(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093393
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】不可逆的エレクトロポレーション(IRE)処置のために身体上のリターン電極位置を最適化するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20230627BHJP
A61N 1/32 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61B18/12
A61N1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022204202
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】17/559,433
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ24
4C160KK47
(57)【要約】
【課題】不可逆的エレクトロポレーション(IRE)処置のための体表面電極の配置を決定するためのシステムを提供すること。
【解決手段】本開示の主題は、戻り電極の位置およびその近傍における身体の動きを検出するための加速度計を含む、身体表面電極などの戻り電極を提供するものである。身体運動は、パルス送達電極によってリターン電極に送達される、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルス発生器からのパルスから生じる。リターン電極の身体上の各位置における身体運動に関連付けられたデータは、IRE処置のためのリターン電極のための適切な、場合によっては最適な位置を決定するために使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆的エレクトロポレーション(IRE)処置のための体表面電極の配置を決定するためのシステムであって、
体表面電極であって、
IRE発生器と通信するパルス送達電極と電気的に結合するように構成された少なくとも1つの電極であって、前記少なくとも1つの電極は患者の皮膚と通信し、前記少なくとも1つの電極は前記IRE発生器と通信して電流を前記IRE発生器に戻すためのものである、少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの運動測定デバイスと、を備える、体表面電極と、
前記少なくとも1つの運動測定デバイスと通信するプロセッサであって、
前記体表面電極の身体上の位置に少なくとも近接する前記体表面電極の前記運動測定デバイスによって測定された身体運動に対応するデータを取得するようにプログラムされ、前記身体運動は、前記パルス送達電極によって前記身体に送達され、前記体表面電極の前記少なくとも1つの電極によって受信される、前記IRE発生器からの少なくとも1つのパルスに起因する筋肉運動を含む、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記体表面電極が前記身体上に配置された複数の位置から、前記体表面電極の前記運動測定デバイスによって測定される身体運動に対応するデータを取得するようにさらにプログラムされ、前記複数の位置の各々は、前記IRE発生器からの少なくとも1つのパルスを受けている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記体表面電極が前記身体上に配置された前記複数の位置から、前記体表面電極の前記運動測定デバイスによって測定された前記身体運動に対応する前記データを分析して、少なくとも1つの後続のIRE処置のための体表面電極のための0箇所以上の適切な位置を決定するようにさらにプログラムされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記0箇所以上の適切な位置は、少なくとも1つの後続のIRE処置のための少なくとも1つの体表面電極の最適な位置である少なくとも1つの位置を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの運動測定デバイスは、少なくとも1つの加速度計を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記筋肉運動は、前記パルス送達電極によって前記身体に送達され、前記体表面電極の前記少なくとも1つの電極によって受信される、前記IRE発生器からの前記少なくとも1つのパルスに起因する筋収縮および/または筋痙攣のうちの1つまたは複数を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
