(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093311
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】送信ドライバ、電子機器及び電子機器の制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230627BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230627BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
G06F3/041 570
G06F3/044 126
G06F3/03 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133595
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021207912
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022097581
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】小池 健
(57)【要約】
【課題】単独でも消費電力を削減することができる送信ドライバ、送信ドライバを搭載した電子機器及び電子機器の制御方法を提供する。
【解決手段】送信ドライバは、入力信号、第一電位、及び第一電位よりも高い第二電位が供給され、入力信号に応じて送信信号を送信し、第一電位から第二電位までの電位で前記送信信号を送信する第一モードと、第一電位から第二電位よりも高い第三電位までの電位で送信信号を送信する第二モードと、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号、第一電位、及び前記第一電位よりも高い第二電位が供給され、前記入力信号に応じて送信信号を送信する送信ドライバであって、
前記第一電位から前記第二電位までの電位で前記送信信号を送信する第一モードと、
前記第一電位から前記第二電位よりも高い第三電位までの電位で前記送信信号を送信する第二モードと、
を有する送信ドライバ。
【請求項2】
前記第三電位を供給する第一昇圧回路、
をさらに備える請求項1に記載の送信ドライバ。
【請求項3】
前記第一電位、並びに前記第二電位若しくは前記第三電位が供給され、前記送信信号を出力端子から出力する出力制御回路と、
前記出力制御回路に対する前記第二電位の供給を制御する短絡制御素子と、
をさらに備える請求項2に記載の送信ドライバ。
【請求項4】
前記第一昇圧回路は、容量素子を有する、
請求項3に記載の送信ドライバ。
【請求項5】
前記第一モードにおいて、前記短絡制御素子を介して前記出力制御回路に前記第二電位が供給され、
前記第二モードにおいて、前記短絡制御素子は、前記出力制御回路への前記第二電位の供給を遮断し、かつ、前記第一昇圧回路が前記出力制御回路に前記第三電位を供給する、
請求項4に記載の送信ドライバ。
【請求項6】
前記出力制御回路は、正電源端子及び負電源端子を有し、
前記負電源端子に前記第一電位が供給され、
前記短絡制御素子の一端に前記第二電位が供給され、
前記正電源端子に前記短絡制御素子の他端及び前記容量素子の一端が接続される、
請求項5に記載の送信ドライバ。
【請求項7】
前記入力信号に従って第一信号及び第二信号を生成する信号生成回路をさらに備え、
前記出力制御回路は、前記第一信号に従って、前記正電源端子に供給される電位又は前記負電源端子に供給される電位を前記送信信号として前記送信信号を出力し、
前記容量素子は、他端に前記第二信号が入力される、
請求項6に記載の送信ドライバ。
【請求項8】
前記第一信号の電位が前記第一電位である間短絡し、前記第一信号の電位が前記第一電位より高い第四電位である間開放するように前記短絡制御素子を制御する制御回路をさらに備え、
前記信号生成回路は、前記入力信号の立ち上がりに従う第一タイミングで、電位を前記第一電位から前記第四電位に遷移させ、前記入力信号の立ち下がりに従う第三タイミングから所定の時間が経過した第四タイミングで、電位を前記第四電位から前記第一電位に遷移させるように前記第一信号を生成し、
前記信号生成回路は、前記第一タイミングから所定の時間が経過した第二タイミングで、電位を前記第一電位から前記第一電位より高い第五電位に遷移させ、前記第三タイミングで、電位を前記第五電位から前記第一電位に遷移させるように前記第二信号を生成する、
請求項7に記載の送信ドライバ。
【請求項9】
前記第一タイミングから前記第二タイミングに至るまでの時間は、前記第一タイミングから前記第三タイミングに至るまでの時間の半分以下であり、前記第三タイミングから前記第四タイミングに至るまでの時間は、前記第二タイミングから前記第四タイミングに至るまでの時間の半分以下である、
請求項8に記載の送信ドライバ。
【請求項10】
前記第四電位及び前記第五電位は、前記第二電位に等しい、
請求項9に記載の送信ドライバ。
【請求項11】
前記容量素子の静電容量は、前記出力端子に接続される寄生容量の10倍以上である、
請求項4~10の何れか一項に記載の送信ドライバ。
【請求項12】
前記第一電位から前記第三電位よりも高い第六電位までの電位で前記送信信号を送信する第三モード、
をさらに有する請求項1に記載の送信ドライバ。
【請求項13】
前記第三電位又は前記第六電位を供給する第一昇圧回路、
をさらに備える請求項12に記載の送信ドライバ。
【請求項14】
前記第一電位よりも前記第三電位及び前記第二電位の差の分高い第七電位、又は前記第七電位よりも前記第六電位及び前記第二電位の差の分高い第八電位を前記第一昇圧回路に供給する第二昇圧回路、
をさらに備える請求項13に記載の送信ドライバ。
【請求項15】
前記第一昇圧回路は、一端から前記第三電位又は前記第六電位を供給する第一容量素子を有し、
前記第二昇圧回路は、一端から前記第七電位又は前記第八電位を前記第一昇圧回路に供給する第二容量素子を有し、
前記第一容量素子の静電容量は、前記第一容量素子及び前記第二容量素子の静電容量の合計の0.6倍である、
請求項14に記載の送信ドライバ。
【請求項16】
前記第一電位から前記第一電位及び前記第二電位の間の電位である第九電位までの電位で前記送信信号を送信する第四モードと、
前記第一電位から前記第二電位及び前記第三電位の間の電位である第十電位までの電位で前記送信信号を送信する第五モードと、
をさらに有する請求項1に記載の送信ドライバ。
【請求項17】
前記第九電位、前記第十電位又は前記第三電位を供給する第三昇圧回路、
をさらに備える請求項16に記載の送信ドライバ。
【請求項18】
前記第三昇圧回路は、前記第一電位及び前記第二電位を分圧することによって、前記第九電位を生成し、生成した前記第九電位を前記第二電位の分昇圧することによって前記第十電位を生成する、
請求項17に記載の送信ドライバ。
【請求項19】
信号の送受信を行う電極と、
入力信号、第一電位、及び前記第一電位よりも高い第二電位が供給され、前記入力信号に従って送信信号を生成し対応する前記電極に送信する送信ドライバと、
を備え、
前記送信ドライバは、前記第一電位から前記第二電位までの電位で前記送信信号を送信する第一モードと、前記第一電位から前記第二電位よりも高い第三電位までの電位で前記送信信号を送信する第二モードとを有する、
電子機器。
【請求項20】
前記送信ドライバは、スタイラスに搭載され、
前記電極は、センサコントローラと接続されるセンサ側電極との間の静電結合を通じて信号の送受信を行うスタイラス側電極であり、前記スタイラスに搭載される、
請求項19に記載の電子機器。
【請求項21】
信号の送受信を行う電極と、入力信号、第一電位、及び前記第一電位よりも高い第二電位が供給され、前記入力信号に応じて送信信号を前記電極に送信する送信ドライバとを備える電子機器の制御方法であって、
第一モードにおいて、前記第一電位から前記第二電位までの電位で前記送信信号を送信することと、
第二モードにおいて、前記第一電位から前記第二電位よりも高い第三電位までの電位で前記送信信号を送信することと、
を含む電子機器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送信ドライバに関し、特に、送信ドライバ、送信ドライバが搭載される電子機器及び電子機器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力信号に従い送信信号を送信する送信ドライバや、送信ドライバを搭載したタブレット端末やスタイラスなどの電子機器が知られている。
【0003】
これに関し、特許文献1には、複数のセンサ電極と、センサ電極ごとに設けられセンサ電極に接続される出力信号線と、出力信号線ごとに設けられ、一端が出力信号線に他端がショート線にそれぞれ接続されるスイッチと、各スイッチを制御する制御信号線と、を備えるタブレット端末が開示されている。特許文献1に記載の技術では、電位がハイレベルにある出力信号線と電位がロウレベルにある出力信号線同士を短絡し、出力信号線の間で電荷を共有することによって消費電力を削減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した技術は、タブレット端末以外の他の電子機器、例えば、タブレット端末と一緒に用いられるスタイラスにも適用し得る。しかしながら、スタイラスの種類によっては、出力信号線に信号を出力する送信ドライバが単体である場合や、複数の送信ドライバが離れた位置に配置される場合がある。このため、上記した技術を適用できないという問題があった。また、電磁結合方式のスタイラスでは、信号のハイレベル及びロウレベルの電位差を大きくする必要がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、単独でも消費電力を削減できる送信ドライバ、送信ドライバを搭載した電子機器及び電子機器の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第一の本発明に係る送信ドライバは、入力信号、第一電位、及び前記第一電位よりも高い第二電位が供給され、前記入力信号に応じて送信信号を送信する送信ドライバであって、前記第一電位から前記第二電位までの電位で前記送信信号を送信する第一モードと、前記第一電位から前記第二電位よりも高い第三電位までの電位で前記送信信号を送信する第二モードと、を有する。
【0008】
また、第二の本発明に係る送信ドライバは、前記第三電位を供給する昇圧回路をさらに備える。
【0009】
また、第三の本発明に係る送信ドライバでは、前記第一電位、並びに前記第二電位若しくは前記第三電位が供給され、前記送信信号を出力端子から出力する出力制御回路と、前記出力制御回路に対する前記第二電位の供給を制御する短絡制御素子と、をさらに備える。
【0010】
また、第四の本発明に係る送信ドライバでは、前記昇圧回路は、容量素子を有する。
【0011】
また、第五の本発明に係る送信ドライバでは、前記第一モードにおいて、前記短絡制御素子を介して前記出力制御回路に前記第二電位が供給され、前記第二モードにおいて、前記短絡制御素子は、前記出力制御回路への前記第二電位の供給を遮断し、かつ、前記昇圧回路が前記出力制御回路に前記第三電位を供給する。
【0012】
また、第六の本発明に係る送信ドライバでは、前記出力制御回路は、正電源端子及び負電源端子を有し、前記負電源端子に前記第一電位が供給され、前記短絡制御素子の一端に前記第二電位が供給され、前記正電源端子に前記短絡制御素子の他端及び前記容量素子の一端が接続される。
【0013】
また、第七の本発明に係る送信ドライバは、前記入力信号に従って第一信号及び第二信号を生成する信号生成回路をさらに備え、前記出力制御回路は、前記第一信号に従って、前記正電源端子に供給される電位又は前記負電源端子に供給される電位を前記送信信号として前記送信信号を出力し、前記容量素子は、他端に前記第二信号が入力される。
【0014】
また、第八の本発明に係る送信ドライバは、前記第一信号の電位が前記第一電位である間短絡し、前記第一信号の電位が前記第一電位より高い第四電位である間開放するように前記短絡制御素子を制御する制御回路をさらに備え、前記信号生成回路は、前記入力信号の立ち上がりに従う第一タイミングで、電位を前記第一電位から前記第四電位に遷移させ、前記入力信号の立ち下がりに従う第三タイミングから所定の時間が経過した第四タイミングで、電位を前記第四電位から前記第一電位に遷移させるように前記第一信号を生成し、前記信号生成回路は、前記第一タイミングから所定の時間が経過した第二タイミングで、電位を前記第一電位から前記第一電位より高い第五電位に遷移させ、前記第三タイミングで、電位を前記第五電位から前記第一電位に遷移させるように前記第二信号を生成する。
【0015】
また、第九の本発明に係る送信ドライバでは、前記第一タイミングから前記第二タイミングに至るまでの時間は、前記第一タイミングから前記第三タイミングに至るまでの時間の半分以下であり、前記第三タイミングから前記第四タイミングに至るまでの時間は、前記第二タイミングから前記第四タイミングに至るまでの時間の半分以下である。
【0016】
また、第十の本発明に係る送信ドライバでは、前記第四電位及び前記第五電位は、前記第二電位に等しい。
【0017】
また、第十一の本発明に係る送信ドライバでは、前記容量素子の静電容量は、前記出力端子に接続される寄生容量の10倍以上である。
【0018】
また、第十二の本発明に係る送信ドライバは、前記第一電位から前記第三電位よりも高い第六電位までの電位で前記送信信号を送信する第三モードをさらに有する。
【0019】
また、第十三の本発明に係る送信ドライバは、前記第三電位又は前記第六電位を供給する第一昇圧回路をさらに備える。
【0020】
また、第十四の本発明に係る送信ドライバは、前記第一電位よりも前記第三電位及び前記第二電位の差の分高い第七電位、又は前記第一電位よりも前記第六電位及び前記第二電位の差の分高い第八電位を前記第一昇圧回路に供給する第二昇圧回路をさらに備える。
【0021】
また、第十五の本発明に係る送信ドライバでは、前記第一昇圧回路は、一端から前記第三電位又は前記第六電位を供給する第一容量素子を有し、前記第二昇圧回路は、一端から前記第七電位又は前記第八電位を前記第一昇圧回路に供給する第二容量素子を有し、前記第一容量素子の静電容量は、前記第一容量素子及び前記第二容量素子の静電容量の合計の0.6倍である。
【0022】
また、第十六の本発明に係る送信ドライバは、前記第一電位から前記第一電位及び前記第二電位の間の電位である第九電位までの電位で前記送信信号を送信する第四モードと、前記第一電位から前記第二電位及び前記第三電位の間の電位である第十電位までの電位で前記送信信号を送信する第五モードとをさらに有する。
【0023】
また、第十七の本発明に係る送信ドライバは、前記第九電位、前記第十電位又は前記第三電位を供給する第三昇圧回路をさらに備える。
【0024】
また、第十八の本発明に係る送信ドライバでは、前記第三昇圧回路は、前記第一電位及び前記第二電位を分圧することによって、前記第九電位を生成し、生成した前記第九電位を前記第二電位の分昇圧することによって前記第十電位を生成する。
【0025】
また、第十九の本発明に係る電子機器は、信号の送受信を行う電極と、入力信号、第一電位、及び前記第一電位よりも高い第二電位が供給され、前記入力信号に従って送信信号を生成し対応する前記電極に送信する送信ドライバと、を備え、前記送信ドライバは、前記第一電位から前記第二電位までの電位で前記送信信号を送信する第一モードと、前記第一電位から前記第二電位よりも高い第三電位までの電位で前記送信信号を送信する第二モードとを有する。
【0026】
また、第二十の本発明に係る電子機器では、前記送信ドライバは、スタイラスに搭載され、前記電極は、センサコントローラと接続されるセンサ側電極との間の静電結合を通じて信号の送受信を行うスタイラス側電極であり、前記スタイラスに搭載される。
【0027】
また、第二十一の本発明に係る電子機器の制御方法は、信号の送受信を行う電極と、入力信号、第一電位、及び前記第一電位よりも高い第二電位が供給され、前記入力信号に応じて送信信号を前記電極に送信する送信ドライバとを備える電子機器の制御方法であって、第一モードにおいて、前記第一電位から前記第二電位までの電位で前記送信信号を送信することと、第二モードにおいて、前記第一電位から前記第二電位よりも高い第三電位までの電位で前記送信信号を送信することと、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、送信ドライバは単独でも消費電力を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】
図1に示すタッチセンサ搭載装置の一例を示す図である。
【
図3】
図2に示す出力回路の回路構成の一部及びタッチセンサの一例を示す図である。
【
図4】
図1に示すスタイラスの一例を示す図である。
【
図5】第一実施形態に係る送信ドライバの一例を示す図である。
【
図6】第一実施形態に係る送信ドライバにおける各信号の電位の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】第一実施形態に係る送信ドライバを備える電子機器の一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】第二実施形態に係る送信ドライバの一例を示す図である。
【
図9】第二実施形態に係る送信ドライバにおける各信号の電位の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
【
図10】第二実施形態に係る送信ドライバを備える電子機器の一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】第三実施形態に係る送信ドライバの一例を示す図である。
【
図12】第三実施形態に係る送信ドライバにおける各信号の電位の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
【
図13】第三実施形態に係る送信ドライバを備える電子機器の一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】第二実施形態に係る送信ドライバにおける容量素子の静電容量と送信信号の電位との関係の一例を示す図表である。
