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特開2023-93405パルミトイルエタノールアミドを含む皮膚鎮静用化粧料組成物
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  • 特開-パルミトイルエタノールアミドを含む皮膚鎮静用化粧料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093405
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】パルミトイルエタノールアミドを含む皮膚鎮静用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20230627BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230627BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/34
A61Q19/00
A61Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022204723
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185262
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヘ・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ジュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】オ・スン・クォン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC402
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD092
4C083AD152
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE10
4C083EE13
(57)【要約】
【課題】本発明は、パルミトイルエタノールアミドの溶解度を改善させることができる溶媒を確認し、これを提供することを目的とする。本発明は、また、前記溶媒によって発生する皮膚刺激を緩和させるための組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、パルミトイルエタノールアミド;ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールを含む化粧料組成物に関し、
ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールの組み合わせでパルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させることができ、また、溶媒による皮膚刺激を緩和させることができ、パルミトイルエタノールアミドによる皮膚鎮静効果を示すことができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルミトイルエタノールアミド(Palmitoylethanolamide,PEA);ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールを含む化粧料組成物。
【請求項2】
ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上:ブタンジオールの重量比が、9.5:0.5~4.5:5.5である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
パルミトイルエタノールアミドは、化粧料組成物全重量に対して0.001~3重量%で含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
ブタンジオールは、化粧料組成物全重量に対して0.1~5重量%で含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールは、パルミトイルエタノールアミド1重量部に対して50~250重量部で含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
パルミトイルエタノールアミド、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上、およびブタンジオールの重量の和は、組成物総重量に対して1~10重量%である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記ペンタンジオールは、ペンチレングリコールであり、前記ヘキサンジオールは、1,2-ヘキサンジオールであり、
