IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イノトニックス ゲーエムベーハーの特許一覧 ▶ フィズィカルニ ウスタフ エーブイ シーアール,ブイ.ブイ.アイの特許一覧

特開2023-93362固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法
<>
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図1
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図2
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図3
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図4
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図5
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図6
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図7
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図8
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図9
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図10
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図11
  • 特開-固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093362
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】固体レーザシステム用レーザ増幅モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/06 20060101AFI20230627BHJP
   H01S 3/042 20060101ALI20230627BHJP
   H01S 3/08 20230101ALI20230627BHJP
【FI】
H01S3/06
H01S3/042
H01S3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199084
(22)【出願日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】21216774.6
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522485914
【氏名又は名称】イノトニックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Innotonix GmbH
【住所又は居所原語表記】Salztorgasse 5/17,Vienna 1010,Austria
(71)【出願人】
【識別番号】522485925
【氏名又は名称】フィズィカルニ ウスタフ エーブイ シーアール,ブイ.ブイ.アイ
【氏名又は名称原語表記】FYZIKALNI USTAV AV CR,V.V.I
【住所又は居所原語表記】Na Slovance 1999/2,18221 Praha 8,Czech Republic (CZ)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウグール セザール
(72)【発明者】
【氏名】マーティン スマーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シヴェルチェック
(72)【発明者】
【氏名】オンドレイ ノヴァク
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE02
5F172AE03
5F172AE06
5F172AE12
5F172AE26
5F172AL08
5F172NS04
5F172NS18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リッドステートディスクに結合されたヒートシンクを効果的に冷却できるレーザビームを増幅するモジュールに関する。
【解決手段】モノリシックレーザ増幅モジュール1は、ソリッドステートディスク2と、ヒートシンク3と、200nm~10μmの波長範囲λでソリッドステートディスク2内を伝搬する入射ビーム5を少なくとも部分的に反射するように構成された反射膜4とを含むモノリシック複合体6であって、反射膜4が堆積法によってヒートシンクの表面上に堆積され、ヒートシンク3が、特定の熱伝導率、ヤング率、ヒートシンクの厚さを含む、モノリシック複合体6と、を含み、ソリッドステートディスクおよびモノリシック複合体は、PV平坦度<210nmを有する表面61および21を有し、かつ表面粗さRMS<2nmを有し、ソリッドステートディスク2およびモノリシック複合体6の表面21および61は、直接かつ恒久的に結合されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体レーザシステム用のモノリシックレーザ増幅モジュール(1)であって、
ソリッドステートディスク(2)と、