【
図15】第二実施形態に係る送信ドライバにおける容量素子の静電容量の比と送信信号の電位との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0031】
―――第一実施形態―――
まず、第一実施形態について説明する。
【0032】
<回路構成>
図1は、本発明に係るスタイラスシステム1の一例を示す図である。スタイラスシステム1は、例えば、アクティブ静電方式を利用したシステムである。スタイラスシステム1は、液晶パネルなどの表示装置に重畳されたタッチセンサ30、及びタッチセンサ30を用いて現在のスタイラス2の指示位置を導出し操作状態データとともに制御回路12に出力するセンサコントローラ10を有するタッチセンサ搭載装置3と、指示位置や筆圧等の操作状態データ等をタッチセンサ搭載装置3に入力するためのスタイラス2(アクティブスタイラス)と、を含んで構成される。スタイラス2及びタッチセンサ搭載装置3は、いずれも電子機器であり、容量Cpenによって互いに静電容量結合される。容量Cpenの静電容量は、典型的には10pF未満である。
【0033】
スタイラス2は、センサコントローラ10から所定の周期で送信されるアップリンク信号USを検出し、検出されたアップリンク信号USを基準時刻として指示された時間にダウンリンク信号DSを送信するための電源、通信回路及び電極を備えている例えばアクティブ静電結合方式(AES)のスタイラスである。
【0034】
タッチセンサ搭載装置3は、ユーザが所有するコンピュータであって、例えば、タブレット、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどから構成される。タッチセンサ搭載装置3は、スタイラス2の指示位置を検出し、該検出結果に従って様々な情報処理を行う。具体的には、タッチセンサ搭載装置3は、スタイラス2に対してアップリンク信号USを送信し、スタイラス2からのダウンリンク信号DSの受信結果に応じてスタイラス2の指示位置を検出し、デジタルインクの生成処理やポインタの表示処理などを行う。タッチセンサ搭載装置3は、センサコントローラ10及びタッチセンサ30の他に、ホストプロセッサ、メモリや通信モジュール(いずれも不図示)などを備える。
【0035】
図2は、
図1に示すタッチセンサ搭載装置3の一例を示す図である。
【0036】
タッチセンサ30は、複数の検出電極を面状に配置してなる静電容量方式のセンサである。このタッチセンサ30は、例えば、センサ座標系のX軸の位置を検出するための複数本のXライン電極(以下、「線状電極31」という)と、Y軸の位置を検出するための複数本のYライン電極(以下、「線状電極32」という)とを含んで構成される。線状電極31及び線状電極32は、ITO(Indium Tin Oxide)を含む透明導電性材料から構成されてもよいし、ワイヤメッシュセンサから構成されてもよい。なお、タッチセンサ30は、上記した相互容量方式のセンサに代えて、ブロック状の電極を二次元格子状に配置した自己容量方式のセンサであってもよい。
【0037】
センサコントローラ10は、MCU(Micro Controller Unit)11と、制御回路12と、送信回路13と、受信回路14と、出力回路15と、検出回路16と、選択回路17及び18とを含んで構成される。
【0038】
出力回路15は、制御回路12からの指示に基づいて、複数の線状電極32の中のひとつ又は互いに隣接する複数本を選択し、制御回路12から送信される入力信号を所定の電圧に増幅して出力信号として、該出力信号を線状電極32に出力する回路である。また、検出回路16は、制御回路12からの指示に基づき複数の線状電極31の中のひとつ又は互いに隣接する複数本を選択する回路である。
【0039】
選択回路17は、例えば、マルチプレクサであり、出力回路15によって選択した線状電極32を受信用として用いるか送信用として用いるかを切り替えるための回路である。選択回路17は、制御回路12から出力される選択信号SELYがロウ状態「0」の場合、選択回路18を介して出力回路15によって選択した線状電極32を受信回路14に接続する。一方、選択回路17は、選択信号SELYがハイ状態「1」の場合、制御回路12から送信回路13を介して入力される入力信号を出力回路15によって選択した線状電極32に供給する。
【0040】
選択回路18は、例えば、マルチプレクサであり、出力回路15によって選択された線状電極32から選択回路17を介して入力される信号か、又は検出回路16によって選択された線状電極31から入力される信号を選択し、該選択した信号を受信回路14に出力する。一方、選択回路18は、制御回路12から出力される選択信号SELXがロウ状態の場合、出力回路15によって選択された線状電極32を受信回路14に接続する。他方、選択回路18は、選択信号SELXがハイ状態の場合、選択回路17を介して出力回路15によって選択された線状電極32を受信回路14に接続する。
【0041】
タッチセンサ搭載装置3は、以下に示す四種類のモードを有しており、制御回路12はこれらのモードを以下に示す順に切り替えながら、センサコントローラ10内の各回路の制御を行う。以下、一つずつ詳しく説明する。
【0042】
一つ目のモードは、指の位置検出を行うモードである。当該モードにおいて制御回路12は、選択信号SELYをハイ状態とし、選択信号SELXをロウ状態とする。即ち、出力回路15によって選択された線状電極32には、制御回路12から送信回路13及び出力回路15を介して出力される送信信号が供給され、タッチセンサ30からタッチ検出信号を送信する。また、検出回路16によって選択された線状電極31は、受信回路14に接続される。このように構成することにより、MCU11は、指がセンサ面に接触したことによる検出信号の変化を読み取り指の座標位置を算出する。
【0043】
二つ目のモードは、スタイラス2に対してアップリンク信号USを送信するモードである。この場合の制御回路12は、選択信号SELYをハイ状態とすることにより、出力回路15によって選択した線状電極32には制御回路12から送信回路13及び出力回路15を介して出力される送信信号が供給され、タッチセンサ30からはアップリンク信号USが送信される。このとき、出力回路15は、線状電極32のうちスタイラス2が指示している近傍の電極を選択してアップリンク信号USを送信しても良いし、出力回路15が線状電極32の全ての電極を同時に選択してトリガ信号US_trgを送信するようにしても良い。
【0044】
三つ目のモードは、スタイラス2が送信する位置信号DS_posを検出することによりスタイラス2の位置検出を行うモードである。この場合の制御回路12は、選択信号SELYをロウ状態とすることにより、出力回路15によって選択された線状電極32は、選択回路17を介して受信回路14に接続される。スタイラス2のX軸座標を求める場合、制御回路12は、選択信号SELXをロウ状態として、検出回路16によって選択された線状電極31を受信回路14に接続する。この状態で検出回路16が選択する線状電極31を、スタイラス2の指示位置に最も近い線状電極31を中心とする複数本、例えば五本の線状電極31を一本ずつ順次選択しながら、MCU11は、受信回路14から出力されるデータを信号レベル値として読み取る。MCU11は、選択した線状電極31に対する信号レベル分布よりスタイラス2のX軸座標を算出する。また、スタイラス2のY軸座標を求める場合、制御回路12は、選択信号SELXをハイ状態として、出力回路15によって選択した線状電極32を受信回路14に接続する。この状態で出力回路15が選択する線状電極32を、スタイラス2の指示位置に最も近い線状電極32を中心とする複数本、例えば五本の線状電極32を一本ずつ順次選択しながら、MCU11は、受信回路14から出力されるデータを信号レベル値として読み取る。MCU11は、選択された線状電極32に対する信号レベル分布よりスタイラス2のY軸座標を算出する。
【0045】
四つ目のモードは、スタイラス2が送信するデータ信号DS_resを受信するモードである。データ信号DS_resを受信するときは、線状電極31と線状電極32のうちどちらを用いても良いが、ここでは線状電極31を用いてデータ信号DS_resを受信する場合について説明する。制御回路12は、選択信号SELXをロウ状態とすることにより、検出回路16によって選択された線状電極31を受信回路14に接続する。また、検出回路16がスタイラス2の指示位置に最も近い線状電極31を中心とする複数本、たとえば三本の線状電極31を同時に選択するように制御回路12を動作させる。この状態で、MCU11は、受信回路14からの出力を定期的に読み取る。なお、線状電極32を用いてデータ信号DS_resを受信する場合は、選択信号SELYをロウ状態とし、選択信号SELXをハイ状態とすればよい。
【0046】
以上が、各モードにおける制御回路12の動作である。以上の説明から理解されるように、タッチセンサ搭載装置3は、送信と受信とで同じタッチセンサ30を用いて信号の送受信を行うよう構成される。以下、引き続き、
図2に示したタッチセンサ搭載装置3内の他の構成について説明する。
【0047】
MCU11は、内部にROM及びRAMを有しており所定のプログラムに基づき動作するマイクロプロセッサで、制御回路12から出力される各信号を前述したように出力するように制御回路12に対して制御を行うとともに、受信回路14が出力するデジタルデータを読み取り処理する。
【0048】
制御回路12は、MCU11からの指示に基づき、各信号を指定されたタイミングで正確に出力するための論理回路である。
【0049】
以上、タッチセンサ搭載装置3の構成及び動作について説明した。次に、出力回路15が線状電極32に対して信号を送信する際に機能する回路の構成について詳しく説明する。
図3は、
図2に示す出力回路15の回路構成の一部及びタッチセンサ30の一例を示した図である。
【0050】
図3に示すように、出力回路15は、ドライバ選択回路151と、複数の送信ドライバ152Aとを含んで構成される。
【0051】
ドライバ選択回路151は、制御回路12の指示に従って線状電極32に信号を送信する複数の送信ドライバ152Aのうちいくつかを選択し、送信回路13から送信されるデータ信号を複数の入力信号INとして、各入力信号INを対応する送信ドライバ152Aに出力する。
【0052】
送信ドライバ152Aは、一本の線状電極32に対して一つ設けられる。送信ドライバ152Aは、基準線W_GNDから電位GND(第一電位)が供給され、電源線W_VDDから電位VDD(第二電位)が供給され、ドライバ選択回路151から入力される入力信号INに対して、信号を増幅して、該増幅した信号を送信信号OUTとして、出力信号線Woutを介して送信信号OUTを対応する線状電極32に送信する。また、送信ドライバ152Aは、第一モード及び第二モードを有する。送信ドライバ152Aは、第一モードでは、信号を電位GNDから電位VDDまでの電位差に増幅し、該増幅した信号を送信信号OUTとして出力する。他方、送信ドライバ152Aは、第二モードでは、電位GND(第一電位)から線状電極32から信号を送信できる電位(第三電位)までの電位差に信号を増幅し、該増幅した信号を送信信号OUTとして出力する。ここで、線状電極32から信号を送信できる電位(第三電位)とは、5Vよりも高く、電位VDD(第二電位)よりも高い例えば9V程度の電位である。
【0053】
以上、出力回路15の構成について説明した。次に、スタイラス2の回路の構成について詳しく説明する。
図4は、
図1に示すスタイラス2の回路構成の一例を示した図である。
【0054】
スタイラス2は、例えば、電極20と、選択回路21と、発振部22と、送信部23と、受信部24と、検出部25と、入力部26と、記憶部27と、制御部28と、電源29とを含んで構成される。
【0055】
電極20は、ダウンリンク信号DS又はアップリンク信号USに対応した電荷が誘導される導体である。
【0056】
選択回路21は、例えば、マルチプレクサであり、制御部28から入力される選択信号SELに従って、電極20と、送信部23又は受信部24との間の接続状態を切り替える。
【0057】
発振部22は、制御部28から入力される周波数設定信号SEL_Fに基づいてタッチセンサ搭載装置3及びスタイラス2の間で通信に用いる周波数のキャリア信号を生成する発振回路である。キャリア信号は正弦波であってもクロックパルスの矩形波であってもよい。
【0058】
送信部23は、制御部28から入力されるデータに基づいてダウンリンク信号DSを生成し、電極20を介して生成したダウンリンク信号DSをタッチセンサ搭載装置3に送信する。送信部23は、上述した送信ドライバ152Aを有する。送信ドライバ152Aは、ダウンリンク信号DSの電位差をスタイラス2の電源電圧の例えば2倍に増幅し、電位差を増幅したダウンリンク信号DSをタッチセンサ搭載装置3に送信する。送信ドライバ152Aによって電位差が増幅されたダウンリンク信号DSは、ロウレベル(第一電位)が例えば0Vであり、ハイレベル(第三電位)が15V以上である例えば20V程度の電位であり、電位差が15V以上である例えば20V程度の電位差である。
【0059】
受信部24は、電極20に誘導された電荷量の変化(信号)を検波して復調し、復調した信号を制御部28に出力する。
【0060】
検出部25は、スタイラス2の側面に設けられた押しボタンなどである入力部26のオンオフなどの操作状態や、図示しない筆圧検出部により検出された筆圧Fの値、スタイラス2の駆動電源である電源29の残量データなどスタイラス2の操作状態によって変化する動的なデータを取得し、取得したデータを制御部28に出力する。
【0061】
記憶部27は、スタイラス2の識別情報や、スタイラス2のメーカーを示すベンダ情報、スタイラス2のペン先のタイプ(ボールペン、ブラシなど)、入力部26の数などスタイラス2の操作状態によって変化しない静的なデータである構成データを記憶し、記憶している構成データを制御部28に出力する。
【0062】
制御部28は、スタイラス2をタッチセンサ30に近づける操作(ペンダウン操作)の開始後に受信部24が検出したアップリンク信号USの受信時刻を基準時刻としてセンサコントローラ10に指示された時間にダウンリンク信号DSが送信されるように送信部23を制御する。
【0063】
以上、スタイラス2の構成について説明した。次に、送信ドライバ152Aの回路の構成について詳しく説明する。
図5は、第一実施形態に係る送信ドライバ152Aの回路構成の一例を示した図である。
【0064】
図5に示すように、送信ドライバ152Aは、例えば、信号生成回路153Aと、出力制御回路154と、論理否定回路INV1と、第一昇圧回路155と、短絡制御素子SW1とを含んで構成される。なお、
図5における寄生容量Coutは、送信ドライバ152Aの出力に接続される負荷容量である。具体的には、寄生容量Coutは、例えば、送信ドライバ152Aがスタイラス2に搭載されている場合は、電極20と容量Cpenとの合成容量を示し、例えば、送信ドライバ152Aがセンサコントローラ10に搭載されている場合は、タッチセンサ30の線状電極32と容量Cpenとの合成容量を示す。
【0065】
信号生成回路153Aは、入力される入力信号INに従ってドライブ信号DRV及びブースト信号BST1を生成し、生成したドライブ信号DRV(第一信号)を論理否定回路INV1及び出力制御回路154に出力する一方で、生成したブースト信号BST1(第二信号)を第一昇圧回路155の緩衝回路BUF1に出力する。
【0066】
具体的には、信号生成回路153Aは、入力信号INの立ち上がりに従う第一タイミングで、電位をロウレベル(第一電位)からハイレベル(第四電位)に遷移させる一方で、入力信号INの立ち下がりに従う第三タイミングから所定の時間が経過した第四タイミングで、電位をハイレベル(第四電位)からロウレベル(第一電位)に遷移させるようにドライブ信号DRV(第一信号)を生成する。また、信号生成回路153Aは、第一タイミングから所定の時間が経過した第二タイミングで、電位をロウレベル(第一電位)からハイレベル(第五電位)に遷移させ、第三タイミングで、電位をハイレベル(第五電位)からロウレベル(第一電位)に遷移させるようにブースト信号BST1を生成する。ここで、第一タイミングは、例えば、入力信号INが立ち上がってから、所定のクロックが数回交番したタイミングや、入力信号INに対して所定の遅延を有する信号が立ち上がったタイミングなどである。また、第三タイミングは、例えば、入力信号INが立ち下がってから、所定のクロックが数回交番したタイミングや、入力信号INに対して所定の遅延を有する信号が立ち下がったタイミングなどである。
【0067】
論理否定回路INV1は、例えばトランジスタを含んで構成されるインバータ回路であり、制御信号CT1によって短絡制御素子SW1を制御する制御回路として機能する。論理否定回路INV1は、信号生成回路153Aから入力されるドライブ信号DRVに対して論理否定演算を行い、該演算を行った信号を制御信号CT1として、制御信号CT1を短絡制御素子SW1の制御端子に出力する。
【0068】
第一昇圧回路155は、例えば、緩衝回路BUF1と、容量素子Cext1とを含んで構成される。第一昇圧回路155は、信号生成回路153Aから出力されるブースト信号BST1に従って、出力側に接続されるノードの電位を昇圧し、昇圧した電位(第三電位)を出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。具体的には、一方、第一昇圧回路155は、信号生成回路153Aから出力されるブースト信号BST1の電位がハイレベル(第五電位)の場合、出力側に接続されるノードの電位を昇圧し、昇圧した電位を出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。他方、第一昇圧回路155は、ブースト信号BST1の電位がロウレベル(第一電位)の場合、当該昇圧を停止し、昇圧を行っていない電位(第二電位)を出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。
【0069】