前記ブタンジオールは、2,3-ブタンジオールである、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記組成物は、皮膚鎮静用である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の化粧料組成物を含む皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルミトイルエタノールアミド(Palmitoylethanolamide,PEA)を含む化粧料組成物に関し、具体的には、パルミトイルエタノールアミド、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールを含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パルミトイルエタノールアミド(Palmitoylethanolamide,PEA)の化学名は、N-(2-ヒドロキシエチル)ヘキサデカンアミド(N-(2-hydroxyethyl)hexadecanamide)であり、N-パルミトイルエタノールアミン(N-Palmitoylethanolamine)、パルミタミドMEA(Palmitamide MEA)、PMEA、またはパルミドロール(palmidrol)と呼ばれ、炭素16個のパルミチン酸に由来するアミド化合物である。米国パーソナルケア製品評議会(Personal Care Products council,PCPC)によれば、パルミトイルエタノールアミドは、「界面活性剤-バブル促進剤;粘度増加剤-水性(Surfactants-Foam Boosters;Viscosity Increasing Agents-Aqueous)」の機能を有すると報告されており、大韓化粧品協会でも、同一に、パルミトイルエタノールアミドの配合目的を界面活性剤(バブル促進剤)、粘度増加剤(水性)と案内している。
【0003】
パルミトイルエタノールアミドは、カンナビノイド(Cannabinoid,CB)受容体を間接的に活性化すると知られている。カンナビノイド受容体は、代表的にCBR1とCBR2があり、CBR1は、中枢神経系に多く存在し、CBR2は、免疫システムに存在すると知られている。パルミトイルエタノールアミドは、その中で、PPAR-αを通じてCBR2の発現に関与して炎症を抑制すると知られている。特許文献1(US6503492B2)によれば、デオドラントおよび発汗を抑制する剤形にパルミトイルエタノールアミドを添加したとき、ヒスタミンによって誘発されるかゆみが減少し、炎症指標であるIL-6が減少することを確認した。また、特許文献2(US9623000B2)によれば、炎症性疾患を治療するために、ヒドロコルチゾンにパルミトイルエタノールアミドを付加した。このように様々な先行文献においてパルミトイルエタノールアミドが皮膚鎮静効果、痛みを鎮める効果(鎮痛)、抗炎効果、免疫強化効果があることを証明している。
【0004】
パルミトイルエタノールアミドは、白色粉末状であり、融点が93℃~98℃と非常に高い。25℃で水に対する溶解度が0.4431mg/Lであり、溶解度分類基準、水に対して不溶性に分類される。また、化合物構造上、アミド基を有していて、スキンケア製品に一般的に使用するMCTオイル(中鎖脂肪酸オイル)でもよく溶けない。これによって、パルミトイルエタノールアミドを製品に適用するには加温工程が必ず必要であった。実際に、当業界では、油相を75℃以上加温した後、パルミトイルエタノールアミドを投入し、溶解状態を確認した後(加温/溶解/確認工程)、乳化工程を経て組成物を製造している。これによって、室温工程で製造するo/wクリーム剤形や可溶化剤形にパルミトイルエタノールアミドを適用しにくい問題点があった。加温/溶解/確認工程は、製品生産時、生産効率を低下させ、生産者の作業環境をも悪化させることができる。しかしながら、パルミトイルエタノールアミドを加温工程なしで精製水や化粧品剤形に直接投入時、パルミトイルエタノールアミド成分間の結合が促進されて、低温で析出する傾向を示して、加温/溶解/確認工程は、製品の流通過程を考慮すると省略できない工程であった。
【0005】
一方、溶質を溶解するために使用するエタノール、ジプロピレングリコールなどの有機溶媒は、皮膚に過剰に適用すると、皮膚障壁を弱化させて刺激を誘発すると知られている。これによって、パルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させるために、当該溶媒を過剰に適用すると、溶媒による刺激も増加すると予想された。
【0006】
したがって、パルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させることができ、かつ、皮膚刺激の問題点が発生しない好適な溶媒の探索が要求され、本発明者らは、特定溶媒を組み合わせて使用したとき、このような課題が解決されたことを確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許6503492B2公報
【特許文献2】米国特許9623000B2公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パルミトイルエタノールアミドの溶解度を改善させることができる溶媒を確認し、これを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、また、前記溶媒によって発生する皮膚刺激を緩和させるための組成物を提供することを目的とする。
【0010】