ヒートシンク(3)と、200nm~10μmの波長範囲λで前記ソリッドステートディスク(2)内を伝搬する入射ビーム(5)を少なくとも部分的に反射するように構成された反射膜(4)とを含むモノリシック複合体(6)であって、前記反射膜(4)が堆積法によって前記ヒートシンクの表面上に堆積され、前記ヒートシンク(3)が、
少なくとも100W/m*Kの横方向の熱伝導率、
少なくとも100GPa、好ましくは少なくとも300GPaのヤング率、および
少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mmの前記ヒートシンクの厚さを含む、モノリシック複合体(6)と、を含み、
前記ソリッドステートディスクおよび前記モノリシック複合体は、PV平坦度<210nmを有する表面(61および21)を有し、かつ表面粗さRMS<2nmを有し、
前記ソリッドステートディスク(2)および前記モノリシック複合体(6)の表面(21および61)は、直接かつ恒久的に結合されている、固体レーザシステム用のモノリシックレーザ増幅モジュール(1)。
【請求項2】
直接結合された前記モノリシックレーザ増幅モジュール(1)は、レーザ動作によるソリッドステートディスク温度500℃未満に対して、0.1W/(mK)超、好ましくは1W/(mK)超の熱伝導率を有する、請求項1に記載のモジュール(1)。
【請求項3】
前記モノリシック複合体(6)は、前記反射膜(4)を形成する複数の交互の層を含み、層(41、42)が交互の屈折率を有する材料から作られ、上層が前記ソリッドステートディスク(2)に結合されている、請求項1または2記載のモジュール(1)。
【請求項4】
前記モノリシック複合体(6)は、前記反射膜(4)の上に犠牲層(7)を含み、前記犠牲層(7)の材料および厚さは、前記膜(4)の反射率を10%未満減少させる、請求項1~3のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項5】
前記モノリシック複合体(6)の前記犠牲層(7)は、フィルムスタックを形成する複数の層(71、72)を含み、少なくとも1つの犠牲層は、マイクロまたはナノパターン(711)によって構造化され、前記ソリッドステートディスク(2)の機械的および/または熱的特性を向上させる、請求項4に記載のモジュール(1)。
【請求項6】
前記モノリシック複合体(6)の前記犠牲層(7)は、フィルムスタックを形成する複数の層(71、72)を含み、このフィルムスタックは、前記モジュール(1)のレーザ誘起損傷閾値を高めるように構成される、請求項4または5に記載のモジュール(1)。
【請求項7】
前記ソリッドステートディスク(2)に直接かつ恒久的に結合された前記モノリシック複合体(6)の前記表面(61)は湾曲している、請求項1~6のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項8】
前記ソリッドステートディスク(2)の前記表面(21)および前記モノリシック複合体の前記表面(61)は、PV<70nmおよびRMS<0.8nmを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項9】
前記モジュール(1)の前記表面(61)は湾曲しており、湾曲した前記表面は、PV<210nmおよびRMS<2nmを有する直接および恒久的な結合として機能し、湾曲した前記表面は前記モノリシック複合体(6)の全表面の一部である、請求項1~8のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項10】
前記ソリッドステートディスク(2)は、ガーネット、バナデート(vanadate)、タングステート、サファイア、カルコゲナイド、またはセラミック材料、または半導体ゲイン材料(semiconductor gain material)からなる群から選択されるドープレーザ結晶または非ドープレーザ結晶を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項11】
前記ヒートシンク(3)は、減衰係数<1cm-1で、200nm~10μmの波長に対して透明である、請求項1~10のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項12】
前記ヒートシンク(3)は、ダイヤモンド、窒化ホウ素、シリコン、炭化ケイ素、セラミック、金属、金属-ダイヤモンド複合体、金属-窒化ホウ素複合体、またはシリコン-ダイヤモンド複合体から作られる、請求項1~11のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項13】
前記ソリッドステートディスク(2)は、前記表面(21)の反対側の表面上に反射防止膜(22)を含み、前記モノリシック複合体(6)に直接かつ恒久的に結合される、請求項1~12のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項14】
前記モジュール(1)の縁は、粗面化および/または面取りされている、請求項1~13のいずれか1項に記載のモジュール(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のレーザ増幅モジュール(1)を製造する方法であって、前記方法は、
ソリッドステートディスク(2)を提供するステップであって、その少なくとも1つの表面(21)が、二乗平均平方根RMS<2nmの表面粗さおよびPV<210nmの表面平坦度を有する、ソリッドステートディスク(2)を提供するステップと、