緩衝回路BUF1は、例えばMOSトランジスタを含んで構成されるバッファ回路である。緩衝回路BUF1は、信号生成回路153Aから出力されるブースト信号BST1に対して、信号増強をして、該信号増強を行ったブースト信号BST1を容量素子Cext1に出力する。また、緩衝回路BUF1は、容量素子Cext1及び信号生成回路153Aが互いに及ぼしあう電気的影響を低減又は排除する。なお、第一実施形態では、送信ドライバ152Aに緩衝回路BUF1が設けられているが、緩衝回路BUF1を設けず信号生成回路153Aから直接ブースト信号BST1を容量素子Cext1の一端に入力するようにしても良い。
【0070】
容量素子Cext1は、一端が緩衝回路BUF1の出力端子に接続される一方で、他端が短絡制御素子SW1の他端と出力制御回路154の正電源端子Pとに接続される。容量素子Cext1は、出力制御回路154の正電源端子Pに電位VP2を供給する。また、容量素子Cext1は、短絡制御素子SW1が短絡している場合、電源線W_VDDから電位VDDの供給を受ける。容量素子Cext1の静電容量は、例えば、1uF~10uFであり、典型的には1uFである。
【0071】
短絡制御素子SW1は、例えば、スイッチ素子やトランジスタなどである。短絡制御素子SW1は、一端が電源線W_VDDに接続される一方で、他端が容量素子Cext1の他端と出力制御回路154の正電源端子Pとに接続され、制御端子に入力される制御信号CT1に従って、両端を短絡又は開放する。具体的には、一方、短絡制御素子SW1は、制御信号CT1の状態がハイ状態の場合、両端を短絡し、出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1とに電源線W_VDDの電位VDDを供給する。他方、短絡制御素子SW1は、制御信号CT1の状態がロウ状態の場合、両端を開放し、電源線W_VDDの電位VDDの供給を停止する。
【0072】
出力制御回路154は、信号生成回路153Aから入力端子Iに入力されるドライブ信号DRVに対して、正電源端子Pに供給される電位及び負電源端子Mに供給される電位に従って信号増強を行い、送信信号OUTとして出力端子Oから電極20又は線状電極32に送信する。具体的には、ドライブ信号DRVの状態がハイ状態の場合、送信信号OUTの電位を正電源端子Pに供給される電位とする一方で、ドライブ信号DRVの状態がロウ状態の場合、送信信号OUTの電位を負電源端子Mに供給される電位として、送信信号OUTを出力端子Oから出力する。
【0073】
以上のように構成される送信ドライバ152Aにおいて、短絡制御素子SW1は、入力信号INに従うドライブ信号DRVの状態がロウ状態の場合両端を短絡する一方で、ドライブ信号DRVの状態がハイ状態の場合両端を開放する。一方、短絡制御素子SW1が短絡している間、送信ドライバ152Aの動作モードは、第一モードとなり、出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とには、電源線W_VDDから電位VDD(第二電位)が供給され、容量素子Cext1の一端には基準線W_GNDの電位GND(第一電位:例えば0V)が供給される。
【0074】
他方、短絡制御素子SW1が開放している間、送信ドライバ152Aの動作モードは第二モードとなり、短絡制御素子SW1によって出力制御回路154への電位VDDの供給は遮断され、出力制御回路154の正電源端子Pには、容量素子Cext1の他端から電位VP1が供給される。短絡制御素子SW1が開放している間、電位VP1は、入力信号INに従うブースト信号BST1によって決定される容量素子Cext1の一端の電位に電位VDDを加算した電位となる。具体的には、容量素子Cext1の一端の電位が電位GNDである場合、電位VP1は、電位VDD(第二電位)となる一方で、容量素子Cext1の電位が電位VDDである場合、電位VP1は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)となる。
【0075】
そして、送信ドライバ152Aは、入力信号INの状態に従って、出力制御回路154の正電源端子Pに供給される電位か、出力制御回路154の負電源端子Mに供給される電位を送信信号OUTとして、電極20又は線状電極32に送信する。すなわち、送信ドライバ152Aは、入力信号INに従って、電位が電位VDD(第二電位)、電位VDDを2倍した電位(第三電位)、及び電位GND(第一電位)の間で遷移する送信信号OUTを生成し、送信信号OUTを電極20又は線状電極32に送信する。
【0076】
<送信ドライバに係る一連の動作の流れ>
以上、送信ドライバ152Aの構成について説明した。次に、送信ドライバ152Aにおける各信号の電位の遷移について詳しく説明する。
図6は、第一実施形態に係る送信ドライバ152Aにおける各信号の電位の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
【0077】
時刻t60で、送信ドライバ152Aの動作モードは、第一モードである。時刻t60で、ドライバ選択回路151又は制御部28は、入力信号INの電位を0V(第一電位)から電位VDD(第四電位)に遷移させる。また、時刻t60で、信号生成回路153Aは、入力信号INの電位の立ち上がりを検出する。時刻t60で、短絡制御素子SW1は短絡されており、出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とには電源線W_VDDから電位VDDが供給されている。また、時刻t60で、信号生成回路153Aは、ブースト信号BST1の電位を0V(第一電位)として、ブースト信号BST1を緩衝回路BUF1に出力している。よって、時刻t60で、電位VP1は、電位VDDである。結果、時刻t60で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)として電極20又は線状電極32に送信する。
【0078】
時刻t61で、信号生成回路153Aは、入力信号INの立ち上がりに従いドライブ信号DRVの電位を0V(第一電位)から電位VDD(第五電位)に遷移させる。時刻t61で、論理否定回路INV1は、制御信号CT1の電位を電位VDD(第五電位)から0V(第一電位)に遷移させる。時刻t61で、短絡制御素子SW1は、電位が0V(第一電位)である制御信号CT1に従い、その両端が開放される。時刻t61で、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とへの電位VDD(第二電位)の供給が停止する。時刻t61で、電位VP1は、電位VDD(第二電位)である。時刻t61で、出力制御回路154は、ドライブ信号DRVに従い、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)から正電源端子Pに供給されている電位VDD(第二電位)に遷移させる。
【0079】
時刻t62で、送信ドライバ152Aの動作モードは、第一モードから第二モードへと切り替わる。時刻t62で、信号生成回路153Aは、ブースト信号BST1の電位を0V(第一電位)から電位VDD(第五電位)に遷移させる。時刻t62で、緩衝回路BUF1は、容量素子Cext1の一端の電位を0V(第一電位)から電位VDD(第五電位)に遷移させる。これに伴い、容量素子Cext1が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t62で、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDD(第二電位)から電位VDDに容量素子Cext1の一端の電位(第五電位:電位VDD)を加算した電位(第三電位:2×電位VDD)に遷移する。結果、時刻t62で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から正電源端子Pに供給されている電位VP1(第三電位:2×電位VDD)に遷移させる。
【0080】
時刻t63で、ドライバ選択回路151又は制御部28は、入力信号INの電位を電位VDD(第四電位)から0V(第一電位)に遷移させる。また、時刻t63で、信号生成回路153Aは、入力信号INの電位の立ち下がりを検出する。時刻t63で、出力制御回路154は、依然として送信信号OUTの電位を電位VP1(第三電位:2×電位VDD)として電極20又は線状電極32に送信する。
【0081】
時刻t64で、送信ドライバ152Aの動作モードは、第二モードから第一モードへと切り替わる。時刻t64で、信号生成回路153Aは、ブースト信号BST1の電位を電位VDD(第五電位)から0V(第一電位)に遷移させる。時刻t64で、緩衝回路BUF1は、容量素子Cext1の一端の電位を電位VDD(第五電位)から0V(第一電位)に遷移させる。これに伴い、容量素子Cext1が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t64で、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移する。結果、時刻t64で、出力制御回路154は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から正電源端子Pに供給されている電位VP1(第二電位:電位VDD)に送信信号OUTの電位を遷移させる。
【0082】
時刻t65で、信号生成回路153Aは、入力信号INの立ち下がり従いドライブ信号DRVの電位を電位VDD(第五電位)から0V(第一電位)に遷移させる。時刻t65で、論理否定回路INV1は、制御信号CT1の電位を0V(第一電位)から電位VDD(第四電位)に遷移させる。時刻t65で、短絡制御素子SW1は、電位が電位VDD(第四電位)である制御信号CT1に従い、その両端が短絡される。時刻t65で、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とに電位VDD(第二電位)が供給される。時刻t65で、電位VP1は、電位VDD(第二電位)である。時刻t65で、出力制御回路154は、ドライブ信号DRVに従い、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から負電源端子Mに供給されている0V(第一電位)に遷移させる。
【0083】
なお、典型的には、時刻t61から時刻t62に至るまでの時間は、時刻t61から時刻t63に至るまでの時間の半分以下であり、また、時刻t63から時刻t64に至るまでの時間は、時刻t62から時刻t64に至るまでの時間の半分以下である。
【0084】
以上、送信ドライバ152Aにおける各信号の電位の遷移の一例について説明した。次に、送信ドライバ152Aを備える電子機器(スタイラス2又はタッチセンサ搭載装置3)の一連の処理の流れについて詳しく説明する。
図7は、第一実施形態に係る送信ドライバ152Aを備える電子機器の一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0085】
(ステップSP10)
電子機器は、送信ドライバ152Aの信号生成回路153Aによって、入力信号INの信号波形が立ち上がっているか否かを判定する。一方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていると判定する場合、処理は、ステップSP12の処理に移行する。他方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていないと判定する場合、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0086】
(ステップSP12)
電子機器の動作モードは第一モードとなっている。第一モードにおいて、電子機器は、送信ドライバ152Aによって0V(第一電位)から電位VDD(第二電位)までの範囲の電位で送信信号OUTを送信する。電子機器は、信号生成回路153Aによってドライブ信号DRVの電位を0V(第一位)から電位VDD(第四電位)に遷移させ、当該ドライブ信号DRVを出力制御回路154に出力する。続いて、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)から電位VDD(第二電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0087】
(ステップSP14)
電子機器は、短絡制御素子SW1を開放することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とへの電位VDD(第二電位)の供給を停止する。そして、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0088】
(ステップSP16)
電子機器は、動作モードを第一モードから第二モードに切り替える。また、電子機器は、信号生成回路153Aによってブースト信号BST1の電位を0V(第一電位)から電位VDD(第五電位)に遷移させ、当該ブースト信号BST1を緩衝回路BUF1に出力する。これに伴い、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDD(第二電位)から電位VDDの2倍の電位(第三電位)に遷移し、電位VDDの2倍の電位(第三電位)が出力制御回路154の正電源端子Pに供給される。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から電位VDDの2倍の電位(第三電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0089】
(ステップSP18)
電子機器は、送信ドライバ152Aの信号生成回路153Aによって、入力信号INの信号波形が立ち下がっているか否かを判定する。一方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち下がっていると判定する場合、処理は、ステップSP20の処理に移行する。他方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていないと判定する場合、処理は、
図7に係る一連の処理を終了する。
【0090】
(ステップSP20)
電子機器の動作モードは第二モードとなっている。第二モードにおいて、電子機器は、送信ドライバ152Aによって0V(第一電位)から電位VDD(第二電位)より高い電位(第三電位)までの範囲の電位で送信信号OUTを送信する。続いて、電子機器は、動作モードを第二モードから第一モードに切り替える。また、電子機器は、信号生成回路153Aによってブースト信号BST1の電位を電位VDD(第五電位)から0V(第一電位)に遷移させ、当該ブースト信号BST1を緩衝回路BUF1に出力する。これに伴い、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDDの2倍の電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移し、電位VDD(第二電位)が出力制御回路154の正電源端子Pに供給される。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を電位VDDの2倍の電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0091】
(ステップSP22)
電子機器は、信号生成回路153Aによってドライブ信号DRVの電位を電位VDD(第四電位)から0V(第一電位)に遷移させ、当該ドライブ信号DRVを出力制御回路154に出力する。続いて、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から0V(第一電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP24の処理に移行する。
【0092】
(ステップSP24)
電子機器は、短絡制御素子SW1を短絡することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とへ電位VDD(第二電位)を供給する。
【0093】
<効果>
以上、第一実施形態では、送信ドライバ152Aは、入力信号IN、電位GND(第一電位)、及び電位VDD(第二電位)が供給され、入力信号INに応じて送信信号OUTを送信する。また、送信ドライバ152Aは、電位GND(第一電位)から電位VDD(第二電位)までの範囲の電位で送信信号OUTを送信する第一モードと、電位GND(第一電位)から電位VDD(第二電位)よりも高い電位(第三電位)までの範囲の電位で送信信号OUTを送信する第二モードと、を有する。
【0094】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、供給される電位VDD(第二電位)よりも高い電位(第三電位)で送信信号OUTを出力することができるため、電位VDDを供給する電源の電位を電位VDDより高くする必要がなく、したがって単独での消費電力を削減できる。
【0095】
また、第一実施形態では、送信ドライバ152Aは、電位VDD(第二電位)よりも高い電位(第三電位)を供給する第一昇圧回路155をさらに備える。
【0096】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、第一昇圧回路155によって供給される電位VDD(第二電位)よりも高い電位(第三電位)を供給することができるため、電位VDDを供給する電源の電位を電位VDDより高くする必要がなく、したがって単独での消費電力を削減できる。
【0097】
また、第一実施形態では、送信ドライバ152Aは、電位GND(第一電位)、並びに電位VDD(第二電位)若しくは電位VDDより高い電位(第三電位)が供給され、送信信号OUTを出力端子Oから出力する出力制御回路154と、出力制御回路154に対する電位VDD(第二電位)の供給を制御する短絡制御素子SW1と、をさらに備える。
【0098】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、短絡制御素子SW1によって出力制御回路154への電位の供給を制御できるため、簡素な構成で単独での消費電力を削減できる。
【0099】
また、第一実施形態では、第一昇圧回路155は、容量素子Cext1を有する。
【0100】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、容量素子Cext1によって昇圧を実現するため、簡素な構成で単独での消費電力を削減できる。