したがって、本発明は、パルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させる溶媒を提供し、このような溶媒によって発生する皮膚刺激の問題点を解決する組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、また、皮膚鎮静効果を示すことができるパルミトイルエタノールアミドを化粧品に容易に適用して、皮膚鎮静用化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、鋭意研究努力した結果、本発明者らは、パルミトイルエタノールアミドを溶解させることができる好適な溶媒として、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールを選定することができた。ただし、ペンタンジオールまたはヘキサンジオールを過剰使用する場合、皮膚刺激の問題が発生するが、このような溶媒にブタンジオールを併用することによって、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールの含有量が減少してもパルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させることができ、溶媒による皮膚刺激発生を緩和させることができ、パルミトイルエタノールアミドによる皮膚鎮静効果を十分に示すことができることを確認した。
【0013】
したがって、本発明は、パルミトイルエタノールアミド;ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールを含む化粧料組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記成分を含む皮膚鎮静用化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、溶解度がきわめて低いパルミトイルエタノールアミドを溶解させることができる好適な溶媒を提供することができ、このような溶媒は、長期間保管しても安定的にパルミトイルエタノールアミドを溶解させることができる。これにより、パルミトイルエタノールアミドを含む化粧品の製造時、工程を単純化することができる。
【0016】
また、前記溶媒にブタンジオールを併用することによって、溶媒によって発生する皮膚刺激を緩和させることができ、皮膚鎮静の効果を示すパルミトイルエタノールアミドの固有の特性をそのまま示すことができる。
【0017】
すなわち、本発明は、パルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させることができる溶媒を提供し、かつ、ブタンジオールを併用して、前記溶媒による皮膚刺激を緩和することができ、パルミトイルエタノールアミドによる皮膚鎮静効果を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実験例1によって各溶媒別のパルミトイルエタノールアミドの溶解の有無を確認した写真を示す図である。
図2】実験例2によってペンチレングリコールおよび2,3-ブタンジオールでパルミトイルエタノールアミドの溶解の有無を確認した写真を示す図である。
図3】実験例2によって1,2-ヘキサンジオールおよび2,3-ブタンジオールでパルミトイルエタノールアミドの溶解の有無を確認した写真を示す図である。
図4】実験例4-1によって製造例3の組成物においてパルミトイルエタノールアミド析出の有無を確認した写真を示す図である。
図5】実験例4-1によって製造例4の組成物においてパルミトイルエタノールアミド析出の有無を確認した写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、パルミトイルエタノールアミド;ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールを含む化粧料組成物を提供する。
【0021】
本発明の「パルミトイルエタノールアミド」または「PEA」は、下記[化学式1]で表され、パルミトイルカルボキシレート基がエタノールアミンの一次アミンによってアミド化した構造を示す。
【0022】
[化学式1]
【化1】
【0023】
パルミトイルエタノールアミドは、CBR活性化剤であり、ヒスタミンによって誘発されるかゆみを低減させることができる。また、パルミトイルエタノールアミドは、皮膚鎮静効果、抗炎症効果、抗痛覚効果、および鎮痛効果を有する。これによって、慢性痛み管理、異常な炎症性および/または免疫反応による痛み管理などの痛み緩和目的に使用することができる。
【0024】
パルミトイルエタノールアミドは、常温で水に対する溶解度がきわめて低いため、水に不溶性であり、MCTオイル(中鎖脂肪酸オイル)に対しても室温または50℃まで加熱しても溶解しない。これによって、本発明は、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上をパルミトイルエタノールアミドの溶媒として使用してパルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させることができた。具体的には、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールは、パルミトイルエタノールアミドを長期間保管しても、これを可逆的に溶解させることができる。
【0025】
本発明において、ペンタンジオールは、ペンタン(pentane)に2個のヒドロキシ基が置換された化合物であり、ヒドロキシ基の置換位置は、特に限定されない。例えば、ペンタンジオールは、1,1-ペンタンジオール、2,2-ペンタンジオール、3,3-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、または2,4-ペンタンジオールなどが挙げられる。好ましくは、前記ペンタンジオールは、1,2-ペンタンジオールであるペンチレングリコールであってもよい。