ヒートシンク(3)を提供するステップであって、その少なくとも1つの表面(31)が二乗平均平方根RMS<2nmおよび表面平坦度PV<210nmを有し、その厚さが少なくとも1mmである、ヒートシンク(3)を提供するステップと、
波長範囲λが200nm~10μmの入射ビーム(5)を少なくとも部分的に反射する反射膜(4)によって前記ヒートシンク(3)をコーティングし、それによってモノリシック複合体(6)を形成するステップと、
前記ソリッドステートディスク(2)および前記モノリシック複合体(6)の表面(21および41)を洗浄するステップと、
前記表面(21および41)を活性化するステップと、
前記モノリシック複合体および前記ヒートシンクの両方の、RMS<2nmおよびPV<210nmの表面平坦度を有する前記表面(21および41)を合わせて、プレスして、直接かつ恒久的な結合を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項16】
犠牲層(7)を提供するステップと、
前記犠牲層(7)によって前記反射膜(4)をさらにコーティングし、それによってモノリシック複合体(6)を形成するステップと、
前記モノリシック複合体(6)の前記犠牲層(7)を化学的機械的研磨またはイオンビームアシスト研磨で処理して、RMS<2nmの表面粗さおよびPV<210nmの表面平坦度を与え、欠陥またはボイドの数およびサイズを減少させるステップと、さらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体レーザ用のレーザ増幅モジュールに関する。より具体的には、本発明は、ソリッドステートディスク(solid-state disk)に結合されたヒートシンクを効果的に冷却することができるレーザビームを増幅するモジュールに関する。
【0002】
さらなる態様では、本発明は、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高平均出力のレーザシステムは、特にビーム増幅中にレーザコンポーネントで発生する熱に悩まされている。通常、固体レーザディスクは水冷ヒートシンクに接着またははんだ付けされ、熱は固体レーザディスクからヒートシンクに伝達される。この熱除去技術はあまり効率的ではなく、特に平均出力がkWクラスの領域に近づくと、ほとんどの高平均出力レーザシステムでビームポインティングが不十分になる。
【0004】
EP 2 996 211 A1は、透明なヒートシンクに直接結合されたソリッドステートディスクとしても知られる固体レーザ活性媒体を開示する。ヒートシンクの熱伝導率は、149W/m*K以上であり、ここで、固体レーザ活性媒体およびヒートシンクは、1nm未満の二乗平均平方根(RMS)表面粗さを示し、光学ゲイン材料は、直接結合によって透明ヒートシンクに取り付けられる。この文献はまた、固体レーザディスクとディスク上の反射層とを含むモノリシック半導体またはアモルファス構造を開示する。高反射率層は、スパッタリング、蒸発、化学気相堆積などの直接堆積法によって固体レーザディスクに取り付けられ得るか、またはそれが固体ディスクに直接結合され得る。図1は、上記の先行技術に開示された2つの実施形態を概略的に示す。第1の実施形態である図1Aは、反射層4に直接結合され(破線で表される)、透明ヒートシンク3に直接結合されたソリッドステートディスク2を備える固体レーザビーム用のモジュールを開示する。光ビーム5は、ソリッドステートディスク2に入射し、反射層4および透明ヒートシンク3を通って伝播する。増幅されたビーム51は、透明ヒートシンク3から放出される。第2の実施形態である図1Bは、ソリッドステートディスク2と、透明ヒートシンク3に直接結合(破線で表す)した、ソリッドステートディスク2上に堆積された反射層4(全線で表す)とを含む固体レーザビーム用モジュールを模式的に示す。光ビーム5は、ソリッドステートディスク2に入射し、反射層4および透明ヒートシンク3を通って伝播する。増幅されたビーム51は、透明ヒートシンク3から放出される。しかしながら、両方の実施形態は、ヒートシンク2の底部から来るウォータージェットによる熱除去の場合には不利である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術の実施形態に比べて製造が容易でありながら、効率的に熱を除去することができる固体レーザシステム用のレーザ増幅モジュールを提供することである。より効果的に熱を除去することは、必然的により高く、より安定したレーザ性能をもたらす。表面活性化により、温度500°C超で少なくとも0.5J/mの接着強度が保証される。次に、両方の表面を互いに位置合わせし、大気圧または真空で結合して、製造を容易にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様である固体レーザシステム用のモノリシックレーザ増幅モジュールは、上記の目的に対する解決策を提供するものであり、請求項1によって定義される。
【0007】
本発明によるレーザ増幅モジュールは、レーザビーム、特にレーザドリル加工、レーザショックピーニング、粒子加速などの産業用または科学用の高出力レーザビームを放射するための固体レーザシステムに実装され得る。
【0008】