不可逆的エレクトロポレーション(IRE)処置のための体表面電極の身体上の適切な位置を決定するための方法であって、
患者の皮膚と通信するための体表面電極を提供することであって、前記体表面電極は、
IRE発生器と通信するパルス送達電極と電気的に結合するように構成された少なくとも1つの電極であって、前記少なくとも1つの電極は患者の皮膚と通信し、前記少なくとも1つの電極は前記IRE発生器と通信して電流を前記IRE発生器に戻すためのものである、少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの運動測定デバイスと、を備える、体表面電極を提供することと、
患者の前記身体上の第1の位置に、前記患者の前記皮膚と通信するように前記体表面電極を配置することであって、前記体表面電極は、パルス送達電極を通して前記IRE発生器からパルスを受信するように前記パルス送達電極と結合される、配置することと、
前記第1の位置にある前記体表面電極が、前記パルス送達電極を介して、前記IRE発生器によって発生された少なくとも1つのパルスを受信することと、
前記少なくとも1つの運動測定デバイスから、前記身体上の前記患者の前記皮膚と通信する前記体表面電極の前記第1の位置に少なくとも近接する前記身体の運動に関する第1のデータを取得することであって、前記身体の前記運動は、前記パルス送達電極から前記第1の位置における前記体表面電極への前記少なくとも1つのパルスによって引き起こされる、取得することと、
前記第1の位置とは異なる位置である前記患者の前記身体上の第2の位置に、患者の前記皮膚と通信するように前記体表面電極を配置することであって、前記体表面電極は、パルス送達電極を通して前記IRE発生器からパルスを受信するように前記パルス送達電極と結合される、配置することと、
前記第2の位置にある前記体表面電極が、前記パルス送達電極を介して、前記IRE発生器によって発生された少なくとも1つのパルスを受信することと、
前記少なくとも1つの運動測定デバイスから、前記身体上の前記患者の前記皮膚と通信する前記体表面電極の前記第2の位置に少なくとも近接する前記身体の運動に関する第2のデータを取得することであって、前記身体の前記運動は、前記パルス送達電極から前記第2の位置における前記体表面電極への前記少なくとも1つのパルスによって引き起こされる、取得することと、
前記IRE処置のための体表面電極の前記身体上の少なくとも1つの位置を決定するために、前記第1のデータおよび前記第2のデータを分析することと、を含む、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの位置は、最適な位置を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパルスは、筋収縮および/または筋痙攣のうちの1つ以上を誘発することによって前記身体の運動を引き起こすための複数のパルスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
体表面電極であって、
IRE発生器と通信するパルス送達電極と電気的に結合するように構成された少なくとも1つの電極であって、前記少なくとも1つの電極は患者の皮膚と通信し、前記少なくとも1つの電極は前記IRE発生器と通信して電流を前記IRE発生器に戻すためのものである、少なくとも1つの電極と、
前記身体上のある位置における前記体表面電極の運動を測定するように構成された少なくとも1つの運動測定デバイスと、を備える、体表面電極。
【請求項11】
前記少なくとも1つの運動測定デバイスは、前記身体上のある位置における前記体表面電極の前記測定された運動と関連付けられるデータをプロセッサに通信するように構成されている、請求項10に記載の体表面電極。
【請求項12】
前記少なくとも1つの運動測定デバイスは、少なくとも1つの加速度計を含む、請求項11に記載の体表面電極。
【請求項13】
前記少なくとも1つの加速度計は、複数の加速度計を含む、請求項12に記載の体表面電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)システムに関し、具体的には、それと共に使用される電極のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
不可逆的エレクトロポレーション(IRE)は、強い電界の短パルスを印加して細胞膜内に恒久的、それゆえ致死的なナノ細孔を形成し、それにより細胞恒常性(内部の物理的条件および化学的条件)を崩壊させる軟組織アブレーション技術である。IRE後の細胞死は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)に起因し、他の熱または放射線ベースのアブレーション技術におけるような壊死(細胞自体の酵素の作用を通じて細胞の破壊をもたらす細胞傷害)に起因しない。
