(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093411
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】医薬品容器用ガラス管、およびガラス管の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 17/04 20060101AFI20230627BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20230627BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C03B17/04 Z
C03C3/091
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205214
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21216969
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス ツァイトラー
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ハマン
(72)【発明者】
【氏名】フランツ フェルクル
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ツェットル
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ブラウン
【テーマコード(参考)】
2G043
4G062
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA05
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4G062AA01
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4G062KK07
4G062KK10
4G062MM17
4G062NN34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低コスト、高いスループットおよび製造される医薬品容器用ガラス管の品質の工程内管理を可能にする、ガラス管、およびガラス管の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス管は内部表面および外部表面を有し、内径および外径、第1の端部および第2の端部、第1の位置を有し、第1の位置は第1の端部から400mmの距離にあり、ガラス管は第1の中間の位置を有し、第1の中間の位置は第1の端部から15mmの距離にあり、第1の端部は第1の閉端部に成形されており、好ましくは第2の端部も第2の閉端部に成形されており、第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、第1の近傍部は第1の中間の位置と第1の位置との間にあり、Na
2F
+の信号および
30Si
+の信号を含むToF-SIMSの信号が第1の近傍部の内部表面上で測定可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管は内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管は第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管は第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、
前記第1の端部は第1の閉端部に成形されており、好ましくは前記第2の端部も第2の閉端部に成形されており、
前記第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、前記第1の近傍部は前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間にあり、
Na2F+の信号および30Si+の信号を含むToF-SIMSの信号が前記第1の近傍部の内部表面上で測定可能であり、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10である前記第1の近傍部における内部表面上の面積が36mm2以下であり、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される、前記ガラス管。
【請求項2】
前記面積が25mm2以下、16mm2以下、1mm2以下、および好ましくは0mm2である、請求項1に記載のガラス管。
【請求項3】
医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管は内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管は第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管は第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、
前記第1の端部は第1の閉端部に成形されており、好ましくは前記第2の端部も第2の閉端部に成形されており、
前記第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、前記第1の近傍部は前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間にあり、
前記ガラス管はその長手方向軸に沿った長さlaを有し、前記ガラス管は中央の区域をさらに有し、前記中央の区域は前記長手方向軸に沿って0.5laの位置を中心として5diの距離に延在し、
前記ガラス管は前記第1の近傍部で特定される蛍光発光と、前記中央の区域で特定される蛍光発光との間の比率が少なくとも0.6である、前記ガラス管。
【請求項4】
前記内部表面が前記第1の近傍部に位置する堆積物を含み、前記堆積物はガラス管の内部表面に平行に延在する堆積物の面積を有し、前記堆積物の面積は0.01mm2~36mm2であり、且つ前記堆積物は、前記第1の近傍部における内部表面上で測定可能なNa2F+の信号および30Si+の信号を含むToF-SIMSの信号を有し、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.10未満を有し、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項5】
前記堆積物の面積は0.01mm2~1mm2であり、且つ前記堆積物は積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.025未満を有するか、または堆積物の面積は0.01mm2~36mm2であり、且つ前記堆積物は積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.025未満を有する、請求項4に記載のガラス管。
【請求項6】
前記第1の近傍部の内部表面の少なくとも90%、好ましくは少なくとも99%が、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.025未満によって特徴付けられ、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項7】
前記ガラス管は、内部表面の中央の区域におけるアルカリ浸出性として定義され、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中のNa2O当量として特定される「耐加水分解性」を有し、前記耐加水分解性は、0.5μg cm-2未満、0.4μg cm-2未満、0.3μg cm-2未満、0.2μg cm-2未満、または0.1μg cm-2未満である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項8】
ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5mol%~20mol%のB2O3を含むガラスのリストから選択されるガラス組成物を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項9】
ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき、60~85mol%のSiO2、5~20mol%のB2O3、2~10mol%のAl2O3、0~2mol%のFe2O3、2~10mol%のNa2O、0~5mol%のK2O、0~2mol%のBaO、0~2mol%のCaO、0~10mol%のTiO2を含むガラス組成物を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項10】
前記ガラス管が、
・ 内径di 5.0~49.0mm、好ましくは9.0~26mm、および/または
・ 外径do 6.0~50mm、好ましくは8.0~30mm、および/または
・ ガラス壁厚WT 0.5~2.0mm、好ましくは0.6~1.5mm、および/または
・ 長さla 1100~5000mm、好ましくは1200~3000mm、より好ましくは1500~2000mm
を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項11】
少なくとも50個、好ましくは100個の、請求項1から10までのいずれか1項に記載のガラス管を含む、ガラス管のセット。
【請求項12】
医薬品容器用ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
・ 揮発性成分、例えばホウ酸塩を含むガラス溶融物を準備する、好ましくはガラス溶融物中に含まれる酸化物をもたらす原料のバッチを溶融する段階、
・ 前記ガラス溶融物を例えば引き抜きによって、ガラス管へと成形する段階
・ 前記ガラス管を、第1の端部と第2の端部とを有するガラス管へと成形する段階、
・ 前記第1の端部を第1の閉端部へと成形する段階、
・ 前記ガラス管に通気孔を導入する段階、
・ 前記導入する段階の少なくとも一部の間、および/または前記導入する段階の直後に、吸引を使用する段階、および
・ 任意に、前記第2の端部を第2の閉端部へと成形および/または封止する段階
を含む前記方法。
【請求項13】
前記ガラス管が内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管が内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管がその長手方向軸に沿った長さlaを有し、前記ガラス管が第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管が第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、第1の近傍部が前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間のガラス管の内部表面として定義され、
前記ガラス管の前記第1の近傍部において、前記ガラス管に通気孔が導入される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記導入する段階の間の吸引の使用は、前記ガラス管の第1の近傍部において、前記ガラス管を少なくとも100℃の温度に加熱することを伴う、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
静止条件下での前記吸引の使用が、前記ガラス管の内側で平均空気流量5~50m s-1、好ましくは15~25m s-1をもたらし、且つ/または
前記通気孔の導入が、t0の時点で開始し且つt2の時点で終了し、且つ吸引の使用が、t1の時点で開始し且つt3の時点で終了し、t1はt0とt2との間にあり、且つt3はt2の後であり、且つ/または
前記ガラス管をスクリーニングするさらなる段階を含み、前記スクリーニングは蛍光発光を測定することによって実施される、
請求項12から14までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品容器用ガラス管、およびガラス管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品容器用ガラス管は公知であり、且つ病院および診察室において広く見出される。それらが含有する医薬品の品質および完全性を保証するために、それらのガラス管についての要求は高く且つ増加し続けている。
【0003】
医薬品容器用ガラス管は典型的にはガラス溶融物がガラス管へと引き抜かれて製造される。引き続く段階の間に、引き抜かれたガラス管は部分へと切断され、それが例えばガラスバイアル、ガラスアンプル、ガラスカートリッジまたはガラスシリンジへとさらに加工される。いくつかのガラス管では通気孔が導入される。
【0004】
当該技術分野において、ガラス管を医薬品容器のために使用するための性能および適性に影響するいくつかの問題が知られている。
【0005】
医薬品容器用ガラス管は量産品である。想定されるそれらの簡易さおよび低コストにもかかわらず、それらには高い品質の要求が課され、製造の間および製造後に保証される必要があり、従って販売前に品質管理に供される。特に汚染は許容されず、なぜなら極めて少量の汚染であっても、医薬品の品質に悪影響を及ぼしかねないからである。
【0006】
医薬品容器用ガラス管は高温で溶融するガラス組成物から製造される。その理由は、優れた耐加水分解性、つまり医薬品容器用ガラスの基本的な要件の1つが、非常に高い融点を有するガラス成分、例えばSiO2およびAl2O3に基づくことである。従って、製造の間、均質化および溶融物からの気泡の除去のために充分な溶融粘度に到達するために高い溶融温度が必要であることがある。しかしながら、高い溶融温度は溶融炉および清澄槽の材料に高い要求も課す。例えば、溶融および/または清澄炉からガラス溶融物への材料の溶出は何としても避けなければならない。
【0007】
現在の製造方法は既に良好な品質基準を提供している。それにもかかわらず、ガラス管における汚染が稀に発生していることが報告されているので、その防止は医薬品容器の製造業者にとって常に焦点および論点であり続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
所望の高い品質の要求を確保するために充分且つ一定の製品の監視を提供する必要があり続けている。従って、低コスト、高いスループットおよび製造されるガラス管の品質の工程内管理を可能にする、関連する要求並びに独立の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それらの課題は、特許請求の範囲の対象によって、および以下に記載する対象によって解決される。
【0010】
発明の要約
第1の態様において、本発明は医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管は内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管は第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管は第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、前記第1の端部が第1の閉端部に成形されており、好ましくは前記第2の端部も第2の閉端部に成形されており、前記第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、前記第1の近傍部は前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間にあり、Na2F+の信号および30Si+の信号を含むToF-SIMSの信号が前記第1の近傍部の内部表面上で測定可能であり、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10である前記第1の近傍部における内部表面上の面積が36mm2以下であり、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される、前記ガラス管に関する。
【0011】