固体レーザは、固体であるゲイン媒体を用いたレーザの一種である。本発明に従って、固体媒体は、先行技術において薄ディスクレーザとしても知られているソリッドステートディスクであり、これは、活性ゲイン媒体の薄層の反対側に実現されるヒートシンクおよびレーザ出力によって特徴付けられるダイオード励起固体レーザの一種である。レーザディスクの形状は任意であり、好ましくは円形または長方形である。ソリッドステートディスクの厚さは、レーザビーム直径よりもかなり小さい。本発明の文脈では、ゲイン媒体という用語は、光学ゲインを生成することができる材料として理解されるべきであり、ここで、光学ゲインは、材料における光増幅プロセスを説明することと理解される。ゲイン媒体は、ドープまたは非ドープされた結晶の両方であり得、例えば、YAG、サファイア、シリケート、ガーネット、バナデート(vanadate)、タングステート、またはホスフェートガラス、好ましくはレーザ活性イオンでドープされたもの、セラミック材料またはGaAs、InGaAsもしくはGaNなどの半導体材料であり得る。ドーパントの含有量は、固体レーザシステムの特定の用途に応じて変化され得、好ましくは、0.01~20モル(原子)%である。別の実施形態では、ソリッドステートディスクは、ホスフェートガラスまたは非晶質シリカなどの非晶質ゲイン材料由来であり得る。ソリッドステートディスクは、任意の厚さを有し得るが、有利には、本発明によるモジュール、resp.方法が、5μmという低い厚さを提供することが可能であることが提供される。
【0009】
モノリシック複合体は、ヒートシンクおよび反射膜を含む連続的な固体素子として理解されるものとする。反射膜は、物理蒸着、スパッタリング、蒸発、化学蒸着、さらには分子ビームエピタキシーなどの結晶成長技術などの先行技術の堆積法によってヒートシンクに堆積されるものとする。反射膜は、入射ビーム、特にポンプビームを少なくとも部分的に反射するように構成される。反射膜は、200nm~10μmの範囲からの波長を有するビームを反射する。反射膜は、硫化亜鉛、二酸化チタン、五酸化タンタル、二酸化ケイ素、酸化ハフニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウムなどの材料群から選択され得る。
【0010】
本発明によるヒートシンクは、少なくとも100W/m*Kの横方向の熱伝導率、少なくとも100GPaのヤング率、および少なくとも1mmのヒートシンクの厚さを有する。ヒートシンクは、ダイヤモンド、窒化ホウ素、シリコン、炭化ケイ素(SiC)、セラミック、金属、金属-ダイヤモンド複合体、金属-窒化ホウ素複合体、またはシリコン-ダイヤモンド複合体から作られ得る。より好ましい実施形態では、ヒートシンクのヤング率は少なくとも300GPaであり、および/またはその厚さは少なくとも2mmである。ヒートシンクの厚さが少なくとも2mmあると、コーティングプロセス中の曲がりを防止する。
【0011】
モノリシック複合体およびソリッドステートディスクの表面は、どちらもPV平坦度が210nm未満で、粗さRMSが2nm未満である。上記の表面は、直接かつ恒久的に一緒に結合される。直接結合プロセスは、接着剤または金属はんだなどの任意の中間接着層なしで、レーザディスクをヒートシンクに直接接合することと理解されるべきである。ヒートシンクは、室温で100W/m*K以上の熱伝導率を有するヒートスプレッダまたは最終キャリア基板として理解され得る。
【0012】
PV(ピークから谷まで)平坦度は、理想面に対する光学面の最高点および最低点の絶対差として定義される。RMSは、一般にナノメートルスケールでの表面うねりの二乗平均平方根として定義される、先行技術でよく知られているパラメータである。PV平坦度およびRMSは、レーザ干渉計または原子間力顕微鏡などの先行技術の方法で測定され得る。
【0013】
請求項1に定義された固体レーザシステム用のモノリシックレーザ増幅モジュールは、レーザ動作によるソリッドステートディスク温度<500℃に対して、0.1W/(mK)超、好ましくは1W/(mK)超の熱伝導度を提供する。
【0014】
好ましい実施形態では、モノリシック複合体は、反射膜を形成する少なくとも2つの層を含む。より好ましくは、モノリシック複合体は、複数の層を含む。層の特定の数は、産業用途に依存する。固体レーザの特定の出願の当業者は、所望のミラー仕様を満たすのに何層が十分であるかを知っている。SiO/Taベースの膜の場合、入射角0°で1030nmについて計算すると、反射率は全4層(2xSiO+Ta)で60%から、全8層で90%超、20層で99.9%まで変化し得る。反射膜を形成する層は、屈折率に関して交互に変化する。第1の層と第2の層は、異なる屈折率を有する。複数の層を含む実施形態では、第1の層、および第2の層は、第1の層がn=1.46(SiO)、第2の層がn=2.1(Ta)、および第3の層が再びn=1.46を有するように、交互の屈折率を有する。最終的な上層は、ソリッドステートディスクに直接かつ恒久的に結合される。好ましい実施形態では、最低屈折率nlow=1.35および最高屈折率nhigh=5.6を使用して、高反射率膜を製造し得る。
【0015】
モノリシック複合体は、好ましくは、犠牲層を含む。この犠牲層の機能的役割は、(a)反射膜の保護、(b)レーザ誘起損傷閾値の改善、(c)必要な表面仕様に達するための後処理が可能なバッファ層の提供、である。犠牲層は、反射膜の反射率を10%未満に低下させる材料で作られる。このような保護犠牲層は、SiO、Si、HfO、任意の金属の酸化物、特にAl、GaAs、AlGaAs、NiPまたはフォトレジスト材料であり得、これは、必要な表面形状、特に210nm未満のPV平坦度およびRMS表面粗さRMS<2nm、好ましくはPV<70nmおよびRMS<0.8nmに達するように研磨され得る。90%から99.9%までの反射率が特に有利である。厚さ407nmを有する、例えばSiOから作られた少なくとも1つの犠牲層は、下地多層反射膜のLIDTを約7倍増加させ得る。
【0016】