【0003】
単極の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)システムは、典型的には、例えば、約30アンペア以上の高電流で動作する。いくつかのIRE処置では、単極のIREパルスが使用され、この単極のIREパルスは、リターン電極(例えば、被験体の身体の外側のバックパッチに結合された電極)を介してIRE発生器に戻される。これらのパルスは、バランスされるように設計され、したがって、被験体によって吸収される0 DCの電流を有するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示は、図面と共になされる各例の以下の詳細な説明から、より完全に理解されよう。これらの図面において、対応する参照符号または同様の参照符号は、対応する構成要素または同様の構成要素を示す。
【
図1】患者に使用されている例示的な不可逆的エレクトロポレーション(IRE)システムの図である。
【
図2】本開示の一例による、開示される主題と共に使用される例示的なシステムを概略的に示す略図である。
【
図3】開示される主題の例による、パッチの形態をなす体表面電極の概略図である。
【
図4】開示される主題による、「完全」IRE処置のために患者の身体上の体表面電極の最適位置を決定するための加速度計データに基づく例示的なプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明者らは、完全IREアブレーションを受ける被験体のバックパッチの位置が、そのようなアブレーション中の筋痙攣に影響を及ぼすことを観察した。身体上の特定の位置は、被験体の筋痙攣または筋運動がほとんどないか全くないような、バックパッチのリターン電極へのより良好な戻り経路を提供すると考えられる。したがって、本発明者らは、本明細書に記載され例示される本発明の以下の主題を考案した。具体的に言えば、本発明者らは、リターン電極、例えばパッチである体表面電極、および、「完全」IRE処置としても知られる不可逆的エレクトロポレーション(IRE)処置のために患者にパッチを配置するための1つまたは複数の適切な位置を決定するためのその使用方法を考案した。本開示の主題は、リターン電極として機能する体表面電極を提供し、体表面電極は、体表面電極が付着されるかあるいは別様に位置付けられる身体上の位置に結合された単極IREの高電流によって引き起こされる筋収縮または痙攣を検出するものである。
【0006】
本開示の主題は、リターン電極の位置およびその近傍における身体の運動を検出するための加速度計を含む、体表面電極などのリターン電極を提供するものである。身体運動は、パルス送達電極によってリターン電極に送達される、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルス発生器からのパルスにより生じる。リターン電極の身体上の各位置における身体運動に関連付けられたデータは、IRE処置のためのリターン電極のための適切な、場合によっては最適な位置を決定するために使用される。
【0007】
本開示の主題は、「完全」IRE処置の前に施される一連の「試験」パルスによって引き起こされる筋収縮または痙攣からの運動を測定するように構成された加速度計を含む、パッチなどの体表面電極を提供する。それぞれの体表面電極に対する各試験位置からの運動データは、プロセッサ、コンピュータなどによって分析される。この分析では、IREパルスによって誘発される筋収縮または痙攣から、最小または最低量の運動を伴う位置が決定される。これらの位置は、「完全」IRE処置が最も効果的となるように、「完全」IRE処置中に体表面電極を配置するのに最も適切または最適な位置である。
【0008】
概論
不可逆的エレクトロポレーション(IRE)は、主に非熱プロセスであり、組織温度を数ミリ秒間、高くても数度上昇させる。したがって、IREは、典型的には組織温度を20~70℃上昇させ、加熱により細胞を破壊するRF(高周波)アブレーションとは異なる。
【0009】
いくつかのIREスキームは、パルスが、例えば、2つの単極電極の間に印加されるという意味で単極性であり、一方の電極は、典型的には心臓または腎臓などの臓器内の体内のカテーテルであり、他方の電極は、カテーテルに最も近い、典型的には背中における患者の外側皮膚表面に付着されたリターン電極である。電極(複数可)は、典型的には、例えば患者の皮膚に粘着的に付着される、例えばバックパッチの形態をなす体表面電極上にある。
【0010】
IREパルスが組織内に必要なナノ細孔を生成するためには、パルスの電界強度Eは、組織依存閾値Ethを超えるべきである。したがって、例えば、心臓細胞については閾値が約500V/cmであり、骨については3000V/cmである。閾値電界強度のこの差が、IREが異なる組織に選択的に適用されることを可能にする。