第2の態様および/または関連する態様において、本発明は医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管は内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管は第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管は第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、前記第1の端部が第1の閉端部に成形されており、好ましくは前記第2の端部も第2の閉端部に成形されており、前記第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、前記第1の近傍部は前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間にあり、前記ガラス管はその長手方向軸に沿った長さlaを有し、前記ガラス管は中央の区域をさらに有し、前記中央の区域は前記長手方向軸に沿って0.5laの位置を中心として5diの距離に延在し、前記ガラス管は前記第1の近傍部で特定される蛍光発光と、前記中央の区域で特定される蛍光発光との間の比率が少なくとも0.6である、前記ガラス管に関する。
【0012】
従って、本発明は、蛍光分析を介した高スループットの工程内スクリーニングを可能にする、通気孔を有する医薬品容器用ガラス管を提供する。この開示のガラス管は、従来のガラス管に比して改善された蛍光レベルを有する。本発明者らは、この改善された蛍光レベルがガラス管の第1の近傍部の内部表面上での堆積材料のレベルが低減していることに起因すると考えている。汚染レベルの低減は、ガラス管壁内での励起波長の光の移動経路の長さを増加させると考えられ、なぜなら、ガラス管の内部表面で反射される励起光の部分が増加するからである。外部表面を介してガラス管に入射した励起光のこの反射された部分は、ガラス管壁に入り、内部表面で反射されるので、その光はガラス管壁を2回通り抜けて、蛍光種のより強い励起を達成する。第1の近傍部内での内部表面での特定のレベルの汚染は、内部表面で反射される光の量を低減し、それによってガラス管の蛍光化合物からの蛍光の発光を低減するらしいことが判明した。この開示のガラス管は、第1の近傍部の内部表面で低減された汚染を有し、それによって蛍光信号を増加し、または換言すれば、汚染が蛍光信号強度に及ぼす悪影響を低減する。より強い信号とは、蛍光分析において、より少ない量の蛍光成分が検出され得ることを意味する。それは、より高い信号対ノイズ比が達成されることも意味し、そのことが高スループットの分析においてより高い信頼性を可能にする。従って、この発明のガラス管は、蛍光分析を介した高スループットの工程内スクリーニングを可能にする。この発明のガラス管は、ガラス組成物中に意図的に存在する蛍光成分、例えばFe2O3、TiO2、ZrO2、CeO2、As2O3、K2Oによって引き起こされる残留蛍光を示す。
【0013】
ToF-SIMS(Time-of-Flight Secondary-Ion-Mass-Spectrometry; 飛行時間型二次イオン質量分析法)は、ガラス表面を特徴付けるための敏感な手段であり、従ってガラス管の内部表面を評価するために役立つ。本発明らは条件を確立し、従って製造に起因する堆積材料が従来技術において公知のガラス管に比して最小化された、通気孔を有する医薬品容器用ガラス管を提供した。積算された30Si+の信号に対する積算されたNa2F+の信号は、医薬品容器用ガラス管の特徴である、内部表面上の堆積材料のフィンガープリントおよび/または指標として役立つ。本発明によるガラス管は、有利なことに、特徴的な信号が検出され得る第1の通気孔の近傍の面積を最小化し、ひいては第1の近傍部での蛍光信号を増加する。
【0014】
ガラス溶融物からの蛍光不純物、例えばガラス原料バッチの溶融の間の溶融槽に由来することがあるZrO2は、得られたガラス管で検出され得る蛍光を示す。以下の現象が、ガラス管の内部表面上での堆積材料の最小化が、なぜ蛍光検出を改善するのかを説明すると考えられる: 励起光ビームはガラス管の外部表面で方向付けられることができ、ガラス内へと屈折し、ガラスと空気との界面で、ガラス管の内側の部分に向かって全反射される。ガラス管の内側でその光路に沿って、(残留)蛍光成分が励起され、その蛍光が励起ビームから直交して検出され得る。ガラス管の内部表面が製造から生じる堆積材料で影響される場合、励起光ビームの全反射が阻止され、そのことがガラスと空気との界面での励起光の損失および/または励起光強度の低減をみちびく。励起光(強度)におけるこの損失は、蛍光発光における損失と直接的に相関し、それは蛍光検出器によって容易に検出可能である。適した蛍光検出器が製造装置に組み込まれることができ、組み込まれた製品管理の直接的な手段として役立つ。第1の近傍部での堆積材料の不在は、ToF-SIMS測定によって、および/またはガラス管中央の区域の残留蛍光を第1の近傍部の残留蛍光と比較することによって確認できる。第1の近傍部が、例えば通気孔の導入に由来する堆積材料を示す場合、蛍光強度は第1の近傍部では中央の区域に比して低くなる。残留蛍光を有さないガラス管においても、ToF-SIMSの信号を使用して、堆積材料の不在を確認できる。
【0015】
第3の態様において、本発明は、医薬品容器用ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
・ 揮発性成分、例えばホウ酸塩を含むガラス溶融物を準備する、好ましくはガラス溶融物中に含まれる酸化物をもたらす原料のバッチを溶融する段階、
・ 前記ガラス溶融物を例えば引き抜きによって、ガラス管へと成形する段階
・ 前記ガラス管を、第1の端部と第2の端部とを有するガラス管へと成形する段階、
・ 前記第1の端部を第1の閉端部へと成形する段階、
・ 前記ガラス管に通気孔を導入する段階、
・ 前記導入する段階の少なくとも一部の間、および/または前記導入する段階の直後に、吸引を使用する段階、および
・ 任意に、前記第2の端部を第2の閉端部へと成形および/または封止する段階
を含む前記方法に関する。
【0016】
従って、本発明者らは、蛍光分析を介した高スループットの工程内スクリーニングを可能にする、医薬品容器用ガラス管の製造方法を確立した。
【0017】
本発明による方法は、開端部の1つが閉端部へと成形された医薬品容器用ガラス管であって、通気孔がガラス管に導入されて、その導入する段階の少なくとも一部の間、および/またはその導入する段階の直後に吸引を使用することにより、内部表面条件における改善を確実にする、前記ガラス管を提供する。ガラス管へ通気孔を導入するために必要とされる高温に起因して、ガラス組成物の一部が蒸発し、引き続きガラス管の内部表面上、特に閉端部に近い近傍部で凝縮することがあることが観察された。稀で且つ極端な場合には、可視の堆積物、例えばミクロンサイズの水の染みすら観察された。従って、本発明による方法は、ガラス管の内部表面上の堆積材料に対する有効な対応策を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aは、従来技術の方法により製造されたガラス管を示し、内部表面上に水の染みを示している。
図1Bは、従来技術の方法により製造されたガラス管を示し、内部のガラス表面上に堆積されたホウ酸塩を示している。
図1Cは、本発明の方法により製造されたガラス管を示す。
【
図2】
図2は、
図1Aに示されるガラス管の影響された内部表面領域上で取得された三次元ToF-SIMSマッピング分析を示す。該分析は、ToF-SIMSによって検出された陽イオン種に基づく。
【
図3】
図3は、ガラス管の内部表面の5つの位置から得られたToF-SIMSデータの分析を示す: 「参照」および「参照2」に関するデータは、堆積材料がなく、「比較的弱い」、「弱い」として示されるデータは検出可能な染みに由来する信号を示し、「強い」と示されるデータは苛酷な染みに由来する信号を示す。監視されたToF-SIMSの信号は、積算されたNa
2F
+の信号の、積算された
30Si
+の信号に対する比率に基づいており、前記Na
2F
+の信号および前記
30Si
+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【
図4】
図4A~Eは、方法の節で示される分析およびスパッタパラメータを使用した100nmより多くの深さにわたる基礎となるToF-SIMSデータの記録を示す。前記の記録は、
図3に示されるデータに関し、ここで、
図4Aは「参照2」、
図4Bは「参照」、
図4Cは「比較的弱い」、
図4Dは「弱い」、且つ
図4Eは「強い」、
図3に示される信号に関する。
【
図5】
図5Aは、ガラス管の品質を監視するための高スループットの蛍光分析の原理を示す。キセノンランプからの励起光がモノクロメータによってスペクトル的にフィルタ処理され、ガラス管に照射されてガラス壁に侵入する。ガラス壁の内側では、励起光ビームが全反射される。蛍光発光は、励起光ビームから直角に集められ、モノクロメータによってスペクトル的にフィルタ処理される。