さらに好ましくは、モノリシック複合体は、フィルムスタックを形成する複数の犠牲層を含む。複数の犠牲層は、モノリシックレーザ増幅モジュールのレーザ誘起損傷閾値を増加させるように構成され得る。犠牲層のフィルムスタックは、AlGaAsまたはGaAsを含む膜との組み合わせにおいて特に有利である。これらの材料は、10ns未満の長パルスを有するパルスレーザに対して低い損傷閾値を示す。より好ましくは、フィルムスタックにおいて、少なくとも1つの層は、パターンによってマイクロまたはナノ構造化される。このパターンは、ソリッドステートディスクの機械的特性および/または熱的特性を向上させる。パターンは、反射膜またはさらなる犠牲層または犠牲層およびヒートシンクおよび/またはそれらの任意の組み合わせの表面であり得る、反対側の表面のパターンと一緒に適合する任意の種類のパターンであり得る。パターンは、溝状のものでもよい。
【0017】
別の実施形態では、界面で共蒸発するナノラミネートを製造することにより、多層反射膜のLIDTを増加させ得る。
【0018】
モノリシック複合体は、好ましくは研磨される。モノリシック複合体およびソリッドステートディスクを互いに直接かつ恒久的に結合したそれらの研磨面は、平坦度PV<210nmである。研磨方法は、上記パラメータの平坦度PVおよびRMSが達成されれば、機械的、磁気粘性、化学的、またはイオンアシストなど、先行技術に応じて選択され得る。
【0019】
モノリシック複合体の表面は、好ましくは湾曲している。さらに好ましくは、モノリシック複合体の表面は曲面であり、PV<210nmの値およびRMS<2nmを有する表面は、全表面の80%より大きい面積で設けられる。
【0020】
ソリッドステートディスクおよびモノリシック複合体の表面は、PV<70nm、RMS<0.8nmを有する。これらの値は、より高い結合強度を提供する。
【0021】
ヒートシンクは、好ましくは、200nm~10μmの間の波長に対して透明であり、減衰係数<1cm-1である。透明なヒートシンクは、レーザビームの出力結合が透明なヒートシンクを介して提供され得る、実施形態を提供し得る。別の実施形態では、ヒートシンクは、レーザビームの反射出力結合が提供され得るように、レーザ波長(複数可)に対して不透明であり得る。
【0022】
ヒートシンクは、好ましくは少なくとも100W/(m*K)の熱伝導率を有する材料、好ましくはダイヤモンド、窒化ホウ素、シリコン、炭化ケイ素、セラミック、金属、金属-ダイヤモンド複合体、金属-窒化ホウ素複合体、またはシリコン-ダイヤモンド複合体を含む。
【0023】
ソリッドステートディスクは、表面の反対側の表面上に反射防止膜を好ましく含み、モノリシック複合体に直接かつ恒久的に結合される。
【0024】
モノリシックレーザ増幅モジュールのサイドエッジは、好ましくは、粗面化および/または面取りされる。エッジを粗面化および/または面取することで、レーザ活性媒体からの自然放出増幅(ASE)を最小限に抑える。
【0025】
本発明の第2の態様は、請求項15に定義されるレーザ増幅モジュールの製造方法である。
【0026】
方法は、ソリッドステートディスクを提供するステップを含み、その少なくとも1つの表面は、2nm未満の二乗平均平方根RMSおよびPV<210nmの表面平坦度を有し、厚さが少なくとも5μmである。
【0027】
次のステップは、ヒートシンクを提供することであり、その少なくとも1つの表面は、2nm未満の二乗平均平方根RMSおよびPV<210nmの表面平坦度を有し、その厚さは少なくとも1mmである。
【0028】
その後、波長範囲λが200nm~10μmの入射ビームを少なくとも部分的に反射する反射膜によってヒートシンクがコーティングされ、それによってモノリシック複合体を形成する。
【0029】
最終ステップでは、モノリシック複合体とヒートシンクの両方の2nm未満のRMSとPV<210nmの表面平坦度を有する表面を一緒に整列させ、直接結合することが提供される。
【0030】
反射膜によってヒートシンクをコーティングするステップは、90%を超える反射率の干渉膜を形成するために、交互に屈折率を有する交互材料のフィルムスタックを作製する複数のコーティングステップを含むことが好ましい。複数のコーティングステップは、蒸発、イオンアシスト、イオンビームスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、または分子ビームエピタキシーなどの従来の手段によって提供され得る。
【0031】
コーティングのステップは、ヒートシンクに望ましくない湾曲を導入し、RMS>1nmの高い表面粗さを有し得る。導入された湾曲を補償するために、当業者は、a)コーティングによって引き起こされる湾曲が非常に起こりにくくなるように、好ましくは少なくとも300GPaのヤング率および少なくとも2mmの厚さを有するヒートシンクを提供するステップ、またはb)高反射率膜は、好ましくは、反射膜の上に犠牲層をさらに備えられ得るステップをさらに提供し得る。化学的機械的研磨またはイオンアシスト研磨プロセスは、ボイド密度を低減すると同時に、表面品質(PV平坦度、RMS表面粗さ)を向上させるのに役立ち得る。一般に、ボイドとは、例えば、材料のガス放出によって生じる空の空間(穴)であると理解される。欠陥は結晶構造のエラーと見なされる。
【0032】
製造方法は、好ましくは、反射膜の上に犠牲層を提供し、それをPV<210nmおよびRMS<1nmまで研磨するステップを含む。保護犠牲層の研磨は、イオンビーム補助研磨技術によって行われ得る。この方法では、通常、アルゴンイオンがイオン銃で生成され、保護犠牲層に向かって加速される。保護犠牲層の衝撃は、表面原子のスパッタリングにつながる。表面粗さの減少を観察し得る。特定の基板材料、入射角、およびイオンビーム電圧は、表面粗さの最終品質に大きな影響を与える。この処理方法を使用すると、表面形状を正確に変更することもでき、特に、基板を非常に高度な平坦度(溶融シリカ基板のPV<10nm)にエッチングする。処理中の表面ボイドを回避するために、表面は非常にきれいに保たれ、それに応じてソフトビームパラメータ(低イオンエネルギー)が選択される。