【0011】
単極IREを実行するとき、体表面電極(例えば、パッチまたはバックパッチ)であるリターン電極は、パルスが送達電極からリターン電極へ身体を通って移動するときにパルスによって引き起こされる筋収縮および筋痙攣などによる下層組織の運動が最小であるかあるいは存在しない位置で、身体上に配置されることが重要である。
【0012】
本明細書で説明される本開示の主題の例は、加速度計を含むリターン電極である体表面電極を提示する。加速度計は、「完全」単極IRE処置において使用される体表面電極のための患者の身体上の適切な位置を決定するために使用される。加速度計は、体表面電極が付着されるかあるいは別様に配置される身体の位置の運動およびその量を測定する。その運動は、典型的には、「試験」IREパルスが、複合電極または送達電極から、リターン電極として機能する体表面電極へと身体を通じて移動して、送達されたパルスからIRE発生器へと電線を通じて電流を戻す結果として生じる筋収縮および/または痙攣によって引き起こされるものである。
【0013】
システムの説明
図1は、開示される主題の例による、カテーテルベースの不可逆的エレクトロポレーション(IRE)システム20の概略描画図である。システム20は、カテーテル21を含み、カテーテル21のシャフト22は、医師30によって、シース23を介して患者28の血管系を通って挿入される。次いで、医師は、シャフト22の遠位端22aを、患者の心臓26内の標的位置にナビゲートする。
【0014】
シャフト22の遠位端22aが標的位置に到達すると、医師30はシース23を後退させ、典型的には生理食塩水をバルーン40に圧送することによってバルーン40を拡張する。次に、医師30は、バルーン40カテーテル上に配置された電極50がPV小孔51の内壁と係合して、電極50を介して小孔51組織に高電圧PFAパルスを印加するようにシャフト22を操作する。
【0015】
挿入
図25に見られるように、遠位端22aには、複数の等距離のIRE電極50を備える拡張可能なバルーン40が取り付けられている。バルーン40の遠位部分の平坦な形状により、電極50が遠位部分を覆う箇所においても、隣接する電極50間の距離はほぼ一定のままである。したがって、バルーン40の構成は、挿入
図35に示されるように、隣接する電極50間のより効果的なエレクトロポレーション(例えば、ほぼ均一な電界強度による)を可能にする。
【0016】
膨張可能なバルーンの特定の態様が、例えば、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Hybrid Balloon Basket Catheter」と題する米国特許出願第2018/0184982(A1)号で扱われている。
【0017】
単極IREシステムである本明細書に記載の実施例において、カテーテル21は、電気生理学的感知および/または心臓26の左心房45におけるPV小孔51組織の前述したIRE分離などの任意の適切な診断および/または治療目的に使用され得る。
【0018】
カテーテル21の近位端は、(例えば、アセンブリ48のスイッチを使用して)電極50を代わる代わる短絡させることによって効果的な複合電極250を形成するための回路と共に、コンソール24内に含められたスイッチングアセンブリ48に接続される。電極50は、カテーテル21のシャフト22内で延びる電気配線(
図2に示す)によって、スイッチングアセンブリ48のPFAに接続される。コンソール24は、アセンブリ48が接続されるPFAパルス発生器38をさらに備え、PFA発生器38は、複合電極250と、リターン電極として機能する皮膚パッチ電極(
図2に示す)と、の間にPFAパルスを印加するように構成されている。
【0019】
PFAパルス発生器38と同様のIREパルス発生器は、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Pulse Generator for Irreversible Electropolation」と題する、2019年12月3日に出願された米国特許出願第16/701,989号に記載されている。パルス発生器38によって発生されたパルスはバランスされており、すなわちそれらは0 DCを有する。
【0020】
コンソール24のメモリ34は、
図1に関して記述されるように、ピーク間電圧およびパルス幅などのPFAパルスパラメータを含むIREプロトコルを記憶する。
【0021】
コンソール24は、典型的には患者28の胸の周りに配置されるカテーテル21および外部電極49から信号を受信するための適切なフロントエンドおよびインターフェース回路37を備えたプロセッサ41、典型的には汎用コンピュータを備える。この目的で、プロセッサ41は、ケーブル39を通るワイヤによって外部電極49に接続されている。