図5Bは、ガラス管の内部表面の6つの位置から取得された蛍光スペクトルを示す。参照位置1および2は内部表面上の堆積材料、例えば水の染みがなく、且つ最も高い蛍光強度を示す。比較すると、堆積材料を有するガラス管は、
図3および4A~EにおけるToF-SIMSデータと一致して、「弱い1」、「弱い2」、および「強い」として分類され、著しく低減された蛍光発光を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
第1の態様において、本発明は医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管は内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管は第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管は第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、前記第1の端部が第1の閉端部に成形されており、好ましくは前記第2の端部も第2の閉端部に成形されており、前記第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、前記第1の近傍部は前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間にあり、Na2F+の信号および30Si+の信号を含むToF-SIMSの信号が前記第1の近傍部の内部表面上で測定可能であり、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10である前記第1の近傍部における内部表面上の面積が36mm2以下であり、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される、前記ガラス管に関する。
【0020】
ToF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)は、ガラス表面を評価するための敏感な手段であり、従ってガラス管の内部表面を評価するために役立つ。本発明らは条件を確立し、従って製造に起因する堆積材料が従来技術において公知のガラス管に比して最小化された、通気孔を有する医薬品容器用ガラス管を提供した。積算された30Si+信号に対する積算されたNa2F+信号は、医薬品容器用ガラス管の特徴である、内部表面上の堆積材料のフィンガープリントおよび/または指標として役立つ。
【0021】
ガラス管の内部表面の厳密且つ徹底的な評価を確実にするために、Na
2F
+の信号を深さ100nmにわたって積算し、同じ深さ範囲における
30Siの信号に対して正規化した。
30Si同位体は、
28Siの信号の検出器飽和を回避するために選択された。三次元(3D)ToF-SIMS分析は、内部ガラス表面上でのマップの測定を可能にする。3D ToF-SIMS分析の面積分解能は約4×4μm、つまり16μm
2と見積もられた(
図2参照)。
【0022】
前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部はToF-SIMSの信号によって特徴付けられ、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10である面積は36mm2以下、25mm2以下、20mm2以下、16mm2以下、10mm2以下、5mm2以下、3mm2以下、または1mm2以下であり、ここで前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。有利なことに、前記ガラス管は、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する検出閾値の少なくとも0.10を上回る堆積材料の小さい面積のみを示すことができる。
【0023】
前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部はToF-SIMSの信号によって特徴付けられ、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10且つ0.50以下である面積は36mm2以下、25mm2以下、20mm2以下、16mm2以下、10mm2以下、5mm2以下、3mm2以下、または1mm2以下であり、ここで前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部はToF-SIMSの信号によって特徴付けられ、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10且つ0.50以下である面積は36mm2~0.0001mm2、10mm2~0.001mm2、3mm2~0.01mm2、または1mm2~0.1mm2であり、ここで前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【0024】
前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部はToF-SIMSの信号によって特徴付けられ、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10である面積は0mm2であり、ここで前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部はToF-SIMSの信号によって特徴付けられ、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率が少なくとも0.10且つ0.50以下である面積は0mm2であり、ここで前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【0025】
有利なことに、前記ガラス管は、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する検出閾値の少なくとも0.10を上回る堆積材料が完全にないこともある。
【0026】
1つの実施態様において、ToF-SIMSの信号は、一次イオン源として25keVでGa+を使用して、且つ一次イオン電流1pAで、好ましくは5000を上回る質量65(mass 65)での質量分解能Δm/mで、分析面積50×50μm2、スパッタイオンとして1keVでO2
+を使用し、スパッタイオン電流300nA、およびスパッタ面積300×300μm2で、任意に電荷補償のためにエレクトロンフラッドガンを使用して生成される。
【0027】
1つの実施態様において、ToF-SIMSの信号は、検出されたイオン種、例えばNa2F+のカウント数を、定義により1に設定される30Si+イオンのカウント数に対して正規化し、白色光顕微鏡を使用して凹みの深さを測定することによってスパッタ深さを特定し、内部表面の外側の100nm内でのNa2F+の積算された強度と30Si+の積算された強度との間の商を計算することによって特定される。内部表面の外側の100nm内でのNa2F+の積算された強度と30Si+の積算された強度との間の商は、ΣNa2F+/Σ30Si+として表すことができる。
【0028】
第2の態様において、本発明は医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管は内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管は第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管は第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、前記第1の端部が第1の閉端部に成形されており、好ましくは前記第2の端部も第2の閉端部に成形されており、前記第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、前記第1の近傍部は前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間にあり、前記ガラス管はその長手方向軸に沿った長さlaを有し、前記ガラス管は中央の区域をさらに有し、前記中央の区域は前記長手方向軸に沿って0.5laの位置を中心として5diの距離に延在し、前記ガラス管は前記第1の近傍部で特定される蛍光発光と、前記中央の区域で特定される蛍光発光との間の比率が少なくとも0.6である、前記ガラス管に関する。
【0029】