【0026】
本発明において、ヘキサンジオールは、ヘキサン(hexane)に2個のヒドロキシ基が置換された化合物であり、ヒドロキシ基の置換位置は、特に限定されない。例えば、ヘキサンジオールは、1,1-ヘキサンジオール、2,2-ヘキサンジオール、3,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、または3,4-ヘキサンジオールなどが挙げられる。好ましくは、前記ヘキサンジオールは、1,2-ヘキサンジオールであってもよい。
【0027】
前記ペンタンジオールの好ましい例として記載されている「ペンチレングリコール」は、サトウキビ、とうもろこしなどから抽出できるアルコール類であり、化粧品において保湿力および皮膚弾力維持を助けることができ、保湿剤、皮膚コンディショニング剤としても使用できる。
【0028】
また、前記ヘキサンジオールの好ましい例として記載されている「1,2-ヘキサンジオール」は、皮膚保湿および抗菌効果を示し、酸化防止効果があるので、化粧品の酸化を防ぐ安定化機能を示すことができ、保湿剤および防腐剤としても使用できる。
【0029】
また、パルミトイルエタノールアミドの溶媒に選定されたペンタンジオールおよびヘキサンジオールの一定部分をブタンジオールで置換することによって、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールの含有量を低減して溶媒によって発生する皮膚刺激を緩和させることができる。
【0030】
「ブタンジオール」は、それ自体でパルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させることができないが、溶媒の役割をするペンタンジオールおよびヘキサンジオールと併用してパルミトイルエタノールアミドを十分に溶解させることができ、溶媒による皮膚刺激を緩和させることができる。
【0031】
本発明の一実施様態において、ブタンジオールは、1,1-ブタンジオール、2,2-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、および2,3-ブタンジオールから選ばれる1種以上であってもよく、最も好ましくは、2,3-ブタンジオールであってもよい。
【0032】
本発明の一実施様態において、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上:ブタンジオールの重量比は、9.5:0.5~4.5:5.5であってもよい。好ましくは、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上:ブタンジオールの重量比は、9.5:0.5~5.5:4.5、または9.5:0.5~6.5:3.5であってもよい。
【0033】
具体的には、ペンタンジオール:ブタンジオールの重量比が9.5:0.5~7.5:2.5であってもよく、ヘキサンジオール:ブタンジオールの重量比が9.5:0.5~5.5:4.5であってもよい。
【0034】
本発明の一実施様態において、パルミトイルエタノールアミドは、化粧料組成物全重量に対して0.001~3重量%で含まれてもよい。例えば、パルミトイルエタノールアミドは、0.001~2重量%、0.01~1重量%、0.01~0.1重量%、または0.01~0.07重量%で含まれてもよい。
【0035】
本発明の一実施様態において、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上は、化粧料組成物全重量に対して1~8重量%で含まれてもよい。例えば、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上は、2~7重量%、2.5~6重量%、または3~5重量%で含まれてもよい。
【0036】
本発明の一実施様態において、ブタンジオールは、化粧料組成物全重量に対して0.1~5重量%で含まれてもよい。例えば、ブタンジオールは、0.1~3重量%、0.1~2.5重量%、0.5~2.5重量%、または0.5~1.8重量%で含まれてもよい。ブタンジオールを前記範囲で含む場合、パルミトイルエタノールアミドが十分に溶解して析出することなく、皮膚刺激緩和効果を示すことができる。
【0037】
本発明の一実施様態において、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールは、パルミトイルエタノールアミド1重量部に対して50~250重量部で含まれてもよい。より具体的には、パルミトイルエタノールアミド1重量部に対して80~120重量部で含まれてもよい。ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上とブタンジオールは、溶質であるパルミトイルエタノールアミドを溶解させる溶媒の役割をするので、パルミトイルエタノールアミドを基準として過剰に含まれなければならず、前記重量部で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0038】
パルミトイルエタノールアミド、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールの重量の和は、組成物全重量に対して1~10重量%であってもよい。例えば、前記重量の和は、1~8重量%、1~7重量%、1~5重量%、2~8重量%、または3~6重量%であってもよい。
【0039】