【0101】
また、第一実施形態では、送信ドライバ152Aは、第一モードにおいて、短絡制御素子SW1を介して出力制御回路154に電位VDD(第二電位)が供給される。また、第二モードにおいて、短絡制御素子SW1は、出力制御回路154への電位VDD(第二電位)の供給を遮断し、かつ、第一昇圧回路155が出力制御回路154に電位VDDより高い電位(第三電位)を供給する。
【0102】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、短絡制御素子SW1によって出力制御回路154への電位の供給を制御できるため、簡素な構成で単独での消費電力を削減できる。
【0103】
また、第一実施形態では、出力制御回路154は、正電源端子P及び負電源端子Mを有し、負電源端子Mに電位GND(第一電位)が供給され、短絡制御素子SW1の一端に電位VDD(第二電位)が供給され、正電源端子Pに短絡制御素子SW1の他端及び容量素子Cext1の一端が接続される。
【0104】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、容量素子Cext1によって昇圧を実現するため、簡素な構成で単独での消費電力を削減できる。
【0105】
また、第一実施形態では、送信ドライバ152Aは、入力信号INに従ってドライブ信号DRV(第一信号)及びブースト信号BST1(第二信号)を生成する信号生成回路153Aをさらに備える。出力制御回路154は、ドライブ信号DRV(第一信号)に従って、正電源端子Pに供給される電位又は負電源端子Mに供給される電位(第一電位)を送信信号OUTとして送信信号OUTを出力する。容量素子Cext1は、他端にブースト信号BST1(第二信号)が入力される。
【0106】
この構成によれば、送信ドライバ152Aにおける容量素子Cext1の一端の電位は、ブースト信号BST1の電位によって決定する。また、短絡制御素子SW1の両端が開放されている場合、容量素子Cext1が両端の電位差を維持しようとするため、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、容量素子Cext1の一端の電位によって決定する。すなわち、容量素子Cext1の他端の電位VP1が電位VDDである状態で、容量素子Cext1の一端の電位を上昇させれば、容量素子Cext1の他端の電位VP1は電位VDDを上回る。これによって、送信ドライバ152Aは、電源線W_VDDの電位VDDを上回る電位を出力制御回路154から送信信号OUTとして出力できるため、電源線W_VDDの電位を低く抑えることができる。よって、送信ドライバ152Aは、単独での消費電力の削減を実現する。
【0107】
また、第一実施形態では、送信ドライバ152Aは、ドライブ信号DRV(第一信号)の電位が電位GND(第一電位)である間短絡し、ドライブ信号DRV(第一信号)の電位が電位VDD(第四電位)である間開放するように短絡制御素子SW1を制御する論理否定回路INV1(制御回路)をさらに備える。信号生成回路153Aは、入力信号INの立ち上がりに従う第一タイミング(時刻t61)で、電位を電位GND(第一電位)から電位VDD(第四電位)に遷移させ、入力信号INの立ち下がりに従う第三タイミング(時刻t64)から所定の時間が経過した第四タイミング(時刻t65)で、電位を電位VDD(第四電位)から電位GND(第一電位)に遷移させるようにドライブ信号DRV(第一信号)を生成する。さらに、信号生成回路153Aは、第一タイミング(時刻t61)から所定の時間が経過した第二タイミング(時刻t62)で、電位を電位GND(第一電位)から電位VDD(第五電位)に遷移させ、第三タイミング(時刻t64)で、電位を電位VDD(第五電位)から電位GND(第一電位)に遷移させるようにブースト信号BST1(第二信号)を生成する。
【0108】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、容量素子Cext1の一端に0Vを供給し、容量素子Cext1の他端に電源線W_VDDから電位VDDを供給した後に、容量素子Cext1の他端への電源線W_VDDからの電位VDDの供給を停止する。さらに、送信ドライバ152Aは、容量素子Cext1の一端の電位を0Vから電位VDDまで上昇させることによって容量素子Cext1の他端の電位VP1を電位VDDの2倍の電位まで引き上げ、当該電位VP1を出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。これによって、送信ドライバ152Aは、電源線W_VDDの電位VDDの2倍の電位を出力制御回路154から送信信号OUTとして出力できるため、電源線W_VDDの電位を低く抑えることができる。よって、送信ドライバ152Aは、単独での消費電力の削減を実現する。
【0109】
また、第一実施形態では、第一タイミング(時刻t61)から第二タイミング(時刻t62)に至るまでの時間は、第一タイミング(時刻t61)から第三タイミング(時刻t63)に至るまでの時間の半分以下である。また、第三タイミング(時刻t63)から第四タイミング(時刻t64)に至るまでの時間は、第二タイミング(時刻t62)から第四タイミング(時刻t64)に至るまでの時間の半分以下である。
【0110】
また、第一実施形態では、第四電位及び第五電位は、電源線W_VDDの電位VDD(第二電位)と等しい。
【0111】
この構成によれば、送信ドライバ152Aは、電源系統が一つの場合においても、電源線W_VDDの電位VDDを上回る電位を有する送信信号OUTを出力することができ、よって単独での消費電力の削減を実現する。
【0112】
また、第一実施形態では、容量素子Cext1の静電容量は、出力端子Oに接続される寄生容量Coutの10倍以上である。具体的には、寄生容量Coutの静電容量が10pF未満であるのに対して、容量素子Cext1の静電容量は、1uF~10uFである。
【0113】
また、第一実施形態では、電子機器(スタイラス2又はタッチセンサ搭載装置3)は、信号の送受信を行う電極20又は線状電極32と、入力信号IN、電位GND(第一電位)、及び電位VDD(第二電位)が供給され、入力信号INに応じて送信信号OUTを送信する送信ドライバ152Aとを備える。電子機器において、送信ドライバ152Aは、電位GND(第一電位)から電位VDD(第二電位)までの電位で送信信号OUTを送信する第一モードと、電位GND(第一電位)から電位VDD(第二電位)よりも高い電位(第三電位)までの電位で送信信号OUTを送信する第二モードと、を有する。
【0114】
この構成によれば、送信ドライバ152Aを搭載する電子機器(スタイラス2又はタッチセンサ搭載装置3)は、消費電力を削減できる。
【0115】
また、第一実施形態では、送信ドライバ152Aは、スタイラス2に搭載される。また、電極20は、センサコントローラ10と接続されるセンサ側電極との間の静電結合を通じて信号の送受信を行うスタイラス側電極であり、スタイラス2に搭載される。
【0116】
この構成によれば、スタイラス2は、消費電力を削減できる。
【0117】
また、第一実施形態では、電子機器(タッチセンサ搭載装置3)は、複数の線状電極32が面状に配置されてなるタッチセンサ30と、送信信号OUTを対応する線状電極32に送信する複数の送信ドライバ152Aを有し、タッチセンサ30に接続されるセンサコントローラ10と、を備える。
【0118】
この構成によれば、タッチセンサ搭載装置3は、消費電力を削減できる。
【0119】
―――第二実施形態―――
以上、第一実施形態について説明した。続いて、第二実施形態について説明する。
【0120】
<回路構成>
図8は、第二実施形態に係る送信ドライバ152Bの回路構成の一例を示した図である。
図8に示すように、送信ドライバ152Bは、例えば、送信ドライバ152Aに対して、さらに第二昇圧回路156と、論理否定回路INV2とを加えて構成される。また、送信ドライバ152Bは、送信ドライバ152Aに対して、信号生成回路153Aに代えて信号生成回路153Bを含んで構成される。なお、送信ドライバ152Bの回路構成の説明において、送信ドライバ152Aと同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0121】
信号生成回路153Bは、入力される入力信号INに従ってドライブ信号DRV並びにブースト信号BST1及びBST2を生成する。信号生成回路153Bは、生成したドライブ信号DRVを論理否定回路INV1及び出力制御回路154に出力し、生成したブースト信号BST1を論理否定回路INV2と第一昇圧回路155の緩衝回路BUF1とに出力し、生成したブースト信号BST2を第二昇圧回路156の緩衝回路BUF2に出力する。
【0122】
具体的には、信号生成回路153Bは、第一タイミングで電位をロウレベル(第一電位)からハイレベル(第四電位)に遷移させる一方で、第四タイミングで電位をハイレベル(第四電位)からロウレベル(第一電位)に遷移させるようにドライブ信号DRVを生成する。また、信号生成回路153Bは、第二タイミングで電位をロウレベル(第一電位)からハイレベル(第五電位)に遷移させ、第三タイミングで電位をハイレベル(第五電位)からロウレベル(第一電位)に遷移させるようにブースト信号BST1を生成する。
【0123】
また、信号生成回路153Bは、第二タイミングから第三タイミングまでの期間中のタイミングである第五タイミングで電位をロウレベルからハイレベルに遷移させる一方で、第五タイミングから第三タイミングまでの期間中のタイミングである第六タイミングで電位をハイレベルからロウレベルに遷移させるようにブースト信号BST2を生成する。
【0124】
論理否定回路INV2は、例えばトランジスタを含んで構成されるインバータ回路であり、制御信号CT2によって短絡制御素子SW2を制御する制御回路として機能する。論理否定回路INV2は、信号生成回路153Bから入力されるブースト信号BST1に対して論理否定演算を行い、該演算を行った信号を制御信号CT2として、制御信号CT2を短絡制御素子SW2の制御端子に出力する。
【0125】
第二昇圧回路156は、例えば、緩衝回路BUF2と、容量素子Cext2とを含んで構成される。第二昇圧回路156は、0V(第一電位)よりも電位VDDを2倍した電位(第三電位)及び電位VDD(第二電位)の差の分高い電位(第七電位)か、または、0V(第一電位)よりも電位VDDを3倍した電位(第六電位)及び電位VDD(第二電位)の差の分高い電位(第八電位)を第一昇圧回路155に供給する。具体的には、一方、第二昇圧回路156は、信号生成回路153Bから出力されるブースト信号BST2の電位がハイレベルの場合、出力側に接続されるノードの電位を昇圧し、昇圧した電位(第八電位)を第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子に供給する。他方、第二昇圧回路156は、ブースト信号BST2の電位がロウレベルの場合、当該昇圧を停止し、昇圧を行っていない電位(第七電位)を第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子に供給する。
【0126】
緩衝回路BUF2は、例えばMOSトランジスタを含んで構成されるバッファ回路である。緩衝回路BUF2は、信号生成回路153Bから出力されるブースト信号BST2に対して、信号増強をして、該信号増強を行ったブースト信号BST2を容量素子Cext2に出力する。また、緩衝回路BUF2は、容量素子Cext2及び信号生成回路153Bが互いに及ぼしあう電気的影響を低減又は排除する。なお、第二実施形態では、送信ドライバ152Bに緩衝回路BUF2が設けられているが、緩衝回路BUF2を設けず信号生成回路153Bから直接ブースト信号BST2を容量素子Cext2の一端に入力するようにしても良い。
【0127】
容量素子Cext2は、一端が緩衝回路BUF2の出力端子に接続される一方で、他端が短絡制御素子SW2の他端と第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子とに接続される。容量素子Cext2は、第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子に電位VP2(第七電位又は第八電位)を供給する。また、容量素子Cext2は、短絡制御素子SW2が短絡している場合、電源線W_VDDから電位VDDの供給を受ける。容量素子Cext2の静電容量は、例えば、1uF~10uFであり、典型的には1uFである。
【0128】
短絡制御素子SW2は、例えば、スイッチ素子やトランジスタなどである。短絡制御素子SW2は、一端が電源線W_VDDに接続される一方で、他端が容量素子Cext2の他端と第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子とに接続され、制御端子に入力される制御信号CT2に従って、両端を短絡又は開放する。具体的には、一方、短絡制御素子SW2は、制御信号CT2の状態がハイ状態の場合、両端を短絡し、第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子と容量素子Cext2とに電源線W_VDDの電位VDD(第七電位)を供給する。他方、短絡制御素子SW2は、制御信号CT2の状態がロウ状態の場合、両端を開放し、電源線W_VDDの電位VDDの供給を停止する。
【0129】
以上のように構成される送信ドライバ152Bにおいて、短絡制御素子SW1は、入力信号INに従うドライブ信号DRVの状態がロウ状態の場合両端を短絡する一方で、ドライブ信号DRVの状態がハイ状態の場合両端を開放する。短絡制御素子SW1が短絡している間、送信ドライバ152Bの動作モードは、第一モードとなり、出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とには、電源線W_VDDから電位VDD(第二電位)が供給され、容量素子Cext1の一端には電位GND(第一電位)が供給される。
【0130】
また、短絡制御素子SW1が開放しており、かつ短絡制御素子SW2が短絡している間、送信ドライバ152Bの動作モードは第二モードとなり、短絡制御素子SW1によって出力制御回路154への電位VDDの供給は遮断され、出力制御回路154の正電源端子Pには、容量素子Cext1の他端から電位VP1が供給される。短絡制御素子SW1が開放しており、かつ短絡制御素子SW2が短絡している間、電位VP1は、入力信号INに従うブースト信号BST1によって決定される容量素子Cext1の一端の電位に電位VDDを加算した電位となる。具体的には、容量素子Cext1の一端の電位が電位GNDである場合、電位VP1は、電位VDD(第二電位)となる一方で、容量素子Cext1の電位が電位VDDである場合、電位VP1は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)となる。
【0131】
また、短絡制御素子SW1及びSW2のいずれもが開放している間、送信ドライバ152Aの動作モードは第三モードとなり、短絡制御素子SW1によって出力制御回路154への電位VDDの供給が遮断され、出力制御回路154の正電源端子Pには、容量素子Cext1の他端から電位VP1が供給される。また、短絡制御素子SW2によって第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子への電位VDD(第七電位)の供給が遮断され、第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子には、容量素子Cext2の他端から電位VP2(第七電位)が供給される。
【0132】
短絡制御素子SW1及びSW2のいずれもが開放している間、電位VP2は、入力信号INに従うブースト信号BST2によって決定される容量素子Cext2の一端の電位に電位VDDを加算した電位となる。具体的には、容量素子Cext2の一端の電位が電位GNDである場合、電位VP2は、電位VDD(第七電位)となる一方で、容量素子Cext2の電位が電位VDDである場合、電位VP2は、電位VDDを2倍した電位(第八電位)となる。
【0133】
短絡制御素子SW1及びSW2のいずれもが開放している間、電位VP1は、入力信号INに従うブースト信号BST1及びBST2によって決定される容量素子Cext1の一端の電位に電位VDDを加算した電位となる。具体的には、一方、容量素子Cext1の一端の電位が電位GNDである場合、電位VP1は、電位VDD(第二電位)となる。他方、容量素子Cext1の電位が電位VP2(電位VDD、又は電位VDDを2倍した電位)である場合、電位VP1は、電位VDDに電位VP2を加算した電位、即ち電位VDDを2倍した電位(第三電位)か又は電位VDDを3倍した電位(第六電位)となる。
【0134】
そして、送信ドライバ152Bは、入力信号INの状態に従って、出力制御回路154の正電源端子Pに供給される電位か、出力制御回路154の負電源端子Mに供給される電位を送信信号OUTとして、電極20又は線状電極32に送信する。すなわち、送信ドライバ152Bは、入力信号INに従って、電位が電位VDD(第二電位)、電位VDDを2倍した電位(第三電位)、電位VDDを3倍した電位(第六電位)、及び電位GND(第一電位)の間で遷移する送信信号OUTを生成し、送信信号OUTを電極20又は線状電極32に送信する。
【0135】
<送信ドライバに係る一連の動作の流れ>
以上、送信ドライバ152Bの構成について説明した。次に、送信ドライバ152Bにおける各信号の電位の遷移について詳しく説明する。
図9は、第二実施形態に係る送信ドライバ152Bにおける各信号の電位の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
【0136】