本発明者らは、ガラス組成物中に意図的に存在する蛍光成分、例えばFe2O3、TiO2、ZrO2、CeO2、As2O3、K2Oが、得られたガラス管の蛍光を提供することを確立した。それらの蛍光酸化物成分の1つ、例えばZrO2は、ガラス原料のバッチを溶融する間の溶融槽に由来することがある。本発明は、通気孔を有する医薬品容器用ガラス管であって、ガラス管の内部のガラス表面上の堆積材料が、従来技術において公知のガラス管に比して最小化され且つ/または回避される前記ガラス管を提供し、それにより蛍光分析を介した高スループットの工程内スクリーニングが可能になる。
【0030】
以下の現象が判明しており、且つ産業に応用されている: 励起光ビームはガラス管の外部表面で方向付けられることができ、ガラス管内へと屈折し、ガラスと空気との界面で、ガラス管の内側で全反射される。ガラス管の内側でその光路に沿って、蛍光成分が励起され、その蛍光が励起ビームから直交して検出され得る。ガラス管の内部表面が、例えば製造から生じる成分による堆積材料を有する場合、励起光ビームの全反射が阻止され、そのことがガラスと空気との界面での励起光の損失および/または励起光強度の低減をみちびく。励起光(強度)におけるこの損失は、蛍光発光における損失と直接的に相関し、それは蛍光検出器によって容易に検出可能である。適した蛍光検出器が製造装置に組み込まれることができ、組み込まれた製品管理の直接的な手段として役立つ。
【0031】
1つの実施態様において、蛍光発光は、励起波長290nmで且つ発光波長370nmで測定され、ここで励起についてのスリット幅は10nmであり、且つ発光についてのスリット幅は10nmであり、任意に積算は100msであり、ガラス管は、入射励起光ビームと反射された励起光ビームとの間の角度が約90°であるように配置され、蛍光発光は約90°の角度で検出される。
【0032】
1つの実施態様において、医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面および外部表面を有し、前記ガラス管は内径diおよび外径doを有し、前記ガラス管は第1の端部および第2の端部を有し、前記ガラス管は第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、前記第1の端部が第1の閉端部に成形されており、好ましくは前記第2の端部も第2の閉端部に成形されており、前記第1の閉端部の第1の近傍部内に通気孔が配置されており、前記第1の近傍部は前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間にあり、前記ガラス管はその長手方向軸に沿った長さlaを有し、前記ガラス管は中央の区域をさらに有し、前記中央の区域は前記長手方向軸に沿って0.5laの位置を中心として5diの距離に延在し、前記ガラス管は前記第1の近傍部で特定される蛍光発光と、前記中央の区域で特定される蛍光発光との間の比率が少なくとも0.6であり、蛍光発光は励起波長290nmで且つ発光波長370nmで測定され、励起についてのスリット幅は10nmであり、且つ発光についてのスリット幅は10nmであり、任意に積算は100msであり、前記ガラス管は入射励起光ビームと反射された励起光ビームとの間の角度が約90°であるように配置され、蛍光発光は約90°の角度で検出される、前記ガラス管が提供される。
【0033】
1つの実施態様において、ガラス管は第1の近傍部で特定される蛍光発光と、中央の区域で特定される蛍光発光との間の比率少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、または少なくとも0.95を有する。1つの実施態様において、ガラス管は第1の近傍部で特定される蛍光発光と、中央の区域で特定される蛍光発光との間の比率1.0以下、0.99以下、0.98以下、0.97以下、または0.96以下を有する。1つの実施態様において、ガラス管は第1の近傍部で特定される蛍光発光と、中央の区域で特定される蛍光発光との間の比率0.6~1.0、0.7~0.99、0.8~0.98、0.9~0.97、または0.95~0.96を有する。
【0034】
有利なことに、前記ガラス管は、中央の区域の内部表面と類似する第1の近傍部での内部表面を有する。換言すれば、前記ガラス管は、第1の近傍部と中央の区域との両方において同様の表面特性を示すことができ、それは前記第1の近傍部の内部表面上で見出されることがある堆積材料の低減および/または完全な除去を反映する。
【0035】
前記ガラス管の1つの実施態様において、内部表面は、第1の近傍部に位置する堆積物を含み、前記堆積物はガラス管の内部表面に平行に延在する堆積物の面積を有し、その堆積物の面積は0.01mm2~36mm2であり、且つ前記堆積物は積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.10未満を有し、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【0036】
1つの実施態様において、内部表面の第1の近傍部に位置する堆積物は、ガラス管の内部表面に平行に延在し、0.01mm2~36mm2の堆積物の面積を有し、且つ積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.10未満によって同定可能および/または検出可能であり、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【0037】
1つの実施態様において、堆積物は凝縮物および/または昇華物、例えばナトリウム塩、例えばNaClおよび/またはNaF、および/またはホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムに起因し、それはガラス管に通気孔を導入する間にガラスからの蒸発を通じて発生し得る。
【0038】
前記ガラス管の1つの実施態様において、堆積物の面積は0.01mm2~1mm2であり、且つ堆積物は積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.025未満を有するか、または堆積物の面積は0.01mm2~36mm2であり、且つ堆積物は積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.025未満を有する。
【0039】
1つの実施態様において、堆積物の面積は少なくとも0.01mm2、少なくとも0.03mm2、少なくとも0.1mm2、少なくとも0.2mm2、少なくとも0.3mm2、または少なくとも0.5mm2である。1つの実施態様において、堆積物の面積は36mm2以下、25mm2以下、20mm2以下、16mm2以下、10mm2以下、5mm2以下、3mm2以下、または1mm2以下である。1つの実施態様において、堆積物の面積は36mm2~0.01mm2、25mm2~0.03mm2、20mm2~0.05mm2、16mm2~0.07mm2、10mm2~0.1mm2、5mm2~0.2mm2、3mm2~0.3mm2、または1mm2~0.5mm2である。
【0040】
1つの実施態様において、堆積物は、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率少なくとも0.0002、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.005、または少なくとも0.01を有する。1つの実施態様において、堆積物は、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.2以下、0.1以下、0.08以下、0.06以下、0.05以下、0.04以下、または0.025以下を有する。1つの実施態様において、堆積物は、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.2、0.0005~0.1、0.001~0.08、0.002~0.06、0.005~0.04、または0.01~0.025を有する。
【0041】
前記ガラス管の1つの実施態様において、堆積物の面積は0.01mm2~1mm2であり、且つ堆積物は、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.2、0.0005~0.1、0.001~0.08、0.002~0.06、0.005~0.04、または0.01~0.025を有する。
【0042】