本発明の一実施様態において、パルミトイルエタノールアミドは、前記パルミトイルエタノールアミド、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールの重量の和に対して0.2~10重量%で含まれてもよい。例えば、前記パルミトイルエタノールアミドは、0.5~8重量%、0.5~5重量%、0.5~2重量%、0.5~1.5重量%で含まれてもよい。
【0040】
本発明の一実施様態において、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上は、前記パルミトイルエタノールアミド、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールの重量の和に対して40~94.8重量%で含まれてもよい。例えば、前記ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上は、50~94.8重量%、55~90重量%、または60~85重量%で含まれてもよい。
【0041】
本発明の一実施様態において、ブタンジオールは、前記パルミトイルエタノールアミド;ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールの重量の和に対して5~40重量%で含まれてもよい。例えば、前記ブタンジオールは、10~35重量%、または15~35重量%で含まれてもよい。
【0042】
本発明の化粧料組成物を製造するに際して、パルミトイルエタノールアミド、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールをあらかじめ混合および撹拌して、固状または液状の配合物を製造する段階を含んでもよい。
【0043】
前記配合物の製造段階でパルミトイルエタノールアミドをペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上とブタンジオールの混合物に混合および撹拌して、パルミトイルエタノールアミドが十分に溶解した配合物を製造することができる。
【0044】
具体的には、前記配合物の製造段階は、パルミトイルエタノールアミドをペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールの混合物に添加した後、40~70℃の温度に加温および撹拌する段階を含んでもよい。
【0045】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分として、前記有効成分に加えて、化粧料組成物に通常用いられる成分を含んでもよいし、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調節剤、色素、顔料および香料のような通常の補助剤、および担体などを含んでもよい。
【0046】
本発明の化粧料組成物は、当業界において通常製造されるいずれの剤形に製造することができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パック、マッサージクリームおよびスプレーなどに剤形化することができるが、これらに限定されるものではない。より詳細には、スキン、ローション、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形で製造することができる。
【0047】
本発明による化粧料組成物は、皮膚鎮静用化粧料組成物であってもよい。皮膚鎮静効果は、パルミトイルエタノールアミドによって発揮される効果であり、ペンタンジオールおよびヘキサンジオール、ブタンジオールと混合しても、パルミトイルエタノールアミドによる皮膚鎮静効果を十分に発揮することができる。
【0048】
本発明による化粧料組成物は、パルミトイルエタノールアミドの溶解度が改善された化粧料組成物であってもよい。パルミトイルエタノールアミドをペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上およびブタンジオールと混合する場合、パルミトイルエタノールアミドは、常温で長期間放置しても析出しないので、改善された溶解度を示すことができる。
【0049】
本発明による化粧料組成物を含む皮膚外用剤を提供する。前記皮膚外用剤は、皮膚外部に塗布されるいずれのものも含んでもよいし、様々な剤形の化粧品、医薬品、医薬部外品を含んでもよい。
【0050】
本発明は、また、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールをパルミトイルエタノールアミドと混合する段階を含むパルミトイルエタノールアミドの溶解度を改善させる方法を提供する。
【0051】
本発明は、また、パルミトイルエタノールアミドの溶解度が改善された組成物を製造するためのペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールの用途を提供する。
【0052】
本発明は、また、パルミトイルエタノールアミド;ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールを含む組成物を皮膚に投与する段階を含む皮膚を鎮静させる方法を提供する。
【0053】
本発明は、また、皮膚鎮静用組成物を製造するためのパルミトイルエタノールアミド;ペンタンジオールおよびヘキサンジオールのうち1種以上;およびブタンジオールの用途を提供する。
【0054】
前記皮膚鎮静用組成物は、皮膚鎮静用化粧料組成物であってもよい。
【0055】