時刻t91で、送信ドライバ152Bの動作モードは、第一モードである。時刻t91で、ドライバ選択回路151又は制御部28は、入力信号INの電位を0Vから電位VDDに遷移させる。また、時刻t91で、信号生成回路153Bは、入力信号INの電位の立ち上がりを検出する。時刻t91で、短絡制御素子SW1は短絡されており、出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とには電源線W_VDDから電位VDDが供給されている。時刻t91で、短絡制御素子SW2は短絡されており、第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子と容量素子Cext2の他端とには電源線W_VDDから電位VDDが供給されている。また、時刻t91で、信号生成回路153Bは、ブースト信号BST1の電位を0Vとして、ブースト信号BST1を緩衝回路BUF1に出力している。よって、時刻t91で、電位VP1の電位は、電位VDD(第二電位)である。また、時刻t91で、電位VP2の電位は、電位VDD(第七電位)である。結果、時刻t91で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)として電極20又は線状電極32に送信する。
【0137】
時刻t92で、信号生成回路153Bは、入力信号INの立ち上がりに従いドライブ信号DRVの電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t92で、論理否定回路INV1は、制御信号CT1の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t92で、短絡制御素子SW1は、電位が0Vである制御信号CT1に従い、その両端が開放される。時刻t92で、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とへの電位VDD(第二電位)の供給が停止する。よって、時刻t92で、電位VP1の電位は、電位VDD(第二電位)である。また、時刻t92で、電位VP2の電位は、電位VDD(第七電位)である。時刻t92で、出力制御回路154は、ドライブ信号DRVに従い、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)から正電源端子Pに供給されている電位VDD(第二電位)に遷移させる。
【0138】
時刻t93で、送信ドライバ152Bの動作モードは、第一モードから第二モードへと切り替わる。時刻t93で、信号生成回路153Bは、ブースト信号BST1の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t93で、論理否定回路INV2は、制御信号CT2の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t93で、短絡制御素子SW2は、電位が0Vである制御信号CT2に従い、その両端が開放される。時刻t93で、電源線W_VDDから第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子と容量素子Cext2の他端とへの電位VDD(第二電位)の供給が停止する。時刻t93で、電位VP2の電位は、電位VDD(第七電位)である。時刻t93で、緩衝回路BUF1は、容量素子Cext1の一端の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。これに伴い、容量素子Cext1が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t93で、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDD(第二電位)から電位VDDに容量素子Cext1の一端の電位(電位VDD)を加算した電位(第三電位:2×電位VDD)に遷移する。結果、時刻t93で、出力制御回路154は、電位VDD(第二電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。
【0139】
時刻t94で、送信ドライバ152Bの動作モードは、第二モードから第三モードへと切り替わる。時刻t94で、信号生成回路153Bは、ブースト信号BST2の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t94で、緩衝回路BUF2は、容量素子Cext2の一端の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。これに伴い、容量素子Cext2が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t94で、容量素子Cext2の他端の電位VP2は、電位VDD(第七電位)から電位VDDに容量素子Cext2の一端の電位(電位VDD)を加算した電位(第八電位:2×電位VDD)に遷移する。また、時刻t94で、緩衝回路BUF1は、容量素子Cext1の一端の電位を電位VDD(第七電位)から電位VDDに容量素子Cext2の一端の電位(電位VDD)を加算した電位(第八電位:2×電位VDD)に遷移させる。これに伴い、容量素子Cext1が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t94で、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、第三電位(2×電位VDD)から電位VDDに容量素子Cext1の一端の電位(2×電位VDD)を加算した電位(第六電位:3×電位VDD)に遷移する。結果、時刻t94で、出力制御回路154は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDDを3倍した電位(第六電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。
【0140】
時刻t95で、ドライバ選択回路151又は制御部28は、入力信号INの電位を電位VDDから0Vに遷移させる。また、時刻t95で、信号生成回路153Bは、入力信号INの電位の立ち下がりを検出する。時刻t95で、出力制御回路154は、依然として送信信号OUTの電位を電位VDDを3倍した電位(第六電位)として電極20又は線状電極32に送信する。
【0141】
時刻t96で、送信ドライバ152Bの動作モードは、第三モードから第二モードへと切り替わる。時刻t96で、信号生成回路153Bは、ブースト信号BST2の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t96で、緩衝回路BUF2は、容量素子Cext2の一端の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。これに伴い、容量素子Cext2が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t96で、容量素子Cext2の他端の電位VP2は、電位VDDを2倍した電位(第八電位)から電位VDD(第七電位)に遷移する。また、時刻t96で、緩衝回路BUF1は、電位VDDを2倍した電位(第八電位)から電位VDD(第七電位)に容量素子Cext1の一端の電位を遷移させる。これに伴い、容量素子Cext1が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t96で、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDDを3倍した電位(第六電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に遷移する。結果、時刻t96で、出力制御回路154は、電位VDDを3倍した電位(第六電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。
【0142】
時刻t97で、送信ドライバ152Bの動作モードは、第二モードから第一モードへと切り替わる。時刻t97で、信号生成回路153Bは、ブースト信号BST1の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t97で、論理否定回路INV2は、制御信号CT2の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t97で、短絡制御素子SW2は、電位が電位VDDである制御信号CT2に従い、その両端が短絡される。時刻t97で、電源線W_VDDから第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子と容量素子Cext2の他端とに電位VDDが供給される。時刻t97で、緩衝回路BUF1は、容量素子Cext1の一端の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。これに伴い、容量素子Cext1が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t97で、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移する。結果、時刻t97で、出力制御回路154は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。
【0143】
時刻t98で、信号生成回路153Bは、入力信号INの立ち下がり従いドライブ信号DRVの電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t98で、論理否定回路INV1は、制御信号CT1の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t98で、短絡制御素子SW1は、電位が電位VDDである制御信号CT1に従い、その両端が短絡される。時刻t98で、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とに電位VDD(第二電位)が供給される。時刻t98で、電位VP1は、電位VDD(第二電位)である。時刻t98で、出力制御回路154は、ドライブ信号DRVに従い、電位VDD(第二電位)から負電源端子Mに供給されている0V(第一電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。
【0144】
なお、時刻t92から時刻t93に至るまでの時間は、例えば、時刻t92から時刻t95に至るまでの時間の1/3以下である。また、時刻t93から時刻t94に至るまでの時間は、例えば、時刻t92から時刻t95に至るまでの時間の1/3以下である。また、時刻t95から時刻t96に至るまでの時間は、例えば、時刻t95から時刻t98に至るまでの時間の1/3以下である。また、時刻t96から時刻t97に至るまでの時間は、例えば、時刻t95から時刻t98に至るまでの時間の1/3以下である。
【0145】
以上、送信ドライバ152Bにおける各信号の電位の遷移の一例について説明した。次に、送信ドライバ152Bを備える電子機器(スタイラス2又はタッチセンサ搭載装置3)の一連の処理の流れについて詳しく説明する。
図10は、第二実施形態に係る送信ドライバ152Bを備える電子機器の一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0146】
(ステップSP40)
電子機器は、送信ドライバ152Bの信号生成回路153Bによって、入力信号INの信号波形が立ち上がっているか否かを判定する。一方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていると判定する場合、処理は、ステップSP42の処理に移行する。他方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていないと判定する場合、処理は、ステップSP52の処理に移行する。
【0147】
(ステップSP42)
電子機器の動作モードは第一モードとなっている。電子機器は、信号生成回路153Bによってドライブ信号DRVの電位を0Vから電位VDDに遷移させ、当該ドライブ信号DRVを出力制御回路154に出力する。続いて、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)から電位VDD(第二電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP44の処理に移行する。
【0148】
(ステップSP44)
電子機器は、短絡制御素子SW1を開放することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とへの電位VDD(第二電位)の供給を停止する。そして、処理は、ステップSP46の処理に移行する。
【0149】
(ステップSP46)
電子機器は、動作モードを第一モードから第二モードに切り替える。また、電子機器は、信号生成回路153Bによってブースト信号BST1の電位を0Vから電位VDDに遷移させ、当該ブースト信号BST1を緩衝回路BUF1に出力する。これに伴い、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDD(第二電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に遷移し、電位VDDを2倍した電位(第三電位)が出力制御回路154の正電源端子Pに供給される。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP48の処理に移行する。
【0150】
(ステップSP48)
電子機器は、短絡制御素子SW2を開放することによって、電源線W_VDDから第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子と容量素子Cext2の他端とへの電位VDDの供給を停止する。そして、処理は、ステップSP50の処理に移行する。
【0151】
(ステップSP50)
電子機器は、動作モードを第二モードから第三モードに切り替える。第三モードにおいて、電子機器は、送信ドライバ152Bによって0V(第一電位)から電位VDD(第二電位)より高い電位(第三電位)より高い電位(第六電位)までの範囲の電位で送信信号OUTを送信する。また、電子機器は、信号生成回路153Bによってブースト信号BST2の電位を0Vから電位VDDに遷移させ、当該ブースト信号BST2を緩衝回路BUF2に出力する。これに伴い、容量素子Cext2の他端の電位VP2は、電位VDD(第七電位)から電位VDDを2倍した電位(第八電位)に遷移し、電位VDDを2倍した電位(第八電位)が第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子に供給される。さらに、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDDを3倍した電位(第六電位)に遷移し、電位VDDを3倍した電位(第六電位)が出力制御回路154における正電源端子Pに供給される。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDDを3倍した電位(第六電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP52の処理に移行する。
【0152】
(ステップSP52)
電子機器は、送信ドライバ152Bの信号生成回路153Bによって、入力信号INの信号波形が立ち下がっているか否かを判定する。一方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち下がっていると判定する場合、処理は、ステップSP54の処理に移行する。他方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち下がっていないと判定する場合、処理は、
図10に係る一連の処理を終了する。
【0153】
(ステップSP54)
電子機器は、動作モードを第三モードから第二モードに切り替える。また、電子機器は、信号生成回路153Bによってブースト信号BST2の電位を電位VDDから0Vに遷移させ、当該ブースト信号BST2を緩衝回路BUF2に出力する。これに伴い、容量素子Cext2の他端の電位VP2は、電位VDDを2倍した電位(第八電位)から電位VDD(第七電位)に遷移し、電位VDD(第七電位)が第一昇圧回路155における緩衝回路BUF1の電源端子に供給される。さらに、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDDを3倍した電位(第六電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に遷移し、電位VDDを2倍した電位(第三電位)が出力制御回路154の正電源端子Pに供給される。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDDを3倍した電位(第六電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP56の処理に移行する。
【0154】
(ステップSP56)
電子機器は、動作モードを第二モードから第一モードに切り替える。また、電子機器は、信号生成回路153Bによってブースト信号BST1の電位を電位VDDから0Vに遷移させ、当該ブースト信号BST1を緩衝回路BUF1に出力する。これに伴い、容量素子Cext1の他端の電位VP1は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移し、電位VDD(第二電位)が出力制御回路154の正電源端子Pに供給される。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を電位VDDの2倍の電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP58の処理に移行する。
【0155】
(ステップSP58)
電子機器は、短絡制御素子SW2を短絡することによって、電源線W_VDDから第一昇圧回路155の電源端子と容量素子Cext2の他端とへ電位VDD(第七電位)を供給する。そして、処理は、ステップSP60の処理に移行する。
【0156】
(ステップSP60)
電子機器は、信号生成回路153Bによってドライブ信号DRVの電位を電位VDDから0Vに遷移させ、当該ドライブ信号DRVを出力制御回路154に出力する。続いて、電子機器は、出力制御回路154によって、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から0V(第一電位)に遷移させる。そして、処理は、ステップSP62の処理に移行する。