【0022】
処置中、システム20は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号に記載されている、Biosense-Webster 社(Irvine、California)提供のActive Current Location(ACL)法を使用して、心臓26内の電極50のそれぞれの位置を追跡することができる。
【0023】
いくつかの例において、医師30は、複合電極250と共に使用される単極性IREプロトコルのパラメータのいずれかをユーザインターフェース47から修正することができる。ユーザインターフェース47は、任意の適切な種類の入力装置、とりわけ、例えば、キーボード、マウス、またはトラックボールを含んでもよい。
【0024】
プロセッサ41は、典型的には、単極IREによって実行される処置を含むIRE処置を実行するのに必要な機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされる。このソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる。あるいは、ソフトウェアは、代替的にまたは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、もしくは電子メモリなどの、非一過性有形媒体上に提供および/または記憶することができる。
【0025】
具体的には、プロセッサ41は、本明細書で開示されるような専用のプロトコルを実行し、このプロトコルは、以下でさらに説明されるように、開示されるステップをプロセッサ41が実施することを可能にするものである。
【0026】
体表面電極(リターン電極)の身体上の位置の決定
図2は、患者28または身体(「患者」および「身体」という用語は本明細書では互換的に使用される)に対する手術中の例示的なシステム20の概略的な簡略図を示す。例えば、患者28は、ヒトまたは他の哺乳動物の被験体である。
図1の不可逆エレクトロポレーション(IRE)カテーテル40は、例えば、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Using Unipolar Configuration For Inreversible Electroporation」という名称の米国特許出願第17/073,467号に記載されているように、単極パルスフィールドアブレーション(pulsed-field ablation、PFA)パルス(電流のパルス(電流のパルスはパルス電流または電流パルスとしても知られており、これらの用語は本明細書では互換的に使用される))のパルス列で肺静脈(pulmonary vein、PV)の小孔51をアブレーションする。
【0027】
図1も参照すると、パルス送達電極としても知られる複合電極250が、小孔51の全周にわたって小孔と接触している。複合電極またはパルス送達電極250は、ケーブル60を介して(1つまたは複数のスイッチからなる)スイッチングアセンブリ48に接続され、電極50に接続するケーブル60の別個のワイヤは、効果的な複合電極またはパルス送達電極250を作成するために、スイッチングアセンブリ48内で互いに短絡される。単一の導体(図示せず)が、スイッチングアセンブリ48を、IRE発生器、パルス発生器、または発生器としても知られているPFA発生器38(これらの用語は本明細書では互換的に使用される)の一端と、ケーブル60とに接続する。
【0028】
PFA発生器38の他方のリード線は、ライン64によって、例えば、バックパッチとして示されているが脚および身体の他の部分への付着にも適した体表面電極68上の電極66(
図3)、またはリターン電極上の電極66(
図3)に接続される。以下、本明細書では、「体表面電極」、「リターン電極」、「パッチ」、および「バックパッチ」という用語は、本明細書では互換的に使用され、要素番号68によって表される。ライン64は、体表面電極68の電極66からIRE(PFA)発生器38への(送達されたパルスからの)戻り電流を容易にする(例えば、搬送する)。IRE発生器38、スイッチングボックス48、ケーブル60(単一の導体を含む)、複合電極250、リターン電極66を介した体表面電極68、および戻りライン64は、患者28へのパルス送達および患者28からのパルス戻りのための電気回路を形成する。
【0029】