前記ガラス管の1つの実施態様において、堆積物は、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.025未満を有し、堆積物の面積は36mm2~0.01mm2、25mm2~0.03mm2、20mm2~0.05mm2、16mm2~0.07mm2、10mm2~0.1mm2、5mm2~0.2mm2、3mm2~0.3mm2、または1mm2~0.5mm2である。
【0043】
前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部の内部表面の少なくとも90%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.99%が、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.025未満によって特徴付けられ、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【0044】
前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部の内部表面の少なくとも99%が、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.2、0.0005~0.1、0.001~0.08、0.002~0.06、0.005~0.04、または0.01~0.025によって特徴付けられ、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【0045】
前記ガラス管の1つの実施態様において、第1の近傍部の内部表面の少なくとも99.99%が、積算されたNa2F+の信号の、積算された30Si+の信号に対する比率0.0002~0.2、0.0005~0.1、0.001~0.08、0.002~0.06、0.005~0.04、または0.01~0.025によって特徴付けられ、前記Na2F+の信号および前記30Si+の信号は深さ100nmにわたって積算される。
【0046】
1つの実施態様において、前記ガラス管は、内部表面の中央の区域におけるアルカリ浸出性として定義され、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中のNa2O当量として特定される「耐加水分解性」を有し、前記耐加水分解性は、0.5μg cm-2未満、0.4μg cm-2未満、0.3μg cm-2未満、0.2μg cm-2未満、または0.1μg cm-2未満である。
【0047】
1つの実施態様において、前記ガラス管は、少なくとも0.01μg cm-2、少なくとも0.02μg cm-2、少なくとも0.03μg cm-2、少なくとも0.04μg cm-2、または少なくとも0.05μg cm-2の耐加水分解性を有する。
【0048】
1つの実施態様において、前記ガラス管は、0.01~0.5μg cm-2、0.02~0.4μg cm-2、0.03~0.3μg cm-2、0.04~0.2μg cm-2、または0.05~0.1μg cm-2の耐加水分解性を有する。
【0049】
ガラス組成物
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5~20mol%のB2O3を含むガラスのリストから選択されるガラス組成物を含む。
【0050】
前記ガラス組成物は、とりわけ、UV光での、つまり100~380nmの範囲における励起に際して少なくともいくらかの蛍光を固有に示す酸化物種、例えばFe2O3、TiO2、ZrO2、CeO2、As2O3および/またはK2Oを含み得る。
【0051】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、5~20mol%のB2O3および/または2~10mol%のNa2Oを含むガラス組成物を含む。任意に、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき60~85mol%のSiO2、5~20mol%のB2O3、2~10mol%のAl2O3、0~2mol%のFe2O3、2~10mol%のNa2O、0~5mol%のK2O、0~2mol%のBaO、0~2mol%のCaO、および/または0~10mol%のTiO2を含む。
【0052】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも60mol%のSiO2、少なくとも62mol%のSiO2、少なくとも64mol%のSiO2、少なくとも66mol%のSiO2、または少なくとも68mol%のSiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき85mol%以下のSiO2、83mol%以下のSiO2、81mol%以下のSiO2、79mol%以下のSiO2、または77mol%以下のSiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき60~85mol%のSiO2、62~83mol%のSiO2、64~81mol%のSiO2、66~79mol%のSiO2、または68~77mol%のSiO2を含む。
【0053】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも5.0mol%のB2O3、少なくとも5.5mol%のB2O3、少なくとも6.0mol%のB2O3、少なくとも6.5mol%のB2O3、または少なくとも7.0mol%のB2O3を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき20.0mol%以下のB2O3、18.0mol%以下のB2O3、16.0mol%以下のB2O3、14.0mol%以下のB2O3、または12.0mol%以下のB2O3を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5.0~20.0mol%のB2O3、5.5~18.0mol%のB2O3、6.0~16.0mol%のB2O3、6.5~14.0mol%のB2O3、または7.0~12.0mol%のB2O3を含む。
【0054】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも2.0mol%のAl2O3、少なくとも3.0mol%のAl2O3、少なくとも4.0mol%のAl2O3、または少なくとも5.0mol%のAl2O3を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき10.0mol%以下のAl2O3、9.0mol%以下のAl2O3、8.0mol%以下のAl2O3、または7.0mol%以下のAl2O3を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき2.0~10.0mol%のAl2O3、3.0~9.0mol%のAl2O3、4.0~8.0mol%のAl2O3、または5.0~7.0mol%のAl2O3を含む。
【0055】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0mol%のFe2O3、少なくとも0.2mol%のFe2O3、または少なくとも0.5mol%のFe2O3を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき2.0mol%以下のFe2O3、1.5mol%以下のFe2O3、または1.2mol%以下のFe2O3を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0~2.0mol%のFe2O3、0.2~1.5mol%のFe2O3、または0.5~1.2mol%のFe2O3を含む。
【0056】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも2mol%のNa2O、少なくとも4mol%のNa2O、または少なくとも6mol%のNa2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき10mol%以下のNa2O、9mol%以下のNa2O、または8mol%以下のNa2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき2~10mol%のNa2O、4~9mol%のNa2O、または6~8mol%のNa2Oを含む。