前記「投与」の経路、対象、投与量のような投与条件は、特に限定されず、当業界において通常化粧料組成物を投与するのに使用される条件であれば、限定されずに使用可能である。
【0056】
本発明による化粧料組成物に含まれる前記言及された成分それぞれは、好ましくは、韓国、中国など各国政府によって規定された《化粧品安全技術仕様》または《化粧品使用・許可》に明示された最大使用量を超過しない範囲内で本発明の化粧料組成物に含まれてもよい。
【0057】
以下、本発明を下記実験例によって詳細に説明する。ただし、下記実験例は、本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実験例によって限定されるものではない。また、これらの実験例は、本発明に関する理解を助けるための目的に過ぎず、いかなる意味においても本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0058】
実施例
実験例1.パルミトイルエタノールアミドの溶媒選定
パルミトイルエタノールアミドに対する各溶媒別の溶解度を確認した。確認した溶媒は、化粧品の溶媒として代表的に使用されるポリオールとして、プロパンジオール、グリセリン、エタノール、2,3-ブタンジオール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エトキシジグリセロール、および1,2-ヘキサンジオールを使用した。前記ポリオールに0.5重量%パルミトイルエタノールアミドおよび1重量%パルミトイルエタノールアミドをそれぞれ溶解させた。この溶液を25℃に24時間放置した後、パルミトイルエタノールアミドを溶解させることができるかどうかを確認した。
【0059】
図1には、当該ポリオールに0.5重量%パルミトイルエタノールアミド、1重量%パルミトイルエタノールアミドを溶解させ、25℃に24時間放置した後の溶液のイメージを示した。
【0060】
図1から確認できるように、ペンチレングリコールおよび1,2-ヘキサンジオールの溶液は、25℃に24時間放置すると、透明であるが、残りのポリオール溶液は白色を示し、パルミトイルエタノールアミドが溶解せず析出することを確認することができる。これによって、パルミトイルエタノールアミドの最も好ましい溶媒として、ペンチレングリコールおよび1,2-ヘキサンジオールを選定することができた。
【0061】
実験例2.選定された溶媒と2,3-ブタンジオールの併用によるパルミトイルエタノールアミドの溶解度の確認
実験例1によって選定されたペンチレングリコールおよび1,2-ヘキサンジオールを溶媒として使用し、2,3-ブタンジオールをさらに添加した溶液において、前記溶媒と2,3-ブタンジオールの併用によるパルミトイルエタノールアミドの溶解度を確認した。
【0062】
具体的には、ペンチレングリコールまたは1,2-ヘキサンジオールに2,3-ブタンジオールを特定の割合で混合した溶液にパルミトイルエタノールアミド1重量%をそれぞれ溶解させ、25℃に4週間放置してもパルミトイルエタノールアミドを溶解させることができるかどうかを確認した。
【0063】
図2および図3から確認できるように、ペンチレングリコールまたは1,2-ヘキサンジオールに2,3-ブタンジオールを併用した場合にも、これらの重量比に関係なく、1重量%のパルミトイルエタノールアミドを溶解することができた。
【0064】
実験例3.人体皮膚に対する一次刺激評価
製造例1.ペンチレングリコールを使用した組成物の製造
成分1に成分2~4を徐々に投入し、分散させた後、72℃に加温して、水相を製造した。成分5~9を混合し、加熱および融解させて、72℃に維持して、油相を製造した。水相を撹拌しつつ油相を徐々に添加し、これをホモミキサーで均一に乳化した後、撹拌しつつ、50℃まで冷却した。そこへ成分10を少量の成分1に溶かして添加した後、成分11~13を入れ、乳化した。これを撹拌しつつ28℃まで冷却して、比較例1および2、実施例1の組成物を得た。各ナンバリングした成分と配合質量%は、下記表1に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
実験例3-1.一次刺激の評価実験
皮膚に現れる一次刺激を評価するために、皮膚疾患のない健康な成人研究対象者20人を対象に実験を行った。Patch test unit(IQ UltraTM)の各チャンバーに適量(25μl内外)の試料を塗布した後、試料が塗布されたパッチテストユニット(patch test unit)を成人研究対象者の試験部位に付着した。付着してから24時間経過後、パッチテストユニットを除去し、除去2時間後、皮膚状態を確認した。総確認回数は、1回行い、これを表2の評価基準によって刺激度を評価し、下記数式1によって一次皮膚刺激指数を換算し、下記表3に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
[数式1]
一次皮膚刺激指数=Σ研究対象者別の刺激度/(テストした研究対象者の数×読み取り回数)
【0069】
【表3】
【0070】
ペンチレングリコールおよび2,3-ブタンジオールを含む実施例1は、皮膚刺激反応のある研究対象者が存在しないので、刺激指数が0であったが、パルミトイルエタノールアミド、ペンチレングリコールおよび2,3-ブタンジオールを全部含まない比較例1と、パルミトイルエタノールアミドおよびペンチレングリコールを含むが、2,3-ブタンジオールを含まない比較例2では、20人のうち3人が弱い紅斑を伴った皮膚刺激反応が確認されて、刺激指数がいずれも0.08程度であることが確認された。