体表面電極68は、例えば、体表面電極68の接着側面68xにおいて、患者28の皮膚に付着される。体表面電極68の外部側面68yは、周囲環境に露出されている。上述のように、パルス送達電極250を使用して単極性PFAを実施するには、患者28に適用される適切なPFAパルスを有する専用IREプロトコルが必要である。いくつかの例では、提供されるPFAプロトコルは、例えば、本特許出願の譲受人に譲渡された「Pulse Generator for Inreversible Electroporation」と題する2019年12月3日出願の米国特許出願第16/701,989号に記載されているように、選択されたプロトコルのPFAパルス送達を、パルス列間に休止を有する複数のパルス列(「パルスバースト」)に分割(区分)する。パルス列間の休止は、何らかの収縮および/または痙攣が生じた場合に筋肉の弛緩を可能にする。
【0030】
図3も参照すると、1つまたは複数の電極によって形成され、リターン電極として機能する電極66が、例えば、体表面電極68、例えば、パッチの接着または内部側面68x上に位置付けられるか、あるいは別様にそれに結合されている。この電極66は、パッチ68の一部として、典型的には、患者28の背中28x、脚、または他の身体部分に沿って患者28に付着される。その接着は、例えば、接着剤によるものであり、パッチ68は、自己付着型であるか、あるいは他の機械的または化学的締結具を用いるものである。
【0031】
体表面電極68はまた、1つ以上の加速度計72、または他の運動測定デバイスを含む。体表面電極上の1つ以上の加速度計を代表する加速度計72は、例えばライン82を介してプロセッサ80と通信する。
【0032】
プロセッサ80は、間隔をおいて加速度計72を監視および/もしくはポーリングすること、または、間隔をおいて加速度計72から加速度計データの送信を受信することによって、例えば、運動および/または運動の程度を示す加速度計72のデータ(「運動データ」としても知られ、用語「加速度計データ」および「運動データ」は、本明細書では互換的に使用される)を取得し、加速度計データは通常、連続的に取得されるものである。プロセッサ80は、IREパルス、例えば「試験」パルスに起因する筋収縮および/または筋痙攣によって引き起こされる体表面電極68の運動および/または運動の程度について運動データを分析するようにプログラムされる。プロセッサ80は、運動にスコアを割り当てるようにプログラムされてもよい。例えば、特定の位置における体表面電極について、運動が大きいほど、スコアが高くなる。例えば、プロセッサはまた、比較によるものも含めてスコアを分析して、「完全」IRE処置のための体表面電極68の配置に適した(最適を含み得る)位置を決定するようにプログラムされてもよい。プロセッサ80はまた、例えば、メモリおよびストレージに関連付けられ、ストレージはデータベースなどをサポートする。
【0033】
IRE発生器38は、例えば、約1メガヘルツ(MHz)の周波数、2キロボルト(kV)の電圧、30アンペア(A)のインピーダンスで「完全」IRE処置のために動作し、またIRE発生器38は、例えば、約5 nF(ナノファラド)で動作可能である。「試験」パルスを用いる「試験」IRE処置の場合、IRE発生器38は、「完全」IRE処置と同様に動作するが、「試験」パルスは、パルス幅、周波数、および/または振幅などの動作パラメータのうちの1つまたは複数が低減されるようなものである。1つまたは複数の低減されたパラメータを用いて動作することによって、「試験」IRE処置は安全な範囲で動作する。
【0034】
コントローラ86は、ライン88を介してIRE発生器38と通信する。コントローラ86は、例えば、「完全」IRE処置における体表面電極68の配置のための身体28上の適切または最適な位置を決定するときに「試験」パルス(例えば、「試験」パルスプロトコルにおいて)を発生させるように、また「完全」IRE処置のためのパルスシーケンスまたはプロトコルを発生させるように、IRE発生器38に合図する。コントローラは、以下に詳述されるようにプロセッサ80と共に動作し、また以下に詳述されるようにシステム20のための他のプロセスを実行するためのプロセッサ、メモリ、およびストレージを含む。
【0035】
コントローラ86はまた、「試験」パルスおよびそのためのプロトコルの開始および停止期間を合図するために、また「完全」IRE処置のための1つまたは複数のパルスおよび/またはパルスシーケンスまたはプロトコルを開始および終了させるようにIRE発生器38に合図するために、ライン88を介してIRE発生器38と通信する。コントローラ86はまた、例えば、プログラムに従って自動的に、あるいはコントローラ86と通信するオペレータまたは他の機械もしくはデバイスからコマンドを受信することによって、パルス発生を直ちに終了するようにIRE発生器38に合図する。
【0036】