【0157】
(ステップSP62)
電子機器は、短絡制御素子SW1を短絡することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pと容量素子Cext1の他端とへ電位VDD(第二電位)を供給する。
【0158】
なお、第二実施形態においては、送信ドライバ152Bにおける容量素子Cext1及びCext2が略同じ静電容量であるものと仮定して、送信ドライバ152Bの動作について説明したが、これに限られるものではない。送信ドライバ152Bにおいて、容量素子Cext1及びCext2の静電容量は、異なっていても良い。
【0159】
第六電位は、容量素子Cext1及びCext2の合成容量と寄生容量Coutの静電容量との分圧比、又は容量素子Cext1と寄生容量Coutの静電容量との分圧比によって決定されるため、容量素子Cext1及びCext2の合成容量が大きい程、電位が高くなり消費電力をより低減できて有利である。具体的には、第六電位と、容量素子Cext1及びCext2の合成容量と、寄生容量Coutとの関係は、以下の式1~式5によって表される。ここで、電位V1は、第二電位(電位VDD)である。また、電位V2は、第三電位である。また、電位V3は、第六電位である。また、電位VAは、第二モードにおける容量素子Cext1の両端の電位差であり、すなわち第三電位(電位V2)及び第二電位(電位V1)の電位差である。また、電位VBは、第三モードにおける容量素子Cext2の両端の電位差であり、すなわち第六電位(電位V3)及び第二電位(電位V2)の電位差(第八電位)である。
【0160】
【0161】
また、容量素子Cext1及びCext2が送信ドライバ152Bに実装された場合に送信ドライバ152Bを占める面積は、容量素子Cext1及びCext2の静電容量が大きくなるほど大きくなる。送信ドライバ152Bにおいて容量素子Cext1及びCext2が占めることができる面積には上限がある場合が多い。したがって、容量素子Cext1及びCext2を送信ドライバ152Bに実装された場合に容量素子Cext1及びCext2が占める面積を基準として、第六電位が最大となるような容量素子Cext1及びCext2の静電容量の組み合わせが存在する。そこで、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の組み合わせと、第六電位との関係について、
図14及び
図15を参照しつつ説明する。
【0162】
図14は、第二実施形態に係る送信ドライバ152Bにおける容量素子Cext1及びCext2の静電容量と送信信号OUTの電位との関係の一例を示す図表である。また、
図15は、第二実施形態に係る送信ドライバ152Bにおける容量素子Cext1及びCext2の静電容量の比C1normと送信信号OUTの電圧比V3normとの関係の一例を示すグラフである。なお、
図14及び
図15では、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の合計が100pFになるものと仮定している。また、
図14及び
図15では、第二電位V1は、11Vであるものと仮定している。また、
図14及び
図15では、寄生容量Coutは、10pFであるものと仮定している。
【0163】
図14には、容量素子Cext1及びCext2の静電容量を5pFずつ変更した場合における静電容量の組み合わせ毎に、容量素子Cext2に対する容量素子Cext1の静電容量の比、第三電位V2及び第六電位V3の値が示されている。また、
図14には、さらに静電容量の組み合わせ毎に、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の合計値に対する容量素子Cext1の静電容量の比である比C1normと、各組み合わせにおける第六電位V3のうちの最大値に対する一の組み合わせにおける第六電位V3の比である電圧比V3normともまた示されている。
【0164】
図14及び
図15に示すように、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の比C1normが0.30以上かつ0.85未満である場合において、第六電位V3は26.7V以上となる。また、電圧比V3normは、0.95以上の値となる。なお、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の比C1normが0.30以上かつ0.85未満である場合とは、換言すれば、容量素子Cext2に対する容量素子Cext1の比が0.43以上かつ5.67未満の場合のことである。さらに、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の比C1normが0.60である場合において、第六電位V3及び電圧比V3normは最大値となり、それぞれ28.19V及び1.00の値となる。容量の比C1normが0.60である場合とは、換言すれば、容量素子Cext2に対する容量素子Cext1の比が1.50である場合のことである。したがって、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の比C1normを0.30以上かつ0.85未満にした場合、第六電位V3の値がより高くなる。また、容量素子Cext1及びCext2の静電容量の比C1normを0.60にした場合、第六電位V3の値が最大になる。
【0165】
<効果>
以上、第二実施形態では、送信ドライバ152Bは、電位GND(第一電位)から第三電位よりも高い第六電位までの電位で送信信号OUTを送信する第三モードをさらに有する。
【0166】
この構成によれば、送信ドライバ152Bは、供給される第三電位よりさらに高い電位(第六電位)で送信信号OUTを出力することができるため、電位VDDを供給する電源の電位よりを低くすることができ、したがって単独での消費電力をさらに削減できる。
【0167】
また、第二実施形態では、送信ドライバ152Bは、第三電位又は第六電位を供給する第一昇圧回路155をさらに備える。
【0168】
この構成によれば、送信ドライバ152Bは、第一昇圧回路155によって、第三電位よりさらに高い電位(第六電位)を供給することができるため、電位VDDを供給する電源の電位よりを低くすることができ、したがって単独での消費電力をさらに削減できる。
【0169】
また、第二実施形態では、送信ドライバ152Bは、電位GND(第一電位)よりも第三電位及び電位VDD(第二電位)の差の分高い第七電位、又は電位GNDよりも第六電位及び電位VDD(第二電位)の差の分高い第八電位を第一昇圧回路155に供給する第二昇圧回路156をさらに備える。
【0170】
この構成によれば、送信ドライバ152Bは、第二昇圧回路156によって、第一昇圧回路155に電位を供給するため、簡易な構成で、単独での消費電力をさらに削減できる。
また、第二実施形態では、第一昇圧回路155は、一端から第三電位V2又は第六電位V3を供給する第一容量素子Cext1を有し、第二昇圧回路156は、一端から第七電位又は前記第八電位を第一昇圧回路155に供給する第二容量素子Cext2を有し、第一容量素子Cext1の静電容量は、第一容量素子Cext1及び第二容量素子Cext2の静電容量の合計の0.6倍である。
【0171】
この構成によれば、送信ドライバ152Bは、第六電位V3がより高い電位となるため、簡易な構成で、単独での消費電力をさらに削減できる。
【0172】
―――第三実施形態―――
以上、第二実施形態について説明した。続いて、第三実施形態について説明する。
【0173】
<回路構成>
図11は、第三実施形態に係る送信ドライバ152Cの回路構成の一例を示した図である。
図11に示すように、送信ドライバ152Cは、例えば、信号生成回路153Cと、出力制御回路154と、第三昇圧回路157と、短絡制御素子SW1~SW4と、論理否定回路INV3とを含んで構成される。なお、送信ドライバ152Cの回路構成の説明において、送信ドライバ152Aと同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0174】
信号生成回路153Cは、入力される入力信号INに従ってドライブ信号DRV並びにブースト信号BST1を生成する。信号生成回路153Cは、生成したドライブ信号DRVを論理否定回路INV3及び出力制御回路154に出力し、生成したブースト信号BST1を第三昇圧回路157の緩衝回路BUF3に出力する。具体的には、信号生成回路153Cは、第一タイミングで電位をロウレベルからハイレベルに遷移させる一方で、第四タイミングで電位をハイレベルからロウレベルに遷移させるようにドライブ信号DRVを生成する。また、信号生成回路153Cは、第二タイミングで電位をロウレベルからハイレベルに遷移させ、第三タイミングで電位をハイレベルからロウレベルに遷移させるようにブースト信号BST1を生成する。
【0175】
また、信号生成回路153Cは、短絡制御素子SW1、SW3及びSW4を制御するための制御信号CT3、CT5及びCT6を生成する。信号生成回路153Cは、生成した制御信号CT3によって短絡制御素子SW1を制御し、生成した制御信号CT5によって短絡制御素子SW3を制御し、生成した制御信号CT6によって短絡制御素子SW4を制御する。
【0176】
論理否定回路INV3は、例えばトランジスタを含んで構成されるインバータ回路であり、制御信号CT4によって短絡制御素子SW2を制御する制御回路として機能する。論理否定回路INV3は、信号生成回路153Cから入力されるドライブ信号DRVに対して論理否定演算を行い、該演算を行った信号を制御信号CT4として、制御信号CT4を短絡制御素子SW2の制御端子に出力する。
【0177】
第三昇圧回路157は、例えば、緩衝回路BUF3と、容量素子Cext3及びCext4と、出力端子RV1及びRV2とを含んで構成される。第三昇圧回路157は、ロウレベル(第一電位)及び電位VDD(第二電位)の間の電位である第九電位、電位VDD(第二電位)と電位VDDの2倍の電位(第三電位)の間の電位である第十電位、電位VDDの2倍の電位(第三電位)を出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。
【0178】
具体的には、第三昇圧回路157は、ブースト信号BST1の電位がロウレベルの場合、出力端子RV1に接続されているノードの電位VP4をロウレベルとの間で分圧することによって電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)を生成し、短絡制御素子SW4の両端が短絡している場合、電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)を出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。また、第三昇圧回路157は、信号生成回路153Cから出力されるブースト信号BST1の電位がハイレベルの場合、出力端子RV1に接続されるノードの電位VP4を昇圧することによって電位VDDを2倍した電位(第三電位)を生成し、短絡制御素子SW3の両端が短絡している場合、電位VDDを2倍した電位(第三電位)を出力端子RV1から短絡制御素子SW3を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。さらに、第三昇圧回路157は、信号生成回路153Cから出力されるブースト信号BST1の電位がハイレベルの場合、出力端子RV1に接続されるノードの電位VP4をハイレベルとの間で分圧することによって電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)を生成し、短絡制御素子SW4の両端が短絡している場合、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)を出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。
【0179】
緩衝回路BUF3は、例えばMOSトランジスタを含んで構成されるバッファ回路である。緩衝回路BUF3は、信号生成回路153Cから出力されるブースト信号BST1に対して、信号増強をして、該信号増強を行ったブースト信号BST1を容量素子Cext3に出力する。また、緩衝回路BUF3は、容量素子Cext3及び信号生成回路153Cが互いに及ぼしあう電気的影響を低減又は排除する。なお、第三実施形態では、送信ドライバ152Cに緩衝回路BUF3が設けられているが、緩衝回路BUF3を設けず信号生成回路153Cから直接ブースト信号BST1を容量素子Cext3の一端に入力するようにしても良い。
【0180】
容量素子Cext3は、一端が緩衝回路BUF3の出力端子に接続される一方で、他端が容量素子Cext4の一端と出力端子RV2とに接続される。容量素子Cext3は、出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して電位VP3を出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。容量素子Cext3の静電容量は、例えば、1uF~10uFであり、典型的には1uFである。
【0181】
容量素子Cext4は、一端が容量素子Cext3の他端と出力端子RV2とに接続される一方で、他端が出力端子RV1に接続される。容量素子Cext4は、出力端子RV1から短絡制御素子SW3を介して電位VP4を出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。容量素子Cext4の静電容量は、例えば、1uF~10uFであり、典型的には1uFである。また、容量素子Cext4の静電容量は、例えば、容量素子Cext3と等しい。
【0182】
短絡制御素子SW1~SW4は、例えば、スイッチ素子やトランジスタなどである。短絡制御素子SW1~SW4は、制御端子に入力される制御信号に従って、両端を短絡又は開放する。
【0183】
短絡制御素子SW1は、一端が電源線W_VDDに接続される一方で、他端が短絡制御素子SW5の他端と、短絡制御素子SW6の他端と、出力制御回路154の正電源端子Pとに接続される。一方、短絡制御素子SW2は、制御信号CT3の状態がハイ状態の場合、両端を短絡し、出力制御回路154の正電源端子Pに電源線W_VDDの電位VDDを供給する。他方、短絡制御素子SW1は、制御信号CT3の状態がロウ状態の場合、両端を開放し、電源線W_VDDの電位VDDの供給を停止する。
【0184】
短絡制御素子SW2は、一端が電源線W_VDDに接続される一方で、他端が第三昇圧回路157の出力端子RV1と短絡制御素子SW3の一端とに接続される。一方、短絡制御素子SW2は、制御信号CT4の状態がハイ状態の場合、両端を短絡し、第三昇圧回路157の出力端子RV1に電源線W_VDDの電位VDDを供給する。他方、短絡制御素子SW2は、制御信号CT4の状態がロウ状態の場合、両端を開放し、電源線W_VDDの電位VDDの供給を停止する。
【0185】
短絡制御素子SW3は、一端が短絡制御素子SW2の他端と、第三昇圧回路157の出力端子RV1とに接続される一方で、他端が短絡制御素子SW1の他端と短絡制御素子SW4の他端と、出力制御回路154の正電源端子Pとに接続される。一方、短絡制御素子SW3は、制御信号CT5の状態がハイ状態の場合、両端を短絡し、出力制御回路154の正電源端子Pに第三昇圧回路157の出力端子RV1の電位VP4を供給する。他方、短絡制御素子SW2は、制御信号CT5の状態がロウ状態の場合、両端を開放し、電源線W_VDDの電位VDDの供給を停止する。
【0186】
短絡制御素子SW4は、一端が第三昇圧回路157の出力端子RV2に接続される一方で、他端が短絡制御素子SW1の他端と、短絡制御素子SW5の他端と、出力制御回路154の正電源端子Pとに接続される。一方、短絡制御素子SW4は、制御信号CT6の状態がハイ状態の場合、両端を短絡し、第三昇圧回路157の出力端子RV1に出力端子RV2の電位VP3を供給する。他方、短絡制御素子SW4は、制御信号CT6の状態がロウ状態の場合、両端を開放し、電源線W_VDDの電位VDDの供給を停止する。
【0187】
以上のように構成される送信ドライバ152Cにおいて、短絡制御素子SW1が短絡している間、送信ドライバ152Cの動作モードは、第一モードとなり、出力制御回路154の正電源端子Pには、電源線W_VDDから電位VDD(第二電位)が供給される。
【0188】
また、短絡制御素子SW1、SW2及びSW6が開放していて、かつ短絡制御素子SW3が短絡している間、送信ドライバ152Cの動作モードは第二モードとなり、短絡制御素子SW1によって出力制御回路154への電位VDDの供給は遮断され、出力制御回路154の正電源端子Pには、第三昇圧回路157の出力端子RV1から短絡制御素子SW3を介して電位VP4が供給される。第二モードの間、電位VP1は、入力信号INに従うブースト信号BST1によって決定される容量素子Cext3の一端の電位に電位VP4を加算した電位となる。具体的には、容量素子Cext3の一端の電位が電位GNDである場合、電位VP1は、電位VDD(第二電位)となる一方で、容量素子Cext3の電位が電位VDDである場合、電位VP1は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)となる。
【0189】
また、短絡制御素子SW1~SW3が開放しており、短絡制御素子SW4が短絡している間、短絡制御素子SW1によって出力制御回路154への電位VDDの供給が遮断され、出力制御回路154の正電源端子Pには、第三昇圧回路157の出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して電位VP3が供給される。短絡制御素子SW1~SW3が開放しており、短絡制御素子SW4が短絡している間、電位VP1は、入力信号INに従うブースト信号BST1によって決定される容量素子Cext3の一端の電位に電位VP3を加算した電位となる。具体的には、一方、容量素子Cext3の一端の電位が電位GNDである場合、送信ドライバ152Cの動作モードが第四モードになるとともに、電位VP1は、電位VDDの0.5倍の電位(第九電位)となる。他方、容量素子Cext3の一端の電位が電位VDDである場合、送信ドライバ152Cの動作モードが第五モードになるとともに、電位VP1は、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)となる。