【0057】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のK2O、少なくとも0.2mol%のK2O、または少なくとも0.5mol%のK2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5.0mol%以下のK2O、3.5mol%以下のK2O、2.5mol%以下のK2O、2.0mol%以下のK2O、または1.5mol%以下のK2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~5.0mol%のK2O、0.2~3.5mol%のK2O、または0.5~2.5mol%のK2Oを含む。
【0058】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のBaO、少なくとも0.2mol%のBaO、または少なくとも0.5mol%のBaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき3.0mol%以下のBaO、2.5mol%以下のBaO、または2.0mol%以下のBaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~3.0mol%のBaO、0.2~2.5mol%のBaO、または0.5~2.0mol%のBaOを含む。
【0059】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のCaO、少なくとも0.2mol%のCaO、または少なくとも0.5mol%のCaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき3.0mol%以下のCaO、2.5mol%以下のCaO、または2.0mol%以下のCaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~3.0mol%のCaO、0.2~2.5mol%のCaO、または0.5~2.0mol%のCaOを含む。
【0060】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のTiO2、少なくとも1.0mol%のTiO2、少なくとも2.0mol%のTiO2、少なくとも3.0mol%のTiO2、または少なくとも4.0mol%のTiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき10.0mol%以下のTiO2、9.0mol%以下のTiO2、8.0mol%以下のTiO2、7.0mol%以下のTiO2、または6.0mol%以下のTiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~10.0mol%のTiO2、1.0~9.0mol%のTiO2、2.0~8.0mol%のTiO2、3.0~7.0mol%のTiO2、または4.0~6.0mol%のTiO2を含む。
【0061】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管はガラス組成物を含み、前記ガラス組成物は1つ以上の清澄剤、例えば酸化ヒ素、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化セリウム、塩化物、硫酸塩、およびそれらの組み合わせのリストから選択される清澄剤を含む。
【0062】
前記ガラス組成物中で清澄剤を使用して、医薬品容器用ガラス管の製造プロセスの間に、気泡の形成およびガラス溶融物からの気泡の離脱を可能にすることが有利である。
【0063】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス組成物は酸化ヒ素、酸化アンチモンおよび酸化スズのリストから選択される清澄剤を含む。
【0064】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス組成物は塩化物、硫酸塩、およびそれらの組み合わせのリストから選択される清澄剤を含む。
【0065】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、1580℃を上回る温度で102dPasの粘度を有する。
【0066】
ガラス管の寸法およびガラス管のセット
1つの実施態様において、前記ガラス管は内径5.0~49.0mm、好ましくは9.0~26mm、および/または外径6.0~50mm、好ましくは8.0~30mm、および/またはガラス壁厚0.5~2.0mm、好ましくは0.6~1.5mm、および/または長さ1100~5000mm、好ましくは1500~2000mmを有する。
【0067】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、内径5.0~49.0mm、6.0~45.0mm、7.0~40.0mm、8.0~35.0mm、または9.0~26mmを有する。
【0068】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、外径6.0~50.0mm、7.0~40.0mm、または8.0~30mmを有する。
【0069】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、ガラス壁厚0.5~2.0mm、0.6~1.5mm、0.7~1.3mm、または0.8~1.2mmを有する。
【0070】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は長さ1100~5000mm、1200~3000mm、または1500~2000mmを有する。
【0071】
1つの実施態様において、少なくとも50個のガラス管、少なくとも100個のガラス管、または少なくとも200の個ガラス管を含むセットが提供される。1つの実施態様において、1000個以下のガラス管、700個以下のガラス管、または500個以下のガラス管を含むセットが提供される。
【0072】
ガラス管の製造方法
第3の態様において、本発明は、医薬品容器用ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
・ 揮発性成分、例えばホウ酸塩を含むガラス溶融物を準備する、好ましくはガラス溶融物中に含まれる酸化物をもたらす原料のバッチを溶融する段階、
・ 前記ガラス溶融物を例えば引き抜きによって、ガラス管へと成形する段階
・ 前記ガラス管を、第1の端部と第2の端部とを有するガラス管へと成形する段階、
・ 前記第1の端部を第1の閉端部へと成形する段階、
・ 前記ガラス管に通気孔を導入する段階、
・ 前記導入する段階の少なくとも一部の間、および/または前記導入する段階の直後に、吸引を使用する段階、および
・ 任意に、前記第2の端部を第2の閉端部へと成形および/または封止する段階
を含む前記方法に関する。
【0073】
従って、本発明者らは、従来技術において公知の問題を回避し、それによって、内部表面上で観察されることがある堆積材料がないか、または少なくとも最小限にされるガラス管を提供する、医薬品容器用ガラス管の製造方法を確立した。
【0074】
本発明による方法は、開端部の1つが閉端部へと形成された医薬品容器用ガラス管であって、通気孔がガラス管に導入されて、その導入する段階の少なくとも一部の間、および/またはその導入する段階の直後に吸引を使用することにより、内部表面条件における改善を確実にする、前記ガラス管を提供する。ガラス管へ通気孔を導入するために必要とされる高温の間に、ガラス組成物の一部が蒸発し、引き続きガラス管の内部表面上、特に閉端部に近い近傍部で凝縮することがあることが観察された。稀で且つ極端な場合には、可視の堆積物、例えばミクロンサイズの水の染みすら観察された。従って、本発明による方法は、ガラス管をガラスバイアル、ガラスアンプル、ガラスカートリッジまたはガラスシリンジにする製造の間のガラス管の悪化に対する有効な対応策を提供すると共に、望ましくない化学物質、工程の一部としての種を引き抜くことにより、高品質のガラス管を確実にする。
【0075】
前記方法の1つの実施態様において、前記ガラス管は内部表面および外部表面、内径diおよび外径do、ガラス管の長手方向軸に沿った長さla、第1の端部および第2の端部、第1の位置を有し、前記第1の位置は前記第1の端部から400mmの距離にあり、前記ガラス管は第1の中間の位置を有し、前記第1の中間の位置は前記第1の端部から15mmの距離にあり、第1の近傍部が前記第1の中間の位置と前記第1の位置との間のガラス管の内部表面として定義され、前記ガラス管の前記第1の近傍部において前記ガラス管に通気孔が導入される。
【0076】