【0033】
反射膜の上に犠牲層を提供し、それを研磨する別の実施形態では、化学的機械的研磨である。化学的機械的研磨プロセスは、様々なウェーハ材料に適用される半導体産業における一般的な手順である。これは、原子スケールの材料除去のための化学エッチングと全体的な平坦性達成のための機械的摩耗の組み合わせである。その結果、表面は、材料によっては、PV<70nmの平坦度と表面粗さRMS<0.5nmを達成し得る。
【0034】
直接結合するステップは、モノリシック複合体を提供すると同時に、ソリッドステートディスクを過度に洗浄し、表面活性化することを含む。表面活性化は、化学的、プラズマまたはイオンビームによる活性化であり得る。表面は、その後、一緒にプレスされる。加える圧力は基板の厚さによって異なり得るが、通常2kPaから10MPaの範囲である。曲面基板では、5μm未満の精度でアライメントすることで高い結合強度が得られる。
【0035】
本発明による方法は、0.1J/m、有利には0.5J/mの結合強度を提供し得る。これにより、ソリッドステートディスクの第2の表面の機械的研磨および/またはそれの所望の厚さ(典型的には5μm超、理想的には100μm超)への薄化が可能になる。薄化および/または研磨の後、ソリッドステートディスクの第2の表面は、高い平坦度(理想的には<70nm)および低いRMS表面粗さ(理想的にはRMS<0.8nm)を示す。
【0036】
方法は、好ましくは、ポンプ源から光ビームを受け取るように構成された表面をコーティングするステップを含み得る。この表面は、次いで効率的なレーザ動作のために反射防止膜でコーティングされ得る。コーティングは、蒸発、イオンアシスト、イオンビームスパッタリングまたはマグネトロンスパッタリングなどの従来の手段によって行われ得る。あるいは、人は半導体ベースの反射防止膜(AlGaAs/GaAs)も使用し得る。
【0037】
さらなる好ましい実施形態では、方法は、結合されたディスクの側面粗面化および/または面取りをさらに含む。側面粗面化および/または面取りは、エッジが粗面化されたときにレーザゲイン媒体からの増幅自然放出(ASE)を最小化する。表面粗さが高くなると、小さな反射サイトが形成され、反射光に大きな回折損失が発生する。ASEを抑制するもう1つの方法は、薄膜ディスクのエッジをベベル加工(bevel)することである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】AおよびBは従来技術による2つの実施形態を表す。
図2】本発明による第1の実施形態を表す。
図3】反射膜を形成する2つの層を含む好ましい実施形態を表す。
図4】反射膜を形成する複数の交互の層を含む好ましい実施形態を表す。
図5】膜の上に犠牲層を含む好ましい実施形態を表す。
図6】ナノ構造化された犠牲層を含む好ましい実施形態を表す。
図7】反射防止膜を含む好ましい実施形態を表す。
図8図8Aおよび図8Bは本発明によるモジュールを示す好ましい実施形態を表す。
図9】固体レーザシステムにおける本発明によるレーザ増幅モジュールの実施態様を表す。
図10図10Aおよび図10Bは反射膜の上の犠牲層の厚さを変化させた本発明による実験例を表す。
図11図11Aおよび図11Bは比較検討-本発明による実施例を示す。
図12】比較検討-従来技術による実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
従来技術と比較して、高性能リフレクタ(>98%)を形成する反射膜は、堆積法、特にスパッタリングによってソリッドステートディスク上に堆積される。これにより、コーティング内部に固有の膜応力が発生し、ソリッドステートディスクが過度に湾曲する。ソリッドステートディスクが薄くて弾力性があるほど、より曲がる。しかし、本発明に従って、少なくとも100GPaのヤング率と1mm超の厚さを有するヒートシンクは、曲げがそれほど深くならないようにヒートシンクの機械的剛性を保証し、ソリッドステートディスクとの直接結合のためにPV平坦度を依然として使用または補正することが可能である。
【0040】
図2は、本発明による第1の実施形態を概略的に示す。固体レーザシステム用のモノリシックレーザ増幅モジュール1が示される。モジュール1は、光学ゲイン媒体、例えば、YAG、サファイア、シリケート、ガーネット、バナデート、タングステート、またはホスフェートガラス、好ましくはレーザ活性イオンでドープされたもの、セラミック材料またはGaAs、InGaAsもしくはGaNなどの半導体材料といった例えばドープまたは非ドープ結晶から作られた薄いソリッドステートディスク2を含む。一般に、レーザ設計の当業者は、特定の産業用途にどの種類のゲイン媒体が適しているかを知っている。ソリッドステートディスク2は2つの面を有する。第1の表面は、ソリッドステートディスクレーザのポンプ源からのポンプビームなどの入射ビーム5のための平面として機能する。ポンプビームは、別のレーザビームであってもよい。反対側の表面21は、PV平坦度<210およびRMS<2nmが達成されるように処理される。これらのパラメータで得られる処理は、例えば、アニーリング、研磨、または機械的および/もしくは化学的処理のいずれかである。表面21は、モノリシック複合体6との直接的かつ恒久的な結合を提供するために、上述のパラメータで構成される。