【0190】
そして、送信ドライバ152Cは、入力信号INの状態に従って、出力制御回路154の正電源端子Pに供給される電位か、出力制御回路154の負電源端子Mに供給される電位を送信信号OUTとして、電極20又は線状電極32に送信する。すなわち、送信ドライバ152Cは、入力信号INに従って、電位が電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)、電位VDD(第二電位)、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)、電位VDDを2倍した電位(第三電位)及び電位GND(第一電位)の間で遷移する送信信号OUTを生成し、送信信号OUTを電極20又は線状電極32に送信する。
【0191】
<送信ドライバに係る一連の動作の流れ>
以上、送信ドライバ152Cの構成について説明した。次に、送信ドライバ152Cにおける各信号の電位の遷移について詳しく説明する。
図12は、第三実施形態に係る送信ドライバ152Cにおける各信号の電位の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
【0192】
時刻t121で、送信ドライバ152Cは、時刻t121で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第一モードである。時刻t121で、ドライバ選択回路151又は制御部28は、入力信号INの電位を0Vから電位VDDに遷移させる。また、時刻t121で、信号生成回路153Cは、入力信号INの電位の立ち上がりを検出する。時刻t121で、短絡制御素子SW2は、短絡されており、第三昇圧回路157の出力端子RV1を介して容量素子Cext4の他端には電源線W_VDDから電位VDDが供給されている。時刻t121で、短絡制御素子SW1、SW3及びSW4は、開放されている。よって、時刻t121で、電位VP4の電位は、電位VDD(第二電位)である。また、時刻t121で、信号生成回路153Cは、ブースト信号BST1の電位を0Vとして、ブースト信号BST1を緩衝回路BUF3に出力している。これに伴い、第三昇圧回路157は、容量素子Cext3の一端に0Vの電位を供給する。時刻t121で、電位VP3は、電位VDDの0.5倍の電位(第九電位)となる。時刻t121で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)として電極20又は線状電極32に送信する。
【0193】
時刻t122で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第一モードから第四モードへと切り替わる。時刻t122で、信号生成回路153Cは、入力信号INの立ち上がりに従いドライブ信号DRVの電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t122で、論理否定回路INV3は、制御信号CT4の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t122で、短絡制御素子SW2は、電位が0Vである制御信号CT4に従い、その両端が開放される。時刻t122で、電源線W_VDDから第三昇圧回路157の出力端子RV1を介した容量素子Cext4の他端への電位VDD(第二電位)の供給が停止する。時刻t122で、信号生成回路153Cは、制御信号CT6の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t122で、短絡制御素子SW4は、電位が電位VDDである制御信号CT6に従い、その両端が短絡される。これに伴い、時刻t122で、第三昇圧回路157は、電位VP3を出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。よって、時刻t122で、電位VP1の電位は、電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)となる。時刻t122で、出力制御回路154は、ドライブ信号DRVに従い、送信信号OUTの電位を0V(第一電位)から正電源端子Pに供給されている電位VDDの0.5倍の電位(第九電位)に遷移させる。
【0194】
時刻t123で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第四モードから第一モードへと切り替わる。時刻t123で、信号生成回路153Cは、制御信号CT3の電位を0Vから電位VDDに遷移させるとともに、制御信号CT6の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t123で、短絡制御素子SW4は、電位が0Vである制御信号CT6に従い、その両端が開放される。時刻t123で、短絡制御素子SW1は、電位が電位VDDである制御信号CT3に従い、その両端が短絡される。これに伴い、時刻t123で、第三昇圧回路157から出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介した出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VP3(第九電位:電位VDDの0.5倍の電位)の供給が停止する。さらに、時刻t123で、電源線W_VDDから短絡制御素子SW1を介して出力制御回路154の正電源端子Pに電位VDDが供給される。よって、時刻t123で、電位VP1の電位は、電位VDD(第二電位)となる。時刻t123で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を電位VDDの0.5倍の電位(第九電位)から電位VDD(第二電位)に遷移させる。
【0195】
時刻t124で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第一モードから第五モードへと切り替わる。時刻t123で、信号生成回路153Cは、制御信号CT3の電位を電位VDDから0Vに遷移させるとともに、制御信号CT6の電位を0Vから電位VDDに遷移させ、さらに、ブースト信号BST1の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t124で、短絡制御素子SW1は、電位が0Vである制御信号CT3に従い、その両端が開放される。時刻t124で、電源線W_VDDから短絡制御素子SW1を介した出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDD(第二電位)の供給が停止する。時刻t123で、第三昇圧回路157は、容量素子Cext3の一端に電位VDDの電位を供給する。これに伴い、容量素子Cext3及びCext4が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t124で、容量素子Cext4の他端の電位VP4は、電位VDDから電位VDDに容量素子Cext3の一端の電位(電位VDD)を加算した電位(第三電位:2×電位VDD)に遷移する。また、容量素子Cext3の他端の電位VP3は、電位VDDを0.5倍した電位から電位VDDに容量素子Cext3の一端の電位(電位VDD)を加算した電位(第十電位:1.5×電位VDD)に遷移する。時刻t124で、短絡制御素子SW4は、電位が電位VDDである制御信号CT6に従い、その両端が短絡される。これに伴い、時刻t124で、第三昇圧回路157は、電位VP3を出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。よって、時刻t124で、電位VP1の電位は、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)となる。時刻t124で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)に遷移させる。
【0196】
時刻t125で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第五モードから第二モードへと切り替わる。時刻t125で、信号生成回路153Cは、制御信号CT6の電位を電位VDDから0Vに遷移させるとともに、制御信号CT5の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t125で、短絡制御素子SW4は、電位が0Vである制御信号CT6に従い、その両端が開放される。時刻t125で、第三昇圧回路157の出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介した出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VP3の供給が停止する。時刻t125で、短絡制御素子SW3は、電位が電位VDDである制御信号CT5に従い、その両端が短絡される。これに伴い、時刻t125で、第三昇圧回路157は、電位VP4を出力端子RV1から短絡制御素子SW3を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。よって、時刻t125で、電位VP1の電位は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)となる。時刻t125で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に遷移させる。
【0197】
時刻t126で、ドライバ選択回路151又は制御部28は、入力信号INの電位を電位VDDから0Vに遷移させる。また、時刻t126で、信号生成回路153Cは、入力信号INの電位の立ち下がりを検出する。時刻t126で、出力制御回路154は、依然として送信信号OUTの電位を電位VP1(第三電位:2×電位VDD)として電極20又は線状電極32に送信する。
【0198】
時刻t127で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第二モードから第五モードへと切り替わる。時刻t127で、信号生成回路153Cは、制御信号CT6の電位を0Vから電位VDDに遷移させるとともに、制御信号CT5の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t127で、短絡制御素子SW3は、電位が0Vである制御信号CT5に従い、その両端が開放される。時刻t127で、第三昇圧回路157の出力端子RV1から短絡制御素子SW3を介した出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VP4(第三電位:電位VDDの2倍の電位)の供給が停止する。時刻t127で、短絡制御素子SW4は、電位が電位VDDである制御信号CT6に従い、その両端が短絡される。これに伴い、時刻t127で、第三昇圧回路157は、電位VP3を出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。よって、時刻t127で、電位VP1の電位は、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)となる。時刻t127で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)に遷移させる。
【0199】
時刻t128で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第五モードから第一モードへと切り替わる。時刻t128で、信号生成回路153Cは、制御信号CT3の電位を0Vから電位VDDに遷移させるとともに、制御信号CT6の電位を電位VDDから0Vに遷移させ、さらにブースト信号BST1の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t128で、短絡制御素子SW4は、電位が0Vである制御信号CT6に従い、その両端が開放される。時刻t128で、短絡制御素子SW1は、電位が電位VDDである制御信号CT3に従い、その両端が短絡される。これに伴い、容量素子Cext3及びCext4が両端の電位差を保持しようとするため、時刻t128で、容量素子Cext4の他端の電位VP4は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移する。また、容量素子Cext3の他端の電位VP3は、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)から電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)に遷移する。時刻t128で、第三昇圧回路157の出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介した出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VP3(第九電位:電位VDDの0.5倍の電位)の供給が停止する。さらに、時刻t128で、電源線W_VDDから短絡制御素子SW1を介して出力制御回路154の正電源端子Pに電位VDDが供給される。よって、時刻t128で、電位VP1の電位は、電位VDD(第二電位)となる。時刻t128で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を電位VDDの1.5倍の電位(第十電位)から電位VDD(第二電位)に遷移させる。
【0200】
時刻t129で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第一モードから第四モードへと切り替わる。時刻t129で、信号生成回路153Cは、制御信号CT6の電位を0Vから電位VDDに遷移させるとともに、制御信号CT3の電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t129で、短絡制御素子SW1は、電位が0Vである制御信号CT3に従い、その両端が開放される。これに伴い、時刻t129で、電源線W_VDDから短絡制御素子SW1を介した出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDD(第二電位)の供給が停止する。時刻t129で、短絡制御素子SW4は、電位が電位VDDである制御信号CT6に従い、その両端が短絡される。これに伴い、時刻t129で、第三昇圧回路157は、電位VP3を第三昇圧回路157の出力端子RV2から短絡制御素子SW4を介して出力制御回路154の正電源端子Pに供給する。よって、時刻t129で、電位VP1の電位は、電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)となる。時刻t129で、出力制御回路154は、送信信号OUTの電位を電位VDD(第二電位)から電位VDDの0.5倍の電位(第九電位)に遷移させる。
【0201】
時刻t130で、送信ドライバ152Cの動作モードは、第四モードから第一モードへと切り替わる。時刻t130で、信号生成回路153Cは、入力信号INの立ち下がり従いドライブ信号DRVの電位を電位VDDから0Vに遷移させる。時刻t130で、論理否定回路INV3は、制御信号CT4の電位を0Vから電位VDDに遷移させる。時刻t130で、短絡制御素子SW2は、電位が電位VDDである制御信号CT4に従い、その両端が短絡される。時刻t130で、電源線W_VDDから短絡制御素子SW2を介して容量素子Cext2の他端に電位VDD(第二電位)が供給される。時刻t130で、出力制御回路154は、ドライブ信号DRVに従い、送信信号OUTの電位を電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)から負電源端子Mに供給されている0V(第一電位)に遷移させる。
【0202】
なお、時刻t122から時刻t123に至るまでの時間、時刻t123から時刻t1264に至るまでの時間は、及び時刻t124から時刻t125に至るまでの時間は、例えば、時刻t122から時刻t126に至るまでの時間の1/4以下である。また、時刻t127から時刻t128に至るまでの時間、また、時刻t128から時刻t129に至るまでの時間、また、時刻t129から時刻t130に至るまでの時間は、例えば、時刻t126から時刻t130に至るまでの時間の1/4以下である。
【0203】
以上、送信ドライバ152Cにおける各信号の電位の遷移の一例について説明した。次に、送信ドライバ152Cを備える電子機器(スタイラス2又はタッチセンサ搭載装置3)の一連の処理の流れについて詳しく説明する。
図13は、第三実施形態に係る送信ドライバ152Cを備える電子機器の一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0204】
(ステップSP80)
電子機器は、送信ドライバ152Cの信号生成回路153Cによって、入力信号INの信号波形が立ち上がっているか否かを判定する。一方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていると判定する場合、処理は、ステップSP82の処理に移行する。他方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていないと判定する場合、処理は、ステップSP82の処理に移行する。
【0205】
(ステップSP82)
電子機器の動作モードは第一モードとなっている。電子機器は、送信ドライバ152Cによって0V(第一電位)の電位で送信信号OUTを送信する。電子機器は、信号生成回路153Cによってドライブ信号DRVの電位を0Vから電位VDDに遷移させ、当該ドライブ信号DRVを出力制御回路154に出力する。また、電子機器は、短絡制御素子SW2を開放することによって、電源線W_VDDから容量素子Cext4の他端への電位VDD(第二電位)の供給を停止する。また、電子機器は、短絡制御素子SW1、SW3及びSW5を開放している。また、電子機器は、第三昇圧回路157によって、電位VDDの0.5倍の電位(第九電位)を生成している。そして、処理は、ステップSP84の処理に移行する。