前記ガラス管の第1の近傍部において通気孔を配置または導入することは、最終製品において多数の実用的な利点を有する。例えば、通気孔を有するガラス管の部分を、ガラス材料の本質的な損失なく、切断または燃焼することによって容易に除去できる。ガラス管の前記製造方法の間、第1の近傍部においてまたはその付近で通気孔を導入することは、機械設計からも有利である。つまり、吸引のために備えられる機械部品をガラス管に非常に深く導入する必要がない。
【0077】
前記方法の1つの実施態様において、導入段階の間の吸引の使用は、ガラス管の第1の近傍部においてガラス管を少なくとも100℃、少なくとも150℃、または少なくとも200℃の温度に加熱することを伴う。前記方法の1つの実施態様において、導入段階の間の吸引の使用は、ガラス管の第1の近傍部においてガラス管を400℃以下、350℃以下、または300℃以下の温度に加熱することを伴う。前記方法の1つの実施態様において、導入段階の間の吸引の使用は、ガラス管の第1の近傍部においてガラス管を100℃~400℃、150℃~350℃、または200℃~300℃の温度に加熱することを伴う。
【0078】
有利なことに、第1の近傍部におけるガラス管の加熱と、吸引の使用との組み合わせは、ガラス管に通気孔を導入する間にガラスからの蒸発を通じて発生し得る、凝縮および/または昇華する傾向のある種、例えばナトリウム塩、例えばNaClおよび/またはNaF、および/またはホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムの効率的な除去を提供する。
【0079】
前記方法の1つの実施態様において、静止条件下での吸引の使用は、ガラス管の内側で平均空気流量5~50m s-1、好ましくは15~25m s-1をもたらす。有利なことに、適した空気流量は、ガラス管に通気孔を導入する間にガラスからの蒸発を通じて発生し得る、凝縮および/または昇華する傾向のある種、例えばナトリウム塩、例えばNaClおよび/またはNaF、および/またはホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムの効率的な除去をさらに利することができる。
【0080】
当業者は、ナトリウム塩、例えばNaClおよび/またはNaF、および/またはホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムが、医薬品容器用ガラスのための典型的な成分であり、その化学特性は、ガラス管の製造のために使用される高温の間、特に通気孔の導入の間に、昇華および/または凝縮作用をもたらすことを認識している。
【0081】
前記方法の1つの実施態様において、通気孔の導入はt0の時点で開始し且つt2の時点で終了し、吸引の使用はt1の時点で開始し且つt3の時点で終了し、t1はt0とt2との間にあり、且つt3はt2の後である。
【0082】
有利なことに、通気孔の導入と、吸引の使用との間のタイミングは、凝縮および/または昇華する傾向のある種、例えばナトリウム塩、例えばNaClおよび/またはNaF、および/またはホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムを、それらが前記方法の間にガラスからの蒸発を通じて典型的に発生し得る時間範囲で、効率的に除去することを可能にし且つもたらすように最適化されている。
【実施例0083】
実施例および方法
蛍光分光法
Horibaの蛍光分光計FLUOROLOG 3(PE-4-0503)を使用した。
【0084】
励起ビームと発光ビームとの間が直角になるように試料を設置し且つ45°の配置で測定した。UV光ビームがガラス管に入り、ガラス管壁の内側で全反射で反射されるように、試料を試料チャンバに設置した。ガラス壁を通過する際、UV光はガラス組成物中に存在する蛍光種、例えばFe2O3、TiO2、ZrO2、CeO2、As2O3、K2Oを励起し、その発光が励起ビームに対して直角に検出される。ガラス管が内部表面上で異常、例えば堆積物、表面粗さに影響する物理的変化、または揮発性成分(例えばホウ酸塩およびハロゲン化物)の析出を示す場合、全反射が阻止され、そのことが励起光の少なくとも部分的な損失をみちびく。励起光強度におけるこの損失はより低い蛍光発光をもたらし、それによってガラス管の内部表面上での異常または不均質性の敏感な読み取りとして機能する。
【0085】
以下の分光計の設定を使用した: 励起および発光用のスリット幅10nm、安定状態での測定のための積算時間0.1秒、および波長サンプリング1nm。分析の測定の不確かさ(k=2)は、蛍光強度について±2.0%、波長について±1nmと見積もられた。
【0086】
試料をまず254nmn励起ランプ下での評価に供して、蛍光および均質性を視覚的に判断して、不均質に見える領域を探し、それを同定して試験のために準備した。6つの試料の蛍光発光を特定して、ガラスの固有の蛍光を測定した。
【0087】
本発明の一部として使用されるガラス組成物について有効な励起を提供することが立証されている励起波長290nmを使用した(
図5B)。個々の試料間で測定された強度の間の違いは、最初の蛍光測定の間の相対的な測定の不確かさ±3%よりも大きい。
【0088】
ToF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)
ToF-SIMS技術はスパッタイオンビームによる表面の浸食に基づく。一次イオンビームによって生成された二次イオンが表面から引き抜かれ、質量分離によって検出される。生成された深さプロファイルが、種々のイオン種についての定性的な表面組成の情報を提供する。
【0089】
TOF-SIMS IV(ION-TOF GmbH)機器を使用し、一次イオン源として25keVでGa+を使用して、一次イオン電流1pAで、5000を上回る質量65での質量分解能Δm/mで、分析面積50×50μm2、且つスパッタイオンとして1keVでO2
+を使用し、且つスパッタイオン電流300nA、スパッタ面積300×300μm2で、電荷補償のためにエレクトロンフラッドガンを使用した。
【0090】
データを評価するために、イオンの全てのカウント数を、定義により1に設定される30Si+イオンに対して正規化した。
【0091】
白色光顕微鏡を使用して凹みの深さを引き続き測定することによってスパッタ深さを特定した。表面の外側の100nm内でのNa2F+の積算された強度と30Si+の積算された強度との間の商ΣNa2F+/Σ30Si+を計算した。
【0092】
ToF-SIMSのデータを取得し、ASTM規格 E 1829-14(2014; Standard Guide for Handling Specimens Prior to Surface Analysis)およびASTM規格 E 2695-09(2009; Standard Guide for Interpretation of Mass Spectral Data Acquired with Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectroscopy)を適用して解釈した。具体的には、試料を清浄に保ち、汚染物質の導入を回避するように取り扱った。サンプリングされたガラス管を開いて割り、データ取得前に空気/N2を吹き付けることによってガラスの破片を除去した。
【0093】
耐加水分解性
耐加水分解性は内部表面の中央の区域のアルカリ浸出性として定義される。内部表面上のアルカリ浸出性は、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中でのNa2O当量として特定される。この測定されたパラメータを次に、ISO 4802-2:2010の方法の間に溶出液と接触された内部表面に関連付ける。
【0094】
その試験を実施するために、ガラス管を、中央の区域に相当するそれぞれの切片に切断し、各々の切片は少なくとも25mmの長さを有する一方で、選択的に50mmおよび60mmの長さも可能である。
【0095】
ISO 4802-2:2010のポイント8.3を参照し、各々のガラス管切片を、定義上、底端部と称される1つの開端部から、シリコーンゴムの栓を用いてキャップする。試験水を充填した後、ガラス管切片を、他の開端部でアルミニウム箔を用いてキャップする。それらを最初に使用する前に、シリコーンゴムの栓を洗浄し、シリコーンゴムの栓からのアルカリ浸出性がないことを確認する。各々の使用後、シリコーンゴムの栓を洗浄する。蒸留水での充填体積は、ISO 4802-2:2010のポイント7.2.1またはポイント7.2.2に準拠して、それぞれ、ガラス管切片の内径(または内腔直径)、つまりdi≦20mmまたはdi>20mmに依存して特定される。