モノリシック複合体6は、ヒートシンク3および反射膜4を含む。モノリシック複合体6は、PV平坦度<210nmおよびRMS<2nmとなるように処理された表面61を有する。直接的かつ恒久的な結合は、接着剤または金属はんだなどの任意の中間接着層なしで、ソリッドステートディスク2をモノリシック複合体6に直接接合することを提供する。この結合は、0.1J/mから、好ましくは>0.5J/mの強度を提供する。ヒートシンク3は、少なくとも100W/m*Kの横方向の熱伝導率、少なくとも100GPa、好ましくは少なくとも300GPaのヤング率、および少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mmのヒートシンクの厚さを有する。ヒートシンクは、ダイヤモンド、窒化ホウ素、シリコン、炭化ケイ素(SiC)、セラミック、金属、金属-ダイヤモンド複合体、金属-窒化ホウ素複合体、またはシリコン-ダイヤモンド複合体から作られ得る。少なくとも2mmのヒートシンクの厚さは、コーティングプロセス中の曲がりを防止し、これは、図11A図11B、および図12に従って説明した実験によって証明され得る。モノリシック複合体6は、ヒートシンク3の上に堆積された反射膜4をさらに含む。反射膜4は、化学蒸着、スパッタリング、蒸発、化学蒸着、さらには分子ビームエピタキシーなどの結晶成長技術などの先行技術の堆積法によってヒートシンク3に堆積され得る。反射膜は、ソリッドステートディスク2を通って伝播する入射ビーム5、特にポンプビームを少なくとも部分的に反射するように構成される。反射膜4は、200nm~10μmの範囲からの波長を有するビームを反射する。反射膜は、硫化亜鉛、二酸化チタン、五酸化タンタル、二酸化ケイ素、酸化ハフニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウムなどの群から選択され得る。このようにして、反射膜4は、ヒートシンク3とソリッドステートディスク2との間に挟持される。
【0041】
図3はさらに好ましい実施形態を示し、反射膜4は少なくとも2つの層41および42を含む。第1の層41は、約3.97の屈折率を有するSiから作られ得、第2の層42は、約1.46の屈折率を有するSiOから作られ得る。
【0042】
図4はさらに別の好ましい実施形態を示し、反射膜4は、交互の屈折率を有する材料による複数の層を含む。図4に示される実施形態では、4つの反射層が選択される。第1の層41は屈折率n=2.1を有し得、第2の層は屈折率n=1.5を有し得、第3の層は屈折率n=2.1を有し得、上層42は屈折率n=1.5を有し得る。別の好ましい実施形態では、交互の層のセットは、EP3076208から採用され得る。
【0043】
図5はさらに別の好ましい実施形態を示し、モノリシック複合体6は、反射膜の上に設けられ、ソリッドステートディスク2との直接的かつ恒久的な結合が設定され得るように、PV平坦度<210nmおよびRMS<2nmの表面を有する犠牲層7をさらに含む。犠牲層7は、反射膜4を保護する役割を果たす。犠牲層7は、好ましくは、反射膜の反射率を10%未満に低下させる材料で作られ得る。犠牲層7は、SiO、Si、HfO、任意の金属の酸化物、特にAl、GaAs、AlGaAs、NiPまたはフォトレジスト材料から作られ得、これは、必要な表面形状、特に210nm未満のPV平坦度およびRMS表面粗さRMS<2nm、好ましくはPV<70nmおよびRMS<0.8nmに達するように研磨され得る。90%から99.9%までの反射率が特に有利である。Schlitz et al., Applied Optics 56 (4), C136-C139による実験結果に示されるように、厚さ407nmを有する、例えばSiOから作られた少なくとも1つの犠牲層は、下地多層反射膜のLIDTを約7倍増加させ得る。
【0044】
図6は、フィルムスタックを形成する反射膜4の保護のための複数の犠牲層71、72を含む。複数の犠牲層71、72は、モノリシックレーザ増幅モジュールのレーザ誘起損傷閾値を増加させるように構成され得る。より好ましくは、フィルムスタックにおいて、少なくとも1つの層は、パターンによってマイクロまたはナノ構造化される。このパターンは、ソリッドステートディスクの機械的特性および/または熱的特性を向上させる。パターンは、表面を増加させるために、互いに嵌合する溝とし得る。表面積の増加は、より高い熱伝達を提供することができ、これは、レーザの安定性を提供する。形状、サイズ、周期性に関する特定のパターンは、リソグラフィーのような先行技術の方法によって達成され得る。入れ子状(nesting)の溝は、例えば、矩形形状を有し得る。ナノまたはマイクロパターンは、犠牲層のそれぞれの表面、直接結合に役立たない反射膜および犠牲層の表面、または膜とヒートシンクとの間の界面のいずれかに設けられ得る。
【0045】
図示されていない実施形態では、ソリッドステートディスク2に直接かつ恒久的に結合されたモノリシック複合体の表面61は、PV<70nmの平坦度を有する。PVのそのような平坦度は、機械的、化学的またはイオンアシスト研磨などの先行技術の方法による研磨によって達成され得る。
【0046】
さらに別の実施形態では、ソリッドステートディスク2に直接かつ恒久的に結合されたモノリシック複合体6の表面61は湾曲している。曲率半径は>0.05m、より好ましくは>0.5mであり得る。
【0047】
さらに別の実施形態では、ソリッドステートディスク2の表面21およびモノリシック複合体6の表面61は、PV<70nmおよびRMS<0.8nmを有する。
【0048】
