmのHClガスを供給することよりも、100sccmのHClガスを供給した方が、半値全幅の値がさらに小さいことを確認できる。したがって、50sccmより100sccm以上HClガスを中央供給路200に供給した方が、結晶性の向上に役に立つ。したがって、結晶膜を成長させる際、中央供給路200に供給するHClガスの流量は、50sccmより大きく、250sccmに比べて同じか、より小さいことが好ましい。
【0109】
図10aは、X方向とY方向を定義するために、蒸着面にXとYを表示した表面の写真であり、図10bは、X方向の表面の粗さRaおよびRtを、中央供給路200に供給されたHClガスの流量と比較したグラフであり、図10cは、Y方向の表面の粗さRaおよびRtを、中央供給路200に供給されたHClガスの流量と比較したグラフである。各図面において、横軸は、供給されたHClガスの流量であり、単位は、sccmである。
【0110】
図10aのように、蒸着気体の供給方向と同じ方向をY、蒸着気体の供給方向に垂直な方向をXと定義する。
【0111】
結晶膜を成長させるとき、X軸方向に粗さを最小化できる中央供給路200に供給するHClガスの流量は、50sccmより大きく、250sccmと比べて同じか、より小さいことが好ましい。
【0112】
図10bを参照すると、中央供給路200にHClガスを供給した流量が250sccmになるという点を基点に、これより小さい場合、X軸方向の粗さが大きく小さくなることを確認することができる。また、50sccmより大きい場合、粗さが一時的に低減することも確認することができる。したがって、中央供給路200に供給するHClガスの流量を50sccmより大きく、250sccmより同じか小さく維持すると、X軸方向の粗さを最小化することができる。
【0113】
また、結晶膜を成長させるとき、Y軸方向の粗さを最小化できる中央供給路200に供給するHClガスの流量は、250sccmと比べて同じか、より小さいことが好ましい。
【0114】
図10cを参照すると、中央供給路200にHClガスを供給する流量が250sccmになるという点を基点に、これより小さい場合、Y軸方向の粗さが大幅に小さくなることを確認することができる。したがって、中央供給路200に供給するHClガスの流量を250sccmより同じか小さく維持すると、Y軸方向の粗さを最小化することができる。
【0115】
図11は、本発明の一実施例による、HVPE法によるGa蒸着方法の一例と比較例を示した表である。一番目の列に羅列された連番は、実験番号である。
【0116】
中央供給路に供給されるHClガスの流量は、100より同じか大きく、200より同じか小さいことが好ましい。蒸着において結晶性と欠陥を決定する最も支配的な要素は、蒸着速度であり、蒸着速度は、中央供給路に供給されるHClガスの量に左右される。本表の実験番号2、4、6、9、11の実験を参照すると、迂回供給路に、HClガスを20sccmで同一に投入する場合、中央供給路に供給されるHClガスに対する、蒸着面の結晶性および粗さを比較することができる。
【0117】
中央供給路に供給されるHClガスの流量が200sccmと比べて同じか、より小さい場合、蒸着表面の結晶度および粗さの変化が殆どなしに維持され、300sccmを超える場合、結晶度が大幅に減少し、粗さが大きく増大することを確認することができる。
【0118】
また、迂回供給路にHClガスをさらに供給しない場合、結晶度が低く、粗さが非常に高い。
【0119】
したがって、蒸着工程で中央供給路に印加するHClガスの流量は、300sccmより小さいことが好ましく、迂回供給路にHClガスをさらに供給することが好ましい。
【0120】
本発明によれば、中央供給路にGaClガスを印加し、蒸着される基板上に酸素とHClガスを供給することによって、蒸着面の結晶性を向上し、欠陥を低減することができる。
【0121】
本発明によれば、GaClガスとHClガスとの比を5:1から5:4の間に維持することによって、蒸着面の欠陥を極小化しつつ、成長速度を維持することができる。
【0122】
本発明によれば、GaClガスにHClガスを、迂回供給路を通じて供給することによって、蒸着される基板上のGaClガスとHClガスとの比を精密に制御することができる。
【0123】
本発明によれば、成長した(As grown)状態で、蒸着面の欠陥密度を4.57×10/cm以下に形成することによって、欠陥除去のための研磨時間を最小化することができる。
【0124】
本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求範囲によって示され、特許請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0125】
200 中央供給路
210 迂回供給路
220 反応部
233 注入部
235 蒸発部
237 移送部
243 移入部
245 蒸着部
247 放出部
301 バックグラウンド窒素ライン
303 バランス窒素ライン
305 中央供給窒素ライン
307 中央供給塩酸ライン
311 迂回供給窒素ライン
313 迂回供給塩酸ライン
315 酸素ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図11