プロセッサ80はまた、有線および/または無線通信を表す線84を介してコントローラ86と通信してもよく、逆もまた同様である。例えば、プロセッサ80は、身体28上の各試験位置における各体表面電極68ごとに、加速度計(複数可)72から取得される運動データを提供することができる。上述のようなプロセッサ80および/またはコントローラ86は、運動データを分析して、「完全」IRE処置のための体表面電極68の身体28上の適切な位置、場合によっては最適な位置を決定する。また、例えば、コントローラ86は、試験パルスが生成される時間、生成された周波数および強度、並びに「完全」IRE処置についての同一または類似の情報など、「試験」パルスのシーケンスまたはプロトコルについての情報を、プロセッサ80に通信し得る。プロセッサ80はまた、電極66、加速度計72などに異常を検出した場合、IRE発生器38を遮断し、パルス発生を即座に終了するように、コントローラ86に合図し得る。
【0037】
例えば、
図3のパッチ68の形態をなす体表面電極68を参照すると、皮膚に接触するパッチ68aの接着側面68x上には、単一の電極66(1つ以上の電極を代表する)と、加速度計72(1つ以上の加速度計を代表する)と、がある。パッチ68上に支持された電極66は、複合電極250からIRE発生器38へのパルスのリターン電極である。加速度計72は、ライン84(有線リンク)または無線リンクを介してプロセッサ80と通信し、その結果、加速度計72によって測定された運動データは、プロセッサ80にデータをプッシュするか、あるいはプロセッサ80が加速度計72からデータをプルすることによって、プロセッサ80によって取得される。
【0038】
プロセッサ80は、例えば、加速度計72が、測定された運動を指示する信号をプロセッサ80に、連続的に、あるいはランダムを含む様々な時間間隔で、自動的に、あるいはプロセッサ80によってトリガされたときに送信することによって、加速度計72から運動データを取得する。代替として、プロセッサ80は、加速度計72を監視し、例えば、加速度計72によって出力されるか、あるいは加速度計72をポーリングするプロセッサ80によって取得される、測定された運動のデータを監視する。前述の監視、トリガ、および/またはポーリングは、例えば、連続的であり、一定であっても、間隔をおいても、時間的に等間隔であっても、ランダムであってもよい。
【0039】
図4は、プロセッサ80によって実行される例示的なプロセスのフロー図であり、パッチ68および一連の「試験」パルスを使用して、例えば「完全」IRE処置のために、体表面電極68の配置のための身体上の最適な位置を含む適切な位置を決定する方法を概略的に示す。このプロセスは、例えば、自動的にリアルタイムで実行され、手動のサブプロセスを含んでもよい。このプロセスは、所望される限り実行され得る。
【0040】
このプロセスは、開始ブロック400で始まり、ここで、例えば、IREシステム20は、定位置にあり、患者28に使用する準備を完了している。ブロック402において、体表面電極68が第1の位置などの身体28上の位置に配置されると、プロセスが開始する。ブロック404はブロック402と同時的もしくは併発的であってもよく、あるいはブロック402と交換されてもよいが、コントローラ86は、パルスの数、パルスの強度および周波数を含む「試験」パルスのシーケンスまたはプロトコルを決定する。
【0041】
ブロック406において、プロトコルの一部として、一連のまたは一群の「試験」パルスがIRE発生器38によって発生される。ブロック408において、加速度計72は、例えば、「試験」パルスが送達電極250から体表面電極68上の電極66へと身体を通って移動する結果として生じる、筋収縮および/または筋痙攣の形態をなす筋肉運動であり得る身体運動を検出する。身体28の位置(体表面電極68の位置に近接する身体上の位置も含み得る)において加速度計72によって検出される身体運動に関連付けられたデータは、上記で詳述されたように、プロセッサ80によって加速度計72から取得される。
【0042】
ブロック410において、取得された加速度計データ(「試験」パルスを受ける表面電極68の位置に関する身体運動データ)が記録され、典型的には記憶される。ストレージは、例えば、プロセッサ80に関連付けられたデータベース内にあり、プロセッサはコントローラ86内にあってもよい。
【0043】
プロセスは、ブロック412に移動し、ここで、比較点として、さらなるデータ、例えば、身体上の体表面電極68の少なくとも2つの位置からのデータが必要かどうかが判定される。しかしながら、許容可能な身体運動に対する閾値またはスコアがプロセッサ80またはコントローラ86にプログラムされる場合、身体28上の単一の体表面電極位置からのデータで十分であり得る。体表面電極の後続の位置からより多くの運動データが必要とされる場合、身体上の体表面電極の第1の位置からのデータが取得された後、プロセスはブロック414に移動する。
【0044】
ブロック414において、以前の位置から取り外された体表面電極68、または新しい体表面電極(以前の体表面電極は身体から取り外される)が、例えば、表面電極68が配置(位置決め)された身体28上の任意の以前の位置とは異なる身体上の後続の位置に配置される。ブロック414から、プロセスはブロック404に移動し、そこから、上で詳述されたものに従って再開する。