さらに別の実施形態では、モノリシック複合体6の表面61は湾曲しており、平面度PV<210nmおよびRMS<2nmが、モノリシック複合体6およびソリッドディスク2の湾曲面上に備えられ、湾曲面は、モノリシック複合体の全表面の80%超など、モノリシック複合体の全表面の一部である。したがって、直接結合全体の界面を提供する必要はない。
【0049】
さらに別の実施形態では、ヒートシンク(3)は、減衰係数>1cm-1の200nm~10μmの間の波長に対して透明であり、および/またはレーザ波長(複数可)に対して不透明である。
【0050】
図7は、反射防止膜22が表面上に堆積されて、透過率を増加させ、望ましくない反射光の量を減少させる実施形態を示す。
【0051】
図示されていない別の実施形態では、モジュール1のエッジは、粗面化および/または面取りされている。この実施形態は、レーザゲイン媒体からの増幅された自然放出(ASE)を最小化する最小化を提供する。
【0052】
図8Aおよび8Bは、本発明による特徴の組み合わせの2つの例示的な実施形態を示す。
【0053】
図9は、ディスクレーザの一部としての本発明によるモジュールの模範的な実施例を示す。ポンプビーム5は、レンズ81を通して本発明によるモジュール1に向けられる。ビームがモジュール1に戻るように反射するミラー82にビームが反射される場合、ポンプビーム5の一部はモジュール1内で吸収されて増幅される。増幅されたレーザビームは、モジュール1から、レーザビームを少なくとも部分的に反射してモジュール1に戻し、レーザビーム51を部分的に透過することができる部分反射要素83に放射される。
【0054】
図10Aは、モジュール1で実施されたシミュレーション結果を表す。シミュレーションは、反射膜4の上に犠牲層7を有する反射膜4の例示的な反射率を示す。ここで、反射膜は、対応する屈折率が1.46と2.1のSiOとTaの交互層からなる。ここで、反射膜は1000nmの中心波長用に設計されており、SiO層の厚さは171.2nm、Ta層の厚さは119nmになる。99.9%の高反射率は、20の交互層によって実現される。反射膜の上に、SiO犠牲層がシミュレートされる。図10Aは、犠牲層の異なる厚さにおける膜の異なる反射率挙動を示す。
【0055】
図10Bは、犠牲層の厚さに対する膜の反射率の依存性を表す。膜は、図10Aと同様に構成される。犠牲層の厚さは、膜の最終的な反射率性能にわずかな影響しか与えないことが示される。この事実に基づいて、犠牲層を使用して表面品質を改善し、PV<210nmおよびRMS表面粗さ<2nmを確立し得る。
【0056】
図11Aは、コーティングされたヒートシンクの実験結果を示す。この実施例では、ヒートシンクのヤング率は300GPa超であり、厚さは2mmであり、直径は12mmである。ヒートシンクは、最初にPV<70nmの平坦度とRMS<0.4nmの表面粗さにまで研磨される。平坦度の測定は、632.8nmで動作するレーザ干渉計で行われる。表面粗さの測定は、原子間力顕微鏡を用い、非接触モードで測定される。上部に340nmのSiO犠牲層を備えたSiO/Taからなる全厚さ約4μmの高反射率膜がヒートシンクに適用され、1030nmで99.9%超の反射率を提供する。コーティングは、球面曲率を導入する。測定されたPVの平坦度は約130nmであり、表面粗さはRMS=0.5nm程度と測定された。図12に示すように、コーティングにより誘起される曲げを先行技術と比較すると、本明細書で説明される発明は、曲げをほぼ100分の1に低減している。130nmのPVの平坦度がまだ高すぎる場合、犠牲層を共堆積させ、その後、必要な表面品質に研磨し得る。
【0057】
図11Bは、犠牲層を研磨したコーティングされたヒートシンクの実験証明を示す。この実施例では、ヒートシンクのヤング率は300GPa超であり、厚さは2mmであり、直径は12mmである。ヒートシンクは、最初にPV<70nmの平坦度とRMS<0.4nmの表面粗さにまで研磨される。平坦度の測定は、632.8nmで動作するレーザ干渉計で行われた。表面粗さの測定は、原子間力顕微鏡を用い、非接触モードで測定された。上部に340nmのSiO犠牲層を備えたSiO/Taからなる全厚さ約4μmの高反射率膜がヒートシンクに適用され、1030nmで99.9%超の反射率を提供する。その後、イオンビームアシスト研磨法により、上層の犠牲層が研磨される。この方法により、PV平坦度<40nm、RMS表面粗さ<0.4nmの表面が達成され得る。図12に示すように、イオンアシスト後研磨法を先行技術と比較すると、本明細書で説明される発明は、300倍超の優れた表面平坦度を提供する。
【0058】
一方、図12は、先行技術、特にアプローチEP 2 996 211による実験結果を示しており、ここでは、厚さ200μmのソリッドステートディスクがコーティングされている。曲率を最小にするために、ここではアンチストレスコーティングが適用された。それにもかかわらず、ソリッドステートディスクはPV=10μmまで過剰に湾曲していることがわかり得る。この高い湾曲は、分子力の打ち消し合いによる結合強度の低下を招く。ソリッドステートディスクの直径全体にわたってトポグラフィーを測定する(青線)。
参照記号
1 モノリシックレーザ増幅モジュール
2 ソリッドステートディスク
21 ソリッドステートディスクの表面
22 反射防止膜
3 ヒートシンク
4 反射膜
41 第1の層
42 第2の層
5 入射ビーム
6 モノリシック複合体
61 モノリシック複合体の表面
7 犠牲層
71 第1の犠牲副層
711 犠牲層上のナノまたはマイクロパターン
72 第2の犠牲副層
81 レンズ
82 ミラー
83 部分反射要素
9 冷却

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】