【0206】
(ステップSP84)
電子機器は、動作モードを第一モードから第四モードに切り替える。第四モードにおいて、電子機器は、送信ドライバ152Cによって0V(第一電位)から0V(第一電位)及び電位VDD(第二電位)の間の電位(第九電位)までの範囲の電位で送信信号OUTを送信する。電子機器は、短絡制御素子SW4を短絡することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pに電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)を供給する。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDDを0V(第一電位)から電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP86の処理に移行する。
(ステップSP86)
電子機器は、動作モードを第四モードから第一モードに切り替える。電子機器は、短絡制御素子SW4を開放することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)の供給を停止する。また、電子機器は、短絡制御素子SW1を短絡することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pに電位VDD(第二電位)を供給する。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)から電位VDD(第二電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP88の処理に移行する。
【0207】
(ステップSP88)
電子機器は、動作モードを第一モードから第五モードに切り替える。第五モードにおいて、電子機器は、送信ドライバ152Cによって電位VDD(第二電位)から電位VDD(第二電位)より高い電位(第三電位)及び電位VDD(第二電位)の間の電位(第十電位)までの範囲の電位で送信信号OUTを送信する。また、電子機器は、信号生成回路153Cによってブースト信号BST1の電位を0Vから電位VDDに遷移させ、当該ブースト信号BST1を緩衝回路BUF3に出力する。これに伴い、容量素子Cext4の他端の電位VP4は、電位VDD(第二電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に遷移する。また、容量素子Cext3の他端の電位VP3は、電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)から電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)に遷移する。そして、処理は、ステップSP90の処理に移行する。
【0208】
(ステップSP90)
電子機器は、短絡制御素子SW1を開放することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDD(第二電位)の供給を停止する。また、電子機器は、短絡制御素子SW4を短絡することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)を供給する。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDD(第二電位)から電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP92の処理に移行する。
【0209】
(ステップSP92)
電子機器は、動作モードを第五モードから第二モードに切り替える。電子機器は、短絡制御素子SW4を開放することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)の供給を停止する。また、電子機器は、短絡制御素子SW3を短絡することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV1から出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDDを2倍した電位(第三電位)を供給する。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)から電位VDDを2倍した電位(第三電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP94の処理に移行する。
【0210】
(ステップSP94)
電子機器は、送信ドライバ152Cの信号生成回路153Cによって、入力信号INの信号波形が立ち下がっているか否かを判定する。一方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち上がっていると判定する場合、処理は、ステップSP96の処理に移行する。他方、電子機器が入力信号INの信号波形が立ち下がっていないと判定する場合、処理は、
図13に係る一連の処理を終了する。
【0211】
(ステップSP96)
動作モードを第二モードから第五モードに切り替える。電子機器は、信号生成回路153Cによってドライブ信号DRVの電位を電位VDDから0Vに遷移させ、当該ドライブ信号DRVを出力制御回路154に出力する。また、電子機器は、短絡制御素子SW3を開放することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV1から出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDDを2倍した電位(第三電位)の供給を停止する。また、電子機器は、短絡制御素子SW4を短絡することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pに電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)を供給する。そして、処理は、ステップSP98の処理に移行する。
【0212】
(ステップSP98)
電子機器は、動作モードを第五モードから第一モードに切り替える。また、電子機器は、信号生成回路153Cによってブースト信号BST1の電位を電位VDDから0Vに遷移させ、当該ブースト信号BST1を緩衝回路BUF3に出力する。これに伴い、容量素子Cext4の他端の電位VP4は、電位VDDを2倍した電位(第三電位)から電位VDD(第二電位)に遷移する。また、容量素子Cext3の他端の電位VP3は、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)から電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)に遷移する。そして、処理は、ステップSP100の処理に移行する。
【0213】
(ステップSP100)
電子機器は、短絡制御素子SW4を開放することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)の供給を停止する。また、電子機器は、短絡制御素子SW1を短絡することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pに電位VDD(第二電位)を供給する。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDDを1.5倍した電位(第十電位)から電位VDD(第二電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP102の処理に移行する。
【0214】
(ステップSP102)
電子機器は、動作モードを第一モードから第四モードに切り替える。電子機器は、短絡制御素子SW1を開放することによって、電源線W_VDDから出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDD(第二電位)の供給を停止する。また、電子機器は、短絡制御素子SW4を短絡することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pに電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)を供給する。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、電位VDDを電位VDD(第二電位)から電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。そして、処理は、ステップSP104の処理に移行する。
【0215】
(ステップSP104)
電子機器は、動作モードを第四モードから第一モードに切り替える。電子機器は、短絡制御素子SW4を開放することによって、第三昇圧回路157の出力端子RV2から出力制御回路154の正電源端子Pへの電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)の供給を停止する。また、電子機器は、信号生成回路153Cによってドライブ信号DRVの電位を電位VDDから0Vに遷移させ、当該ドライブ信号DRVを出力制御回路154に出力する。結果、電子機器は、出力制御回路154によって、正電源端子Pに供給される電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)から負電源端子Mに供給される0V(第一電位)に送信信号OUTの電位を遷移させる。
【0216】
<効果>
以上、第三実施形態では、送信ドライバ152Cは、電位GND(第一電位)から電位GND(第一電位)及び電位VDD(第二電位)の間の電位である第九電位までの電位で送信信号OUTを送信する第四モードと、電位GND(第一電位)から電位VDD(第二電位)及び第三電位の間の電位である第十電位までの電位で送信信号OUTを送信する第五モードと、をさらに有する。
【0217】
この構成によれば、送信ドライバ152Cは、送信信号OUTの電位を電位GND(第一電位)から第三電位までの間においてより細かく制御できる。
【0218】
また、第三実施形態では、送信ドライバ152Cは、第九電位、第十電位又は第三電位を供給する第三昇圧回路157をさらに備える。
【0219】
この構成によれば、送信ドライバ152Cは、第三昇圧回路157によって第九電位、第十電位及び第三電位を供給できるため、送信信号OUTの電位をより細かく制御できる。
【0220】
また、第三実施形態では、第三昇圧回路157は、電位GND(第一電位)及び電位VDD(第二電位)を分圧することによって第九電位を生成し、生成した第九電位を電位VDD(第二電位)の分昇圧することによって第十電位を生成する。
【0221】
この構成によれば、送信ドライバ152Cは、簡易な構成で送信信号OUTの電位を電位GND(第一電位)から第三電位までの間においてより細かく制御できる。
【0222】
また、第三実施形態では、第三昇圧回路157は、少なくとも1つ以上の容量素子Cext3及びCext4を有し、容量素子Cext3及びCext4は、送信信号OUTの電位の遷移に従って電荷を供給するか又は電荷が供給される。
【0223】
この構成によれば、送信ドライバ152Cは、第三昇圧回路157が容量素子Cext3及びCext4を有し、送信信号OUTの電位に遷移に従って容量素子Cext3及びCext4が電荷を供給したり、容量素子Cext3及びCext4に電荷が供給されたりするため、第一実施形態における送信ドライバ152Aと比較してさらに単独での消費電力を削減できる。
【0224】
―――変形例―――
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0225】
例えば、第一実施形態及び第三実施形態では、信号生成回路153A及び153Cは、ドライブ信号DRV及びブースト信号BST1のハイレベルを電位VDD(第四電位)及び電位VDD(第五電位)として、ハイレベルが同電位となるように両信号を生成したがこれに限られるものではない。すなわち、信号生成回路153Aは、ドライブ信号DRVのハイレベル(第四電位)と、ブースト信号BST1のハイレベル(第五電位)が異なるように両信号を生成しても良い。
【0226】
この構成によれば、電源系統が2系統以上ある場合においても、送信ドライバ152A及び152Cは、単独での消費電力の削減を実現できる。また、送信ドライバ152Aは、送信信号OUTの電位をブースト信号BST1のハイレベル(第五電位)を電源線W_VDDの電位VDD(第二電位)に加算した電位として、出力することができる。すなわち、送信ドライバ152Aは、ブースト信号BST1のハイレベル(第五電位)を調整することによって、送信信号OUTの電位が電位VDD(第二電位)を上回る電位となる場合の電位(第三電位)を所望の電位に調整することができる。また、送信ドライバ152Cは、送信信号OUTの電位をブースト信号BST1のハイレベルを電位VDD(第二電位)又は電位VDDを0.5倍した電位(第九電位)に加算した電位として、出力することができる。すなわち、送信ドライバ152Cは、ブースト信号BST1のハイレベルを調整することによって、送信信号OUTの電位を所望の電位に調整することができる。
【0227】
また、第二実施形態では、信号生成回路153Bは、ドライブ信号DRV並びにブースト信号BST1及びBST1のハイレベルが同電位となるように両信号を生成したがこれに限られるものではない。すなわち、信号生成回路153Bは、ドライブ信号DRVのハイレベルと、ブースト信号BST1のハイレベルと、ブースト信号BST2のハイレベルとが異なるように両信号を生成しても良い。
【0228】
この構成によれば、電源系統が3系統以上ある場合においても、送信ドライバ152Bは、単独での消費電力の削減を実現できる。
【0229】
また、第三実施形態では、信号生成回路153Cは、ドライブ信号DRV並びにブースト信号BST1及びBST1のハイレベルが同電位となるように両信号を生成したがこれに限られるものではない。すなわち、信号生成回路153Bは、ドライブ信号DRVのハイレベルと、ブースト信号BST1のハイレベルと、ブースト信号BST2のハイレベルとが異なるように両信号を生成しても良い。
【0230】
この構成によれば、電源系統が3系統以上ある場合においても、送信ドライバ152Bは、単独での消費電力の削減を実現できる。
【0231】
また、上記第一実施形態~第三実施形態では、入力信号INに従って信号生成回路153A~153Cのいずれかによって、ドライブ信号DRV並びにブースト信号BST1及びBST2を生成したが、これに限られるものではない。例えば、入力信号INの電位の遷移が予め判明している場合には、入力信号INの電位の遷移のパターンに応じてブースト信号BST1及びBST2のうち少なくとも1つを生成するブースト信号生成回路によって、ブースト信号BST1及びBST2のうち少なくとも1つを生成しても良い。この場合、ドライブ信号DRVには、入力信号INを直接用いても良い。
【0232】
この構成によれば、入力信号INが送信ドライバ152A~152Cに入力されてから送信信号OUTが送信されるまでの遅延時間を短縮することができる。
【0233】
また、第一実施形態~第三実施形態では、送信ドライバ152A~152Cは、短絡制御素子SW1及びSW2を制御するための制御信号CT1、CT2及びCT4のうちいずれかを生成する制御回路として、論理否定回路INV1~INV3を用いているがこれに限られるものではない。送信ドライバ152A~152Cは、例えば、論理否定回路INV1~INV3の代わりに入力信号INに従って制御信号CT1、CT2及びCT4のうちいずれかを生成する制御回路を用いても良いし、予め判明している入力信号INの電位の遷移パターンに従って制御信号CT1、CT2及びCT4のうちいずれかを生成する制御回路を用いても良い。
【0234】
また、第一実施形態~第三実施形態では、送信ドライバ152A~152Cは、スタイラス2やタッチセンサ搭載装置3に搭載されているが、これに限られるものではない。送信ドライバ152A~152Cは、入力信号INに従って電源系統の電位よりも高い電位で送信信号OUTを出力する機能が必要とされる電子機器であれば、いずれの電子機器に搭載されても良い。
【0235】
また、第二実施形態では、送信ドライバ152Bは、第一昇圧回路155及び第二昇圧回路156の2つの昇圧回路を備えるが、これに限られるものではない。送信ドライバ152Bは、3つ以上の昇圧回路と、各昇圧回路に対応付けられており、対応付けられている昇圧回路の出力端子及び電源線W_VDDの間の電流経路の開放及び短絡を制御する短絡制御素子とを備えていても良い。この場合における送信ドライバ152Bにおいて、第一昇圧回路155以外の昇圧回路は、電源端子に前段の昇圧回路から昇圧された電位が供給されるか、又は対応する短絡制御素子を介して電源線W_VDDから電位VDDが供給される。
【0236】
この構成によれば、送信ドライバ152Bは、設けられている昇圧回路の数が多いほど単独での消費電力を削減できる。
【0237】
また、第三実施形態では、第三昇圧回路157は、2つの容量素子Cext3及びCext4を有するが、これに限られるものではない。第三昇圧回路157は、3つ以上の直列接続された容量素子を有しても良い。第三昇圧回路157は、直列接続された容量素子によって、出力端子RV1に供給される電位と、緩衝回路BUF3の出力端子の電位とを分圧し、直列接続された容量素子同士の各接続箇所から分圧したそれぞれ異なる電位を供給する。また、信号生成回路153Cは、第三昇圧回路157から供給される各電位と短絡制御素子SW1を介して電源線W_VDDから供給される電位とが電位の値が昇順又は降順となって出力制御回路154の正電源端子Pに供給されるように、各短絡制御素子とブースト信号BST1の電位とを制御する。
【0238】
この構成によれば、送信ドライバ152Cは、第三昇圧回路157に設けられている容量素子の数が多いほど単独での消費電力を削減できる。
【符号の説明】
【0239】
2…スタイラス、3…タッチセンサ搭載装置、10…センサコントローラ、30…タッチセンサ、152A…送信ドライバ、152B…送信ドライバ、152C…送信ドライバ