【0045】
ブロック412に戻ると、身体上の体表面電極のより多くの位置からのより多くの運動データが必要とされない場合、プロセスはブロック416に移動する。ブロック416において、体表面電極の位置からの運動データが分析される。この分析は、「完全」IRE処置のための体表面電極に適切な位置(0以上)があるかどうかを決定するものである。適切な位置が0個の場合、運動データは身体上の体表面電極の各位置に対して取得されたものであるが、その運動は、プロセッサ80またはコントローラ86にプログラムされた所定の運動閾値またはスコアを超え、そのため、「完全」IRE処置およびその後の(「試験」パルスを使用する試験IRE処置後の)IRE処置に対し、位置のうちで、体表面電極に適切なものはゼロ個であるかあるいは存在しなかった。
【0046】
プロセスはブロック418に移動する。ブロック418において、分析により、「完全」IRE処置のための体表面電極に適した身体上の位置がゼロ個であるか、あるいは存在しない場合、プロセスはブロック400に戻り、そこから、上述のようにプロセスが再開する。
【0047】
しかしながら、ブロック418において、決定された1つ以上の適切な位置が存在する場合、プロセスはブロック420に移動し、「完全」IRE処置のための体表面電極の患者の身体上の少なくとも1つの最適な位置がオペレータに指示される。最適な位置は、試験IREパルスが印加されるときの(身体に接着されたパッチ電極上のGセンサ72からの)身体運動の量が最小であるパッチ電極68の1つまたは複数の位置から選択される。すなわち、身体上の各位置において、システムは、試験IREパルスの各印加における運動データを記憶し、IRE試験パルスの間の身体運動の量が最小である位置をオペレータに指示する。
【0048】
代替として、システムは、所定の移動閾値を利用してもよく、また、ステップ412において、オペレータが選択した位置におけるパッチ電極68の移動が所定の閾値よりも大きい場合、方法は、異なる位置において試験シーケンスを開始するようにユーザに指示する。身体パッチ68の位置は、試験IREパルス中の(Gセンサ72を介した)身体運動が所定の閾値未満であるときに選択される。この時点で、システムは、この選択された位置がIREアブレーション療法に「最適」であることを、システム24のディスプレイまたは音声出力を介してオペレータに知らせる。最適な位置のこの決定ステップ420において、プロセスはブロック422に移動し、そこで終了する。最適な位置を決定するプロセスは、所望される限り繰り返され得る。
【0049】
典型的に、プロセッサ80は、汎用プロセッサを含み、この汎用プロセッサは、本明細書に記載される機能を実行するように、ソフトウェアでプログラムされている。このソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、あるいは、代替的にまたは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、もしくは電子メモリなどの、非一過性有形媒体上に提供および/または記憶することができる。
【実施例0050】
不可逆的エレクトロポレーション(IRE)処置のための体表面電極(68)の配置を決定するためのシステム(20)。システム(20)は、1)IRE発生器(38)と通信するパルス送達電極(250)と電気的に結合するように構成された少なくとも1つの電極(66)であって、少なくとも1つの電極(66)は患者(28)の皮膚と通信し、少なくとも1つの電極(66)はIRE発生器(38)と通信して電流をIRE発生器(38)に戻すためのものである、少なくとも1つの電極(66)と、2)少なくとも1つの運動測定デバイス(72)と、を備える、体表面電極(68)と、少なくとも1つの運動測定デバイス(72)と通信するプロセッサ(80)と、を備える。プロセッサ(80)は、体表面電極(68)の身体上の位置に少なくとも近接する体表面電極(68)の運動測定デバイス(72)によって測定された身体運動に対応するデータを取得するようにプログラムされ、身体運動は、パルス送達電極(250)によって身体に送達され、体表面電極(68)の少なくとも1つの電極(66)によって受信される、IRE発生器(38)からの少なくとも1つのパルスに起因する筋肉運動を含む。
プロセッサ(80)は、体表面電極(68)が身体上に配置された複数の位置から、体表面電極(68)の運動測定デバイス(72)によって測定される身体運動に対応するデータを取得するようにさらにプログラムされ、複数の位置の各々は、IRE発生器(38)からの少なくとも1つのパルスを受けている、実施例1に記載のシステム(20)。