【0071】
したがって、パルミトイルエタノールアミドおよびペンチレングリコールに2,3-ブタンジオールを組み合わせることによって、皮膚刺激が緩和される効果を確認することができる。
【0072】
製造例2.1,2-ヘキサンジオールを使用した組成物の製造
成分1に成分2~4を徐々に投入して分散させた後、72℃に加温して、水相を製造した。成分5~9を混合し、加熱および融解させて、72℃に維持して、油相を製造した。水相を撹拌しつつ油相を徐々に添加し、これをホモミキサーで均一に乳化した後、撹拌しつつ50℃まで冷却した。そこへ成分10を少量の成分1に溶かして添加した後、成分11~13を入れて乳化した。これを撹拌しつつ28℃まで冷却して、比較例3、実施例2および3の組成物を得た。各ナンバリングした成分と配合質量%は、下記表4に示した。
【0073】
【表4】
【0074】
実験例3-2.一次刺激の評価実験
前記実験例3-1と同じ方式で一次刺激評価実験を実施し、皮膚刺激指数を換算し、下記表5に示した。
【0075】
【表5】
【0076】
1,2-ヘキサンジオールおよび2,3-ブタンジオールを含む実施例2および3は、それぞれ20人のうち3人、2人が弱い紅斑が確認され、その刺激指数がそれぞれ0.08、0.05であった。それに対し、2,3-ブタンジオールを含まない比較例3では、20人のうち6人が弱い紅斑を伴った刺激反応、1人が明確な紅斑を伴った刺激反応が確認され、その刺激指数が0.2と高い刺激指数を示した。
【0077】
したがって、パルミトイルエタノールアミドおよび1,2-ヘキサンジオールに2,3-ブタンジオールを組み合わせることによって、皮膚刺激が緩和される効果を確認することができる。
【0078】
実験例4.組成物の溶解度および皮膚鎮静効果の評価
本実験では、パルミトイルエタノールアミドを含む最終組成物を製造した後、組成物内においてパルミトイルエタノールアミドの溶解の有無およびこのような組成物の皮膚鎮静効果を確認した。
【0079】
製造例3.比較例4および実施例4および5の組成物の製造
成分1に成分2~4を徐々に投入し、分散させた後、72℃に加温して、水相を製造した。成分5~9を混合し、加熱および融解させて、72℃に維持して、油相を製造した。水相を撹拌しつつ油相を徐々に添加し、これをホモミキサーで均一に乳化した後、撹拌しつつ50℃まで冷却した。そこへ成分10を少量の成分1に溶かして添加した後、成分11~13を入れ、乳化した。これを撹拌しつつ28℃まで冷却して、比較例4、実施例4および5の組成物を得た。各ナンバリングした成分と配合質量%は、下記表6に示した。
【0080】
【表6】
【0081】
製造例4.比較例5および実施例6および7の組成物の製造
成分1に成分2~3を徐々に投入して分散させた後、60℃に加温して水相を製造した。成分4~7を混合し、加熱および融解させて、60℃に維持して、油相を製造した。水相を撹拌しつつ油相を徐々に添加し、これをホモミキサーで均一に乳化した後、撹拌しつつ50℃まで冷却した。そこへ成分8を少量の成分1に溶かして添加した後、成分9~11を入れ、乳化した。これを撹拌しつつ28℃まで冷却して、比較例5、実施例6および7の組成物を得た。各ナンバリングした成分と配合質量%は、下記表7に示した。
【0082】
【表7】
【0083】
実験例4-1.組成物内パルミトイルエタノールアミド溶解度の確認
製造例3および4による2種類の組成物に対するパルミトイルエタノールアミドの析出の有無を確認した。前記組成物をスパチュラで少量取って、透明ガラス板に薄く塗り広げた後、パルミトイルエタノールアミドの析出の有無を確認した。
【0084】
図4および図5に示されたように、前記2種類の組成物において、ペンチレングリコールおよび2,3-ブタンジオールを含まない比較例4および5は、析出が観察されたが、ペンチレングリコールと2,3-ブタンジオールを含む実施例4~7は、析出が観察されなかったところ、パルミトイルエタノールアミドの溶解度が改善されたことを確認することができる。
【0085】
したがって、組成物を構成する他の成分の種類およびこれらの含有量とは関係なく、ペンチレングリコールと2,3-ブタンジオールの組み合わせによるパルミトイルエタノールアミドの溶解度改善の効果を確認することができる。
【0086】
実験例4-2.比較例1および実施例4の組成物の皮膚鎮静効果の評価
前記製造例1によって製造された比較例1の組成物と製造例3によって製造された実施例4の組成物について皮膚鎮静効果の評価を実施した。
【0087】
両腕の前腕部に22mm径のポリエステル材のテープを肌に貼り、一定の圧力で5秒間押した後、テープの先端をつかんでゆっくり剥がす作業を10回ずつ繰り返して皮膚刺激を与え、皮膚刺激を与えた直後に組成物を塗布した。皮膚鎮静効果の程度を確認するために組成物塗布前後の紅斑程度を色差計を用いて測定し(皮膚色度;Skin Chromaticity、a*(緑色~赤色))、色差計測定値およびその換算値を表8および表9に示した。
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
パルミトイルエタノールアミド、ペンチレングリコールおよび2,3-ブタンジオールを全部含まない比較例1に比べて、パルミトイルエタノールアミド、ペンチレングリコールおよび2,3-ブタンジオールを全部含む実施例4が、塗布後2時間以降から紅斑程度が相対的に大幅に減少し、皮膚が鎮静されたことを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】